仮題名『死霊魔術師と、錬金術師』   作:蜜柑ブタ

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今回はオリキャラ多数。ただし名無しのモブ達。

展開は完全オリジナル。原作はホムンクルス達2人と、ブラッドレイ早期退場でとっくの昔に崩壊しています。


死霊魔術師が体内に賢者の石がある疑惑が広まっている…?疑惑事件。


なんか色々おかしいですが、とりあえず投稿しましたがあまりにも矛盾などの指摘が多いようでしたら削除して書き直します。




それでもOKって方だけどうぞ。











いいですね?








SS13  狙われる死霊魔術師

 

 

 休憩時間中のロイの執務室内がカオスになっていた。

 主に国家錬金術師の2名と錬金術師1名の苦悩から来る重苦しい空気が原因だった。

「空気が重い。」

『お前はマイペースじゃのう…。まあ、物心ついた頃からじゃが…。』

 表情は少ないがケロッとしている様子のクサナカに、ソウゲンが苦笑した。そのマイペースさゆえに千年以上も同じ場所で変わりなく過ごせたのだろう。

「最高硬度のダイヤモンドを超えそうな硬さのメンタルですな…。」

「千年以上生きてりゃ、そりゃ精神力なんて常人を軽く超えるだろーが…。マイペースっつーより、精神だけ老化して落ち着きすぎの究極形態みたいになっちまってんじゃ…?」

 眉間を指で押さえて下を向くロイ。頭を抱えて項垂れるエドワードとアルフォンス。

「でも外見は…、若いまま…。つまり全盛期を保っているということですよね?」

「そういえばそうだな。」

 顔を上げたアルフォンスが聞くと言われて気がついたとばかりにクサナカが言った。

 クサナカが自分の年齢について27歳とは言っていたがそれくらいの年齢で不老不死の体質が働き27歳の身体のまま生き続けてきた。

 今までそのことを異常だと自覚していなかったのは、他人から言われて初めて気づくことも多いというアレだ。死霊の町の住民は全員デーモンだったから指摘してくれないし、傍に憑いていたソウゲンもソウゲンでクサナカに認識できない状態になってしまっていて教えられなかったのだ。知らないでいたことが幸運だったのか、それとも不幸だったのか、それを決めるのは当の本人だけだがクサナカの今の様子だとあまり気にしていないようではある。

 短期間に意味不明、理解不能レベルの謎を抱えていることが判明した人間が目の前にいるのだ。科学者である錬金術師達、特に人体錬成を通じてそっちの学問を専攻しているエルリック兄弟は早熟の天才児であるが天才故に頭が痛くなっていた。

 絶対とされる等価交換の理論をぶっ壊すような死霊魔術を思うままに使いこなせることと、究極の物質である賢者の石を体内に内包している可能性だけでもとんでもないのに、そこに不老不死の体質。ここまで来ると賢者の石を抜きにしても様々な方面から狙われる要素が盛りだくさんに思える。特に不老不死。一番良い状態の肉体で老化せずに若いままずっと生きられるなんて生に執着し死を恐れる多くの人間達が夢見たことだから。

「それで、エドワードとアルフォンスは俺にやって欲しいことがあったはずじゃ?」

「あ…。」

「賢者の石…だったか? 俺の身体の中…。」

「脱ぐな脱ぐな!」

「その件だが、あまり薦められん状況ですよ。」

「はあ。」

 クサナカが上半身の衣服を脱ごうとするのでエドワードとアルフォンスに止められているとロイがそう言った。クサナカは服をただしながら気のない声を漏らした。

「国内…いや国家が混乱を極めている今の状況で中央に行くのは危険だということだ。しかし、このまま待っていても下手すると必要機材のある施設の閉鎖や国家錬金術師の特権諸々が廃止か無効になる可能性も低くは無い。クサナカ君の命と周囲への混乱による犠牲の発生も考えた上で行動して欲しい。」

