金色の刃   作:ちゃんエビ

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ほぼ一年ぶりの投稿

1話の文数が馬鹿みたいに長くなったから小分けにした方が読者も私も楽になる←それでもキリの良いところまで書きたいとした結果長くなるという




21 漆黒

時は遡り二週間前〜

 

「斬吼狼ちゃん!ここって」

 

「懐かしいだろ、四百年前俺達が拠点にしていた暁邸!今は俺の根城として使ってる、朔弥!お前の根城とこの屋敷を繋げ!」

 

「いいけど急にどうしたの?」

 

「煌牙はもう死にかけの状態だ!朔弥頼む!煌牙の命を繋いでくれ」

 

「煌牙ちゃん⁈煌牙ちゃんがいるの!ねぇ!斬吼狼ちゃん‼︎」

 

「俺の影の中にな!時間がない!朔弥急げ!」

 

「わかったよ」

 

斬吼狼に引き連れられた朔弥と零余子は影を通じて斬吼狼の拠点である

暁邸、かつて暁大牙達が住んでいた屋敷へと足を踏み入れると斬吼狼から煌牙の助命を託されると朔弥は慌てて自分の隠れ家と暁邸を術式で繋ぎゲートを構築していく

 

「珠世ちゃん‼︎愈史郎ちゃん‼︎煌牙ちゃんを助けて‼︎」

 

ゲートから自分の隠れ家へと足を踏み入れた朔弥は共に研究をしている珠世と愈史郎の二人にも協力してもらおうと焦る気持ちを隠す事なく叫び、その声が全ての部屋に響き渡ると奥の研究室から珠世が出てくる

 

その珠世は朔弥の慌てた様子にただ事ではないと察し可能な限りの医療器具と薬品を早急に用意するのだった

 

「四ノ宮さん程の人が危険な状態になるという事は、相手は十二鬼月それも上弦の鬼というわけですね」

 

「黒死牟!煌牙ちゃんは上弦の壱黒死牟と戦って・・どんな状態か分からないけど今にも死にそうだって斬吼狼ちゃんが」

 

「四ノ宮さんをこちらに!事態は一刻を争います」

 

焦る朔弥とは対照に珠世は落ち着きを払った態度で煌牙を連れてくるように言い渡すとゲートを超えてきた斬吼狼が現れ影の中から煌牙とカナヲを引きづり出すと煌牙を診察台の上に運び込む

 

診察台の上で眠る煌牙、既に心肺は停止、脈も呼吸も止まっている煌牙の体は全身に深い裂傷を負っていて誰が見ても手遅れだと思う程だった

 

「煌牙ちゃん‼︎煌牙ちゃん‼︎しっかりして!煌牙ちゃん‼︎」

 

涙でくしゃくしゃになりながらも必死に呼びかける朔弥、焦るあまりまともな思考も出来ない状態の朔弥はどうにかして煌牙の命を繋ごうと人工呼吸や心臓マッサージをする動作に入ると

 

「朔弥!落ち着け‼︎お前は元老院付きの魔戒法師だろ‼︎お前にしか出来ない事がある筈だ!」

 

「朔弥さん!四ノ宮さんの細胞組織はまだ完全に死滅していません、私が絶対に繋ぎますから!お願いします!貴方は貴方の為すべき事を!」

 

「・・・分かった‼︎斬吼狼ちゃん!手伝って‼︎」

 

「任せておけ」

 

そう話すと朔弥は涙を拭い、自分の研究室に斬吼狼と共に入っていく

 

「愈史郎、四ノ宮さんの衣服を剥いで止血を」

 

「はい!」

 

「私も手伝うわ!」

 

珠世は愈史郎にそう指示を出すと愈史郎は止血に取り掛かろうとするが

その様子を不安げに見ていた零余子は煌牙を救う為に何か出来る事はないかと名乗り出ると

 

「下弦の肆⁈どうして十二鬼月がここに⁈」

 

「私はもう十二鬼月じゃないわ!信じて貰えなくても構わない!でも今は煌牙様を救う為に私にも出来る事をやるだけよ!」

 

ほぼ絶望的な煌牙の容体に気を配っていた珠世は、零余子の気配を察知する余裕もなく、零余子が声をかけるまで十二鬼月がこの場にいると思ってなかったので驚くが、零余子は自分の事より煌牙が優先とばかりに

止血剤を煌牙の傷口に塗りながらそう淡々と話す

 

「鬼無辻を裏切るつもり?」

 

「もう裏切り者になってるわ、仮にそうじゃなくてもあの御方・・いいえ!鬼無辻無惨が許すはずないわ」

 

「・・・どうやら本気みたいね、鬼無辻を裏切る覚悟がなければその名は口にしないもの」

 

「呪い・・あ!私名前を口にして!」

 

「大丈夫よ、この場所は空間を遮断して作られた場所、鬼無辻は貴方の居場所を特定出来ないし呪いが発動する事もないわ」

 

「・・死ぬかと思ったわ」

 

「・・・貴方名前はなんというのかしら」

 

「零余子よ」

 

「零余子さん、これから四ノ宮さんの延命措置にはいります!手伝ってくれますね」

 

「勿論よ」

 

そう話す珠世と零余子、鬼無辻の名を呼んだ事で零余子を信用しようと考えた珠世は煌牙の措置をしながら零余子にも助力を要請するのだった

 

 

 

 

「斬吼狼ちゃんどうしよう!術式と回復増進剤を併用しても間に合わない!煌牙ちゃんの命が本当に消えちゃう!」

 

「朔弥・・黒死牟の腕がある、上弦の壱の血と細胞を使えばなんとかなるかもしれないぞ」

 

「なる!黒死牟の血と細胞があるなら私が絶対何とかする‼︎」

 

「問題は煌牙だな、血が変質しないから鬼にはならないと思うが無惨の血が最も濃い黒死牟の血と細胞だ、全く影響がないわけじゃない」

 

「それでもやらないと煌牙ちゃんは死ぬ!」

 

「・・・・だな・・・朔弥頼む」

 

「うん」

 

煌牙の命を救う為黒死牟の腕を差し出した斬吼狼、先程まで弱々しかった朔弥の目はその提案で強く輝き、早々に煌牙の治療薬の精製に取り掛かるのだった

 

 

 

その頃煌牙の延命措置をしていた珠世達、その隣で気を失い寝かされていたカナヲが目を覚ますと辺りを見渡し煌牙に目を向けると珠世達に目もくれず煌牙の傍に駆け寄る

 

「兄さん‼︎兄さん‼︎嫌だ!死んじゃ嫌だよ‼︎兄さん‼︎」

 

そう叫びながら泣き出すカナヲ、煌牙に寄り添い体に触れると

 

「・・・・兄さん‼︎」

 

カナヲは煌牙の心拍や脈が無い事を悟ると迷う事なく人口呼吸による救命措置を施し、必死に煌牙を助けようとする

 

「アンタ、何を⁈」

 

カナヲの突然の行動に驚く零余子、カナヲにそう言うとカナヲは煌牙の救命措置を施しながら零余子に

 

「何って救命措置、やり方は昔教わった事あるし、兄さんは絶対に死なせない!」

 

そう零余子に返すカナヲに珠世は険しい表情で

 

「四ノ宮さん程ではないにしろ貴方も浅くはない傷を負ってるのよ!無茶をしたら貴方も危険よ」

 

そうカナヲに告げる珠世、命の灯火が消え掛かる煌牙に手一杯でカナヲの治療にまで手が回らかった為、カナヲの肩からは大量の血が流れ出していた

 

「私の事はいいの‼︎兄さんが助かるなら私の命が消えてもいい!もう兄さんがいなくなるのは嫌なの‼︎」

 

そう力強く叫ぶカナヲ、その迫真の表情に零余子は何も言う事が出来ずにいたが医者である珠世はカナヲの発言が許せなくなりカナヲを叱り出す

 

「私は鬼ですが医者でもあります、貴方がお兄さんを助けたい気持ちは痛い程分かりますが貴方の命と引き換えに四ノ宮さんが助かっても四ノ宮さんは喜びますか?貴方は四ノ宮さんに貴方を死なせたという枷を背負って生きて欲しいと願っているのですか?もう一度言いますが私は医者です!四ノ宮さんも貴方も死なせたりしません!」

 

怒ったとはいえカナヲの助けたいと思う気持ちを尊重し、諭すように叱る珠世、それを聞いたカナヲは

 

「でも・・でも!兄さんが・・お願い!兄さんを助けて」

 

祈るように泣き崩れ珠世に懇願するカナヲ、珠世は処置を施しながら頷くと煌牙の指にはめているザルバが喋り出した

 

「お涙頂戴の兄妹愛ってやつか?俺様にはよくわからんが嬢ちゃんの覚悟が本気だって事は俺様でもわかる・・嬢ちゃん・・いやカナヲ!煌牙を支えてやれ!他の誰よりもお前がコイツを支えるんだ!お前さんなら信用出来る!」

 

「うん」

 

ザルバにそう言われてカナヲは頷きながら一言返すと、ザルバは眼を光らせ始める

 

「ザルバ⁈何を⁈」

 

「俺様と煌牙の契約は知ってるな?」

 

「うん」

 

「煌牙との契約はこれで終了だ!俺様の命を煌牙に返せば時間稼ぎにはなるはずだ!まだまだ半人前のヒヨッコ魔戒騎士だが俺様はコイツを気に入っている、助けてやってくれ」

 

「ザルバ‼︎」

 

ザルバはそう言いながら自分が保有していた煌牙の命を煌牙に返すと沈黙し、カナヲは悲痛な叫びをあげ沈黙してしまう

 

「ザルバ・・ザルバが繋いでくれた兄さんの命、絶対に繋げるから!ありがとう!ありがとうザルバ!」

 

沈黙した後カナヲは目に力を宿しザルバへの感謝を込めてお礼を言うと

珠世と零余子に向き直し

 

「ザルバの想いを無駄にしたくない!兄さんは絶対助ける」

 

そう言うカナヲに頷く珠世と信じられない物を見たと口を開けて放心状態になっていた零余子、カナヲは零余子の目を見て

 

「貴方の事も信じてるから・・」

 

カナヲにそう言われて零余子はハッと気を取り直し、三人で煌牙の延命措置を施すのだった

 

 

 

 

「煌牙・・聞こえてるか煌牙!」

 

「・・・ザル・・バ?俺・・あの後どうなったんだ」

 

「お前さんは上弦の壱との闘いで死の淵にいる、カナヲ達がお前を救おうと必死になってるぞ」

 

「カナヲ?・・そうだカナヲは無事だったのか⁈」

 

「無事とは言えないが命に関わる怪我ではない、お前さんの為に無茶をしなければな」

 

「今すぐ辞めさせないと」

 

「無理だな、煌牙お前を助けたいと思うカナヲの意志は強いぞ、止めたいのならお前がカナヲに生きる意志を示すしかない」

 

「でもどうやって・・俺は死の淵にいるんだろ?」

 

「煌牙・・・そろそろお別れのようだ!お前さんから貰っていた命を全てお前に返還した!煌牙、必ず生き延びろ!」

 

「辞めろザルバ‼︎そんな事したらお前は」

 

「友が助かるのならお安い御用だ!」

 

「ザルバ‼︎」

 

「お前さんと過ごした日々は退屈しなかったぞ!」

 

「ザルバ・・辞めてくれ・・」

 

「・・煌牙・・・強くなれ・・・お前なら大牙を超えると信じてるぞ」

 

煌牙に命を与えたザルバは別れ際に煌牙の思念に語りかけ、そう煌牙と話すと徐々に意識が消えてゆき煌牙との繋がりが完全に消滅する

 

「ザルバ!ザルバ‼︎・・・・また守れなかった・・・俺は・・」

 

己の弱さ故に大切な繋がりが消えたと嘆く煌牙、そんな煌牙に追い討ちをかけるようにもう一人の煌牙が現れ煌牙を馬鹿にし始める

 

「結局何も守れないなお前は!そりゃそうだよな!自分の命すら守れないお前が誰かを守れるわけがない!なあ?誰かを守る必要なんてあるのか?他の奴等がどこで死のうと俺達には関係ないだろ?俺は生きる事を邪魔する奴等を屠る力があればそれでいい!その力が牙狼だ!」

 

そう告げるもう一人の煌牙、煌牙はもう一人の煌牙を睨み返し反論しようとするが顔面を鷲掴みにされそのまま叩き伏せられてしまう

 

「認めろよ?お前も強くなりたかったんだろ?力が欲しかったんだろ?

