煌牙が四ノ宮家に迎え入れられて半年が過ぎ、煌牙は修行の日々に明け暮れていた。
「煌牙、今日の修行は終わりだぞ。早く風呂に入ろうぜ」
「煌牙最初に比べたら動きにキレが出て来たよね?この調子だよ」
煌牙に語りかける二人の少年少女、少年の名は日比谷 辰巳、少女の名は小鳥遊 春、煌牙と共に修行する兄弟子と姉弟子の二人が修行の終わりを告げ煌牙は修行を切り上げる。
「ああ、辰巳と春は凄いな。今の俺にはまだ無理だよ」
煌牙は辰巳と春に感嘆し、自分はまだ二人についていけてないと語ると辰巳が笑いながら煌牙に話す。
「俺達の方が修行してる時間長いからな、すぐに追いつかれたら兄弟子の面目が潰れるぞ」
「そうだよ、煌牙は飲み込み早いし私達も追いつかれないよう結構必死なんだから」
春は煌牙の成長速度の早さに若干の焦りを覚えている事を煌牙に話しながら、結っていた髪を解く。
「まあ、俺達も桜花様には敵わないけどな〜ははは」
「あの子は花蓮様の継子だし私達とは違うわよ」
辰巳と春は桜花には敵わないと、若干諦めた口調で話すが、それを聞いた煌牙は二人を鼓舞するように話しだす。
「俺は誰よりも強くなるから、桜花にも必ず追いついてみせるよ」
それを聞いた二人は笑いながら煌牙の肩を叩き煌牙に語りかける。
「ははは、お前も四ノ宮の子だもんな負けられないよな」
「ふふふ、さすがお兄ちゃんね」
煌牙は二人に笑われてるのが居心地悪いのか、切り返しその場を後にする。もちろん馬鹿にされてるわけでもないし、からかわれてるわけでもないのは理解しているが。
「辰巳、あの子ならきっと追いつけるよね?」
「いや、追い越すさ。あいつなら必ずな」
辰巳と春は静寂とした修練場で煌牙なら桜花をも超えると語り修練場を後にするのだった。
それから1年後、煌牙はあれから更に成長を遂げ辰巳と春の二人よりも強くなっていた。
辰巳と春は煌牙との最後の修行を終えて、修練場で話しだす。
「お前の成長速度の速さには負けるよ、兄弟子の面目潰れたな、ははは」
「煌牙が人一倍修行頑張ってたからじゃない?誰よりも気迫が凄かったしね」
辰巳と春の二人は煌牙の成長を褒め、煌牙を見つめながら煌牙に話しだす。
「煌牙も花蓮様の継子か〜、四ノ宮地獄の試練が始まるんだな 」
「うえぇ、あれは試練というより拷問だよ、私達師範代の弟子で良かったと思うよ」
辰巳と春は煌牙が花蓮の継子となり地獄の試練を受ける事に苦い顔をしながら話しだす。
花蓮の継子、つまり現牙柱の継子は地獄の試練と称される修行を課せられる。四ノ宮家3ヶ条を乗り越えなければいけないのだから、春は
継子ではなく、師範代の弟子で良かったと心から思う。
師範代とは四ノ宮家に常駐してる育手で風の呼吸の使い手であり
四ノ宮家の弟子達に師事している。
牙の呼吸も風の呼吸からの派生であり、型の一部に雷、炎の要素を取り入れ大牙が編み出した呼吸である。
継子になれば花蓮が師事し、地獄の試練を経て牙の呼吸の継承、試練を乗り越える事が出来なかった時は、風の呼吸の継承と最低でも鬼殺隊の基礎は叩き込む育成をしている。
春の苦い顔を見た辰巳は苦笑いをして、煌牙に話しかける。
「煌牙死ぬなよ」
煌牙は辰巳からの安直な言葉に苦笑いをしながら辰巳に話し返す。