「分かってる。すぐやってすぐ戻れば良いんだろ?」

「本当に分かってるのかい?」

「大佐も無関係じゃねーんだから共犯ってことで。」

「ふっ…。分かっているではないか。」

「?」

 エドワードの意地の悪い笑みに、ロイも悪そうな笑みを浮かべて見せた。

 クサナカは首を傾げ、アルフォンスとホークアイは顔を見合わせてからため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 その後。

 

『こーなるとはのう? 中尉達も大変じゃろうに。』

「彼女らは理解してくれているので問題ありませんよ。」

『それで締め切り期限が近い物を早急に数回徹夜して終わらせるとは……。分別作業させた労力と労働時間を考慮してあげては?』

「分かっていますよ。言われなくとも。ボーナスは弾みます。」

 中央行きの列車の中でソウゲンとそんな会話をするロイ。

 軍服では無く私服と旅行鞄。完全に私情で中央に向かおうとしているスタイルである。

 エドワードとアルフォンスもいるのだがエドワードは不満そうな顔をしているし、アルフォンスはそんなエドワードが不機嫌で暴れないよう身構えつつオロオロし、クサナカはまったく気にせずボーッと席に座っている。

 やがて発車時刻になり列車が動き出す。

 列車の中の乗客はまばらだ。

 理由は中央が今混乱状態で潜伏していたテロリストや政府に不満を持っていたグレーゾーンの集団などがいつ暴動を起こすか分からないことと、アメストリスという軍事国家を一代で築き上げた大総統であるブラッドレイが突然没したという情報について様々な憶測や捏造などがごちゃ混ぜになった噂が出回って中央で暮らす民衆達の生活空間の空気がピリピリし暗く淀み、テロへの緊張と恐怖、これからの自分達の生活がどうなるかという不安が混沌をより濃密にしつつあった。

 そのせいか中央へ足を運ぶ人間が減り、逆に中央から離れようとする人間が増え行き帰りの列車内の人口密度に差が生じていた。だからクサナカ達が乗っている中央行きの列車には人が少ない。乗っている人間は風貌からしてどこか怪しいのでもしかしたら中央の混乱を利用してあくどい商売を企んでいるのかもしれない。しかし悪そうな見た目をしているだけで証拠にはならないので逮捕案件にはならないのだ。

「そこの設備で分かるのか?」

「精密な検査をするにはそれ相応の道具が必要だから片田舎の医療設備じゃどんな良い腕の医者でも無理無理。検査結果が出るまでの時間のこともあるから、それまで中央にとどまるけど…、だいじょうぶだよな?」

「別に…。行くところはないから。」

「ああ…。そうでしたね…。」

 改めて聞くとすごく申し訳ないことである。エドワード達がクサナカを訪ねなければ住居を失われずに済んだかもしれない。国家錬金術師という重たい権力を持つ天才がまだまだ子供の年齢であるエドワードは他人の安息を壊してしまったことへの責任を改めて重たく受け止めた。

 列車は順調に中央への道を進んでいく。途中の駅に止まりもするが問題なく終点の中央へ進んでいく。

 長い列車の旅でクサナカがウトウトしていると、エドワードが先に寝息を立ててアルフォンスにもたれかかって眠った。眠気が強いのか硬いアルフォンスの鎧の身体にもたれているにも関わらずグッスリだ。慣れているのかもしれない。

 ロイも今日のために少々無理をしたせいか腕組みしてウトウトと眠りかけていた。列車の揺れがちょうど良い感じに眠りを誘う。そうして終点までみんなで一眠りという空気になりかけた.