お前はあの時力を求めたじゃないか!」

 

煌牙を組み伏せたもう一人の煌牙はそう言って煌牙を説き伏せると

 

「まぁいい!今はお前が起きる事が優先だ!生きる意志があるならさっさと起きろ!」

 

もう一人の煌牙はそう言いながら闇に消えていくと

 

「生きる・・俺は・・・まだ生きたい」

 

煌牙は心の声を搾るように呟くと、視界が暗転し暗黒の世界から白一色の世界へと切り替わる

 

それと同時に煌牙の意識は何かに吸い寄せられるかのように溶けていき

眠ったままの煌牙の体に意識が重なり出す

 

 

 

「兄さん⁈」

 

驚きながらそう言うカナヲ、未だ眠ったままの煌牙だがカナヲが握り締めてる煌牙の手、指先が僅かに動きカナヲは煌牙に必死に呼びかける

 

「兄さん!兄さん‼︎」

 

カナヲが呼びかける中、冷静に処置を施していた珠世は

 

「四ノ宮さんに声を掛け続けて下さい!恐らく貴方の声が一番四ノ宮さんに届く筈です」

 

「はい!」

 

珠世からそう指示されたカナヲは勿論だと言わんばかりに返事をして煌牙に声を掛け続けていると

 

「皆もう少し!もう少しだけ時間を稼いで‼︎」

 

そう言いながら慌てて出てきた朔弥はそれだけ言うとまた引き返し回復薬の精製に取り掛かると珠世達はあと少しと目に決意を宿し処置を続け出す

 

「斬吼狼ちゃん!黒死牟の血と抑制剤が上手く反応したよ!」

 

「よし!なら後はアレだけか」

 

「うん!アレの調合はもう少し掛かるから、斬吼狼ちゃん!先にコレを煌牙ちゃんに投与して」

 

朔弥と斬吼狼は回復薬の精製の末、完成したその薬を見てそう会話すると朔弥は一足先にその薬を煌牙に届けるよう斬吼狼に促し、斬吼狼はその薬を煌牙へと届けに歩き出した

 

一方煌牙に出来る限りの処置を施していた珠世達は

 

「愈史郎、カナヲさん、零余子さん、四ノ宮さんをお願いします!」

 

「珠世さん」

 

「朔弥さんがやろうとしてる事は察しがつきます、アレを使うつもりでしょうから私も手伝ってきます」

 

珠世は煌牙に出来る限りの処置を施すとカナヲ達にそう言い残し朔弥の元に向かい始めると時を同じくしてやって来た斬吼狼が煌牙の元に近付くと血のような液体の詰まった注射器を煌牙の首筋に刺し薬剤を注入していく

 

「お前が煌牙の妹か!はっ!そんな心配そうな顔するな!」

 

「貴方は・・鬼?どうして鬼が兄さんを」

 

「どうしてって・・まぁ俺は魔戒騎士だしな、鬼だろうが人間だろうがやる事は昔から変わっちゃいねえよ」

 

「⁇」

 

「まぁこっちの話だ!気にすんな」

 

「それ何の薬?」

 

「これか?・・・上弦の壱の血を混ぜた回復薬だ、一時的にだが煌牙の体を鬼に近い体質に変換させて自己回復力を高めるんだ」

 

「え⁈・・兄さん鬼になるの⁈」

 

「鬼にはならねぇよ、そもそも血を与えて鬼にする際は血の性質を変質して血を与えるからな無惨の野郎、とはいえ上弦の壱の血は無惨の血が最も濃い鬼、少なからずその影響は受ける筈だ!危険な賭けだがやるしかねぇ」

 

「危険なの⁈」

 

「仮にも鬼に近い体質になるんだ、細胞の急激な変化に今の煌牙が耐えれるかだな」

 

「何でそんな危険な事するの⁈」

 

「やらなきゃ煌牙は死ぬぞ?どのみちもう薬は打ったんだ、一応抑制剤も混じってるから後は様子見だな」

 

「兄さん」

 

「煌牙妹、信じてやれ!お前の兄ちゃんだろ?」

 

「言われなくても兄さんの事はずっと昔から信じてる!あと私の名前カナヲだから」

 

「ははっ!確かにそうだ!カナヲだな?俺の名は斬吼狼・・まぁ総悟でもいいぞ」

 

「なら斬吼狼で」

 

「おう!」(そっちかよ)

 

「兄さん鬼になっても元に戻るよね?」

 

「いや!鬼に近い体質になるだけだって!別に鬼になるわけじゃないし

万が一の時の為にアレを調合してるからな」

 

「アレ?」

 

「ヴァランカスの実、紅蓮の森に住むグラウ竜から取れる実があるんだよ」

 

「ヴァランカスの実?紅蓮の森?グラウ竜?」

 

「あ〜悪りぃ!分かんないよな」

 

「うん」

 

「ヴァランカスの実はホラーの血に穢された人間を浄化する力があるんだよ!ホラーと鬼の血は別物だが、無惨や上弦の壱の血とヴァランカスの実を上手く適合出来れば体内の鬼の血も完全に浄化出来る筈だ」

 

「そんな事出来るの⁈」

 

「朔弥はな、見た目も態度もあんな感じだが薬学や魔導具関連で元老院付きの法師になった奴だ!それにさっきの珠世と蟲柱と共同で研究してるからな!出来ないわけがない」

 

「それがあれば鬼になった人も人間に戻れるの?」

 

「戻れるのは間違いないがヴァランカスの実は希少でな、大量生産とかは無理だろうな」

 

「そう・・なんだ」

 

「っとそろそろ薬の効果が出始めそうだな」

 

未だ眠る煌牙の様子を見ながらそう話すカナヲと斬吼狼だったが煌牙の体を駆け巡る血の変化を感じとった斬吼狼はカナヲとの会話を切り上げ煌牙の容体の変化に集中し始める

 

未だ眠る煌牙だったが、体を駆け巡る血と投与された薬剤が反応を起こし煌牙の肉体は徐々に鬼に近い体質へと変わり始め、その兆候が煌牙の目覚めと共に現れる

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

そう咆哮をあげながら起き上がる煌牙はすぐそばにいるカナヲに気付くと獰猛な目付きでカナヲを睨むと斬吼狼が煌牙とカナヲの間に入りカナヲを守ろうとする

 

「よぉ!気分はどうだ?」

 

そう煌牙に話しかける斬吼狼、それに対して煌牙の反応は

 

「あー気持ちが昂揚して暴れ回りたい気分だ!カナヲを見て襲いかかりたくなりそうだった、最悪だ‼︎」

 

そう返す煌牙、鬼に近い体質へと変化した煌牙は精神面もそれに近づいており煌牙としてはそれは気分が良いものではなく斬吼狼にそう返したのだが斬吼狼はそれは当然だというような反応を見せふと溜息をつき

 

「今のお前は鬼に近い体質へと変化してるからな、まぁその反応も当然だがその割にはお前落ち着いてるな」

 

「鬼⁈・・あーどうりで・・いや、暴れ回りたい気分はあるんだがな!・・・は⁈鬼⁈は⁈」

 

「いや冷静に受け止めた後で狼狽えるなよ」

 

「いやいやいや!鬼ってなんだよ?俺鬼になったのか?」

 

「鬼に近い体質になってるだけだ!鬼の自己再生力を利用してお前の傷を治す為にな」

 

「そうか・・傷の治りがやけに早いと思ったらそうゆうことか、ホント鬼の再生力って凄いよな」

 

「まぁな」

 

「んで!俺の体って元に戻るのか?」

 

「まぁ一時的に変化してるだけだし、時間が経てば徐々にお前自身の細胞が再生される筈だ、万が一の時の為の薬も作ってるし大丈夫だ」

 

「どんな薬なんだ?」

 

「体内の鬼の血を完全に浄化出来る薬と言えば分かるか?」

 

「そんな薬があるのか⁈」

 

「まぁな、魔戒騎士とはいえお前は鬼狩りだけしか知らないからな!」

 

「そうだな・・・なあ?斬吼狼?お前初対面の時と雰囲気違うよな」

 

「ああーあの時は無惨側だったしああいう態度だっただけだ」

 

「そっか」

 

「んじゃ俺もう行くわ!お前の傷も塞がり始めたし後は朔弥達に任せるわ」

 

「行くってどこに⁈」

 

「お前にはまだ教えねーよ!ゆっくり休んでろ」

 

斬吼狼からの言葉に衝撃を受ける煌牙は心配するカナヲをよそに斬吼狼に色々と質問を繰り返していたが煌牙の傷が塞がり始めた事から斬吼狼は後の事を朔弥に任せ自分の用事を済まそうとその場を後にする

 

「兄さんが目を醒ましてくれて良かった」

 

「カナヲ・・さっきはゴメンな!それにあの時も泣かせてしまったし・・ホントにゴメン‼︎」

 

「いいの!兄さんが生きてくれただけで私は・・・でも少し怖かった・・あの時、牙狼が凶暴な姿になって兄さんが兄さんじゃなくなるような」

 

「カナヲ・・謝っても許される事じゃないけどあの時の俺は魔戒騎士の誇りより自分の感情の赴くままに暴れ回った、あの姿は哀れな俺の成れの果てだ」

 

「兄さん・・もう辞めよ?牙狼になるのもう辞めよ?牙狼が危険な存在だったなんて私知らなかった」

 

「カナヲ・・俺はもう牙狼にはなれない!聞こえないんだ!牙狼剣の声が!あの時の俺を見て歴代黄金騎士達は俺が牙狼には相応しくないと判断したんだろうな」

 

「・・・・私もそれがいいと思う、兄さんはもう戦わなくていいから」

 

「・・・・・カナヲ・・お前も早く手当てしてゆっくり休んでろ」

 

「兄さんはどうするの?」

 

「怪我も完治してないしどうにも出来ないな、大人しくしてるよ」

 

「うん・・兄さん・・もう戦っちゃ駄目だからね」

 

斬吼狼が去った後心配していたカナヲは不安と安堵の入れ混じる複雑な表情をしながら煌牙の様子を伺い会話をするが、煌牙もカナヲもお互いにぎこちない雰囲気になり煌牙は怪我をしているカナヲに手当てを促し

一人になろうと考える

 

カナヲが心配する気持ちは分かる、誰も喜んで身内を危険な鬼狩りの任務に送り出したくはない、自分もカナヲには鬼殺隊としての生き方より別の生き方をしてほしいと願う気持ちもある、だけど本人の意志で決めた以上口を挟むのはカナヲの意志を否定してるようなものだと煌牙は考えていたがカナヲは違った

 

過去に一度煌牙を失い心が壊れたカナヲ、胡蝶姉妹との出会い煌牙との再会を機に再び自我が芽生えてきたが、煌牙を失うというトラウマは未だカナヲの心に根付いており此度の戦いで煌牙を失いそうになったカナヲは煌牙を失いたくない一心で煌牙が再び戦う事を拒絶し、煌牙は自分自身の意志とカナヲの願いの間で葛藤しこれまで事、これからの事を考える為の時間が欲しく一人になろうとしていた

 

そんな中、煌牙が目覚めた事で話しかけたくて仕方がなかった零余子と愈四郎は話に入り込む余地がないと黙っていたがカナヲの治療が優先だと会話が終わると共にカナヲの治療に勤しみながら時折煌牙の様子をチラチラと伺い時が過ぎていく

 

 

一方でヴァランカスの実を使った浄化薬を精製中の朔弥達の元に斬吼狼がやっと来ると斬吼狼は煌牙が目覚めた事と自らの用事を済ましてくる事を朔弥達に告げた後、気まずそうな顔付きで朔弥達に話しかけてくる