「率直にきたな、死ぬつもりもないし必ず乗り越えるからさ」
煌牙は決意を新たにした顔付きで二人を見返してると、修練場に桜花がやって来て煌牙に話しかける。
「煌牙〜明日から私と一緒に修行だね〜〜私は煌牙に負けるつもりもないからね〜〜・・でも凄く強くなったね、煌牙」
桜花は煌牙に負けるつもりはないと対抗心を燃やしながらも、煌牙の成長を認め褒める。
「まあな、明日からよろしくな桜花」
煌牙は桜花への対応を簡単な返事だけで済まし、修練場を出て行く。
それを見つめる桜花は、辰巳と春に声をかける。
「ねぇ〜〜辰兄と春姉、煌牙どうしちゃったのかな〜〜?なんだか避けられてるみたいだし」
「・・・・・さあな、気になるなら後で本人に聞いてみろよ。桜花様が気にする事じゃないと思うけどな、ははは」
辰巳は桜花に本人に聞いてみるのがいいと答え、笑い出すと桜花は辰巳に若干怒り気味に話しだす。
「聞けないよ、煌牙に避けられてるんだよ?怖くて聞けないよ」
桜花は辰巳に話しながら涙目になり、それを見かねた春が桜花に語りかける。
「桜花様・・・聞かなくてもいいから・・・黄金の騎士の像の所へ行けば煌牙はいるから」
春は桜花に英霊の塔に行けば煌牙はいると答え、桜花の頭を優しく撫でる
桜花は頷きながら、涙目になった目を擦り英霊の塔へと駆け出す。
「辰巳はいじわるだね、何も本人に聞けなんて言わなくても」
「ははは、桜花様が煌牙に構ってほしそうに見えたからさ、ついな」
春は桜花がいなくなった後、辰巳に先程のやり取りを咎め、辰巳は笑いながら返事を返す。
「そうね、最初は煌牙と仲良くする気はないって言ってた桜花様が今じゃ逆だもんね、お兄ちゃんに構って欲しい妹だもんね」
「対抗心全開だけどな、それも煌牙に構って貰いたい口実かもな」
二人はそんなやり取りをしながら座り込み、お茶を飲んでいた。
煌牙は修行を終えた後にいつも英霊の塔へと向かい、ソウルメタル製の小刀を振るう鍛錬を己に課していた。
誰よりも強くなる為、大切な者を守る為に毎日この場で鍛錬に励んでいた。
「俺、強くなるから強くなって牙狼になるから・・・闇を照らす希望の光になるから」
当初、持ち上げる事も出来なかったソウルメタル製の小刀、修行の日々で心身共に鍛えあげ、今じゃ小刀なら難なく振るう事が出来るようになっていた。
まるで舞を舞うかのような軽やかな体捌きで小刀を振るう煌牙、その様子を桜花は隠れながら伺っていた。
「煌牙凄い・・・でもどうしてそこまで頑張るの?」
桜花は聞こえないように小さな声で呟くが、煌牙は耳が良くて桜花が英霊の塔に来ていた事を既に知っていたので桜花に声をかける。
「桜花なんで隠れてるんだ?何か用があるんだろ?」
桜花は煌牙に気付かれてた事に動揺を隠せずに、ぎこちない仕草で姿を現わす。
「どうして私がいるってわかったの?気付かれないようにしてたのに」
桜花は煌牙に何故分かったのか疑問になり煌牙に聞いてみる事にした。
「昔から耳が良いんだよ小さい音でも聞こえるし、物に触れたらその記憶や人の想いも声として聞こえるんだよ」
煌牙は自身の特異性を桜花に語り、桜花が感嘆の表情をして煌牙に
返す。
「ほえ〜〜煌牙って凄いんだね〜〜」