 その時。

 

「この列車は俺達が占拠した!!」

 

 銃火器を装備した強盗団が別の車両から荒々しく入って来た。

「帽子を被ってる奴は頭を出せ! 赤髪の奴は立て!」

「…妙な要求だな。」

 彼らが侵入する前に殺気を察知していたロイはすぐに起きて冷静に分析する。

「赤髪って…、あっ。」

 いた。赤髪。アルフォンスはクサナカの赤みが強い頭髪を見た。

 マズいっとアルフォンスとロイが思った時には、乗客の少なさもあってすぐに強盗がクサナカの頭の色に気づいて目を丸くして銃口を向けたまま駆け寄ってきた。

「コイツ…。おい! なあ、コイツじゃないか!?」

 銃の引き金に指を掛けたままクサナカをジッと見て、それから他の強盗仲間達に大声で呼びかける。

 呼ばれた強盗仲間達が慌ただしく近寄ってきてクサナカを見て彼が目的の人物だと確信したような反応をした。

 そしてクサナカに席を立つよう銃口を向けて脅してきた。

 目的が分からない。しかも乗客が少ないとはいえ一般人達が恐怖で固まっている中で下手に抵抗すれば被害が出るのは間違いない。

 そんな中でエドワードは熟睡しっぱなしだし、狙われているクサナカはクサナカでマイペースに冷静で、自分に向けられている銃口も悪意にも表情を変えない。

「……分かった。」

 クサナカは表情こそ変えないが自分が下手な抵抗をすれば他に危険が及ぶと理解しているらしく抵抗せずに両手をあげて立とうとした。

 その直後。列車が急ブレーキ。

 突然の大きな揺れによって立っていた者達は全員バランスを崩し、倒れそうになるクサナカを支えようと咄嗟に手を出したアルフォンスと強盗のひとりがいたがその強盗も遅れてきた次の大きな揺れでバランスを崩したためそのまま寝ているエドワードの身体の上に座るように倒れることになった。

 ぐぇっ、とエドワードが潰れた苦しい声をあげて目を覚ました。

「ぐぅ…、な、なん…?」

「おい、なにが起こったんだ!?」

「列車が急ブレーキをかけたんだ! 先頭車両でなにかあったのかも!?」

「はあ!? せっかく目的の奴を見つけたってのにこれじゃあ…。」

「ど…どけよ! 重てぇ!!」

「どわぁ!?」

 エドワードが耐えかねて強盗を蹴っ飛ばした。

「あっ、おい? だいじょうぶか?」

「いてて…! なにしやがるんだ! って、なんだ、ただのチビガキじゃねぇか!?」

「誰が鼻くそ豆粒チビだーーー!?」

「ぎゃーーーーー!?」

「そこまで言ってねぇーーーーーー!!」

 寝起きにチビと言われて瞬間沸騰したエドワードが強盗達に襲いかかりボコボコにした。銃火器? なにそれ美味しいの? というぐらい楽々と大柄な男達を体術で倒すエドワード。そんなエドワードの暴れっぷりをクサナカはポカンとして見ていた。

「あちゃー。」

「死なない程度なら好きに暴れてくれて構わんから存分にやりたまえ。」

「…いいのか?」

「いつものことだ。鋼のは身長のことが一番のコンプレックスなのさ。ああなっては止められん。」

『可愛いじゃないか。』

「なんで列車が止まったんだろう?」

「運転手が意図的に止めたのか…、それとも別のトラブルか…。脱線ではなさそうだが…。」

「はあ? なんで列車止まってるんだ? それよりコイツらなに?」

「君がぐーこら寝こけている間に色々あったのだ。まったく…。」

「強盗かと思ったけどなんか違うっぽい。」

「なにが?」

「この人達、クサナカさんを狙ってた。」

「はあ!? どーいうことだ、それ!?」

「それを聞き出す必要がある。手伝ってくれ。」

「わかっ…、って、この人ら…。」

「まあ一応偉い立場の身だ。これぐらい普通だろう?」

 ロイが手早くエドワードとアルフォンスに協力を求めていると同じ車両に乗っていた客達が集まってきた。その落ち着きようは普通の一般人でないことがすぐ見て取れる違和感があり、ロイの言葉で彼らがロイがによって予め用意されていた覆面の護衛であったことが明らかになった。

