ライザのアトリエ ~白銀の殺意と錬金術師の憂い~ 作:椎葉 如月
話題になっている女性らしい体つきももちろんですが、服装が一番可愛らしいです。
勿論クラウディア、リラさんも大好きです。
ちなみに男キャラで一番好きなのは、アンペルと迷っていたのですがボオス君です。
丸くなってきた辺りからずっと「仲間にならないかなー」と思ってましたが、無理でした……。
そんな彼も、この作品では活躍させたいです。
クーケン島っていう、なんてことない島の
ラーゼンボーデンっていう、なんてことない村
そこで、なんてことないあたしは暮らしている。
……なんてことない日々を変えたい、と焦がれながら
あたしは、ライザリン・シュタウト――――通称はライザ。
なんてことない農家の娘で――――錬金術師。
そんなあたしは、今日も今日とて秘密の隠れ家で
特に密かにもしていない計画のための準備をしている。
この退屈な、なんてことない――――けれど素晴らしい日々をもっと素晴らしいものに変えるために。
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「苦節三日――――ようやく完成だ!」
ライザは錬金釜をかき混ぜる手を止める。
ここ数日作り続けていた物の最後のパーツが出来上がったのだ。
しかし――――いくら休む間もなく素材の採集や調合を行っていたとはいえ――――三日で『苦節』というのは誇張が過ぎる気もする。
さっそくパーツを取り付けるべく、アトリエの外に出る。
ライザを待ち構えていたのは、巨大な馬車だった。
いや、馬車というにはそれとは明らかに違う点が二つある。
まずは荷台から立ち昇る煙だ。
錬金術を学び始めて数年が経過したライザだ。調合失敗からの火事、なんてことはない。
これはまさしく、アトリエに設置されている錬金釜から上がっている煙だ。
そしてもう一つ、そもそも馬が繋がれていない。
そう、これはライザの閃きと勘、そして知識を結集してできた自走式移動型錬金工房『みんなのアトリエ』だ。
「これをここにこうして…………オッケー!」
みんなのアトリエが完成した今のライザは、ことさらにうれしそうだ。
実働時間が三日とはいえ、構想自体は一年以上前からあった。
それがようやく完成したとあっては、こうして喜ばずにはいられないということか。
それとも、その先にある友人たちとの再会を思ってのことか。
「ラーゼン地区を歩いてるときにふと思いついて作ったけど、あたしも仕組みはあんましわかってないんだよねぇ……まあ、大丈夫でしょ!」
この天真爛漫さを見ていると、こっちまで安心してくるのはライザの人柄ゆえか。
いつも元気な姿は、誰もが見習うべきところだろう。
感慨にふけるようにしみじみと元々のライザのアトリエと小さくなったアトリエを見比べるライザは、しばらくすると大人びた表情を見せた。
「昨日の内にヨンナさんやフレッサさん、アガーテ姉さん……みんなには挨拶したし」
みんな、アンペルらに刺激されたのか、頑なに「島の外に出るな」なんて言わなかった。
アガーテに会いに行ったときには、いつも一緒にいた三人の悪ガキでも思い浮かべていたのか、遠くを見つめていた。
モリッツには、「息子によろしく言っておいてくれ」と言われ、莫大なお金を渡された。「くすねたら許さんぞ」と釘を刺してきた当たり、最近丸くなってきたとはいえ身内のことばかりな思考は変わっていないらしい。それすら、ライザにとっては微笑ましいものだったが。
そして、最後に行くべき場所がある。
「さて……行くか」
最後にもう一度、名残惜しそうにライザのアトリエを振り返り、小妖精の森をゆっくりと歩いていく。
「よっし、これでいいかな」
ライザは屋根裏部屋の掃除をしていた。
一時はここをアトリエとして使っていたし、なにより自分たちがただの悪ガキだったころに集まっていた場所なのだ。離れる前に掃除くらいはしていきたかった。
意味もなく三人で島をマッピングしたときの拙い線が描かれているだけの紙切れ、タオがうんうんと唸ってずっと本を読んでいたお決まりの椅子の日焼け跡、レントがバカみたいに部屋で素振りしたときにできた壁の傷、調合の仕方が未熟だったライザが錬金釜からこぼした液体の跡。
掃除と言ったが、それらは片づける気にはなれなかった。
ふと、そこに柔らかい笑みをたたえ、また偉そうな仏頂面をした――――二人の友人が割り込んでくる。
タオには偶には運動しろと外に放り出し、レントにはやかましいと言って押さえ、ライザには錬金釜が邪魔だと文句をつける男。それを困ったように笑って見つめている少女。
「やっと、ここまで来たんだ」
まってて、すぐに追いつくから。
そう自分の中で宣誓すると、ライザは少し埃をかぶった階段を下りていく。
1階には誰もいなかった。
「おかしいなー。今日は昼まで家にいるって言ってたのに」
現在は朝の9時。農家であれば畑に出かけていてもおかしくはないのだが、事前に聞いていた話とは違った。
「買い物にでも出かけたのかな」
それならしょうがない。ポストにでも手紙を残して出てしまおう。なに、悪ガキらしくて良いじゃないか。
そう思って外に出ると。
「待ちなさい、ライザ」
いつも通りの怖い顔をしたミオが仁王立ちして待っていた。隣にはアハハと頬をかくカールがいる。
「まーた島の外に行って、ろくでもないことやろうとしてるわね!?」
(あーあ、まーた始まったよ)
ライザはうんざりした。毎日毎日そんなに声を張り上げて、良いノド薬でも作ってこようかと心配になるくらいだ。
せっかくの旅立ちの日なのに、勘弁してほしいと、晴れ晴れとしていた気持ちは一気に曇天になった。
「今日という今日は、お父さんの農作業手伝いなさい!」
「いやだよー。成長促進肥料とか小麦粉のキメが細かくなる加工機とか作ったじゃん!」
「それはそれ。力仕事はお父さんだけじゃ大変なのよ?」
「女の子がする仕事じゃないよぉ~……もう、じゃね!」
旅に出ることは事前に言ってあったのだ。
これまでもピオニール聖塔などに日をまたいで出かけたこともあった。
ならば、わざわざ畏まって挨拶する必要はないと思ったのだが、
「待ちなさい! もう……――――元気でね」
おそらく聞こえないように言ったつもりだったのだろうが、聞こえてしまった。
親の心子知らずとは言うが、言葉にしたらちゃんと気持ちは伝わる。
この頑固な親子にはこういうコミュニケーションが一番いいのかもしれない。
「うん……! お母さんとお父さんも元気でね!」