煌牙と猗窩座の闘いはあまりにも激しく怒涛の展開だった
そして痛感させられる上弦の異次元ともいえる強さ、杏寿朗との闘いでえ目で追えない展開だったがそれ以上の展開だ
炭治郎達は蝶屋敷での実戦訓練を経て柱の実力を、煌牙の実力を体感し理解はしていた。理解はしていたがそれは自分達との実力差であり稽古である以上命のやり取りはない
つまり四ノ宮煌牙の本気の闘いを知らない、鬼と対峙する柱の真の実力を知らない炭治郎達はこの無限列車での闘いで初めて柱の実力を思い知らせる
機能回復訓練を、実戦訓練を経て強くなった、常中が出来るようになって確実に以前の自分より一歩前に進めた。だが杏寿朗と猗窩座の闘いで淡い希望が砕かれた
ようやく乗り越えた壁の向こう側、その先には越えられない大きな壁があり杏寿朗はその先にいる、そんな杏寿朗でさえ上弦という壁に苦戦している、果たして自分達はそこまで辿り着けるのか?その壁を登れるのか?不安に押し潰されそうな心を奮い立たせるがそれでも不安が消える事はない
だがそんな炭治郎達に僅かだが希望が訪れた、その希望は杏寿朗でさえ苦戦していた壁を易々と壊し炭治郎達に一筋の光を照らし出した
それは決して楽な道ではない、果てしなく遠く険しい道だとしても一歩踏み出せば前に進む、ならば前に進もうその先に希望の光が待ってるのだから
それがこの無限列車での闘いで得た経験と道標、炭治郎達は改めて強くなろうと誓うのであった
その炭治郎達の決意の少し前、煌牙と猗窩座の決着だがまだ完全に終わった訳ではなかった
鬼は日輪刀で頸を斬れば死ぬ、これは魔戒騎士の武器魔戒剣も同様だ
だが頸を斬っても斬られた鬼は即死する訳ではない、ないのだが確実に死という終着点へ向かう
鬼は死の間際に人間だった頃の記憶を思い出す
どんな鬼でも元は人間、死という生物の呪縛から解放された時、鬼という呪縛からも解放されたのか定かではないが人間だった頃の記憶が蘇る
牙の呼吸壱の型で猗窩座の頸を斬り落とし決着を付けた牙狼だがこれで終わりではなかった
牙の呼吸壱の型で猗窩座の頸を斬り落とした牙狼、その猗窩座の頸に牙狼剣が通った直後反響する金属のような音と共に周囲に広がっていく金色の波動が猗窩座から放たれていく
その波動を一身に受けた牙狼、赫き牙狼剣の刀身が一瞬だけ金色に輝くが輝きが消えると赫い牙狼剣の刀身もまた本来の漆黒の刀身に戻り牙狼はこれ以上闘う事はないと鎧を送還し猗窩座に視線を向ける
(猗窩座・・・)
その煌牙の表情は辛そうで、上弦の参を討ったという喜びなど一切感じられなかった
頸を斬り落とされた猗窩座はそんな煌牙と視線が合うと
「勝者が辛そうな顔をするな・・お前は幾人もの柱が討てなかった上弦を討ち取った強者だ・・堂々と顔を上げろ」
負けを認め死を迎える猗窩座はそんな煌牙を讃えるが煌牙の表情はそれでも晴れない
「俺の事はいいから・・お前はもうゆっくり休め・・狛治」
猗窩座の頭の前で膝をつき猗窩座の頭部に触れた煌牙はそう言ってフッと笑みを猗窩座に見せると猗窩座は眼を見開き
(狛治⁈・・煌牙は何を言ってるんだ⁈俺の名は猗窩座・・・猗窩座?
・・・狛治・・狛治・・・猗窩座・・・狛治)
煌牙の言葉に思考を駆け巡らせる猗窩座、狛治という名を呼ぶ度に脳裏に浮かび始めた記憶、親しげに話しかけてくる人物が脳裏に浮かぶが未だ誰なのか分からない猗窩座、戸惑いの表情を見せる猗窩座だったが
「さっき金色の波動を受けた時、お前が人間だった頃の記憶が俺に流れ込んで来たんだ・・・あの金色の波動は破邪の波動、鬼という呪縛を浄化する光だ」
そう言いながら猗窩座を見つめる煌牙、煌牙の言葉通りなら狛治という名は人間だった頃の名前、おぼろげながら必死に記憶を辿り出す猗窩座は遂に自身の人間だった頃の記憶を思い出す
狛治という少年が貧しい生活の中病気だった父親の薬代を得る為に盗みを働いていた事、捕まり奉行所で罪人の烙印を刻まれた事、そんな息子に重荷を背負わせたと息子の為に自ら命を絶った父親の事、荒れて喧嘩三昧だった狛治を拾い弟子にしてくれた素流道場の師範の事、その師範の娘が病弱で看病していた事、そしてその娘恋雪と結ばれて夫婦になった事、思い出したくもないが隣の剣術道場に師範と恋雪を毒殺された事
自暴自棄になってた時無惨に鬼にされた事、弱者を嫌い強さを求める修羅の鬼猗窩座になるまでの半生の記憶が蘇り
「そうだ・・俺の名は狛治・・俺は・・俺は大切な人を守れなかった
一生を懸けて守ると誓ったのに守れなかった」
そう言いながら涙する猗窩座、その記憶を共有する煌牙も猗窩座のあまりにも酷い半生に俯き
「俺もそうだった・・俺も家族を守れなかった」
そう呟いた煌牙に
「お前も鬼に家族を殺されて鬼狩りに」
鬼殺隊のほとんどは家族を鬼に殺された者達、その復讐の為に刃を振るうと認識していた猗窩座はそう問いかけるが
「俺の家族を・・弟や妹を殺したのは両親だよ・・別に両親だとは思っちゃいないが」
と猗窩座に返した煌牙
「・・・そうか」
思わぬ返答に返す言葉もない猗窩座、その頭部は既に灰になりつつあり
猗窩座が消えるのも時間の問題だった
その時だった
『何をしている?猗窩座!』
猗窩座の頭に響く無惨の声、その声の影響で狛治としての記憶が狛治の人格が抑え込まれそうになると
『猗窩座‼︎殺せ‼︎四ノ宮煌牙を‼︎何故目の前にいるのに殺さない‼︎ 猗窩座‼︎ 猗窩座‼︎』
次第に怒号に変わっていく無惨の声、それに呼応するかのように沈黙したいた猗窩座の胴体が動き出し少しずつだが失った両腕と頭部が再生し始めていく
(辞めろ‼︎辞めろ‼︎俺はもう闘いたくない‼︎煌牙を殺したくない)
埋もれていく狛治の意識が必死に抵抗するが無惨の支配力には叶わず
猗窩座の肉体は再生を続けていく
だが煌牙は何をするでもなくただ再生していく猗窩座を眺めていると
煌牙を助けようと杏寿朗や桜花が駆け出して来た
「煉獄さん!桜花!動くな‼︎」
そんな杏寿朗達を制止する煌牙
「猗窩座の陰我は断ち斬った、俺を信じろ‼︎」
そう力強い眼差しで言われ足を止めてしまう杏寿朗達
そうしているうちに猗窩座の肉体がほぼ完全に再生し煌牙に肉薄すると右腕を振りかぶり煌牙を貫こうとする
(辞めろ‼︎辞めろ‼︎辞めろー‼︎)
必死に抵抗するが自分の意思とは裏腹に体が言うことを聞かない
もうどうにもならないのか?そう思っていた時だった
『狛治さん』
そう狛治の名を呼ぶ声が聞こえ狛治の右腕を優しく握る一人の女性
狛治は思わず振り返り
「・・・恋雪さん」
狛治の眼に映ったのは狛治が守りたかった最愛の人、守りたくても守れなかった恋雪が狛治を繋ぎ止めようとしている姿だった
だがそれを無惨が許さない
狛治の精神に介入した無惨は狛治の頭を乱暴に掴むと
『強くなりたいのではなかったのか?お前はこれで終わりなのか?猗窩座』
そう言って強引に支配しようとすると
「そうだ俺は強くなる!頸を斬られたからなんだ?勝負?そんなの関係ない!煌牙を殺す」
無惨の支配で再び修羅の道を歩み出そうとする狛治、そんな狛治を真正面から受け止め優しく抱き込む恋雪
「狛治さんありがとう、もう充分です。もういいの、もういいのよ」
恋雪からの言葉に涙を流し無惨の支配から抜け出した狛治
恋雪をキツく抱きしめ返すと
「ごめん!ごめん!守れなくてごめん!大事な時傍にいなくてごめん!