 

「朔弥、治療ついでにコイツの面倒も見てくれないか」

 

そう言いながら斬吼狼は影を展開しその影に手を入れると影の中から意識を失いかけた瑠花を引き摺り出す

 

「瑠花ちゃん⁈え⁈瑠花ちゃんは上弦の弐に・・斬吼狼ちゃんが助けてくれてたの?・・でもなんで瑠花ちゃん裸なの?」

 

「いやな、童磨の野郎をバラバラに斬ったのはいいがコイツ喰われる寸前だったし童磨だけを斬りつける余裕がなかったんだよ!」

 

「良かった・・・私達あの時瑠花ちゃんは上弦の弐に喰べられて死んじゃったんだと思ってたから・・良かったホントに良かったよ」

 

「まぁな、んじゃ後は頼むぞ」

 

「うん!・・・ねえ?斬吼狼ちゃん‼︎」

 

「あ?なんだよ」

 

「私達の計画に煌牙ちゃん必要?」

 

「必要だな!俺やお前が鬼になったのも俺が無惨の元に付いたのもその為だろ」

 

「うん・・・鬼殺隊の皆はどうするの?」

 

「奴らに教える必要はないだろ?むしろ邪魔だ」

 

「・・そうだね・・私達の計画は知られちゃいけないよね」

 

「ああ、俺もう行くわ!」

 

そう会話する斬吼狼と朔弥だったが斬吼狼は計画の内容を知らせるわけにはいかないと促すと朔弥もそれに同意し斬吼狼は部屋を後にする

 

そんな折、二人の話を聞いていた珠世は朔弥に

 

「あの?朔弥さん?計画を知られちゃいけないって言ってましたが私はいて良かったのですか?」

 

そう珠世が疑問に思うのも当然だが朔弥は珠世に対して

 

「珠世ちゃんは私達の計画に巻き込むつもりだから」

 

朔弥は珠世にニヤリと笑みをこぼしながらそう言うと瑠花の手当てをし始める

 

(二人の計画って何かしら?鬼殺隊に言えない計画・・良からぬ事を企んでなければいいけど)

 

人知れず計画を追行する二人に珠世はそう疑問を抱きつつ朔弥と共に瑠花の手当てをするのであった

 

 

 

「煌牙ちゃん!目が覚めたんだね!大丈夫?ヴァランカスの実は必要ない?」

 

瑠花の手当てを終えた朔弥は完成した薬を携えて煌牙の元にやって来るとそう言いながら煌牙に擦り寄ってくる

 

「んー高揚感以外は別になんとも、傷も大分塞がってきたし」

 

そう言いながら煌牙は体中の傷口を見せると朔弥は魔戒筆を取り出して

魔導文字による印を描き始める

 

「まぁそれは仕方ないよ、にしても黒死牟の血は効き目が凄いね♪」

 

魔導文字を描いた朔弥は術を発動し光球を生み出すとそれを煌牙の体に重ねながらそう言い出す

 

光球が煌牙に重なるように浸透すると煌牙の体は薄く発光し傷口の再生速度が増すとやがて傷口は跡形もなく完治してしまう

 

「やっぱり!術での回復速度が桁違い♪どう煌牙ちゃん?」

 

そう言い出すドヤ顔をする朔弥に煌牙は

 

「いや治った事は素直に嬉しいけどさ・・俺の体に黒死牟の血が流れてるってのが・・正直言って複雑な気分」

 

鬼の回復速度は凄まじい、上弦の壱ともなれば他の鬼とは比肩しようもない速度だろうそれを利用して傷が治るのは悪くはない、だが煌牙にとっては先程まで死闘を繰り広げていた敵、自らの怒りに呑まれ暴走したがその原因を作り出した張本人の血が流れてる事に複雑な表情を見せる煌牙はそう言いながら朔弥に視線を移すと

 

「うーん・・・目には目を歯には歯をって言葉があるでしょ?」

 

少し悩みながら言葉を綴り出した朔弥、煌牙はそれを聞いて頷くと朔弥は話の続きを語り出す

 

「鬼にやられたなら鬼の力を利用して回復する、利用出来る物は何でも利用する!それが私の持論!魔戒騎士の鎧や魔戒剣の原料となるソウルメタルも元はホラーなんだし」

 

そう説明する朔弥に煌牙は驚きの表情を見せながら

 

「ホラー?ソウルメタルが?」

 

そう聞き返す煌牙はまさかソウルメタルの原料がホラーだとは知らず呆気に取られるも朔弥は

 

「ソウルメタルはね、ホラーの死骸と噴火したマグマが混ざり合って凝固した物質を加工して出来た特殊金属なの」」

 

朔弥は遠い目をしながら煌牙にそう話すと煌牙に抱きつきながら

 

「煌牙ちゃんは禰豆子ちゃんを認めたよね、大事なのはその心!煌牙ちゃんもそろそろ自分自身を受け入れてもいいじゃないかな?」

 

そう話すと朔弥は煌牙から離れ煌牙の反応を伺いながら様子を見てると

 

「考える時間が欲しい、色々あり過ぎて気持ちの整理がつかないんだ」

 

黒死牟との戦い、怒りに呑まれ心滅した事、心の闇が生み出したもう一人の自分、ザルバ、カナヲの気持ち、自分の体に黒死牟の血が流れてる事、ソウルメタルの原料がホラーだった事、色んな事が煌牙に押し寄せ気持ちの整理がつかない煌牙は俯きながら朔弥にそう告げ一人になりたいと一人部屋を出る

 

「ふぅ〜・・・・あのさ!一人になりたいんだけど」

 

部屋を出た煌牙は溜息を吐くと振り返りそう話しかける

 

「嫌!兄さんと一緒にいたい」

 

と煌牙の願いも虚しく一緒に付いてきたカナヲ、煌牙は実の妹に邪魔だと言えるような人間ではない為、どう言って1人になろうか考えていたが

 

「邪魔しないから!兄さんが一人になりたいって分かってる!でも!兄さん一人だと全部背負い込んでまた無茶しそうだから」

 

そうカナヲに言われ断る事も出来なくなった煌牙は

 

「じゃあ俺が無茶しないよう見張ってろよ!とは言っても牙狼剣も日輪刀もないし何も出来ないけどな」

 

少し不機嫌ながらもカナヲにそう言いながら一人歩き出す煌牙、カナヲは不機嫌な煌牙にバツが悪そうな顔になりながらも後を追いかけると

煌牙はふと立ち止まりカナヲに振り返ると

 

「やっぱり一人で考えるのは辞めた!」

 

煌牙はカナヲを見ながらそう話しかけるとカナヲは首を傾げ不思議そうに煌牙を見つめ

 

「兄さん?」

 

カナヲの呼びかけに煌牙は申し訳なさそうに頭を下げると

 

「カナヲさっきはゴメン!カナヲは俺の心配をしてくれてたのにきつく当たってしまった、ホントゴメン」

 

そんな煌牙にカナヲはあたふたとしながら

 

「いいの!私が一緒にいたいって言ったから」

 

カナヲは煌牙にそう話すと多少強張っていた表情が和らぎ煌牙に近寄ると

 

「なぁカナヲ・・話さないか?今までの事そしてこれからの事を」

 

そうカナヲに話しかける煌牙、カナヲはそれに頷くと

 

「うん・・私も兄さんに聞きたい事あったから」

 

カナヲはそう返事をすると二人は暁邸の屋上へ向かい出した

 

「屋上からの見晴らしって良いよなぁ、カナヲもそう思わないか?」

 

屋上に辿り着いた煌牙は周囲の景観を眺めながら隣に佇むカナヲに話しかけると

 

「うん・・でも周りは森ばっかりだし夜だからそんなに良いとは思わないよ」

 

と正直な感想を煌牙に告げるカナヲは

 

「兄さん体の方は大丈夫なの?」

 

そう心配するカナヲだったが煌牙は

 

「そうだな・・・うん!大丈夫みたいだ!」

 

体を軽く動かし動作確認をした煌牙はそうカナヲに話すと

 

「でも病み上がりだから無茶しちゃ駄目だよ?兄さんはそうゆうところあるから」

 

そう言いながら煌牙をジト目で睨むカナヲ 

 

「わかってるよ・・今回の件で嫌という程痛感したからな」

 

そうカナヲに話しながら煌牙は苦笑いをすると

 

「結局は昔と何も変わらなかったんだよ俺は・・修行して鬼と戦える力を得ても魔戒騎士として牙狼に認められても四ノ宮煌牙という人間は今も昔も同じ弱い人間だったというわけだ」

 

そう言いながら自らを乏し始める煌牙、カナヲはそんな煌牙に

 

「心はどこまでも強くなれる!兄さんが私に言ってくれた言葉忘れちゃった?私はね?兄さんは変わらなくていいと思うし弱くてもいい!

兄さんは弟や妹達の事を引きずりすぎてるんだよ!炭治郎は前を向いてるよ?どんなに辛くてもどんなに打ちのめされても前を向いて歩いてるよ?兄さんは死んじゃったあの子達の想いは受け継いでいかないの?

ずっとあの時のまま立ち止まって歩かないの?兄さん、もう自分を許してあげよ?』

 

そう話しながら涙目になっていくカナヲ、煌牙はそんなカナヲを見ながら

 

「罪って許されるのか?」

 

そう一言だけカナヲに尋ねる煌牙、そんな煌牙の問いかけにカナヲは

 

「分かんないよ、試した事ないし」

 

そう煌牙に返事をすると煌牙はフッとカナヲに笑みを浮かべると

 

「そうか・・それにしても今日はよく喋るなカナヲ」

 

そう話す煌牙だったがカナヲはジト目で煌牙を睨み付けると

 

「茶化さないで!私は兄さんを心配して」

 

煌牙を心配するカナヲだったが煌牙は先程までの重苦しい表情が和らぎ

どこかスッキリした顔になると

 

「カナヲありがとな!」

 

そう言いながらカナヲの頭をポンポンと優しく叩くと煌牙は

 

「悪いカナヲ!ちょっと用が出来たから話はまた後でな」

 

そう言いながらその場を後にしようとした煌牙だったが

 

「私も一緒に行きたい」

 

とカナヲが言い出したので煌牙はバツが悪そうな顔をして

 

「そうだったな・・カナヲ!俺を支えてくれないか?」

 

そう煌牙がカナヲに話し出すとカナヲは嬉しそうな顔でコクンと頷き

二人一緒に歩き出すのだった

 

そんな二人は朔弥の元に訪れると

 

「煌牙ちゃんなら必ずここに来ると思ってた。煌牙ちゃん・・自分と向き合う決心がついたんだね?煌牙ちゃんの心の闇・・陰我を断ち切る決心が」

 

そう静かに話しかける朔弥、心配そうに煌牙を見つめるカナヲだったが言葉を発さずに煌牙の返事を待つと

 

「俺は・・強くなりたかった。強くなって皆を守りたかった!だけど牙狼に認められ柱になるにつれ、その想いは次第に重荷へと変わっていった。かつての家族を守れなかった俺が牙狼や柱で良いのかと・・その重荷はやがて自らを弱者としてより強さを求めるようになった・・・馬鹿だよな?家族を失った奴なんて俺以外にもいるってのにさ?何自分の世界に閉じ籠って悲劇の主役気取ってんだって話だ!どんな辛くてもどんなに打ちのめされても立ち上がって前を向いて歩いてる奴がいるのに俺はそいつを知りながらもちゃんと知ろうとしてなかったんだ・・・俺強くなりたい‼︎今度こそ本当の意味で強くなりたい‼︎だからこそ俺はもう逃げない!今までの自分から目を背けたくないんだ」

 

決意に満ちた表情でそう宣言する煌牙、それを聞いたカナヲは

 

「兄さんはまた戦うつもりなの?私は兄さんに戦って欲しくない」

 

そうカナヲに言われた煌牙だったが

 

「カナヲ!俺が牙狼になりたいって思ったのはカナヲを守りたかったからなんだ!魔戒騎士でもなく鬼殺隊でもなく四ノ宮煌牙として一番守りたかったのはカナヲなんだ‼︎だからさ!俺にお前を守らせてくれないか?」

 

カナヲの両肩に手を置き顔を近付ける煌牙はカナヲにそう話すと

 

「ズルイよ兄さん」

 

そう言って頬を仄かに赤らめるカナヲ、戦って欲しくないという気持ちはあるものの煌牙にそう言われてその言葉を否定出来ないカナヲは

 

「じゃあ・・背中は兄さんに預けるから兄さんの背中は私に預けて?