「外の様子、見てきます?」

「あっ、ハボック少尉。」

 見た目ガラが良く無さそうな格好で変装していたハボックが首に巻いていたマフラーを外しながらやってきた。ロイの部下である彼も護衛として同乗していたのだ。

 手持ちの拳銃を手にロイの指示を受け、他の変装護衛の一部と共に列車の外へ向かうハボック。

「さて…。」

 エドワードが錬成した縄で縛り上げた強盗達を叩き起こしてから尋問。彼らの目的を聞き出すことと彼らの仲間の人数を調べる必要があったからだ。

「それだけ?」

「は、はい! 俺らは赤髪と赤目の男がいたら捕まえてこいってしか!」

 エドワードにボコボコにされたのがよっぽど堪えたのかあっさり自供した。彼らはテロリストではなく目先の美味しい話に釣られて悪行に走ったチンピラ程度であったらしい。武器の提供も指示をした相手のことも詳しくないようだ。

「少なくともこの列車にクサナカ君が乗ることを把握している輩の差し金だな。内部犯……、とは考えたくないが…。まったく…。」

 ロイは心底面倒くさそうに肩をすくめた。

 クサナカの名前と顔を知らなくても赤い髪と赤い目という特徴がある男という情報だけでも該当する人間を捕獲しようとする輩達がすでに湧いて出ていること。ブラッドレイが急死した原因がすでに知れ渡っているということなのか、それともまだその最中で早くに情報を掴んだ輩が我先にと動いたのか。

 もし後者ならクサナカの心臓にあると思われる賢者の石を狙ったということにもなる。この理由なら賢者の石から得られる無限の富の夢が実現するから学がない者が計画性が低い犯罪を犯してでも手に入れたがるだろう。

「確かに計画性皆無だけど…。」

「単なる捨て石という可能性もなくはない。中央に着く前に移動手段を潰せばその後の移動手段は限られるのだからな。」

「大佐達が乗ってるってことも漏れてるって可能性は?」

「身内の犯行だとは考えたくは無いのだが…、頭の痛い話だ。」

 頭痛を感じたロイが面倒くさそうにこめかみを指で揉んだ。

 

 カシャッ

 パシャッパシャッ

 

「あっ?」

 すぐそこでカメラのシャッター音が聞こえた。

 慌ててそちらを見ると列車の車両の窓の隙間からカメラのレンズを向けている黒づくめの人間の手が見えた。手とカメラしか見えない理由は窓の下から腕を伸ばして撮っているからだ。ちゃんとレンズを合わせて撮れているのかは分からないがレンズの向きからして写している被写体は……。

 前後でロイやエドワードとアルフォンスに前後で挟まれるような形で窓から見える位置にいるクサナカ。しかも音に気づいてクサナカが顔と身体をそちらに向けているので……。ソレに気づいたロイとエドワード達が即動いた。

「逃がすか!」

「ハボック!」

 エドワードが手を合せて列車の一部を錬成して外への穴を作り、ロイが錬金術用の手袋を手にはめながら外に出ているハボックを呼んだ。

 外にいた人間は列車が錬成されたことで隔たりが一瞬で無くなったことに驚いていたが、すぐに手にしていたカメラを中空へ投げた。

 すると大きな鳥が飛んで来てカメラを足で掴んで逃げていった。普通の鳥ではなかった。翼の大きさもさることながら足の形状や下から見えた胴体部分にも普通の鳥にはない部分が見受けられ、キメラ(合成獣)を知る人間ならすぐにあの鳥が何者かが寄越したキメラだと分かった。

 列車の外に出ていたハボックと護衛数名がキメラを撃ち落とすべく銃撃を行うがキメラは高度を上げながら器用に銃弾を避けやがて銃弾が届かない場所まで飛び去ってしまった。ロイも鳥に向かって炎の錬金術を放ったが高熱にも耐性がある設計になっているのか爆炎の勢いを逆利用して空へ上昇するのを早めるだけだった。

 その間に取り押さえられたカメラマンの人間は黒い覆面を剥ぎ取られていて顔の半分近くが大砲のような攻撃が原因と思われる惨い怪我の痕がありその傷青のせいで強く引きつっているが勝ち誇ったようにニヤニヤと笑っていた。列車の走行中に現れた素人強盗団と違い、こちらは元兵隊だったことが伺える訓練された人間特有のプライドと冷静さと潔さに加えてこれしか道がないと覚悟を決めた狂気が加わっていて多少の拷問では口を割らなさそうだ。

