善逸、杏寿朗達が目覚めた頃炭治郎達は
(落雷のような音⁈後方車両から・・状況がわからない!善逸や煉獄さんは起きたのか?)
そう考えながら刀を振るう炭治郎、狭い車内で懸命に乗客を守る炭治郎はふと桜花を見つめる
(なんだ⁈あの戦い方は⁈この狭い車内であんな戦い方を考えつくなんて)
桜花を見た炭治郎はそう思いながら桜花の戦いに目を凝らしていた
「炭治郎君!余所見厳禁!」
そう言いながら炭治郎を叱咤する桜花、その桜花は座席の縁を足場にしながら飛び回り宙空から日輪刀を振るっていた
座席が並ぶ通路より座席の縁より上の空間が広い為それを利用して桜花は自分なりに戦いやすい戦法を見出していた
「はい‼︎」
桜花の叱咤により自分のやるべき事に集中し直すと再び刀を振るうべく構え直す炭治郎、そんな時車両が大きく揺れ炭治郎は体勢を崩して転んでしまう
(なんだ⁈今の揺れは!鬼の攻撃か?桜花さんは無事なのか?)
そう思いながら桜花の様子を見ようと顔を上げて見渡そうとすると
「竈門少年!この車両は全部で八両編成、後方三両は斬吼狼という者が、中二両は黄色い少年と君の妹が守っている!俺は前方三両を守る!
ここに来るまでに細かく斬り刻んで来たから直ぐには再生しない筈だ!
君と猪頭少年と四ノ宮妹は鬼の頸を探せ!」
車両が揺れ動く程の踏み込みで駆け抜けてきた杏寿朗が炭治郎の前に現れ、炭治郎にそう告げると再び踏み込み車両を駆け抜ける
(判断が早い!それに今の揺れは煉獄さんの踏み込みだったのか・・桜花さんは⁈桜花さんどこに)
そう考えながら炭治郎は姿の見当たらない桜花を探し始め、座席の影を覗き込む
「桜花さん⁈大丈夫ですか!」
そう心配しながら叫ぶ炭治郎、杏寿朗の踏み込みによる車両の揺れで縁から足を踏み外した桜花は頭から床に転げ落ち静かに横たわっていた
そんな桜花は何事もなかったように立ち上がり炭治郎に勢いよく掴みかかると
「炭治郎君は何も見ていない・・いい?何も見ていない」
「え?あ、でも」
「何も見てないの!炭治郎君は何も見ていない」
「わ、分かりました!桜花さんが足を踏み外して無様に転げ落ちた姿なんて俺は見ていません‼︎」
「桜花ちゃん必殺の型!飛んでけ忘却の彼方へ!」
自分の失態をなかった事にしようとする桜花の念押しに炭治郎は若干引き気味に了承するものの丁寧に説明口調で煽ってしまい桜花から渾身の張り手で八卦符を貼り付けられ桜花の術によって記憶の一部を改竄されてしまう炭治郎
「桜花さん!煉獄さんの指示通り俺達は鬼の対処に行きましょう!」
杏寿朗の話を桜花と共に聞いたと改竄された炭治郎は桜花にそう告げると顔を押さながら疼く痛みを堪えていた
「さっきの揺れで顔をぶつけたのか?顔が痛い」
「そ、そうだよ!煉獄さんの踏み込み凄かったからね、きっとその時に顔をぶつけたんだよ!絶対にそうだよ!」
炭治郎の呟きに慌てて誤魔化す桜花はその場から逃げるように走り出すと
「猪っち〜‼︎聞こえてる〜?猪っち〜‼︎」
大声で伊之助を呼ぶ桜花、そんな桜花の呼びかけに伊之助は
「うるせぇ!聞こえてんだよ!あと俺は伊之助だ!猪っちなんて弱そうな呼び方すんじゃねぇ!」
そう叫びながら返事をする伊之助、その声は車両の真上から聞こえ炭治郎は伊之助が上にいると判断した
「ギョロギョロ目ん玉に指図された!でもなんか・・なんか・・なんか凄かった!腹立つぅ‼︎」
伊之助は杏寿朗から指示を受けて先頭車両方向へと走っているが杏寿朗から感じる強者の圧に凄みを感じると共にその強さへの憤りも感じ叫び出す
「伊之助‼︎乗客の皆んなは煉獄さん達に任せて『わかってるわぁ!そして俺は見つけてるからな!既にな!全力の漆の型で!この主の急所!』・・・そうか!やっぱり前方だな?」
「そうだ前だ!とにかく前の方が気色悪いぜ!」
そう会話する炭治郎と伊之助、その会話に桜花も加わると
「私も前方車両、特に機関車両の方から濃い気配を感じるよ!あの車両は無限列車の一番重要な車両、鬼さんの急所があるのはやっぱり」
「機関車両?石炭が積まれてる車両ですね」
「そうだよ」
「分かりました!行きましょう!前へ」
炭治郎は桜花にそう言うと桜花と共に機関車両へと駆け出していく
(総悟さんや煉獄さんが乗客達を守ってくれる、伊之助や桜花さんは敵の急所を見つけてる、善逸や禰豆子も戦ってる、俺も役に立たなければ皆を守らなければ)
そう意気込む炭治郎、そんな炭治郎の頭にそっと手を乗せる桜花
「桜花さん?」
桜花の意図がわからず思わずそう言うが桜花は炭治郎に何も言わずに優しく微笑むと炭治郎より先に車両の屋根へと登り機関部へと走り出す
「オォリャアア」
一足先に機関車両へと辿り着いた伊之助はそう叫びながら機関室への扉を屋根ごと斬り飛ばすと一目散に飛び降り機関室へと侵入する
「怪しいぜ怪しいぜ!特にこの辺り」
伊之助の感覚が鬼の急所の場所を見つけると、その場に桜花も駆けつけてくる
「うん、今までで一番濃い気配がこの辺り特に床の下から感じるよ、猪っち!』
そう告げる桜花、突如侵入してきた二人に運転していた運転手は驚き二人に怒鳴り出す
「何だ⁈お前達は!でっ出ていけ!・・・いや、貴方はもしや⁈桜花お嬢様では・・・た、大変失礼しました!お嬢様がこのような場に来るとは夢にも思わず」
運転手は途中で桜花がいた事に気付くと態度を改めて桜花に謝罪を申し入れると桜花は自分の事より鬼の討伐が優先とばかりに伊之助と共に急所の場所である床を斬りつけようと日輪刀を振りかざす
「運転手さん・・この列車に乗る大勢の人達の命が失われるかもしれないの・・邪魔だけはしないでね」
桜花は運転手に殺気を込めながらそう告げると殺気を当てられた運転手はまともに喋る事も出来ない程怯え小刻みに震える体を摩りながら首を縦に振ると邪魔にならないよう隅に避難しようとする
その隙に伊之助は桜花の指摘があった床に亀裂を入れる為に日輪刀で斬り掛かろうとすると機関室から魘夢の肉塊が溢れ出し無数の腕を生やすと桜花と伊之助目掛けて掴み掛かって来る
それを機敏な動きで躱しながら斬り刻んでいく桜花、伊之助も斬り刻んではいるが手数の多さに徐々に押され始め終いには頭部を掴まれてしまう
「しまった」
焦りながらそう告げる伊之助、桜花は伊之助を助けようと動き出すがその直後、頭上から炭治郎が飛び降りてくる
ーー水の呼吸 陸の型 ねじれ渦ーー
炭治郎は陸の型を使い伊之助に絡み付く腕を纏めて斬り裂きながら着地すると床の下から濃い鬼の匂いを嗅ぎとり桜花と伊之助に振り向きながら
「伊之助!桜花さん!真下だ!この真下が鬼の頸だ!」
そう告げる炭治郎、そんな炭治郎に伊之助と桜花は
「そんな事既に知ってるわぁ!」
「キモい肉の塊が邪魔してるんだよ!三人揃ったし一気に決めて終わらせるよ」
そう炭治郎に言うと伊之助が日輪刀を振り上げ
ーー獣の呼吸 弐の型 斬り裂きーー
二対の日輪刀を交差させながら振り下ろす伊之助、その斬撃が床に走ると大きな亀裂と共に床の下から魘夢の急所、頸の骨が現れ炭治郎はすかさず飛び上がると
ーー水の呼吸 捌の型 滝壺ーー
水の呼吸の中でも強力な威力を誇る捌の型による一撃で頸の骨を断ち斬ろうとする炭治郎だったがその一撃は頸を守ろうとする魘夢の肉塊によって阻まれ断ち斬るには至らなかった
ーー術式展開 八卦・不動の陣ーー
炭治郎の攻撃が塞がれた直後、桜花は八卦符を周囲に展開、術式を構築すると機関室一帯の肉塊が時が止まってように動かなくなってしまう
「桜花さん何を⁈」
「さすが俺の子分だ!」
不可解な現象に驚く炭治郎と上機嫌な伊之助、桜花は二人にドヤ顔になりながら
「言ったでしょ?一気に決めて終わらせるって!邪魔するなら動けなくすれば後は簡単♪さっさ〜♪炭治郎君〜♪君の刃で終わらせるよ〜♪」
そう告げる桜花、炭治郎は機関室に乗り込む前に桜花が自分に見せた無言の微笑みを思い出しその時の意図を理解すると
(桜花さんありがとうございます!父さん守ってくれ・・この一撃で骨を断つ!)
