数ヶ月前〜
とある場所に十二鬼、下弦の鬼達が集められていた
部屋や廊下が複雑に入り組んだ異様な空間を見渡す釜鵺はその場に下弦の伍がまだいない事に気付く
琵琶の音色が鳴り響き散らばるように集められていた下弦達が同じ場所に集められると下弦達の前に着物を着た女が現れる
「頭を垂れて蹲え!平伏せよ」
そう言う女の言葉に下弦達は反射的に蹲り頭を下げる
(無惨様だ・・無惨の声、分からなかった姿も気配も以前と違う凄まじい精度の擬態)
着物の女が無惨だったと冷や汗を流す釜鵺
「申し訳ございません、お姿も気配も異なっておりましたので」
緊張しながらも取り繕う零余子だったが
「誰が喋って良いと言った、貴様共のくだらぬ意志でものを言うな、私に聞かれた事のみ答えよ」
無惨は下弦の鬼達にそう言うと
「塁が殺された・・下弦の伍だ!私が問いたいのは一つのみ、何故に下弦の鬼はそれ程まで弱いのか、十二鬼月に数えられたからと言ってそれで終わりではないそこから始まりだ、より人を喰らいよりより強くなり
私の役に立つ為の始まり、ここ百年余り十二鬼月の上弦は顔ぶれが変わらない、鬼狩りの柱共を葬ってきたのは常に上弦の鬼達だ、しかし下弦はどうか?何度入れ替わった?」
そう長々と愚痴を零すように話す無惨、十二鬼月になって長い年月が経ってもいない下弦の陸釜鵺は
(そんなことを俺達に言われても)
釜鵺にとってそれは前任の下弦の話、それを持ち出されて返答に困る釜鵺は直接抗議出来るわけもなく心中でそう思うが
「“そんなことを俺達に言われても“なんだ?言ってみろ?」
釜鵺の思考が読み取れる無惨、釜鵺に釈明を求めるが
(思考が・・読めるのか?・・・まずい!)
まさか自分の思考が読み取られるとは露にも思っていなかった釜鵺は
そう焦るが
「何がまずい?言ってみろ」
そう言う無惨の顔は既に怒りに満ちており、釜鵺は無惨から産み出される触手のようなものに拘束されると
「お許しください鬼無辻様!どうか!どうか御慈悲を!申し訳ありません!申し訳ありません!申し訳」
必死に謝り許しを懇願する釜鵺、そんな釜鵺など最早要らぬと言葉途中で喰らいにかかる触手
「ったく!馬鹿か!」
そう声が聞こえると触手のようなものが真っ二つに裂かれ釜鵺は一命を取り留める
突然の出来事に十二鬼月の面々が唖然としてる中、無惨の背後に現れた鬼“斬吼狼“は無惨を哀れむような目で見ながら話し出した
「処分するには少し早いんじゃないか?下弦とはいえ十二鬼月、その辺の雑魚よりはマシだろ?それにな!上弦の顔ぶれが100年余り変わらない?そりゃそうだろ?奴らは黄金騎士と相対してないんだからな!上弦の弐だったか?朝日が昇らなきゃ牙狼に斬られてた筈だ!」
そう話す斬吼狼に無惨は
「斬吼狼!お前は私に口答えする気か?」
怒りを露わにしながらそう言う無惨だが
「お気に入りの下弦の伍が殺されたからって他の下弦共に当たるなよ、
まあ下弦共が処分されようが俺には関係ないけどな」
鬼である前に魔戒騎士である斬吼狼は下弦達が処分されようが関係ない
寧ろ狩るべき対象が勝手に減っていく分手間が省けるのだが、無惨の癇癪で理不尽に殺されるのは釈然としない斬吼狼は釜鵺を助け無惨に文句を言っていた
「斬吼狼!私はお前に黄金騎士の殺害を命じていた筈だ!何故殺さなかった?何故見逃した?」
無惨は下弦達の事より斬吼狼が煌牙を殺さなかった事の方が重要で話を切り替えてそう斬吼狼を問い詰めるが
「はぁ〜〜馬鹿か?お前は!俺が斬るのは黄金騎士じゃねえ!お前と上弦の壱だよ!」
そう啖呵を斬りながら魔戒剣を引き抜く斬吼狼に無惨は
「斬吼狼‼︎」
完全に頭に血が昇り斬吼狼を始末しようと触手を差し向けるが
ーー呀の呼吸 玖の型 大蛇八重裂きーー
牙の呼吸玖の型大蛇薙と同様の斬撃を八連撃する牙の呼吸玖の型の上位互換のような型で触手諸共無惨に仕掛ける斬吼狼
「ハッ!じゃあな無惨!お前らの頸は俺と牙狼、あと鬼狩り達が必ず断ち切るからよ!せいぜい頸を洗って待ってな!」
そう言うと斬吼狼は下弦達に視線を移したが興味ないと振り返ると自らの鬼鬼術で影を生み出しその影に潜り消えていった
鬼無辻の根城“無限城“斬吼狼の型により一部が全壊、その全壊した部屋の奥からゆらりと起き上がり今まで以上の怒りを露わにする無惨が現れ
る
驚異的な再生力で斬吼狼から受けた斬撃は完治しているが着物はすでに衣服としての機能を果たしておらずほぼ全裸に近い姿をした無惨は怯え固まっている下弦達に目を向けるとその怒りをぶつけるように話し出した
「使えぬ下弦共よ!お前達下弦の鬼は解体し十二鬼月は上弦のみと良いと思っていたが気が変わった!黄金騎士を受け継ぐ牙柱“四ノ宮煌牙“を始末してこい‼︎殺す事が出来れば再びお前達を下弦の鬼として認めてやろう!」
そう下弦達に告げると下弦達は怯えながらも頷き煌牙を殺す事を無惨に誓う
そんな中、下弦の壱“厭夢“は無惨をうっとりとした表現で見つめていると無惨が
「下弦の壱、何か言いたい事があるのか?」
そう厭夢に聞くと厭夢は
「私は夢見心地でした、貴方様直々に手を下してくれるなんてなんて素晴らしいと、他の鬼の断末魔も聴けるなんて私にとってこれ以上ない幸せでした・・でもあの鬼は邪魔をした・・私はあの鬼の断末魔が聴きたい」
そう話す厭夢、斬吼狼の断末魔が聴きたいとうっとりする厭夢に無惨は
