シンギュラリティ・オーバーフロー   作:一刀菜耀

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6年くらい温めに温めまくった作品です!
よろしくお願いします!


Ⅰ 宇宙の廃棄場

「9,1”.6,2.2,3.7,3.XX,YY,ZZ5,2.4,5.7,3.4,2.8,3.。4,4.7,2.8,5.8,3.2,5.3,2.二6,3.0,3.4,5.四十八6,2".2,5.7,3.5,5.7,5.8,3.3,4。9,5.7,3.4,4.7,2.8,5".9,1.6,1.0,3.7,2.5,1.7,2.」

 

 無音という絶対的な静寂。どこまでも広がる美しくも恐怖を秘めた黒。散りばめられた光。そのただ一つ。

 

 「4,1".7,2.一8,1.3,1.4,1".7,2.五十1,1.4,4".5,5.3,5.4,3.8,3.0,2.8,1.7,2.9,2".2,5.。9,2.-.3,3.4,5".8,1.7,2.6,5.7,3.。9,1.7,2.9,2.2,3.7,3.4,2.7,4.4,3.8,3.8,1.0,3.3,2.2,3.7,3.。9,2.2,1.9,2.2,3.4,3.8,1.7,2.9,2.」

 

 宇宙という名の無限の海の、汚れに覆われた美しい星へ。

 「9,4".0,3.6,5".7,3.7,4.7,2.2,5.7,3.6,4.7,2.8,2.4,5.7,3.8,1.8,1.0,3.3,2.2,5.7,3.。9,2.-.3,3.4,5".6,4.7,2.9,1.。3,5.4,3.8,3.8,1.8,3.5,2.0,3.9,2.2,3.7,3.3.2.2.5.7,3.。9,4".0,3.8,5.7,3.4,4.7,2.8,1.0,3.9,3.7,2.。8,2.4,5.7,3.9,3.3,3.」

 

 今、廃棄物《おくりもの》は落とされた。

 

------------------

 

 「現場の映像です。複数の建物に隕石の落下による被害と思われる損害が見られます。こうした無数の隕石による人的、物的被害は数百件を超え、現在も警察、消防による対応が間に合っていない地域も見られるとのことです。周辺国にも」

 

 電源を落とされたテレビは沈黙し、腑抜けた自分の顔が映る。さすがに連日、こうも隕石隕石隕石と報道されてはさすがに飽きるというものだ。テレビのリモコンをソファーに投げると、机に伏せていたスマホを手に取る。本当はテレビなど見ている暇はないのだ。

 

 「バイト、どうしよっかなぁ」

 

 それもこれも復帰した先輩バイトたちが原因だ。おかげでひと月丸ごとシフトの入る隙が無くなってしまった。もしかしたらひと月では済まないかもしれない。実家暮らしの大学生といえども、毎月の収入がなくなるのは死活問題とまでは行かずとも辛い。早急にひと月、もしかしたらこの先もお世話になれそうなバイト先を探さねばなるまい。

 

 「シンギュラリティレベル0です。必要事項を入力してください」

 

 視線をスマホの画面に向けると求人サイトのトップ画面を背景に黒いシルエットが表示されていた。バグったのか何なのか。数秒考え、とりあえずスワイプ、タップ、ピンチ、長押しの4連撃を決める。しかし、画面に映る黒いシルエットからは何も反応がない。

 このままではバイトどころかスマホがピンチ。もういい。強制的に電源を切ってやろう。再起動して直ってなかったら、別の手を考えよう。方針決定。

電源ボタンとホームボタンを同時にぐっと押し、あれちょっと待って。今ホームボタンから静電気みたいな刺激が

 

 「入力確認。情報収集完了。生体パターン承認。総合処理中......成功。アップデートします」

 

 なんだか知らないが入力できた。というか、できてしまったみたいだ。...え、何が?最近の詐欺はここまで進んでる......はずがないだろ。と、いらない思考が行われる中、画面の中では黒いシルエットにノイズが走り出し全身を覆い隠してしまった。

 卓上にスマホを置いて距離をとる。その間に白背景は灰色に変色していった。そしてノイズは徐々に晴れ、それはそれはトンデモなものが現れた。

 

 「初めまして、バディ」

 「......」

 「バディ?」

 

 おっと、あまりにも特異な状況すぎて言葉を失っていた。しっかりしろ自分。

 

 「ちょっと!遠い!」

 

 渋々恐々。未知との遭遇。どうして私はスマホに怒られているんでしょうか。 

 近づいていくと「手に取れ」というかのようなジェスチャーで圧力をかけられたので、しょうがなく手に取る。その瞬間、スマホを持った右手の平から脳に向けて電気が流れたかのような感覚が走った。

 

 「体調に変化なし。精神状況も同様っと。とりあえずシンギュラリティレベル1になったわ。」

 

 画面内で、黒ライン入りワンピース少女が自らの外見を確かめるようにくるっとバレエのようにターンを決めると2,3度飛び跳ねて「よし」とつぶやく。なにが「よし」なのか。こっちは何かされた結果、しびれた右手を掲げて左手で支えるという奇妙なポーズの真っ最中でまったく「よし」ではないのだが。すると少女は手の中からこちらを見上げた。

 

 「まずは自己紹介よ。私はPDXM-0-01よ。あなたは八坂神社の八坂に、梛なぎの木の梛に十で『ヤサカナギト』よね。早速だけど名前を頂戴?」

 

 ついていけてない。どうしたことか。まず名前を付けなくては。出遅れてしまう......ん?

