仮題名『死霊魔術師と、錬金術師』   作:蜜柑ブタ

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申し訳ありませんが……、彼(彼女?)の登場は、一瞬だけです。


あっという間に退場です…!



注意!!


SS6  死霊魔術師、“嫉妬”と接触する

 

 かなり長い道のりを歩き、やっと寂れた駅のある小さな町に到着。

 クサナカは、荷物を背負った状態でキョロキョロと周りを見回した。

「あんまし目立ったことしないでくれよ?」

「分かってるが…、あの町以外の町に来たのは…物心ついてからなくてな。」

「そんな小さい頃から?」

 

 

「列車は、なんか途中で事故があったとかで三日後だってな。」

「困るぜ…。この町は、列車で食ってるようなもんなのになぁ。」

 

 

 駅に行く途中、そんな会話をしている男達がいた。

「おっちゃーん。列車来ないの?」

「ん? ああ、なんでも事故があったって話でな。」

「あれ、そっちの鎧の奴と…、ちっこいの…。」

「誰がちっこい豆粒だ!」

「そこまで言ってねぇーー!」

「なんだ? どうしたんだ?」

「兄さん…、身長のこと気にしてまして…。」

「なるほど。」

 ちっこいと言われて憤慨しているエドワードの様子に、クサナカがアルフォンスに理由を聞いたのだった。

「あんたら、死霊の町からよく無事に帰ってきたな~。」

「別になんもなかったぜ。…人気がなさ過ぎて不気味ではあったけど。」

「そっちのえらい男前のお連れさんは?」

「ああ…、この人は…。」

「死霊の…。むぐっ。」

「あ、途中で知り合って同じ所に行くから一緒に行くことになったんです。」

「へ~、そうかい。」

 クサナカが死霊の町の人間だと言いかけたので、アルフォンスが口を手で塞ぎ、別のことを言った。

 クサナカの口を塞いだまま、エドワードとアルフォンスは、その場から離れた。

「ダメですよ、クサナカさん。」

「…なんでだ?」

「ここに来る途中でここで死霊の町のことを聞いたんですけど…、あそこのことを不気味がって誰も喋ってくれなくって…。」

「運良く駅員が地図書いてくれたから来れたんだ。だから、死霊の町から来たってことは言わない方がいい。」

「…分かった。」

「あと、死霊魔術師だってこともな。」

「じゃあ、なんて言えば?」

「旅の占い師とか…? まあ、俺らの連れってことにするから、あんまし目立つことしないでくれよ?」

「分かった。ところで、列車が来ないって聞いたが、どうするんだ?」

「列車が来るまで宿で泊まるしかないだろ?」

「あれば…いいけどね。」

 ここは、列車が途中で燃料や水の補給で止まる程度のためにあるような場所だ。

 そのため、観光施設はおろか、宿も…微妙なところだ。

 

「ねえ、お兄ちゃん達。宿探してんの?」

 

 そこに女の子がやってきた。

「宿、あんのか?」

「あるよ! うち、民宿もやってのるの。」

「3人分、いけるか?」

「もちろん! じゃあ、お客様、ごあんな~い!」

 女の子はノリノリで、三人を民宿に案内した。

 そして、女の子の両親が自宅兼で経営している民宿に、列車が来るまで泊まることが決まったのだった。

 

 ところが、翌日事態は急変することになる。

 

 

 妙に外が騒がしいので、朝食中に外に出てみると、アメストリス軍人達がいた。

 その中に…。

「大佐!」

「なんだ、鋼のか。こんなところにいたのか。なら、話は早いな。」

 国家錬金術師ルトホルトの行方を捜してこいと二人に頼んだ、ロイ・マスタングその人がいたのだ。

「なんであんたがここに?」

「あんな手紙を寄越しておいてよく言うね。」

「早急の用事じゃないだろ?」

「まあそうだが…、どうにも上がうるさくてな。返信が間に合わないから、こうして直々に来てやったのだよ。ところで…、そっちのは…?」

 ロイがクサナカを見た。

「クサナカ…です。」

「…鋼の? もしや…。」

「……あーもう…。詳しいことは場所を変えて話すから…。」

「ふむ。早く終わりそうだな。」

「?」

「クサナカさん。この人が、僕らに国家錬金術師のルトホルトって人の行方を捜してこいって依頼してきた人ですよ。」

「なるほど…。」

「ロイ・マスタング。地位は大佐だ。」

 そして、三人は半ば連行されるような形で軍の仮設テントに連れて行かれた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「……なるほど、では、君は教えただけだと?」