「いいだろう!お前は耳飾りの鬼狩りを殺せ!あの裏切り者は必ず鬼狩り共に接触する筈だ!斬吼狼諸共鬼狩りを殺せ!」
そう言うと無惨は厭夢の頸に爪を突き立て血を流し込む
無惨の血が流れ込んだ事で悶絶する厭夢をよそに無惨は他の下弦達に視線を移し
「四ノ宮煌牙を殺してこい!」
そう一言言うと琵琶の音色が鳴り響き厭夢を含む下弦達はその場から消えていった
下弦達が消えた無限城、無惨は琵琶の鬼“鳴女“の琵琶により無限城の中を移動すると
「黒死牟・・お前に頼みがある・・黄金騎士である牙柱四ノ宮煌牙を殺せ!下弦共など黄金騎士の障害にもならん!」
無惨の命を黙って聞いていた黒死牟は座り込んでいた状態から立ち上がると刀を抜刀し
「四ノ宮煌牙・・暁大牙の後継者・・その系譜は私が断ち切らねばなるまい」
そう言う黒死牟に無惨は
「斬吼狼が裏切った」
無惨の発言に黒死牟から強烈な怒気が迸り周囲の空気が震えだす
「ならば斬吼狼諸共黄金騎士を殺すまで」
黒死牟はそう言うと無限城から立ち去っていった
時は戻り蝶屋敷〜
カナヲの鎹鴉からの報告を受けて鬼殺隊本部は柱達に上弦の壱討伐及び煌牙達の応援要請を出し、しのぶは迅速な出撃準備を終えると四ノ宮邸へ向かおうとしていた
「あの!しのぶさん!煌牙さんやカナヲは・・」
「・・・分かりません!相手は上弦の壱、これまでの鬼とは違います!一刻も早く向かわないと取り返しのつかない事になるかもしれません」
煌牙達を心配している炭治郎達は出発しようとしていたしのぶにそう聞くが相手が上弦の壱、しのぶは早く向かわないと取り返しのつかない事になると焦り炭治郎達にそう告げると足早に四ノ宮邸へと向かっていった
「怪我はほぼ完治したとはいえ今の俺には日輪刀がない!俺達も煌牙さん達の救援に行きたいのに!」
「いや!俺達って何だよ‼︎何で勝手に俺も含まれてるの⁈そりゃ俺も煌牙さん達の事は心配だけどさ、上弦の壱とか無理‼︎助けに行くどころか死にに行くのと同じじゃん!」
「善逸は煌牙さん達が死んでも良いのか?それで良いのか?」
「良いわけないだろ!でも今の俺達に何が出来るんだよ!信じろよ!煌牙さんを!今の俺達に出来る事はそれしかないんだからさ!」
「ゲハハハ!オーガは強ぇ!俺は強くなってオーガみたいに暴れてやるぜ」
そう話す炭治郎達、炭治郎は善逸の話を聞いて自分と煌牙との今までの出来事を振り返ると
「そうだな!善逸の言う通りだ!煌牙さんは俺や禰豆子を信じてくれた
俺が煌牙さんを信じなくてどうすんだ!ありがとう善逸!」
そう話す炭治郎は続けて
「それに煌牙さんは魔戒騎士!牙狼なんだ!負けるはずがない!」
「は?魔戒騎士?牙狼?何それ?」
「ああ善逸達は知らないんだったな、煌牙さんは魔戒騎士といって鬼殺隊とは違う役割があるみたいなんだ!その煌牙さんが纏う黄金の鎧が牙狼!黄金騎士牙狼!狼の姿をした鎧だったよ」
「鎧⁈え?鎧着て戦うの?」
「狼だと⁈オーガのヤロー!山の王は譲らねぇつもりだな」
炭治郎達はそう話しながら煌牙達の帰りを信じ今の自分達に出来る事をやろうとしていた
「桜花ちゃん準備はいい?」
「うん!日輪刀はないけど私は魔戒法師だから!アレもあるし大丈夫だよ」
桜花と朔弥、二人の魔戒法師もまた煌牙達を救うべく四ノ宮邸へと向かおうとしていた
「四ノ宮」
鎹鴉からの伝令を聞いた義勇、鎹鴉から案内を受けながら四ノ宮邸へと向かおうとしていた
「煌牙ァ‼︎絶対死ぬんじゃねぇぞ‼︎上弦の壱は俺がブッ殺してやる‼︎」
煌牙と親交のある実弥はそう叫びながら四ノ宮邸へと全速力で向かっていた
四ノ宮邸〜
「旦那様!瑠花お嬢様が!」
「全く!困った娘だ!僕は裏方であって鬼とは戦わないんだけどな!ゴンザ後は頼んだよ」
「かしこまりました旦那様」
瑠花が屋敷から飛び出し慌てた執事のゴンザは泰三を呼びに行くと
泰造は自分は鬼殺隊の裏方であり鬼と戦う隊士ではないと言いながら
瑠花を追う為に屋敷を出て行った
英霊の森〜
「そんなに怯えなくて良いよ、俺は優しいから君を救ってあげるよ」
「別に怯えてなんかいませんよ!勘違いしないでください!」
「ムキになっちゃって可愛いな〜♪ねえ?どうやって遊ぼうか」
「私は貴方と遊んでる暇はありません!」
そう言うと瑠花はその場から逃げるように走り出し童磨から離れていく
「あれ?もしかして嫌われちゃった?」
そうとぼける童磨、余裕の表情を崩さない童磨の眼は獲物は逃がさないと走る瑠花を捉え不気味な笑みを漏らす
(怖い!体が凍り付きそうな威圧感!あれがお兄達が言っていた上弦の弐!呼吸を使えば肺が壊される!今は逃げないと!)
瑠花は蝶屋敷に来てから強くなった、以前より心肺機能も増し常中の習得もあと一歩というところまで成長していたが相手は上弦の弐、初見殺しともいえる粉凍りを撒く童磨を相手に呼吸を使う事が出来ない瑠花は
その実力を発揮出来ないまま逃げるしかなかった
「ねえ?そんなに逃げなくてもいいだろ?俺傷付いちゃうぜ」
そんな瑠花を追って来た童磨は瑠花を捕まえようと手を伸ばす
「やるなら今!」
ーー雲の呼吸 肆の型 流れ雲ーー
瑠花は童磨が手を伸ばした瞬間そう言うと走る勢いを殺し慣性を利用して軸足に力を溜め込んだ瑠花は軸足を起点に後方へと方向転換、緩急を付けた歩法で童磨の背後に回り込むと
ーー雲の呼吸 伍の型 群青雲母ーー
