仮題名『死霊魔術師と、錬金術師』   作:蜜柑ブタ

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とりあえず、書ける内に書く!
これですね。


クサナカにピンチが迫る。


SS8  死霊魔術師に迫る危機

 

 

 あれからどうなったかというと、謎の襲撃者のせいで引き返すことになり、三日後に修理が終わった列車で錬金術研究機関の研究所に行くことになった。

「分かっていたものの……、ここまで露骨かよ。」

 列車のおかげで保たれている小さな町に、死霊魔術師クサナカのことはすでに知られており、エドワード達がクサナカを連れて戻って来たと知った途端、町にいた人間達は一斉に建物内に逃げ込む有様だった。

「それほどに、死霊魔術師というのは、恐れられているのだろうな。クサナカ君、君は何かしたのかね?」

 小さな町中をロイとともに歩いていて、ロイがそう聞いてきた。

「別に…なにも。」

「人間というのは、目に見えない得体の知れない物を恐れる傾向がある。この町のような閉鎖的な場所だと、余計にその恐怖も強いのかもしれんな。」

「死霊の町の話題を出しだけで、ビビって誰も教えてくれなかったからな。駅員が辛うじて教えてくれたけどさ。」

「しかし、この状態では、いくら軍の名を出しても無意味そうだ。残っていた仮設テントで簡易の宿泊地をこしらえるしかないだろう。」

「……すみません。」

「いや、君はなにもしていないのなら、君の責任じゃないさ。」

 自分のせいで宿を借りることもできないことになってしまったため、クサナカが頭下げるとロイが手で制した。

「それに、三日後には列車も通る。それまでの辛抱だ。」

「……二人には、もっと悪いことした。宿代が…。」

「ああ、別にいいよ。気にしないでくれ。」

「そうですよ。」

 エドワードとアルフォンスにも謝るクサナカ。二人は、気にするなと言ったのだった。

 その後は、死霊魔術師を恐れる町の中にいても意味が無いので、軍の簡易宿泊地に移動。

 ロイが連れてきていた軍医に、クサナカの心臓を見て貰ったりもした。

「ふーむ。特に問題はありませんよ?」

「異物があるとかってのは?」

「異物があれば、心臓の機能に問題が出ますよ。ひとかけらの血液の塊でも心臓機能が止まる重大な障害になります。」

「うーん…。」

 賢者の石がクサナカの心臓内部にある可能性は、これだけでは分かりそうになかった。やはり、しっかりとした研究所設備での検査が必要そうである。

「しかし…、信じがたいな。5割増しの錬金術とは…。」

「俺らだっていまだに信じられないっつーの。」

「でも、事実なんですよ? 実際にやっちゃったんですよ?」

「ふむ…、分野は違うが、実に興味深い。そのデーモンというのものだが、今ココですることは可能かい?」

「触媒になる物があれば……。例えば、人形でもいい。泥人形でも……。」

「触媒が必要なのかい?」

「単純に、デーモンに簡易の肉体を与える必要性があるだけだ。その方が存在を確認しやすいだろう。」

「ああ、気を遣わせてしまってすまないな。」

 そこでクサナカは、すぐそこにあった泥を練って、小さな人型を作り、持って来た。

 そして、低級デーモンを宿らせる。

 バチッと紫電が放たれ、その反応を見たロイは、目を見開いた。

「これは…錬成反応か。」

「やっぱそうだよな?」

「僕らも最初は錬金術?って思いましたけど、でも錬金術に必要な手順を抜きにしてるんですよ?」

「確かに…!」

「出来た。」

 折りたたみテーブルの上に倒れた状態で置かれていた泥人形がむくりと起き上がった。その間にも小さくパチパチと紫電が放出されていた。

「驚いた……! これがデーモンか。」