「忠告はした。だが、聞かなかった。だから、…死んだ。」

 仮設テント内で、ロイによる尋問が行われ、その後、死霊の町に埋葬されているルトホルトの遺体が運ばれてきて、司法解剖も行われた。

 結論から言えば、クサナカによる殺人ではないことはハッキリとした。

 また、ルトホルト自身が身分や出身なども隠して死霊魔術を学ぼうとしていたため、死亡後、途方に暮れたクサナカが簡易で埋葬し、身内が来るのを待っていたことも。ルトホルトが最後に記していた途切れた日記と事情聴取の内容と照らし合わされて事実が確認された。

 それから、半日ぐらいだろうか。

 やがてテントから出てきたロイに、エドワードとアルフォンスが、詰め寄った。

「クサナカさんはどうなる?」

「そう心配するな。……結論から言わせて貰えば、まったくとは言いがたいが、一応は無罪だ。」

「よかったぁ。」

 それを聞いて、エドワードとアルフォンスは、ホッとした。

「ルトホルトは、生体錬金術…、とりわけ魂の研究について専攻していたから、死霊魔術に興味を持ったのだろうことは、日記から分かった。だが、死霊魔術というのは、どうにも科学的じゃないな。飛躍しすぎていて証拠にも出来ん。」

「俺らだって、この目で見るまで信じなかったぜ?」

「ほう? どのようなものだったんだい?」

「僕らも全部理解できたわけじゃありませんよ。」

 二人はざっくりと説明。

 ロイは、微妙な顔をしていた。錬金術の分野違えど、彼もまた国家錬金術師なのだが、クサナカが感覚だけでやっているという死霊魔術はどうにも信じられなかったのだ。

「……国家錬金術師は…、人間兵器だったか?」

 そこにテントから、クサナカが顔を出してそんなことを言った。

「…何か…見えるのかい?」

「……たくさん。」

「…自覚はしているつもりだ。自分の罪深さはな。」

「死霊魔術に手を出すなよ? お前の背後にいるデーモンの数は…、ルトホルト以上だ。」

「……言われなくても手を出したりしない。」

 クサナカの言葉に、ロイは、フッと苦笑して答えたのだった。

「んじゃ、用も済んだなら、俺ら宿に帰るから。」

「まあ、待ちたまえ。」

「なんだよ?」

「この町は、死霊の町と、そこにいる死霊魔術師についてずいぶんと恐れているようだが?」

「まさか…。」

「我々が来たときには、クサナカくんが死霊魔術師だということがバレていたようだよ。あの赤みのある髪と目は、死霊魔術師の特徴だと、ご老体達が…。」

「げっ、マジかよ…。」

「町に戻るのは得策ではないだろう。クサナカ、君も良ければ我々が鋼の達と一緒に研究施設まで連れて行っても構わないが、どうかな?」

「えっ、送ってくれんの? ゲー…、尻が痛くなる…。」

「車を手配するから待っていたまえ。」

 文句を言うエドワードを無視して、ロイは、余所へ行った。

「すんません。トイレ…。」

「あちらです。」

 近くにいる軍人にトイレの場所を聞き、クサナカがその場から離れた。

 

 用を済ませたクサナカが戻る途中……。

 

 

「死霊魔術師って…、アンタのこと?」

 

「?」

 急に後ろからポンッと肩を叩かれ、思わず振り向いて、相手と目が合った瞬間だった。

 バアン!っと、そこにいた軍人の胸の中心が破裂し、髪が長い中性的な美しい青年のようなまったく別人の姿に早変わりしたかと思ったら、胸を押えながら、相手は声にならない声を上げて倒れながら崩れていき、大量のデーモンを吐き出しながら、消滅した。

 プスプスと煙だけが地面に残り、やがて煙が消えた。

 

「クサナカさん!」

 

 そこにエドワード達が走ってきた。

「なんか、今…空に向かって…。」

「……分からない…。」

「えっ?」

「見たら……、消えた…。デーモンの塊…?」

「なにが…?」

「分からない…。」

 クサナカは、ぼう然とそう答えるしかなかった。

 

 

 




名前すら出ずに、ホムンクルス1名退場……です。


クサナカは、何もしてません。やったとしたら、相手を“見た”だけです。

実は人間を素材にした賢者の石は、このネタでは、死霊魔術師と相性が……です。


エンヴィーファンの皆様! 本当に申し訳ありません!!

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