仮題名『死霊魔術師と、錬金術師』   作:蜜柑ブタ

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vsブラッドレイの部隊。


もっと長続きさせようと思ったけど、一話で終わらせました。


ブラッドレイ(ラース)が……。注意!!


あと、人体切断などの描写有り。注意!!


SS9  死霊魔術師は、結界を発動させる

 

 約束通り死霊の町の手前で降ろしてもらったエドワードとアルフォンスは、二人を降ろした後去って行く車に目もくれず死霊の町に入った。

「クサナカさーーん!」

「たぶん、家じゃないか!?」

「待って、いたよ、あそこ!」

 濃い霞がかかった町中の舗装されていない町中の道の先に、クサナカが背中をこちらに向けてボーッと突っ立っていった。

「クサナカさん! 大変なことになった! すぐ町から逃げよう!」

「クサナカさん!」

「必要ない……。」

 駆け寄ってきた二人に、淡々とした声でクサナカが言った。

「必要ないって…、軍が来るんだぜ!? こんな小さな町なんてすぐ制圧…。」

「必要ない。」

「クサナカさん! あなたの生死を問わず捕まえろって命令が下ったんです! つまり殺されるってことですよ!?」

「だいじょうぶ。」

「だから…!」

「お前達も…、“孫”が狙いか?』

「?」

「……あんた、クサナカさん…?」

 振り返ったクサナカ(?)の顔は、なぜか影になっていて見えなかった。そして霞のようにフッと消えてしまった。

 

『結界が、発動する。お前達は、孫の家へ。』

 

「けっかい?」

「うわわ! 兄さん、周りに!」

「へっ?」

 どこからともなく聞こえるクサナカに似た声が、そう告げた後、周りの家からゾロゾロと人間達が出てきた。

 生気の無い顔。虚ろな目……、まともに見えない。

 そして何より、その手にクワやフォーク状の農具を手にしており、物騒この上ない。

「おいおい…、どうなってんだ?」

「死霊の町って…まさか…?」

 アルフォンスがなにかを察した。

 すると、背後から二人を掴む、骨の手があった。

「なっ!?」

「うわっ!」

 動物の頭蓋骨を触媒にしたデーモンだった。

 二人の首元を掴んだまま、引きずるようにクサナカの家に連れて行った。

 家に入ると、クサナカが家の中の床の上で倒れていた。

「クサナカさん!」

「う……。」

 エドワードとアルフォンスの声に、気絶していたクサナカが呻き、目を開けた。

「……爺さん?」

 頭を手で押えながら起き上がったクサナカが周りをキョロキョロと見回した。

「クサナカさん、なにが起こるんですか? この町は…、まさかだと思うけど…、住人はみんな……。」

「ああ……、そうか…。」

「クサナカさん?」

「爺さんは…、このために……。」

 二人の疑問に答えず、クサナカは座り込んだまま独り言を呟く。

 

 その時、町の出入り口からだろうか。爆発音が轟いた。

 

 その衝撃で、コロリと、黄金の頭蓋骨が床を転がり、カチッと上顎と下顎の歯が当たって鳴った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「これで、邪魔な霞はほぼ消えたな。ご苦労だった。」

「…っ……。」

 ロイは、痛む足を推して放った特大の炎の爆発で、死霊の町の手前を覆うように隠していた濃い霞を消し去っていた。

 あれから、ロイは、想定以上の速さで到着したブラッドレイの隊と合流したのだが、やはりというか、無実の罪については聞き入れて貰えず、それどころか、足をサーベル剣で、刺された上、こうして無理矢理連れてこられて炎の錬金術で濃すぎる霞を消し去るよう命令されたのだ。命を盾にされて。

 霞が炎の加熱により吹っ飛んでいく。やがて寂れた町が露わになると……。

 

 農具を武器として手にした虚ろな目をした老若男女の住人達が湧いて出るように出てきて、こちらに襲いかかってきた。その動きは、おおよそ人間のするそれじゃなかった。

 

「なっ…。」

「ふむ…。そう来るか…。だが想定の範囲内だ。」

 驚愕するロイに反して、ブラッドレイが冷静にそう呟いた。

 邪魔な異分子はすべて排除する。

 それは、忠実に実行され、様々な銃撃音が鳴り響く。

 だが、撃たれて倒れたかに思われた住人達はすぐに立ち上がったり、甘い甘いっと言わんばかりに半分吹っ飛ばされた頭の状態で指を振る。

「これは…、まさか!?」

「そう。この死霊の町と呼ばれる地図にない町には、生きた人間などいなかったのだよ。いや…、たった一人だけいたか。死霊魔術師……。」

 やがて前衛を越えて、1体の生きた死体がブラッドレイめがけて襲いかかろうとした。

 ロイが咄嗟に錬金術を使おうとすると、いつの間にか抜かれていたサーベル剣によって、生きた死体が切断されていた。しかし、それでも生きた死体は動き、ブラッドレイの足を攻撃しようとした。その手にサーベル剣を突き刺し地面に縫い付ける。それでも生きた死体は、ジタバタと動いていた。

