っというわけで、死霊魔術について学ぶことにした、エドワードとアルフォンス。
いつまでに容疑者や、国家錬金術師ルトホルトの情報を持ち帰るか言われてないため、それをついたのだ。
「でも、ま。下手に賢者の石の情報が漏れて、なんか起こる前に、大佐のところにぼかして連絡だけはしとくか。」
「けど、この町って電気通ってなさそうだよ?」
「伝書鳩ならある。」
「か~、面倒くせぇけど、紙貸してもらえます?」
「いくらでも。」
「あと、宿はどうする? クサナカさん、この町って宿ってありますか?」
「ない。……イヤじゃなけりゃ、家で泊まっていけ。たいしたもてなしははできないが…。」
「すみませんね。何から何まで…。」
「この町は…、死霊の町って言われるほど、何もない町だ。旅人に施しをするぐらい、別に俺はイヤじゃない。」
「死霊の町…。そういえば、町の出入り口でお婆さんを見たっきり、他に人の気配がないですね?」
「畑仕事とかにでも出てたんだろ。町の少しはずれが共同の農地になってるって話だ。」
「町の人とコミュニケーションはないんですか?」
ロイ・マスタング大佐宛の手紙を書いているエドワードの傍ら、アルフォンスがクサナカに聞いた。
「好き好んで、死霊魔術なんてものに関わろうとする人間はいない。」
「…身内の方は? ずっとおひとりで?」
「10年ほど前まで爺さんがいた。死霊魔術師だった。」
「お爺さんも?」
「爺さんの話だと…、祖父母から、間を置いて、孫にしか死霊魔術の力は継承されないらしい。俺が、この町に来た頃には、とうに、俺の両親は死んでた。元々、うちの一族は、1箇所にとどまらず、根無し草で生きてたらしいが、理由は分からないが、爺さんはチビの頃の俺を連れて、この町に住み着くことにしたらしい。」
「…それは…、ちょっと不思議ですね。」
「以来、ずっとこの町で死霊魔術師として生きている。食料は、町の人間から分けて貰っていてな。ご馳走は期待するなよ。」
「あ、お構いなく。兄さんの分だけ用意してもらえれば…。」
「鳩はどこだ?」
「こっちだ。」
クサナカは、手紙を書き終えたエドワードを、伝書鳩のある場所へ案内した。
その途中。
「死霊魔術が、祖父母代から、孫にしか継承されないってどういうこった?」
「言葉のままだ。なぜだか知らんが、俺は、爺さんの孫だったから死霊魔術師になった。それだけだ。」
「間の子供には?」
「力は無い。」
「あんたは、死霊魔術師になりたかったの?」
「……生まれつきのものだからな。それ以外に生き方を知らない。」
「………そっか。」
伝書鳩に手紙をくくりつけながら、エドワードは、そう言ったのだった。
その夜。
クサナカは、2階の客室に二人を案内し、夕食が出来たら呼んだ。
固めのパンと、やたら野菜がゴロゴロ入ったシチューだけの夕食。
「育ち盛りにゃ足りないか?」
「いや、十分だよ。」
電気が通ってないため、火を付けたランプだけの、少し暗いリビングで夕食を取っていると、エドワードが口を開いた。
「死霊魔術ってのは、どうやってデーモンの材料になるモノを?」
「そうだな……。これは、爺さんから教わった例え話だが…。例えるなら…、この世界が淡水の池だとして。」
クサナカが、自分のシチューの器をテーブルの真ん中に移動させた。
「俺や、爺さん…、そして代々の死霊魔術師は、海から、池に。」
クサナカがスプーンで、同じテーブルに置いてあるシチューの鍋を示した。
「水を持ってくることだってさ。」
「海から池~~?」
「でも、どうして淡水の池って例えが?」
胡散臭そうにするエドワードとは反対に、アルフォンスが挙手して聞いた。
「パラレルワールド…。」
「はあ?」