約束を何一つ守れなかった、許してくれ!俺を許してくれ!頼む!許してくれ!」
号泣する狛治を優しく見守る恋雪は
「私達の事を思い出してくれて良かった、元の狛治さんに戻ってくれて良かった・・おかえりなさいあなた」
そう言いながら泣き出した恋雪
『女!お前は私の邪魔をするのか?貴様がいるから猗窩座は』
そう言いながら恋雪の頸を絞め出した無惨、無惨は猗窩座が死ぬのを許さない、厳密に言えば自分の手駒が自分の意思に反する事を許さない
故にその原因たる恋雪を排除し狛治を再び支配下に置こうとするのだが
「恋雪さん‼︎」
愛する者に手を掛けた無惨を許す筈もない狛治は無惨に殴りかかるが
無惨は恋雪を盾にし
『貴様自身の手で女を排除すれば貴様はもう戻れ」
そう狛治に言いかけた無惨、途中で言葉を遮ったのは恋雪が手元から消えたからだ、自分の腕と共に
「いやなんかもう凄く良い感じだったから邪魔しないでおこうと思ったけど、空気読めない糞野郎が邪魔してきたから俺も糞野郎の空気読まずにお邪魔しました〜」
と少し申し訳なさ気味に話しかけてきた煌牙、その脇には恋雪を抱えており恋雪は何が起きたんだと煌牙と狛治をキョロキョロと見比べていると
「煌牙‼︎何でお前が俺の精神に⁈あと恋雪さんを離せ!今すぐ‼︎」
と捲し立ててきた狛治、煌牙はそっと恋雪を解放すると
「さっき話した金色の波動、破邪の波動なんだけどさ、あれ共鳴作用あって俺の精神とお前の精神が共鳴したんだよ」
と説明する煌牙、朔弥からそう説明されていたがまさか本当に共鳴するとは思ってなかった煌牙もこれには驚いていた
『金色の波動だと⁈四ノ宮煌牙‼︎貴様はやはり危険な存在だ!だが貴様は何故生きている‼︎黒死牟が殺した筈だが』
そう煌牙に話しかけてきた無惨、それに対し煌牙は
「黙れ!話しかけんな‼︎空気読め‼︎」
初見で無惨の事が嫌いな煌牙は狛治との会話に割り込んで来た無惨に辛辣な態度を見せると
『貴様‼︎』
青筋を立て目が血走る無惨
「ブフッ」
そんなやり取りに思わず笑ってしまう恋雪
『貴様ァァ‼︎』
笑われた事に怒りを覚えた無惨は恋雪に手を掛けようとするが
ーー破壊殺・砕式 万葉閃柳ーー
恋雪を守ろうと狛治渾身の一撃が無惨に炸裂すると狛治の拳から金色の波動が広がり無惨の精神体が一瞬で消滅する
「狛治さん‼︎」
そう言いながら狛治に飛び込んで来た恋雪
「狛治さんはちゃんと約束を守って下さいました」
嬉しそうな顔で狛治に話しかける恋雪、狛治も満更ではないようで
穏やかな笑みを恋雪に向けると
「煌牙!ありがとう!恋雪さんを助けてくれて!煌牙のおかげで俺は無惨の呪縛から解放された・・あの時お前が言っていた陰我を断ち斬るってこの事だったんだな」
晴れやかな表情を見せてそう話しかける狛治
「どうかな?俺はそのつもりだったけど最終的に陰我を断ち切ったのは狛治だろ?狛治が大切な人を守りたいと思うその心が、その心の強さが自らの陰我を断ち切ったんだよ!強いよお前は!」
そう言いながらフッと笑う煌牙
「心の強さか・・今までの俺は純粋に力による強さを求めてきた・・もし心の強さがあったら俺はあの時鬼にならなかったのかもしれないな」
そう言いながら過去を振り返る狛治、そんな狛治に笑顔を見せる恋雪は
「狛治さん!昨日を振り返るより前を向いて明日を目指しましょう‼︎
病弱だった私の未来を見てくれた狛治さんみたいに私も未来を・・もう死んじゃってますから来世を目指します!ですから狛治さん‼︎生まれ変わったらもう一度私と・・夫婦になってくれますか?」
そう狛治に来世のプロポーズをする恋雪、煌牙は邪魔しちゃ悪いと狛治の精神世界から離脱しようとするが
(あれ?狛治さん?何で俺のコート掴んでんの?俺が空気読んでるって事察して?)
煌牙をまだ逃すわけにはいかない狛治は煌牙のコートを掴んだまま
「恋雪さん・・もう一度約束させて下さい‼︎俺は生涯をかけて貴方を守ります‼︎」
来世での約束を交わした狛治とそれを間近で見せつけられた煌牙
(コイツ良い事言ってるけど俺のコート掴んだままだと台無しだよ?
いやホント良い事言ってるけどさ)
もうお腹いっぱいですと言いたげな表情の煌牙は心の中でそう思っていると
「煌牙!いつか生まれ変わった時またお前と逢えたら俺はお前と戦いたい‼︎」
といきなり話しかけてきた狛治
「いや、来世でもお前と闘うってなんか嫌だ」
互いに敵同士だったが闘いを経て分かり合えた煌牙と狛治、折角仲良くなれたのに来世とはいえまた闘うのは嫌だと拒否すると
「煌牙!闘いではなく戦いだ!今度は真正面からじゃなくお前の横でお前と同じ方向を向いて戦いたい!敵としてじゃなく仲間として友として
お前と一緒に戦いたい大切な人を守るために‼︎」
鬼と鬼狩り、今世では敵同士だったが来世では仲間や友として戦いたいと話す狛治
「想いこそが永遠そう言っていたな・・煌牙、お前に俺の想いを託したい!この想いを明日へ、未来へと繋げてほしい」
そう言って煌牙に想いを託す狛治
「私も!狛治さんと一緒に想いを託したいです!」
と恋雪も狛治と一緒に想いを託すと言うと
「煌牙さん!狛治さんを救っていただきありがとうございました!
