鈍感マグスと病んでるエルル~愛いっぱいの図書館らいふっ!~ 作:聖華
・独自設定、過去捏造
・キャラ崩壊
・ブロマンス~軽めのBL
・シロマンス~軽めのGL
・暴力表現(少な目)
俺、ジーン! 魔神ちゃんと一緒に世界を飛び回るのが趣味な、どこにでもいる顔の良い男だ!
といっても、放浪生活を送っていたのは今は昔。今は珍しく一箇所に留まって、闇の軍勢っていう厄介な敵と戦いながら酒を飲んだり遊んだりと気ままに暮らしてる。
気ままに、暮らしてたん、だけどなぁ……。
めんどくせぇ……。
第二話『クソ長トゥードゥーリストとすれ違い宇宙』
「やぁ、ジーン。今日も元気そうでなによりだよ」
「よぉ、マグス。俺はお前が垂れ流してるその紙がなんなのか気になって仕方ねぇな」
月が高く上った頃、図書館の廊下で二人はバッタリ鉢合わせていた。
ジーンは腕に巨大なランプを抱え、マグスはレッドカーペットが如く後ろに垂れる前垂れ、もとい、そのように見えるとてつもなく長くなった羊皮紙を持っていた。とてつもなく長い。長すぎて、羊皮紙の終わりが遥か遠くの本棚を曲がって見えなくなっている。
マグスは問いかけに対して、曰く。
「これかい? 見て分かるだろう。メモ書きだよ」
「メモ…………メモ?」
「メモ」
「メモ……」
『メモ』が鳴き声の生き物になりながらも、ジーンはマグスの手の中を覗き込んだ。
一度、まばたきした。二度目もあった。三度目で目を擦った。
「…………」
「…………」
二人揃って紙面を眺め沈黙、二人揃って顔を見合わせ再開。
「ちなみに聞くけど、これって」
「『エルルカンにとっての近所の頼れるおじさんになりたい大作戦 第一稿』」
「なんて?」
「『エルルカンにとっての――」
「いや、それは良い。もう繰り返すな」
頭が痛くなってくる字面に、ジーンは眉間を摘まみ天を仰いだ。天井の隅に誰かが離したらしき風船があった。改めて視線をもう一度紙面に戻した。やっぱりもう一度天を仰いでおいた。
羊皮紙に書かれていたのはチェックボックスと文章の羅列であった。『毎日軽い挨拶をしてみる』といった簡潔なものから、『他キャスト名義で子どもたちにお菓子の詰め合わせを差し入れすることにより対象の好み及び周囲との距離感、贈り物に対する反応を観測する』というやたらと具体的なものまである。ちなみにジーンは後者を見て3天仰ぎ、即ち3回に渡り天を仰いだ。風船は恐らく数日放置されているのか、そこそこにしぼんでいることが分かった。
「いろいろ言いたいことはあるんだが……えーっと……うわ、なんか俺んとこの言葉で書いてある文あるじゃんコレ」
「アラビア語の奴かい? 多分、セインに考えてもらった案だね」
「アイツも割と乗り気なんだな。意外っつーか」
「丸々数日かけて考えてくれたからね、ありがたいことだよ」
「セイン…………」
完全に『アイツは良い奴だったよ』の心境であった。どう考えても案が思い浮かばなさ過ぎてしんどくなっていた奴である。今度出てきた時には何杯か奢ってやろう。ついでに愚痴も聞こう。それが自分に出来る数少ない供養だ。
余談だが、今話題に上がったセインはマグス・クラウンの数ある顔の一つである。ようするに同一人物なのだが、人格としては完全に別人であった。急に自分の別側面から『子どもと仲良くなる為のプランを考えて欲しい』と言い出された彼の心情はいかなるものか、ジーンは思いを馳せずにはいられない。家出の相談をされたら割と真面目に協力しそうである。
「ともあれ、今日からはこのリストを熟していこうと思ってね。今計画を練っていたんだ」
「そうか」
「そうとも」
「ところで、お前が向かってた方角って」
「キミの部屋だよ」
「知ってた」