 クサナカを写したカメラをそのまま持って行かれてしまったと悔しい空気が立ちこめる中、スイ~ッとあのキメラが飛び去っていた方の空から黒い何かが飛んで来た。

「あれは!」

 エドワードとアルフォンスは見覚えがあるヤギの頭蓋骨を持つデーモンだった。黒いマントのようなモヤから覗いている骨のようなガリガリの黒い手に首を皮一枚程度しか残さず切り裂かれた状態で絶命したあの鳥型のキメラが握られていた。そのキメラの死体の足にカメラが引っかかっていた。デーモンのもう片手には農作業用と思われるゴツい大バサミが握られていた。刃に血がべっとりである。

「ん。」

 クサナカがヤギの頭蓋骨のデーモンを出迎えキメラの足からカメラを取った。

『外に待機させておいて正解じゃったな。』

 列車で出発する前にすぐに使えるデーモンを何体か用意していたらしい。クサナカを写したフィルムが入っているカメラを持って飛び去っていったキメラをすぐに追跡して仕留めたということは空を移動させてクサナカを追いかける形にしていたということ。

 さっきまでニヤニヤと勝ち誇っていた元兵隊らしき男はキメラが仕留められた上にキメラに預けたカメラを奪われ、キメラを仕留めた悪魔を彷彿させるデーモンの登場に顔を真っ青にして恐怖に震えていた。

「うぇ…、血塗れハサミ持ってると余計にホラー…。」

「農作業用の大バサミですよね…。」

『いかにもって感じでいいじゃろう?』

「クサナカさんから聞いた、怖いって念をため込むためのイメージ?」

『それもあるが見た目麗しかったり可愛らしかったりしたらかっこ悪いじゃろう?』

「爺さんが作るデーモンは多腕や目玉だらけなのが多かった気がする。」

「趣味わりぃな!」

『骨の頭のデーモンはクサナカのお気に入りじゃて。よく作っておるじゃろ。』

「悪趣味孫!」

「爺さんは人形デーモンばっかだった。フェティッシュもそのひとつで作り方は知ってるが、面倒……。」

『作り方は教えたじゃろーが。』

「趣味は人それぞれ。ある物使った方が楽。」

「ただ単にめんどーなだけかよ!?」

「フェティッシュって、あの時見た炎を纏ってる黒い人形でしたっけ?」

「…………武装した軍を結構蹴散らしてましたよね…?」

 アルフォンスは死霊の町に迫ったブラッドレイが率いる軍隊が大砲をはじめとしたゴツい武装をしていたのに、炎を纏わせた車輪のような武器と炎を装備したフェティッシュ数体によって結構蹴散らされて後退するぐらいに追い詰めていたのを思い出していた。車輪を盾にして大砲を防いでいたのも見ている。

『上級デーモンの戦闘型人形じゃ。低級デーモンでもそれなりに戦える仕様じゃよ。』

「つまりデーモン用の着ぐるみってこと?」

『まあそういう感じじゃな。アレ、わしの自信作。』

 ソウゲンが自信たっぷりに腕組みして胸を張る。

「このカメラはどーしたらいい?」

「ああ、こちらで預かる。あとキメラの死体もあとで分析するために残しておくから。」

 思考を切り替えたクサナカがロイに尋ね、ロイがカメラを受け取った。それから護衛の人間に命じ、列車の積み荷から保存に使えそうな入れ物を持ってこさせて中を空にしてからキメラの死体を詰めた。列車が急停止したことはすぐに他の駅に伝わって救援に来た列車の運行関係者や列車を乗っ取った強盗団捕縛のために東部に所属する制圧部隊が駆けつけ一般人の乗客と運転手達を保護してもらい強盗団を全員捕縛、更にクサナカの写真を撮った別勢力の人間をキメラの死体と共に渡した。キメラの死体を保存する冷やしたり防腐剤もなかったため腐る前に解剖に回せそうだとロイは内心安堵した。