初撃の抜刀による居合斬りから回転による遠心力で威力の増した二撃目を同じ箇所に放つ高速の二連撃を童磨の頸に叩き込む瑠花
「アハハ!君面白い動きをするね、でも残念♪俺の頸は斬れないぜ」
背後から放たれた斬撃を鉄扇で防いだ童磨は余裕を崩さずに笑いながら瑠花にそう言うと
「ですよね」
そう一言だけ言って瑠花は再び走り出した
瑠花は童磨から逃げてはいるが、ただ逃げているわけではない
童磨との距離が開いた隙に呼吸を行い童磨と戦う、粉凍りを警戒した瑠花がとれる唯一の対抗手段だった
「あれ?また逃げちゃうの?そうか!鬼ごっこで遊びたいんだね、文字通り俺が鬼で君を追いかけるよ、捕まえたら美味しく頂いちゃおうかな♪」
そう言うと童磨は走る瑠花を追いかけ始めた
「アハハ!楽しいね、そういや君名前は?」
「私は楽しくありませんから!名前?教えません!」
「じゃあ捕まえて無理矢理聞いちゃおうかな?」
童磨は笑いながらそう言うと
ーー血鬼術・蓮葉氷ーー
鉄扇を振るった童磨は走る瑠花の前方に蓮の氷を作り出し瑠花を足止めを狙う
「わわわっ!」
走る前方に氷の障害物が現れた事で勢いを削がれた瑠花はその場で跳躍
前方に見える木の枝に手をかけると軽快な動きで枝の上に飛び移り枝から枝へと移り渡りながら童磨から逃がれていた
「ホントに面白い動きをするね、でもそんなに必死に逃げられちゃ俺傷付いちゃうぜ」
童磨はそう言うと
ーー血鬼術・散り蓮華ーー
鉄扇を振るい氷の破片を大量に撒き散らす童磨、急激な気温の低下と強烈な冷気が逃げる瑠花の足取りを重くし軽快な動きを封じるとそのまま後ろから瑠花を羽交い締めにして捉える
「やっと捕まえたよ」
瑠花を捕まえて機嫌が良さそうな童磨はそう言うが、瑠花は童磨から逃れようと必死に抵抗を見せる
「もう捕まえられたんだから大人しくしなよ、抵抗出来ないよう動きを封じちゃおうか」
童磨はそう言うと冷気で瑠花の体温を奪っていき、瑠花は体温の低下で体の自由が利かなくなり意識も薄れつつあった
「もう抵抗出来ないね、大丈夫!君は俺の中で永遠に幸せになるんだ」
童磨は抵抗出来ない瑠花にそう言うや鋭い牙を剥き出しにして瑠花に喰らいつこうとしていた
英霊の森付近〜
「零余子ちゃんもういいわ、降ろしてくれないかしら」
「駄目よ!上弦の壱からの傷が深くないとはいえ血を流し過ぎよ!それに私はあの方に頼まれたの!貴方を助けろって!」
「ふふ♪私も今まで柱として十二鬼月を見てきたけれど、まさか助けられる日が来るなんて思いもしなかったわ」
「まだ助かってないわよ!早く手当てしないと!人間は私達みたいに傷が直ぐには治らないんだから!」
「そうね、でも心配しないで!完治は無理でも傷を塞ぐ事なら出来るわよ」
煌牙の頼みで花蓮を担いで逃げていた零余子は森に入る手前で花蓮にそう頼まれ話をしながら走っていた
花蓮の発言に驚くも傷が治るならと花蓮を降ろすと花蓮はその場で術を行使し傷口を塞ぐと花蓮は森を抜け屋敷を目指す
「傷が治った⁈ってどこに向かってるの?」
花蓮の傷が塞がった事に驚く零余子だが花蓮が走り出した事で慌てて追いかけながらそう聞くと花蓮は
「私達の屋敷よ?特殊な結界を張ってるから貴女の安全を確保出来るわ」
そう花蓮が言うと零余子は
「どうしてそこまで・・私は鬼!十二鬼月よ?信用してくれる事は嬉しいけど本当なら私達は」
「殺し合わないといけない?確かに私達鬼殺隊と鬼はそうゆう関係かもしれない、でも違う関係があっても良いんじゃないかしら?」
「・・・あの方も煌牙様もそれを望んでるのかしら?」
「あの子はそうゆう子よ、ちょっと前に鬼の女の子を庇う為に隊律違反まで犯した子だもの」
「・・・煌牙様は変わってるわ」
二人はそう会話すると屋敷を目指し森を駆け出した
「零余子ちゃん!この先鬼がいるわ!今までにない気配・・まさか上弦?」
森の中を進んでいると先の方から濃密な鬼の気配を感じた花蓮は零余子に呼びかけ警戒しながら進むと異様な寒気を感じた花蓮と零余子
二人の先にいたのは鉄扇をヒラヒラと仰ぎながら座り込む鬼、上弦の弐童磨が二人を見据えていた
「あれ?可笑しな組み合わせだね、人間と鬼が一緒にいるなんてそれも十二鬼月・・・お前あの方を裏切るの?」
ヘラヘラと笑いながら喋る童磨は急に鋭い目付きをしながら零余子を問いただす
「そんな事より!貴方の周りに散らばってるのは何かしら?」
童磨の問いかけを遮り質問する花蓮、童磨の周りには夥しい血が飛び散っておりバラバラに散らばった赤紫の衣類と隊服らしき黒の衣類が目に付いた、それは花蓮にとって既視感のあるものだった
「ああ、これかい?凄く可愛い子がいたから遊んでたんだよ♪もういなくなっちゃったけど知り合いかい?」
童磨はニヤリと笑いながらそう言うと
「瑠花は私の娘よ」
と花蓮は答えると童磨は悲しげな表情を浮かべて
「そうかあの子は君の娘だったんだね、残念だけどあの子ならもういないよ」
童磨は花蓮にそう言うと花蓮は静かに日輪刀を引き抜き
「そう・・もういないのね・・・」
花蓮は静かにそう言うと童磨は
「やる気のところ悪いけど俺はもう遊ぶ気はないぜ!裏切り者もいるみたいだし戻ろうかな?」
童磨はそう言うと翻しその場を去ろうとする
「このまま貴方を見逃す気はないわ」
花蓮は童磨は見逃す気はないのでそう言うが童磨は
「アハハ!それ君が言う?逆だよ、俺が君を見逃してあげてるんだよ!
