なんか合間のイベントみたいな感じです。
モブの幽霊達を成仏させるためにクサナカが行動します。
アメストリスの食文化がイマイチ分からないので、和洋折衷色々とあるってことで勝手にしています。
最後の方でヘドロデーモンによる被害が地下を根城にしていた連中にも及んでいたということを書きました。
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
死霊魔術師が扱うデーモンは、基本的にこの世に残りやすいものを中心に添えて使う目的に合わせて必要なものを後から加えて使いやすく整えたものである。
それ以外のデーモンはこの世に強く残ってしまっている死者の様々な想いや美術品のような多くの注目を受けて念が溜まったものが形になったもの。
現死霊魔術師クサナカ、そして先代の死霊魔術師ソウゲンはそう学んで自分で磨いてきた死霊魔術という彼らの一族にのみ扱えた特殊な技術。
「手段を選ぶってことを優先して欲しいんだけどな!」
「はい…。」
ガスマスクを被っているヒューズに怒られて地面に正座させられているクサナカ。
ガスマスクの他にも防菌防毒のスーツを纏っているのだが、同じ姿の人間が今セントラルシティ中で忙しく動き回っている。その手に消毒液やそれと同じような薬を撒くための装備から伸びるシャワーのノズルを持っていた。
国の中心地なだけあり生活排水を浄化する設備は整備されているのだが、浄化させる前の物が無差別に表に溢れ出てしまったら話は別だ。マンホールから溢れ出た汚水と汚物のせいで下水設備が無かった中世時代ぐらい酷い有様になってしまった。
溢れ出てしまったそれらを片付けるために原因を作った張本人のクサナカが大型ヘドロデーモンを先に下水道に行かせてから他の場所に溢れた汚水と汚物にデーモンを宿らせて小型のヘドロデーモンにして下水道へ移動させてからデーモンを解除した。おかげで汚水と汚物は早急に片付けられたが……。
「染みついた臭いがな…。」
細かい隙間に入った汚水と汚物、そして布や紙などに染みついて乾いた分。ヘドロデーモンにできなかった物として臭いが強く残ってしまったのだった。
感染症の可能性を危惧されてそれらの防御用の装備と消毒のための薬品を撒くことになった。
『病魔はデーモンごと下水に移したんじゃがのう…。』
ソウゲンはそう語るが騒ぎが大きすぎるし、臭いが酷いし、水害や地震でもないのに下水が飛び出してきた異常現象によるショックとそこから発生するであろう病魔と臭いによる不安が一般人に蔓延してしまった。死霊魔術師自体が胡散臭いのもあるしなまじ家庭医学の知識も一般人にはあるのだから病魔が発生しなかったとしてもパフォーマンスとして消毒作業をしないとただでさえブラッドレイ没で大変な状況も相まって不安が爆発して大暴動になりかねないのだ。
「クサナカさーん、買ってきましたよー。」
「ありがとう。」
「ん? なんだ?」
ひととおり説教を終えたヒューズがアルフォンスの声を聴いてそちらを見た。
小走りで駆け寄ってきたアルフォンスは大きな買い物袋をクサナカに差し出した。
「思ったよりお店が開いてなくって…。」
「いや、十分だ。」
立ち上がったクサナカが買い物袋の中を確認した。
大ぶりのジャガイモとしなびかけの香草など、ブラッドレイ没によってセントラルシティが過疎化しつつあるのもあり商売をする人間と流通を行う人間さえセントラルシティから離れつつある証だろう。
「調理器具は…。」
「あ、それは兄さんが。」
「おいおい。お前らこれ以上何をする気だ?」
「えっと…。」
「お節介だ。」
「はあ?」
『言葉が足りんぞ、クサナカ。』
これ以上騒ぎを作る気かとクサナカを睨むヒューズに誤解を生む言葉を発するクサナカを窘めるソウゲン。
「どーいうことです?」
『まあ…、百聞は一見にしかずじゃ。』
「見れば分かる。」
胡散臭そうにジトッと見てくるヒューズにクサナカは淡々とそう言った。
アルフォンスに買い物袋を運んで貰い、ヒューズも連れてエドワードのいるところへ向かう。