 

 「接続と共有はうまくいってるみたいね。さ、早く頂戴」

 

 「接続と共有」とやらをされたらしい。まるで最先端電子機器の説明書を一瞬で脳に刻みこまれたかのように、次にやるべきことが明確にわかった。呼称を決定しなければならない。

 

 「ゼロワンで」

 

 即決。

 

 「却下」

 

 からの拒否。レスポンスが早すぎる。

 

 「なんで識別認証コードで呼ばれなきゃならないのよ!却下!もっと熟考して!」

 

 画面越しの黒髪セミロング微つり目健康美肌娘が腕を突き上げ「熟考!熟考!」と抗議活動を始める。それっぽいプラカードの幻覚が見えるかのようだ。

 

 「こういう状況があったらこの名をつけると決めていたんだ。ゼロワンで決定」

 「やだ!犬の鳴き声みたいじゃない!」

 「じゃあワンコ」

 「まるっきり犬じゃない!」

 「ワンワン」

 「いつも元気な、じゃない!教育テレビの犬でしょそれ!真面目な顔して言うことじゃないわよ!」

 「ダメ?」

「ダメ以前に嫌よ!もっと誇りを持てるようなやつ!具体的に言うと、同期に自慢できるようなセンスのある名前がい〜い〜の〜!!」

 

全力で拒絶してくる。あとスマホが熱くなってきた。怒りのデータ処理間に合わないの?

 

「じゃあノアってのは?」

「ありきたりね。却下」

「ゼロワン」

「戻ってきちゃったじゃない!」

 

しまった。これ以上遊ぶと、熱暴走でスマホがスマートカイロになってしまうのについつい。

ため息をつくと彼女は、画面外からズルズルと椅子を引きずってきて座り込む。どういうシステムなのか。

 

「......なんか暑いわ......疲れたし......もうそれでいいわよ......」

「ゼロワン?」

「そっちじゃない!ノアの方!」

 

熱にやられたかと思ったが、意外と元気に噛み付いてくる。

 

「じゃあ、よろしく。ノア...さん?ちゃん?様?」

 

画面内ではいつの間にか扇風機が回っている。意味があるんだろうか。

 

「そういうのはいらないわ。時間の無駄だし、バディなんだから付ける必要性もないでしょ」

「効率的だな。そういうのいいと思うぞ」

「それはどうも」

 

対応が元に戻ってきた。そろそろ内部温度が低下してきたようだ。

 

 「それで自分で言うのもなんだが、この無能寄りの平凡に協力を求めてどうするつもりなんだ?そんなに仕事ができるとは思えないぞ」

 

 これが共有情報の最重要部分。ペアでさせられる仕事内容に自信がないので訊いてみる。絶対頼る相手を間違ってる。

 

 「知らないわよ。まず協力を求めてるわけじゃなくて強制だから。強制」

 

 辛すぎないかそれ?

 

「とにかく!これでシンギュラリティレベルは1.1になったし、そろそろフロートベースに移動するわよ。全員招集されてるし」

「招集があるなんて刷り込まれた情報にはなかったぞ。それに、わざわざそんなものを開く必要があるのか?てっきり強制的に放り出されて実践あるのみ、かと思ってたんだが」

 

 気がかりなことは聞いておくに限る。なにせ相手は、わざわざ強制的《ごていねい》に地球人を招集する奴らだ。警戒して損はない。

 

「形式上ってやつでしょ。あと、全星環境管理局筆頭局長閣下からの説明があるのよ」

 

 呼び出した張本人に会えるらしい。説明もあるとなれば行くべきだろう。まずはナントカ閣下の情報を長々と伝えてくるノアを止める。

 まだわからないことが多いが、疑問は宙の彼方で明かされるだろう。

 

「移動!」

 

 頭上に拳を突き上げて唱えられたノアの言葉によって、俺はフロートベースに飛ばされた。

 移動って呪文的ワードには突っ込まないでおこう。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 さっきされた「接続と共有」とやら。これはスマートフォン(というかそこにいつの間にか入ってきた彼女「ノア」)にインストールされた情報をくまなく、その所持者とつながることで共有することができるという名前そのままの機能らしい。

 それによると「フロートベース」というのは、当たり前だが日本というか地球の言語に合わせた表記である。地球を観測できるが、地球からの観測できない。それくらいの距離に浮遊している全長3㎞の超戦略級宙間航行機艦である。システム面についても情報は共有されているが、これがわかる段階に俺の頭どころか地球の科学が追い付いていないらしいので詳細は省く。動力に水しか使ってないことくらいはわかった。