煌牙は桜花の感想に答えずに、桜花に用があるのか聞き返す。
「それで?俺に用があるんだろ?どうしたんだ?」
桜花は煌牙に聞かれた事に上手く答えれずに沈黙して黙ってしまい
無言の時間が過ぎていく。
「用がないなら早く戻れよな、まだ鍛錬の途中だし」
煌牙は鍛錬の途中なので、桜花に用がないなら戻るように促すが
桜花は涙を流しながらそれを否定する。
「やだ・・・やだ」
突如泣き始めた桜花に煌牙は狼狽えながら、桜花を慰める。
「今のは言い方が悪かった、桜花ゴメンなホントにゴメンな」
謝る煌牙に泣きながら抱きつき桜花が喋り出す。
「煌牙と一緒に修行した事今迄無かったし、煌牙ずっと私の事避けてるもん」
桜花は鬼殺隊の修行とは別に魔戒法師の修行もしていた為に煌牙達とは別の場所で修行していたので今迄一人で修行していたから煌牙と話す時間は修行以外の時間しか無かったが、桜花は煌牙が避けてるように感じていた為、なかなか話せずにいた。
「修行に関しては仕方ないだろ師匠の指導の一環だし・・・・避けてる・・つもりはなかったんだけどな、そっかゴメンな桜花」
煌牙は師匠である花蓮の指導で辰巳や春と修行していたので仕方ないと割り切るが、桜花が避けられてると思った事は桜花に謝った。
「ならどうして?」
桜花は煌牙にどういうつもりだったのか気になる為、煌牙に聞いてみる。
「嫌われてると思ったんだ、俺は余所者だし・・桜花対抗心全開だったから余計にさ、だからなるべく馴れ馴れしくしないようにって」
煌牙は自分が余所者であることから、桜花に負い目を感じており
対抗心剥き出しの桜花に気を遣っていたと自分の心情を桜花に打ち明ける。
「嫌ってなんかないよ?お願いだから余所者だなんて言わないで。
煌牙は余所者じゃない、家族だよ」
桜花は煌牙の事を余所者じゃなく家族として認めており、煌牙が自身を余所者と蔑む事が悲しくて、煌牙に縋るようにしがみつく。
「私ね、誰よりも強くなりたかった。強くなって皆を助けたいの
牙狼のような守りし者に。だから煌牙にも負けたくなかったの。
でもそれが煌牙を傷付けちゃったんだね、煌牙ゴメンなさい」
桜花は自分が誰よりも強くなりたいからこそ、煌牙に対抗心を燃やしていたが、それが煌牙の負い目を増長させていた事に気付き煌牙に謝る。
煌牙が四ノ宮に来た時は、弱いから仲良くしないと言っていたが
煌牙が強くなっていく様を見て、煌牙と同じ時間を過ごしていくにつれそんなわだかまりは消え、家族として仲良くなりたいと思っていたが対抗心故に上手く接する事が出来ずにいた。
「そっか・・桜花ありがとう。それとゴメンな、俺も桜花の気持ちに気づかなくて。俺も誰よりも強くなって皆を守りたいんだ、守りし者として」
煌牙は桜花の頭を撫でながら、お礼と謝罪そして自身の決意を桜花に語る。
「なあ桜花、俺達の力は誰かを守る為の力だ、大切な人達を守る為に桜花の力を貸して欲しい。俺達で強くなろう、悲しみの連鎖を断ち切る為に俺と桜花二人が誰よりも強くなって皆を守るんだ。」
煌牙は悲しみの連鎖を断ち切る為に、大切な人達を守る為に自分自身だけじゃなく桜花と二人で強くなりたいと思い、桜花の力を貸して欲しいと桜花に話し出す。