『早速コイツと飲みかぁ』と思いながらも、『まぁ、コイツの持ってくる酒美味いしなぁ』とポジティブシンキングに移るジーンであった。
再びの余談ではあるがこの時、
「『対象に対して自然なボディタッチを試みる』……ふぅん……」
本棚の陰の向こう側。リストの後ろの方を読み上げている影が居たのだが、大人二人は終ぞ気付かなかったのである。さて、全身黒尽くめの影は、されど月光に太腿をにわかに輝かせながら何を思うのか――。
*
今、談話室は大いに盛り上がっていた。
「ジーンさん、ほんとうにいいの!?」
「俺一人じゃあ、この量は食べきれねぇからな。みんなで仲良く分けるんだぞ」
人懐っこい近所の良い兄ちゃんスマイルを浮かべるジーン。その眼前、長方形に広い机の上には、様々なお菓子が詰められた箱が置かれている。クッキーやフィナンシェといったメジャーな焼き菓子から、水羊羹や杏仁豆腐まで揃っていた。
ジーンの前に居るのは七人の子どもキャストだ。リトル・アリスは最前列できらきら目を輝かせていて、その少し後ろからシャドウ・アリスが「お菓子は逃げたりしないにゃぁ」なんて宥める。リンは、「わたしは後で選ぶから……」と輪から抜けようとしたミクサの手を引いて、「ミクサさんはいつもそう! 偶には一番にえらぶべきなのですわ!」と意気揚々。ピーターは竹に入った水羊羹を手に「なんじゃこりゃ?」と首を傾げ、多々良が「それは日の本の菓子でな」と少し得意げに説明を始めた。ナイトメアはこの場に居ないようだが、「あっ、これナイトメアくん好きそう!」「あいつ黒いモン好きだからなぁ」なんて会話を聞くに、分配は問題なさそうだ。
さて。
「黒といえば、エルルカンくんも衣装真っ黒だよね。エルルカンくんも黒色、好き?」
リトル・アリスはくるりと振り向き、部屋の隅で佇む七人目、エルルカンに声を掛けた。この時エルルカンは子どもの集団から遠巻きに、数メートルほど距離を置いていたのである。
ジーンがこの作戦の代行を買って出た理由がこれだった。彼はマグス・クラウン以外への興味はからっきし、とならばテキトーな大人キャストでは『お兄さんじゃない人間から施しなんて受けない』なんて言いかねない。その点、ジーンは一応かつ辛うじてエルルカン公認のマグス・クラウンの友人だ。この肩書をもってすれば、この厄介な子どもも多少素直になるかもしれない。
ジーンは、昨日の夜の会話を思い浮かべる。
――「いいかい、エージェント・ジーン。キミに与えられたミッションはとてつもなく、そう、とてつもなく責任重大なものだ。しかし、キミならばきっとやり遂げてくれるだろう。何せキミは子ども人気が高いからね」
――「別に俺、アイツらを甘やかしてるつもりはねぇけど」
――「『自分たちと同じ目線に立ってくれる近所のお兄ちゃん』」
――「えっ?」
――「キミのポジションだよ、『自分たちと同じ目線に立ってくれる近所のお兄ちゃんことジーン』」
――「二つ名っぽく言うのやめてくれねぇかな?」
――「まぁようするに、子どもというものは子ども扱いされない方が喜ぶ時もあるということさ。自主性を全面的に肯定してくれる大人は、子どもの精神衛生にとって重要だ」
――「なるほどなあ」
頭が痛くなってきたので、この辺りで回想を中断した。ちなみに最後の台詞はジーン史上わりと最大級に棒読みだった。
軽く首を振って、現場に意識を戻す。
『最悪、直接好み聞くしかねぇかなぁ……橋渡しとかそーいうの、正直メンドクセェんだけど……』
「この中で音楽得意な奴いる?」
『橋渡し以前にメンドクセェことになってるわ……』
キャッチボール目的で投げられたボールが、バットでホームランされるのをたしかに見た。ジーンは天を仰ぎそうになるのをどうにか留める。これ以上自分の首に負荷をかける訳にはいかない。