童磨は笑いながらそれは逆だと言うと
「そこの裏切り者は見逃さないけどね」
童磨は表情を一転させ鋭い目付きで零余子を睨みつけるとまた笑い出し
零余子に告げる
「だって面白いだろ?十二鬼月が裏切るなんて、ねえ?何を考えて裏切ったの?俺はこんな面白い事思いつかなかったよ」
そう言いながらヘラヘラとしだす童磨、童磨にとって零余子が裏切った事はどうでもよく、それが面白いかで判断していた
「何も面白くないわよ!」
声を荒げてそう反論する零余子に花蓮は寄り添い、童磨を睨みながら
「ええ!何も面白くないわね、命を弄ぶ事に罪悪感は感じないの?」
花蓮はそう言うが童磨はヘラヘラと笑いながら
「罪悪感なんてあるわけないだろ?人は俺に喰われる事で永遠に俺の中で生きるんだ!俺は死に縛られた奴らを救ってるんだぜ?」
童磨は悪びれもせずにそう言うと花蓮が怒気を含ませながら
「そんなもの永遠と言わないわ、貴方が死ねば終りよ」
花蓮はそう言うと童磨は更に笑いながら
「アハハハハハ‼︎いや〜君面白いね!俺が死ぬ?殺せるものなら殺してくれて構わないよ」
そう言いながらヘラヘラとする童磨、花蓮は日輪刀を握る力を強めながら童磨を睨み深く息を吸い込む
「そうやって瑠花も弄んだの?」
花蓮は今にも斬りかかりそうな勢いで童磨に聞くと
「弄ぶなんて人聞きが悪いな!俺はあの娘を救おうとしたんだぜ?寧ろ感謝してほしいな」
童磨はニヤリと笑い花蓮にそう言うと
ーー牙の呼吸 捌の型 六根清浄・舞天狼ーー
流麗な太刀捌きで童磨に斬りかかる花蓮、童磨も鉄扇で防ごうとするがその太刀筋を見切る事が出来ず腹に刃を通されてしまう
「いい太刀筋だね!全て防げなかったよ!でもいいのかい?呼吸を使っても」
花蓮の太刀筋を褒める童磨はそう言うと花蓮は
「牙の呼吸は風を纏うの、貴方の初見殺しは意味を成さないわ」
童磨の血鬼術・粉凍りを風で防ぎ吸い込む事を防いだ花蓮、二年前煌牙達が童磨と戦って得た情報が花蓮の身を守っていた
「牙の呼吸?・・・ああ!思い出したよ!牙狼と凄く残念な娘が使っていた呼吸だね!」
二年前煌牙達が牙の呼吸を使っていた事を思い出した童磨はそう言うと
「あの時は結局誰も喰べられなかったから、君を喰べてあの時の腹を満たそうかな」
童磨はそう言いながら鉄扇を構えると
「瑠花を追って来てみたら何やら騒がしい事になってるようだね」
そう言いながらその場に駆けつけて来た泰三は辺りを見渡しながら
「瑠花の姿が見えないけど、君達は何か知らないかい?」
泰三はそう聞くと
「瑠花はもういないわ!目の前の鬼に喰われたの」
花蓮は沈痛な面持ちで泰造にそう言うと童磨の周りに散らばった瑠花の衣服に目を向ける
泰三も視線を童磨の周りに向け瑠花の羽織りや隊服の切れ端が散らばってるのを見て童磨を睨み付けると童磨は
「アハハハ!君は何を言ってるんだい?俺は『黙れ!お前は僕達の娘に手を出したんだ!それ相応の報いは受けてもらうよ』・・話は最後まで聞きなよ、俺傷付いちゃうぜ」
童磨は花蓮に何か言いかけるが泰造に途中で遮られ泣き真似をしながら
そう言うと
「仇討ちのつもりなら無駄だよ?俺を殺すなんて無理だし、そんな事する意味がないと俺は思うけどな」
そう挑発する童磨に泰三は
「無駄ではないよ、少なくともお前が消えればお前に喰われる人がいなくなる、僕達鬼殺隊はその為にいるんじゃないか」
童磨の挑発にそう返す泰三は
「まあ僕は裏方の人間だから鬼と直接戦う役割ではないんだけどね」
と自分の立場を話すと
「可哀想に・・弱いから鬼と戦う事も出来ないんだね!男だけど君は特別に俺が救ってあげるよ、俺優しいからほっとけないないぜ」
そう言って泰三を煽る童磨だったがその泰三が突如視界から消えるように動き出し、童磨は泰三の動きを捉えようとするが泰造の動きを捉え切れずに懐の侵入を許してしまう
「あれ?お前弱いから戦えないんじゃ?」
童磨は泰三にそう言いながら気付けば胴体を両断され上半身と下半身が泣き別れていた
「鬼と戦うだけが鬼殺隊じゃないんだよ!まあ適材適所ってやつさ!それに・・・誰が弱いって?元雲柱舐めんな!」
泰三は童磨にそう吐き捨てると童磨を両断した二対の剣を鞘に収め
「花蓮!煌牙達が心配だ!僕は煌牙達の所へ行くよ、後は任せてもいいかい?」
泰三は花蓮にそう言うと花蓮はコクリと頷き泰三は煌牙達の元へと走り出した
「いや〜やられたよ!まさか元柱だったなんて!しかも傷が中々治らない、厄介だね!あの男」
童磨はそう言いながら内心焦っていた、自分をあっさりと斬り裂いた上に傷の再生が遅い!これはまるで牙狼のようだと!動きだけでいうならあの時の牙狼を超えていると認識した童磨は泰三を哀れむ人間ではなく自分を脅かす敵と判断し早々に殺さなければと考えていた
「・・・あの!さっきの人は一体?元柱と言ってたけど」
零余子は泰三を見送り花蓮に泰三の事を聞いてみると
「泰三さんは私の夫よ、昔は雲柱として鬼と戦ってたけど四ノ宮に婿入りして柱は引退したのよ」
花蓮は零余子にそう言いながら懐から八卦符を取り出す
花蓮と泰三は元々幼馴染みの間柄だった、花蓮は四ノ宮家の次期当主として育てられ厳しい修行を課せられていたのだがそんな花蓮と共に修行をしていたのが泰三だった
当時の花蓮は時期当主である自分と同じ修行を何故彼がやっているのか不思議でならなかった、勿論厳しい修行を一人でやるより二人の方がやる気も出るので嬉しいのだが泰三は牙の呼吸を修める気はないと言ってたので自分と同じ修行をやる意味が分からなかった
だが先代当主である花蓮の父親は泰三に目をかけ花蓮と共に修行を付けていた
「ねえ?父様?どうして泰三君は私と同じ修行をしてるの?泰三君は牙の呼吸を覚えないって言ってるのに」
「確かに泰三は牙の呼吸を修める気はない!だが‼︎奴もまた守りし者、鬼殺隊の歴史に現れなかったもう一人の魔戒騎士!泰三の家系はその魔戒騎士の血筋を受け継いでるのだ」
「魔戒騎士・・なんで父様がそれを知ってるの?」
「泰三の父親と俺は昔からの友人でな、あいつから言われたんだ!
『時代は変わった、俺達の一族も守りし者として今の世に蔓延る鬼を狩り守りし者としての使命を果たそう』とな」
「どういう意味なの?」
「守りし者の本来の敵はホラー!魔戒騎士はホラーを狩る事が使命!そう言ってその魔戒騎士はホラーを狩る事に執着し大牙様達と袂を分けたそうだ、だが時代は移り鬼が蔓延る今の世にこそ魔戒騎士が必要とあいつは言っていた!泰三はな!その魔戒騎士の鎧を受け継ぐ守りし者!