「デーモンを使えば腐るのを遅らせることはできた。」

「それは早く言って欲しかったな…。」

 ロイの心を読み取ったようなタイミングでクサナカがそう呟いたため、ロイはそう言ってクサナカを見た。ロイは若干恨めしげな顔をしている。

 すると少し離れた場所から悲鳴と絶叫が聞こえた。慌ててそちらを見ると大型の犬が3匹ほどいて武装している護衛の人間達と睨み合っていた。護衛の人間達は警戒心剥き出しで銃口を犬に向けている。犬の方は歯を剥き出しにして唸っていていつ飛びかかっても不思議じゃ無いほど殺気立っていった。犬達はそのモサモサの毛並みが酷く汚れていて乾いた土や泥、細かい木くずのようなゴミが絡まっていた。

「忘れてた。」

「クサナカさん?」

 クサナカが思い出したように呟くと手で犬達を手招きする。殺気立っていた犬達は護衛の人間達を無視して横を通り過ぎて素早くクサナカの前に整列した。

 するとエドワードとロイ、そしてハボックとハボックの傍にいた護衛の人間達が顔を歪めた。

「くっっっっっっっ、さっ!!」

 エドワードが思わず鼻を摘まんで仰け反って後ろに下がるほどの悪臭が犬達からしたのだ。アルフォンスは肉体が無いため嗅覚を含めた全ての五感が無く臭いは分からないがエドワード達の反応で異常をすぐに理解した。

 鼻を摘まんで後ずさるエドワード達を気にせず臭いなどどこ吹く風とばかりのクサナカは一番大きい黒い犬の頭を撫でる。

「クサナカ君…、この犬は…もしや?」

「死霊の町で墓守をさせてた番犬。」

 そういえばクサナカが住んでいた家の裏手は墓地になっていてエドワードとアルフォンスに不用意に近づくなと警告していた。つまりこの悪臭まみれの犬達が墓守をしていたため危険だという意味での警告だったのだ。

「…なんでここに?」

『町ごと墓場も無くなったからのう。どうせなら使えるモンは使い潰すまで使った方がいいじゃろう?』

「犬のデーモン…ですか。」

 単純にまだ使えるから処分するのが勿体ないというだけで死霊の町から持って来たと聞いたアルフォンスがデーモン犬を改めて観察した。

 一見すると汚れが酷い犬だが周りが鼻を摘まんで顔を歪めて距離を取るほどの悪臭がして、生き物に不可欠の呼吸をしている時の特有の身体の動きが見られない。目もよく見ると濁っていて明るい時間帯だというのに瞳孔が開ききっている。悪臭が酷いということは死体なのだろう。

 3匹とも犬種は違うが戦闘に向いた犬種であることは大きな身体と大きな口から覗く牙で十分すぎるほど分かる。クサナカが撫でている黒い犬はリーダー役なのかもしれない。墓守のデーモン犬の中では。

「もったいないのは分かったけど、この臭いだけでもなんとかならねーの? うう゛ぇ…。あきらか腐ってるだろ!」

「臭いもインパクトを与える要素。」

「インパクト与えすぎ! う、ぉうっ、ぷっ…!」

「兄さん! しっかりして!」

 クサナカの言葉に思わずツッコミを入れると同時にいっぱい息を悪臭と一緒に吸ってしまい吐きそうになるエドワードをアルフォンスが介抱する。

「それで? わざわざこのデーモンを呼び寄せたのは、何かやる気なのかい?」

「さっきの鳥の飼い主を探すのに適役かと思った。」

「なるほど…。しかし…。」

『優秀じゃぞ。このデーモンは。完全に破壊されない限り地の果てまで追いかける。それに立派な守護者(ガーディアン)としても優秀じゃ。』

 ソウゲンによると死霊の町の墓場の守りだけにとどまらず、町に侵入した不届き者を排除するのにも一役買っていたらしい。クサナカが長い年月を同じ場所で潜伏生活を送れたのはこの優秀なデーモン犬のおかげという部分もありそうだ。