「クサナカさん、これでいいか?」
「ああ、ありがとう。」
そこに用意されていたのはキャンプ場にありそうな簡易調理場だった。
真新しく、おそらくエドワードが錬金術で調理器具も含めてすべて錬成したのだろう。
「それで? なにを作ってあげるのかな?」
「あ、ロイ…、……それ…。」
片膝を地面について首をこちらに向けてきたロイの声を聴き、ヒューズがそちらを見るとヒューズは目を見開いた。
ロイの傍には白っぽいふわっとした何かがいた。
大きさは10歳以下の子供ぐらいだろうか、熊のぬいぐるみみたいに手足はあるが衣服らしきものは身につけていない。顔のパーツとして目と口らしき部分が雪に指や棒きれで穴を空けたみたいにある。鼻は見当たらない。
そんな白い人型が2人、ロイの前に、広い空き地の方を見れば動き回る同じような白い人型達がいた。
あるもの達は鬼ごっこをするように走り回っていたり、ボールを投げ合って遊んでいた。
それらの仕草から彼らが幼い子供であるということがなんとなく感じ取れた。
「イモの皮剥いて…、んで? こっからは?」
「すりおろしてくれ。すりおろしたのにデンプンを混ぜる。」
「全部擦っていいんですか?」
「半分は茹でるから残してくれ。」
「鍋が沸いたぞ。」
「さすが焔の専門家。」
「火力の調整なら任せてくれ。」
「雨の日は使えねーだろが。」
「うぐっ!」
「そうなのか?」
「そーなんですよ。大佐の錬金術は水分に弱いんですよ。」
『なるほど。しかし状況次第では大惨事にもなるのう。』
「小麦粉工場とかな。」
「粉塵爆発。」
『錬金術は派手で破壊力はあるし、容姿にも恵まれておるのに微妙なところで残念じゃな。残念なハンサム……、略して残サムじゃな。』
「ざん…さむ! ブフッ!」
「私は残念ではない!」
「ハンサムは認めるんですね…。」
「無能なのも魅力。」
「魅力ってか、マイナスポイントだろ。」
「マイナスも見方を変えれば魅力。小さいことも。」
「誰がちっさい豆だ!!」
「なにが小さいとは言っていないが? ナニが小さいと思った?」
「な、ナニって…!?」
「エドワードは…、色々とまだ発展途上だが、たぶん年齢相応なはず。平均以下は悪じゃない。」
『そうじゃなー。平均はあくまで見える範囲を集計してのものじゃ。必ずしも平均通りにはならん。』
「フッ…くくく、確かに小さいことはマイナスではないな。良かったではないか、鋼の~?」
「だーーーーーーーーーー!!」
「えっ? どういうこと? 何の話してるの?」
「おーい、お前ら、イモが柔らかくなってんぞ。」
「あっ、忘れてた。」
茹でていたイモが柔らかくなるまで時間を持て余していた時にコントみたいなことをギャーギャーやってる間にイモが柔らかくなったのをヒューズが伝えた。
茹で上がったイモをザルにあげ、水気を切ってからデンプンを加え、よく混ぜ合わせてこねる。
熱した大きなフライパンにバターを溶かし、茹でイモ生地にあればチーズを中心にして丸めて平たくした物を焼く。両面がこんがりしたらできあがり。
次に大鍋にスープの素を溶かし大きいスプーンですくったすりおろしイモの生地を鍋の汁に落として煮ていく。イモに火が通ったら味見をして薄いようなら塩を追加。器に盛ってあれば砕いた干しパセリを振って出来上がり。
「イモ団子スープとイモ餅(チーズ入り)。」
「足ります?」
『十分じゃよ。』
「あーあー、話の腰折ってすまんけど、コレどういう状況? 詳しくプリーズ。」
「ああ、すまんかった。実は…。」
状況が分からないヒューズにロイが説明を買って出て、その間に器に盛ったスープと皿に載せたイモ餅を白い人型達に配っていくクサナカ達。白い人型達は両手でそれを受け取っている。しかも列を作って順番待ち。
ロイが説明した内容はこうだ。
この白い人型達は、下水道や路地裏などにしか生きる場所が無かった身寄りの無いストリートチルドレン達の幽霊で、生まれた時からの非常に辛い生活の果てに幼い内に命を落としているのだという。