私の元で鬼狩りとしての技術を学ばせて欲しいと頼まれたんだ!」
「泰三君って凄い人なんだね!じゃあ!泰三君の使っているあの呼吸もその魔戒騎士が?」
「いや!泰三の使う雲の呼吸は泰三が編み出した呼吸だ!・・全く!鎧を受け継ぐ魔戒騎士でありながら独自の呼吸まで編み出すとは!花蓮!俺は婿にするなら絶対に泰三だな!」
「え⁈父様は泰三君のような男の子が好みなの?」
「は?・・・花蓮何か勘違いしてないか?」
零余子に泰三との関係を話した花蓮は魔戒符に術を込めながら子供の頃の思い出を振り返り、軽く笑みを浮かべると八卦符を近くの木に投げ付ける
「わお!流石お母さん!あっと言う間に帰って来たよ〜♪」
「名付けて!空間翔転移だね♪」
八卦符から発動した術により誰よりも先に到着した桜花と朔弥の二人
はそう言いながら辺りを見渡すと
「・・・・朔弥さん!フラグ?フラグが立っちゃった⁈へし折れないかな〜?」
「桜花ちゃん!ドンマイ‼︎」
そう話す桜花と朔弥、桜花が見た先には童磨がいて以前のやり取りを思い出した桜花に朔弥は無駄な励ましを送った
「急に人が現れたと思ったら残念な娘じゃないか!」
「は?どの辺が残念なのかな?胸?胸の事言ってるんだよね?そうだよね?絶対そうだよね?」
「いや!俺は頭の方が残念だと言ったんだけど」
「はい!ブーメラン!今の発言ブーメラン!」
そんな会話をする桜花と童磨、花蓮は徐々に再生されていく童磨を見て桜花に話しかける
「桜花!上弦の弐は瑠花を喰らったわ!」
「ふぇ⁈・・・瑠花が?・・・・・お母さん・・さっさとあの鬼を消し去ろ?」
桜花はそう言うと羽織りの中から魔導具の一つである大型の拳銃、魔戒銃と八卦符を手に取り童磨に魔戒銃を向ける
「桜花・・どんなに憎くてもそれに捉われては駄目よ!」
「分かってるよ!私達守りし者は陰我に捉われないよう心を強く!でも上弦の弐はこれ以上野放しに出来ないよ!」
「その通りだよ!辛くても今は上弦の弐を何とかしないと!悲しみの連鎖はここで終わらせよう!」
そう話してる間にも童磨は再生していき胴体が繋がり始めたところでようやく立ち上がろうとしていた
「おチビちゃん面白い事言うね」
そう朔弥に話しかけた童磨、朔弥は童磨に向かって
「別に面白い事言ってないよ?」
そう言うと朔弥は八卦符を童磨に投げつけるが童磨はそれを鉄扇ではたき落とすと
ーードカンーー
はたき落とされた八卦符が爆発し爆炎に包まれる童磨
「桜花ちゃん!花蓮ちゃんがいる今なら出来るよね?」
「うん!お母さん!陸の型を!」
そう話すと桜花は八卦符を数枚放り投げると花蓮は爆炎に包まれる童磨へ走り出す
ーー牙の呼吸 陸の型 龍穿の咢ーー
龍を模した竜巻を童磨にぶつける花蓮、桜花の投げた八卦符も竜巻に巻き込まれると桜花は魔戒筆に法力を込め圧縮した炎の球を作り出す
「驚いたよ!おチビちゃんのくせに生意気な事するじゃないか!」
そう言いながら爆発の衝撃で失った腕を再生する童磨は陸の型に巻き込まれながらも血鬼術を発動する
ーー血鬼術 霧氷・睡蓮菩薩ーー
童磨は鉄扇を振るい巨大な氷の菩薩像を作り出すと菩薩像が放つ凍てつく冷気の風が竜巻の勢いを削いでいく
「あの時は吹き飛ばされたけど、もうその型は通じないよ」
余裕の笑みを浮かべる童磨だったがそれをよそに桜花は圧縮した炎を陸の型に向けて飛ばすと炎は巻き込まれた八卦符により竜巻と融合し巨大な火炎竜巻となって菩薩像を焼き尽くす
「あははは!俺の血鬼術を焼き払うなんて面白い事するね」
未だ余裕の表情を崩さない童磨、そんな童磨の背後から
「じゃあね」
そう言いながら魔戒銃を童磨の頭に突きつける桜花、躊躇なく引き金を引くと装填していた魔導力が篭った銃弾が童磨の頭部を貫く
「あれ?君いつの間に俺の背後にいたんだい?」
「教えないよ!それに別れの挨拶は終わったから」
知らぬ間に背後に回っていた桜花にそう聞く童磨に対し桜花は素っ気ない態度をとると同時に童磨の頭部が破裂する
「お母さん‼︎」
桜花がそう叫ぶと花蓮は壱の型を放つ動作に入り桜花は頭部を失った童磨の背に八卦符を貼り付け動きを封じる
「いくら攻撃してもすぐに再生するから無駄だぜ!・・・あれ?動かない!お前何したの?」
「質問が多い!私達は魔戒法師!ただの鬼狩りじゃないから」
童磨の問いにそう答える桜花、体が動かない童磨は花蓮の壱の型によりその頸を断ち切られようとしていた
ーーベベンーー
花蓮の刃が童磨の頸を捉えたと同時に琵琶の音が鳴り響くと空間が歪み童磨はその歪みに吸い込まれるようにその姿を消し去っていった
「鳴女ちゃんの血鬼術!この時を待ってたよ!」
朔弥はそう言うと自信の纏う羽織りから杭が繋がっている鎖を飛ばし歪んだ空間を固定させる
「術式展開!血鬼術解析!」
鳴女の血鬼術による空間を固定した朔弥はその血鬼術を解析しながら
魔戒筆で魔導文字を描き八卦符に魔導文字を収めると黒色に染まる八卦符が出来上がる
「出来たよ!無惨ちゃんの根城、無限城に繋がる八卦符!花蓮ちゃんと桜花ちゃんが頑張ってくれたおかげ!瑠花ちゃんがいなくなって辛い中協力してくれてありがと・・・ホントにありがと・・瑠花ちゃん・・・うえぇぇぇぇん‼︎」
無限城に繋がる八卦符が完成し花蓮と桜花にお礼を言う朔弥だったが
瑠花がいない悲しさが込み上げて泣き出した朔弥、そんな朔弥に桜花は
「朔弥さんまだ終わってないよ!煌牙達が上弦の壱と戦ってる!私はもう誰も失いたくない!上弦の弐も次は絶対逃がさないから!」
桜花はそう言うと零余子を見るがすぐに視線を戻し煌牙達がいる英霊の塔へと走り出した
「なんでお母さんが鬼と、しかも下弦の鬼と一緒にいるのかは後で聞かせてもらうからね!」
桜花は走りながら花蓮にそう言うと花蓮も事情は後で話すと返し英霊の塔を目指し森を駆け抜ける
「グォォォ‼︎」
「兄さん?なの?・・牙狼の鎧どうしたの?」
心滅獣神となりけたたましい咆哮をあげる牙狼、カナヲは煌牙を心配して声をかけるもその声が煌牙に届く事はなく鋭利な爪がカナヲに襲いかかる
「兄さん⁈うっ!」
迫り来る爪の攻撃を辛うじて躱したカナヲだったが直後に牙狼の尾による追撃を受けて弾き飛ばされてしまう
「兄さん‼︎お願い返事をして‼︎」
悲痛な叫びをあげるカナヲだが心滅獣神と化した牙狼は無慈悲にも再びカナヲにその鋭い爪を振り下ろす
カナヲは必死に牙狼の爪から逃れようとするも先程の追撃で上手く力が入らずその爪によって隊服を裂かれ胸元にぶら下げていたお揃いの鈴を落としてしまう
ーーチリリンーー
「あっ!鈴が!」
その鈴をすぐに拾い大事そうに握りしめ牙狼を見つめると迫り来る牙狼の全てを敵とみなし暴れ回る勢いはなくカナヲを凝視しながら立ち止まっていた
「兄さん?」
カナヲがそう呟くと牙狼から微かに煌牙の声が聞こえカナヲはその声に耳を澄ます
「カ・・ナヲ・・・逃げ・・ろ・・・もう俺じゃ・・・牙狼を・・抑えられない」
既に侵食されつつある煌牙の精一杯の言葉にカナヲは
「嫌だ!兄さんを置いて逃げるなんて絶対にしない!ずっとそばにいるって約束した!私達がまだ小さい頃この鈴の誓ったよ!」
泣きながらカナヲはそう言うと牙狼に鈴を見せつけ鈴の音を鳴らす
ーーチリーン チリーンーー
「グォォォ」
鈴を見せつけられ鈴の音色を聞いた牙狼は咆哮をあげるとその場に沈黙し動きを止める
「抗うな!この力を受け入れろ!この力こそお前が求めた全てを蹂躙する力だ!」
「違う・・俺は・・・俺は」
「何も違わないさ!お前は弱い!だから力が求め牙狼を切望した」
「確かにそうだ!俺は弱かった!だから牙狼になって『牙狼になって何だ?皆んなを守りたいって?違うな!お前が守りたいのはお前だ‼︎あの時誰も守れなかった弱い自分から逃れようとするお前だ!牙狼になって昔の俺とは違う、弱かった俺はもういないと自己満足に浸ってな!』
『お前に・・お前に俺の何が分かる‼︎」
「分かるさ!お前の事は俺が一番知っているからな」
「なんなんだよ!お前は!」
「なんなんだよって、そんな事聞かなくてもお前はわかってるんだろ?