この御恩は一生忘れません!」
と煌牙に頭を下げる恋雪、煌牙は一生も何ももう死んでますけどと内心思いつつ突っ込む事も出来なかったのでただ苦笑いするしかなかった
「煌牙さん!貴方ならきっとこの悲しみを終わらせる事が出来ると信じています!だからどんな事があっても・・私と狛治さんは煌牙さんを応援します!」
グッと両手で握り拳を作り煌牙を見つめる恋雪
「ありがとう!だったら絶対負けられないな!」
そう言いながら笑う煌牙は
「じゃあ俺そろそろ戻るわ!狛治!恋雪さん!またな‼︎」
そう言って煌牙は狛治の精神世界から離脱し現実に戻っていくのだった
「黄金騎士牙狼・・凄い奴だったよホントに」
そう煌牙に対する感想を漏らす狛治、その狛治に迫真の顔をした恋雪がグッと顔を狛治に近付けると
「狛治さんも負けていません‼︎煌牙さんが狼なら狛治さんは狛犬です!犬も狼も大して変わりません‼︎」
と恋雪なりの激励を狛治に送ると狛治は拍子抜けた後プッと笑い出すと
恋雪もそれにつられて共に笑い合いながらゆっくりと消えていくのだった
「煌牙ちゃん‼︎」
猗窩座が放とうとしている一撃に思わず叫び駆け出した朔弥、煌牙を助けたいと思う気持ちが背中を後押しするかのように加速し煌牙と猗窩座の間に割り込んできた朔弥はそのまま煌牙を抱きしめ我が身を盾にして煌牙を守ろうとした
その猗窩座の一撃は煌牙でもなく朔弥でもなく猗窩座自身に向けられた
猗窩座の意図を理解出来ない朔弥は呆然と猗窩座の行動を見ていると
「煌牙・・上弦を討った事で鬼無辻はアイツを解き放つかもしれん・・気を付けろ・・アイツは・・あの逃れ者の鬼は・・・正真正銘の化け物だ」
そう煌牙に忠告した猗窩座、その体は崩壊が始まっており完全に消えるのも時間の問題だった
だがそのまま消えてゆくのを黙って見てられない煌牙は猗窩座に拳を突き出し
「狛治」
と名を呼びながら握り拳を解き
「
煌牙の言葉の意図を汲み取った猗窩座はフッと笑みを浮かべながら握手を交わし固い友情を確かめながら崩れ去っていくのだった
そして日が昇り陽光が辺りを照らし始めると
「・・・・朔弥さん悪りぃ・・もう限界だわ」
猗窩座の最期を見送った煌牙は抱き付く朔弥にそう言ってその場に仰向けに倒れ込んでしまう
そのまま一緒に倒れ込んだ朔弥は今にも泣きそうな顔をして煌牙の顔を覗き込み
「煌牙ちゃんどうしたの⁈何処か怪我したの?何処か痛いの?」
そう煌牙に尋ねると
「眠い」
とだけ答え煌牙はようやく闘いの緊張感から解き放たれるのであった
「うん!うん‼︎そうだね!そうだったね‼︎煌牙ちゃんずっと頑張ってた!この二週間の間ほぼ不眠不休で大牙ちゃんとずっと闘い続けてた‼︎
疲れたよね?辛かったよね?・・煌牙ちゃん・・お疲れ様・・・ゆっくり休んで良いんだよ?」
大粒の涙を流しながら煌牙の頭を撫でる朔弥はそう煌牙を労うと
「なんだろうな・・凄く懐かしい気がする・・凄く落ち着くというか安心できるというか・・アンタに抱き着かれるのはちょくちょくあるけどこんな気持ちは初めてだ・・いやマジでなんだろうな?」
朔弥から感じる安心感に懐かしさを感じる煌牙だがそれが何なのか理解は出来ていなかったので不思議に思うが朔弥はそんな煌牙に
「え⁈・・・あ・・えと・・・・あっ!アレだよ‼︎ドドドドーンと積もった疲労とどーきどきどきどきどきどきどきどきってしてる緊張感がなんかこう上手く混ざり合ってネルネルネールネになってそれが解放されてバブみ沢クライシスになってるんだよ‼︎つまり煌牙ちゃんの気のせい‼︎」
焦りに焦る朔弥の必死の言い訳に本気で困惑する煌牙、今の煌牙にツッコミを入れる余裕はない上に理解不能のオンパレード、一気に疲れが倍増した煌牙は
「アンタある意味上弦以上だわ」
と皮肉を言うのであった
「煌牙さぁぁぁぁぁぁぁん‼︎」
そんな煌牙達の元に走り寄って来た炭治郎達、上弦二体の出現に加え柱との激闘、煌牙の帰還と怒涛の展開から漸く解放された炭治郎達の溜め込まれた感情が溢れ出すと
「煌牙さん良かった!煌牙さんが生きてて・・帰って来てくれて良かった」
「何だよアレ・・・あんなの着てりゃ鬼も怖くないじゃんか・・・ふざけんなよ・・俺怖いよ?俺死ぬよ?・・・・
その鎧俺に寄越せぇぇぇぇぇぇ‼︎」
「おい!紋逸‼︎あの金ピカ狼は俺のモンだ‼︎オーガ‼︎俺の猪の皮やるからその金ピカ狼の皮を寄越しやがれ‼︎」
心配してくれる炭治郎をよそに個人的な都合で牙狼の鎧を欲しがる善逸と伊之助の二人、煌牙はそんな二人に苦笑いをしながら
「んじゃ、ほら!牙狼剣渡すからさ、持ってみろよ。ちゃんと扱う事が出来るなら牙狼の鎧はお前らのモンだ」
煌牙は仰向けに寝たまま牙狼剣を伊之助達に差し出すと
「上等だ‼︎そんなもん楽勝だぜ」
フンスと鼻息を荒くして気合充分な伊之助が善逸よりも先に牙狼剣を受け取ると
ドスン‼︎
「フンガー‼︎なんじゃ⁈このクソ重ぇ剣は!⁈上がらねぇ‼︎おい!紋逸!権八郎!お前らも手伝え!」
見た目で裏切られた牙狼剣のあり得ない重さに耐え切れず伊之助は牙狼剣を落としてしまうが再度持ち上げようと必死になるが牙狼剣はピクリとも動かず炭治郎と善逸の三人がかりで挑戦するのだが
「上がらない⁈全力で持ち上げようとしてるのに全然上がらない!」
「はぁあぁぁぁぁぁぁぁ⁈何なのコレ⁈何なのぉぉぉぉ⁈馬鹿みたいに重たいんですけどぉぉぉぉぉ‼︎」
「フンガー‼︎」
三人がかりでも牙狼剣は微動だにもせず悪戦苦闘していると
「よし‼︎俺もやろう‼︎」
と杏寿朗も興味を示し今度は四人がかりで挑戦すると
「うむ‼︎全く動かん‼︎」
そう言って煌牙に視線を向けると
「四ノ宮‼︎言いたい事聞きたい事が山程あるがそれは後でいいだろう‼︎
上弦の討伐見事だったぞ‼︎そして何よりも‼︎よく無事に帰って来た‼︎
今はゆっくり休め‼︎」
そう言って煌牙を労う杏寿朗、煌牙はその言葉に甘えそのまま眠りに就こうとするのだが
「陽光が!陽光がぁぁ⁉︎」
と騒ぐ零余子の叫び声が聞こえハッと飛び起きた煌牙、零余子の事をすっかり忘れていたので陽光が差す中まどろんでいたのだが
「桜花‼︎米吉を飛ばして鬼殺隊本部に伝令を」
「もう飛ばしてるよ〜♪」
「なら後は隠が合流して後処理するだけ・・・じゃ済まないよな?」
「ごく一部を除いて乗客の皆は今回の件と無関係だからね、四ノ宮財閥の方で保障しないと」
「だな・・・朔弥さん悪いけど皆を連れて先に戻っててくれ、俺と桜花は後処理するからもう少しこの場に残るよ」
煌牙と桜花がそう会話すると
「お兄!私も一緒に残る!」
と手伝いを申し出た瑠花
「兄さん!私も兄さんのお手伝いするよ?」
とカナヲも名乗り出ると
「煌牙さん‼︎俺にも手伝わせてください‼︎」
「まぁ朝だし鬼と関係なさそうだし俺も手伝えるなら手伝うけど」
「ガハハハ!親分に任せとけ!」
と炭治郎達もこの場に残ると煌牙に話すと
「四ノ宮‼︎俺もやろう‼︎このままだと柱として皆に顔向け出来ん‼︎」
杏寿朗までもが煌牙達を手伝うと言い出したので煌牙はフッと笑みを浮かべ
「うし!なら皆で終わらせて皆で一緒に帰りますか」
そう皆に向かって話す煌牙は、あっ!と何かを思い出した様子を見せると
「言いそびれたけど、皆心配かけてゴメン‼︎それとただいま‼︎」
そう言って煌牙は皆の顔を見ると皆嬉しそうな顔をしていたので
煌牙はこれをもって任務終了とするのであった
「じゃあ私達は先に戻ってるね煌牙ちゃん、なんかもう可哀想だし」
と言いながら朔弥は森の方を指差す、その先には木陰に隠れてこちらの様子を伺っている零余子と煌牙に向けて親指を下げブーイングしている愈史郎、こちらに背を向け木にもたれ掛かりカッコつける斬吼狼が目に入る
「・・・うん・・零余子は可哀想だな!零余子は」
斬吼狼はともかく自分にブーイングしてくる愈史郎をあえて外した煌牙
「朔弥さん悪いけど戻るなら師匠の所に戻ってくれないか?心配してるだろうし帰って安心させてやりたい」
と朔弥に話し朔弥もそれに頷くと
「んじゃ終わらせて来ますかね」
