橋を越えた先に見えたのはV2が飾ってある奇妙なガソリンスタンドであった。
「奇妙なガソリンスタンドだ、ゆがんだ建物は退廃的ですらある…むッ!」
私は何やらガソリンスタンドの真ん中で動く動物を見つけ、そして自分の目を疑った。
(や! や! や! なんということだ!!なぜ彼女がここに‼)
「ブロンディ!」
そこにいたのは私が溺愛していたブロンディに瓜二つのジャーマン・シェパードがいたのだ。
「い、いやよく考えれば彼女の筈がない…しかし何かの運命なのだろうか」
ブツブツ呟いている私を見て不思議に思ったのだろう、彼は此方に尻尾を振りながら近寄ってきた。
「おぉ…お前はもしかしてブロンディの子孫だというのか?わざわざ私に会うためにアメリカまで来てくれたのか?」
私はブロンディを思い出し優しくなでた。すると彼はこっちだといわんばかりに野山の方に駆ける。
「おいおい待ちなさい!」
◇◆◇◆
アバナシーファームの大黒柱であるブレイク・アバナシーはクララベルの世話をしていた。
するとサンクチュアリ(確かロボットが一体だけいた廃墟群)の方から一匹の犬がやって来た。
「wuff!wuff!」
「ん?何の用だ?レイダーの犬じゃあなさそうだが。飼ってやれないぞメイジーがいるからな」
と言いながら相手をしていると一人の男性が現れた。
多少よれているができる限り奇麗に着ようと努力をした後が見られるスーツに妙に整った頭髪、そして小綺麗なライフルにピストルと、おおよそレイダーの類ではなさそうな50代あたりと思われる男は妙に安心した顔で話しかけてきた。
「おぉ、ここは…農場かね」
「如何にもそうですが、連邦でこんな格好をしてるとは珍しい、旦那はアバナシーファームに取引か何か用で?」
「いや、そこの彼に案内されたのだ、君の犬ではないのかね?」
「いえ…コイツの事は初めてですが」
煮え切らない返事をしていると、娘のメアリーが出て来た。
「お父さん、お客さん?立ち話もなんですから中へどうぞ」
◇◆◇◆
「なるほど、旦那は連邦に来て日が浅いんですか。」
「まぁそういうことになる、先日野蛮人に襲われたのだがああいう輩はよくいるのか?」
「レイダーですか、あいつらはどこにでも湧きます。この前もここにやって来て農産物をかっさらっていかれましたよ」
なるほど実にけしからん、アメリカが崩壊して200年も経とうというのに未だ再建されないのは所詮アメリカ国民の愛国心が略奪等の欲に劣っているに他ならないからだろう。
ドイツ民族ならば国家が瓦解しようとも我々の志を継ぐ者により翌日には新たなドイツが芽吹いていることだろう。
「しかしいいのかね?こんなに貰ってしまって」
帰り際、私は一家から野菜を貰った、しかも沢山だ。この様な人ばかりなら統制の取れた国家の再建など直ぐであろうに。
「構いませんサンクチュアリに住んでいるようですし、度々来てくださいよ」
「今度来た時、ヨーロッパの話をもっと聞かせて頂戴」
「ああ、いいとも聴かせて上げるさ、楽しみにしてくれ」
私は上機嫌で岐路に着いた、これまでの苦労を忘れさせてくれるよき時間であった。ちなみにジャーマン・シェパードはWolfとなずけた。ブロンディの産んだ子供と同じ名だ。
家は申し訳程度だが穴を板切れで塞ぎ、使える家財道具を運んだ。Wolfsschanze(狼の砦)にしては心もとないが。
コズワースが野菜の調理をしている傍らでヴォルフに構っていた。
「ヴォルフ、オオカミを意味する名だ。私の名前のアドルフもオオカミを意味するんだ、オオカミ仲間だ」
「…その楽しげな様子、まるで旦那様と奥様とショーン坊ちゃんを思い出します。」
「ほぅ昔のご主人か」
「えぇ総統閣下、旦那様達は200年前の核戦争でVaultに行ってしまわれた。既に生きてはいないでしょう」
「…行ってみるか?Vaultとやらの防空壕に。ご主人がどのように家族と過ごしたか分かるかもしれない。辛いだろうが過去との決別は大事だ」
「…そうですね、お供させていただきます」
「その前にアバナシーファームにも寄りたい。いいかな?」
「ええ!ええ!是非!喜んでお供しましょう!総統閣下!」