エルリック兄弟、死霊魔術師(オリキャラ)に出会う。
ヒュウウウっと、空しく乾いたような、風が吹き抜ける。
「ちくしょう…、駅員の奴もっとまともな地図書けよな。」
「まあまあ、兄さん。歩いてればいずれ着くはずだよ。」
外套を被った小柄な少年エドワード・エルリックと、ゴツい鎧の大柄な人物、アルフォンス・エルリックが並んで歩く。
乾いた風は、枯れた草の匂いだけを運び、塗装されていない道を歩くおかしな組み合わせの二人組の心に空しい気持ちをわき上がらせる。
「……なんか寂しくなってきたよ。僕。」
「言うな。」
キィイイイン
「なんか…音がしないか?」
「えっ? そう? あっ! 兄さん、あれ! 町だよ!」
金が鳴り響くような、微かな音を聞いたエドワードが訝しんだ時、アルフォンスが遠くに見える建物群を見つけた。
「ああ…よかったぁ、見つからなかったらどうなるかと思ったね。」
自然と早足になりながら二人は、町に入った。
キィィィイイン
「……気のせいじゃないな。」
「なんか、音がするよ?」
「そこの……お二方…。」
「えっ?」
寂れた町の中に入った直後、町の出入り口の横にあった倒れた樽の上に、老婆が座っていた。
「錬金術師…かね?」
「……なんで、そう思うんだよ? 婆ちゃん。」
「…錬金術師が来るとね……、この音が必ず、聞こえるんだよ…。」
「この金が響くような音が?」
「………死霊魔術師(ネクロマンサー)に御用かね?」
それを言われ、二人は、思わずビクッとなった。
「なんで…それを?」
「こんなところに……御用のある人間なんざ……それしかないからねぇ。」
「そうですか…。」
「…で? …その死霊魔術師ってのは、どこにいんの?」
「この町の隅っこにいるさ…。この町はちっさいから見ればすぐ分かる……。ほいじゃ…、あんたらは、とり殺されないよう気をつけるんだね。」
「とりころさ…?」
「行っちゃったね。……どうする兄さん?」
老婆が去り、アルフォンスがエドワードに聞いた。
「…せっかくここまで来たんだ。気は乗らないが行こうぜ。」
「うん。……マスタング大佐の用事を終わらせよう。」
二人は、ある用事を頼まれ、この町に来たのだ。
ロイから、国家錬金術師・ルトホルトが、死霊魔術師がいるとされる、通称・死霊(しれい)の町に行ったっきり消息不明になっていることを聞き、その行方を探すよう言われたのだ。
気が乗らないが、国家錬金術師・ルトホルトが、生体錬金術を専攻していたことを知って、もしかしたら関係があるかも知れないと思い、重い腰をあげて死霊の町へ向かうことにしたのだ。
二人には、ある目的がある。
それは、賢者の石を手に入れ、かつて母親を蘇らせようとして失敗し、代償に失ったモノを取り戻すこと。
エドワードは、左足を。アルフォンスは、魂も含めて全てを。
そしてアルフォンスの魂を、エドワードが右腕を代償にして蘇らせ、今の鎧に定着させたのがアルフォンスの現在の状態だ。
現在、失った右腕と左足を、オートメイルというサイボーグ技術で補い、二人は、元の身体に戻るための方法を探すため、エドワードは、国家錬金術師の資格を取ることで錬金術師の最大の禁忌である人体錬成の件を隠し、二人で旅をしている。
人体錬成という禁忌に触れたこともあり、生体錬金術での代償を取り戻す手も考えているため、藁にも縋る思いもあってこの町へ来たのである。
町の隅っこと聞いて、それほど大きくない小さな町を進んでいくと……。
「うっっ、わ…。」
「これって…。いかにも?」
他の建物から離れた場所に、ボロ屋があり、そして動物の骨があちこちに飾られた悪趣味な家があった。
「看板まで律儀にあるしな。『死霊魔術師の家』ってな。うさんくせ~。」
「とりあえず…行く? 入る?」
「……仕方ねぇな。」
そして、二人は渋々、嫌々、死霊魔術師の家に入るべく扉を開いた。
チリンチリンと、扉に掛けられていた鈴が鳴る。
その瞬間、ムワッと濃いタバコのにおいがして、エドワードは、顔を歪めた。
「……らっしゃい…。」
薄暗い家の中。
適当に置かれた家具に隠れるように置かれたテーブルの向こうに、テーブルの上に足を乗せて、タバコを吹かしている男が一人いた。
家具の影になっていて、顔が見えない。
「うっ、わ!」
アルフォンスが、建物の中を見てギョッとした。
外にも無造作にあった動物の骨が、外以上に家の中に飾られていて、剣や槍や、ナイフなどまで壁に刺さっていた。
「……ご用件は? 錬金術師。」
「!」
名乗ってもいないし、錬金術師であることも打ち明けていないのに、いきなり言われ、二人はビックリした。
「なんで…分かった?」
「分かるさ。」
男は、テーブルから足をどけ、椅子に座り直す。
キィイイイン
「この音…。」
「……コイツが…町に入った錬金術師のことを教えてくれる。」
そう言って、影から出したのは、黄金に輝く人間の頭蓋骨だった。
テーブルに置かれると、その頭蓋骨からあの音が聞こえてきた。
男は、まるで目覚ましでも止めるように、頭蓋骨の上に手を置く。すると音が消えた。
「それで? ……今回はどんなご用件で?」
「……ルトホルトって名前を知ってるか?」
「あ~~…、そういやそんな名前だったか。」
「知ってるのか?」
「死んだ。」
率直に言われ、二人は、ギョッとした。
「やめろって言ったのに…、聞かなかったんだ。」
「どういうことだ?」
「………死霊魔術を調べたいって言うから、教えた。その結果…、死んだ。」
「まさか…。」
「あんたが、…殺したのか?」
「違う。」
身構えかけるエドワードと、アルフォンスに、男は、単調な口調ですぐにそう言った。
「……デーモンに殺された。」
「でーもん? 悪魔?」
「死霊…、悪霊とも言うな。生前、恨み辛みを抱えて死んだ魂の記憶とエネルギー。そういうものを総じて、俺達は…、デーモンと呼んでいる。」
「おれたち? あんた……、死霊魔術師…なのか?」
「そう…名乗ってきた、そう…呼ばれてきた、一族の末裔だ。」
男は、椅子から立ち上がり、影から出てきた。
ボサボサの黒髪と黒い目だが、ほんのり赤みがある、奇妙な色をしている。
結構長身で、肉付きも悪くなく、顔立ちは、かなり整っており、無精ひげがなければ、相当な男前だろう。
ただ…、妙な迫力がある。なんと言い表せばいいのか分からないが…。
「それで? この死霊魔術師、クサナカに、何の御用かな? 若い錬金術師のお二人さん。」
死霊魔術師・クサナカと名乗った男は、無表情でタバコを吹かしながら聞いた。
連載するかは、未定。
まず、漫画を全部買う必要がある(1巻と、ガイドブックしかない)。