リトル・アリスはかっきーんと場外に飛んでいったボールに、目をパチクリさせていた。
「えぇっと……エルルカンくん? 音楽? なんだか突然だね、びっくりしちゃった! あのね、それでね」
「黒が好きかどうかなら別に普通だよ。好きでも嫌いでもない。ほら、僕は質問に答えたんだから、さっさと僕の質問に答えてよ」
『やべぇ』
語彙力がやべぇが、これは事実やべぇ事態であった。お上品に言い直すとよろしくない。
案の定、リンが「ちょっと!」と声を上げた。
「そんな言い方はないのですわ! レディに対するマナーがなっていませんことよ!」
「悪かったよ。……謝ったから、僕の質問にも答えて欲しいんだけど?」
「まぁまぁ待てよ、エルルカン。俺はパンフルートとかやるし、リンもたしかピアノできるよな?」
ここですかさずピーターがフォロー。さすがサポーターである。
ピーター・ザ・キッドには空気が読める者と空気をねじ伏せる者が居るが、このピーターは前者だ。ちなみに子どもをその気にさせて「よーし、それじゃあネバーランドに来てくれるかな!」「いいとも~!」するのはどちらのピーターでも共通である。
リンはその言葉に得意げに胸を張った。
「ピアノはレディのたしなみですもの。とうぜんっ、ですわ!」
「だってよ。アリスとかも歌とか歌うのは好きだしさ」
「うん! よくね、自分で考えた歌をお散歩しながら歌うの!」
「ふぅん」
「ふぅんってお前……」
ピーターのナイスなパスを全力でコート外に蹴飛ばしていった。運動音痴の極みである。幾ら何でもあまりにゴーイングマイウェイが過ぎた、意図的なのか単に関心がなさ過ぎる弊害なのか。
ともあれ場の空気は穏やかなものから一転、ピリピリとひりつくような物へと変わりつつあった。少なくともリンは拗ねて「ミクサさん、あんなの放っておいて選んでしまいましょ!」なんてやっているし、ピーターも少しだけ困り顔である――彼は子どもに対しては沸点がすこぶる低い、これがアイアン・フックならば今頃よく座る椅子にワニのぬいぐるみを仕込まれている――他の子どもも、きょとんとしたりオロオロしたりあらあらと言った顔。エルルカンは完全に孤立ムードに入っていた。
ジーンはどうしようかと子どもたちを見回し、気付く。
『いや、コレは。ワザとやってたんだな、コイツ』
子どもたちの真横、談話室の扉が開いた。
「おっと失礼、先客が居たとは……しかし、なんだいこの空気? どうにも険悪って感じだけれど」
「あっ、マグスさん。こんにちはー!」
「こんにちは、小さなアリス。今日も元気だねぇ」
ブンブン手を振るアリスに、マグスは軽く手を振り返す。いかにも偶然通りがかりましたといった様子であるが、部屋を見回していたジーンには、マグスが扉を僅かに開けて中を覗いている姿が見えていた。耳が良い彼なら聞き耳を立てるだけで十分状況把握は出来ると思うのだが、状況が状況なので辛抱ならなかったのだろう。実際、扉の隙間からははわわわわオーラが出ていた。はわわわわ。
さて、いつも通りの妖しげな雰囲気を漂わせながら――よく数秒でキャラクターを変えられるものだとジーンは感心した――マグスはエルルカンに視線を向けた。
「おや。キミは随分とみんなから距離を置いているね? もっと机に近付いてはどうかな」
「僕に指図しないでくれる?」
「指図じゃなくて、ちょっとした親切だとも。みんなで仲良くが一番さ……ピーター、キミもそう思うだろう?」
「えっ? ああ、うん、そうだぜ! みんなで仲良くすると楽しいぜ!」
皆様ご存知のことだろうが、ピーターは大人が相手だと語彙力に著しいデバフがかかるのだ。
それに対して、「仲良く、仲良くねぇ」といかにも馬鹿にするような声。
「たしかに好感度を上げておけば、連れ去る時に楽だもんね?」
