金色の刃   作:ちゃんエビ

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23 饗宴

「あっ!煌牙ちゃん桜花ちゃんおかえり♪」

 

「よう!帰って来て早々で悪いな」

 

泰三の執務室に入った煌牙達を待っていた朔弥達はそう話すと辺りを見渡し

 

「花蓮ちゃんまで不在だと怪しまれるからね、とりあえずこの場に集まった騎士と法師だけで話を進めていくけど良いかな?」

 

と朔弥が話を進めようとすると

 

「お館様や柱を交えて話す事出来ないのか?」

 

と疑問を口にする煌牙、折角屋敷に集まっているのに何故?と疑問に思う煌牙だったが

 

「煌牙ちゃんがそう思うのは分かるんだけどね、最悪妥協して輝哉ちゃんだけには話しても良いかもしれないけど柱や他の隊士達には話しちゃ駄目‼︎絶対に駄目だからね‼︎」

 

そう強く念を押す朔弥、普段見せない迫真の表情に鬼気迫るものを感じた煌牙は

 

「せめてカナヲだけには話しておきたい、アイツ絶対心配して首を突っ込んで来るからさ!ちゃんと理由を話した方が安心できる」

 

「ふはっ!アイツ桜花に対抗意識あるからな!寧ろアイツだけには知らせておかないとな」

 

煌牙の考えに同調する斬吼狼がそう話すと

 

「何でカナヲちゃんが私に対抗意識燃やしてるの?」

 

当然ながらそう疑問に思う桜花、煌牙もえ?そうなの?と目をパチクリさせ斬吼狼に視線を移すと

 

「煌牙を支えたいんだとさ!んで!煌牙を一番支えているのは誰だ?」

 

そう話す斬吼狼の質問に煌牙と桜花は顔を見合わせ

 

「「ザルバ」」

 

と答えると

 

「あ、いや!そうじゃなくてだな!」

 

「総悟・・私ってば総悟の役に立ってないの?」

 

斬吼狼の中では桜花が現状で煌牙を支えている構図だったのだが煌牙桜花両名の答えはザルバ、実際煌牙の相棒としてこれまで共に戦ってきたのだから二人がそう答えるのも理解出来るがこの場に置いての答えは桜花、それを前提に話をしていたので斬吼狼は狼狽るのだが斬吼狼の相棒であるアルバが追い討ちのように寂しげな雰囲気を醸し出しながら斬吼狼に話しかけて来る

 

「役に立ってるよ‼︎・・はぁ〜・・お前等魔導輪は勘定に入れるな!」

 

溜息を吐きながらそう話す斬吼狼、魔戒騎士の相棒として常に共にいる魔導輪まで勘定に入れるとややこしくなり話が進まなくなるので

 

「ザルバを抜きに煌牙を支え続けて来たのは誰だって話だ!」

 

斬吼狼がそう話すと煌牙達は再び顔を見合わせ

 

「「カナヲ(ちゃん)」」

 

と斬吼狼に告げると斬吼狼は拍子抜けしたかのような顔付きになり

 

「桜花じゃないのかよ⁉︎」

 

思わずそう突っ込んでしまうが

 

「私も煌牙を支える魔戒法師だって思ってるよ?でもね?煌牙が魔戒騎士として、鬼殺隊として戦う根幹・・始まりはカナヲをちゃんを守りたいって想いなんだよ・・その想いが煌牙をずっと支え続けて来たんだよ

だから煌牙を誰よりも支えてるのはカナヲちゃんだよ」

 

「なるほどね・・そりゃアイツも喜ぶわ!だがいいのか?煌牙を誰よりも支えてるのは桜花お前じゃなくて」

 

「ん〜?それって大事な事?誰が煌牙を一番支えてるかって競う事なの?そりゃ私も小さい頃に煌牙と約束したよ?私が黄金騎士を支える魔戒法師になるって!まぁお父さんがよく言う適材適所ってやつだよ!

カナヲちゃんが煌牙の根幹を支える存在なら私は法師として黄金騎士を支える!それだけだよ」

 

そうあっさりと話す桜花、桜花には桜花なりの信念があると斬吼狼はそれ以上追求せず話を本題に戻し

 

「とりあえず当代の産屋敷当主とカナヲだけには教えるとして・・・朔弥!話すぞ?俺達の計画を!」

 

「うん・・煌牙ちゃん!桜花ちゃん!泰三ちゃん!心して聞いてね!これから話す事を」

 

そう話すとこの場の空気が張り詰め煌牙達はコクンと頷き言葉を発する事なく朔弥達の開口の時を待つ

 

「まず何故俺が鬼になったか・・そこからだな」

 

「うん・・煌牙ちゃんは知ってると思うけど、斬吼狼ちゃんは昔黒死牟に負けたの・・当時は死んじゃったと思ってたけど鬼となり生き延びて今に至るんだけど何で斬吼狼ちゃん・・総悟ちゃんが鬼になるのを受け入れたのか・・それはね」

 

「裏切り者を殺す為だ」

 

「斬吼狼ちゃん」

 

「大牙を含め俺達は元々違う世界にいた!鬼がいるこの世界とは違う別の世界だ」

 

「分かりやすく言うとね!煌牙ちゃんがこの世界に鬼なんかいなけりゃ良いって思うとするよね?もし鬼がいなければ鬼殺隊も必要なかったし誰かが殺される必要もない!そんなもしもの世界!空想上の話だと思うけど本当は実在するの!」

 

「そのもしもの世界が本来俺達がいた世界、確かにその世界には鬼はいなかった」

 

「うん・・鬼はいないけど鬼よりも厄介な敵がいた」

 

「それが俺達魔戒騎士や法師の敵、ホラーだ」

 

「私が残した文献にホラーとは何か書いてたから煌牙ちゃん達も少しは知識があるとは思うけど」

 

「俺達は元老院からの指令であるホラーを討滅する為にホラーを狩る日々を送っていた」

 

「ホラーの始祖、鬼で例えるなら無惨ちゃんみたいな存在かな?そのホラーの始祖メシア・・そのメシアの涙って呼ばれる古のホラー“エイリス“を追い詰め最終的に討滅はしたんだけど・・ね」

 

「そのエイリスってホラーは別の次元を開く力を持っていてな、簡単に言えば俺達の世界とこの世界を繋ぐ扉みたいなもんだ」

 

「そのエイリスを討滅したからその扉は消えて問題無く指令を達成出来る筈だったの」

 

「だがそこで問題が起きた」

 

「ある一人の魔戒法師・・いやホラーが俺達を裏切り俺達は次元の狭間へと飛ばされた」

 

「それで私達はこの世界にいるって訳」

 

「そしてそのホラーはこの世界で無惨と邂逅し鬼となった」

 

「でもホラーはホラー!元より人間じゃない!人間を鬼に変える無惨ちゃんの血もホラーからしたら自らを強くする為だけの増強剤、故に無惨ちゃんの支配も受けない厄介な鬼が生まれた」

 

「そしてそのホラーは人間を食べる事を辞め鬼を食べ出した」

 

「鬼も本質は人間、だけど無惨ちゃんの血の影響で人間より鬼の方が満足するみたいで・・稀血みたいなものだね」

 

「そしてそのホラーは無惨と取り引きをした」

 

「人間を鬼に変え食糧を寄越せと、その代わりお前の敵は片付けてやるとね」

 

「自らに指図をするホラーを許せない無惨は取り引きに応じずホラー はその姿を消した」

 

「私達からしたらホラーが無惨ちゃんを食べてくれたら鬼はもう生まれなかったんだけどホラーにとって無惨ちゃんはご馳走を生み出す道具みたいなもんだからね、食べる訳にはいかなかったみたい」

 

「そして無惨は自分の命を狙う俺達や鬼殺隊、ホラーの脅威から身を守る為に十二鬼月を作り強力な配下を従えた」

 

「そしてその十二鬼月の鬼、黒死牟に総悟ちゃんは負けたの」

 

「黒死牟は瀕死の俺に鬼にならないかと提案し俺はその提案に乗った、無惨からすればホラーを討滅出来る魔戒騎士を手駒に出来るのは嬉しい誤算だろうし俺はいずれ接触するホラーを討つ機会を得る訳だし互いに利があったからな.」

 

「それから大分が時が流れて再びホラーが無惨ちゃんに接触する事があったの」

 

「より無惨の血の濃い十二鬼月や俺を食う為にな」

 

