仮題名『死霊魔術師と、錬金術師』   作:蜜柑ブタ

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死霊魔術師、錬金術をしてみるが……?


SS5  死霊魔術師、錬金術をしてみる

「水35リットル。炭素20キロ。アンモニア4リットル。石灰1.5キロ。リン800グラム。塩分250グラム。硝石100グラム。イオウ80グラム。フッ素7.5グラム。鉄5グラム。ケイ素3グラム。その他少量の15元素。」

 

 翌日の朝。早朝に目覚めたエドワードとアルフォンスが、クサナカのその声を聞いて、店(家の出入り口の所)の方に向かった。

 

 家具が散乱するように置かれていた場所が綺麗に片づけられ、その中央で、クサナカがブツブツと何か呟きながら床に錬成陣を書いていた。

「なにやってんだ?」

「ちょっと…な。」

「さっきの…、人間の大人一人分の成分表ですよね?」

「ここに来た錬金術師から聞いたことだが。人間ってのは、案外安く出来てるんだな。」

 先ほどクサナカが呟いていた人間の素材は、すべて市場では、子供小遣いでも買えるほど安価で手に入る物ばかりだ。

「…実はさ。昨晩考えたよ。」

「なんだ?」

 急に言ってきたエドワードの方をクサナカが見た。

「あんたが使う死霊魔術ってのは、目に見えない情報に、目に見えないエネルギーを与える錬金術の一種。ってな。」

「…そうか。」

「だけど、ひとつだけ分からないのは…、そのエネルギーをこの世界じゃなく、余所の世界からどうやって持って来てるかだ。それさえ分かれば、等価交換の法則を無視しての錬金術が可能になる。…あらゆるな。」

「それは、遠い過去の俺の先祖がずっとやってきたことだ。そのやり方の詳細は、口伝も書物もない。だから、俺が見ていること、感じていることを伝えようもない。いったいどうやって先祖がその方法を見つけたかも…、爺さんは知らなかった。」