「俺らが最初に見せてもらったのは、ヤギの頭蓋骨を使ったデーモンだったけど、これ人型の泥人形だけどさ、やっぱ人型に意味が?」

「人型の方がイメージしやすいだけだ。四本足でも、何本でもいいし、足抜きでもいいが、動くというイメージを定着させるには、やはり動作のイメージ繋がる部位が必要だ。」

「そもそも、デーモンのランク…というか、級の違いはなんだね? ここに今作られたのが低級だとして、中級や上級もいると?」

「強さの違い…、あと、持たせた知恵の高さや、与えた魂の質量にもよる…かな? あと触媒にした物で増幅も可能だ。」

「例えば?」

「例えば、人形だ。戦いに向くよう、作れば……、より攻撃的な魂を宿らせるには最適だ。戦闘向きに作った人形が、家にあるんだが……、見せられればよかったな。」

「あるのかよ。」

「『フェティッシュ』。爺さんがそう言ってた。あと……。」

「他にも?」

「血だな…。」

「えっ?」

「血塗れの頭蓋骨とかは、死という絶対的な終わりへの恐怖の念を集めやすいから、デーモンの攻撃性とあらゆる能力が飛躍的に上がる。」

「じゃ、じゃあ、もし僕らに見せてくれたあのデーモンが、血塗れのヤギの頭蓋骨だったら?」

「速攻でハサミでも持って襲ってきただろう。まあ、攻撃するなという命令を与えていれば問題は無いが……。」

「ふむ…、デーモンとは名前の響き通り、相当危険であるようだな。」

「うっかりすれば、逆にとり殺される。デーモンは、強ければ強いほど危険だ。」

「死霊魔術師でも、それは例外ではないと?」

「けど、爺さんがヤバかった場面は見たことがなかったな…。」

「万が一だが、デーモンに襲われた場合は?」

「触媒を物理的に破壊するか……、それでもデーモンが四散しない場合は。」

 クサナカは、ゴソゴソと鞄から黄金の頭蓋骨を出した。

「こう。」

 掌の上に乗せた状態で、テーブルの上にいる泥人形の低級デーモンに頭蓋骨を向ける。

 ほんの1、2秒ほどの時間を置いて、一瞬、バアン!と泥人形から紫電が放出され、泥人形から小さな霊魂のような物が浮かび上がり、宙で消えた。

 場がシーンっと静まりかえる。

「……今…なにを?」

 ピクリとも動かなくなり、紫電も消えた泥人形を見つめながらロイがクサナカに聞いた。

「いや、デーモンを四散させただけだが?」

「どうやって?」

「こう……、パンッて? ボオンって?」

「大佐、説明求めても無駄だって、クサナカさん、こういうのを感覚だけでやってるみたいだから。」

「その…、金色の頭蓋骨は?」

「うちの一族に代々伝わる、黄金の頭蓋骨。詳細は知らん。爺さんが死ぬ前に教えてくれなかった。」

 クサナカは、お手上げだとばかりに肩をすくめて見せた。

 ロイは、頭痛を覚えたのか額を手で押えた。

 そこへ、軍人がやってきて、ロイに緊急の連絡があると伝えたため、ロイは、あとで詳細説明をして貰うからなっと言い残してテントから出て行った。

 

 この町に唯一設置されている電話機は、駅にある。

 そこの電話機に出たロイは。

「………なんですって?」

 伝えられた内容に驚愕した。

「た、たたたたた、大変です!」

「なんだ?」

 大焦りの軍人が駆けつけてきた。

「あ、アレを!」

「なっ!?」

 空を指差した軍人の指の先を見て、ロイは、ギョッとした。

 

 そこには、黒いマントのような物を纏った赤黒い牛の頭蓋骨を持つデーモンが、くの字に腹から曲がってるクサナカを抱えて飛んでいく姿だった。

 

「…参ったな……。」

「マスタング大佐?」

「……大総統閣下からの直々の命が下った。」

「はっ?」

「大総統閣下が、これより隊を連れて、ここへ来る。それに合流し……、国家錬金術師ルトホルト殺害容疑者である、自称・死霊魔術師を生死に関わらず捕えろと。なお、それを邪魔した異分子はすべて排除せよと。」