「うん・・うん、私も煌牙と一緒に強くなりたい・・煌牙は牙狼になれるから、絶対なれるから私も煌牙を支える魔戒法師になるからね
桜花もまた煌牙と一緒に強くなりたいと、煌牙は絶対に牙狼になると信じて牙狼を支える魔戒法師になると煌牙に誓った。
翌日、煌牙と桜花は地獄の試練を受けるため、四ノ宮家が管理する
山、白蓮山に訪れていた。
断崖絶壁に囲まれたその山は足場が悪い上に酸素濃度も薄くまともに呼吸も出来ないくらい過酷な環境で、その山で半年過ごさなければならない。
足場の悪い岩山を越え、山の山頂付近に差し掛かると藤の花が山を囲むように咲いていて、藤の牢獄の中には鬼が放り込まれている。
地獄の試練はその山を毎日往復して、鬼と対峙しなければならない
日輪刀を持たされて登る日もあれば、持たされない日もあり、その時の状況に応じて鬼とやり過ごす試練であり、全集中の呼吸は使用してはいけないという鬼畜な内容である。
花蓮は二人に試練の説明をして、日輪刀を渡し二人を見つめる。
「二人共いい眼をしてるわね、貴方達ならこの試練を乗り越えると信じてるわ、でも無茶はしないでね生きて戻る事が何よりも大事だからね」
花蓮は二人が試練を乗り越える事を信じてるが、試練を乗り越える為に無茶をして命を落とすくらいなら試練を乗り越えなくてもいいと思っていた。
「師匠大丈夫です、俺達は無茶はしませんから生き抜く事を最優先して頑張ります。」
「師匠大丈夫だよ〜〜♪私も無茶はしないから煌牙が一緒だから、煌牙と一緒なら私は大丈夫だから」
二人は花蓮に生き抜く事を約束してして、白蓮山へと向かい歩み出す
「やっば、酸素薄いから岩山登るのちょっとしんどい」
「だね〜♪でも煌牙と一緒だから楽しいよ〜♪」
煌牙と桜花の二人は岩山を登ってる途中で少しだけ息が切れ始めるが
桜花は初めて煌牙と修行が出来る事が嬉しくて、楽しそうに登って行く。
岩山を登りきると、同じ山とは思えないほど景色の違う景観に二人は傍観して一旦、この場で休息を取り辺りを見渡す。
「落ち着くね〜♪マイナスイオンを感じるよ〜〜♪煌牙〜♪」
「そうだな〜〜・・・え?マイナスイオンって何?」
桜花が落ち着く空間で寛ぎながら煌牙に話しかけ煌牙も同意するが
桜花の言ったマイナスイオンの意味がわからずに聞き返す煌牙に桜花は説明をする。
「ん〜〜?なんとなくそんな感じかな〜って思って」
説明になっていなかった。
少しの間休息を取った二人は山頂付近を目指して歩き出し、先に見える藤の花を見て、この先に鬼がいるという緊張感が出て顔付きが変わりだす。
藤の花の牢獄を通り抜け、森の中に差し掛かる前に二人は打ち合わせを始める。
「桜花、近すぎず遠すぎずお互いの距離を把握しながら対処していこう」
「うん、鬼の数や距離も考えて動かなきゃね」
二人は考えうる鬼との戦闘パターンを予測して状況に合わせた戦術を示し合わせ森の中には入っていく。
「桜花、まだ日が沈むまで時間あるから先に森の状況を把握してた方がいいかもな、ヤバイ時は藤の花の中に逃げるから森で迷ったら死ぬかも」
「あはは♪煌牙逃げる事まで考えてるんだね〜〜♪やっぱり煌牙って凄いね、尊敬してるよ♪」
「全集中使用禁止だからな、簡単に頸を刎ねる事は難しいだろ?