「でも上弦全員と斬吼狼ちゃんを相手にホラーも一筋縄ではいかなかったみたいで」

 

「最終的にそのホラーは俺が討滅したんだがな・・・ホラーとはいえ元が魔戒法師、最悪の置き土産を残していやがった」

 

「ホントにね‼︎置き土産さえなければ斬吼狼ちゃん人間に戻してあげたいんだけどね」

 

「全くだ!・・って訳で俺は鬼になったという訳だ」

 

斬吼狼と朔弥の二人で総悟が斬吼狼という鬼になった経緯を話し終え煌牙達の反応を見てみると

 

「なるほど!斬吼狼君が鬼になった理由は理解したよ・・だがその後無惨を斬らなかったのは何故だい?その置き土産とやらが関係してるのかい?」

 

「さっき煌牙が言っていた正真正銘の化け物ってその置き土産?」

 

「それも気になるけど引っ掛かる点が一つ‼︎朔弥さんが鬼になった理由が語られてない‼︎」

 

とそれぞれの疑問を口にする煌牙達

 

「さっき話したのは俺が俺になった理由、ここからが本題だ!お前等の疑問もじきに解けるさ・・但し!煌牙の疑問はこの件とは全く関係ない‼︎どうしても知りたきゃ朔弥に無理矢理聞くんだな‼︎」

 

「え⁈いや教えないよ⁈例え煌牙ちゃんのお願いでも絶対に教えないよ⁈」

 

必死に否定する朔弥だったが

 

「斬吼狼が話す本題ってやつも気になるけどさ、それよりもなんでアンタが鬼になったのか凄く気になる!多分今のまま話を聞いても心ここにあらずというか」

 

「え⁉︎駄目だよ煌牙ちゃん‼︎乙女の秘密を暴こうとしちゃ!」

 

「乙女?・・・乙女ってこうゆうのも乙女っていうの?」

 

「ちょ⁈こうゆうのって扱いが酷くない⁈私そんな子に産んだ覚えはないよ!・・・って今のは無し‼︎」

 

「安心しろ!俺もアンタから産まれた覚えはない‼︎」

 

「・・・えぅ・・・ひっく・・・ふぇぇ」

 

「ちょ⁉︎何で泣いてんだよ!」

 

「あー煌牙が泣かしたーー」

 

「煌牙、泣かせるのは良くないよ」

 

「今の言葉は朔弥に効果抜群だな・・煌牙が悪い訳じゃないんだがな」

 

「うん・・急に泣いちゃってゴメンね・・ひっく・・煌牙ちゃんは何も悪くないの・・悪いのは私の方だから」

 

「いや、俺も悪かったよ!朔弥さんってなんか親しみやすいっていうか遠慮なく言えるっていうか・・ホントゴメン!これからは気をつけるよ」

 

「ううん・・いいの!煌牙ちゃんはそのままでいて?・・・ゴメン、ちょっと頭冷やしてくる・・斬吼狼ちゃん後はお願い」

 

「ったく!世話の焼ける奴だ!後は俺の方で話しとくからよ!顔でも洗ってこい」

 

「うん・・ホントゴメンね」

 

そう言って朔弥は執務室から逃げ出すと

 

「煌牙・・お前も行って来い!」

 

朔弥を見かねた斬吼狼は煌牙に後を追わせるように言うと煌牙も朔弥が気になっていたようで速攻で執務室を出て朔弥の後を追いかける

 

「朔弥さん!」

 

「煌牙ちゃん・・どうしたの?斬吼狼ちゃんから話聞かないの?」

 

「聞かなくても大体分かるさ、俺の特異体質知ってるだろ?」

 

「触れた人や物に宿る記憶が声となって聞こえる・・・あっ!そうゆう事か」

 

「ああ」

 

「あの時私煌牙ちゃんにべったりくっ付いてたからね・・そっか・・あの時にはもう知ってたって訳か」

 

「でも詳しくは知らない・・・ザルバもいないし・・・」

 

「そっか・・・」

 

そう言って沈黙する二人、先程の件で気まずい雰囲気になり上手く会話が出来ないでいたが

 

「朔弥さん!さっきはホントにゴメン‼︎」

 

「さっきから煌牙ちゃん謝ってばっかだね・・・煌牙ちゃん何も悪くないのに謝って・・私が悪いのに謝られて・・・もう分かんないよ・・私どうしたらいいか分かんないよ・・・」

 

そう言って大粒の涙を溢す朔弥、煌牙は堪らず朔弥を抱きしめると

 

「何か抱えてるんだろ?誰にも言えないような大きな悩みを・・・今もこうして触れてるけど俺に聞こえないよう必死に隠してる・・・俺朔弥さんに何だかんだ言うけどホントは凄く感謝してる!だからさ!俺も朔弥さんの為に何かしてやりたい!朔弥さんさえ良かったらその悩み俺に聞かせてくれないかな?俺に朔弥さんの想いを託し欲しいんだ‼︎」

 

そう煌牙が優しく語りかけると

 

「ズルイよ・・煌牙ちゃん・・・そんな事言われたら私・・・ホント誰に似たんだか・・」

 

そんな煌牙に絆され朔弥もまた煌牙を抱きしめ返すと

 

「私の想いもう煌牙ちゃんに託してるよ?誰よりも先に誰にも負けない強い想いを私は煌牙ちゃんに託してるよ」

 

煌牙の胸に顔を埋めそう話す朔弥、張り詰めた緊張が解き放たれたかのように必死に隠していた朔弥の想いが表面化し煌牙の中に流れ込んでいく

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何だよコレ・・・・・巫山戯るなよ・・・」

 

煌牙の中に流れ込む朔弥の遠い過去の記憶、産まれたばかりの赤子を愛おしく抱く朔弥の姿とそれを優しく見守る大牙の姿、時が流れ両親の愛情を注がれスクスクと育つ幼児と新たに妹として産まれた赤子の姿、幸せな家庭を築く朔弥の記憶が流れ込んでくるがその幸せな記憶は突如崩れ去る

 

暁大牙、当時の黄金騎士であり鬼無辻が最も恐れた剣士、呼吸を用いず鬼と対等以上に渡り合う人間などこれまでいなかった、始まりの呼吸と言われる呼吸法を用い自身を追い詰めた剣士も恐ろしい存在だが暁大牙という人間はその剣士以上に恐ろしい存在だった

 

自らを完璧に近い生物だと自負する無惨、その無惨からして理解不能な異形の化け物ホラー、擬態能力で見た目こそ完全な人間だがその捕食性は鬼すらも超越し人間はおろか鬼でさえも捕食する脅威的な存在、そんなホラーを討滅する力を持つ魔戒騎士は自身の命を脅かす鬼殺隊より恐ろしい存在であり警戒していた時、大牙は始まりの剣士と邂逅した

 

ただでさえ脅威的な存在だった魔戒騎士が呼吸を用いて更に強くなる事を危惧した無惨は始まりの剣士と言われた継国縁壱の兄、継国巌勝と接近し鬼にする事で戦力を増やし魔戒騎士や鬼殺隊に対する対抗手段を増やし続けていった

 

当時の鬼殺隊の戦力は魔戒騎士である大牙と総悟を除くと始まりの剣士と言われる縁壱とその兄巌勝が最高戦力でありその巌勝が鬼殺隊を裏切り無惨の元に着いたのは相当の痛手であった

 

更には呼吸を極めた剣士達に待ち受けていた代償、身体能力がより飛躍的に上昇する痣の発現が寿命を大幅に削り齢二十五まで生きられないという致命的な問題が露見し鬼殺隊は混迷を極めていた

 

そして大牙もまた痣の発現による代償で寿命が縮み長くは生きれない事が分かり次代の黄金騎士の継承者を息子に託す事を決意するのだった

 

だがそんな決意も虚しく悲劇は訪れる

 

鬼殺隊の戦力低下と黒死牟という戦力増強を機に鬼殺隊全滅を目論んだ無惨は黒死牟の情報で当時の産屋敷当主の屋敷を探し出し奇襲を掛けたのだが、巌勝が裏切ったという事はいずれ襲撃があるだろうと読んでいた産屋敷当主の采配で大牙と総悟が無惨を迎え撃つ事になるのだが無惨の最大戦力である黒死牟の姿が見えない

 

違和感を感じる大牙だったが無惨を討ち取れば問題ないと判断し無惨を討つ事に集中するのだが、その判断が悲劇の幕開けだった

 