 それはつまり……、外部に情報を持ち帰ろうとした全員が噛み殺されたという意味でもあるのだが…。

 それを理解したロイが口元をヒクつかせた。だが証拠も無く、そして過ぎたことなので追求はできない。行方不明者なんて年間何人いるか分からないのだから。

「どう?」

「…………利用しても?」

「どうぞ。」

「大佐…、マジで?」

「使える物は全部使う。それは私も賛同できるからね。そうだ、クサナカ君、この犬達以外にもデーモンを用意できるのかい?」

「作ればできる。」

「そうか。では、少し相談がある…。」

 そう言ってロイはクサナカの肩を掴んでエドワードとアルフォンスから離れてからコソコソ話をした。

 話が終わると戻って来てデーモン犬達の頭部にクサナカが手で触れて僅かに紫電の光が弾けた。それからクサナカはあちこちに待機させていた他のデーモンを呼び寄せデーモン犬と同様に頭部分に手で触れて紫電を弾けさせた。それが終わるとどこから出したのか黄金の髑髏を手にして左手に乗せると、頭蓋骨の頭部を右手でカスタネットでも鳴らすみたいに上顎と下顎の骨をカチカチとさせて何かのリズムを作る。

 それらの奇妙なクサナカの動きをいぶかしげにエドワード達が見ていると、ジッと動かないでいたデーモン達が突然ビクンッと跳ね上がるように動いて強い紫電を撒き散らした。

「こんなもんかな。」

『十分じゃな。』

「…なに……した?」

「ん? デーモンを少しいじった…? だけ?」

「なんで疑問形!?」

「……なんとなくでやったから説明のしようがない。」

「あー…。」

 死霊魔術が基本的に感覚だけで行使していることを思い出してエドワードは頭を押さえた。

 そうこうしていると紫電の勢いは小さくなった。

「必要ならもっと数を増やすが?」

「あまり不気味ホラーな騒ぎが広がるのはな…。できるだけ隠密に…。」

『それならだいじょうぶじゃて。犬達は特にのう。』

 デーモン犬は臭いは酷いが暗殺向きらしい。そりゃこれだけ臭ければ死体のフリして獲物が近づいたところを……できるだろう。それに犬の死体を使っているので嗅覚や聴覚も優れているのかもしれない。

「これ以上無いなら、行かせる。」

「頼む。」

「……行け。」

 ロイに確認を取ってからクサナカはデーモン達を出発させた。犬達は陸地を疾風のように走り、動物の頭蓋骨を使っている宙に浮いているタイプのデーモンは空へ舞い上がって飛んでいった。

「それから…。」

「ああ、頼むよ。」

「大佐…、何させようとしてんだよ?」

「ここからは子供にはキツイ大人の話になるから君らは待ってなさい。」

「ガキ扱いすんな!」

「まーまー、兄さん。」

 子供扱いされて憤慨するエドワードを抑えるアルフォンス。そんな二人を残してロイはクサナカを連れてどこかへ行った。

 予定が狂ったことに少しイライラしているエドワードの横でアルフォンスが立っていると、そう遠くないところからだろうか男の悲鳴が聞こえたような気がした。エドワードもそれに気づいたらしくアルフォンスと顔を見合わせた。

 その後でクサナカがハボックを含めた護衛達に守られた状態で戻ってきたが何をやってきたのかは教えてくれなかった。ただハボックが遠くを見てタバコを何本も吸いまくっていて足りなくなったらクサナカが持っていたタバコを分けてもらったはいいが市販品ではないオリジナルブレンド自作タバコに思いっきりむせて涙目になってる姿が見られたのだった。