最優先するのは生き抜く事、桜花もヤバイ時はすぐに逃げる事」
煌牙の最優先は生き抜く事であり、無理して鬼の頸を刎ねる事ではないのでヤバイ時は逃げる事を考えて森で迷わないように日の昇る今のうちに森の状況を把握しようと桜花に提案していた。
桜花は煌牙が逃げる事まで考えている事に尊敬の念を込めて笑い出し、煌牙が桜花に再度念を押す。
やがて日が落ち、森の中に独特の静寂と夜の闇が広がり二人は周囲の気配に気を配り神経を研ぎ澄ます。
ーーーガサガサーーー
森の中を駆け抜ける何かの足音、それはまだ小さくその存在との距離は遠いが耳の良い煌牙には、はっきりと聞こえていた。
「桜花、10時の方向と3時の方向、鬼が向かってくるぞ、迎撃準備」
「3時の方向は任せて〜〜♪煌牙もよろしくね〜♪」
煌牙は10時の方向へ、桜花は3時の方向へ体を向け鬼との接触を待つ
互いに鬼との戦闘は初めてだが、守りし者としての覚悟とそれに伴う精神面での鍛錬も欠かさずに行っていた為に物怖じしないで鬼に向かえていた。
「久しぶりの肉だ〜〜二人纏めて喰らってやるからな〜」
10時の方向から、涎を垂らしながら煌牙に向かい走って来る鬼が叫びながら煌牙に向かい飛びかかり、煌牙は涎を垂らす鬼を見て汚いと顔をしかめながら、鬼に向かって側中で体を蹴り出し、体を捻りながら勢いよく鬼の顔面に蹴りを放つ。
「うん、日輪刀無しでの戦闘を見越して体術で迎撃したけど、悪くないな」
煌牙は日輪刀を使わないで鬼に対処する日に備えて初撃は体術で対応したが、予想に反して鬼が蹴り飛ばされたので手応えを感じていた。
「このクソガキ、絶対に喰い殺してやる」
勢いよく蹴り飛ばされた鬼は、口と鼻から鮮血を流しながら煌牙を睨み、鋭利な爪を立て煌牙に襲いかかる。
3時の方向からは少し小太りの鬼が桜花に向かい襲いかかる・・が
桜花は軽やかな足取りで旋回し鬼の背後に回り、懐から八卦符を取り出し鬼の背中に貼り付ける。
「鬼さん、ちょっと太めだから躱すの楽だったよ?あとその背中の札はね、少しの間動けなくなるからね〜♪」
札を貼られた鬼は体を動かそうと、もがくが札の効力で体を動かす事が出来ず桜花を睨みながら叫ぶ。
「小娘風情がふざけやがって、四肢を捥いで喰い散らかしてやるからな」
鬼の叫びに反応する事なく桜花は日輪刀を抜刀し、鬼の頸に斬りかかる・・・がその刃は頸を断ち切る事が出来ずに鬼の頸で止まっていた
「あ、やっぱり?煌牙〜やっぱり斬れなかったよ〜〜?とりあえず逃げよ?」
桜花は予想通り頸を刎ねる事が出来ないと分かると煌牙に撤退を促し
煌牙に眼を向けると、血塗れで倒れ込んでいる鬼と余裕そうに鬼を眺める煌牙がいた。
「あ〜やっぱりすぐには斬れないか、よし今日はまだ実力不足という事が分かっただけで撤退するか」
煌牙もまた、全集中を使わないで頸を刎ねる事はまだ無理と予想していた為、余裕を持って撤退を決意する。
二人が撤退した後、2匹の鬼は少し困惑していた。人間は餌か若しくは
決死の覚悟で自身の頸を刎ねようとする人間しか知らない。
だがあの二人は違った、餌になるわけでもなく決死の覚悟で頸を斬りにかかるわけでもなく、まるで実験をしてるような、遊ばれているような感覚に2匹は陥っていた。そしてそれは激しい憎悪となり、二人を必ず喰い殺すと執念を燃やしていた。
翌日、煌牙と桜花は昨日の反省をして今日からの修行内容について話していた。
「鬼の頸を斬れないって事は、今までの基礎代謝じゃ駄目だろうな
全集中を使わないで、全集中と同じくらいの動きが出来ないとこの先も同じ結果かもな」
「そうだね〜〜、日輪刀無しで鬼を捌く時も今までよりも体力は必要だし」
二人は話し合った結果、日中は岩登りの往復を繰り返し基礎代謝の向上を図り、その日の最後に鬼と対峙して駄目なら即撤退という修行内容を考えていた。
その様子を見ていた花蓮に二人は内容の是非を問う為、花蓮に話しかける。
「師匠、修行内容を自分達で考えてみたんですがどうですか?」
花蓮はその問いに微笑みながら、喋り出す。
「そうね、いいと思うわよ。この試練は貴方達の試練どう乗り越えるか貴方達で考えて実行したらいいと思うわ」
花蓮は二人にそう答えておもむろに立ち上がり二人が半年間寝泊まりする山小屋を後にする。
花蓮は柱としての任務と半年に一度の柱合会議に出席する為、今朝に出発しようとしていた。
「それじゃ私はこれで、後は二人で頑張ってね」
花蓮は山小屋を出発して、煌牙と桜花の二人きりになった山小屋
桜花は煌牙と二人きりになった今の状況を見て考え込んでいた。
(あれ?ご飯って誰が作るの?お母さんもいないし、ここにはシェフの中山さんもいない・・・まずくない?)