俺はお前自身だって事に」
「・・・・」
「どのみち俺達は牙狼の鎧に喰われて死ぬんだ、このままじゃ無駄死にだぞ」
「・・・でも!カナヲが泣いてたんだ・・俺はカナヲを泣かせる為に力を求めたわけじゃなかった」
「だがお前は力を求めた!その結果がこれだ!お前の弱さがカナヲを!
そしてお前自身を殺すんだよ」
「俺の・・弱さ」
「俺と代われ‼︎お前はもう駄目だ!」
もう一人の煌牙、それは煌牙自身が生み出した心の闇
過去に囚われ弱さを嘆き、強さを求め力を渇望する煌牙に芽生えていった闇は次第に煌牙の中で膨れ上がり、カナヲを傷付けられた事をきっかけに表面化してしまった
そのもう一人の煌牙は煌牙から体の支配権を奪い、沈黙した牙狼は再び動き出す
「グォォォ‼︎」
咆哮をあげる牙狼は黒死牟を標的として見定め一気に飛び掛かりその鋭利な爪で切り裂かんと腕を振り下ろす
「本能のままに暴れ狂う破壊の化身、最早人にあらず」
傷の癒えた黒死牟はそう言いながら後退し牙狼の攻撃を避けると
ーー月の呼吸 捌の型 月龍輪尾ーー
ーー月の呼吸 玖の型 降り月・連面ーー
ーー月の呼吸 拾の型 穿面斬・蘿月ーー
怒涛の勢いで月の呼吸を駆使し連撃を浴びせる黒死牟、だがその強力な斬撃は牙狼を怯ませる事は出来ても斬り裂く事は叶わず黒死牟は苦い顔付きをしながら呟く
「許せぬ!このような理不尽な存在など世にいてはならぬ」
牙狼を睨みながらそう言う黒死牟は更に勢いを増して連撃を浴びせ続け
牙狼にその怒りをぶつける
「グォォォ!」
黒死牟からの連撃を浴びながら突進して来る牙狼は黒死牟に詰め寄ると爪による刺突を繰り出そうとするが、黒死牟に直撃する瞬間に牙狼の挙動が突如止まる
「お前!さっきも言っただろうが!俺達はこのまま死ぬんだと!上弦の壱を殺す為に力を求めたんなら俺の邪魔をするな‼︎」
「カナヲが泣いている・・・もう一人にはしないと約束したんだ!
ずっとそばにいるって約束したんだ!だから!このまま死ぬわけにはいかない!」
「・・・・馬鹿が!まあせいぜい無駄に足掻いてみせろ!」
煌牙の内面で再び対話した煌牙、もう一人の煌牙は煌牙にそう言うと
黒い影のような形状になり煌牙の中に溶け込んでいく
「忘れるな!俺とお前は一心同体だということに」
もう一人の煌牙はそう言うと体の支配権が煌牙に戻り煌牙は意識を現実へと意識を戻す
(カナヲ・・ごめんな!それとありがとう!鈴の音が怒りの奔流に呑まれてた俺を気付かせてくれたよ)
煌牙は心の中でそう思うと静かに目を閉じて精神を統一させる
「グォォォォ」
咆哮をあげる牙狼は黒死牟に向けた爪をゆっくりと引き下げると牙狼は苦しむようにもがきだし、やがて金色の光を放ちながらその巨大な金色の狼は光となって消滅していった
「兄さん‼︎」
カナヲは煌牙の名を呼びながらその場に倒れ込む煌牙に駆け寄る
奇跡的にも心滅獣身牙狼を強制送還した煌牙だったが魂を侵食されつつあった煌牙はそれに抗った為、体力も精神力も底をつき意識を保つだけで精一杯だった
「カナヲ・・ごめん・・・兄ちゃん・・またお前を守れなかった」
「そんな事ないよ、兄さんは『何があったか知らぬが忌々しい鎧が消えて好都合!貴様だけは何としてもこの場で殺さねば!』・・上弦の壱」
カナヲの言葉を遮り黒死牟は煌牙に詰め寄ると煌牙の首を掴み宙吊りにする
「兄さん‼︎」
「ぐっ⁈・・黒・・・死牟」
「四ノ宮煌牙、今の貴様ではその牙が私の頸に届く事はない!だが!先程の呼吸!そして牙狼!あの方の命がなくとも生かす事など言語道断!