 あとから戻って来たロイになんとなくエドワードがクサナカに何をやらせたのか聞こうとしたらロイは質問に答えず遠くを見てなが~~~~~いため息を吐いた。

 そして質問に答えず代わりに。

「…生きている人間が一番怖いというのは………『死人に口なし』が一般常識だから出る言葉でしかない…………。」

 そう呟いていたのだった。

 それを聞いてエドワードとアルフォンスは察した。

 ロイはクサナカにあの元兵隊と思われる男の尋問…いや拷問を手伝わせたのだろう。死霊魔術という単語とその単語が意味する主な説明文を思い起こせば元兵隊が何をされて、何を体験したのか……、考えない方が吉なにかもしれない……。

 ふとクサナカの方を見ると口にくわえている火の付いたタバコの煙が外だというのに人っぽい形になっていてクサナカの近くに立っている。クサナカはその煙の人と聞こえない声でやり取りをしているように見えたのは気のせいだろうか?

 クサナカはタバコを口に咥えたまま時折頷くように首を動かしながら、表情が薄いがエドワード達には聞こえない声に耳を傾けて優しく目を細めているようだった。

 それから中央へ向かうため列車が使えないためやむを得ず車での移動となり列車に乗せていた荷物を車に移している途中でクサナカの姿がないことが分かり、慌てて探しに行くと東部にある収容施設に送られるために手錠を嵌められたままトラックに乗せられようとしていたあの元兵隊らしき男に新聞紙を折って作ったと思われる造花と愛らしい鳥を渡すクサナカを見つけた。それらを見て目を見開いている男の耳元にクサナカが何か囁くと男が渡された花と鳥を勢いで握りつぶしてしまいながら大きな傷のある顔が引きつるのも構わず感情が決壊したように顔をクシャクシャにしてその場に膝から崩れ落ちて大声を上げて泣き出した。

「あ…。」

 その時、ソレを見たのはアルフォンスだけだった。

 鎧に定着された魂のみの存在だからなのかは不明だ。

 壊れたように大声を上げて泣いている元兵隊らしき男を包むように労るように抱きしめている女性と3人の子供に見える白くぼんやりした物があった。

 男の状態に驚いていた周囲が我に返って男を無理矢理立たせてトラックに乗せる頃には女性と子供達の姿は無くなっていた。

「君も中々酷いことをするのだね。」

「………ただの苦い終わりより…、ほんのりでもスッキリ甘みのある終わりが良いと思った。それだけだ。」

 少なくともあの男は生来の欲深でもなく、欲を満たすために兵隊を辞した後に悪事に手を染めたわけではないのだから。

 ただ帰るところを失い、自分の身以外の大事な物全てを失ったことを知ってヤケクソになったところを悪事の甘い言葉を吹き込まれただけ。

 死ぬ前に脳の中で霞んで消えかけている家族の声と言葉と大切な思い出を思い出したかった、それを叶えただけだから。

 そう語るクサナカを見ていたソウゲンが微笑み、撫でるように彼の頭に手を置いた。デーモンであるソウゲンの手はクサナカの髪に触れられず、赤みの強い髪が透けてしまっていた。

 

 

 




クサナカの体内にあると思われる賢者の石を確認するために中央へ向かおうとするが、列車強盗+別勢力襲撃。
でもどちらもどうやらクサナカを狙っているらしいことが判明。
強盗団は美味しい話に乗っただけのチンピラ素人集団。
写真を撮ってキメラでカメラを輸送しようとした男は元兵士。もしかしたらイシュヴァールや内乱で顔を損傷して退役したかも?

最後の方でクサナカが元兵士の亡き家族の声と思い出の再現を見せて泣かせてますが、それをする前にロイの依頼で死霊魔術を使って情報を吐き出させています。
なおあまりの恐怖体験のショックでその時の記憶は飛んでます。一応……。

犬デーモンは、映画『ペットセメタリー2』の屍犬を参考にしています。
とにかく腐った臭いしてますが、優秀なデーモン達です。
この先ちょこちょこ登場させようかと予定しています。

あとロイが同行したのは賢者の石のおこぼれ目当てと、錬金術師としての個人的な興味。研究の分野や違うけど死霊魔術師のクサナカに興味はあるし利用したいという下心あり。
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