そう言っていつの間にか持ち上げる事を諦め放置されていた牙狼剣をヒョイと持ち上げる煌牙
「はあぁぁぁ⁈何で馬鹿みたいに重たい剣を軽々と持ち上げてんのぉぉぉ⁈馬鹿なのぉ⁈柱って馬鹿なのぉぉぉぉ‼︎」
驚きのあまりかなり失礼な事を言い出した善逸、杏寿朗を含む四人がかりでも持ち上がらない牙狼剣を軽々と持ち上げる煌牙に驚くのも無理はないがそもそも先の闘いで牙狼剣を振り回していた事を考えれば今更驚く事ではないだろう
その隣にいた伊之助も善逸のような反応はないものの衝撃的だったのか鼻から汁が噴き出しワナワナと震え狼狽していると
「お兄の事馬鹿って言うな‼︎」
と煌牙を馬鹿呼ばわりされ怒り心頭の瑠花が善逸の脛を蹴り飛ばすと善逸は悲鳴を上げながら転げ回りそれを見た炭治郎が顔を痙攣らせ自業自得だなと思っていたら
「魔戒剣は心の在り方で羽のように軽くもなるし大木のように重くもなる、だから単純に重たいって訳じゃないんだよ」
と説明する煌牙の言葉に頷く炭治郎は
「じゃあ俺もその剣を扱えるようになれば牙狼になれるんですか?」
牙狼に興味津々な炭治郎は目を輝かせて煌牙に聞くのだが
「え?・・・ああ、うん・・まぁそうだな・・・頑張ればいつか炭治郎にも扱える日が来るかもな・・うん」
と少し困惑気味の煌牙だったが炭治郎は尚も食い下がり
「どうすればなれるんですか‼︎俺、もっともっと頑張って強くなります‼︎」
と気合い充分な炭治郎、煌牙はふぅ〜と溜息を吐き
「まずは呼吸無しで鬼と戦えるようになろうか?鬼殺隊士と魔戒騎士は本来戦うべき敵が違う!最低限呼吸無しで鬼と戦えるようにならなければ魔戒騎士としての道は開けない」
自分自身も同じ道を辿り魔戒騎士になりそして牙狼になった為、その道を炭治郎に示すのだが
「だがその前に炭治郎にはやるべき事為すべき事があるだろ?魔戒騎士を目指したいならその後だ!まずはヒノカミ神楽・・いや日の呼吸を炭治郎は知らなくちゃならない」
と炭治郎に告げる煌牙
「呼吸無しで鬼を⁈・・え⁈・・それって桜花さんが言っていた・・いやそれよりも!ヒノカミ神楽!煌牙さん何か分かったんですか⁈日の呼吸って⁈」
と興奮気味に息を荒げていく炭治郎、そんな炭治郎にちょっと引き気味になった煌牙は
「ああ・・まぁ・・色々とな・・後でゆっくり教えるからまずは俺達がやるべき事を先にやるぞ」
と言いながら無限列車へ振り向くと炭治郎も無限列車へ振り向き
「はい‼︎まずは乗客の皆さんを助けましょう‼︎」
気持ちを切り替えた炭治郎は気合い充分な表情で無限列車へと駆け出していくのだった
そして一足先に戻った朔弥達を後にして煌牙達は無限列車の後処理や乗客達の保護をやり始める
その後米吉から報告を受けていた鬼殺隊本部から派遣された隠が合流するのだが煌牙が生存、無限列車に合流し上弦の参を討ち取った報告はまだされていなかった為驚愕のあまり暫く機能しなかったのは仕方ないのだろう
そんな展開がありつつも煌牙達や隠の尽力、桜花が要請した別の列車での車両の牽引と後処理がひと段落ついた頃、日は正午を過ぎており列車に同乗した煌牙達は駅で降ろしてもらうと
「煌牙さん寝てますね」
「うむ、四ノ宮の家に帰れば騒がしくなるだろう!それまでゆっくりと寝かせてやるべきだ!」
連日の疲れが溜まって列車内で爆睡していた煌牙、駅に着いても起きる気配はなく隠が煌牙を背負おうとするがここで一悶着が起きた
誰が煌牙を背負おうのか
誰も煌牙を背負いたくないから揉めた訳ではない
むしろ逆だ!鬼殺隊の中で柱というのは誰もが尊敬し敬意を表する存在である。その中でも煌牙は柱最強の呼び声や黄金騎士という他の柱にはない特別な力がある。加えて死んだと思われた煌牙が生存し上弦の参を討ち取ったのだから隠が騒ぐのも無理はない、特に女性の隠は顕著だ
煌牙の容姿が優れているだけでなく四ノ宮財閥の息子、そんな超優良物件を放っておける筈もなく
「「「四ノ宮様は私が背負うのよぉぉぉぉ」」」
列車内に響き渡る隠女性陣の咆哮、獣のようにギラついた眼に隠男性陣は口を挟む事も出来ずにいたが
「兄さんは私が背負うから・・・邪魔しないでね」
爆睡する煌牙に近寄って来たカナヲがそう言って笑顔を向ける。だがその表情とは裏腹に滲み出る威圧感、寝ている煌牙を起こすなと言わんばかりの圧に隠達は縮みあがりただ頷くしかなかったのだった
そんなやり取りがありつつ四ノ宮邸を目指す一行、煌牙を寝かせる名目で歩いて帰ってたので四ノ宮邸に着く頃には日も暮れ始め
「カナヲちゃん、煌牙重くない?私が背負うよ〜?」
「別に重くありません!兄さんを背負うのは妹である私の役目です」
「それなら私も煌牙の妹なんだし私の役目でもあるよね〜♪」
「大丈夫です‼︎兄さんは桜花さんより私に背負ってもらう方が嬉しいに決まってますから」
「んん〜?どゆこと〜?」
「だって桜花さんより私の方が胸ありますから」
「・・・は⁈今なんて言ったのかなぁ〜?もう一度言ってくれないかなぁ〜」
「二度も同じ事言う必要あります?傷口を抉るだけですよ?」
そう言って睨みあうカナヲと桜花、桜花としては単純に気を遣っただけなのだが桜花に対抗意識を燃やしているカナヲは桜花の提案を受け入れず険悪な雰囲気になっているが
(煌牙さん‼︎起きてください‼︎寝ている所申し訳ないけどカナヲと桜花さんを仲裁出来るのは煌牙さんしかいません‼︎寝ている所申し訳ないけど)
桜花に胸の話は禁句それを知っている炭治郎や善逸、杏寿朗は下手に刺激しないよう黙っていたのだが
「二人共喧嘩しないの‼︎お兄が起きちゃうでしょうが‼︎お姉!カナヲさんはお姉より胸があると言っただけでお姉がどうとは言ってないでしょ?カナヲさん‼︎逆です‼︎お兄がカナヲさんを背負う時、背中に胸が当たるから胸がある方が嬉しいんです‼︎逆だと意味がないですよ」
と二人の仲裁に入る瑠花だったが本人の声が一番デカいというオチがついたところに
「耳元で騒ぐなよ・・・おかげで目が覚めた、おはよう・・もう夕方だけど」
と目を覚ました煌牙が喋ると
「煌牙は胸が大きい娘より控えめの方が好きだよね?」
「控えめよりある程度ある方が良いよね?兄さん」
と矢継ぎ早に質問する桜花とカナヲ、寝起き直後に脈絡もない質問をされ思考が停止する煌牙に
(鱗滝さんがいたら判断が遅いって煌牙さん叩かれそうだな)
二人の矛先が煌牙に向かった事で割と他人事な炭治郎はそんな事を考えていると
「質問の意図が分からん‼︎という訳で一連の流れを知っているであろう炭治郎達に答えて貰います」
と矛先を炭治郎達に向けた煌牙、桜花とカナヲは炭治郎達にクルリと顔を向けると
「よし‼︎四ノ宮邸まであと少しだ‼︎走るぞ!これも鍛錬だ‼︎」
と杏寿朗が大きな声で叫び走り出すと炭治郎達も『はい‼︎』と大きな声で返事をして全力で走り出した
つまり逃げたのだ
という事はその矛先は再び煌牙に向けられる事になるのだが
「は?嘘だろ⁈・・・せめて俺を担いで逃げてくれよ炎柱ぁぁぁ」
と悲壮感漂う煌牙、逃げたくてもカナヲがガッツリと抑えているので降りる事も出来ない煌牙は
「カナヲそろそろ降ろしてくれない?」
と頼んでみるも
「嫌!兄さん逃げる気だから絶対降ろさない‼︎」
と拒否するカナヲ
「その通り!逃げたら捕まえて押し倒して絶対離さないからね」
とカナヲの意見に同調する桜花
「お姉の考え方なんだか危ない人みたいだよ?・・いや元から危ない人だけども」
そうツッコミを入れる瑠花、今の煌牙にとって瑠花だけが唯一の味方だったのだが肝心の瑠花は煌牙の助けに入る事もなく
「んで?お兄はどっちが好みなの?私は今は控えめだけど将来的に大きくなる予定だし?どっちでも良いかなと思うけど」
そう瑠花にまで質問された煌牙、血を分けた実の妹、義理とはいえ実の家族だと思っている妹達の際どい質問に本気で困る煌牙は
「俺・・禰豆子ちゃんみたいな妹が欲しい」
と一言、煌牙の心情を省みればこう思ってしまうのも無理はないのだが
「むー♪むーむーむー♪」
ここで素早く禰豆子になりきる桜花、突然の変わり様に呆然とするカナヲと瑠花だったが煌牙は