「なっ…。」

 あまりに突然のことに部下である軍人はビックリ仰天した。

「まさか、危険を感じて逃亡? いや…、あの状態は気絶し……。」

「大佐!」

「鋼の。」

 走ってきたエドワードとアルフォンス。

「さっきクサナカさんが!」

「ああ、見ている。飛んで行った先は…、恐らく死霊の町か? 彼は逃げたのか?」

「ちげぇよ! いきなりあのデーモンが現れてクサナカさんを攫っていったんだよ!」

「追わないと…。」

「その必要は無い。」

「なんでだよ!」

「君達は、ここで待機していてもらう。大総統閣下の隊が着くまでな。」

「……はっ?」

 唖然としたエドワードとアルフォンスは、どういうことだとロイに聞いた。

 ロイは、僅かに眉間にしわを寄せ、クサナカを生死に関わらず捕えるよう命令が下ったことなどを伝えた。

 言葉を失う二人に、ロイは、はあ…とため息を吐く。

「なんでだよ……。生死に関わらずって……、殺してもいいってことじゃねぇか!」

「どうして!? 容疑は晴れたんじゃ…。」

「おそらくは、ルトホルト殺害容疑でというのは建前だ。」

「まさか……。」

「君らの想像と推理が正しければ……、そして検査の結果が実証されればの話だが、目的は、クサナカ君の心の臓だ。」

「……っざけんな。」

「鋼の…。」

「ふざけんなよ! あの人がそんなことで死んでいいわけがないだろうが! アル! 行くぞ、さっきのデーモンが飛んでった先が死霊の町なら…、まだ間に合うはずだ!」

「うん!」

「勝手は許さんぞ! 先ほども言ったが、邪魔をした者はすべて排除される! 例えお前が国家錬金術師でもだ!」

「それがどうした!」

「落ち着けと言っているんだ。ここで、元の身体に戻れず死ぬか、これより軍が回収予定の賢者の石のおこぼれを手に入れて元の身体に戻るか、よく考えろ。」

「だからって、見捨てたりなんかしねぇし、殺させない!」

「それは……、反逆の意思ありということか?」

 ロイが、錬金の印が入った手袋を嵌めた手を見せた。

「燃やすなら、燃やしてみろよ。」

 エドワードとアルフォンスが、臨戦態勢になる。

 しばし、膠着状態になったが……、やがて。

「行くなら…、急げ。」

 ロイが町の外を指差した。

「大佐……。」

「無駄かもしれんが、私が集めた無罪の証拠を提示し、止めるよう要請はしてみる。そこの君。」

「は、はい!」

 近くにいて、事の成り行きを見ていることしか出来ず固まっていた軍人がビシッと背筋を伸ばした。

「車で送ってやってくれるか? 死霊の町の手前でいい。二人降ろしたらすぐに引き返せ。」

「えっ…、あ、はい!」

「大佐…!」

「ありがとうございます!」

 そして、エドワードとアルフォンスは、手配された一台の軍用車に乗り、全速力で死霊の町へ向かったのだった。それを見送ったロイは、踵を返し、自分が連れて来ていた軍人達をまとめ、ブラッドレイ大総統の隊と合流する準備をした。

 

 

 




フェティッシュは、DMC1に登場した、人形型の悪魔。
頭蓋骨に黒マントのは、DMC1などに登場していたデスシリーズの悪魔ですね。(デスシザースとか、デスサイズとか)


どうやって死霊の町に引き返させるか悩んで、デスサイズ(雄牛の頭蓋骨のデーモン)に攫われる形にしました。

ブラッドレイ(ラース)直々に率いる隊による、クサナカの生死に関わらずの捕獲命令。
エドワードとアルフォンスは、反逆の意思を示し、クサナカを守るために急ぐ。
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