大牙達の前に姿を現さない黒死牟、その黒死牟が現れた先は

 

朔弥達がいる暁邸だった

 

確かに暁大牙という人間は脅威的な存在、だが人間である以上寿命という呪縛からは逃れられない

 

味方であった時は頼もしい存在だったがそれ以上にその才能が妬ましかった

 

その大牙が数年もせず死ぬ、黄金騎士という鬼さえも超越する力も数年経てば消える、だがその後継者がいるならば話は変わる

 

ならばその後継者が育つ前に殺してしまえば黄金騎士は現れない

 

かつては仲間として共に過ごしたからこそ知り得た情報、敵である以上かつての仲間である大牙の息子といえど殺す事に躊躇いもない黒死牟は

その凶刃を振るい朔弥達を襲撃する

 

だが朔弥とて無抵抗であるはずもない

 

まだ幼い息子と産まれたばかりの赤子を守る為に必死に応戦し抵抗を試みる

 

だが相手は黒死牟、強烈な斬撃と血鬼術の嵐を前に厳しい戦いを強いられ苦しい展開に陥っていく

 

元老院付きの優秀な魔戒法師でもある朔弥、薬学や魔導具関連の実力は突出してはいるが実戦となるとやはり魔戒騎士や肉弾戦を得意とする法師達に比べると遅れをとる朔弥、低級ホラーや雑魚鬼ならば朔弥単独でも対処可能だが相手は鬼の中でも最強格、朔弥一人であるならば術式構築や法術を駆使して足止めは可能だが黒死牟の狙いは子供達、幼子二人を守りながら黒死牟の相手は到底不可能であり子供達が殺されるのは時間の問題だった

 

勿論朔弥自身も殺害対象ではあるが優先順位は子供達、特に息子を執拗に狙う黒死牟に決死の覚悟で朔弥や立ち向かう

 

子供達を見捨てて生き延びる考えなど微塵もない朔弥は自分の命と引き換えにでも子供達を守ろうと術式を構築し結界を張ると僅かな時間だが黒死牟相手に時間を稼ぐ事に成功する

 

その僅かな時間の中で激しい葛藤と自己嫌悪を重ね、朔弥はある決断をする

 

術式を多重構築し開いたゲートに子供達を送り込みこの時間とは違う先の未来へと子供達を逃す

 

最早賭け、先の未来で子供達がどうなるかは分からない、だが今この場から逃さないと子供達の未来はない

 

仮にこの場を凌ぐ或いは違う場所に逃したとしても一時的な時間稼ぎにしかならないだろう、執拗な無惨の事だ今回のように黒死牟じゃなくても鬼を送り込み子供達を殺す事を諦めない筈、それは子供達にとって死ぬまで命を狙われ逃げ続けなければならない壮絶な人生となる

 

加えて大牙の余命も数年余り、子供達の未来の為に子供達を手放す事も含め朔弥にとって最愛の家族を失う辛い選択だが無情にも悩む時間すら与えられない現実、自然と涙が零れ落ち声を上げて泣きたいが泣いたところで現在は変わらない

 

唇をグッと噛み締め必死に我慢すると血が滲み出る事すら厭わずに術式を構築し始める朔弥、子供達の周りに五芒星の描かれた陣形が構築され

ると五枚の八卦符を五芒星の五点に配置し魔導筆で術式発動の印を描き始める

 

子供達、産まれたばかりの赤子はともかく息子はある程度の認識が分かるようになっていた為、不穏な空気や母の悲壮感溢れる雰囲気に怖気付き縋るように母に寄り添う・・・・のだが発動し始めた術式の影響で触れる事も叶わず次第に泣き始めてしまう

 

そんな息子を見て大粒の涙を流しながらただ見守る事しか出来ない朔弥、そこへ時間は掛かったが結界を斬り裂き子供達を亡き者にせんと近付いてきた黒死牟が朔弥の背後から刀を突き刺し襲い掛かってきた

 

奇妙な術を使う厄介な女、朔弥にたいしてそんな認識をしていた黒死牟だが術者を殺せば術は発動しない事は理解していた為先に朔弥を殺せば術は止まる・・・そう思っていた

 

子供達に視線を移した黒死牟の視界には未だ発動が止まらない術式と子供達を取り囲む光のカーテンが先程より輝きを増し術は今にも完成する

そう感じ取れた

 

このままでは

黒死牟は焦りながら朔弥から刀を抜き子供達に斬り掛かるのだが、子供達を包む五芒星の陣の内側は既に現在の時間軸とは異なる領域

 

触れたくても触れる事も叶わず、斬りたくても斬る事すら叶わない

ただ目に見えるだけの存在、そんな子供達は更には輝きを増した光に覆われ姿が見えなくなり・・・やがて光が消え去るとそこに子供達の姿は一切見当たらなかった

 

この不可解な現象には黒死牟さえも狼狽えてしまい、必死に思考を巡らせ自分の理解出来る範疇で考えを纏めようとするがそれでも理解が追いつかない

 

一つだけ理解出来るのは朔弥の術により子供達は消えた、だがそんな事は黒死牟でも分かる。問題はどこに消えたかだ

 

黒死牟は足元に転がる朔弥を無理矢理引き摺り起こし子供達の消えた先を問い掛けるが朔弥は答える気もない上に殺しに来た相手の質問に答える義理もないので沈黙を貫くのだが朔弥の態度に激昂した黒死牟は刀を朔弥の腹部に突き刺そうと突き立て再度質問をする

 

朔弥は暫しの沈黙の後、深い溜息を吐き

 

『羅号』と呟くと朔弥の魔法衣が靡き魔法衣から四足の獣型の魔戒獣が飛び出し黒死牟に喰らいつく

 

ほぼ零距離に近い奇襲に対処が遅れた黒死牟は羅号の襲撃をまともに受け手傷を負うも自らの血鬼術で羅号を退け朔弥を睨み付ける

 

その瞬間黒死牟の頭部を貫く一発の弾丸、羅号が奇襲を掛けた隙に愛用の魔戒銃を手にした朔弥から放たれた一撃で僅かに怯む黒死牟

 

質問に答える気は全くない、この一撃でそう判断した黒死牟は最早生かす価値無しと深手を追っている朔弥に引導を渡すべく刀を振り降ろす

 

その凶刃が朔弥に迫り来る中、割り込んで来た羅号が刀に喰らいつき斬撃を食い止めると朔弥から二度目の銃撃を頭部に受けまたしても怯んでしまう黒死牟

 

だが朔弥の追撃はこれだけで終わらない

 

子供達を守ってあげる事が出来なかった非力さ、子供達を襲撃して来た黒死牟、かつての仲間達を裏切り鬼となった巌勝、様々な怒りが混ざり合い一心不乱に魔戒銃を連射する朔弥、貫通された刀傷から流れ出る流血も厭わない朔弥の追撃に痺れを切らした黒死牟も銃撃を浴びながら強引に斬りかかるがそこへまた羅号が邪魔に入り先に羅号を始末しないと面倒だと矛先を羅号に向ける

 

そして黒死牟の振るう鋭利な斬撃で羅号が斬り伏せられ動かなくなると

朔弥に目を向け・・・たその瞬間弾け飛ぶ黒死牟の頭部

 

魔戒銃を黒死牟に向ける朔弥、だがその手に持つ魔戒銃の姿が変わっていた

 

拳銃サイズの魔戒銃が一回りどころか二回り以上巨大化しておりシンプルながらも無骨なデザインだった魔戒銃は羅号を模した意匠の魔戒銃へと変貌しており威圧感を放っていた

 

『悔しいけど私の力じゃ貴方を滅する事は出来ない、でも時間を稼ぐ事ならいくらでも術はある!ねえ?根比べしようよ?陽光に焼かれて貴方が先に死ぬか私の命が先に尽きるか』

 

変貌した魔戒銃を連射し肉片と化した黒死牟の残骸を屋敷の屋外へと吹き飛ばした朔弥は新たに術式を構築し始める

 

朔弥の放った銃撃は絶大な威力を誇るが鬼に対し決め手になる訳でもなく黒死牟はその身体を再生させていくと

 

「先程の奇妙な獣が銃と一つになったか。お前は以前から不可思議な術を行使していたが・・・やはり一筋縄ではいかぬようだ」

 