「四ノ宮財閥の令嬢の素がこんなだなんてお偉いさん達は知らないんだろうなぁ〜」
と呆れる煌牙、そんな煌牙に向けて桜花が
「あっ⁈そう言えば今度大東亜重工を筆頭に関連企業との会合があるってお国のお偉いさんが言ってたよ?何でも向こう側の会長の孫娘も同席するから煌牙には絶対来て欲しいって言ってた」
と喋り出した桜花、話の流れが変わったのは良かったのだがその内容も重い、鬼殺隊としての活動を主にしている煌牙だが四ノ宮家の長男としての立場もあるのでこのように表社会にも顔を出さなければいけないの
だ
「うっわ・・・それ絶対面倒なやつ!要するに俺と向こうの孫娘を引き合わせるのが一番の目的だろ?四ノ宮財閥と大東亜重工を結びつける政略結婚ってのがあちら側の狙いなんだろうな」
「だろうね!国が軍備拡張してる時だからこそ軍需産業の需要も増えるわけだし!だからこそ貿易や国内の運搬を一手に引き受ける四ノ宮財閥と懇意になれば供給も捗るし拡張も容易になるからね」
「四ノ宮財閥も異国の企業と取引して石油や燃料、化学製品を国内に流通させているし軍需産業に全く関わってない訳ではないけど積極的に軍備拡張を推奨してるつもりもないし」
「そもそも鬼殺隊にいる以上明日の命の保証は出来ない訳だし、将来性を見据えた話をされてもなぁ」
「だよね〜!というか四ノ宮家の次期当主とか財閥の後継者とかお父さん達どうするんだろうね?順当にいけば私達の誰かなんだけど私達鬼殺隊だし絶対がないわけで」
「私達以外を考えるなら辰巳兄とか春姉?でも二人とも鬼殺隊だし・・
確実性を取るなら修也君とか小沙夜ちゃんとか?」
「どうだろうな?現当主の師匠が最終決定権持ってるけどこういう話は四ノ宮一族の承認も必要なわけだし」
「あ〜四ノ宮家って一枚岩じゃないからね〜、煌牙を養子にする時も猛反対してたみたいだし!」
「でもお兄が牙狼になった途端に掌返して持ち上げたけどね」
「牙狼は四ノ宮一族の象徴だったからね〜、その牙狼に認められたら誰も文句は言えないよ!反対してた人達も今じゃ煌牙こそが四ノ宮一族の頂点にふさわしいって言ってるし」
「お兄!大出世だね!良いか悪いかは知らないけど」
「全くだ!・・・出世・・そういやそんな事を言ってた奴が鬼殺隊にいたよな?確か同期で」
「ああ!私が那田蜘蛛山で蹴り・・助けた人だね!」
「蹴りってお姉・・何してんの」
と四ノ宮三兄妹で内輪話が始まると話に入れないカナヲは一人オロオロしながら様子を伺っていると
「あっ!カナヲ悪い!話についてこれないよな?」
カナヲの様子に気付いた煌牙がそうカナヲに声をかけるとカナヲはコクコクと二回頷き
「兄さん結婚するの?」
「は⁈・・いやしないぞ?そういった話を断る前提で話してたんだし」
「でもこの話は別として煌牙ってそうゆうの興味なさそうだよね〜」
「興味無いって訳じゃないぞ?ただ俺は人並みの幸せとかそんなのを求めちゃいけないって思ってたからさ」
「兄さん・・でも今は違う・・ちゃんと前を向いて歩く・・だよね?」
「ああ」
「ほほ〜う♪煌牙に聞く事が増えましたなぁ〜♪帰ったら今までの事色々聞くからね〜♪」
「今聞かないのか?」
「帰り道で長々と話されても困ります、嫌がらせでしょうか?」
「急にしのぶ口調になるなよ!しかも無駄に声真似が上手いぶんなんか苛つく」
「えっへん!容姿端麗才色兼備品行方正全てを兼ね備えた完璧美少女だからね‼︎」
「社交場ではな!お前に羨望の眼差しを向ける娘や好意を寄せてくる野郎共を見ると可哀想でしょうがない」
「だよね〜♪でもさ!将来は親の後を継いだり何かしらの理由で人の上に立つ立場になるんでしょ?だったら外見だけで人を判断したら駄目じゃない?その人の本質を見抜く資質がないと!煌牙も禰豆子ちゃんを鬼という外見だけで判断しなかったでしょ?」
「桜花・・お前って阿呆だけど馬鹿ではないよな!」
「ちょっと刺があるけど褒め言葉として受け取っておくよ〜♪って話ばかりしてないで早く帰ろうよ?」
「ああ」
と立ち話で時間を食ってしまったが日が暮れる前に帰りたいので一同は急いで四ノ宮邸に向けて走り出すのであった
但し煌牙は未だカナヲに担がれだままである
「・・・煉獄さん・・」
「なんだ!」
「ここは村の入り口・・じゃないですよね?」
「そうか!竈門少年達は初めてだったな!ここが四ノ宮の家の敷地だ‼︎俺も初めて来た時はよもやこんなにも広いとは知らず驚いた」
広大な四ノ宮邸の敷地に唖然とする炭治郎達だったが杏寿朗は慣れた様子で話し四ノ宮邸の敷地に足を踏み入れると
「あっ⁈辰巳!帰って来た・・・・はい⁈」
「・・・炎柱ぁぁぁっ⁉︎違ぁぁぁう‼︎申し訳ないけど!ホント申し訳ないけど‼︎アンタじゃなぁぁぁぁい‼︎」
煌牙達の帰りを待ちわびていた辰巳と春の二人は敷地の入り口でずっと待っていたのだがやって来たのは杏寿朗、思わずそう突っ込みガッカリすると
「それは済まない‼︎四ノ宮達を待っていたのだろう!じきに戻る筈だ」
と杏寿朗が話していると炭治郎達もやって来て
「ん?・・・これまた凄いのが来たな、派手な髪色少年に裸猪・・いや何で猪⁈」
「いやそこも気になるけど何で上裸なの⁈寒くない?」
と善逸と伊之助に目が留まると
「寒くねぇぇわ‼︎風邪も引いてねぇ‼︎」
と伊之助が叫び出すと
「こんばんは‼︎俺は竈門炭治郎です‼︎突然お邪魔してすいません‼︎」
二人の話題にも上がらなかった炭治郎が名乗りだし自分の存在をアピールすると
「綺麗なお姉さん!俺は我妻善逸で〜す‼︎」
と善逸も春相手に名乗り出ると
「ああ・・うん炭治郎君と善逸君ね・・・うん?炭治郎君?」
「ああ!噂になってた鬼の妹を連れた奴か!」
そう話す春と辰巳の二人、炭治郎はハッとしながら禰豆子の安全性を説こうと話しかけようとすると
「ああ!分かってる分かってる!煌牙達が認めたんだろ?だったら俺達がどうこう言う必要ないから安心しろ」
「そうそう!煌牙は人を見る目は確かだし、私達は煌牙を信じてる!その煌牙が信じてるなら私達も君達を信じるよ!」
「まぁ本当なら煌牙関係無しに俺達自身が二人を信じてやりたいが初対面だし二人の事をよく知らないからな!てことで今後とも宜しくな」
「うんうん!信頼と努力は日々の積み重ねってね!という訳で宜しく」
そう話しながら炭治郎に握手を求めてきた二人、炭治郎は二人から感じ取った匂いに嘘偽りが無く心の底から煌牙を信頼している事を察して嬉しくなり満面の笑みを浮かべ
「はい‼︎宜しくお願いします‼︎」
確りと握手を交わした炭治郎達を微笑ましく見ていた杏寿郎は
「竈門少年!俺は君達を信じよう!裁判では君達ではなく四ノ宮を信じて受け入れたがあの時、無限列車で血を流し身体を張って乗客を守る竈門少年の妹を見た‼︎人を守る為に戦う彼女は誰が何と言おうと鬼殺隊の一員だ‼︎俺は君達を信じる‼︎」
と炭治郎に熱く語り出すと自然と涙が溢れ
「はい・・ありがとうございます・・良かった・・禰豆子‼︎ホントに良かった」
溢れ出る涙を袖で拭いながらそう語る炭治郎、炭治郎と禰豆子の処遇を巡る裁判では反対の声も上がってはいたが半数以上が容認しお館様の判断もあってお咎め無しで幕を閉じたが、その容認自体が煌牙への信頼で成り立っている事は重々承知していた、禰豆子自身が実弥の誘惑を跳ね除けた事実はあるがそれだけで信頼を勝ち取ったとは思えない
容認してるとはいえ辰巳や春の二人もまた禰豆子自身じゃなく煌牙を信頼してるからといった間接的な信用であり直接信用されているわけではない、だが杏寿朗は無限列車で禰豆子を見て炭治郎や禰豆子を直接信用し鬼殺隊の一員だと認めたのだ
その事実が堪らなく嬉しい炭治郎の心からの涙に貰い泣きした善逸と豪笑い飛ばす伊之助、それを微笑ましく見守る杏寿朗和やかな雰囲気に包まれていると
「わぁぁぁあ♪一日ぶりの実家だよぉぉ♪」
「凄い、たった一日でこれだけ喜べるなんて!それなら私とお兄の喜びはそれ以上だよね?だってもう二週間以上帰ってないんだし!」
「まぁ・・それはそうだけどさ・・瑠花お前覚悟しといた方がいいぞ?