私も兄さんを守りたい‼︎」

 

そう力強く宣言するカナヲ、その瞳は決意に満ち溢れ全く煌牙へと向けられると

 

「はい!そこ‼︎兄妹でイチャつかない‼︎」

 

もうお腹いっぱいですと釘を刺してきた朔弥は

 

「とりあえず二人共病み上がりなんだし今日はゆっくり休んで」

 

そう言いながら二人を自室から追い出した朔弥、ふぅ〜と溜息を吐くと

 

「予想外の出来事起きちゃったけど計画の範囲内、煌牙ちゃんには頑張って貰わないと・・・ごめんね?辛い使命を背負わせて」

 

そう密かに呟くのだった

 

 

 

 

それから一夜明け鬼の力をもって傷も完治し全快の煌牙は

 

「ようやく力を求める気になったか」

 

ここ暁邸に鎮座する修練の間で内なる闇と対峙していた

 

「ああ」

 

煌牙は内なる闇であるもう一人の自分にそう返し

 

「俺は本当の意味で強くなりたい!」

 

そう力強く宣言する煌牙だが

 

「本当の強さ?力こそが本当の強さだ!敵を捻じ伏せ蹂躙する圧倒的な力こそが本当の強さだろ?鬼がそうであるようにな」

 

そんな煌牙を説き伏せるような発言をする内なる闇、煌牙はそんな発言に一度頷き肯定すると

 

「それも強さではあるさ、弱かった俺が求めた強さがそれだったからな

だけどそうじゃなかった!本当の強さは・・・お前も分かってるだろ?

お前は俺なんだから」

 

内なる闇、煌牙の心の弱さが生み出した心の闇だがそれもまた煌牙の一部であり半目してるとはいえ煌牙の心情の変化を感じ取っていた内なる闇は煌牙の発言にフッと薄い笑みを浮かべ

 

「ああ!俺はお前でありお前は俺だ‼︎だがそんな決意だけじゃ何も変わらない!お前は牙狼にはなれない」

 

内なる闇は煌牙に非情な言葉を浴びせ現実を突きつけようとするが

 

「昔、慎寿朗さんにも言われたなぁお前なんかが牙狼になれる訳ないってな!ふざけんな!なれるなれないじゃないんだよ‼︎俺が牙狼になるって決めたんだ‼︎カナヲを守る為に‼︎」

 

そう力強く反論する煌牙、内なる闇はそれを聞いて

 

「なんだ。ちゃんと分かってるじゃないか!俺達が何の為に強くなろうとしたかその原点をな!ならこれ以上の問答は無用だな!来いよ!お前の言う本当の強さ!俺に見せてみろ‼︎」

 

そう言いながら手首を翻し手招きして挑発する内なる闇、煌牙はふぅ〜と深く深呼吸をすると戦闘態勢に入り

 

「はぁっ!」

 

掛け声を掛けながら内なる闇に突進する煌牙、それに対し受け身の構えを取った内なる闇は上段蹴りを繰り出してきた煌牙の右脚を腕で防ぎながら絡め取り投げ飛ばそうとする

 

「まだだ!」

 

そう言いながら煌牙は右脚に渾身の力を込め強引に蹴り飛ばそうとするが踏ん張りを効かせ食い下がる内なる闇、力が拮抗し埒があかないと判断した煌牙は軸足となる左脚に力を込め全力で後方宙返りを試みる

 

踏ん張りを効かせていた内なる闇も宙に向かう方向には抵抗出来ず煌牙の右脚ごと宙を舞うと煌牙は身体を横に捻り右脚ごと内なる闇を地に叩きつける

 

「がはぁっ⁉︎」

 

煌牙の右脚を絡め取っていた事で受け身を取れなかった内なる闇は苦しそうな声を漏らすがすぐさま立ち上がり

 

「面白ぇ!」

 

そう言って獰猛な笑みを浮かべると

 

「力ってのはテメェの中で順応させ昇華して使いこなすもんだ‼︎今の俺みたいになぁ‼︎」

 

内なる闇はそう叫びながら一瞬で煌牙の懐に入り込み

 

「この体に流れる鬼の血もそうだ!順応させ血肉になればより強くなれる‼︎鬼のように強く‼︎呼吸も使える!十二鬼月最強の上弦の壱と同等の存在になれるんだ!欲しくはないか?この力が‼︎」

 

煌牙の顔を鷲掴みにし叩き伏せた内なる闇はそう叫びながら獰猛な笑みを煌牙に向ける

 

その獰猛な目はまるで鬼になったかのような雰囲気を漂わせており

内なる闇はその力を振るわんと煌牙を引っ張り上げ腹に強烈な蹴りを浴びせ蹴り飛ばすと

 

「テメェが俺に呑まれればどのみちこの力は俺の物になる!鬼の力と呼吸の力!牙狼の力が合わされば俺は誰にも負けない最強の存在になるんだ‼︎」

 

そう言いながら蹴り飛ばした煌牙に歩み寄る内なる闇、強烈な蹴りを腹部に受けて倒れ込む煌牙は口から血を吐きながらヨロヨロと立ち上がり

 

「いらねぇよ鬼の力なんざ!そんなもんに頼らなくたって強くなれるさ

本当の強さってやつを思い出したからな‼︎俺が一番最初に求めた力は俺が欲しかった力は・・・誰かを守る力だ!たった一人でもいい明日へ!その先へと繋げていける力だ!守りし者として戦いを・・俺も‼︎」

 

そう内なる闇に話すと煌牙は

 

「カナヲが待ってるんだ‼︎例え俺自身であっても負ける訳にはいかないんだよ‼︎」

 

そう叫びながら煌牙はカナヲとお揃いの鈴を右手に握りしめ内なる闇へと走り出す

 

ったく世話の焼ける奴だ・・もう俺を生み出すんじゃねえぞ・・

 

そう小声で喋る内なる闇、その顔は嬉しそうであり寂しげな笑みを浮かべながら煌牙を見つめると内なる闇も煌牙に向かって走り出し

 

やがて両者の右拳が互いの頬に届くのだが・・・・

 

 

 

 

チリーン

 

煌牙の拳が内なる闇へと届いた瞬間、右拳から鈴の音が鳴り響き煌牙の拳から金色の波動が解き放たれる

 

 

 

 

 

 

 

チリーン

 

「きゃっ⁈・・何?どうして鈴が鳴って・・それにこの金色の光は」

 

一方修練の間の外で煌牙を待っていたカナヲと朔弥、煌牙の無事を祈り手に握りしめていた鈴が突然鳴り出して鈴の音と金色の波動に思わず驚くカナヲはそう言いながら鈴を見つめていると

 

大牙ちゃん・・・縁壱ちゃん・・見てる?破邪の奏鈴が共鳴したよ・・二人の願いが届いたよ

 

隣に立つ朔弥は密かにそう呟きながら涙を流していた

 

 

 

 

 

「今のは一体⁈」

 

突然の出来事に呆然とする煌牙、拳を開き鈴を見つめるが鈴は何の反応も見せずにいたが

 

「見せて貰ったぞ?お前の言う本当の強さ・・心の強さってやつをな」

 

そう煌牙に話しかけてきた内なる闇、その体は金色の波動の影響と煌牙を認めた事で存在意義を失くし消えかかっていたが最後に伝えたい事があると煌牙を見つめ

 

「カナヲを頼んだぞ!黄金騎士四ノ宮煌牙」

 

そう言って内なる闇は静かに煌牙の前が消え去っていった

 

「任せておけ」

 

煌牙は誰もいない空間の中そう言いながら振り返り

 

「俺は必ず牙狼になる」

 

決意を宿した煌牙はそう言って修練の間を後にするのだった

 

 

 

 

 

「兄さん‼︎」

 

「煌牙ちゃん‼︎」

 

修練の間の前で煌牙を待つカナヲと朔弥、そんな二人の前に扉を開き修練の間を出てきた煌牙が現れると煌牙に駆け寄り

 

「・・・兄さん・・だよね?」

 

「・・・うん♪間違いなく煌牙ちゃんだよ〜♪私が保証するから大丈夫大丈夫〜♪」

 

一目で煌牙本来の人格なのか判別がつかなかったカナヲだったが朔弥は今の煌牙が本来の人格の煌牙だと見抜きカナヲにそう告げると

 

「アンタの保証なんて信用出来るのかね〜?」

 

そう皮肉を言いながら苦笑いする煌牙、朔弥はムスッと頬を膨らませ

 

「保証出来るよ‼︎だって私は煌牙ちゃんとカナヲちゃんの・・・・魔戒法師だからね〜♪」

 

そう言いながら慌てる素振りを見せる朔弥は

 

「ホントはね!魔戒騎士が内なる闇を克服して試練を乗り越えると新たな力。魔導馬が召喚出来るの!牙狼の場合轟天という黄金の魔導馬なんだけどこの世界に来てから召喚出来ないみたいなんだよね」

 

そう煌牙に説明する朔弥は

 

「だから煌牙ちゃんが轟天を召喚する事は出来ないの!」

 

そう話して申し訳なさそうにする朔弥だったが

 

「そっか、まぁ出来ないもんはしょうがないさ・・俺も今牙狼になれないし」

 

苦笑いしてそう話す煌牙、朔弥はキョトンとした顔をして

 

「あ〜そっか・・今牙狼剣がないもんね」

 

「いやそうじゃなくて!俺牙狼の資格を失ったんだよ」

 

「・・・・ふぇ⁈どどどどゆことぉ〜⁈聞いてないよ!知らないよ!アンビリバー‼︎」

 

「黒死牟との戦いで怒りに任せて心滅しちゃってさ、んで心の闇に呑まれて心滅獣身したんだよ」

 

「・・・それで牙狼剣の声が聴こえない・・という訳か・・なるほど・・・まぁ大牙ちゃんは認めないだろうね」

 

「だからもう一度認めて貰う‼︎俺は必ず牙狼になる」

 

そう会話する煌牙と朔弥、カナヲはその様子を見ていたのだが

 

「兄さん」

 

真っ直ぐ煌牙に視線を注ぐカナヲ、煌牙は軽く笑うとカナヲに近付きポンとカナヲの頭に手を乗せ

 

「色々と心配かけたな、もう大丈夫だから」

 

そう言って頭を撫で始める煌牙

 

「うん」

 

その言葉に安心して安堵の表情を浮かべるカナヲに

 

「はいそこ!兄妹でイチャつかない‼︎イチャつくなら私も混ぜて‼︎」

 

そう言って煌牙とカナヲの間に飛び込んできた朔弥は煌牙とカナヲの二人の手を握り締め

 

「二人共色々とごめんね?いっぱい苦労かけたね!ホントにごめんね」

 

そう言って突如泣き出した朔弥、煌牙とカナヲは何の事?と顔を見合わせ首を傾げ

 

「兄さん?この人が何言ってるのか分からない」

 

「うん!何で謝られてるのか俺も分かんない」

 

そう話していると

 

「煌牙ちゃん、とりあえず英霊の塔に行こ?大牙ちゃんや歴代の黄金騎士にもう一度認めて貰お?」

 

泣きながらそう煌牙に話しかけてきた朔弥、煌牙はそれに頷くと

 

「斬吼狼ちゃ〜ん‼︎帰ってきてるんでしょ〜‼︎」

 

大声で斬吼狼の名を叫ぶ朔弥、それに反応した斬吼狼が不機嫌そうな表情で現れ

 

「煩い‼︎大声出さなくても聴こえてるっつ〜の」

 

そう朔弥に文句を言って

 

「煌牙・・心の闇を克服したからって大牙がそう簡単に認めるとは思えねぇ!」

 