下水道に落ちたクサナカがヘドロデーモンを発生させた際に発見し、下水と汚物と一緒に地上に押し出して白い人型のような姿で一時的に存在できるようにしたのだ。
簡単にまとめるとクサナカが哀れな子供達の魂を放っておけず、成仏させるためにエドワード達に協力を求めたのだ。不幸な死を遂げた子供の救済と聞いて断る理由はないとしてエドワード達は快く請け負った。ロイは白い子供達の中にいた女の子達に懐かれて相手をしていたそうだ。ヒューズが見た2人の白い子供が女の子でロイの容姿にときめいていたらしい。
成仏に必要なのものとして用意したのがイモ団子スープとイモ餅なわけだが、今回は材料が限られたためほぼジャガイモオンリー料理になってしまったのだ。
ソウゲン曰く、スープだけでもいいらしい。少ない材料で大人数に行き渡るし温まるから。
「みんな席に着いたかー?」
社員食堂にありそうな長い机と椅子に白い人型…もとい子供の幽霊達が受け取った料理を前に座っていてクサナカの声かけに『ハーイ!』と返事をして、中には元気に手を上げたりしていた。ちなみに机と椅子もエドワードとアルフォンスが錬金術で作った。
「じゃあ、みんな仲良く『いただきます』。」
クサナカが両手を合せてそう声を掛けると、子供達も習って『いただきます!』と元気よく叫び手を合せてからフォークとスプーンを手にして料理にがっつきだす。
クマのぬいぐるみのそれっぽく見えた手はフォークとスプーンを握るために柔らかく変形してしっかりフォークやスプーンを握りしめることができている。だが教養のない幼い子供であるせいか握り方と使い方のマナーが悪い。だが一生懸命食べる姿に食器の使い方のマナーを口うるさくなんてできない。
雪に指などを突っ込んでできたような口だった部位は口として大きく開いてスープの汁と具、あるいはイモ餅を囓り取って咀嚼している。
イモ餅にはチーズを入れていたので囓ると中からとろけたチーズが伸びるのでそれに驚いた子供の幽霊が嬉しそうに笑ったり加熱したチーズすら知らない様子で首を傾げていたり、伸びるチーズで遊ぼうとしてクサナカに窘められたりとそれぞれの子供達の個性が表れていた。
器から直接スープを飲み、スープから得られた熱さ、温かさに目らしき部位からポロリッと水滴を零す子供もいた。その自分の現象に困惑している子供にはクサナカが頭を優しく撫でて、『ゆっくり味わうと良い。誰も取らないから』と言葉をかけ、子供はコクコクと頷いてゆっくりと料理を味わった。
料理を振る舞ってから食事が終わりに差し掛かる頃、白い姿の子供達の周囲にチラチラと小さな光のような物が散らばるように現れ、子供達の姿が少しずつ薄れてきているように見えた。
そうなってきて子供達はそれぞれ眠たそうに目を擦ったり、あくびをし始める。
「お腹いっぱいになったか?」
クサナカが優しい声色で子供達に聞くと、眠気が強まる中で子供達が頷く。
「……じゃあ、食後のお昼寝だ。ゆっくり…、おやすみ。」
クサナカが取り出した黄金の髑髏がカチリッと歯を鳴らした。
僅かな紫電と共に星の輝きのような光の粒が弾け、ウトウトと眠っていく子供達の周りを包み込むように渦巻き、そして子供達の白い姿がその光に溶けるように薄れて消えていった。
光の粒の渦は空へ向けて細くなりながら上昇していき、やがて空中に溶けるように飛散して消えた。
クサナカは片手に黄金の髑髏を抱えたまま光の粒を見送るように手を振った。
「……成仏できたのか?」
「逝けた。」
エドワードが光が昇っていった空を見上げながらクサナカに聞くと、クサナカは手短にそう返事をした。
「いやはや…、君と出会ってから科学を全力否定するような出来事ばかりだな。ところで、あの子達が行く場所というのは…俗に天国なのかい?」
「生きている者が好きに呼べば良い場所。終わりと、始まりが行って出てくる場所…かな?」
「つまり輪廻転生ってやつか?」
ヒューズが聞くとクサナカは腕組みして考えてから答えた。
「始まりがないと、終わりもない。終わりがないと、始まりすら分からない。」