「さて、どういう意味かな」
「どうも何も、文字の通りさ。こっちの世界でも子ども漁りとは感服するよ、頭が下がる思いだ」
口角が片側だけ上がっていた。教科書の頭の方に乗っていそうなほど、分かりやすい皮肉である。
マグスは仮面の下で普段通り薄っすらと笑いながら、エルルカンに近付いた。歩く片手間、紫の方の腕が上がる。
「なんだい。ははぁ、さては図星を突かれてイラっと来たんだな。だからってここで僕に手を上げるなんて――」
ぽんぽんっ、と。
「随分物騒な想像をするんだねぇ、キミって奴は。ボクにとっては、子どもは笑顔で居るべき存在ってだけだよ。もちろん、キミも含めてね」
「っ」
「さっきの笑顔もなかなか良かったけど、お友だちにはもっと優しい笑い方をしてあげるんだよ」
通りすがりにナチュラルにエルルカンの頭を叩くと、マグスは来た時とは反対の扉から出て行った。
しんと静まり返る談話室。しばしの間の後、最初に口火を切ったのはアリスだ。
「……か、かっこいい~!」
当然であるが、小さい方のアリスである。隣ではリンがうんうんと頷いている。
「あれぞ大人の男性、という感じですわ! やっぱりレディに対しては、あのような立ち振る舞いを心がけて頂かないと」
「エルルカンくんは男の子だよ?」
「男の子にもやるということは、女の子にもやるということですわ」
「そうかな」
「そうですの」
どうにか空気は和気藹々に戻ったようである。ジーンは半分胸を撫で下ろし、けれども半分は憂鬱な思いであった。
エルルカンにああ言われた以上、マグスが「しょんぼり」することは免れないだろう。というか先程も直前まで扉を開けるのを忘れていて、あわば正面衝突しそうになっていたのをジーンは見逃さなかった。最悪扉の向こうで現在進行形で崩れ落ちているかもしれない。困る。
ともあれ、今は後処理だ。
「エルルカン、お前がアイツのことを気に食わないのは分かる。けど、言ってることは正しいし――」
大人らしく説教のまとめでも投げかけようとしたところで、ジーンは『あっ』となった。つまり、誰かを病的に好きな人間が、その相手にボディタッチされたらどうなるかということである。
「おーい、エルルカン?」
エルルカンの前で腕をふりふりとしているピーター。呼びかけられた子どもは、顔をフードの下に隠して完全に硬直してい――
ばったーんっ!
「エルルカン!? エルルカン、しっかりしろ!」
「待ってろ、今ヤシャオーを呼ぶぞ!」
「た、多々良ちゃん……ここにはヤシャオー、多分、入らない……」
「わぁ。なんだか大変なコトになっちゃったねぇ、アリス?」
勢いよく後ろに倒れたエルルカンを目に、ジーンは昨日から数えて通算八度目となる天仰ぎモーションをするのであった。この時ばかりはうっかり「こまったなぁ~」などと言いかけた。
*
「よっ、どうだ気分は」
目を開けたエルルカンに、ジーンは声を掛けた。大きなソファの上、端の肘置きにジーンが寄り掛かって、その隣にエルルカンが寝かされている形である。枕はクッションだ。マグスを差し置いて膝枕なんてした日には、もう何をされてもおかしくはない。危うきには近寄らずの精神である。そもそもジーンとしては綺麗なお姉さんに膝枕されたい。
「マグス」
「うん」
「マグスが僕の頭を撫でた」
「ああ」
「マグスが僕の頭をマグスが僕の頭をお兄さんがマグスが僕の僕の頭をマグスが僕を」
「落ち着け」
開口と同時に精神汚染を引き起こしかねない類の呪詛を吐かれ、さすがのジーンも結構な力でエルルカンの額を叩いた。「い゛っ」という声に僅かに良心が痛んだが、次には「お兄さんが撫でてくれたところに触ったら殺すから」なんて脅迫が飛んできたので大丈夫そうだ。大丈夫か?