忌々しいその力は根絶やしにしなければならぬ」
黒死牟はそう言うと刀を構えて煌牙に斬りかかろうとする
「兄さん!駄目!」
咄嗟に煌牙を庇い黒死牟に斬りかかるカナヲだったがその攻撃は黒死牟に阻まれ切り払われるとカナヲは弾き飛ばされ日輪刀も折られてしまう
「案ずるな小娘、離れ離れにならぬよう貴様も葬ってやろう」
黒死牟はカナヲに向かいそう言うと
「届いたぞ・・お前の頸・・」
黒死牟に掴まれていた煌牙は渾身の力を振り絞り日輪刀を取り出すとその刃を黒死牟の頸に向かって振り抜く
「そんな弱々しい斬り込みなど私には通じん」
そう言いながら黒死牟は煌牙の斬撃を頸で受け止めると
ーー月の呼吸 伍の型 月魄災禍ーー
煌牙を掴んだまま伍の型を放つ黒死牟、まともに身動きが取れない煌牙は至近距離でその斬撃を浴び大量の血を流し出す
「ふむ、その黒い羽織りはたいしたものだ、これほどの斬撃を浴びて尚四肢を失わないとは」
至近距離で斬撃を受けた煌牙、霊獣の加護が施された魔法衣の防御力で四肢の切断は免れたもののその身に深い裂傷を負い瀕死になりつつあった
黒死牟は煌牙の魔法衣に感嘆するも、息も絶え絶えの煌牙を見て息の根を止めるべくカナヲの元に煌牙を投げ捨てる
「兄さん!兄さん‼︎嫌!死んじゃ嫌だよ!」
瀕死の煌牙に必死に呼びかけるカナヲだったが返事はおろか反応すらしない煌牙、既に意識は遠退きこのまま死を迎えるだけの煌牙は微かに聞こえるカナヲの声を聞きながら
(カナヲ・・・兄ちゃん弱くてごめんな・・・泣かせてごめんな・・・約束守れなくて・・ごめん)
心の中でカナヲへの想いを馳せる煌牙、薄れつつある意識を必死に繋ぎ止めようとするがその抵抗も虚しく遂に煌牙はその意識を手離した
「小娘、悲しむ必要はない!貴様もすぐに後を追わせてやろう」
動かなくなった煌牙を抱き寄せ涙を流すカナヲに黒死牟は非情な宣告をすると刀を構えカナヲを葬ろうとする
ーー月の呼吸 拾の型 穿面斬・蘿月ーー
黒死牟から放たれる非情なその斬撃がカナヲに迫りつつある中カナヲは煌牙を抱きしめながら黒死牟を睨み付ける
「恨むのなら貴様の兄を恨むのだな!」
そう言いながら黒死牟は更に追撃として型を放つ
ーー月の呼吸 拾陸の型 月虹・片割れ月ーー
「忌々しい黄金騎士!日の呼吸!万に一つなど起きぬよう肉片一つ残らず切り刻んでやろう」
ーー月の呼吸 拾肆の型 兇変・天満繊月ーー
黒死牟から放たれる型の連撃がカナヲを襲い斬撃の余波で地は抉れ辺り一帯に大きな斬撃痕が無数に残る
「ふむ力が入りすぎたか、だが!もう縁壱や暁大牙のような忌々しい存在が現れる事はない」
黒死牟はそう言いながら刀を鞘に収め用は済んだとばかりにその場を立ち去っていった
同時刻〜蝶屋敷では
「ムー!ムーー!ムーーー‼︎」
「禰豆子落ち着くんだ!一体どうしたんだ⁈」
「炭治郎〜禰豆子ちゃんどうしちゃったんだよ〜」
「分からない、急に起き出して何処かに行こうとしてるんだ」
「何処かって何処だよ」
「ムーーー‼︎ムーーー‼︎」
「禰豆子頼むから落ち着いてくれ!」
四ノ宮邸近辺〜
「富岡さん不死川さん急いで下さい」
「・・・・」
「胡蝶!焦りすぎだぁ!」
「煌牙さんとカナヲが戦っているのは上弦の壱ですよ!一刻も早く向かわないと!」
英霊の塔前〜
「煌牙ちゃん!カナヲちゃん!」
「煌牙達いないよ・・・ぁ!お父さん!お父さん煌牙達は〜?」
「・・・桜花」
「うわわわ‼︎何これ?・・・煌牙達と上弦の壱の戦闘痕・・だよね・・
これ普通じゃないよ・・煌牙は?煌牙達はどこ?」
英霊の森を一足先に抜けてきた桜花と朔弥の二人は煌牙達を探すも見当たらず先に見える泰三を見つけると泰三の元に駆け寄り辺りを見渡す
目の前に広がる光景に驚く桜花、地面が大きく抉れ広大な斬撃痕が夥しく広がる光景に桜花はそれが戦いの痕だと察すると焦り気味に煌牙達を探し出す
「桜花・・・煌牙達は・・」
泰三は桜花にそう言いながらある場所に視線を移す
桜花も泰三の視線を追ってその場所を見ると、凄まじいまでの斬撃痕と夥しい血が飛び散る場に折れた煌牙とカナヲの日輪刀、そして牙狼剣が突き刺さっていた
「煌牙達はどこ?何でいないの?ねえ‼︎何で‼︎」
「煌牙ちゃん・・カナヲちゃん・・そんな・・」
珍しく声を荒げる桜花は煌牙達を探そうと辺りを走り回り、朔弥は煌牙達が死んだのだと悟りその場に座り込んでしまう
「泰三さん、煌牙達は?」
遅れてやって来た花蓮と零余子は泰三達に合流すると煌牙達の安否を伺うが泰三は静かに首を振り煌牙達が死んだと伝える
「・・瑠花だけじゃなく煌牙達まで・・」
「煌牙〜‼︎カナヲちゃん‼︎どこにいるの〜?」
「桜花・・・煌牙達はもう」
「ヤダ!死んだとか言わないで‼︎煌牙達は!・・・煌牙は・・」
そう話す花蓮と桜花、煌牙達が死んだと認めたくない桜花は否定しようとするが次第に元気をなくし俯きだす
「・・・桜花・・認めたくないが、僕達は現実を受け入れて前に進むしかない、どんなに辛くても打ちのめされても、受け継いだ想いを繋いでいかなくてはならないんだよ」
「分かってる・・分かってるよ!そんな事!でも私はそんなに強くない!瑠花が!カナヲちゃんが!煌牙が死んですぐに受け入れる程割り切れないよ!」
落ち込む桜花を励まそうと泰三は声をかけるが桜花はそう簡単に割り切れないと言うと拳を強く握り締め悲しみを堪えながらその場所に膝をついた
「桜花さん!花蓮さん!」
「・・・四ノ宮は何処だ?」
「上弦の壱はどこにいやがる!煌牙達は!」
そう言いながらようやく到着した三人の柱、しのぶ・義勇・実弥は周りを警戒しながら桜花達に合流すると
「・・・アレを見て・・・」
花蓮が三人にそう言って視線を移すと三人もそれを追い視線を移す
「・・・・そんな・・・煌牙さん・・カナヲ・・・花蓮さん!煌牙さん達は!どこにいるんですか?」
「・・・四ノ宮」
「・・・・上弦の壱はどこにいやがる‼︎ぶっ殺してる‼︎」
「私達が駆けつけた時にはもう上弦の壱も煌牙達もいなかったわ」
「それじゃこの日輪刀と煌牙さんの牙狼剣は・・嘘・・ですよね?」
「・・・・・私達も認めたくないわ・・・」
「・・四ノ宮達は上弦の壱に負けた」
「富岡‼︎テメェ‼︎」
「辛くてもこれが現実だ!この状況を見れば分かるだろう!」
「っ!クソが‼︎」
しのぶ達がそう話していると朔弥と義勇の二人が日輪刀を鞘から引き抜き零余子を睨み付ける
「ひっ!」
柱二人に殺気を向けられた零余子は怯え悲鳴を上げるが朔弥と義勇の二人は零余子を睨みつけたまま喋りだす
「何でこの場に鬼がしかも下弦の肆がいやがるんだ‼︎ぶっ殺してる!」
朔弥は声を荒げて零余子に斬りかかろうとするが
「斬っては駄目よ!不死川君!」
「花蓮さん、あんた自分が何を言ってるのか分かってんのか‼︎コイツは鬼だ、十二鬼月だぞ‼︎あんたコイツを庇おうってのか‼︎」
「そうよ!零余子ちゃんはこれまでの罪を悔い改めやり直そうとしてるの、その機会を私達が奪うわけにはいかないわ」
「ふざけるなよ‼︎鬼は問答無用でぶっ殺す!俺達鬼殺隊の存在意義は何だ‼︎」
「文字通り鬼を殺す為よ、不死川君の言う通り人を喰らう鬼を斬るのは間違ってはいないわ、でもね?悔い改めている鬼まで問答無用で斬るのは早計だと思うの」
「だから何だ‼︎コイツは坊主の妹とは違う!人を喰らった悪鬼だ!殺されて当然だぁ‼︎」
「そうね・・不死川君の言い分はわかるわ・・なら私も一緒に斬りなさい!貴方の憎い鬼とその鬼を庇い隊律違反を犯した私を斬りなさい!」
「っ!アンタは俺に斬られたいのか⁈」
「不死川君が斬りたいのならそれも仕方ないわ」
「・・・クソが!鬼はともかくアンタは斬れねえ!」
零余子を庇う花蓮と斬り殺そうとする朔弥の意見がぶつかり合い、花蓮の下した決断に朔弥は不満をぶつけながらも刀を降ろし零余子を睨み付ける
「零余子ちゃんについては一度お館様に判断を『ハッ!十二鬼月を庇うとかアンタ頭ぶっ飛んでんな!元牙柱さんよぉ!』・・どなたかしら?」
零余子の処遇について花蓮は輝哉に判断を仰ごうと提案しようとするが
それを遮る声が響き渡り一同は周りを見渡すも誰もおらず警戒を強めると零余子の影から別の影が分離してその影が実体を現す
「よぉ!朔弥と桜花はともかくお前らと顔を合わせるのは初めてだな!