旧知の仲故朔弥の実力は知ってはいたが、鬼となった今の自分の足元には及ばないと認識していた黒死牟、だがまだ知らない手札を切ってきた朔弥に黒死牟は改めて警戒心を抱くのだが

 

警戒するのが遅かった・・・黒死牟が再生をしてる間に術式の構築を終えた朔弥、黒死牟を中心に八方に術式の陣が展開されそれぞれの陣から計八本の鎖が飛び出し黒死牟に絡みつこうと迫っていく

 

その鎖を刀で、血鬼術で斬り払う黒死牟だが幾ら斬り払おうが延々と向かって来る鎖が鬱陶しくなり苛立ちを隠せなくなった黒死牟は睨み殺す勢いで朔弥を睨み付けるとその視界の先にはこちらに銃口を向ける朔弥の姿が

 

幾ら死なぬとはいえ肉体を容易く吹き飛ばす強力な攻撃を何度も受け続けるのは愚かと迎撃の優先対象を鎖から朔弥に切り替えた黒死牟、だがその黒死牟の判断は朔弥の思惑通りであり八本の鎖は何なく黒死牟に絡みついていく

 

全身に巻き付いた八本の鎖によって雁字搦めにされた黒死牟だが無策では無い、例え刀を振るえなくとも身体から月輪の斬撃は放出出来る

仮に鎖を斬れなかったとしても少なからず拘束は緩む、後は自らの身体能力で引き千切れば問題無いと鬼である事や血鬼術に絶大な信頼を寄せる黒死牟は伍の型を放ち鎖を断ち切る・・・筈だった

 

黒死牟の放った血鬼術、その力をもってしても鎖を断ち切る事は叶わずそれどころか鎖が緩む事すらない、自らの予想を裏切る形だが冷静に策を講じる黒死牟は全身から無数の刀を生やし無理矢理鎖の拘束を緩めると

 

またしても朔弥の銃撃を浴び肉体を大きく損傷する黒死牟、生やした刀も銃撃の衝撃で折れ再び拘束され身動きが取れなくなるが朔弥もまた度重なる強い銃撃の反動で傷口が悪化し出血多量の影響で意識が朦朧とし倒れ込んでしまう

 

このまま朔弥が命を落とし術が解ければ黒死牟は解き放たれるが夜が明けるまで朔弥の命があれば黒死牟は陽光に焼かれて死ぬ、ならば一刻も早く朔弥を殺し拘束から抜け出したい黒死牟は再び抵抗を始めると

 

「このまま・・死ねる訳ないでしょ・・・」

 

朦朧としながらも必死に生き延びようとする朔弥は魔導筆で術を発動し治癒の効果を持つ術で延命処置を施し夜明けまでの時間を稼ごうとすると、それに焦り出す黒死牟は激しい怒りを露わにしながら伍の型を放ち朔弥を攻撃するが鎖の拘束もあって間合いが届かない

 

互いに動けない中刻一刻と時間だけが過ぎやがて闇夜の空が薄らと明るみ始めていく

 

夜明けが近い事を察するも未だ身動きが取れない黒死牟、朔弥を怨めしく睨むもその朔弥は僅かながら息はあるものの意識はすでにない状態だった

 

このままでは時期に夜が明け陽光によって焼かれる、自分より才の勝る弟でもなければ鬼狩りの剣士でもない朔弥、鬼とはいえ剣術の実力に絶対の誇りを持つ黒死牟は陽光という手段で命を落とす事が堪らなく屈辱であり憎悪を膨らませながら朔弥を睨み続けていた

 

 

 

 

 

「朔弥‼︎目を覚ましてくれ!」

 

「こりゃ相当の重傷だな」

 

ふと声が聞こえる、辛うじて命を繋ぎ止めていた朔弥が目を覚ましたのはあれから数時間後、日は完全に昇り陽光が煌めく中朧げながらも薄らと目を開ける朔弥、意識がはっきりしないながらも目の前にいる二人はどちらも見知った顔だと安心すると再び微睡みにつこうとするが

 

「・・・っ‼︎黒死牟‼︎黒死牟は⁈」

 

意識は未だ朦朧とするが休んでる場合ではないと気力を振り絞り起き上がる朔弥、朔弥の夫でもある大牙はそんな朔弥を支えながら

 

「私達が戻って来た時にはもう黒死牟の姿は見当たらなかった、遺留品が無かった事を察するに黒死牟は逃げたのだろう」

 

「そんな・・・あの術からどうやって・・・」

 

「それは分からないが・・・とにかくお前が生きていてくれて良かった・・上弦の壱が襲撃したと聞いて気が気じゃなかった」

 

「大牙ちゃん・・ゴメン‼︎ゴメンね‼︎私・・・私‼︎子供達を・・」

 

「皆まで言うな・・・状況を省みてそうするしか出来なかったのだろう・・この場に居合わせなかった私がお前を責める事など出来はしないさ」

 

「うわぁああぁぁぁぁぁ」

 

大号泣する朔弥、自らの手で子供達を手放した自責の念に駆られた朔弥は泣き疲れて再び眠るまで涙を流し続けたのだった

 

 

 

 

 

 

 

その後目を覚ました朔弥は研究室に閉じ籠り研究に明け暮れる日々が続き数日後、研究室から出て来た朔弥は

 

「大牙ちゃん‼︎私決めた‼︎私は鬼になって永久の刻を生きる‼︎そして未来に飛んだ子供達を探す‼︎親として失格な事をした私だけど・・何の贖罪もしないで生きるなんて許せない‼︎」

 

 

数日間悩みに悩み抜いた朔弥が出した答え、自ら鬼となる事で永久の刻を生き未来に飛んだ子供達を探すという決意を大牙に話すと

 

「それを聞いて私が賛成するとでも?」

 

「まぁしないだろね!鬼殺隊にとって鬼は滅する存在、自分から鬼になる奴なんて黒死牟くらいしかいないだろうしね」

 

「自ら裏切り者の烙印を押されて鬼になる必要はないだろう」

 

「じゃあどうしろっていうの⁈私は嫌だよ‼︎それに私達の本来の敵は誰?鬼なら鬼殺隊がいれば対処出来るかもしれないけどホラーは違うよね?あれは私達しか対処出来ないよね?でも大牙ちゃんはいなくなっちゃう‼︎総悟ちゃんもいつかはいなくなる‼︎だったら誰がホラーに対処するの?」

 

「・・・・・」

 

「大牙、俺は朔弥の案も一理あると思うぞ?それに鬼殺隊に加わってるのは利害が一致してるから加わってるだけで忠誠とか誓ったわけでもないしな!そんなに義理堅くなる必要もないだろ?」

 

「総悟」

 

「大牙、俺達は魔戒騎士!本来ならば人間社会の出来事に関与しないのが掟だ!ホラーではないのなら例え鬼が人間を殺そうが俺達には関係の無い事だ」

 

「掟ではな」

 

「まぁここには番犬所もなければ元老院もない!掟に縛られて目の前の人間を助ける事も出来ないのは胸糞悪いしな‼︎だがな‼︎例え掟を破ろうが使命は忘れるな‼︎俺達はホラーを狩る魔戒騎士‼︎鬼狩りとの情に絆されて本来の使命を見失うなよ」

 

「・・・・・好きにしろ」

 

「だそうだ朔弥」

 

「うん・・大牙ちゃんごめんね?総悟ちゃんもありがと」

 

朔弥は再び研究室に閉じ籠り数日後、鬼となって大牙達の前に姿を見せるのだった

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・その・・・煌牙ちゃん・・・謝って許される事じゃないけど・・・ごめんなさい」

 

朔弥の過去を垣間見た煌牙、その衝撃は計り知れないもので朔弥の問い掛けにも応えず終始無言のまま時が過ぎていった

 

 

その後話が終わった桜花達が煌牙達に合流するも湿っぽい空気を察し

どうしたものかと思案していると

 

「ねぇ?そろそろお館様達に顔見せないといけないんじゃない?」

 

炭治郎達が先に報告を済ませてるとはいえいつまでも待たせるのも悪いと合流を促す桜花

 

「とりあえずお父さん達は先に行っててよ、煌牙は私と一緒に残っててね」

 

何か考えがあるのか桜花は合流を後回しにして泰三達とその場で別れ

 

「煌牙♪お腹空いたから何か作ってぇ〜♪」

 

「は⁈先に合流するのが優先だろ」

 

「え?」

 

「いや、え?ってなんだよ?」

 