斬吼狼が煌牙にそう話しかけ厳しい現実を突き付けると

 

「分かってるさ!そう簡単に認めて貰えるとは思ってないし、だからといって諦める気も更々無い‼︎」

 

煌牙は斬吼狼にそう言い返すと斬吼狼はフッと笑みを浮かべ

 

「覚悟は出来てるってか?んじゃ行くか‼︎大牙が眠る英霊の塔へ」

 

斬吼狼はそう言って足元に影を作り出すと

 

「何か有耶無耶になってるけどさっきの鈴の音と金色の光って何だったの?」

 

とカナヲが先程の出来事を口にすると

 

「あっ!それな!俺も気になってたんだよ!」

 

煌牙も先程の出来事に反応すると

 

「今から向かうってタイミングでコイツら・・・全く誰に似たんだか」

 

そう言って呆れ返る斬吼狼はチラッと視線を朔弥に向けると

 

「血は争えないってやつね総悟」

 

と斬吼狼のパートナーであるアルヴァが喋り出すと

 

「それは破邪の奏鈴の共鳴だな・・本来は二対で一つの魔導具だが

お前らがそれぞれ持ってるって事はそうゆう事なんだろう」

 

と斬吼狼がザックリと説明すると

 

「詳しい事は大牙本人から聞いてみな!」

 

そう言って斬吼狼はサッサと影の中に飛び込み

 

「よ〜し♪私達も行こうよ〜♪煌牙ちゃんカナヲちゃん♪」

 

煌牙とカナヲの手を握り影の中に飛び込もうとする朔弥は

 

「アーイ!キャーン!フラーーイ‼︎」

 

そう言って影に飛び込む朔弥

 

「いや!飛んでねぇから‼︎影の中に沈んでるだけだから‼︎」

 

「この一連の流れについていけない」

 

煌牙とカナヲはそう言いながら朔弥と共に影に消えていくのだった

 

 

 

 

「うっわ‼︎改めて見たら戦闘痕エグっ‼︎」

 

斬吼狼の血鬼術で再び黒死牟と戦った場に戻って来た煌牙は自身と黒死牟の戦いがいかに激しかったかを痛感し

 

「ここで俺は心滅し黒死牟に負けたんだな」

 

と戦闘痕を見つめながらそう呟く煌牙だったが

 

「負けてない‼︎兄さんは負けてない‼︎」

 

とカナヲが強く否定すると

 

「そうだな!黒死牟の目的は煌牙の抹殺、だがお前は生きている!なら

お前は負けてないんじゃないか?」

 

とカナヲをアシストする斬吼狼は

 

「まぁ勝ってもいないがな」

 

と付け加えカナヲから白い目で見られる斬吼狼は

 

「んな事より急ぐぞ!日光は駄目なんだよ」

 

焦り気味でそう話す斬吼狼は全速力で英霊の塔へと駆け出し塔の中に駆け込むと

 

「う〜ん・・斬吼狼ちゃんダサイ」

 

と割と辛辣な感想を述べた朔弥、煌牙はそんな朔弥を見ながら

 

「日光浴びて平気なアンタが異常なんだよ‼︎」

 

とツッコミを入れると

 

「待ってろよ・・必ずお前を引き抜くから」

 

戦場跡に突き刺さったままの牙狼剣の元に歩み寄った煌牙は牙狼剣を握り締めそう呟くと

 

「さあ行こう!」

 

そう言ってカナヲと朔弥を引き連れ英霊の塔に入っていくのだった

 

 

 

そんな煌牙達は先に入った斬吼狼と合流し英霊の塔最奥、英霊が眠る英霊の間に前に立つと

 

「ふぅ〜・・・行くか」

 

深呼吸で気持ちを固めた煌牙は重く閉ざされた扉を開き英霊の間へと入ると

 

帰れ‼︎黄金騎士を受け継ぐ資格無き者よ‼︎

 

英霊の間からそう声が響き渡り煌牙はその歩みを止める

入室早々痛烈な言葉を浴びせられた煌牙、覚悟していたとはいえ直接言葉にして言われると堪えるものがあるのか表情を曇らせ

 

「例え今すぐ認められなくても俺は必ずもう一度牙狼になる!絶対に認めさせてやる‼︎」

 

と英霊に宣言すると

 

いいだろう!お前のその覚悟がどれ程のものか私が確かめてやろう

 

そう声が響くと一つの光が英霊の間に現れ、その光は段々と人の形となりやがて

 

「こうして対面するのは三年ぶりだな四ノ宮煌牙」

 

そう煌牙に話しかけてきた英霊“暁大牙“は煌牙の後ろに待機していた

カナヲ、朔弥、斬吼狼を見渡すと

 

「お前達と対面するのは実に四百年ぶりだ!久しいな!総悟も鬼になって生きていたとは驚いた!だが嬉しくもある!」

 

と朔弥と斬吼狼に話しかけた大牙はカナヲに目をやると

 

「名は何という?」

 

とカナヲに名を聞くとカナヲはまさか話しかけられるとは思わなかったのか少し驚きつつも

 

「栗花落カナヲ」

 

と大牙に答え

 

「・・・そうか・・・良い名だ‼︎」

 

少しばかりの沈黙の後大牙はカナヲにそう言うと

 

「思い出話に華を咲かせるのも悪くはないが・・」

 

と大牙がそこまで言いかけ

 

四ノ宮煌牙が牙狼を受け継ぐに値するか確かめねばな

 

英霊の間に響き渡る程の声で叫ぶと一振りの剣を煌牙に投げ渡し大牙自身も一振りの剣を手に煌牙の前に立つ

 

「四ノ宮煌牙‼︎お前の覚悟を私に示せ‼︎」

 

大牙はそう言って剣を構え煌牙を見据えると

 

「俺の覚悟・・暁大牙!アンタに見せてやるよ‼︎」

 

そう言って煌牙も剣を構えると両者の間に緊張感が走り

 

「はぁぁっ‼︎」

 

「ふんっ‼︎」

 

両者共に走り出すと互いの剣戟がぶつかり合い火花が飛び散ると

煌牙と大牙共に目まぐるしく動き回りながら互いに剣戟をぶつけ合う

 

「凄い・・あの人・・兄さんよりも強い」

 

「暁大牙・・先代牙狼であり初代牙柱だしな・・今の煌牙より強いのは当然だろ」

 

「でも煌牙ちゃんはきっと大牙ちゃんを超えていく・・・今は無理でもいつかきっと」

 

二人の戦いを見守る三人がそう話していると

 

「どうした?四ノ宮煌牙お前の覚悟はその程度か?」

 

「くっ!」

 

両者一進一退の攻防を繰り広げるが煌牙と大牙の力量差は顕著で徐々に

押され始める煌牙、大牙はそんな煌牙に手を抜く事なく

 

ーー日の呼吸 烈日紅鏡ーー

 

煌牙に向けて高速の左右二連撃を繰り出す大牙、煌牙は咄嗟に後ろに飛び退きながら剣で大牙の型を防ぐも凄まじい剣戟の威力に弾き飛ばされてしまう

 

「くそっ!やっぱり滅茶苦茶強ぇ!それに今の型はヒノカミ神楽の」

 

そう言いながら立ち上がる煌牙、自分との力量の差は明確だがそれでも諦めない煌牙は大牙に目を向けると

 

「いない⁈・・っ!上かっ‼︎」

 

ーー日の呼吸 碧羅の天ーー

 

大牙の姿を見失った煌牙だったが上空から大牙の気配を察知すると咄嗟に転がり大牙の繰り出した円を描く斬撃をかろうじて躱し

 

ーー牙の呼吸 参の型改 閃空鳴御雷ーー

 

渾身の踏み込みで大牙に肉薄する煌牙、そこから更に体重移動を利用し緩急を付けた動きで大牙の背後に回り込み斬撃を繰り出そうとすると

 

「ほう!参の型を改良したか!だが‼︎お前の動きは把握している‼︎」

 

その場で跳躍し空中回し蹴りによるカウンターで煌牙を迎撃した大牙は

煌牙にそう言うと

 

「柱としては及第点・・だがその程度で上弦を相手に渡り合えると思うな‼︎」

 

と煌牙に厳しく意見する大牙、大牙が想定した上弦の鬼は黒死牟であり

かつて戦った事のある大牙は今の煌牙では勝てないと指摘するのだが

 

・・・・ヒノカミ神楽

 

立ち上がった煌牙はそう小声で呟くと

 

ゴオォォォォォォォ

 

と呼吸音が変わり大牙はその変化に僅かながら笑みを浮かべ

 

「それでいい・・そこからが始まりだ」

 

と小声で呟くと

 

ーー日の呼吸 陽華突ーー

 

切っ先を煌牙に向けて全体重を乗せた突きを放つ大牙

 

ーーヒノカミ神楽 幻日虹ーー

 

体を強く捻りしながら大牙の型を躱す煌牙、避けた際に残像が生み出され大牙も一瞬だが残像に気を取られ

 

ーーヒノカミ神楽 炎舞ーー

 

大牙が見せた僅かな隙を見逃さなかった煌牙は斬り上げと斬り下ろしの上下二連撃で大牙に斬りかかると

 

「はぁぁぁっ‼︎」

 

そう叫びながら渾身の横薙ぎで煌牙を払い退ける大牙、体勢を崩された煌牙は一旦距離を開けようと後ろに跳び退がると

 

ーー日の呼吸 日暈の龍・頭舞いーー

 

龍が舞い踊るような流れで煌牙に斬りかかって来た大牙、反応速度に優れた煌牙といえど大牙のこの追撃は捌き切れないと守りを固めるが

 

ザシュッ

 

大牙の振るう剣が煌牙の脇腹を捉え煌牙は斬り捨てられてしまう

 

「兄さん‼︎」

 

戦いの行く末を心配しながら見守っていたカナヲは煌牙の現状にそう叫び煌牙の元に駆け出そうとするが

 

「これは黄金騎士としての大牙と煌牙の戦いだ!気持ちは分かるが水を差すな」

 

とカナヲの肩を掴み制止する斬吼狼

 

「どんな結末が待っていようと今ここで煌牙ちゃんを止めたら駄目‼︎

煌牙ちゃんの牙狼になるという決意・・誇りを傷付けちゃう」

 

今にも飛び出したい気持ちを必死に押し殺しながらカナヲにそう告げる朔弥、カナヲはグッと唇を噛み締めながら煌牙を見つめると

 

「兄さん‼︎兄さんは絶対牙狼になれるよ!だって兄さんは・・私の希望だから‼︎」

 

そう大きな声で煌牙に呼びかけるカナヲ、脇腹を斬られ倒れ込む煌牙は

剣を再び握り締め何とか立ち上がると

 

「希望か・・だったら絶対負けられないな‼︎カナヲが託した希望、想い俺はそれを紡ぎ未来へと繋いでいく‼︎」

 

痛みを堪えながらそう話す煌牙、決意に満ちた目をしてるが先程の一撃は煌牙にとって致命的であり脇腹からは大量の血が流れ立っているのが精一杯なのだが

 

「・・・そうか・・・」

 

その言葉を静かに聞いていた大牙はそう一言だけ話すと

 

ズブッ

 

「どんな覚悟があろうが!どんな想いを紡ごうが!それを成し遂げる力が無ければ意味は無い‼︎」

 

そう言いながら煌牙の胸に剣を突き刺した大牙、煌牙は血を吐きながら胸に刺さる剣を握り締め

 

「アンタの言う通り力がなければ何も成し遂げられない!だけど力だけじゃ駄目なんだ・・想いなき力なんか俺はいらない!」

 

剣を握り締める手から血が流れる事も厭わずそう大牙に告げる煌牙に

 

「それがお前の出した答えか・・なるほど」

 

そう言って大牙は煌牙の胸に突き刺した剣を引き抜くと煌牙の胸から大量の鮮血が溢れ出て煌牙は思わずよろめき倒れそうになるが

 

「お前の覚悟はわかった・・だが!今のお前を牙狼として認める気はない‼︎」

 

そんな煌牙を抱きとめそう告げた大牙は

 