師匠もおやっさんも瑠花は死んだと思ってた訳だし無事に生きて帰って来たという事は?」
「・・・・お兄・・お願い!私と一緒に逃げよ?どこか遠くに!誰も知らない所で二人で一緒に暮らそ?」
「それは駄目!私も兄さんと一緒‼︎だから三人で」
「いや二人共何言ってんの⁈そもそも瑠花は実の娘なんだし師匠やおやっさんが溺愛するのも無理はないだろ?諦めて受け入れろ」
「煌牙こそ何言ってんの?まさか自分は関係ないとか思ってない?」
「いや・・そんな事はないけど」
そんな会話をしながら帰って来た煌牙達、桜花は辰巳達にチラリと視線を向けると辰巳達は苦笑いしながら一度頷き
「なら覚悟してた方がいいよ?」
桜花はそう言ってニヤリと笑みを浮かべると
「「煌牙ぁぁぁぁ」」
そう叫びながら煌牙に駆け寄る辰巳と春、カナヲはちょっと不味いと察知し煌牙をその場に降ろして数歩後ろに逃げると
「心配したんだからなぁぁ」
「帰って来てくれて良かったよ」
そう言いながら煌牙に飛びついた二人、煌牙の正面に辰巳背後に春という構図だが
「春!極まってる!煌牙の首に関節技が!」
「え⁈・・あっ!煌牙ゴメン‼︎」
「ゲホッ・・死ぬかと思った・・帰って早々春に殺されそうになるとは・・覚悟してた方がいいってこの事か?」
「いや!違うからね⁈」
「ある意味こっちの方がマシ?少なくとも俺は屋敷の中にいたら死ねる自信があるわ!ははは」
「いや屋敷の中で何が起きてるんだよ⁈あと暑苦しいから二人共離れて?特に春!胸が当たってる!」
「役得だろ?堪能しとけ!ははは」
「当たってるんじゃなくて当ててるんだから当たり前でしょ?」
「少なくとも男に抱き付かれるのは役得じゃない‼︎」
そう言いながら離れる気配のない二人、長年共に修行し気心の知れた仲だからこその振る舞いだがそれを面白くない面持ちで眺める者が二名
「へぇ〜当たってるんじゃなく当ててる・・私への当て付けかな?」
「ふっざけんなよぉぉぉぉぉ‼︎朝から色んな女の子とイチャイチャしやがって‼︎それなのにその嬉しくないような顔ぉぉぉ!おっぱいをいっぱい堪能してお腹いっぱいだよって言いたいのかぁぁぁ⁈こっちは暑苦しい野郎共に囲まれ辟易してるってのになぁんだその顔はぁぁぁぁ!謝れ!今すぐ俺に謝れ‼︎」
理由こそ違うが共に嫉妬の感情を露わにする桜花と善逸、桜花の冷ややかな視線に僅かな威圧感こそあるが大したものでもなくスルー出来たのだが
「善逸・・・ゴメンな」
謝った・・・煌牙は確かに謝った
だがその顔に反省の色は一切なく、寧ろ善逸に対する憐みが滲み出ていた
まるで上から目線・・煌牙の態度は善逸の嫉妬に更なる拍車をかけ
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ‼︎」
汚い高音を撒き散らし嫉妬に狂う善逸、そんな善逸に冷ややかな視線を向ける一同だったが
「あーーー‼︎凄く煩い叫び声が聞こえたと思えばぁ‼︎まきをさん‼︎雛鶴さん‼︎見て下さい‼︎煌牙君ですよ‼︎煌牙君‼︎やっぱり死んでなかったんですねぇぇぇ‼︎」
「アンタ‼︎言い方に気を付けな‼︎失礼にも程があるでしょうが‼︎」
そんな叫び声が聞こえ振り向く一同、振り向いた先には三人の女性がこちらに向かって走って来ていたが
「生きていてすいませんでした‼︎」
そう言って土下座する煌牙、それを見た三人は青ざめた顔になり
「アンタ‼︎なんて事言ってくれたんだい‼︎柱に土下座させるなんて‼︎」
「ああ!もう私達だけの問題じゃ済まされないわ」
「すいませんすいませんすいませんすいませんすいません‼︎ワザとじゃないんです‼︎決してワザとじゃないんですぅぅぅ‼︎生きていていてくれた喜びが爆発して私の頭も爆発しちゃったんですぅぅ‼︎」
必死に謝り許しを乞うが柱に土下座させた事が許される筈もないと思い
更に青白くなっていくと
「ぶはっ!須磨さん相変わらず面白っ!久しぶりに良い反応が見れただけで帰って来た甲斐があったよ」
笑いながらそう話す煌牙、その反応に少し安心して表情を緩ませ
「じゃあ許してくれるんですね‼︎」
そう言い出す須磨、それに対する煌牙の反応は
「は?許さんが?」
そう言い放つ煌牙に
「そんなぁぁぁ‼︎」
そんな煌牙の言葉に絶望する須磨だったが
「いや!間に受けすぎだろ⁈冗談だって気付く筈だけど」
「煌牙君は冗談を言うような子じゃないと思ってたわ」
「私もだよ!それに顔が本気だったからね!」
「マジか⁈あ〜!からかった俺が悪かったよ‼︎全部俺の冗談だから三人共落ち着けよな」
「ホントですよ‼︎普段冗談を言わない煌牙君が冗談を言うから本気だと思ったじゃないですかぁ‼︎もう全部煌牙君が悪いんですよ!反省して下さい‼︎」
「だからアンタ!余計な事言うんじゃないよ‼︎」
「口は災いの元ってこの事を言うのね」
「はは!・・んで何で三人がここに来てんの?天元さんは?」
「天元様は屋敷で待機してるわ、柱の皆やお館様も集まってるのよ」
「柱だけじゃなく元柱のカナエ様や鱗滝様、元炎柱の慎寿朗様も集合してたわよ」
「・・・は?・・・いや・・は⁈・・・はぁぁぁ⁉︎」
そんな会話を続けていると理解し難い話が飛び出し困惑する煌牙
「だって煌牙君無事に生きて帰って来るだけじゃなくて上弦の鬼までやっつけたんですもん‼︎皆さん集まりますよ‼︎」
「あ・・いや・・それはそれで良いけど何で今⁉︎しかもここなわけ⁈お館様何してんの⁉︎柱の皆暇なの⁉︎」
煌牙がそう言うのも無理はない、生きて戻って来た事や上弦を倒した事は後日鬼殺隊本部に招集、緊急柱合会議という形で報告するつもりだったが
まさか当日に本部ではなく四ノ宮邸に集合してるとは夢にも思わない煌牙は頭を抱え
「桜花お前この事知ってただろ?」
「うん♪米吉が教えてくれたよ?煌牙は寝てたからね」
「俺も当日に集まるとは思わなかったから驚いた!本部ではなく四ノ宮の屋敷にお館様自ら足を運ぶとは、よもやよもやだ‼︎」
「・・・・あ〜あ、帰ったら煉獄さんの飯作ろうと思ってたのにこれじゃ飯は当分作れそうにないな」
「む⁈それは困る‼︎四ノ宮の作る飯が楽しみで今日は何も口にしていない‼︎」
「だろ⁈俺も腹減ってるし・・・あ〜もう‼︎柱合会議マジで面倒臭い‼︎
手っ取り早く終わらないかな?」
「煌牙♪私に任せて〜♪私も柱合会議面倒臭いと思ってたし♪」
「なら桜花に任せ・・ん?柱合会議が面倒⁉︎・・え?桜花柱合会議出た事ないだろ?」
「あれ?私煌牙に言ってなかったけ?私は今牙柱代理なのだよ〜♪だから煌牙不在の時私が緊急柱合会議に出たんだけどホント面倒臭かったよ〜」