「あんなお通夜みたいな辛気臭い空気でお話?怪談話ならまだしも長々と報告なんて面倒臭いじゃん!」

 

「いや、それはそうだけどさ」

 

「それに皆ご飯とかまだでしょ?どうせ後からご飯にするんだから煌牙と中山さんのフルコースで立食パーティーしながら説明したらいいじゃん♪煌牙の復帰と上弦撃破のお祝いも兼ねてさ」

 

「悪いけど上弦撃破については俺個人としては素直に祝えないな、鬼殺隊の観点から見れば快挙なんだけどさ」

 

「そうだね、最期煌牙と握手してたからね・・・闘いを通じて何か分かり合えたんだよね?」

 

「うん・・人間だった頃の記憶や大切な想い人との再会、そして未来での再会と想いを俺に託してくれた」

 

「そっかぁ〜・・なら尚更祝ってあげないと」

 

「?」

 

「鬼として囚われていた魂の解放と新しい人生への旅立ちを祝ってあげないと♪友達になったんでしょ?だったらちゃんと祝ってあげないと駄目だよ?」

 

「・・・そっか・・そうだよな、桜花ありがとう!」

 

「どういたしまして♪んで?何を悩んでるの?さっきからずっと塞ぎ込んでるけど・・まだ仲直り出来てないの?」

 

「いや・・それは大丈夫だと思う・・けど」

 

「けど?」

 

「いや何でもない・・気にすんな」

 

「煌牙って阿保じゃないけど馬鹿だよね?」

 

「はは、自覚はあるよ」

 

「笑い事じゃないよ?ねぇ・・・煌牙の悩みって私にも話せない事なの?」

 

「話せない・・というかどう話したら良いか分からない・・気持ちの整理というか状況を呑み込み切れていないというか」

 

「それって斬吼狼が話してた事と関係・・てか朔弥さんから話聞いてない?」

 

「いや、有耶無耶になって結局聞いてない・・が何となく分かってる」

 

「何となくじゃ駄目だよ‼︎ちゃんと知っとかないと‼︎」

 

「そうだな」

 

「じゃあ私が話すから煌牙も悩みを打ち明けてね」

 

「いや!だから」

 

「お兄ちゃん‼︎お願いだから一人で背追い込まないで‼︎」

 

「桜花・・お前」

 

「普段面と向かって言わないけど煌牙は私のお兄ちゃんなの‼︎私の大事な家族なの‼︎煌牙が悩んでるの知ってて何も出来ないのは嫌‼︎煌牙は絶対に負けないって思ってた・・・心のどこかで牙狼という力を絶対視して煌牙自身を見てなかった・・・上弦の壱が現れた時何で私煌牙の傍にいなかったんだろ・・何で一緒に戦わなかったんだろ・・・私・・約束破っちゃった・・・牙狼を支える魔戒法師になるって約束したのに・・肝心な時にいないなんて・・・ゴメンなさい・・・お兄ちゃん・・ゴメンなさい」

 

「桜花・・・よし‼︎美味い飯作ってやるからもう泣くな」

 

「お兄ちゃん」

 

「ほら早く行くぞ‼︎」

 

「うん」

 

泣いて謝る桜花に困惑する煌牙はそう会話を切り上げ厨房に向かうと四ノ宮家の専属シェフの中山さんと共に調理を始めるのだった

 

 

それから数刻後、数々の料理を作り終えた煌牙は料理の配膳をメイド達に頼むと賄いで作った特製おむすびを持って桜花の自室へと足を運び

 

「お前まだ泣いてんのかよ⁈・・・いいか?桜花、確かにあの時お前が一緒にいればまた違う結果になったのかもしれない。だけどな、あの時の敗因は俺自身にあった、俺の心の弱さが自らを敗北へと誘ったんだ。

次は負けない!絶対に勝つから‼︎その時は一緒に戦ってくれよな!」

 

「うん・・うん・・・お兄ちゃんとずっと一緒にいる・・もう離れないから」

 

「お、おう・・てかいつまでしょげてんだ、お前がお兄ちゃん連呼するの違和感しかないわ」

 

「・・・馬鹿」

 

「ほら!腹減ってんだろ?おむすび作ってきたから一緒に食べるぞ」

 

「なんのおむすび?」

 

「ひつまぶし風おむすびだ」

 

「うはぁ〜♪賄いなのに手間がかかるやつきた〜♪」

 

「肝吸いもあるから最後は茶漬けってのもいいよな」

 

「もうふんだりけったりだね♪」

 

「だろ?」

 

「・・・え?」

 

「ん?・・ああ!それを言うならいたせり尽せりだろ」

 

「・・・私が言うのも何だけど煌牙も重症だね」

 

「そうかもな」

 

「もう全部吐き出しちゃえばいいよ」

 

「・・・・・なぁ・・・桜花にとって家族ってなんだ?」

 

「家族・・ん〜そうだねぇ〜大切な存在ってのは当たり前だけど、言葉にすると難しいよね」

 

「そうかもな」

 

「朔弥さんと何かあったの?」

 

「・・・・・・俺とカナヲを捨てた両親、アイツら本当の両親じゃなかった」

 

「・・・・」

 

「あの後朔弥さんと話したんだけどさ、その時朔弥さんの過去・・家族の記憶が俺に流れてきたんだ・・・俺とカナヲ、二人の産みの親それが朔弥さんだった・・・父親は暁大牙・・・400年前黒死牟から逃す為に術式で未来に飛ばされたらしくてな」

 

「・・・・」

 

「俺もまだ赤ん坊だしカナヲもまだ産まれて間もないから何も覚えてなかったけど、多分その後でアイツらに拾われて捨てられて俺は桜花達にカナヲはしのぶ達に引き取られて今があるんだが・・まぁその・・朔弥さんが実の母親って分かってこの先どう接したらいいか分からなくてな

 

「・・・なるほど・・それでお互い気まずい雰囲気だったって事ね」

 

「驚かないんだな」

 

「知ってたからね」

 

「何で桜花が知ってるんだよ」

 

「それは私が話す事じゃないよ・・・とりあえずさ・・おむすび食べようよ」

 

「いやそんな気分じゃなくなったからいいわ」

 

「じゃ全部貰うね♪食べ終わったら煌牙に見せたい物あるから着いてきてよ」

 

 

すっかり食欲の失せた煌牙をよそにベッドの上でおむすびを美味しそうに頬張る桜花、感情の変化と共に表情がコロコロと変わる桜花に溜息を吐きながら食事が終わるのを待っていると

 

「ご馳走様でした♪じゃ行こっか?」

 

「で?何処に行くんだ?」

 

「宝物庫」

 

そう言って桜花は煌牙の手を握り四ノ宮邸の地下に続く隠し階段を降り煌牙を宝物庫へと案内するのだった

 

 

 

「なぁ桜花ここ何があるんだよ、俺に見せたい物って」

 

「ちょっと待ってて、封印解くから」

 

薄暗い地下通路を進む煌牙達は通路の奥に構える頑丈な扉の前に立つ

 

扉には魔戒法師由来の封印式が施されており魔戒法師がいなければ扉は開かないらしく桜花は魔導筆を扉に向けながらその封印を解除していく

 

「俺宝物庫に入るの初めてだ・・・何があるんだ?」

 

「四ノ宮家の歴史というかそういうの」

 

そう話してるうちに扉の封印が解け、桜花はその扉を開けると煌牙と共に宝物庫へと入るのだった

 

桜花は宝物庫の奥、一番厳重に保管されていた赤い封筒を手に取りそれを煌牙に手渡すと

 

「はい!これは煌牙宛だよ‼︎読んでみて」

 

「ちょっと待って、コレ俺達が勝手に読んで良いのか?厳重に保管していた大事な物なんだろ?」

 

「そうだよ?四ノ宮家が400年近く大切に保管していた大事な物、これを開ける時は新たなる牙狼が真実に辿り着いた時って四ノ宮家で言い伝えられているの!」

 

「なら師匠やおやっさんが一緒にいる時に」

 

「言ったでしょ?私は煌牙の真実を知ってるって、勿論お母さんとお父さんも知ってる!それに煌牙や牙狼の事は私が一任されてるしお母さんからも許可は貰ってる、だからいいの‼︎」

 

「・・・そうか・・・」

 

桜花の説明に納得した煌牙はライターを取り出し魔導火で赤い封筒を燃やし始める

 