炭治郎は心の中でそう呟き、呼吸を水の呼吸からヒノカミ神楽の呼吸に切り替えると
ーーヒノカミ神楽 碧羅の天ーー
体を回転させながら下方向に円を描くような斬撃を繰り出す炭治郎、燃え盛る炎を纏うような強力なその斬撃は列車ごと魘夢の骨を断ち斬ると
列車から魘夢の断末魔の咆哮が轟き始める
「ぎぃやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
断末魔をあげる魘夢だったが列車全体が魘夢の肉体だったのが災いして桜花の術式の効力が列車全体にまで浸透し、のたうちまわる事も出来ず
列車は動力である車両を失った事で次第に速度を緩めやがて完全に動かなくなってしまう
「ガハハハ!主に勝ったぞぉぉ!』
「断末魔が聴こえた時は列車が暴れ回るかと覚悟してましたけど何も起きませんでしたね」
「あははは〜、そこまで考えてなかったけど結果オーライ♪列車が脱線とかしたら後が大変なんだよ〜、まあ処理をするのは私じゃないけど」
「乗客達が怪我したら大変ですからね」
「列車は分断されたけどね〜」
「すすす、すいません‼︎まさか列車まで斬れるとは思ってなくて!」
「凄い一撃だったね〜♪」
「はい・・桜花さんありがとうございました!」
「ん〜?何の事〜?」
「鬼の頸を斬る役目を俺に譲ってくれた事です、あの時桜花さんは俺の気持ちを見抜いて『さあ?どうだろうね〜♪ほら♪煉獄さん達も降りてくる筈だし合流するよ〜♪行くよ炭治郎君、猪っち〜♪」
「あ、はい!桜花さんありがとうございました」
「子分が命令すんじゃねぇ!それと俺は伊之助だ!猪っちって呼ぶな」
桜花達はそう会話すると車両の外へと進み杏寿朗達と合流しようと歩き出す
そんな桜花達の後ろ姿を見つめる魘夢、既に肉体の崩壊が始まり再生出来ない魘夢は
(体が崩壊する再生出来ない!負けたのか?死ぬのか?俺が?馬鹿な・・・俺は全力を出せていない!人間を一人も喰えなかった、汽車と一体化し一度に大量の人間を喰う計画が台無しだ!こんな姿になってまで!これだけ時間と手間をかけたのに!・・アイツだ!アイツのせいだ!二百人の人質をとっていたようなものなのにそれでも押された、抑えられた、これが柱の力!アイツ、アイツも速かった術を解ききれなかったくせに!しかもあの娘鬼じゃないか何なんだ⁈鬼狩りに与する鬼なんて何で無惨様に殺されないんだ・・くそぉ!くそぉ!そもそもあの奇妙な術を使う娘が現れてからケチがつき始めた、あのガキもそうだ!俺の術を破られた、アイツらが悪い!隣の猪もだ!俺の急所を当てやがった!殺してやりたい殺してやりたい!特にあの娘!妙な術で俺の動きを抑えやがった!あれがなければあんなガキなんかに斬られる事はなかったんだ!そして無惨様を裏切ったあの鬼!あれは何なんだ?何で斬られた箇所が再生しなかった⁈あの柱と同等!いやそれ以上にヤバかった!あの鬼を相手にする事が間違っていた!おかげでかなりの戦力を削がれた!負けるのか、死ぬのかぁ・・ああぁぁぁ悪夢だぁぁ悪夢だぁぁぁ!鬼狩りに殺されるのはいつも底辺の鬼達だ!上弦、ここ百年顔ぶれの変わらない鬼達、山ほど葬っている鬼狩りの柱さえも葬っている!上弦の壱は俺達最大の天敵黄金騎士牙狼さえも葬っている!異次元の強さなのか、あれだけ血を分け与えられても上弦には及ばなかった、ああぁぁぁやり直したいやり直したい!なんという惨めな・・悪夢だ・・)
何が悪かったのか?何がいけなかったのか?最早止める事も出来ない身体の崩壊に魘夢は敗因を思い出しながら遥かに格上の上弦への羨望を抱き、やがて完全に崩れ去りその生涯に幕を降した
「うむ!竈門少年も猪頭少年もよくやった!どうやら目立った負傷はないようだな!感心感心!」
「炭治郎ぉぉぉぉ!伊之助ぇぇぇぇ!・・ぎぃやあぁぁぁぁぁぁ‼︎列車が!列車が斬れてるよぉぉぉ!鬼⁈鬼が潜んでるの⁈もう絶対鬼の仕業だよねぇ!もう嫌!早く帰りたい‼︎」
「むー♪」
「この金髪の小僧ホントに鬼狩りか?さっきからピーピーうるせぇ!」
停止した車両から降りてきた杏寿朗達はそう言いながら炭治郎達と合流すると鎹鴉を呼び鬼殺隊本部へと報告を入れようとする
「あ!煉獄さん‼︎列車の処理や乗客の対応は私達の方でやるから」
「なるほど!四ノ宮はこの列車を運営している元締だったな!頼む!』
鎹鴉に報告事項を伝える杏寿朗に桜花は事後処理は自分達の方で受け持つ事を伝えると、杏寿朗も隠の範疇を超えるであろう事後処理だと理解していたので桜花の提案に賛成し任務達成の報告だけに留める
「皆の奮闘のおかげで下弦の壱の討伐と乗客達の命を守る事が出来た!