煌牙は二人きりになった現状で飯当番は自分だろうと考えて、炊事場に立ちそこで更に考え込む。
(待てよ?食材の確保ってどうすんだ?半年だぞ?備蓄するのも限界がある。あ、これ詰んだわ)
地獄の試練2日目にして、二人は試練とは別の試練で窮地に立っていた
「桜花さん、非常にまずい状況です」
「はい、まさに地獄の試練ですね」
二人は何故か敬語で話し、少しおかしなテンションになっていた。
そこへ二人にとって救いの女神ならぬ救いの隠がやって来て、1週間分の食材を運び込んできた。
それを見た煌牙は、隠に土下座をして御礼を言う。
「ありがとうございます、ありがとうございます。貴方は命の恩人でです。救いの隠様」
それを見た隠は、慌てて煌牙の頭を上げさせ一礼をしてその場を去って行く。
「助かった、これで当面は凌げる。良かったな桜花」
「いえ・・・まだです煌牙さん、私達はご飯を作れません、私はおはぎしか作れません。」
煌牙は食材の確保が出来て安心したが、桜花は誰もご飯が作れない状況でまだテンションがおかしかった。
「いや、ご飯なら俺作れるから。中山先生にも調理教わってたから
そこそこのモンなら作れるから」
煌牙は四ノ宮家のシェフ中山さんにこっそり弟子入りして調理法や
知識を学び、料理が出来るようになっていた。
四ノ宮家の夕餉の一部の献立には煌牙の作った料理が混ざることもあり、腕前は中山シェフお墨付きを貰えた程に上達していた。
「・・・・さすがお兄ちゃん♪桜花はもうお兄ちゃん無しじゃ生きていけません♪」
桜花は煌牙の有能ぶりに感嘆して、普段言わない兄という言葉を使い
褒めちぎる。
「大袈裟だって、てか初めて言われたぞお兄ちゃんとか」
煌牙は桜花が兄と呼んだ事にツッコミを入れながら、食材を捌いて調理を開始する。
「お兄ちゃんか・・・なあ桜花、俺さ妹がいたんだよ。いたって言い方も変だけどさ・・妹がいるんだ、最初四ノ宮に来た時にな師匠に言われたよ、俺は弱いから妹は守れないって、まさにその通りだ。あの時俺は弱かったから自分の命すら守れない、それでも妹だけは守りたかったから俺は強くなりたかった、誰よりも強くなって妹を守りたかったから・・・それが俺が強くなりたかった理由なんだ」
桜花は煌牙が初めて自身の事を話してくれて、強くなりたい理由も話してくれて嬉しくなり思わず煌牙を後ろから抱き締める。
「うん、それが煌牙の原点なんだね。私も煌牙の妹を守るから煌牙と一緒に・・・ねえ?煌牙?私も煌牙の妹だよね?煌牙は私の事も守ってくれる?」
桜花は煌牙と一緒に妹を守る事を誓い、自分も義理とはいえ妹だから煌牙が守ってくれるか気になり煌牙に聞いてみる。
「当たり前だろ?守りし者として当然だ」
「そうゆう事じゃないんだけどなぁ〜〜〜煌牙の馬鹿」
煌牙は守りし者として当然だと胸を張って答えるが、桜花はその答えに不満なのか少し不貞腐れていた。
「・・・春、帰ろうあの雰囲気の中に俺は入れない」
ーーガラガラーー
「えっ?もう扉開けちゃったけど・・そうね後はごゆっくり〜〜♪」
ーーガラガラーーバタンーー
ーーーガラガラーーー
「ちょっと待って〜〜、今のは違うの、あの・・その」
「おお?辰巳と春二人ともどうしたんだ?」