すると煌牙達の前に魔導文字が浮かび上がり煌牙は

 

「なるほどね、暁大牙・・・の愛弟子であり二代目牙柱四ノ宮蓮花からの伝言って訳か」

 

魔導文字を読んでいくうちに伝言の主が大牙の愛弟子であった四ノ宮蓮花だと知る煌牙

 

「えーーと・・これを読んでいるという事は貴方様は牙狼を受け継ぎご両親の事も既に存じているのかと思います。私の名は四ノ宮蓮花、敬愛する暁大牙先生と朔弥様から師事を受けた魔戒法師であり二代目牙柱を拝命しています。さて、この伝言が未来のいつ読まれるのか私には分かりませんが私達四ノ宮一族は総力を挙げて大牙先生の正統なる後継者、貴方様を必ずや探し出し支持する事を誓います。それが亡き大牙先生の願いでもあり私自身の願いでもあるのです。先生は死の間際牙狼を受け継ぐ後継者がいない事を憂いていました。どうかお願いです、ご両親を大牙先生と朔弥様を恨まないで下さい。貴方様のご両親は決して貴方様を見捨てた訳ではありません‼︎先生と朔弥様は貴方様と妹君をとても愛していました。ですがとある悲しい出来事が起き朔弥様は決死の思いで我が子を未来に送り出したのです。受け入れろとは言いません、ですが貴方様のご両親は貴方様を愛しているという事だけはどうか覚えていてください。貴方様が紡ぐ未来が幸せである事を願って。・・・だそうだぞ?桜花」

 

「うん」

 

「そっか・・・桜花達四ノ宮一族は400年もの間俺を探し続けてたのか」

 

「うん、私達四ノ宮一族の悲願だったからね」

 

「・・・そっか・・・ありがとう・・・俺・・ちゃんと愛されてたんだな」

 

「うん‼︎朔弥さんいつも煌牙の事好きって言ってたじゃん♪」

 

「そうだな、ちょっと過剰だなとは思ってたけど」

 

「ねぇ煌牙?今すぐ答えを出す必要はないんだと思うよ。煌牙とカナヲちゃん、朔弥さんは血の繋がった家族なんだから!家族の絆はこれから紡いでいけば良いんじゃないかな?」

 

「そうだな・・・まぁそうなんだろうな」

 

「勿論私達も家族だよ?」

 

「当たり前だろ?・・・・ってそろそろ俺達も合流しないとクソ面倒な会議終わらないんじゃないか?」

 

「そうだね〜、面倒だけど皆と合流してご飯にしよう〜」

 

二人はそう会話を切り上げると皆が待つ応接間に向かいその扉を開くのであった

 

「ただいまぁ〜♪ねぇ?面倒臭い会議終わった〜?まぁ終わっても終わらなくてもどっちでもいいけどお腹空いたから皆でご飯にしよ〜」

 

入室するのも束の間会議なんてお構いなしの桜花、予め会議の予定が入っているならまだしもその日突発的な会議の上まさかの自宅、会議に全くのやる気を見せない桜花の発言に一同は驚きを隠せず目を見開き呆然としてしまう

 

「お前この面子を前によくそんな事言えるよな?ある意味スゲェわ‼︎

まぁ気持ちは同意見だが」

 

煌牙も桜花と同じく面倒臭いと思っていたがお館様を始め柱の面々や元柱まで集まっているこの場でそんな事言えないので、そんな桜花にある種の感心を抱いていたが煌牙もまた桜花と同意見という発言をしていたので

 

「お前等‼︎揃いも揃って会議が面倒臭いだと⁈派手過ぎるにも程があるだろ‼︎」

 

「それよりも何故お前達は遅れてきた?煉獄と共に来るのが常識の筈だが何故お前達は遅れてきた?意味が分からない。それに何故この場に柱でもない隊士が混ざっている?俺には理解出来ない」

 

「うっさい‼︎任務終わって事後処理して帰った来たら緊急会議だよってそりゃ面倒臭いに決まってるじゃん!それに何で遅れてきた?常識?

は?私達には私達の事情があるの!別に知る必要もないし教える気もないけど蛇さんの常識と違うからってそこまで非難される覚えはないよ!

あと何で柱でもない隊士がいるかって?別に産屋敷家で会議してる訳じゃないし皆今回の任務の当事者なんだから別に異論はないと思うけど?

それに煉獄さん達の報告で知ってると思うけど上弦以上の鬼がいるって聞いてない?十二鬼月の他にも厄介な鬼がいるんだから柱以外の隊士にも情報の共有は必要だと思うけど?いたずらに生存率を下げたいなら別だけどね‼︎」

 

「そ、そうか」

 

「・・悪かった」

 

天元と小芭内二人の言い分は鬼殺隊に所属している立場上間違ってはいないのだが捲し立てるような桜花の言い分に押されこれ以上何も言えない二人、桜花は分かればいいんだよとドヤると

 

「今回の任務の報告は煉獄さんがしてくれたんでしょ?私達が報告する事も同じ内容だしこの場での会議はもう終わりで良いんじゃないかな?

あとは皆でご飯食べながら煌牙の話を聞こうよ!ね?お館様?良いでしょ?」

 

「そうだね・・そうしようか。だけど今どうしても伝えたい事があるんだ。もう少しだけ話しても良いかな」

 

「少しだけだよ?」

 

「ありがとう」

 

いつの間にか話の主導権を握られていた輝哉、誰もがその展開に唖然とし呆然としていたが

 

「二人共お疲れ様、既に杏寿郎から報告は受けているから君達から改めて話を聞く事はしないよ。私は今とても嬉しいんだ、鬼殺隊の歴史において初めて上弦を討ち取った事、そして何より煌牙!君がこうして無事に帰って来てくれた事が私は何よりも嬉しい!おかえり煌牙」

 

「うす」

 

「はい‼︎お館様の締めも入った事で会議は終了‼︎煌牙も空腹が凄くて語彙力がなんかこう・・凄く凄いってくらいおかしくなってるし早くご飯にするよ〜‼︎」

 

俺の語彙力がおかしいって何だよ‼︎と突っ込みたい煌牙だが今ここで話すと余計に長引くと悟り

 

「皆、俺ご飯作りました・・え〜と凄く頑張って凄いので凄く美味しいです・・だから皆食べてね?」

 

とりあえず桜花の言ってるように話してみる煌牙だが普段そんな事を言わないので

 

「あの!・・煌牙君無事に帰って来たって聞いたけど・・ちょっと頭が無事じゃないような〜?」

 

「そうですねー頭が無事じゃないから作った料理も美味しいって言ってるだけで実際はクソ不味い料理かもしれないですねー、まぁ蜜璃にクソ不味い料理なんて食わせられないしお前飯抜きな‼︎」

 

「煌牙君ごめんなさ〜い!何でもするから、何でも言う事聞くから煌牙君のご飯食べさせて〜‼︎」

 

「言質取ったぞ」

 

「四ノ宮!甘露寺に何をさせる気だ!俺は認めない容認出来ない」  

 

「うわっ!面倒くさいのが来た」

 

「いくらお前達が旧知の仲だとしてもお前の発言は目に余る」

 

「いや俺まだ何も言ってないけど」

 

「そもそもお前は甘露寺に何をさせようとしたんだ?大方甘露寺の弱みにつけ込んで卑劣な事を考えていたのだろう、そもそもお前には胡蝶がいるだろう?何故甘露寺に手を出そうとするのか俺には理解出来ない」

 

「おぉ⁈好き勝手言ってくれるねぇ、俺も反論させて貰うけど俺はまだ何も言ってないからな?つまり蜜璃の弱みにつけ込んで卑劣な事を考えてるのも手を出そうと考えてるのも伊黒さん‼︎アンタの妄想だ!アンタの中で蜜璃はそうゆう対象だって事でいいんだよな?」

 

「俺にはお前が何を言っているのか理解出来ない、何故俺が甘露寺に卑劣な真似をする必要がある?」

 

「その言葉そのままアンタに返すよ伊黒さん」

 

「はい‼︎嫉妬で煌牙に絡まない伊黒さん‼︎煌牙と蜜璃ちゃんが仲良いからって言いがかりにも程があるよ!そもそも蜜璃ちゃんがあんな事言い出したのが原因なんだし蜜璃ちゃんにも何か言う事あるんじゃない?