『卵が先か。鶏が先か。じゃな。』
「うお…、急に哲学…!」
「でも永遠のテーマ…!」
急なクサナカとソウゲンの的を得ているような言葉に恐れおののくようなリアクションをするエドワードとアルフォンス。
「…なあ、あの子達って、もし転生するとして…、どれくらいかかる?」
「さあ? いつ戻ってこられるかは……、何になるかも分からないしな…。」
「……そうか。」
『まー、お宅の家の子になる可能性もあるぞ?』
ソウゲンの空気読まない言葉にしんみりしていたヒューズがものすごい勢いで吹いた。
『最近忙しすぎて家に帰れとらんらしいのう? 帰って久しぶりに家族孝行と奥方との切磋琢磨で可能性がグッと…。』
「それ確実なんすか!? 預言ですかぁぁぁ!?」
『あるいは娘さんの将来の…。』
「ゾレハナイ!!」
「ヒューズ落ち着け。血涙流して引き留めて娘を独身縛りさせる気か?」
愛娘の将来の結婚についての話題になると血涙流して表情がえらいっこちゃになったヒューズの肩をロイが叩く。
「ダッッッデ! ダッデェェェェ!!」
『親馬鹿は辛いの~。』
「爺さんも娘いるだろ。俺の母さん。」
『うちはうち。余所は余所じゃよ。』
「放任主義だったのかよ。」
「縛りがなさ過ぎるってのも…どーなんだろ?」
まだ家庭を持つことを考えられない子供のエルリック兄弟には分からない世界である。しかしロイはまだ独身だ。
***
一方その頃。
「だいじょーぶ?」
「……………んどくせぇ…、臭ぇ…。」
ヘドロの塊から脱出した筋肉ゴリゴリの男が地面に這いつくばりながら面倒くさそうにぼやく。
男の前には鼻をタオルで塞いだウロボロスの印を持つ妖艶な女。
『うぐ、あああああ! もう臭いーーー! くっさいーーーー! 死霊魔術師なんてことしてくれんだよーーー!?』
地下に開かれた地下道のような穴の中に男の子の叫び声が木霊する。
黒い影のような物がその叫び声と共にのたうっていた。
長く続く地下道には、一面の地面にヘドロの水たまりが出来ていて、壁、天井、あちこちにこれでもかと飛び散っていた。あとそれらと一緒にヘドロに交ざる形でキメラの死体の一部が散乱もしていた。
それらの原因はクサナカが下水道に戻した大型ヘドロデーモンだった。
あのデーモンは下水道に配置されていた無数のキメラ達を飲み込み、死に至らせて腐らせ、ヘドロデーモンの大きさを更に大きくさせて下水道では収らないからと別の広いスペースへ移動したのだが、そこがこの地下道だったわけで……。
穴を掘って地下道を広げていた筋肉大男を巻き込んで地下道に悪臭ヘドロを広げまくってからヘドロデーモンは自壊したのであった。自壊したのは予めクサナカが与えた命令によるもの。
下手に不死身だったので筋肉大男は溶かされずに生き残ったが、地下道に満ちあふれた悪臭に黒い影のような物が臭いと騒いだ。無数の目玉から涙もボロボロと出ている。臭いが目に染みているのだ。
ちなみに悪臭とヘドロの一部は、地下道どころか『お父様』と呼ばれる男のいた場所まで達しており、秘密基地を汚染されて彼らを地味に苦しめたことを誰も知らない。
子供の幽霊を一時的に実体化させた白い姿は、真っ白なフワフワで、一見すると物を持つことができなさそうだけど持とうと思えば持てるし、物を食べようと思えば食べれる意外と変幻自在。
食事を与えたのは、お供え物をする習慣とかをイメージしています。
食事後に眠くなったのはこの世に残る縛りが緩んで旅立てそうな状態になったから。
子供達はこの世に怨みがあるわけじゃなく、訳も分からず辛いばかりの環境で命を落として死後の世界への生き方も分からずその場で迷子になっていただけという感じです。時間経過で消える可能性もありますが、どれくらいかかるか不明なので見つけたクサナカが助け船を出して死後の世界へ逝くのを早めました。
最後の方はあの大型ヘドロデーモンの存在が地味に地下に根城を構えていた連中が被害を受けているというのを思いつきで書きました。
別にクサナカは狙って行かせたわけじゃないです。完全にとばっちりです。