ともあれ、多少は正気を取り戻しているようだと見て――撫でられた箇所に手を乗せて何やらブツブツ言っているのは認識しないことにした――ジーンは話を切り出した。
「お前さ、さっきわざと他のキャスト怒らせただろ。どうしてだ?」
「お前なら分かるはずだよ。マグス・クラウンのリスト、一緒に読んでたじゃないか」
ジーンはこの時、既にある種の『察し』がついていた。故に滅茶苦茶渋い顔をした。目潰しされかけて慌てて飛び退いた。
エルルカンは言う。比較的冷静な声で。
「別に、マグス・クラウンがどこの子どもを可愛がろうと、当人の勝手だ。そこにとやかく言うつもりはない。言う権利もない」
「はあ」
「ただマグス・クラウンっていうのは子どもに甘過ぎるんだ。そこも良いところなんだけど取り敢えず今は置いておいて、マグス・クラウンが気持ちよく子どもと過ごす為には良い子どもと出会うべきなんだよ。だから僕としては、早い段階で可愛がられる子どもに目星をつけて、その一人に対して教育をだね」
「いや、お前だけど」
「え?」
「今回アイツが気にしてたの、お前だけど」
「え? ……マジで?」
「マジで」
「マジで?」
「マジで」
このマジで合戦は十往復ほど続いた。ここでマグスの真意を隠しておくという選択肢もあったのだろうが、隠しておくことによるメリットがパッと浮かばなかったし、何よりエルルカンの突然の一人語りに凄まじいデジャブを覚えた。道化師という種族は何故こうも早口になりやす――
ばったーん!
エルルカンはぼふんっと湯気が出そうなほど顔を赤らめたと同時に、卒倒してソファにぶっ倒れた。結構な勢いで後ろに倒れた。ジーンは、思わず「マジかー」などと棒読みした。それしか言いようがなかった。
何故エルルカンは、ここまでマグスに矢印を向けまくっているのだろう? マグスの様子を見るに、彼らはそこまで面識がないはずなのだが。より一層謎は深まったが、ともあれひとまず倒れた子どもを担ぎ上げるた。さすがにこれ以上この場で介抱するのは面倒だ、医務室にでも運んでおこう。
と、そこに声がかかった。
「誰かと思えば盗賊ではないか。酒も飲まずに子どもの世話とは、珍しいことをしている」
「王サマか。丁度良い、俺の代わりにコイツ運んでってくれね?」
「断る」
「だよなぁ」
悠々とこちらを見下ろしているマリクに、ジーンはため息をついた。
ジーンのアナザーキャストである彼は、図書館の中を無意味に散歩するタイプではない。どちらかといえば無駄を省くことに尽力する類である。恐らく試合の行きか帰りかに、人が景気良く倒れる音を聞きつけてやってきたのだろう。
「それにしても」と、マリクは肩車されている子どもに目をやりながら言う。
「よもや盗賊の分際で道化師を雇い始めるとは思わなんだ。それも二人ともか」
「……なぁ、王サマ。もしかして」
「貴様の部屋の扉に、マグス・クラウンが額をこすりつけていたぞ。どんな命令を下した結果なのかは知らぬが、家臣の躾くらいはしてくれねば困る。目に毒だ」
マリクの前で通算二桁目となるジーン天仰ぎが披露された瞬間である。これに対して、マリクは「余の威光は確かに神にも匹敵するが、そう仰ぐ必要はない」というコメントを残したのだった。
*
「はぁ」
「なんだ、ため息なんざついて。テメェらしくもねぇ」
「……もしかして、心配してくれてんのか?」
「バカが珍しく考え事してんなぁ、って思っただけだ」
「バカって言ったヤツがバカなんだぜ、ナイトメア」
「へえ」
「相変わらずノリわりぃの。……実は全然仲良くなれねぇ子どもが居てさ。どうしようかなって」
「子どもタラシのお前が? 勘違いじゃねぇのか」
「タラシってのが何か分かんねぇけど、仲良くなれてないのはホントだって!」
「ふぅん」
「――ふぅん」
*次回予告*
俺はジーン、自由をこよなく愛するどこにでもいる顔の良い男だ!
乗り掛かった船で道化師二人の仲を取り持とうと頑張る俺。その日もマグスの相談に乗ってやってたんだが、突然割と近場から銃声やら爆発音やらが響き始めてさぁ大変。
現場に駆け付けた俺たちの前に飛び込んできたのは、スキルと武器をフル活用してガチめの戦闘をしているエルルカンとナイトメア・キッドだった。
次回『キラキラなピーターと病みメア・キッド』(仮)
そろそろ女の子と平和に酒が飲みたい。