「これで分かっただろう? 死霊魔術師は、これだけのことを平然とこなせるのだ。その気になれば、死者の国さえこしらえることさえできよう。」

「彼は…、そのようなことは…。」

「可能性だ。国を守るため国を揺るがす芽は断ち切るに限るのだ。こやつ等を動かす動力源は分かっている。間違いなくこの町に逃げ込んだ死霊魔術師の心臓にある賢者の石。」

「なぜ…その情報を?」

「ある情報網からの確かなものだ。全部隊! 前衛は下がり、これより、砲撃を開始する!」

「まっ…。」

「安心したまえ、完全物質の“賢者の石だけ”は、傷一つつかんのだ。回収後、国家錬金術師諸君には、その恩瑛に預かれるだろう。」

 それは、クサナカの死体が跡形もなくなってもいいということだ。賢者の石さえ無事ならば。

 ロイは、ギリッと唇をかみ、痛む足を崩し、その場にへたり込みそうになったが、左右にいた軍人に肩を貸され、後方に無理やり撤退させられた。

 ロイが下がらされ、軍用トラックに担ぎ込まれた後、凄まじい大砲の音が聞こえだした。

 

 何発か放たれた後、前線の方から悲鳴が聞こえた。

 

 ロイが身を乗り出して見ると……、そこには黒いマント状の霞のような物をひらめかせ、大鎌や巨大なハサミを手にして襲い掛かってくる赤黒い頭蓋骨を持ったデーモン達が軍人たちを襲っていた。

 ブラッドレイが上着を脱ぎ棄て、人間業じゃない身体能力で、軍人たちを襲うデーモンにサーベル剣で斬りかかる。

 あまりの素早い攻撃に、触媒にしていた頭蓋骨が破壊されていき、一体また一体とデーモンが倒されていった。

 それに続いて、前方からガシャンガシャンと音を鳴らして、炎を纏わせた車輪のようなものを手にしている黒い人形が歩いてきた。

 慌てて砲撃隊が砲撃するが、大砲による爆発をその車輪を盾にして防ぎ、口らしき部位から、凄まじい火炎を吐き出し、さらに車輪のようなソレをブーメランのように投げつけるなどの攻撃を行い砲撃隊の大砲を破壊していった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 一方そのころ。

「くっそ! 容赦なさすぎだぜ! 賢者の石ごとぶっ飛ばす気かよ!?」

 爆風から身を守るため、地面の土を使い、錬成をして分厚い盾を作ったエドワードが悪態をついた。

「クサナカさん! やっぱり、逃げた方がいいぜ! 裏手の山の方にでも!」

「ダメだ。」

 エドワードの後ろの方で身をかがめていたクサナカが速攻で返した。

「なんで!?」

「この町は、爺さんが作った結界だ。ここを離れることはできない。」

「けど、このままじゃ!」

「………あの、眼帯の男か?」

「?」

「とてつもない数の……、デーモンが背後にいる。恨み……晴らしたいか? それほどに憎いか?」

「誰と会話して……?」

「なら……。」

「クサナカさん! ダメだ! 前に出たら!」

 クサナカが盾の後ろから出てしまい、エドワードとアルフォンスが止めようとしたが間に合わなかった。

 クサナカは、いつの間にか手にしていた黄金の頭蓋骨を掌に乗せた状態で、その腕を前に伸ばす。

「………その、恨み…辛み……、悲しみ、憎悪…お前たちのソレを……その男に!」

 その瞬間、凄まじい突風が、吹き荒れた。

 思わず目をつむって飛ぶ小石などから身を守ろうとしたエドワードとアルフォンスは、直後に見た。

 

 風に乗って、薄グレー色の、人の顔らしきものが多数大勢……、凄まじい放流となって風に乗りながら軍がいる方へと流れたのを。

 

 突風は、大砲の砲撃によって舞い上がった粉塵を吹き飛ばし、陣を敷いている軍の中を吹き抜けていく。

 

 そして、ブラッドレイがハッと、それに気づいたときにはすべてが遅かった。

 

 近くでブラッドレイを護衛していた軍人が見たのは、風と共にきた粉塵に顔らしきものがあり、まるでブラッドレイの全身をくまなく食らいつくさんという勢いで襲い掛かり、ブラッドレイの体から、背中からウロボロスの紋様のような黒白の何かが、無数の顔らしきものに食い破られるように散っていき、風と共にはるか彼方へ吹き抜けていくという、一瞬の光景だった。

 風が吹き抜けた後、ブラッドレイは、フラリッと後ろへ倒れてしまった。

「大総統閣下!?」

「…し…、死んでる…?」

 倒れた際に外れたブラッドレイの左目の眼帯の下の目は、白く、何も描かれてはいなかった……。

 

 ブラッドレイの突然死により、ブラッドレイが直々に指揮下に入れていた軍は、迫ってくる黒い人形・フェティッシュを前に恐怖し、統率が取れなくなり、撤退していった。

 

 

 




デーモンを使った、魂喰らい……っとでも言いましょうか。
対ラースへの必殺の攻撃方法は、ネタを考えたときからずっとこれで決めてました。
最強の目を持っていても、気配でヤバいと感じても、今まで殺してきた、買ってきた怨みの量と纏わり付かれていたデーモンの数には敵わなかった……。
クサナカなら祓うこともできたけど、それを逆手にとって恨みが向く方向を正し、攻撃の手段を与えたのが、今回の攻撃。攻撃後、ブラッドレイに憑いていたデーモン達は成仏。
なお、この攻撃方法は、怨みを買っていればいるほどの相手ほど効果が上がる。


クサナカの爺さんが死霊の町を結界としていたことや、その作った理由などは、次回に。
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