「総悟‼︎お前に任せるつもりだったが気が変わった!四ノ宮煌牙は私が引き受けよう」

 

そう斬吼狼に話す出す大牙は

 

「総悟・・その娘を・・カナヲを頼んだ」

 

大牙からそう言われた斬吼狼は頭を掻きながら

 

「ハッ!しょうがねぇな!お前の頼みだし引き受けてやるよ」

 

そう大牙に返事すると斬吼狼は

 

「カナヲ!俺達は帰るぞ‼︎煌牙の事が心配だろうが大牙を信じろ!悪いようにはしねぇさ」

 

「嫌!私は兄さんから離れない!離れたくない‼︎」

 

そう言って頑なに煌牙から離れる事を拒否するカナヲだったが

 

「兄妹の絆か・・・カナヲ・・兄を想うお前の気持ちは痛い程分かる

だが今はコイツを・・四ノ宮煌牙を信じてやれ‼︎」

 

そうカナヲを諭す大牙だが

 

「兄さんの事はいつだって信じてる!でも!」

 

それでも心配だから離れたくないカナヲはこの場に留まろうとするが

 

「お前煌牙なら牙狼になれるって信じてんだろ?だがな!煌牙が再び牙狼になったらそれで満足か?お前はどうなんだ?煌牙の横に並び立てる程強いのか?煌牙の背中を任せられる実力がお前にあるのか?ハッキリ言わせてもらうが俺は煌牙の背中を任せるなら桜花だと思っている!」

 

斬吼狼にそう言われたカナヲは悔しそうな表情で斬吼狼を睨むが斬吼狼が言っている事は間違ってはいないので反論出来ないでいたカナヲは

 

「私だって強くなりたい!今の私じゃ兄さんの足手まといにしかならないのは分かってる‼︎でも・・でも‼︎私も・・ううん・・私は桜花さんよりも兄さんを支えられる存在でありたい」

 

そう決死の思いを斬吼狼にぶつけたカナヲ、斬吼狼はカナヲの答えに

フッと軽く笑みを浮かべ

 

「いい覚悟だ・・と言いたいが魔戒法師でもある桜花に並び立つのは容易じゃないぞ?」

 

「だとしても・・私は私だから!私にしか出来ない事がきっとある」

 

と斬吼狼の問いかけに自分の意志を伝えるカナヲ

 

「煌牙!お前の妹がここまで言ってんだ!お前も期待に応え・・って寝てるし」

 

大牙との激しいぶつかり合いの末致命傷を負った煌牙は大牙の腕の中でいつの間にか気を失っていたのだが

 

「・・・・朔弥・・総悟・・コイツの体に鬼の血を注入したな?それも鬼無辻の血の濃い鬼の血を・・上弦の鬼といったところか」

 

「うん・・黒死牟の血と細胞を抑制剤と調合して回復薬に混ぜた薬を煌牙ちゃんに打ったの、そうしないと煌牙ちゃんは死んでたから」

 

「そうか・・やけに止血が早いと思ってな、呼吸による止血だけで止まる傷ではなかったからな」

 

「驚かないんだね大牙ちゃん・・それに怒られるかと」

 

「お前という前例があるしな、それにそうしないと駄目だったのだろう

何より朔弥、お前が煌牙の事を想って決断した事だ!私が口を挟む事ではない」

 

そう話し出す大牙と朔弥の二人を見て斬吼狼は

 

「あー悪りぃけど俺先に戻ってるわ!カナヲ!煌牙が戻って来るまでの間俺がお前を鍛えてやる!少なくとも今の煌牙に並び立てるよう厳しく指導するからな、覚悟しとけよ」

 

「・・・兄さんはどうなるの⁈」

 

「大牙と朔弥がいるんだ・・アイツらに任せとけ」

 

「・・信用できるの?」

 

「俺にとっちゃ400年来の仲間だしな、誰よりも信用してるぞ?それにアイツ等は・・・あぁ俺の口から語るのは野暮だな、それよりもだ!

煌牙よりも自分の事を考えろ」

 

「斬吼狼が鍛えてくれたら兄さんは私に背中を預けてくれるの?」

 

「それはお前の資質と努力次第だな、でもまぁ少なくとも今のお前よりは確実に強いお前にしてやるよ」

 

「・・・うん・・私強くなりたい」

 

「なら今から俺の事は師範と呼べ」

 

「それは嫌‼︎私の師範はしのぶ姉さんだから」

 

「ハッ!義理堅い奴だな!なら総悟兄さんでも」

 

「それも嫌‼︎私の兄さんは兄さんだけだから‼︎」

 

「お、おう・・手厳しいな」

 

「総悟さんよろしくお願いします」

 

「・・・おう・・悪くはねぇな・・んじゃ俺達先に戻ってるわ」

 

「斬吼狼ちゃん‼︎カナヲちゃんをよろしくね‼︎」

 

「総悟任せたぞ」

 

そんな会話の後、斬吼狼は振り返ると大牙と朔弥に挨拶がわりに軽く手を上げ英霊の間の扉を開き

 

「ああ‼︎そういやもう一人いたわ‼︎不可抗力とはいえ裸にしちまったし詫びにチビガキの面倒も見てやるかな」

 

あっ⁉︎と瑠花の事を思い出した斬吼狼はそう言いながら影を作り出すと

 

「総悟さんって小さな子供に興味あるの?」

 

斬吼狼が誰の事を言ってるのかまだ分かってないカナヲだったがチビガキを裸にしたと聞いて蝶屋敷にいる三人娘も危ないんじゃないかとドン引きするカナヲ、斬吼狼はそんなカナヲの対応に

 

「おい⁈待てカナヲ!ジリジリと後退するな!アイツだ!煌牙の妹のチビガキだ!アイツ童磨に捕まって喰われる寸前だったから俺も焦って童磨だけ綺麗に斬れなかったんだよ」

 

と必死に説明する斬吼狼

 

「それで瑠花ちゃんの服だけ綺麗に斬って裸にしたって事?凄く器用だね斬吼狼さん」

 

そう言って更に後退するカナヲ

 

「俺にそんな趣味はねぇ‼︎しかも総悟から斬吼狼に戻ってるし⁈そもそもそんな趣味持ってる奴はアイツだろ‼︎」

 

と必死に話す斬吼狼は大牙に向けて指を差すと

 

「うおっ⁈危ねぇ⁈大牙急に剣を投げつけるな‼︎事実だろ‼︎」

 

「私もそんな趣味はない‼︎私が好きになった人がそうだっただけだ」

 

「はいはい、言い訳はいいから」

 

「ほう‼︎私にサバックを挑みたいようだな、相手になるぞ」

 

「いや・・俺忙しいからもう行くわ!」

 

と斬吼狼は慌てて影の中に逃げ込むと

 

「あっ⁈総悟さん・・・あの!兄さんの事よろしくお願いします」

 

先に影に逃げた斬吼狼の後を追うカナヲはふと立ち止まり大牙と朔弥に煌牙の事を託すと影に飛び込み英霊の間から消えていくのだった

 

「・・・朔弥・・いつ間にかこんなにも大きくなったのだな」

 

「うん・・煌牙ちゃんもカナヲちゃんも立派に成長してるよ・・・親は駄目駄目だけどね・・・」

 

「そうだな・・理由はともかく我が子を捨てる親に親を名乗る資格などないだろう」

 

「そうだね私もそう思うよ。でも!何かしてあげたいって思うのは悪い事かな?大牙ちゃんもそう思ってるからこんな回りくどい真似したんでしょ?」

 

「私は不器用でな、こんなやり方しか思いつかなかった」

 

「知ってるよ?大牙ちゃんの事は私が一番理解してるよ」

 

「そうだな・・・朔弥、話は変わるが黒死牟は気付いたと思うか?」

 

「う〜ん・・どうだろう?あれから400年経ってるし・・仮に気付いたとしても手遅れじゃないかな?だって私達の願いは届いてるんだし」

 

「願いか・・叶うのなら今の代でこの不変の歴史を終わらせ悲しみの連鎖を断ち切って欲しいものだ」

 

「出来るよ‼︎煌牙ちゃんなら‼︎カナヲちゃんと一緒なら必ず出来るよ‼︎

だってあの子達は・・私達の子供なんだから‼︎」

 

「そうだな・・私も子供達を信じよう!」

 

「うん!」

 

「朔弥、煌牙に投入した黒死牟の血と細胞の効果はいつまで保つ?」

 

「恐らく二週間ってとこかな?」

 

「そうか・・ならばこの二週間という短期間で煌牙を徹底的に鍛え上げる、通常なら死に追い込まれる程の極度の負荷だが幸いにも鬼の力を有しているから死にはしないだろう」

 

「そこまでやるつもりなの⁈」

 

「煌牙が生きているという事実が明るみになれば黒死牟は確実に煌牙を殺しに来る!だからこそ煌牙には今より強くなってもらわねばならん‼︎

少なくとも奴と渡り合えるだけの実力を」

 

「大牙ちゃんの気持ちは分かるよ・・分かるけど・・私は」

 

「稀代の魔戒法師といえど人の母、お前の気持ちも分かる。出来る事なら私が生きている間に奴を・・鬼無辻を討ち果たし子供達に鬼殺という過酷な道を閉ざしたかったのだが」

 

「うん・・大牙ちゃん若くして死んじゃったから・・痣の発現の代償が寿命を縮めるって縁壱ちゃん言ってたし」

 

「だからこそ私に出来る事はこれしかないのだ、過酷な道を歩む息子に

過酷な運命に抗う力を!」

 

「私は・・私はどうすればいいかな?」

 

「お前は今まで通りでいいのではないか?魔戒法師として魔戒騎士と共に戦い母として子供達の行く末を見守ってやってくれ」

 

「大牙ちゃん」

 

「大丈夫だ!煌牙が私との修行を終えた時煌牙は再び牙狼に‼︎四ノ宮煌牙しかなれない煌牙だけの牙狼になれる筈だ‼︎」

 

大牙と朔弥が煌牙とカナヲの実の両親だという事実が判明するが当の本人達は知らぬまま時は経ち、煌牙は朔弥のサポートを受けながら指導という名の命がけの死闘を大牙と共に英霊の間で繰り広げ、カナヲもその後目を覚ました瑠花と共に斬吼狼を相手に激しい鍛錬を積んでいた

 

 

 

〜それから二週間後〜

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁ‼︎お兄!お兄ぃぃ‼︎」

 

「瑠花‼︎良かった!瑠花が生きててくれて本当に良かった」

 

修行中朔弥から二週間前の出来事、妹の瑠花が童磨と交戦の末死亡、後に斬吼狼が直前に救出していた事を聞かされていた煌牙はこうして再会出来た事を喜び泣きながら飛びついて来た瑠花を優しく抱きしめると

 

「総悟!瑠花を助けてくれてありがとう!本当に感謝してるよ‼︎・・・だが裸にした事は兄ちゃんとしては許せんなぁ‼︎」

 

「煌牙待て‼︎マジで喰われる寸前だったんだって‼︎・・・スマン‼︎」

 

「だってよ!どうする瑠花?」

 

「恥ずかしいからその話は辞めて‼︎」

 

と赤面しながら会話を強制的に中止すると

 

「煌牙様‼︎」

 

そう煌牙の名を叫びながら物凄い速さで近寄って来たのは

 

「あれ?お前下弦の肆じゃん、何でここにいるんだ?」

 

「そんな⁉︎煌牙様が言ってくれたじゃありませんか⁈俺に仕えろって」

 

「いやそんな事言ってないけど」

 

「そんな事よりお体の方は大丈夫なんですか?どこか痛めたりしてませんか?」

 

「それは良いけど・・何でサラッと流してんの」

 

「あら、そんな事言ってはいけませんよ煌牙さん!零余子さんは貴方の怪我を治そうと懸命に頑張ってましたしこの二週間不在の貴方をとても心配してました」

 

「・・・そっか!ありがとな!それと珠世さんもありがとう」

 

「おい‼︎煌牙‼︎珠世様の治療をついでみたいに言うな!珠世様に失礼だろ‼︎」

 

「おっ!愈史郎さんじゃないですか〜、差し入れありがとな〜良いもの読ませてもらったよ」

 

「ん?俺は書物など持っていった覚えはないが」

 

「○月X日今日の珠世様は『くたばれクソ煌牙ァァァ‼︎』」

 

と零余子、珠世、愈史郎を交えて会話する煌牙はキレた愈史郎に追いかけられながら逃げ回っていた

 

「何遊んでんだ⁈煌牙は」

 

「でもあんなに楽しそうな兄さんを見るのは初めて」

 

「よ〜し♪私も煌牙ちゃんに混じっちゃおうかな〜♪」

 

「そんな事してる場合ではない!」

 

『その通りよ!耳飾りの少年が今日から任務に復帰、柱も動くみたいだし一筋縄じゃいかない相手よ、十二鬼月・・上弦の可能性もあるわ』

 

「・・・ザルバみたいに喋ってる」

 

『ええ‼︎私はアルバ総悟のパートナーよ!それよりあの阿呆魔戒騎士を何とかしなさい‼︎今は夜、貴方達の仲間が既に鬼と交戦してる筈よ!』

 

「うん・・兄さん‼︎炭治郎達が任務復帰みたい!愈史郎も巫山戯てないで真面目にやって‼︎

 

煌牙と愈史郎の追いかけっこを呆れながら見ていた斬吼狼と大牙に対しカナヲと朔弥は満更でもないようだが状況が状況なのでカナヲにしては珍しく大声でそう叫ぶと

 

「おう‼︎ハハッ!愈史郎怒られてやんの」

 

「何で俺だけなんだ!お前も同罪だろ!」

 

お兄も愈史郎も五十歩百歩‼︎争いは同レベルでしか起きないだよ!