俺の名は斬吼狼、一応鬼だが煌牙と同じ魔戒騎士だ!」
そう言いながら皆の前に姿を現した斬吼狼、斬吼狼は零余子に視線を移すと哀れむような目線で零余子に話しかけた
「ざまぁねえな下弦の肆!無惨の野郎に用済みの役立たずだと捨て駒にされ命惜しさに鬼狩りに下るとはな!」
斬吼狼にそう言われ苦い顔つきになる零余子、文句の一つでも言いたいところだが斬吼狼の放つ圧倒的な威圧感に慄き口籠ってしまう零余子
そんな中失意の中にいたしのぶが顔を上げ斬吼狼に話しかけた
「あの!それはどういう意味なんでしょうか?」
「あ?・・まぁあれだ!お前らが下弦の伍を始末したから癇癪を起こした無惨が下弦の鬼を解体しようとしたんだよ!唯一生き残る条件が牙狼の称号を持つ煌牙の殺害!簡単に言えば処分する手間を牙狼に丸投げしたって訳だ!下弦如きに牙狼の始末は不可能だと知ってな!」
「随分と身勝手ですね鬼無辻は」
「まぁな!・・おい!朔弥!いつまでへたり込んでんだ‼︎さっさと俺についてこい!」
「・・・え?斬吼狼ちゃん?・・ゴメンね気付かなかった」
「落ち込みすぎだろ!まぁいい!早くしろ!時間がない!」
「あ・・うん・・・どこに行くの?」
「話は後だ!それから下弦の肆!お前も来い‼︎」
「・・・っ!私は・・・」
「お前このままじゃどのみち死ぬぞ?運良く鬼狩り共に認められても無惨がお前を許さねぇ!分かったらさっさと来い!」
「ぁ・・・ぁあ・・・」
しのぶの質問に答えた斬吼狼は時間がないと急ぎめで朔弥を連れて行こうとして零余子にも付いてくるよう呼びかける、急な呼びかけに戸惑う零余子だったが斬吼狼から脅しにも近い事を言われて震え出す
そんな中、斬吼狼の行動に納得のいかない朔弥は
「おい!ちょっと待て!テメェ何勝手に鬼を連れて行こうとしてんだ!」
「あ?コイツを連れて行くのにお前の許可がいるのか?保護者かよ!お前は!」
「テメェ!ぶっ殺してる‼︎」
「あーはいはい!悪かった!俺が悪かった!時間がないからもう行くな!」
激昂する朔弥の発言に挑発とも思える返しをする斬吼狼、案の定ブチ切れる朔弥に時間がない斬吼狼はまともに相手をせずに零余子と朔弥を抱え血鬼術で生み出した影の中に沈んで行くとその場から姿を消し去っていった
「あー!言い忘れてたけど俺も鬼殺隊に復帰するからな!それと下弦の肆は無惨に近かった鬼だ!お前らにとって有益な情報もあるだろ?無惨を討つ為に鬼を利用するって考えたらお前らも少しは納得出来る筈だ!」
斬吼狼は影の中でそう言うと、その影も次第に消え完全にその場からいなくなり重厚な威圧感から解放された一同はふと溜息を吐く
「あれが斬吼狼・・かつて大牙様と肩を並べた魔戒騎士!」
「・・・・・心強い味方が増えたわと言いたいけど失ったものもまた大きすぎるわ・・・」
「そうだね・・カナヲちゃん・・瑠花・・煌牙・・僕達にとってかけがえのない子供達・・そして牙狼もまた」
「ちょっと待ってください‼︎瑠花ちゃんって!瑠花ちゃんに何が⁈」
「・・瑠花はね・・上弦の弐に喰べられてしまったわ」
「・・上弦の弐?・・・姉さんを傷付けたあの鬼が瑠花ちゃんを・・それに煌牙さんもカナヲももういない・・・・」
「瑠花・・あの時の四ノ宮妹・・・」
「・・何だよそれ!瑠花まで鬼に殺されたってのか‼︎ふざけるなよ‼︎」
「不死川君・・瑠花の事妹のように可愛がってくれたものね・・・」
「上弦の弐は‼︎上弦の弐はどうなったんですか?」
「上弦の弐は私と桜花、朔弥さんの三人で頸を跳ねる直前まで追い詰めたのだけど空間を操る血鬼術で逃げられたわ」
「・・そう・・ですか・・上弦の弐を追い詰めた事はとても凄い事なんですがこの状況では喜べませんね・・私達が失ったものがあまりにも大きすぎて」
「そうね・・・桜花・・・桜花?」
「・・・・そっか・・・そゆこと・・・・じゃあ今もあの時も・・・こうしなきゃいけない訳が?・・・瑠花も?・・・」
「桜花‼︎しっかりしなさい‼︎」
「ふぁ⁈え?何お母さん?」
「桜花・・お願いだから貴方までいなくならないで‼︎お願いだから・・もう子供達がいなくなるのは・・耐えられない」
「花蓮」
「・・・・・お母さん!私は大丈夫だよ〜♪それに・・・うん♪今度斬吼狼に会ったらブッ飛ばす♪」
「「うん?」」
こうして激動の一夜は終わり、鬼殺隊本部に牙柱四ノ宮煌牙・栗花落カナヲ・四ノ宮瑠花の死亡報告が伝えられる
牙柱四ノ宮煌牙の死は鬼殺隊全体に衝撃を与え、後に緊急柱合会議が開かれる事になる
そして炭治郎達もまた任務に復帰する時が近付いていた
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