あの時のあの二人のリアクション最高だと思ってます。
エドワードとアルフォンスは、非科学的な物は信じないと思うけど、実際に目の前にしたら、年相応になるとか?
軍による攻撃で、死霊の町はメチャクチャになった。
そして何より聞かなければならないことがある。
「クサナカさん…、この町の人って…。」
「ああ…。全員デーモンが宿った生きる屍だったらしい。」
「らしい?」
「思い出した。やったのは、爺さんだ……。」
中空を見上げ、クサナカは、ポツリポツリと思い出したことを語り出す。
この町は、そもそもずっと昔に流行病で全滅した町であり、そのため地図上から消されていた。
だがそこへ幼いクサナカを連れた、彼の祖父がやってきて、死霊魔術を用いて死体を集め、そこにデーモンを宿らせた。そして、町と畑を機能させ、そこに住み着いた。
余命短い間に、クサナカを守るための結界として町全体が機能するよう様々な仕掛けと、上級デーモンの器になる人形(フェティッシュ)も用意し、クサナカを狙う者達が現れた時に備えた。
「ちょっと待ってくれ。」
「なんだ?」
「狙ってくる者達ってことは……、賢者の石があるってことを、あんたの爺さんは知ってたってことか?」
「知ってたかどうかは分からん。だが…、狙ってくる連中がいたことは確かだ。それが誰なのかは分からない。」
「なんだそりゃ? クサナカさん、なんも聞いてなかったのか?」
「それが、記憶が異様に曖昧でな…。頭が今、ちょっとパニック気味。」
「だいじょうぶですか? ……兄さん? どうしたの?」
ふとアルフォンスがエドワードの方を見ると、エドワードが青ざめていた。
「兄さん? どうしたの?」
エドワードは、青い顔で硬直したまま、スーッと右手だけ隣にいるアルフォンスに向け、バンバン!と勢いよく叩いた。
「なになに? どうしたのさ?」
「あ、あ、あ、あああああ、あれ! あれぇ!」
「えっ?」
「?」
エドワードが左手で指差す先は、クサナカの後ろ。
アルフォンスもソレを見つけて、固まった。
『おやおや~? どうやらわしを見つけたようじゃのう?』
「………爺さん?」
ソレが発した声を聞いて、クサナカが振り向く。するとクサナカによく似た顔の老人がクサナカを見おろし、優しく微笑んだ。
『久しぶりじゃな。クサナカ。』
「なんで…?」
『わしゃ、ずっとお前の傍におったぞ?』
「それだったら、俺が感じてたはずだ。」
『感じないように細工しとったからじゃ。』
「あー…。」
クサナカがなんか納得している傍ら、エドワードとアルフォンスは、開いた口と目が見開かれた状態で固まっていた。
「どうした?」
『わしを見つけたのは、あのちびっ子達じゃわい。』
チビと言われても、エドワードは反応しなかった。それどころじゃないからだ。
「お……。」
「お?」
「おばけえええええええええええ!!」
足ないし、浮いてるし、半透明だし……。錬金術脳と言える天才児兄弟とはいえ、目の前にいるクサナカの祖父の霊魂を前に、ギャーーーっ状態だった。
その後、落ち着いてから、唯一無事だったクサナカの家へ。
クサナカの祖父は、クサナカの斜め後ろでフワフワ浮いている。非現実的な光景もいいところだ。
「それで爺さん? あんたは、なんでここにいる?」
怖々しているエドワードとアルフォンスを後目にクサナカは、日常会話でもするように淡々と祖父の霊魂に聞く。
『お前からあの時の記憶を消しておる。だから覚えてないのは仕方ないこと。』
「あの時って?」
『わしが死んだ時じゃよ。』
こんなぶっ飛んだ会話が普通に出来るのは、二人が死霊魔術師であるからであろう。
『わしは、わしが死ぬ間際の自分の肉体と魂をデーモンに変えた。そして、ずっとお前に憑いていたんじゃよ。』
「なんで?」
『お前は、自分の生き死にに執着がないから……。』
クサナカの祖父は、困った顔をしてそう言った。
『お前が成人する前に、自分が死ぬと分かってからわしゃ必死だったんじゃぞ? どうすれば生きる執着を持たせてやれるかって。』
それを聞いてエドワードとアルフォンスは、少し思い当たった。
そういえば、賢者の石が心臓にある可能性があると分かったとき、“抉るか”とクサナカは平然と言っていたのだ。
さらに、『必要なら、死んでもいい』っとまで言っていたのだ。それは、自分の生死に興味が無いからだろう。