実にめでたい事だ!」
報告を終えた杏寿朗は任務終了の締めとして炭治郎達にそう言うと
「総悟‼︎」
「この場面で来るかよ」
斬吼狼の首にかけられてる魔導輪アルヴァは何かを察知して斬吼狼の名を呼ぶと斬吼狼も察知して嫌気を刺しながら呟く
それと同時に杏寿朗達から少し離れた場所に何かが落ち轟音と共に土煙が舞い上がる
突然の出来事に斬吼狼を除く一同は土煙の中に潜む何かを凝視すると放たれた気配が鬼だと察知し、そのあまりにも重厚な気配に今まで葬ってきた鬼とは格が違うと杏寿朗、桜花柱両名は即座に警戒対戦に入る
やがて土煙がおさまるとその場から杏寿朗達を見据える鬼の姿が見えてくる、細身だが鍛え抜かれた筋肉質な体、紅梅色の頭髪に藍色の文様が全身に入ったその鬼は柱を前にして不敵な笑みを浮かべ余裕の表情をしていた
「上弦の・・参⁈」
そう呟く炭治郎、その鬼の眼に施された十二鬼月の証である刻印、右眼には上弦左眼には参と施された鬼、上弦の参“猗窩座“は杏寿朗達を値踏みする様に見渡すと一気に善逸へと踏み出し拳による一撃を振り下ろす
ーー炎の呼吸 弐の型 昇り炎天ーー
ーー牙の呼吸 漆の型 荒狗鷲ーー
猗窩座を警戒していた杏寿朗と桜花は猗窩座からの攻撃に反応すると両者とも下方からの斬り上げによる斬撃で猗窩座を迎撃する
杏寿朗から繰り出された斬撃は猗窩座の拳から腕を縦に斬り裂き桜花の斬撃は猗窩座の顎を捉え顔面を縦に斬り裂く
猗窩座は咄嗟に後退し距離を取ると負傷した傷を即座に完治させ腕から流れる血を舐めながら
「いい刀だ」
そう言いながら杏寿朗と桜花を見つめる
(再生が早い・・・この圧迫感と凄まじい鬼気、これが上弦)
(上弦の参・・凄く重い気配だけど上弦の弐のような得体の知れない不気味さは感じない・・煉獄さん、斬吼狼と連携すれば勝てる)
「俺は女には手を出さないんだ、邪魔だから下がれ」
猗窩座と対峙する二人はそう考えているとふいに猗窩座から桜花は邪魔だと言われ桜花は思わずしかめ面になると猗窩座に反抗し始める
「何で私が鬼さんの言う事聞かないといけないの?」
「隣の奴は柱だろう?俺はそいつと話がしたい」
反論する桜花に猗窩座もそう答えると杏寿朗が話し出す
「君と俺が何の話をする?初対面だが俺は既に君の事が嫌いだ」
「そうか、俺も弱い人間が大嫌いだ!弱者を見ると虫唾が走る」
話す事などないと言わんばかりの杏寿朗にそう答える猗窩座、両者の間に流れる重苦しい空気の中、斬吼狼は杏寿朗達とは違う方向に振り返ると魔戒剣を抜刀し剣先を突き出す
「こうして貴様とあい見えるのはいつ以来か?」
「さあな、そんな事覚えてねえよ」
「斬吼狼・・何故あの方を裏切った」
「裏切るもなにも最初からお前達の仲間じゃねえからな、それにお前に言われる筋合いはねぇ!裏切り者の巌勝さんよ」
「人間とは実に脆く脆弱な生物だ、あの方は私に無限の命と人間など足元にも及ばん肉体を与えて下さった、あの方に仕えるのは当然の事」
「はっ!四百年前と同じ事言ってんじゃねぇ!」
杏寿朗と猗窩座が対面する反対側では魘夢を通して状況を見ていた無惨から斬吼狼の処分を任された黒死牟が現れ斬吼狼と話をすると腰に下げた鞘から刀を引き抜き戦闘態勢に入りだす
炭治郎達は上弦達に挟み撃ちされた形になり二人の上弦から放たれるあまりにも重苦しい気配に体が震えその場に膝をつく
「はぁ・・はぁ・・あれが・・上弦の壱!煌牙さん達を殺した鬼」
「あっ俺死んだわ・・・」
「ヤベェ!アイツは一番ヤベェ奴だ!俺じゃ勝てねえって事が嫌になるほどわかる」
そんな様を見ていた黒死牟、黄色い頭の善逸や猪の皮を被った伊之助は十分目立つがそんな事などどうでもいいと思う程の衝撃が黒死牟に走る
「小僧・・その耳飾りはもしや・・・忌々しい!何があろうと貴様だけは生かしておけん!」
炭治郎に目を向けた黒死牟は炭治郎の耳につけた耳飾りを見て激昂し絶対に生かしてはならないと刀を握り締めると炭治郎に殺意を飛ばす
それを感じてか禰豆子は炭治郎を庇う為に炭治郎の前に立ち塞がり黒死牟を威嚇する
「鬼でありながら鬼狩りに与するなど言語道断!あの方への侮辱に値する!貴様も葬ってやろう」
黒死牟はそう言うと禰豆子から始末しようとして刀を振りかざす
ーー呀の呼吸 参の型 刹那の呀ーー
禰豆子を守ろうと咄嗟に動き出した斬吼狼は神速の踏み込みで敵を斬る参の型を瞬時に駆使して黒死牟の刀を食い止める
「俺がいる前でそう易々と殺せると思うなよ」
そう言いながら斬吼狼はその場で回転し勢いをつけた斬撃で黒死牟の刀を打ち払う
「上弦の壱・・煌牙とカナヲちゃんの仇・・・」
そう言いながら斬吼狼と黒死牟の間合いに入り込んできた桜花は事前に仕込んでいた術式を構築し八卦符を数枚投げ飛ばす
ーー術式展開 牙の呼吸 陸の型改 龍穿牙・焔ーー
術式を展開した桜花は陸の型を繰り出すと八卦符が激しく燃え上がり巨大な火炎竜巻となって黒死牟を飲み込む
「牙の呼吸の剣技に炎を混ぜるか・・そうか貴様が上弦の弐を退けた鬼狩りか」
「斬吼狼!私も一緒にやるから!」
陸の型に飲み込まれた黒死牟の着物は竜巻と火炎により所々がボロボロになっていたが肉体は既に再生を始め何事もなかったようにそう言うと
桜花は黒死牟と話す気はないのか無視して斬吼狼と共に戦うと告げる
「あれが上弦の壱・・四ノ宮を負かした十二鬼月最強の鬼」
「四ノ宮?・・ああ、牙柱の名がそんな名だったか、ソイツとも戦ってみたかった」
「君は戦う事が好きみたいだな」
「お前も好きだろう?」
「好き嫌いで戦っているわけではない!弱き者を守る為に俺は戦っている!」
「弱者を守ってどうする?強者は弱者を踏みにじって更に上へ目指すべきだ!」
「俺と君とでは物事の価値基準が違うようだ」
「そうか、では素晴らしい提案をしよう!お前も鬼にならないか?」
斬吼狼と桜花の二人に黒死牟を引き受けてもらうと杏寿朗は猗窩座と対峙し猗窩座から鬼への勧誘を受ける、杏寿朗はそんな勧誘に表情を変える事なく即答で
「ならない」
そう答えるが猗窩座は更に勧誘を続ける
「見れば解るお前の強さ、その闘気練り上げられている、至高の領域に近い」
「俺は炎柱煉獄杏寿朗だ」
「俺は猗窩座、杏寿朗何故お前が至高の領域に踏み入れないのか教えてやろう!人間だからだ!死ぬからだ!鬼になろう杏寿朗そうすれば百年でも二百年でも鍛錬し続けられる強くなれる」
そう自慢げに話す猗窩座、炭治郎はそんな話を聞きながら