「あり得るかも知れない世界。この世界が等価交換というあらゆるものに制限があり、その制限の中で、うまく生態系という流れが出来ているとしたら…。逆に制限がなく、無限のエネルギーから出来ている世界があっても不思議じゃない。」
「無限のエネルギーの世界? それが海?」
「そういうことだ。」
「待ってくれよ。」
エドワードが待ったをかけた。
「その世界があるって証拠や立証は?」
「ない。けれど、存在することは確かだ。」
「その根拠は?」
「感覚で…、それを感じているって言ったら、お前達錬金術師にとっては、科学的じゃないだろうな。」
「うわ…、ざっくりだな…。」
「でも、兄さん。もしそれが事実なら、等価交換を無視して錬成ができる理由も分かるんじゃないかな?」
「だとしたら、納得がいかん。」
「っというと?」
「…なんでそんなすげぇ技術が、出回ってないんだ?」
「池と海の違いだろうな。」
「それは…。淡水か、海水かの違いですか?」
「あくまで、俺の持論と、爺さんから聞いた話だ。よーく考えてみろ、淡水の池に、塩分を大量に含んだ海水が大量に入り込むとどうなる?」
「……水質が変わって池の生態系が壊れる?」
「簡単な話…そういうことだ。」
「えっ? ってことは、死霊魔術って…。」
「あらゆる場所で多用しすぎれば、いずれ世界を濁らせ…、滅ぼす原因になるだろうな。」
「そ……!」
エドワードとアルフォンスは、ギョッとした。
「だからこそ…、流行らなかったんだろうな。それか…、別の理由か…。」
「別の理由?」
「たぶん、世の中に出回っている死霊魔術とかいったもんは、ほとんどが贋物だろうな。もしくは、フィクションの世界の創作物か。お前達も、実際に目にするまで信じていなかっただろう?」
「ああ…。」
「……遠い太古の時代。血塗られた儀式をもって神の力や、不死の力を手に入れようとした文明も存在した。血や心臓は、神への最高の供物で、それを捧げれば何かが得られると信じられていた時代だ。なぜそんな儀式をやりまくった? その当時から、すでに等価交換による錬金術の走りがあったのかもな? けど…、普通の人間じゃ、ダメだった。」
「……まさか…。」
「何かしら特別な力を持った人間の方が、普通の人間より生け贄としての価値が高かった。もしかしたら、俺達の一族はもっとたくさんいたんだが…、そういう理由で、狩られて、数を減らして、いまや俺だけが生き残りになったって可能性もある。……そういえば、賢者の石ってのは、赤いって共通点を除けば形は曖昧らしいな。」
「ああ…、赤きティンクトゥラ、大エリクシル、哲学者の石、天上の石……、まあ上げてたらキリが無いな。完全物質だと言われているが実物を見た人間がいないからさ。」
「それなんだが……、あくまで俺の憶測だ。」
「なに?」
「なんで赤って共通点がある? もしかしたら、血や心臓を捧げていた時代…、俺達のような異端者の血と心臓に価値があったから、後の世に賢者の石が赤いが、形がハッキリしないモノとして伝わったって可能性はあるんじゃないか?」
「…じゃあなにか? まさかあんたの心臓の中に賢者の石があるって話か?」
「……。」
すると、クサナカは、食べる手を止めて黙った。
「……まさか…?」
「仮の話だ。もし俺の心臓の中に賢者の石があると分かったら……、抉るか?」
「んな! そんなことするかよ!」
「いくら僕らが元の体を取り戻したいからって、人殺しなんて…。」
「必要なら…、死んでもいい。」
クサナカは、そう無表情で言った。
その言葉に、エドワードとアルフォンスは、絶句したが、次に飛び出した言葉に、驚愕することになる。
「真理の扉なんぞ、開けちまった若すぎるお前らの方が幸せに生きるべきだろう?」
あくまでここでの語りは、筆者の勝手な妄想です。
余所からエネルギーを持ってくるというのは、ダンジョン飯のキャラ、マルシルも研究していますね。たしか。