仮題名『死霊魔術師と、錬金術師』   作:蜜柑ブタ

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死霊の町が大破したため、クサナカは、町の外へ。


ロイ、クサナカの祖父を見て、個人的な悪巧みを……?


SS11  死霊魔術師、東へ

 

 

 破壊された死霊の町から離れ、舗装されていない道を、軍用車がひた走る。

「おーい、たいさ~~? 後ろ向けよ~。」

 しかし、ロイは見ない。腕組みしてドッシリと席に座って前を見ているようだ。

「いい大人がこぇえのかよ~?」

「怖くなど無い!」

 意地悪く聞いてくるエドワードに、ロイが素早く返答。

「おいおいおーい、いやに声張り上げやがって、やっぱ怖いんだろ~?」

「怖くなどないと言っているだろう! 例え、足が無くても! 浮いてても! 半透明でも…だ!!」

「最後の方、変に間を開けてて不自然だっての。」

「汗ダラダラのようだが、暑いか?」

 クサナカが、淡々とした口調だが、特に深い意味を込めず普通に心配して聞いた。(淡々口調は癖みたいなもの)

「汗などかいてない!」

「あの…、大汗かいてますよ。マスタング大佐……。」

「黙って運転していろ!」

「は、はい!」

「僕らも最初はビックリ仰天しましたけど、現実は受け入れましょうよ。」

「私は別に現実逃避などしていない!」

『今は、そこの運転手だけに見えないよう調整しているからのう。気持ちは分かるがそろそろ現実を受け入れたまえよ、若造君。』

「ーーーーー!」

 ロイの斜め後ろからクサナカの祖父がワザと、フ~~と息を吹きかけロイのサブイボを立たせた。なにせデーモン(死霊、または悪霊の類)、温度なんぞない。

「やめていただけるか! 次やったら燃やす!」

 息を吹きかけられた耳を押えて、やっと後ろを向いたロイがクサナカの祖父にガーっと怒る。なお、運転手には見えてないため、なにが起こっているのか分かってなかったが口出しはしなかった。

『燃やせるものなら燃やしてみたまえってか? お前さんの焔が霊魂を理解し、焼き尽くせる物であるならば。』

「っ……。」

『まあ、そう警戒しなさんな。なにも呪い殺すような真似をすることはせんから。』

 クサナカの祖父は、そう言って笑うが、ロイは、それどこじゃない。

 彼とてエドワードとアルフォンスとは研究テーマが違えど錬金術師。クサナカの祖父というデーモンの存在がソコにいるという現実を受け入れたいが、現実離れした目の前のソレを頭が拒否しようとしていてグチャグチャなのだ。

 幽霊と言えば……、するとロイは、思考を切り替えた。

「そうだ、これから東方司令部に来てくれます? ぜひとも見せたい相手達がいる。」

「どういう気の変わりようだよ? なに企んでんだ?」

「別に? 私個人の遊びみたいなものだよ。」

 前を向き、クックックッとなにか悪巧みしている笑い方に、クサナカは首を傾げ、エドワードとアルフォンスは胡散臭そうにし、そしてクサナカの祖父は若いのう~っと苦笑していた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そして、東方司令部へ。

 発展した街に来たことがないクサナカは、物珍しそうにキョロキョロと周りを見回していた。

「お疲れ様です、大佐。」

 リザ・ホークアイがまず出迎えた。

「ホークアイ中尉、今すぐ私の執務室にハボックとブレダ、ファルマン、フュリーを招集したまえ。見せたい物がある。」

「? はい。」

 一瞬ロイの思惑が分からずハテナと思ったホークアイだが、すぐに忠実な部下として顔を引き締め、ロイの執務室に先ほどあがった名前の者達を呼ぶよう手配した。

「お久しぶりです。ホークアイ中尉。」

「あら、エドワード君とアルフォンス君も…。そちらの方は?」

「クサナカだ。初めまして。」

「初めまして、私は、東方司令部所属、リザ・ホークアイ。階級は中尉です。」

「クサナカ君。ついて来てくれるかい?」

 お互い自己紹介をして頭を下げ合うクサナカとホークアイだったが、クサナカはロイに呼ばれた。

「……なにか企んでいるようだけれど、ほどほどにお願いします。」

「お見通しですか…。」

「上司ですから。」

 ロイの企みにはなんとなく気づいているらしいホークアイだった。

 エドワードとアルフォンスもついていき、そしてロイの執務室に通された。

 執務室には、すでにハボック、ブレダ、ファルマン、フュリーがいた。

「緊急招集ということでしたが、何事ですか?」

「それはな……。クサナカ君。」

 キリッと真面目顔でクサナカに、分かってるな?目線を向けてくるので、エドワードとアルフォンスは、なにをやろうとしているのか理解した。

 

 その数秒後。

 

 

 

 東方司令部に、男達のデカい悲鳴が響き渡った。

 

 

 

『ガハハハハハ! イキの良い若い魂の悲鳴はいい!!』

 ガチ幽霊(デーモン)で、その存在をもってハボック達を恐怖のどん底に突き落としてナイスなリアクションをさせたクサナカの祖父は、腹を抱えて笑っていた。あと、ロイも普段の彼からは想像も出来ない抱腹絶倒状態で腹押さえて笑っていた。

 なお、ホークアイは、目を見開いたものの、なんとなくクサナカの背後に気配的な物を感じていたらしく、そこまで驚かなかったのでロイは密かにガッカリしていたのだった。

 あと、このあと、いらんことで部下を招集して仕事を中断させるなとホークアイが静かにお怒りになり、ロイはしっかりとお仕置きは受けたのだった。(※足の怪我など関係なく)

 

 

 




クサナカは、常に淡々。
クサナカ祖父は、割とやんちゃ(?)。



なお、時間軸的には、小説版のオマケ話、ロイ達の肝試しの時系列後ですね。

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