桜花が煌牙を抱きしめて会話してる最中、辰巳と春の二人は一昨日の件もあり二人が心配で様子を見にきていた。
辰巳は家にいるか確認する為、小窓から中の様子を伺うと、桜花が後ろから煌牙を抱き締めている光景を目撃してしまう。
辰巳は春にこのまま帰る事を勧めるが、春は御構い無しに扉を開き辰巳に返事するが、中の光景を見て扉を閉め、そそくさと帰ろうとする
先程の光景を見られた桜花は慌てて飛び出し、言い訳にならない言い訳を繰り出し、煌牙は二人が来た事を呑気に質問していた。
桜花は先程の状況を説明してなんとか二人の誤解は解けたものの、辰巳と春の二人は煌牙と桜花の二人が仲良くしている光景を見て安心したのか、居間に座って寛ぎ始める。
「煌牙、朝餉もう出来るのか?俺腹減った」
「もうちょっと待ってろ鰤大根に味が染み込むまで後少しなんだ」
辰巳は煌牙に朝餉の催促をして出来上がりを待つが、煌牙は中山先生直伝の鰤大根の味の染み込むタイミングを見計らっていた。
「それにしても煌牙って鈍感というかなんというか」
「春姉どうしたの〜〜?」
「抱き締められてる状況でなんで鰤大根に集中してたのか・・神経を疑うわよ」
「わぷっ!春姉恥ずかしいから言わないで〜〜」
春と桜花は先程の光景の出来事を話していたが、鰤大根に集中して全く動じていなかった煌牙の神経はおかしいと春が言うと桜花は恥ずかさから顔を赤くして顔を伏せる。
そんなやり取りが行われて、朝餉が出来上がり皆で楽しく食べながら
朝餉を終える事ができた。
辰巳と春の二人は心配してた要因がなくなり、修行の為に帰るので
煌牙と桜花も岩山を往復する修行を開始した。
週一の割合で隠からの食材提供と辰巳と春の訪問そんな修行の日々が続き、5ヶ月目が過ぎようとしていた。
「ホップステップジャーンプ♪」
煌牙と桜花の二人は岩山を全集中を使わないで軽快に登れるようになり基礎代謝も向上し、日輪刀を使わない鬼との対峙も鬼を軽くあしらう程に強くなっていた。
今日は修行の集大成として日輪刀で鬼の頸を刎ねる試練を行おうとしていた。
「さてと、久しぶりの日輪刀ですが感想はどうですか?桜花さん」
「そうですね、修行の成果が発揮されるかオラ、ワックワクすっぞ〜って感想です、どうぞ」
修行の集大成と久しぶりの日輪刀を持ちテンションがおかしな方向にいってる二人だがこれまでに課してきた努力は確実に実っており
後は鬼の頸を刎ねるだけになっていた。
日の木漏れ日が差し込む森に夜の静けさと漆黒の闇が訪れた瞬間
二人の周りを鬼が取り囲み二人は逃げ場を失っていた・・ようにみえたが、この状況は想定済みであり寧ろ好都合だった。
鬼の数は12匹、煌牙と桜花は今回の試練はお互いに距離を置き一人で対処する方針で臨んでいた。
これまでに二人があしらっていた鬼全てが二人に怨みを抱いており、
煌牙に6匹、桜花に6匹の鬼が二人を取り囲み今まさに二人を八つ裂きにしてやろうと、爪を立て飛び掛ろうとしていた。
「桜花、師匠から特別に教わったあの型が使えそうだな」
「だね〜♪本当は試練乗り越えないと教えて貰えないけどね〜♪」