(総悟さんと桜花さんが戦っている上弦の壱の次に鬼無辻の匂いが強い!俺も加勢しなければ)
そう考える炭治郎、煌牙との特訓の成果と魘夢との戦いで体の負担が少なかった炭治郎はヒノカミ神楽の呼吸を使っても以前のように動かなくなる程の負担がなく杏寿朗の助けになろうとしていた
「老いる事も死ぬ事も人間という儚い生き物の美しさだ、老いるからこそ死ぬからこそ堪らなく愛おしく尊いのだ、強さというものは肉体に対してのみ使う言葉ではない、この少年達は決して弱くはない!それぞれの心に確固たる信念がある!どれだけ打ちのめされようとも決して折れる事はない心の強さがある!彼らを弱者とは言わせない!何度でも言おう!君と俺とでは価値基準が違う、俺は如何なる理由があろうとも鬼にならない」
そう力強く話す杏寿朗、炭治郎達はその言葉にグッと顔を引き締め猗窩座を睨む
「そうか」
猗窩座は杏寿朗の完全否定の言葉を聞きそう言うと自らの血鬼術を発動する
ーー術式展開 破壊殺・羅針ーー
足元に雪の結晶を模した力場を展開しながら手を突き出し徒手空拳で戦う構えを見せる猗窩座
「鬼にならないなら殺す」
そう言うや猗窩座は勢いよく杏寿朗に飛びかかる
ーー炎の呼吸 壱の型 不知火ーー
猗窩座の襲撃に合わせ杏寿朗も壱の型による踏み入みで突進、炎柱として戦ってきた杏寿朗の鍛え抜かれた体から踏み出す突進の速さを目で追う事が出来ない炭治郎達、杏寿朗と猗窩座二人の強者がぶつかり合う光景を眺めるしか出来ないでいた
「今まで殺してきた柱に炎はいなかったな、そして俺の誘いに頷く者もいなかった、何故だろうな?同じく武の道を極める者として理解しかねる、選ばれた者しか鬼にはなれないというのに!素晴らしき才能を持つ者が醜く衰えていく、俺は辛い!耐えられない!死んでくれ杏寿朗、若く強いまま」
ーー破壊殺・空式ーー
宙に飛んだ猗窩座はそう杏寿朗に言うと空中から拳を打ち出し拳圧を杏寿朗にぶつける
ーー炎の呼吸 肆の型 盛炎のうねりーー
それを迎撃する杏寿朗は自身を中心に渦巻く炎を打ち出すように周囲を薙ぎ払い猗窩座の攻撃を相殺する
(虚空を拳で打つと攻撃がこちらまで来る、一瞬にも満たない速度、このまま距離を取って戦われると頸を斬るのは厄介だ・・ならば近付くまで‼︎)
そう考える杏寿朗は着地体勢に入る猗窩座に飛び込み肉薄すると両者の激しい攻防が始まる
「この素晴らしい反応速度、この素晴らしい剣技も失われていくのだ!杏寿朗‼︎悲しくはないのか‼︎」
「誰もがそうだ!人間なら!当然の事だ‼︎」
凄まじい斬撃と殴打の応酬を繰り広げる杏寿朗と猗窩座、両者とも一歩も引かぬ戦いに炭治郎は気圧されるが少しでも力になれればとその重い足を動かし加勢しようとする
「動くな‼︎君とこの鬼とでは実力差がありすぎる!待機命令‼︎」
そう大声で炭治郎に告げる杏寿朗、その怒声に炭治郎は体を強張らせ立ち止まると
「弱者に構うな杏寿朗!全力を出せ!俺に集中しろ!」
炭治郎達を気にしながら戦う杏寿朗に不満な猗窩座はそう言いながら渾身の一撃を杏寿朗に放つ
ーー炎の呼吸 伍の型 炎虎ーー
ーー破壊殺・乱式ーー
まるで燃え盛る虎が咬みつくかのように斬りつける杏寿朗に対し重い一撃を幾重にも重ねるように乱れ打つ猗窩座、剣技と拳技両者の技がぶつかり合う衝撃で周囲に土煙が舞い上がる
「わっとと!危な!今の危なかったよ〜!」
「今のを避けるか、なんとも捉えづらい娘だ!小賢しい」
「はっ!自慢の血鬼術も当たらなきゃ意味ねぇな!」
杏寿朗と猗窩座の激戦が繰り広げられる中、桜花と斬吼狼も黒死牟から放たれる斬撃の嵐を掻い潜り激しい戦いを繰り広げていた
「牙の呼吸を使う者は皆そうだった、鬼狩りの中でも特に小賢しく鬱陶しい存在だった・・だが私の前に立つ者は全て葬ってきた、先代牙柱こそ逃したが黄金騎士である四ノ宮煌牙は私の手で殺した」
「・・・・・へぇ」
ーー牙の呼吸 伍の型 猛虎爪襲牙ーー
過去に渡り牙の呼吸の使い手とも戦った事のある黒死牟は過去を振り返りながらそう話し、煌牙を殺した事も話すと桜花は殺意を込めた冷たい目線で黒死牟を睨み付け伍の型を繰り出す
ーー月の呼吸 弐の型 珠華の弄月ーー
殺意を込めた桜花の初動から頸を狙っていると察した黒死牟は弐の型による斬撃で桜花の斬撃を迎撃する
猛る虎が爪で引き裂くかのような鋭い風を纏った桜花の左右二連撃と斬り上げるように正面に三連撃を放つ黒死牟、鋭い風が爪となり黒死牟の放つ血鬼術の月輪を斬り裂きながら互いの剣閃がぶつかり合い激しく火花を散らす
「斬吼狼‼︎」
「ああ」
ーー呀の呼吸 壱の型 絶空の呀ーー
互いの型がぶつかり合う中、桜花は斬吼狼の名を呼ぶと斬吼狼は既に型を放つ構えに入っており返事をするとその場から跳躍、体に回転をつけ斬撃の威力を増した横薙ぎで黒死牟の頸を狙う
ーー月の呼吸 伍の型 月魄災禍ーー
斬吼狼を迎撃した際に桜花に隙を与えたくない黒死牟は刀を振るう事なく無数の斬撃を生み出す伍の型を放つ事で双方を迎撃しようと型を繰り出す
ーー術式展開 八卦・地爆陣ーー
肌に突き刺さるような感覚に桜花は身の危険を感じ咄嗟の判断で術式を展開、足元に構築された陣から後方に跳躍すると術を発動させる
術の発動で構築された陣が爆発するとその爆風により桜花はより後方に飛ばされ黒死牟の斬撃から完全に逃れる
「桜花!やり過ぎだ!」
桜花の術に巻き込まれそうになった斬吼狼は影を纏うとその影に自らの体を沈め爆発から難を逃れる
「朔弥から術の構築式を学んだのは良いが使い方が大胆だな!」
「なんかヤバそうだったからね、咄嗟に発動した」
「俺も巻き添えくらいそうだったがな」
「うん、それはゴメン」
そう話す二人、その爆発の直撃を受けた黒死牟は
「細工を仕掛けるのは構わぬが私の頸を斬り落とさなければ意味はないぞ」
そう言いながら爆炎の中から現れた黒死牟、爆発の衝撃で上半身の着物は吹き飛び黒死牟自身も所々焼け焦げていたが瞬時に再生が始まり何事もなかったように佇む
「桜花、攻撃を躱し続けられるか?」
「それだけに集中すればイケる」
「上出来だ!」
斬吼狼と桜花はそれだけ話すと桜花は素早い身のこなしで動き回り黒死牟を撹乱する
「黒死牟!いや巌勝‼︎四百年前の借りを返させてもらう!」
そう言いながら斬吼狼は魔戒剣を頭上に掲げ召喚陣を描くと九字護身法の構えをとり鎧を召喚、瞬時に斬吼狼へと装着される
「幻影騎士“吼狼“」
斬吼狼は称号の名を言うと踏み込み黒死牟へと突進していく