そこでクサナカの祖父は、自らをデーモンに変えることで取り憑き、孫のクサナカに発見されないようにしてうまいこと死を回避させていたのだ。
「心配性だな。」
『お前は、ちっちゃい頃から心配な性格しておったから。』
どうやら昔からクサナカは、こうだったらしい。
『ところで、そっちのちびっ子達。』
「誰がちびっ子だ!」
落ち着いてきたエドワードがやっとちび呼ばわりされて怒った。
『ガハッハッハッハッ! 元気の良いことじゃ。いきが良い魂はこれだから良い!』
「そんな魚みたいな…。」
『まあ、そう怖がるな。っと言っても子供には刺激が強いか? 鎧のちびっ子少年。』
そう言われてアルフォンスはビックリした。
鎧の身になってからというもの、子供だとは言われたことがなかったからだ。
『わしもそうじゃが、クサナカにもお前さんはそう見えておるよ。精霊や魂を重要視するわしらにとって、肉体は関係ない。見た目より中身っていうじゃろ?』
「へ~。」
「で? 爺さんは、デーモンになってるわけだけど、今になってなんで…。」
クサナカが聞くと、彼の祖父はクサナカを見た。
『強いて言うなら、きっかけじゃ。わしが自分の存在をお前から見えないよう感じないようにしすぎたせいで自分でも相手に見せる感じさせることができんかった。偶然にもそこの子達が見つけてくれたおかげでやっとこさ自分の存在を出せるようなったわけ。』
「案外うっかりだな。」
『わしじゃって人間じゃからのう。失敗することぐらいある。』
腰に手をあて胸を張って言うクサナカの祖父。出会い頭からだが、クサナカとは全然性格は違うようだ。
『ところで!』
「は、はひぃ!?」
いきなり話を振られ、見られてビクッとなるエドワードとアルフォンス。
『お前達は、その若さで相当な手練れの錬金術師と見たが、頼みがある。』
「な、なに?」
『……孫を…、クサナカのことを頼めるか?』
「はっ?」
『ああ、別に婿にしろとかそういうアレじゃないからのう。』
「アホか。」
ポカンとなるエドワードとアルフォンスとは対照的に、冷静にツッコミを入れるクサナカ。祖父は、冗談じゃと、ガハハハハっと笑うだけだった。
『ま、冗談はさておき…。改めて…、賢者の石の処分を頼みたい。』
「えっ!?」
いきなりの頼みに二人はビックリ仰天した。
『処分方法は、そちらに任せる。ただ、賢者の石を取り出し、そしてできたら破壊してほしい。その過程でお前さん達の身体を元通りにするなりしても構わん。』
「やっぱ、俺の中にあるのか?」
あるかどうかは本人にも不確定だった賢者の石の存在が、祖父の言葉通りなら本当なのだとしたら……、ブラッドレイが軍を率いてまで回収しようとしたのも…。
「いいのかよ…?」
『もちろんじゃ。わしらには、賢者の石なんぞ、無用の長物。むしろ邪魔じゃ。先祖代々生きた過程で出来てしまった不要物じゃ。』
「け、賢者の石を、不要物扱いって…。」
『錬金術師にとっては、まさに喉から手が出るほど欲しい代物じゃろうが、人によっては何の意味も持たん。そういうものじゃ。』
「それはそうだけど…。なんでまた…。」
『賢者の石より、孫の命の方が大事じゃ。それだけじゃよ……。』
「なるほど。このままいけば、賢者の石を奪うためにクサナカさんが殺されるからか。」
『それだったら……、まだいいじゃが…。』
クサナカの祖父は、なにか深く思うように目を閉じた。それを三人は不信に思った。
その時、車のエンジン音が響いてきた。
まさかまた軍がっと思ったが、どうやら車は一台だけだった。
『おや? どうやら迎えが来たようじゃな。』
「迎え? 大佐か?」
『おそらくは、そうじゃろうな。あれも錬金術師じゃて。足を怪我をしておるが…。運転手がこっちに来ようとしておる。行きなさい。』
「俺も行く。」
『そうじゃな。』
クサナカも立ち上がったことに特に問題視せず、クサナカの祖父は、そう言ったのだった。
破壊された町の出入り口に行くと、一台の軍用車があって運転席の隣の助席にロイが乗っていた。運転手の軍人が今まさにエドワードとアルフォンスを呼びに行こうとしていたのか降りていた。
町の住人だった屍達は、物理的に破壊された時点で塵になって消えたらしく、跡形も無かった。
なんか不穏なことを言っている、先代死霊魔術師のクサナカの祖父。
そして、エドワードとアルフォンスに、賢者の石の破壊を頼む。(処分方法は、お任せ)
次回から、ブラッドレイが死んだことで、アメストリス国内と国外をも巻き込んだ混乱が始まる?