それを無視するって事は蜜璃ちゃんの発言に何も問題がないわけで煌牙も何も悪くはないよね?だって煌牙は何も言ってないんだし!好きな娘を庇いたい気持ちは分かるけど状況を把握した上で真実を捻じ曲げてまで庇うのはどうなのかな?この場にはお館様を始め柱や元柱もいるんだよ?心象が悪くなるのは煌牙なのか伊黒さんなのか・・この場合伊黒さんが庇おうとしてる蜜璃ちゃんまで悪くなるかもね」

 

「・・・・・四ノ宮済まなかった」

 

蜜璃の発言を引き金として煌牙と小芭内が揉め始め見かねた桜花が仲裁に入った事でそれ以上悪化する事はなかったが

 

「はぁ〜今ので更に疲れた、なんかもう飯とかどうでもよくなったし後は皆で好きにしてくれ、お館様申し訳ないけど俺はこれで失礼します」

 

本来ならこの後食事をしながらこれまでの事を話し皆と再会の喜びを分かち合った筈なのだがそんな気になれない煌牙は皆に頭を下げてそう言うと足早にその場を去って行くのだった

 

「おい待て煌牙!勝手に失礼すんじゃねぇ‼︎」

 

そう言って煌牙の後を追いかけようとする実弥、だが

 

「不死川さん、私が追いかけますよ」

 

笑顔を見せながらそう話すしのぶ、だがその笑顔から感じる般若のような威圧に実弥も

 

「お、おう」

 

と頷くしなかったのである

 

「それじゃ皆さん私はこれで失礼しますね」

 

そう言って颯爽と退出したしのぶ、本来ならお館様がいるこの場に置いて大変失礼な振る舞いだが煌牙達、特に桜花のせいでグダグタになっていた今の状況ではさして大した事ないと判断したのだが

 

「嫁が追いかけたなら煌牙は派手に大丈夫そうだな」

 

「しのぶちゃんが煌牙のお嫁さん?あら〜これは政財界が揺れるわね」

 

天元の発した言葉に乗っかってきた花蓮、四ノ宮本家の長男としての顔を持つ煌牙は政財界でも知られており、そういった話は日常的に舞い込んできたりするのだった

 

話が煌牙の結婚話へと移ろうとする雰囲気だが

 

「そういえば下弦の肆ってどうなったの?」

 

と割と重大な案件を思い出した桜花はそう質問すると

 

「赦されたとは言えないけどとりあえず私達の協力者という形で様子を見る事にしたよ桜花、先の任務で深い傷を負った杏寿朗を介抱し煌牙の治療にも貢献したと報告を貰ったしね、彼女の罪が簡単に消える事は無いけどその罪を償おうとしてるその機会を鬼という理由で奪うのは正しい行いとは私は思えないしね」

 

「ふ〜ん・・お母さんが力説したんだね」

 

「そうだね、確かに花蓮の嘆願もあるけど杏寿朗もまた彼女の助命を嘆願したんだよ」

 

「うむ‼︎彼女が鬼であるという事実は消えないが罪を償おうとしてる事も事実だ‼︎何より彼女は四ノ宮に恋慕の情があるみたいだからな‼︎」

 

「あらあら♪煌牙君も隅におけないわ〜」

 

「何か動機が不純な気もするけど・・まぁいっか」

 

少し腑に落ちない点があるが煌牙の事だしと妥協して話を締めた桜花

 

「とりあえず今この場にしのぶちゃんがいなくて良かったね、いたら大変な事になってたよ?煌牙が」

 

そう話す桜花の言葉に各々が煌牙がどうなるか想像し、しのぶはあの時退出するのが正解だったと納得するのであった

 

 

 

 

 

 

「煌牙さん‼︎」

 

「ん?あぁしのぶか、どうしたんだ?俺に何か用か?って用がなきゃわざわざ抜け出したりしないよな!どうしたんだ?」

 

「どうしたんだ?じゃありませんよ‼︎」

 

「何?説教でもしに来たわけ?」

 

「・・・ふざけないでよ‼︎私がどれだけ心配したのか分かってるの⁈煌牙さんは生きているってそう信じていても・・私は」

 

「心配かけてゴメンな!でもちゃんと約束通り帰って来ただろ?」

 

「そ、それはそうだけど・・そうじゃない‼︎」

 

「しのぶ、お前素が出てるぞ?ハハッ!やっぱり今のお前の方がお前らしくて好きだわ」

 

「なっ⁈・・・余計なお世話よ!」

 

「そうだな・・じゃ!悪いけど俺色々と話したい人がいるからまたな」

 

「え⁈話したい人って、皆集まってるんだから一緒に戻れば良いんじゃ?」

 

「あぁ、俺が話したいのはそうゆう事じゃないんだ!それはまた後で話すけど今話したいのはまた別の事でその人もここにはいないんだ」

 

「・・・誰よその人」

 

「・・・・・俺の本当の父親・・・暁大牙さ」

 

「・・・え?・・ちょ⁈待って・・意味が分からないんだけど」

 

「だよな!俺もさっき知ったばかりだし・・だから話を聞きたいんだ!

本人の口から直接な」

 

「でも先代は・・・あ!英霊の塔だったかしら?以前煌牙さんはそこで先代と話したって」

 

「あぁ!そしてこの二週間、俺はそこで暁大牙と修行をしていた・・・って言ってもほぼ不眠不休で闘い続けてただけの地獄だったけど」

 

「・・・・突っ込み所満載ね‼︎なんかこう‼︎色々とおかしいわよ!」

 

「しのぶ・・・語彙力仕事しろって言いたい」

 

「煩い‼︎殴り飛ばすわよアンタ‼︎」

 

「はは、それだけ元気になれば大丈夫そうだな」

 

「誰のせいよ‼︎」

 

「あらあら♪痴話喧嘩の最中だったかしら〜♪」

 

「「痴話喧嘩じゃない‼︎」」

 

「そうかしら?2人とも息ピッタリだったわよ?」

 

「そういう姉さんはどうしたのよ?」

 

「だって私柱ではないのだから別にいなくても良いかなぁって、それに煌牙君やしのぶの痴話喧嘩の方が気になるじゃない」

 

「だから痴話喧嘩じゃないってカナエさん‼︎」

 

「そうなの?なら良かったわ」

 

「姉さん?」

 

「だって私、煌牙君の事が好きだから」

 

「「はい⁈」」

 

「私もこの気持ちに気付けたのは最近の事だったわ、異性の中で一番親しい仲だったけど弟のような存在だと思ってた、でも煌牙君が上弦の壱に殺されたと聞いた時私の中で煌牙君の存在がいかに大きな存在だったかって・・もう煌牙君に会えなくなると思ったら悲しくて涙が止まらなかったもの、でも煌牙君が生きているかもしれないって密かに聞かされた時、私は直ぐにでも会いに行きたかった抱き締めたかった。私の心は煌牙君でいっぱいなの」

 

「ね、姉さん」

 

「しのぶごめんね?応援したかったけど私も自分の気持ちに気付いたから・・ごめんね」

 

「なんとなくだけど姉さんはそうなんじゃないかって思ってたわ、まぁいいわ!これで姉さんに遠慮しないで済みそうだし」

 

「あらあら♪私だって負けるつもりはないわ」

 

「あの?そうゆうの二人だけの時に話してくれません?」

 

「はぁ⁈この流れで出てくる感想がそれって貴方の神経おかしいわよ」

 

「いや、普段ならありがとうって言いたいけど今日は色々と情報過多過ぎてな」

 

「一体何があったのよ」

 

「・・・・・俺の本当の両親の事、今度のお見合いの事、鬼無辻側にいる最悪の敵も含めて色々さ」

 

「「え⁈」」

 

「驚くのも無理はないよな」

 

「煌牙君・・お見合いってどういう事かしら?お姉さんにじっくりと教えて欲しいわ」

 

「そ、そうよ‼︎他の事も割と重要だけどお見合いってどういう事よ⁈」

 

「どうもこうもって、てかカナエさん怖いって⁈笑ってるけど目が笑ってない‼︎アンタそんな人じゃなかっただろ⁈」

 

「乙女は恋をすると変わるものなのよ煌牙君♪」

 

「乙女って・・あぁ余計な事は言わないでおこ」

 

「それが懸命ね♪ふふ♪」

 

「怖っ!」

 

「それで?お見合いってどういう事よ!」

 