紺色の狼の鎧を纏う斬吼狼、日本刀に似た魔戒剣“幻影剣“を逆手に持ち替えると鎧の耳が変形し爬虫類を彷彿させるバイザーを展開、背中から巨大な翼を広げ吼狼が飛翔する
ーー呀の呼吸 肆の型 絶咬・散斬雨ーー
飛翔した吼狼は上空から黒死牟に向かって斬撃を無数に飛ばし雨のように降らせる
「小賢しい真似をする」
黒死牟はそう言いながら刀を振るい吼狼の攻撃を迎撃する
ーー月の呼吸 陸の型 常世孤月・無間ーー
月輪の刃を生み出しながら縦横無尽の斬撃を上空に放つ黒死牟、吼狼の斬撃と黒死牟の斬撃がぶつかり合い相殺される
桜花は黒死牟が吼狼に気が向いている隙に遠距離から魔導銃を六連射して攻撃を仕掛けると、吼狼の迎撃で対処が遅れた黒死牟は右腕と脇腹に炸裂弾を撃ち込まれてしまう
その炸裂弾が破裂すると黒死牟の右腕と脇腹が破裂し肉体が欠損するほどの傷を負うと
「このような傷幾らでも治るが・・小賢しい娘だ!貴様から先に葬ってやろう」
そう言いながら憤怒の表情を浮かべる黒死牟、傷を再生させると七支刀のような長尺の刀に変化させ桜花に向かって型を放つ
ーー月の呼吸 捌の型 月龍輪尾ーー
その長大な刀から繰り出す巨大な斬撃を桜花に向ける黒死牟、斬撃が迫り来る桜花は
「わーー‼︎」
緊張感の欠片もないような叫び声を上げながら上体を反らし紙一重で躱す桜花、本人は必死なのだが余裕で躱せますと勘違いした黒死牟は険しい表情で桜花を斬り刻む事にムキになり追撃として更に型を繰り出す
ーー月の呼吸 漆の型 厄鏡・月映えーー
ーー月の呼吸 玖の型 降り月・連面ーー
地を這う斬撃を飛ばした黒死牟、桜花が躱す事を想定して更に斬撃を上から降らせ退路を塞ぐ
「わーー!」
またもや緊張感の欠片もない叫び声を上げながら桜花は人並外れた体の柔らかさを駆使して斬撃の僅かな合間を軟体生物のようなクネクネとした動きで掻い潜り難を逃れる
「貴様!先程から巫山戯ているのか‼︎」
そう怒号をあげる黒死牟、桜花本人は攻撃密度の高い黒死牟の斬撃を必死に避けた結果珍妙な動きになっただけなのだが、黒死牟には桜花が余裕で避けれる事からわざと巫山戯て躱しているのだと勘違いする
「はっ!テメェの前に立った奴は全て葬ってきたんじゃないのか?未だに擦り傷一つ負わせてねえな!十二鬼月最強さんよ」
上空からそう言って黒死牟を挑発する吼狼、黒死牟程の猛者ならば見え透いた挑発だと意にも返さないのだが桜花の振る舞いに冷静さを無くし始めた黒死牟には効果覿面らしく血管が浮かび上がる程の憤怒の形相で吼狼を睨みつけると
ーー月の呼吸 拾陸の型 月虹・片割れ月ーー
上空から地面に向けて三日月のような斬撃を複数振り下ろす黒死牟、吼狼は即座に回避しながら黒死牟に向かって急転直下、真上から黒死牟に幻影剣を突き刺そうとするが黒死牟はそれを後退して躱す
吼狼はそのまま地面へと落下するが地に影を作り、その影に潜り込んで姿を消すとその直後、黒死牟の背後に影を作りそこから幻影剣を黒死牟の胸部を貫通するように突き立てる
「貴様‼︎」
「はっ!冷静さを失って対処を誤ったな!」
怒号をあげる黒死牟にそう言いながら斬吼狼は吼狼の鎧を解除する、飛翔形態に変化した事で制限時間が20秒減少し制限時間が迫っていた事から奇襲による戦法で黒死牟との戦いに終止符を打とうとしていた
ーー呀の呼吸 捌の型 天狼滅牙ーー
ーー月の呼吸 拾肆の型 兇変・天満繊月ーー
鋭く斬り裂く風を纏い舞うような運びで高速の八連撃を繰り出す型を幻影剣を突き立てたまま繰り出す斬吼狼、流石に不味いと判断した黒死牟は突き刺さる幻影剣に身を斬られようともお構いなくその場で反転し拾肆の型による反撃を試みる
「チッ!流石になり振り構ってられないか」
「貴様が相手では私も手を焼く、致し方なし」
胴体の一部と左腕を斬り落とされながら黒死牟は長大な刀から繰り出す幾重にも連なる巨大な斬撃を斬吼狼の至近距離から放つ
ーー呀の呼吸 拾の型 星薙ーー
至近距離から放たれる斬撃を回避不可能と判断した斬吼狼は捌の型の勢いのまま拾の型による斬撃で黒死牟の斬撃を迎撃する
斬吼狼の放った拾の型、牙の呼吸拾の型の上位互換ともいえるその型は夜空に輝く星々を薙ぎ払うかのような巨大かつ無数の斬撃を瞬時に放ち
周囲一帯を微塵に斬り裂く
双方似たような斬撃がぶつかり合い衝撃で周囲の大気が轟音と共に揺れ動き土煙を巻き上げる
上弦の鬼と戦う斬吼狼と桜花、杏寿朗の戦いに手も足も出せず見守る事しか出来ないでいた炭治郎達は双方から巻き起こる激しい衝撃に不安を隠せず悲壮な表情で戦いの行方を見つめていた
「腕を上げたな斬吼狼、昔のお前ならここで終わっていた」
「そいつはどうも、お前に褒められても嬉しくないけどな」
土煙がなくなり両者の姿が見えると双方共に全身から夥しい鮮血を流しながら睨みあっていた
「斬吼狼、お前程の鬼を失うのは惜しい!再びあの方に忠誠を誓え私も口添えをしてやろう」
「あ?何言ってんだお前、魔戒騎士舐めんな!」
「鬼同士の戦いなど不毛だと思わぬか?」
「俺は鬼だが鬼としてじゃなく守りし者として戦っている!それに魔戒剣ならお前を殺せる」
「そうか・・だがお前には私の頸は斬れん」
「俺だけじゃねよ!俺と牙狼がお前を斬るんだよ!」
「おかしな事を言う、牙狼である四ノ宮煌牙は私が葬った」
「はっ!そうかい!そいつは良かったな」
そう話す斬吼狼と黒死牟、その会話に桜花は
「斬吼狼!どうゆう事?」
「桜花・・黒死牟は俺に任せてお前は炎柱の援護に行ってやれ、当代のお館様からアレを預かってるんだろ?」
「・・・・アレが必要な時が来るんだね!分かった‼︎」
斬吼狼は桜花にそう話すと桜花は斬吼狼の意図を察して杏寿朗の元に走り出す
「私が易々と見逃すと思うか小娘」
斬吼狼の幻影剣による斬撃を浴びていた黒死牟は未だ癒えぬ傷を負ったまま桜花にそう言うと
ーー月の呼吸 壱の型 闇月・宵の宮ーー
桜花を見逃す気はない黒死牟は桜花の背後に迫りながら刀を横薙ぎに一閃する
一方桜花は黒死牟が大人しく見逃す筈がないと考え走り出す直前に術式を構築し、型を放てる準備をしていた
ーー術式展開 八卦・鏡花水月の陣ーー
ーー術式展開 牙の呼吸 拾の型改 星牙一天・流星雨ーー
背後から桜花を斬り裂く黒死牟だったがその桜花はまるで鏡のように砕けパリンと音を立てて消え去る
その一瞬の出来事に黒死牟は目を見開き驚くが瞬時に立て直し警戒するも型を放つ動作に入っていた桜花が黒死牟の背後、上空から既に日輪刀を振り下ろそうとしていた