「煉獄さんマジ?」
「うむ‼︎四ノ宮妹の言ってる事は事実だ‼︎お館様の前で実際に面倒臭いとも言っていた‼︎」
「はははは‼︎桜花お前スゲェわ!もうそのまま牙柱やってくれていいぞ!お前はもう牙柱引退するわ‼︎」
そんな会話をしていると煌牙の発言に驚いた炭治郎が
「煌牙さん柱辞めちゃうんですか⁉︎」
目を丸くしながらそう質問する炭治郎、炭治郎だけじゃなくカナヲや瑠花達も驚き煌牙の反応を待っていると
「はぁ〜・・お前等真面目過ぎ‼︎さっきもだけど俺だって冗談位言うぞ?まぁ今の発言は半分本気だが」
溜息を吐きながらそう話す煌牙、正直なところ桜花が柱をやってくれたら楽になるからやってほしいと思ってはいたが柱引退は認めて貰えないだろうと諦め半分の煌牙は
「とりあえず屋敷に帰ろうか?ここで話し込んででも仕方ないしさ」
そう言って煌牙は重い脚取りで屋敷へと歩き出し、そして屋敷の扉をゆっくりと開け開くのだった
そしてその扉を開いた時だった
「煌牙様ぁぁぁぁ‼︎」
いの一番に出迎えたのはいつも玄関で煌牙の帰りを待つ執事のゴンザであり今回のような状況でも自らの仕事を全うするゴンザの姿に変わらぬ日常に戻って来たのだと、そう思う煌牙はゴンザに笑顔を向け
「ただいま‼︎」
そんな煌牙を見て歓喜の涙を流し始めるゴンザ、だがすぐさま白地のハンカチで涙を拭き執事としての使命を全うしようとすると
「「「「煌牙様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」」」」
ゴンザの後ろで待機していた四ノ宮家のメイド一同が泣き始め
「申し訳ありません煌牙様」
これじゃ仕事にならないと思うがメイド達の気持ちは痛い程理解出来るゴンザは咎める事も出来ず代表して煌牙に謝ると
「俺の方こそゴメン‼︎皆に心配をかけて不安にさせてしまった、そんな俺の為に泣いてくれてありがとう‼︎」
そう言って煌牙はゴンザやメイド一同に深くお辞儀をすると
「顔を上げて下さい煌牙様・・私達は鬼殺隊ではありませんが煌牙様の日々の努力をこの目で見て参りました。鬼殺という過酷な使命、確かに努力だけで必ずしも良い結果が生まれる訳ではありません・・ですが私達は信じているのです!諦めない限り道は続いていくのだと、どんなに険しい道だとしても諦めず一歩また一歩と歩みを止めない限り道は続くのだと!それを教えてくれたのは他でもない!煌牙様です!だからこそ私達は信じていました!貴方は絶対に生きていると!そして貴方は私達が信じた通り生きてこの場所に戻って来てくださいました!私達はそれだけで十分です!胸を張って下さいませ」
煌牙に絶対の信頼を置くゴンザの優しげな笑みに絆され感極まる煌牙
涙腺が緩み一筋の涙が零れ落ちる瞬間
「わぁぁぁぁあ‼︎ゴンザさん‼︎ただいまぁぁぁぁ‼︎」
少し遅れて屋敷に入って来た桜花一同、久方ぶりの帰宅と慣れ親しんだゴンザの姿に喜びの声を上げる瑠花
「おぉぉ!瑠花様!お帰りなさいませ!このゴンザ瑠花様のお帰りを心よりお待ちしておりました‼︎」
と満面の笑みを浮かべ温かく迎え入れるゴンザ
「ただいま〜♪今帰ったよ〜♪」
温かい空気にご満悦の桜花がそう言うと
「お帰りなさいませ桜花様」
そう言いながらぺこりと一礼するゴンザは
「この度の任務大変ご苦労様でした」
そう言うとゴンザは玄関の後方にいる炭治郎達に目を向ける
「洋風の屋敷が珍しいですかな?」
ただでさえ広い四ノ宮邸ましてや洋館に上がる経験など全く無かった炭治郎達は物珍しさでキョロキョロと周りを見渡し驚いていたがゴンザの呼びかけでゴンザに振り向くと
「あっ!その・・ここが煌牙さんの家なんだなぁって」
「フフッ、左様ですか」
そうしみじみと言う炭治郎に温かい笑みを浮かべたままのゴンザは
「申し遅れました、私は四ノ宮家で執事を務めさせて頂いてる倉橋ゴンザと申します。竈門炭治郎様今後とも宜しくお願いします」
丁寧な物腰で炭治郎に自己紹介するゴンザは隣にいる善逸と伊之助にも目を配り
「我妻善逸様、嘴平伊之助様も大変ご苦労様でした!重ね重ねで失礼ですが私倉橋ゴンザと申します!」
「ガハハハハ!俺の事は親分と呼べ!」
「ちょっ⁈馬鹿!失礼だろ!・・すいません!この裸猪が失礼しました」
ゴンザに対し尊大な態度の伊之助とそれを諫める善逸だったが
「では伊之助様は今後親分さんと呼ばせてもらいましょうか」
と割と乗り気のゴンザ、それに気を良くした伊之助が
「ならジジイは今から俺の子分だ!」
と鼻息が荒くなる伊之助、失礼にも程があると慌てふためく善逸と伊之助を諫めようとする炭治郎だったが
「はぁ〜⁈ゴンザは私の執事だよ?言うなれば私の子分!勝手に子分にしないでくれる?」
「うるせぇ!ジジイが親分と認めたんだから俺が親分なんだよ!」
と桜花と伊之助の間でゴンザの取り合いが始まり双方睨み合いが始まると
「そうなると僕はゴンザの大親分って事になるね!つまり伊之助君!君は僕の子分って事になる!」
そう言いながら話に割り込んで来たのは
「おやっさん!」
「「お父さん!」」
「旦那様」
煌牙、桜花、瑠花の父親でもあり元雲柱だった四ノ宮財閥会長、四ノ宮泰三が不敵な笑みを浮かべながら玄関先のロビー、二階へと続く階段から降りて来たのだった
「大親分だと⁈誰だテメェ!なんで俺がテメェの子分にならないといけねぇんだ!親分は俺だ‼︎」
と泰造に牙を剥く伊之助だったのだが
「僕かい?そうだねぇ・・・・まぁどこにでもいるような普通のおじさんってとこじゃない?」
あくまでも普通のおじさん、自身の立場をあえて主張せずのらりくらりと躱す泰三だったが
「この御方は鬼殺隊の中でもお館様に次ぐ立場の御方だ!それに加え雲柱として鬼殺隊に名を馳せた歴戦の勇でもある‼︎」
「いや杏寿朗君さぁ!回答が早すぎないかな?確かにそうかもしれないけど僕普通のおじさんって言ったよね?そこは空気読んで欲しかったんだけど・・まぁ言っちゃったもんは仕方ないか」
「これは失礼しました!」
そんな会話の中苦笑いの四ノ宮兄妹、元々掴みどころのない雲のような飄々とした性格の泰三だがまがりなりにも四ノ宮財閥の会長、地位も立場も格上の人間が普通のおじさんな訳ないと言いたいが、泰三は元からこういった性格なので事の成り行きを見守るしかない煌牙達だが
「はぁぁ⁈んなもん知るかぁぁ‼︎親分は俺だ!」
「伊之助!いい加減にしないか‼︎匂いが普通じゃないだろう!実力も格も全てにおいて伊之助より優ってる!とにかくこの人は普通じゃない」
「炭治郎ぉぉぉ‼︎お前まで喋ると余計ややこしくなるから!ねぇなんで⁈なんでお前煽ってくるの⁈馬鹿なのぉぉぉ⁈」