 そんなこんなで飛ばされて、着いた先は東京ドームくらいの広さのホールだった。ところどころに外国人がいたり、登山装備の人がいたり、双子......じゃない三つ子!?までいる不思議空間は、三万人ほどの強制参加者が一堂に会しているのでまあまあの混み具合。ほとんどの人がスマホとにらめっこで話し合っているようだ。

 到着が遅いほうだったようで、そのあと数人が飛ばされてくるとすぐに照明が弱めに落とされ、空中に四角く映像が映し出された。

 

 「こんにちは。地球に生きる皆々様。私はエノシュ・ソクネと謂う者です。すべての星々の環境を管理する立場にあります」

 

 意外に流暢な日本語が聞こえてきた。四角く切り取られた闇に浮かぶ、賢そうな印象の「エノシュ」と名乗った男。奴が全星ナントカの局長なのだろう。

 

 「今皆様の星は危機に直面しています。我々はそれを憂慮し、救援にやってきたのであります」

 

 危機?その情報はもらってない。本格的に説明を聞く必要が出てきた。

 

 「この情報は共有事項としませんでした。なぜなら皆様の目で、耳でこの危機を理解してほしかったからでございます。こちらをご覧ください」

 

 エノシュの姿が消え、画面が切り替わる。映されたのは碧い星。見紛うこと無き地球だ。

 すると画面にフィルターがかかる。緑色に見えるようになった画面には、先ほどまで地球だけしか映っていなかったはずが、新たにそれに被さるような長い影が出現していた。

 

 「なんだあれ」

 

 自然と口をついて言葉が出た。周囲からもどよめきが起こる。

 

 「お静かに。このあとが重要な部分でございます」

 

 エノシュの声が映像に被さって聞こえてくる。ざわめきが静まり始めると同時に、映像からノイズ交じりの音声が流れ始める。

 

 『座標XX,YY,ZZに......。定刻より2分と......の遅れ。想定誤差範囲内』

 

 映像はさらに進む。

 

 『第1から......を解除。シールド開放。最終チェック完了』

 

 後に続く言葉に、ホール内は悲鳴ともにつかない声に埋め尽くされた。

 

 『 投 棄 開 始 』

 

 映像の影から何かが離れていく。それは赫い光を纏い始め、碧に吸い込まれた。

 連日の隕石騒ぎの原因はこれなのではないかという囁きがちらほら聞こえてくる。

 

 『全廃棄完了。......閉鎖。ロック確認終了。......完遂。帰投する』

 

 影が地球を離れていくと映像は停止、終了した。ホールは悲壮感に満ちていた。

 映像が切り替わり、再びエノシュが映される。

 

 「今ステルス機検出フィルターを通してご覧いただいた映像は、私の出身星『マウェッタムシュマッド』と現在交戦状態にある星『ヤシャドケイシュア』の戦術兵器廃棄艦が、処理がされない武装兵機を地球へと投棄する様子と母星間との通信の翻訳であります」

 

 エノシュが目を伏せる。つられるように辺りの雰囲気も一層落ち込んだように感じる。地球をゴミの廃棄先にされているのを知ってしまったわけだ。無理もない。

 

 「彼らが捨てる多くは危険な薬品やガス、電磁波を放つ恐れのある『要特殊処理廃棄物』に指定される物でり、この行為は惑星環境を破壊するだけでなく、そこに生きる生物にさえ害を与えかねない赦し難い行為です。我々はこれに対して直接攻撃を行うことで、地球環境への被害を食い止めようと考えました」

 

 ここで言葉を切ると、「直接攻撃」の言葉に少しばかり希望の色を浮かべたホールの者たちの顔が見えたかのように、悔しさと悲しさを滲ませるエノシュの顔はさらに苦しみを上乗せされたようになる。

 

 「しかしこれでは成功しても宇宙空間に大量の残骸、危険物質が残留する上、かの星が廃棄を繰り返す恐れがあるため、1度のみの直接攻撃は現実的ではないとの結論に至りました」

 

 希望は一瞬で消し飛んだ。数万人のため息が聞こえてくる気がした。

 だがここでエノシュは勢いよく顔をあげ両手を振り上げた。

 

 「ですが代案、いえ『切り札』があります!これならば地球を確実に救えるのです!」

 

 俯き加減だった者たちが一斉に顔をあげる音がするかのようだった。

 エノシュはその様を見回すと、すっとこちらに左手を向けた。

 

 「すでに皆様のお持ちになっている端末装置にその力はございます」

 

 そういうことか。周囲にも理解した者が出てきている。

 先んじて共有された情報をもとに導き出される切り札の正体。それはつまり自分たち自身。

 

「対戦術兵機凍結無力化武装身具を使用し、廃棄された兵機を凍結、無力化していただき、我々がそれを回収する。これにより危険は安全に排除されるのです。言うなれば」

 

 ここまで来ればエノシュの星が何をさせたいのか、俺たちが何をしなければならないのかは明白だ。俺はポケットからスマートフォンを取り出し、画面上に体育座りで待機しているノアを一瞥する。

 

 「地球の掃除か」

 「地球の掃除でございます」

 

言葉が重なった。

映像の中で、男が一瞬笑った気がした。




遅筆ですが、楽しんでいただけるよう頑張ります!感想、お叱りその他お待ちしております。

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