 

「「俺とコイツを一緒にするな‼︎」」

 

黙れ‼︎」」

 

「「あい」」

 

子供のような掛け合いを続けていた煌牙と愈史郎だったが業を煮やした大牙の一喝にビビりシュンと大人しくなると

 

「四ノ宮煌牙・・お前は二週間という短期間で以前より強くなった。だがそれで終わりではない‼︎人の想いが明日へと未来へと紡がれていくように守りし者としての戦いもまた紡がれていく!俺は戦って死ねなど甘い事は言わん!いいか‼︎四ノ宮煌牙‼︎必ず勝って帰って来い‼︎お前を待つ者達の為に!お前が守りたい者の為に‼︎紡がれし全ての想いがお前の力になる!そしてそれこそが‼︎」

 

『『黄金騎士牙狼』』

 

大牙の激励に応えるべく煌牙もまた牙狼の名を叫び同調すると

 

「俺行くよ!大牙さん‼︎ありがとう‼︎」

 

そう言って煌牙は英霊の塔を駆け出し牙狼剣が突き刺さる地に向かうと

カナヲ達も煌牙を追って走り出していく

 

「朔弥・・煌牙は私と縁壱の想いを紡いでくれたよ」

 

「うん・・後は煌牙ちゃんに託そう、今の煌牙ちゃんなら金色の刃も」

 

「そうだな・・・さあ朔弥!お前も煌牙達の元へ行きなさい!息子が牙狼剣を引き抜く瞬間に間に合わなくなるぞ」

 

「あっ⁈うん!そうだね‼︎行かなくちゃ・・・・大牙ちゃん・・・またね・・・大好きだよ」

 

「ふっ・・私も愛している」

 

こうして朔弥もまた煌牙達の元へ向かい一人英霊の塔に残る大牙は

 

「黒死牟・・四百年前お前が取り逃した私の息子がお前の頸を必ず断ち斬る・・今の煌牙は縁壱並みに強いぞ・・覚悟しておけ」

 

そう言いながら大牙は英霊へと戻り煌牙達の行く末を見守るのだった

 

 

 

その頃煌牙達は〜

 

「兄さん」

 

「お兄」

 

「四ノ宮さん」

 

「煌牙」

 

「煌牙様」

 

「煌牙ちゃん」

 

「・・・・」

 

牙狼剣の前に立つ煌牙を見守るカナヲ達、煌牙は一度皆の顔を見渡し一度頷くと牙狼剣をジッと見つめフゥ〜と深く溜息を吐くと牙狼剣の柄を両手でグッと握り締め

 

(牙狼剣よ!もう一度俺に応えてくれ!俺は・・俺は‼︎)

 

心の中でそう思いながら耳を澄ましていると

 

 

 

心の中でそう思いながら耳を澄ましていると

 

キーーン

 

牙狼剣から澄んだ音が煌牙だけに聴こえると

 

「うぉおぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」

 

そう叫びながら渾身の力を込めて牙狼剣を引き抜こうとする煌牙、そんな煌牙に応えるかのように牙狼剣もまた地に突き刺さる刀身が姿を現していきやがて煌牙の手によって完全に引き抜かれる

 

その様子を見守っていた一同は喜びを露わにし煌牙に駆け寄ろうとすると煌牙は牙狼剣を天高く突き出し牙狼剣を見上げながら

 

俺は!魔戒騎士四ノ宮煌牙!黄金騎士牙狼の称号を受け継ぐ者!

 

そう力強く宣言する煌牙とその様子を見ながら嬉しそうに笑うカナヲ

実の息子の晴れ姿に涙を流す朔弥、表情は崩さないものの僅かに口元が緩む斬吼狼、兄の姿に見惚れ呆然とする瑠花とその様子を見守っていた珠世達だったが

 

「煌牙!復帰早々で悪いが鬼殺の仕事だ!」

 

『鴉の情報によると無限列車という汽車で四十人以上の人が行方不明、現地に向かった隊士も帰ってこないみたいで柱が動くそうよ、貴方のお気に入りの坊やも一緒よ』

 

「俺は一足先に向かうからお前達は準備が整い次第合流しろ」

 

斬吼狼アルバ両名がそう説明すると

 

「運行中の無限列車にどうやって合流するんだ?お前がいないと影も作り出せないんだろ?」

 

と聞き返す煌牙だったが

 

「安心しろ!無限列車の走行路線上の各地に朔弥の術式を書き込んだ八卦符を事前に貼り付けている、後は何とかしろ」

 

そんな適当な斬吼狼の回答に

 

「何一つ安心出来ねぇ‼︎」

 

と突っ込んだ煌牙をよそに斬吼狼は後は知らんと言わんばかりに

 

「じゃあな」

 

そう言って一人先に無限列車へと向かい影に飛び込むのだった

 

「お兄大丈夫だよ!無限列車の運行予定と路線は把握してる!現時刻から換算して一五分後にトンネルを通過する筈だよ!」

 

「さすが瑠花!ありがとな!なら十分で準備して待機しよう」

 

そう打ち合わせすると

 

「はい!皆の隊服だよ!霊獣の加護を施してあるから前の隊服より丈夫になってるからね」

 

そう言いながら朔弥から手渡された隊服を受け取った煌牙は時間があまりないのでその場で着替え始め、恥ずかしながら着替えるカナヲと瑠花は珠世の気遣いで着替えを見られる事なく事なきを得たのだが

 

「あれ?俺の魔法衣は?」

 

「ないよ?隊服の一部に使っちゃったし、瑠花ちゃんの新しい魔法衣として再利用したから」

 

煌牙達に新調された隊服の素材に煌牙の魔法衣が使用されてる上に瑠花の新しい魔法衣は煌牙の魔法衣を瑠花のサイズに合わせ直し新調してるので今の煌牙には魔法衣が無かったのだが

 

「お兄のおさがり・・大切にするからね」

 

と嬉しそうに袖を通し出した瑠花を見て何も言えなくなり魔法衣を諦めた煌牙は

 

「仕方ないな!まぁいいや!とにかく早く合流しないと」

 

そう言って朔弥に術式を構築するよう促し一同は炭治郎達のいる無限列車へと向かうのだった

 

 

 

ーーーーそして現在

 

緊張が支配する中煌牙と猗窩座の激突を見ていた炭治郎達、猗窩座の放った破壊殺乱式に肝を冷やしていたがそれでも煌牙の無事を信じ固唾を飲んでいたのだが

 

「・・・・・何が起きたんだ・・俺には煌牙さんが何をしたのか全く分からなかった」

 

「一瞬・・ほんの一緒だけど鯉口を切る音と鞘に刀を仕舞う音がほぼ同時に聴こえた」

 

「スゲェ・・やっぱアイツスゲェ‼︎山の王を名乗るだけの事はあるぜ」

 

「前から思ってましたが山の王って何ですか⁉︎お兄が凄いのは最初から知ってますが」

 

と炭治郎達が話していると

 

「抜刀から納刀までの一連の動作を一瞬で・・牙の呼吸と似ているが剣速も威力も今の方が格段に上だ!」

 

「ん〜?参の型と弐の型の掛け合わせたのかなぁ?」

 

とほんの僅かだが煌牙の動作に反応出来ていた杏寿朗と桜花の二人が考察すると戦況を静かに見守っていたカナヲが視線を煌牙に向けたまま

 

「今のは抜刀から切り返しの左右二連撃・・初撃で鬼の両腕を斬り飛ばして切り返しで胴体を両断したの」

 

そう二人に説明するカナヲ、人一倍動体視力に優れたカナヲだからこそ今の攻防が見えていたのだが

 

「四ノ宮妹!今の四ノ宮の動きが見えたのか!俺や四ノ宮妹でさえ視認するのも難しかったが」

 

とカナヲを称賛する杏寿朗だったがカナヲは杏寿朗に視認を移し困惑した表情を見せると

 

「私も桜花さんも四ノ宮妹で一括りにされたら分かりづらいです」

 

と杏寿朗に指摘するカナヲ、杏寿朗はそれもそうかと納得した顔付きになると

 

「そうか!それは済まなない‼︎」

 

そうカナヲに謝るが反省はしても改善はされないのだろう、半端諦めた眼差しで杏寿朗を見るカナヲに桜花が

 

「じゃあ年の順で私が壱号!カナヲちゃんが弐号!瑠花が参号って呼べば分かりやすいね♪」

 

と意味の分からない事を言い出した桜花、カナヲはそんな桜花を見ながら隊服から銅貨を取り出し指で弾くと

 

「裏・・とりあえず無視する」

 

裏が出たので無視する事にしたカナヲ、因みに表が出ればツッコミを入れると決めていたがこれはこれで面倒臭い事になりそうなので裏が出て正直ホッとするカナヲなのであった

 

 

 

 

 

 

(・・・何をした⁉︎アイツは今何をした!・・・アイツの動きは感知しなかった!それなのに何故俺は斬られてる⁉︎)

 

煌牙に胴体を両断された猗窩座は仰向けに倒れたまま狼狽えつつ何故斬られたのか記憶を辿るがその答えは見つからないままでいた

 

だがそんな隙を見逃す筈もなく煌牙は猗窩座の頸に斬りかかると猗窩座はハッと目を見開き両腕と下半身を瞬時に再生と同時に拳を地に叩きつけ土煙を巻き起こす

 

目眩しと僅かな時間稼ぎにしかならないがそれで充分、すぐ様起き上がり後退し体勢を整え反撃に転じようとする猗窩座だったが

 

ーー輝刃(きば)の呼吸 牙龍天晴ーー

 

土煙の中から空気が割れる音が轟くと同時に土煙が吹き飛び重い衝撃が

猗窩座の体を突き抜ける

 

それによって猗窩座は後方に激しく吹き飛ばされながら転げ回り、ようやく立ち上がったと思いきや胸部に激しい痛みを感じ目をやると胸には大きな風穴が空いており猗窩座は強者と戦う高揚感も鬼故の余裕も忘れ

焦りを見せ始めていた

 

(何なんだ⁉︎アイツは!何故俺の血鬼術が感知しない!)

 

こちらを静かに睨みつける煌牙を見ながらそう考える猗窩座、土煙で姿を認識出来なかったが自身の血鬼術破壊殺・羅針で相手の闘気を感知すれば対処出来る筈なのに感知しない

 

(・・・!アイツは最初から闘気が無かった・・闘気の欠片も感じられない程弱い存在だと思っていたが対峙して分かる、アイツは杏寿朗と同等・・いやそれ以上!なら何故闘気が無い?)