意図せず背後を取られた黒死牟は桜花の気配を察知し振り返るが型による迎撃は間に合わないと判断し咄嗟に後退し攻撃後の隙を狙っていた
桜花が繰り出す拾の型改、上空から繰り出した無数の斬撃と展開した術式によって構築された炎が融合した流星雨のような炎の斬撃が黒死牟へと降り注ぐ
後退したとはいえ広範囲に及ぶその斬撃の射程圏内から完全に逃げきれなかった黒死牟は斬撃を浴びながら炎に包まれる
「んじゃ!後は任せたよ斬吼狼」
着地した桜花はこの隙にさっさと離れようと黒死牟の様子を伺う事なく走り出し斬吼狼にそう告げてその場を去っていく
その頃上弦の参猗窩座との攻防を繰り広げていた杏寿朗は〜
「死ぬな杏寿朗」
互いの技と技がぶつかり合い激しい攻防の末、猗窩座は杏寿朗にそう告げる
その杏寿朗本人は、先程の攻防で猗窩座から手痛い攻撃を貰い左眼の損傷と肋骨と内臓を負傷し息を切らせながら立ち尽くしていた
(煉獄さん・・煉獄さん・・煉獄さん)
(何でだよ・・あの人は柱だろ・・強いんだろ・・上弦の鬼はそれ以上に強いのかよ)
(隙がねぇ・・入れねぇ・・動きの速さについていけてねぇ・・あの二人の周囲は異次元だ、間合いに入れば死しかないのを肌で感じる助太刀に入った所で足手まといでしかないとわかるから動けねぇ)
杏寿朗の後ろではその戦いの行く末を見守っていた炭治郎達が悲痛の表情を浮かべながら呆然としていた
「生身を削る思いで戦ったとしても全て無駄なんだよ杏寿朗、お前が俺に喰らわせた素晴らしい斬撃も既に完治してしまった。だがお前はどうだ、潰れた左眼、砕けた肋骨、傷付いた内臓、もう取り返しがつかない
鬼であれば瞬きする間に治る、そんなもの鬼ならばかすり傷だ、どう足掻いても人間では鬼に勝てない」
そう言いながら猗窩座は杏寿朗に無情な現実を突き付ける
(手も動く足も動く体も動く!だけど動けない‼︎動けば煉獄さんの負担が増えてしまう!助けに入りたいのに)
体は健常、戦えるのに戦えない助け入りたいのに入れないそんなもどかしさを噛み締める炭治郎、悔しさに体を震わせると
「む〜む〜」
「禰豆子・・」
震える炭治郎の肩にそっと手を添え杏寿朗を見つめる禰豆子、悔しい気持ちは同じだとそう伝わる禰豆子の行動に炭治郎は
(煌牙さん・・・)
自分達を助けてくれた信じてくれた、禰豆子と一緒にこれから証明すると誓った、そんな思いを馳せながら炭治郎は立ち上がり杏寿朗に再び目を向ける
「むむ⁈」
そんな時禰豆子は何かの気配を察知して森の方へと一目散に駆け出していく
「禰豆子⁈どうしたんだ禰豆子!」
禰豆子の突然の行動に炭治郎はハッと驚き禰豆子に呼びかけるが禰豆子は炭治郎の呼びかけに反応する事なく森の中へと消えていく
炭治郎は禰豆子を追いかけようとしていたがその時、杏寿朗から迸る熱気を感じ引き寄せられるように魅入ってしまう
その杏寿朗は日輪刀を両手で握り肩に担ぐような構えで闘志を漲らせ
「俺は俺の責務を全うする!ここにいる者は誰も死なせない‼︎」
そう力強く宣言し、渾身の型を放とうとする杏寿朗
(一瞬で多くの面積をえぐり斬る、炎の呼吸奥義!)
杏寿朗は炎の呼吸の奥義を繰り出すべく己の闘気を高め感覚を研ぎ澄ます
「素晴らしい闘気だ・・・それ程の傷を負いながらその気迫その精神力
一部の隙もない構え!やはりお前は鬼になれ杏寿朗‼︎俺と永遠に戦い続けよう!」
杏寿朗の高まる闘気に武を志ざす者として歓喜に打ち震える猗窩座は杏寿朗にそう言いながら自身の技をぶつけようと突進してくる
ーー術式展開 破壊殺・滅式ーー
ーー炎の呼吸 玖の型 煉獄ーー
自身の力を最大限まで溜め込み通過した地面が抉れる程の力強い突進をしながら渾身の一撃を叩き込む杏寿朗と一撃に全てを込めた猗窩座の強力な技がぶつかり合い激しい土煙が再び巻き起こる
「煉獄さーーん‼︎」
そう大声で叫びながら戻って来た桜花、あまりにも激しい激突に桜花は不安げな表情で戦況を見つめ炭治郎達の隣に立つ
(止まった⁈土煙で見えない・・煉獄さん煉獄さん)
杏寿朗を心配する炭治郎、土煙で状況が分からなかったがやがて土煙が晴れ杏寿朗の姿が見えてくると
(見え・・ああ・・ああ‼︎)
炭治郎達が見たその光景はあまりにも衝撃的な光景だった
「む〜む〜む〜」
「そうだな、今のは危なかったな。でも煉獄さんは無事に・・・煉獄さん・・あんた・・無事じゃねぇ〜‼︎え?何?あんたその傷で玖の型使ったの⁈」
「お兄、炎柱様だよ?」
「あの人はそんな人だった・・」
「兄さんと同じだね」
「ハッキリと言わせてもらう、俺と煉獄さんを一緒にするな!俺はあんなに暑苦しくない!」
「そうですよ!煌牙様は熱意のある方です!凄く熱い想いを心に秘めた暑苦しい方です」
「零余子!それ褒めてねえだろ!暑苦しいって言っちゃってるよ!」
「お前に褒める所なんてないだろう?」
「愈史郎君?珠世さんにあの事言っちゃうよ?ねえ言っちゃうよ?」
「煌牙!お前は凄い!お前は偉い!お前は凄い!」
「ふっふ〜♪煌牙ちゃんは凄いんだから〜♪ふっふ〜♪ふっふ〜♪」
そんな会話を繰り広げる煌牙達、杏寿朗と猗窩座両者が激しく衝突する直前、一瞬で両者の間に割り込んできた煌牙は猗窩座の突き出した腕を両断し杏寿朗の援護をしていた
そんな煌牙を追って来たカナヲ達、カナヲは炭治郎達を見つけると手を小さく振りながらニッコリと笑いかける
一方杏寿朗の一撃は猗窩座の左半身を抉り斬り猗窩座はその身に深い裂傷を負うと即座にその場を後退し距離を取ると突如現れた煌牙達を凝視する
「久しいな!四ノ宮!お前が生きていると信じていた!実にめでたい」
「いや・・まぁ色々とあったけどさ・・うん・・ホント色々あった・・とりあえずこうして今は生きてる・・煉獄さんは無事じゃないからめでたくはないぞ!あとは俺に任せて煉獄さんは治療な!」
「煌牙ちゃん!煉獄ちゃんの治療は私達に任せて、愈史郎ちゃん!零余子ちゃん!気合い入れて治すよ〜♪」
「四ノ宮・・俺は柱としての責務を全うする!引くわけにはいかない」
「・・・煉獄さん・・アンタは何のために戦っているんだ?自分の命と引き換えに鬼を討つ為か?違うよな、アンタ言ってだろ!強者として生まれたのなら弱き者を助け守るのが使命だと!母親と約束したんだろ!だったら生きろよ!生きて約束を果たせよ!自分の命と引き換えに助けられてもな、残された方は喜ばないんだよ!煉獄さん・・アンタのその覚悟は俺が引き継ぐ‼︎俺は・・・俺は魔戒騎士四ノ宮煌牙!黄金騎士牙狼の称号を受け継ぐ者‼︎」