「相当な歴史があるってことっすか。」

「けど、それを伝えもなく感覚だけでやるってことは…、遺伝的な素質が関係しているのかな? 祖父母から、孫にしか死霊魔術が伝わらないんですよね?」

「そこも謎ではあるけどな。隔世遺伝でしか伝わらないってのも。」

「……まあ、そんなことを語っていても謎は解けんだろうな。」

「ところで、何しようとしてたんだ? それ、錬成陣だろ?」

「ちょっと思い立ってた。」

 クサナカは、そう言いながら、大袋に入った石を錬成陣の上に出した。

「例えば、コレで女の石像を作るとして…。お前達が作ればどんな感じになる?」

「それするなら、錬成陣は…。」

 アルフォンスが錬成陣を書き直す。

「じゃあ、いっきまーす。」

 そう言ってアルフォンスが構え、錬成陣に稲妻のような変成反応が起こった。

 そして、石が分解、再構築され、翼ある女神像が出来た。

「こんな感じかな。」

「今まで来た錬金術師達で一番綺麗だな。」

「えへへ。ありがとうございます。」

「んじゃ、次、俺だな。」

 そしてエドワードがパンッと両手を合せて腕の輪を作り、アルフォンスが作った石像を分解、再構築する。

 やたらゴテゴテした、戦乙女になった。

「兄さん…、相変わらずの趣味だね…。」

「いいじゃねーかよ、カッコいいだろ?」

 そんな二人を後目に、クサナカは、顎に手を当てて何か考え込んでいた。

「なるほど…。やり方は分かった。」

「えっ?」

「こう…か?」

 スッと錬成陣に触れたクサナカ。その瞬間、バチンッと大きな紫電と煙が上がった。

「うわ!」

 思わず腕で顔を庇い、煙が晴れてから見ると…。

 そこには、5倍ぐらいに巨大化した女の顔の石像があった。

「んな!?」

 エドワードとアルフォンスは、驚愕した。

「……これで成功か?」

「いやいやいやいやいや!」

「なにしたんですか!?」

「なにって、錬成? 見よう見まねだが。」

「明らかに素材の質量が超えてるって! まさか…。」

「失敗か成功か…、どっちだ?」

「せ、成功だけど……、これはあり得ないよ!」

「中身がスカスカってわけじゃなく、ぎっちりそのままで、約5倍って…。」

 エドワードとアルフォンスが、クサナカが錬成した石像を調べてますます困惑していた。

「クサナカさん! あんたまさか、余所からエネルギーを持って来て…?」

「いや、それはしてない。」

「はあ!?」

 それを聞いてますます二人は困惑した。

 クサナカは、余所の世界からエネルギーを持ってこれるのなら、錬成の際の上乗せして5倍増しにしたのなら、筋が通るが、それをしていないとクサナカは言った。

 そして、二人の脳裏にある可能性が浮かんだ。

「いや…そんな……まさか…。」

「俺の体、調べるか?」

「脱がんでいい!」

 服を脱ごうとするクサナカを、全力で止めた。

「クサナカさん…、今まで錬金術をしたことがないんですよね?」

「ああ。今回が初めてだ。」

「兄さん…。」

 どうする?っとアルフォンスが、エドワードを見る。

 エドワードは、少し考え…。

「クサナカさん。」

「ん?」

「身体…、調べさせて貰って良いですか?」

「いいぞ。好きにしろ。」

「…とは言ったものの、どっかで医療器具が必要だな。この村にあります?」

「ああ…、ちっこいが一応…。で? どうするんだ? 解剖か?」

「いきなり何言い出すんすか!? んなわけねーだろ! 血液検査!」

「けつえき~?」

「あんたが言ってただろ? その昔、血や心臓は、神への最高の供物で、それを捧げれば何かが得られると信じられていた時代があったって。俺は、そういった眉唾モンな儀式なんざ信用しないが、それが賢者の石の由来になったのなら、血中に5割増しの原因があるって考えるぜ。」

「血、イコール、賢者の石と?」

「……まあ、まずは確認だな。」

 

 その後クサナカの案内で、村で唯一の病院に。

 しわしわの老人が営む病院で、クサナカが事情を説明すると二つ返事で器具を貸してくれることになった。

 

 エドワードは、まず注射器でクサナカから血液を採取し、限られた医療器具で調べる。もちろんアルフォンスも調べる。

 

「至って、普通の血液だな…。」

「そうだね。」

 むしろ常人より健康的に見える血液だった。ヘビースモーカーにも関わらず。

「だとしたら…、あとは…。」

「血液を循環し…、循環した血液が帰るところ…。」

 

 心臓。

 

 しかし、この病院の設備では、臓器の精密検査はできそうにない。

 下手に触って何かあっても対応できないため、安全を考慮した二人は、クサナカに…。

 

「錬金術研究機関下の研究施設に行くって、できる?」

「っというと…、町から出ろってことか。」

「近場って言っても、列車でちょいと出ないといけないけど…。」

「俺は……、爺さんにこの町に連れてこられてから、1回も町からでてなくてな…。」

「えっ、そうなんですか?」

「なんか、出る気が起きなくてな。」

 妙に引っかかることをクサナカが呟いたため、二人は顔を見合わせた。

「それで? 旅支度か?」

「まあ、一応。どれくらいかかるか分からないからな。」

「分かった。」

「いいんですか?」

「いい…とは?」

「今までずっと町から出なかったんですよね? …なにか事情が……。」

「別にない。理由は分からん。」

 腕組みしたクサナカは、ただそう言った。

 エドワードとアルフォンスは、なにか腑に落ちない感じはあったが、賢者の石の可能性を優先することにした。

 

 その後、クサナカの家でクサナカが旅支度をして、準備が終わると、相変わらず人気の無い町から出発しようとして……。

 

「ちょっと待て。」

「なんすか?」

「俺は、国家錬金術師の殺害容疑者なんだろ? そこら辺はどうなる?」

「あっ…。」

 

 忘れてたと、二人は声を揃えた。

 

 なので一旦引き返し、鳩にロイ宛の手紙をくくりつけてから今度こそ出発した。

 

 

 

 




死霊の町か出てしまったクサナカ……。


彼に待つ運命とは…、そして関わったエルリック兄弟は……。
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