「あぁ、ほら四ノ宮家って政財界と繋がりがあるだろ?今度国のお偉いさん主催の会合があって、大東亜重工の会長の孫娘も出席するから四ノ宮財閥の俺を出席させろと要望が来てるらしくてな。まぁ軍備拡張を今より容易にする為の政略結婚ってやつ?俺はそんな話お断りだが流石に出席しない訳にもいかないしな・・とそんな訳で面倒臭いんだよ」

 

「それは難儀な話ね、まぁそれは仕方ない事でしょうけど相手側のお嬢さんを見て気持ちが変わるって事はないのかしら?」

 

「それはいけないわね、煌牙君の気持ちが変わらないように私達が唾をつけておかないと」

 

「だからカナエさん怖いって」

 

「まぁそれはそれとして煌牙さんの本当の両親、父親が先代の牙狼だという話も気になるわね、それってつまりカナヲの父親でもあるのだから」

 

「あらまぁ不思議な話ねぇ、じゃあ煌牙君とカナヲのお母さんって誰なのかしら?」

 

「・・・・・年齢詐欺の天然魔戒法師」

 

「え⁈嘘⁈朔弥さん⁈・・いや実年齢は知らないけど見た目は瑠花ちゃんと同じ位の・・・え?本当に?」

 

「俺の中に記憶が流れ込んできたんだから真実なんだろうな、さっき桜花と話してある程度割り切れた所もあるけど流石に急過ぎてな」

 

「確かにそうね・・じゃあ煌牙さん達が両親・・とは思ってないでしょうけどその二人は一体何者なのかしら?」

 

「さぁ?今じゃどうしてるかも知らないけど過去は過去だ、アイツらを気にしてもしょうがない」

 

「それはそうだけど・・・カナヲには話すの?本当の両親の事」

 

「しのぶとカナエさんはどう思う?俺はカナヲには話すべき事だと考えているが大事な事だからな、二人の意見も聞いておきたい」

 

「私は煌牙さんがそうすべきだと思うなら反対はしないわよ」

 

「私も反対はしないわ、私としのぶはカナヲにとって姉のような存在だけど親にはなれないもの!だからカナヲにとって親というのはその二人が親になるわ!だからこそカナヲを愛し想ってくれる本当の両親がいるのならちゃんと教えてあげなきゃ駄目だと思うわ」

 

「そうだな、その通りだ!二人共有難う‼︎」

 

「じゃ!そういう訳だから俺は」

 

「おい‼︎大事な会議を放ったらかして何処へ行こうとしてんだ‼︎」

 

「うわぁ〜熱血親父まで来たよ‼︎」

 

「あらあら♪人気者ね煌牙君♪」

 

「おっさんに人気あっても嬉しくないんですが⁈」

 

「という事は綺麗な女性だと嬉しいと!そういう訳ですね」

 

「その質問に答えるとまたお前拗らせるだろ⁈あと急に丁寧口調になると二重人格だと思うから気を付けろよ?」

 

「拗らせるって何よ⁈それに二重人格じゃないわよ‼︎アンタ戻って来てから失礼な事言い過ぎよ!」

 

「だってお前機嫌が悪くなると薬盛ってくるだろ⁈あの笑顔滅茶苦茶怖いからな⁈」

 

「おい‼︎痴話喧嘩なら余所でやれ‼︎」

 

「「痴話喧嘩じゃない‼︎」」

 

「あらあら♪やっぱり息ピッタリね、少し妬けちゃうかも」

 

「・・・・」

 

「あら?冨岡君も来たのね♪」

 

「よっしゃ‼︎冨岡さんいい所に来た‼︎胡蝶姉妹と慎寿郎さんの相手は任せた‼︎」

 

「・・・・は⁈」

 

「だってアンタ口下手じゃん!そこの拗らせ姉妹と熱血親父相手に会話の練習した方がいいって‼︎絶対!うん!マジでそう思う」

 

「四ノ宮(胡蝶姉は四ノ宮妹同様に少し頭が緩くて理解し難い上に妹に関しては俺を目の敵のように皮肉を言って来るんだが・・お前が言うように拗らせてるのは理解出来る!そして元炎柱は圧迫感が凄い!とてもじゃないが会話など出来そうにない!双方の理由で俺には無理だ)」

 

「「誰が拗らせ姉妹ですって?」」

 

「熱血の何が悪い‼︎」」

 

「じゃ!後は宜しく冨岡さん」

 

長々と話していると場が混乱して後からやって来た義勇に後処理を押し付けて煌牙はその場から逃げ去るのであった

 

「待ちなさいよ‼︎話はまだ終わってないわよ‼︎」

 

「あらあら♪追いかけるのも楽しそうだわ♪」

 

「煌牙‼︎お前には言いたい事が幾つもある‼︎逃さんぞ‼︎」

 

と胡蝶姉妹と慎寿郎も煌牙を追いかけた

 

「・・・・夕餉を食べる場所を聞きたかった」

 

一人残された義勇は静かにそう呟くのだった

 

 

 

 

 

藤襲山〜

 

 

「お兄ちゃん早く逃げて‼︎」

 

「駄目だ‼︎お前を置いて逃げる訳にはいかない」

 

「でも‼︎」

 

鬼殺隊が最終選別を行う藤襲山、藤の牢獄に閉じ込められ鬼達が蔓延るこの山中で逃げ回る兄妹がいた

 

「僕は小夜子のお兄ちゃんなんだ!だから何があっても一緒だ」

 

「お兄ちゃん」

 

この二人が何故この山にいるのか、それは定かではないが鬼に追われ危険な事は間違いないだろう

 

「ギヒッ‼︎追いかけっこはもうお終いか?」

 

「何があっても一緒だ!だとよ!安心しろ!二人纏めて俺が喰ってやるから何があっても一緒だ!」

 

「どけっ‼︎コイツらは俺の獲物だ」

 

二人は鬼達に追い詰められて絶命絶命の危機に瀕していた

 

「鬼達が争っている隙に逃げよう」

 

と妹の手を引き再び逃げ出した二人

 

だがそれも長くは続かない

 

「逃げても無駄だ‼︎お前達人間は走ればいつかは疲れる‼︎だが鬼は違う‼︎捕まるのも時間の問題だ‼︎」

 

人間と鬼、ましてや子供の体力で鬼達から逃げ切れる訳もなくあっさりと捕まってしまう修也と小夜子の二人

 

「いいね‼︎その今から喰われるという絶望に満ちた顔‼︎俺はそんな顔をした人間を喰うのが好きなんだよ‼︎」

 

無慈悲なる鬼の牙が二人の体を貫き四肢を捥ぎその肉を咀嚼する

 

「ぐぇぇぇぇ⁈何だこのクソ不味い肉は⁈とてもじゃないが食えたモンじゃねぇ‼︎」

 

どうやら二人は鬼の好みじゃないらしく食べ掛けの途中で投げ捨てられてしまった

 

「クソ‼︎やっと人間の肉が食えたと思ったら‼︎この山に人間が入ってくるまでお預けかよ‼︎」

 

と不満を漏らす鬼・・・・の背後で蠢く二つの肉塊

 

「ねぇお兄ちゃん、漸く私達も食べられるね」

 

「そうだね、前はいい所で邪魔が入ったからね」

 

そう声がして慌てて振り返る鬼が見たものは

 

「何で・・何で生きてやがる⁈手足を捥ぎ肉を食らった筈・・何で再生してやがる⁉︎お前達は鬼じゃない筈だ‼︎何で⁈」

 

手足を捥ぎ取られ喰われた筈の二人が何事もなかったかのように立ち鬼を不気味に見つめている姿だった

 

「何で?だって私達人間じゃないから」

 

「でも僕達は鬼でもない」

 

「ねぇお兄ちゃん‼︎あの鬼とっても美味しそう♪」

 

「そうだね!喰う側から喰われる側になった気分はどう?僕達は希望から絶望に叩き落とされた魂を食べるのが大好きなんだ」

 

「うん♪人間の魂より鬼の魂の方がより濃厚で美味しいんだ♪だからさ‼︎いただきます‼︎」

 

その言葉を聞いたが最後鬼は肉体ごとその魂を二人に捕食され消滅した

 

「フフッ♪ご馳走はこの山にまだいっぱいあるから沢山食べなきゃ♪」

 

「そうだね、僕達の同士もこの山に集まって来ている!饗宴といこうか‼︎僕達魔導ホラーの宴の始まりだ」

 

この日、藤襲山から鬼が一人残らず消え去った

 

 

 

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