杏寿朗は煌牙との再会を喜びながら猗窩座を睨み柱として責務を全うすると煌牙に告げると煌牙は杏寿朗を死なせたくない思いを爆発させながら杏寿朗の覚悟を引き継ぐと宣言する
「煉獄さん・・俺は一度牙狼の称号を失ったんだ・・・牙狼の称号を得て俺は強くなったと皆を守れると・・だけどホントに守っていたのは自分の心だった・・俺は弱い!そう思う自責の念から逃れる為に俺は戦っていた・・誰かを守る事で昔の自分とは違うと・・・その結果俺の心に闇が生まれ俺は守りし者としての使命を見失った・・牙狼が俺を見限るのも当然だよな!そんな奴誰が認めるんだ?だけど・・俺は一人じゃなかった・・カナヲが・・妹がずっとそばにいてくれた・・俺を支えてくれたんだ!カナヲだけじゃない!瑠花!朔弥!総悟!零余子!珠世さん!愈史郎!皆が俺を支えてくれた!助けてくれた!そしてザルバ‼︎
自分の命と引き換えに俺を助けてくれた!死を迎えるだけだった俺に自分の命を与えて俺を・・・」
「四ノ宮・・・そうか」
「俺は覚悟が足りなかった・・本当の意味で牙狼を受け継ぐ覚悟が!俺はこの想いの力を未来永劫へと繋げていく!煉獄さん!煉獄さんのその想い、俺に託してくれないか?」
「・・・四ノ宮・・・帰ったらお前の作った美味い飯が食いたい‼︎」
「さつまいもご飯とさつまいもの味噌汁、あとは鯛の塩焼きだろ?腹いっぱい食わせてやるよ」
「うむ!それは楽しみだ!」
煌牙の想い、煌牙の覚悟を聞いた杏寿朗は煌牙に全てを託すと朔弥達の元で怪我の治療を受ける
「煌牙ーー‼︎」
「桜花・・ゴメン!心配かけたな」
「信じてたから・・煌牙が生きてるって・・私信じてたから」
号泣しながら煌牙に飛び付く桜花、キツく抱きしめる桜花をあやしながら煌牙は心配かけた事を謝り桜花は涙を拭いながら笑いだし煌牙を信じていたと話す
「煌牙!お館様がコレを煌牙にって」
そう言いながら桜花は魔法衣から一振りの日輪刀と純白に煌くロングコートを煌牙に手渡す
「桜花、これって」
「うん♪初代牙柱暁大牙の日輪刀とロングコートだよ!白いロングコートは歴代の黄金騎士達が纏ったロングコートなんだって♪煌牙もこれで正真正銘誰もが認める黄金騎士だね♪」
「誰もが認める黄金騎士か・・その名に恥じない騎士にならないとな」
「うん♪煌牙そのコート着せてあげるよ♪」
「桜花悪いな」
そう話すと桜花は白いロングコートを煌牙から受け取り煌牙が着れるように準備すると煌牙は袖に手を伸ばし白いロングコートを羽織っていく
「うん♪煌牙カッコいいよ」
「おう!」
白いロングコートを羽織った煌牙を見て桜花は微笑みながら感想を言うと煌牙は一言返事を返し猗窩座の元に歩いていく
「待っててくれたんだな!色々と話し込んで悪かった」
「黄金騎士牙狼、生きていてくれて俺は嬉しい!俺はお前とも戦ってみたかった」
「そうか・・俺は四ノ宮煌牙!お前の名は?」
「猗窩座」
「猗窩座か」
「煌牙、お前も鬼にならないか?」
「鬼か・・」
「そうだ!鬼になれば傷など一瞬で治る、死ぬ事もない!お前は永遠に黄金騎士としてその力を振るえるんだ!どうだ、素晴らしい提案だろう
お前も鬼になって俺と永遠に戦い続けよう」
「そうだな・・以前の俺ならちょっと悩んだかもな」
「今は違うのか?」
「ああ」
「虚しくはないのか?お前達人間は永遠の存在じゃないんだ!お前がこれまでに守って来た人間もお前の仲間もいずれ死ぬ、鬼こそが永遠の存在なんだ」
「確かに人間はいずれ死ぬ、俺もそうだ!永遠の存在じゃない!だがな遙か昔から今に至るまで沢山の想いを俺は背負っている!その想いの力を俺は未来へと繋げていく!この想いこそが永遠だ!」
「・・・鬼は永遠の存在じゃないと言いたいのか?」
「・・・ああ!」
「そうか・・ではお前を殺してその永遠とやらを終わらせてやろう!」
「猗窩座・・お前の陰我!俺が断ち斬る‼︎」
煌牙と猗窩座、両者の思想がぶつかり合い反目すると猗窩座は戦闘態勢へと入り煌牙も大牙の日輪刀を抜刀して互いに睨み合う
「煌牙さんが・・煌牙さんが生きてた!善逸!伊之助!煌牙さんが生きてた‼︎」
「本物だよね⁈幽霊なんかじゃないよねぇ⁈」
「・・・あれは本当にオーガのヤローなのか?前みたいに肌に突き刺さるような気配がまるで感じられねぇ!ありゃ牙を抜かれた狼だぜ」
「そういえば匂いが以前と違う、前は重くのしかかるような匂いだったのに今はまるで陽の光に包まれるような暖かい匂いだ」
「音も前とは違う音だ!前は鈍い金属がぶつかり合うような音だったけど今は純度の高い金属がぶつかり合うような澄んだ音がする」
猗窩座と対峙する煌牙を見ていた炭治郎達、喜びながらもうそう話すとカナヲが炭治郎達の元に駆けつけてくる
「炭治郎!善逸!伊之助!」
「カナヲ〜‼︎良かった!無事で良かった!」
「むーむー♪」
「禰豆子ちゃーーーーん!急に走り出すから心配してたんだよーー」
「禰豆子、もしかして煌牙さんの気配を感じて走り出したのか?」
「むーむー♪」コクコク
「ぬぁぁにぃぃぃぃぃぃ⁈禰豆子ちゃんと煌牙さんの間に何か芽生えてるのぉぉ‼︎いぃぃぃぃやぁぁぁぁ‼︎」
「煌牙さんが禰豆子と結婚したら煌牙さんは俺の弟に・・兄ちゃんの方が嬉しいなぁ」
「ちょっと‼︎ちょっと待ってぇぇぇ!え?何?炭治郎は俺と禰豆子ちゃんの仲を『・・・・・・』何か喋れよぉぉぉぉ‼︎俺と禰豆子ちゃんの仲を認めないなんてなんて炭治郎だ‼︎」
「善逸さん相変わらず煩いです!」
「瑠花ーー‼︎」
「お姉‼︎」
「瑠花ーー!良かった良かったよーー‼︎
「うん、お姉にも心配かけちゃったね・・お姉ゴメンね」
「うん♪罰としてお姉ちゃんに甘えなさい♪」
「うん」
「ねぇ瑠花?上弦の弐からどうやって助かったの?」
「・・・総悟に裸にされた・・・」
「・・・は?」
「裸にされて影に沈まされた」
「・・・・よし!あの六つ目共々葬ってあげるよ♪桜花ちゃん必殺の型で」
そんな会話が続く中、その光景を見ていた杏寿朗は
「四ノ宮がいるだけで場の雰囲気が変わったな!張り詰めていた緊張から解き放たれたような、だが油断は禁物だ」
「そうね、とりあえずアンタはその傷を治しなさい!ほら、この実を食べて」
「君は下弦の肆か・・何故君が俺達の手助けをする」
「償い・・人の命を奪って来た私が命乞いなんて虫の良い話だけどね!