 

不可解に思いながらも構えをとり再度戦闘態勢に入る猗窩座、下手に近付くより遠くから攻撃し出方を見ようと考えた猗窩座は跳躍し拳を握りしめ

 

ーー破壊殺・空式ーー

 

拳で虚空を打ち凄まじい拳圧が衝撃波となって煌牙に襲いかかる

 

(右肩、左脇腹、鳩尾)

 

肉眼では捉えられないい空式に対し煌牙は聴覚による音、すなわち空気の振動で直撃箇所を察知し攻撃を避けていく

 

(当たらない⁉︎攻撃箇所を読んでいるのか?)

 

空式を避けた煌牙に少し驚くが、ならば避けきれない速度で手数を増やせば良いと猗窩座は拳の回転速度を上げ空式を乱発していく

 

「凄いな!上弦ってのは」

 

流石に全てを躱しきれないと悟った煌牙は、改めて上弦の強さに感心し

フッと軽く笑みを浮かべると

 

ーー輝刃の呼吸 牙龍天晴ーー

 

牙の呼吸陸の型と同じ要領でX字を描いた煌牙はその中心目掛けて日の呼吸陽華突を繰り出し、竜巻のような螺旋ではなく圧縮された空気の塊を撃ち出す

 

その際に空気が割れるような轟音が響き、衝撃波となって猗窩座の空式とぶつかり合う

 

虚空でぶつかり合う衝撃と衝撃、数で上回る猗窩座の空式と一撃の重さで上回る煌牙の牙龍天晴は結果拮抗し両者の間で空気が爆ぜ凄まじい突風が巻き起こる

 

それを合図にしてか、二人は互いに走り出し一気に距離を縮めると

剣撃と拳撃の激しい応酬が始まり戦いは激化していく

 

だがそんな攻防も長くは続かない

 

 

「まさかとは思っていたが、やはりそうか!煌牙!お前は既に至高の領域に達しているな!アイツと同じように!おかしいと思っていた!杏寿朗と同等以上の強さを持つお前が何故闘気を発していないのか」

 

そう言いながら徒手空拳を繰り出す猗窩座、だが凄まじい速度で放たれる拳撃も一撃で死に至らしめる凶悪な蹴りも全て煌牙に届く前に斬り落とされ擦り傷すらつけられないでいた

 

「素晴らしい‼︎煌牙!お前は素晴らしい‼︎よく人間のままその領域に辿り着いた!俺の攻撃を先読みし反応する速度、剣術だけでなく体術も一流の技術、俺はお前程の人間を見た事がない‼︎お前は絶対鬼になるべきだ‼︎」

 

そう言って喜びを露わにする猗窩座、流れは明らかに劣勢な筈なのに余裕を崩さないのは鬼というアドバンテージがあるからなのか饒舌に語りかける猗窩座に溜息を吐く煌牙は

 

「さっきも言ったけど俺は鬼にはならないぞ?ほら!見てみろよ!お前達の苦手な太陽が見え始めたぞ?俺は太陽の下を歩けなくなるのは御免だね」

 

そう言いながら煌牙は後方の山を指差し猗窩座はハッと山の方角に目をなると空は薄らと明るみ始め時期に夜が明ける事を理解する

 

煌牙が来た時点で夜明けは近かったのだが互角以上の強敵を前に昂っていた猗窩座はそれを忘れ戦いに没頭していたので今更ながら時間がないと焦り始め

 

「煌牙!お前とはまだ闘いたかったが時間切れだ!今度こそお前は鬼になり俺と永遠に闘い続けよう」

 

そう煌牙に言い残しこの場を立ち去ろうとする猗窩座、すぐ近くの森に逃げ込めば陽光は差さないと急いで走る猗窩座だったが

 

ーー日の呼吸 日暈の龍・頭舞いーー

 

ここで大人しく猗窩座を見逃す筈もない煌牙は猗窩座を斬り裂き退路を断つと

 

「なぁ?どこが永遠なんだ?陽光から逃げ、死に怯えるお前達のどこが永遠なんだ?」

 

そう煌牙に言われ激しく睨み付ける猗窩座、陽光が差すまで時間がない上に逃走経路を絶たれた猗窩座は今までに無い激昂を見せ

 

どぉけえぇぇぇぇぇぇぇ!

 

耳をつんざく程の怒号を上げながら失った手足を再生した猗窩座は

 

ーー破壊殺・砕式 万葉閃柳ーー

 

渾身の一撃を振り下ろし煌牙を殺しにかかる猗窩座、日が昇るまで時間がなく目の前の煌牙を殺さなければ逃げられない事でなり振り構ってられない猗窩座に煌牙を鬼にするという目的は既になく闘いから殺しに移行する

 

そんな猗窩座の放った万葉閃柳、煌牙は咄嗟に後退し直撃を躱すがその威力は凄まじく地が割れ破片が煌牙に飛んで行くと煌牙は何事も無かったかのようにサラリと避け

 

「やっと本気になったか・・残り時間は少ないが安心しろ!日が昇り切る前に俺が頸を斬り落とす」

 

本気で殺しに来た猗窩座に煌牙もまた本気で片を付ける気になりそう言いながら新たに纏った白の魔法衣から牙狼剣を引き出すと

 

「兄さん‼︎」

 

そうカナヲが煌牙の名を叫び、カナヲは今まで肌身離さず持っていた鈴を煌牙に投げ渡すと煌牙は猗窩座に眼を向けたまま鈴を片手で受け取り

 

「カナヲ!お前の想いは牙狼と共に‼︎」

 

そう言って煌牙は自分の鈴を手に取ると牙狼剣を抜刀、頭上で円を描くと

 

「始まりの剣士継国縁壱!先代黄金騎士暁大牙!二人の願いは牙狼となり俺が宿命を打ち砕く!」

 

そう言って二対の鈴と共に漆黒の日輪刀を召喚陣に投げ入れる

 

「煌牙ァァァァ‼︎」

 

だがそんな事に構ってられない猗窩座は煌牙との距離を詰めると

 

ーー破壊殺・滅式ーー

 

この闘いに終止符を打つべく全身全霊の一撃を放った猗窩座、その拳が煌牙に届く瞬間

 

ーー輝刃の呼吸 灰塵炎・迦楼羅ーー

 

牙の呼吸漆の型荒狗鷲と日の呼吸炎舞を掛け合わせた上下二連撃で猗窩座の両腕を肩から斬り飛ばした煌牙、滅式が通用しなかった猗窩座は咄嗟に飛び退き煌牙に眼を向けると

 

「黄金騎士・・牙狼」

 

そう呟いた猗窩座の目の前には金色に輝く黄金騎士牙狼の姿が

そして牙狼は猗窩座へと一歩、また一歩と歩み始めると

 

ーー破壊殺・砕式 鬼芯八重芯ーー

 

牙狼の接近を許さない猗窩座は両腕を再生し牙狼に向けて左右八連の乱打を打ち込み牙狼の鎧ごと煌牙を砕きにかかるのだが

 

ドンッ‼︎

 

強烈な踏み込みで猗窩座に近づいて来た牙狼、猗窩座の放った鬼芯八重芯の直撃を受けて尚勢いは止まらず猗窩座の間合いへと入り込むと牙狼渾身の右拳が猗窩座の顔面に吸い込まれていく

 

(砕けない⁈確かに俺の攻撃は煌牙に直撃した!なのに何故鎧を砕けない!俺の力を持ってしても煌牙には敵わないというのか‼︎)

 

牙狼に殴り飛ばされた猗窩座はよろめきながら立ち上がり牙狼を睨み付け

 

(このままだと俺は死ぬ!攻撃速度が恐ろしいまでに速い上に闘気も感知しない!煌牙に殺されるのが先か太陽に焼かれるのが先か)

 

自らの死期を感じ取った猗窩座は焦りとは逆に落ち着き、冷静になると何故か思考が軽くなり体の感覚がより洗練されていく事に気付く

 

(今まで闘ってきた中でこんな感覚はなかった・・煌牙を超える為に余計な物を削ぎ落とせ)

 

そう考えながら神経を研ぎ澄まし、感覚を全身に張り巡らせていく猗窩座

 

鬼という優位性を保ち常に優勢で闘ってきた猗窩座、強者との闘いにおいてもそれは変わる事はなかった、だが煌牙との闘いで自らの優位性さえも危うく更には太陽という最大の弱点も重なり初めて命の危険を感じた事でその局面を乗り越えるべく生存本能が、武人として更なる高みへと猗窩座を押し上げる

 

日の出まで時間はないが更なる高みへと至るきっかけになった煌牙に内心感謝しつつ早期決着をつけるべく猗窩座は感覚を研ぎ澄ませ自身のもてる最大の技を煌牙へと繰り出した

 

ーー破壊殺・終式 青銀乱残光ーー

 

ほぼ同時に無数の乱打を繰り出し圧倒的な手数と絶大な威力で牙狼を仕留めにかかる猗窩座、そんな怒涛の攻撃を躱しきれないと判断した牙狼はその攻撃ごとまとめて斬り飛ばすと決意すると咆哮を上げ

 

ーー輝刃の呼吸 極光蓮華ーー

 

それは光の帯、幾重にも重なる超高速斬撃の軌跡がオーロラのような輝きを放ち猗窩座の青銀乱残光とぶつかり合う

 

一瞬の間に百を超える斬撃と拳撃のぶつかり合いは激しい火花と轟音が響き煌牙達の闘いを見守る炭治郎達にはそれがまるで花火や蓮の花のように見えていた

 

そんな激突の末競り勝ったのは牙狼、全ての拳撃を弾かれただけでなく両腕さえも斬り落とされた猗窩座、自身の最大の技さえも真っ向勝負で押し負け驚愕の表情を浮かべる猗窩座、その瞳に映る光景は

 

「猗窩座!お前の陰我を断ち斬る!」

 

この闘いに決着をつけるべく飛び込んできた牙狼の姿、金色に輝く雄々しき姿が、真紅の眼の獣が喉元を噛みちぎらんと迫る光景だった

 

(煌牙の動きが・・黄金騎士牙狼の動きが止まったかのように感じる・・死期を感じた瞬間時の流れが緩慢になったが今はそれ以上だ・・俺は更なる高みへ、至高の領域に辿り着いたのか?)

 

時としては一瞬、だがその時間を長く感じる猗窩座は思考を駆け巡らせ

反撃の一手を模索すると

 

(腕が再生しない⁈・・いや再生はしている!だが遅い!遅すぎる!時の感覚を考慮してもこの再生速度は異常だ!)

 

牙狼に斬り落とされた両腕の再生が追いつかない猗窩座、牙狼剣の特性である再生速度の阻害が効力を発揮し反撃の一手に踏み出せない猗窩座だったが

 

(ならば脚式で・・・っ!脚が動かん⁈何故だ⁈何故動かん!動かなければ!動かなければ‼︎)

 

即座に脚技による迎撃を試み猗窩座だったがその脚さえも動かない、このままでは反撃するどころか避ける事も叶わず頸を斬られるを待つだけなのだが

 

(俺はこんなところで死ねない!何の為に強くなった!何の為に鬼になった・・・何の為に?)

 

ふとよぎる自身の存在理由、何故鬼になったのか何故強くなったのか

だがその理由が分からない、だが駆け巡る思考の中で一つだけ理解した事がある

 

(そうか・・俺は負けたのか・・剣術と拳術、技と技のぶつかり合いで俺は煌牙に負けたのか・・認めるよ四ノ宮煌牙、お前は俺より強かった

・・完敗だ)

 

それは自身の敗北、駆け巡る思考は走馬灯、頭では理解出来ていなかったが体が理解していた、故に動かない

 

ーー牙の呼吸 壱の型 断空の牙ーー

 

漆黒から赫く変色した牙狼剣が、想いを紡いだその刃が猗窩座の陰我を断ち斬るように軌跡を描き不変の歴史が動き出す

 

 

 

 




ウマ娘に手を出して以来、更新がかなり遅い作者
早く書かなければと思いますがうまぴょいから逃れない
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