と騒ぎ始めた炭治郎達
「面白い子達だね!まぁ君が親分でいいとして・・・・子分達はどこにいるんだい?」
「子分ならここにいるぜ!権八郎に紋逸、オーガは山の王だから別として桜花にチビっ娘、カナミに新しく子分になった女四人と野郎一人とそこのジジイだ!」
誇らしげにそう主張する伊之助だが勝手な事を言うなとばかりに反感をくらいプンスカと怒り出す伊之助、そんな伊之助を見て笑い出した泰三は伊之助の両肩をグッと掴み顔を近づけると
「伊之助君、君が本当に親分としての自覚があるなら感情のままに暴れるのは良くない!親分というのはただ偉いだけじゃなく子分達を率い道を指し示さなくちゃならないんだ!その親分がちょっとした事で取り乱すような事があればその親分について来た子分達はどうなる?そんな親分についていきたいと思うかい?少なくとも僕はそんな親分を親分とは認めたくないね!だから伊之助君!君が本当に親分としての自覚があるならもっと周りを見て冷静に!何が最善なのか良く考えるんだ!」
日本全国に展開する四ノ宮財閥の関連企業、いわば大勢の子分を率いる泰三の助言に反論の余地もない伊之助は真摯にその言葉を受け止め
「さっきはゴメンね」
先程の発言はちょっと横暴過ぎたと自ら反省、炭治郎達にしっかりと向き合い謝ると
「うんうん!やれば出来るじゃないか伊之助君!あっ!因みに僕の子分達は日本各地に数え切れない程いるよ」
満足げな泰三だがちょっとだけ自慢したくなったので伊之助が分かりやすいように子分という言葉で自慢すると
「うぉぉ⁈おっさんスゲェ‼︎認めてやるぜ!おっさんはスゲェ親分だ」
「はは!まぁ僕はあくまでも普通のおじさんなんだけどね」
まだ言うか!そんな視線を飛ばす四ノ宮兄妹、その視線に気付き煌牙達に目を向けた泰三は
「やあ!よく帰って来てくれたね瑠花!愛しい愛娘がこうして帰って来たんだ!今すぐにでも宴会を開きたいところだね」
「旦那様!お気持ちは分かりますが産屋敷様がいらっしゃってる最中ですので」
「まぁそうなんだけどね、僕って鬼殺隊の裏方担当だし?正直なところ柱合会議とか関係ないからなぁ・・・というかさぁ?なんで産屋敷一家と柱が全員集合してんの⁈って感じなんだよね!僕が鬼無辻なら鬼殺隊全滅の絶好の機会だし上弦全員引き連れて総力戦で潰しに掛かるよ」
泰造の話す通り四ノ宮邸には鬼殺隊の中枢が総集結しこの場を全滅させれば鬼殺隊は事実上の全滅となる、この場にいない隊員を含め鬼殺隊関係者など上弦には及ばないそう見立てた泰造の意見に深刻さを覚えた一同だったが
「とは言ったけど迂闊に攻め込む程馬鹿じゃないと思うよ、鬼殺隊が初めて上弦を討ち取ったという事は鬼無辻側にしてみれば初めて上弦を失ったという事になる!この状況で無策で襲撃を掛ける程愚かではない事は奴がこちら側に情報を掴ませない事から察する事が出来るし仮に襲撃するにしても状況のまとめ、対策を立て実行するにあたって昨日今日じゃ実現不可能!って事で僕の言った事はそんな可能性もあるのかぁ程度で受け取ってくれて構わないよ」
と言う泰三だが、その可能性は鬼殺隊にとって最悪の可能性であり場の雰囲気が重くなると
「僕が言うのもなんだけどそう深刻にならないでよ、まぁ本当にその可能性が実現されたならさ・・僕が戦えばいいだけの話だから!」
思ったより深刻な雰囲気になってしまい取り繕うように話す泰三だが
「その時は皆助けてよね!僕ってば普通のおじさんだから一人じゃキツいからね!まぁ臨機応変でいこうよ」
そうあっけらかんとする泰三だったが
「深刻な話を長々と話しといて一人で勝手に自己完結してる!お父さんって昔からそうゆーとこあるよね?」
「よく言われるよ!最悪の状況を想定しそれに対する策を練って最善を尽くす!でも案外間違っちゃいないだろう?桜花」
「おやっさん!その最悪の状況なんだけど、もしかすると俺達が想定する以上に最悪の事態になるかもしれない」
「ん?どうゆう事だい?」
「狛治が・・上弦の参が消える直前に俺に教えてくれたんだ!鬼無辻は逃れ者の鬼を解き放つかもしれないって!上弦の鬼に正真正銘の化け物とまで言わしめるその鬼が解き放たれたらどうなるんだろうって」
「・・・・参ったね!上弦が討伐されて吉兆の兆しが見え始めた途端に
それ以上の凶兆が現れるとは!・・・気が変わったよ!僕も柱合会議に参加させてもらうとするよ!いや今回に限ってはこの場にいる鬼殺隊員全員が参加するべきだ!」
煌牙から知らされた内容に絶句する一同、上弦の鬼をようやく一体討伐出来たというのにその上弦から化け物とまで言われた鬼が存在するとは想定もしていなかった事で泰三は緩やかな顔付きを引き締め真面目な雰囲気でお館様含め柱が待つ応接間に向かうと決め
「ゴンザ!済まないが皆を応接間へ案内してくれないかい?杏寿朗君!今回の任務の報告は君達でやってくれ!僕はちょっと煌牙と桜花に話があってね!悪いけど煌牙と桜花は少し残ってくれないかい?」
キリッとした態度で指示を出した泰三、その雰囲気に呑まれ一切の反論もなく頷く一同はゴンザの案内で柱達が待つ応接間へ向かい出すと
「ちょっと場所を変えようか?」
そう煌牙達を促し泰三は自室でもある執務室へと歩み出すのだった
「お父さん!お館様はほっといて良いの?」
「無限列車での報告なら杏寿朗君達で問題ないよ!どのみち後で合流するんだ!煌牙からの報告はその時でも大丈夫だし気にする事はない、問題はさっきの煌牙の言った内容だ!」
「上弦以上の化け物って話?」
「まぁね!実は君達が帰って来る前に朔弥さんや斬吼狼君と少し話をしてね、僕達だけで話したい事があるんだってさ」
「鬼殺隊を交えない話って事?その逃れ者の鬼が何なのか知らないけど良くない話だってのは何となく分かるよ」
「・・・・・多分・・鬼じゃない」
「え?煌牙何か言った?」
「いや・・詳しい話は合流してからで良いだろ」
執務室へと続く長い廊下を歩きながらそう会話する煌牙達、泰三はふと立ち止まり煌牙と向き合うと
「煌牙・・今更だけどよく帰って来てくれたね!それに・・・以前の煌牙に比べて一回り、いやそれ以上に成長したように見えるよ!」
「だよね!というか煌牙前より強くなってるよ!なんか呼吸も違うし型も牙の呼吸の型とは違うし」
「うん・・ただいま!呼吸については後で話すよ、皆にも聞いてもらった方が良いしさ」
煌牙はそう言うと一足先に執務室へ歩き出し
「煌牙どうしたのかな?」
「後で分かるさ!僕達も行こうか」
そう話すと桜花達も執務室へ歩き出し朔弥達と合流するのだった