今まで奪って来た命の数以上に私は人の命を守り、私は鬼じゃなく人として死にたい!私を信じて助けてくれた煌牙様と共に歩いて行きたいから・・」
「なるほど!君は四ノ宮に恋慕の情があるのか!甘露寺がいたら騒ぎ出しそうだ!」
「ちっ違っ!そうじゃなくて‼︎その・・・あーもう‼︎さっさと食べろ!」
杏寿朗は傷の介抱に付き添っていた零余子にそう話すと零余子は手に持っていた実を杏寿朗の口に放り込み無理矢理咀嚼させる
「むっ⁈これはむかごか、塩加減が良い塩梅だ!」
「私の血鬼術植物を操るの、そのむかごは栄養素を凝縮させてるから!傷を治すのも体力を回復させるにもまずは栄養を取らないと」
「・・なるほど!四ノ宮が君を信じたように俺も君を信じてみよう!」
杏寿朗は零余子が本気で杏寿朗を心配し、償おうとしている事を理解し
零余子にそう言うと零余子は驚いた顔をした後に杏寿朗を見て優しく微笑んだ
「ふっふ〜♪さあ煉獄ちゃん、治療を始めるよ〜♪」
そうご機嫌な口調で朔弥は杏寿朗に擦り寄ると顔を至近距離まで近づけ杏寿朗の潰れた左眼を両手で優しく包み込むと朔弥の両手が淡く光り輝き暫くしてそっと手を離す
「煉獄ちゃんどうかな?」
「見える‼︎潰れた左眼が回復するとは!よもやよもやだ」
「朔弥さん何をしたんだ」
「ふふふ〜ん♪愈史郎ちゃん♪視力の交換♪私の視力を煉獄ちゃんに譲ったの」
「は?それじゃあ朔弥さんの視力は」
「私鬼だよ?失った視力も元通り♪これぞまさしくWin-Winの関係だね♪」
「・・・煌牙の治療を見た後じゃもう驚かないからな」
「利用出来る物は何でも利用する!まさか黒死牟も自分の腕が煌牙ちゃんの治療に役立ったとは夢にも思わないだろうね〜♪」
「珠世様の研究も飛躍的に進むから反対しなかったが、失敗してたら煌牙は死んでたんだぞ」
「元老院付き魔戒法師の実力を舐めちゃいけませんな〜♪」
杏寿朗の左眼を回復させた朔弥は愈史郎とそんな話をしていると
「煌牙様の話は後からすれば良いでしょ!先に治療を終わらせないと」
杏寿朗そっちのけで話し込んでいた朔弥と愈史郎に痺れを切らした零余子がそう注意すると
「あっ!煉獄ちゃんゴメンね〜!とりあえずコレを飲んで」
そう言いながら朔弥は慌てて鞄から取り出した小瓶を手にし杏寿朗へと手渡す
「朔弥さんそれ・・煌牙を治した鬼回復増進剤スパルタンXじゃないだろうな」
「違うよー!ホラ、前に炭治郎ちゃんを治した時に渡した薬、クレオソート丸EXだよ」
「クレオソート丸ってただの胃腸薬だろーー‼︎」
「・・・・飲みやすく!飲みやすく改良したから‼︎」
「改良しても効果は変わらないだろ!炭治郎が飲んだ時もあの薬は効果なかったのか?」
「・・ベストマッチって言いたかったの・・術だけで回復は出来たの」
「まさか・・煌牙に飲ませたアレも・・・」
「いや!アレはマジ!術だけで回復なんて間に合う範囲じゃなかったから!私も必死だったでしょ?」
「・・・まさかいきなり人工呼吸しようとするあたり必死だったな」
「私もあの時は焦ってたんだよ〜、まさかカナヲちゃんが本当にやるとは思ってなかったけど」
「それ煌牙は知っているのか?」
「知らないし絶対教えない方が良いよ!」
「アンタ達‼︎」
再び話し込んで杏寿朗の治療をすっぽかす朔弥と愈史郎、零余子から再度注意をされようやく杏寿朗の治療が開始されるのだった
ちなみにクレオソート丸EXを杏寿朗は飲まなかった
時を同じくして斬吼狼と黒死牟は
「・・・馬鹿な!何故奴が生きている⁈奴は私があの時!」
「あの時?はっ!テメーの斬撃が当たる直前に俺の作り出した影に沈めたとしたら?」
「だとしても奴は既に虫の息、死ぬのは時間の問題だった筈だ」
「いや〜鬼の体って便利だよなー!上手く利用すれば死にかけの体も治るなんてな」
「斬吼狼・・お前の血を分けたのか」
「まさか!俺より鬼無辻の血が濃い奴がいるだろ?」
「・・‼︎私だと言うのか」
「お前、煌牙に右腕斬り落とされただろ?去り際にアレ貰ったおいてやったぞ?」
「斬吼狼!貴様‼︎」
「まさかテメーが殺しかけた相手がテメーの体で完治するとはな!随分と間抜けな話だ!なあ?そう思うだろ?黒死牟さん」
「斬吼狼ーー‼︎」
桜花から受けた傷も癒えた黒死牟は斬吼狼と対峙しながら猗窩座達の戦況に目を向けると殺した筈の煌牙が生きている事に気付き驚く
煌牙の生存に動揺を隠せない黒死牟、斬吼狼は生存の真相を黒死牟に言いながら挑発をすると黒死牟は今まで以上に激怒して斬吼狼に斬りかかろうとする
「怒りで周りが見えなくなると足元すくわれるぞ」
そう言いながら斬吼狼は黒死牟の足元に大きな影を生み出し黒死牟はその影に呑み込まれていく
「斬吼狼‼︎許さぬ!貴様と黄金騎士は必ず私の手で葬ってやる!」
「そうか・・・一つだけ言っておくが今の煌牙は前より強いぞ、舐めてかかるとその頸斬り飛ばされるかもな」
斬吼狼の影に呑み込まれていく黒死牟はそう言いながら斬吼狼を睨みつけると斬吼狼も黒死牟に言い返し、影に消えてゆく黒死牟を見送る
「出口は無限城だ、無惨に言い訳でも考えるんだな」
そう言いながら斬吼狼は煌牙達のいる場へと歩き出していった
「カナヲ・・煌牙さんは上弦の参に勝てるのか?」
「どうして?」
「上弦の鬼は俺達が戦ってきた鬼とは比べ物にならない強さだった!煉獄さんでさえ致命傷は与えられてないんだ!」
「そう・・炭治郎、兄さんを信じてあげて・・炭治郎の信じる心が兄さんの力になる!心はどこまでも強くなれる、私達の想いが兄さんと共にある限り兄さんは誰にも負けない‼︎」
猗窩座と対峙する煌牙を見つめながら炭治郎はカナヲに不安からくる疑問をぶつけるが、カナヲはなんの迷いもなく煌牙を信じ、信じる心が力になると炭治郎に告げると煌牙は誰にも負けないと力強く宣言する
カナヲの迷いもない発言に炭治郎も煌牙を信じて戦況を見守る
(何なんだコイツは、闘気のカケラも見当たらない!煌牙は柱じゃなかったのか?黄金騎士じゃなかったのか?これではただの虫ケラ同然、俺は黄金騎士と滾る戦いがしたかったんだが・・・さっさとコイツを殺してまた杏寿朗と戦おう!)
煌牙と対峙する猗窩座は煌牙から闘気を全く感じない事で煌牙への興味を無くし再び杏寿朗と戦おうと煌牙を殺しにかかる
ーー破壊殺・乱式ーー
煌牙に向けて幾重にも重なる乱れ打ちを連発し始末しようとする猗窩座
(大牙さん・・ありがとう!)
心の中で先代牙狼暁大牙に感謝の気持ちを込めて礼を言うと刀を鞘に納め深く息を吸い込む
その呼吸音がゴォォォォと音を立て煌牙は居合斬りの構えと取ると左親指で鯉口を開き
ーー輝刃の呼吸 瞬火終刀ーー
それは一瞬の瞬き、日輪刀を納刀する音だけを認識出来た猗窩座、その音を認識した瞬間、猗窩座の胴体は突き出した両腕と共に横一閃に両断されていた
少し早いけど今年もお疲れ様でした