花蓮が使う牙の呼吸、一撃決殺を基本とした壱の型から参の型までは伝授されてる二人だがその先の型は試練を突破しないと伝授出来ないが、子に甘い花蓮は特別に一つだけ二人に型を伝授していて、今の状況はその型が発揮される状況と判断し二人は抜刀し腰を捻り上げ日輪刀を地面と平行に構える。
それと同時に鬼達が飛び掛かり鋭い爪を突き立てようと二人に腕を振るう。
ーー牙の呼吸 肆の型 空谷の跫音ーー
轟音と共に鋭い風を巻き起こしながら体を一転、巻き起こる風が刃となり鬼の爪と腕を斬り落とし、回転で勢いがついた日輪刀が鬼達の頸を横一閃に薙ぎ払い二人の周囲に灰と化した鬼の残骸だけが取り残される。
二人は頸を刎ねた事で試練を達成したが、まだ日輪刀は納刀出来ずにいた。初日にあしらった鬼達が現れていない、必ず自分達を殺しに来ると周囲に気配を張り巡らせていた。
その予想は意外にも早く訪れ、鬼が背後から煌牙に爪を突き立て斬り裂こうと襲うが煌牙はしゃがみ込んで体を反転、振り向きざまに日輪刀を振るい鬼の胴体を切り裂き回し蹴りで追い打ちをかける。
ーー牙の呼吸 壱の型 断空の牙ーー
煌牙は大きく跳躍して鬼との距離を詰め、日輪刀を横一閃に斬りつけながら空中で体を大きく捻り鬼の頸を刎ね飛ばす。
桜花の下にも小太りの鬼が現れて桜花に喰い掛ろうと、鋭い牙を剥き出しにして桜花に噛み付く・・がその刹那
ーー牙の呼吸 弐の型 虚空の牙ーー
まるでなにも起きなかったかのような静寂の後、鬼の頸が突如跳ね飛ばされ桜花は日輪刀を納刀する。
煌牙も日輪刀を納刀し、森をあとにして山小屋へと戻り反省会を開く
「桜花・・鬼全滅させたよな?明日からの修行どうしよう?」
「あ〜〜やっちゃったね〜wとりあえず更に基礎代謝を上げようよ♪」
こうして二人は残り一カ月の間、基礎代謝を上げる修行だけをやり続け四ノ宮家に帰還する。そして一年の歳月を経て花蓮から牙の呼吸の型の伝授と全集中・常中を会得した二人は最終選別の地、藤襲山へと
向かい歩き出す。
煌牙が四ノ宮家に来てから3年目、そして牙狼を継承する2年前の話である。
「まあ、こんな感じかな〜〜私と煌牙の最初の頃は」
桜花はカナエ達に昔の話を語り、少し照れ臭そうな顔をする。
「桜花ちゃん話してくれてありがとう」
カナエは桜花に話してくれたお礼をいい、桜花に質問を続ける。
「桜花ちゃんも煌牙君の事好きなんだね、家族として?男の子として?」
カナエは桜花の好きが家族愛なのか、恋愛感情なのか気になってつい聞いてしまう。
桜花と煌牙二人の間には他人が入り込めない絆があり、家族愛ならまだしも恋愛感情だとしのぶは桜花に勝ち目が無いと思いカナエは桜花に質問したのだ。
「家族としてかな?多分・・じゃなきゃしのぶちゃんと二人きりなんてさせないよ〜〜w」
カナエは桜花の言葉を聞いて安堵の表情を浮かべ、しのぶを思いやる
(しのぶ、頑張って)
蝶屋敷での女子会が終わった頃、煌牙としのぶは蝶屋敷に戻り
煌牙と桜花は一旦自宅に帰る事に、そしてしのぶはカナエに
煌牙との茶屋の話を根掘り葉掘り聞かれ、説明していたが
カナエの期待した話は全く出てこないので、カナエは落胆しながら
おはぎを食べる。
しのぶが幸せになる日を想像しながら。
いやいや、長い。
桜花のキャラポジがブレ出した今話、いや今後どうしよう