「忘れるな」
夢を見た。
「貴様が殺したのだ」
同じ夢だ。これで何度目だろう。
「貴様は一生、この俺を殺した事実に苦しんでいくのだ!」
あの日の出来事をずっと繰り返し見せられる。わかっている。俺は結局救えなかった。だから、止まることは許されない。走り続けなければ、例えゴールが見えなくても。
俺は、俺は。
・・・俺は。
☆
軽快な電子音が聴こえ男の、黒山陽介の意識が覚醒する。体を起こし音の発生源、目覚まし時計を止める。
「また見ちまったか・・・」
乱雑に自身の頭を掻きながら布団から起き上がる。
「よし」
朝食を適当な総菜パンで済ませ腹を少し満たし、身支度を整え彼は自身が住むアパートから出発した。
☆
この2年で走り慣れた道路をバイクで走る。向かう先は自身の職場。
「ん?」
その途中、何やら妙な光景が視界に写る。
歩道に設置されている木に登り何かに向けて手を伸ばしている少女。近づくとその少女は見覚えのある髪型をしていた。バイクを木の隣に停車させ、少女に声をかける。
「何やってんだ、響ちゃん?」
「え?、あ!、ヨウさん!」
声をかけられた少女、立花響は腕に何かを抱えながら陽介に笑顔を向けた。今日も元気そうだなぁ。と、思いながら陽介は響が抱えているモノを確かめる。そこにいたのは白猫だった。
「なるほど、猫助けか」
「そうなんですよ~。鳴き声が聞こえるな~って思ったら木の上にいてビックリしました!」
たはは~と、笑いながら響は答える。しかし彼女はどうやって木から降りるのだろうか?。地上から約3メートル離れ、猫を抱えている。端的に考えても今の彼女の状況は危険なのだが・・・。
「ヨウさ~ん。いきますよ~」
「ん?―っておい!?」
待てと言う前に響は陽介に向かって飛び降りた。バイクから降りしっかりと受け止める。
「ったく危ないじゃないか」
「えへへ~。ヨウさんなら大丈夫ですよ」
「いやいや、だからっていきなり飛び降りるのはダメでしょ」
「わかりました!。次は言ってから飛び降ります!」
「飛び降りるのは確定なのか・・・」
何がそんなに嬉しいのか腕の中でニコニコと笑う響を地面に下ろす。この2年で随分懐かれたなと思う。彼女の腕の中にいた猫はするっと脱け出し路地裏に向かって走り去って行った。
バイバ~イっと、響は猫に向けて手を振った。
「ところで響ちゃん」
「はい?」
「君、学校はいいのかい?」
「・・・」
笑顔から一転、彼女の顔が絶望に染まった。
「うわ~ん!?どうしよう!?私ってばやっぱり呪われてる~!?」
やれやれと思いながら彼女にあるものを投げ渡す。響は慌てながら受け取ったものを確認する。それはヘルメットだった。
「乗りな。途中まで送るよ」
「いいんですか!?」
「オッケーオッケー」
「ありがとうございます!」
ヘルメットを装着し自身の後ろに乗り込む響を確認し陽介はバイクを走らせた。
☆
夕方。あれから、響を彼女が通う私立リディアン音楽院の近くまで送り、バイト先の喫茶店ストーンで労働に励んだ。帰路につこうとしたらとある組織から支給されている通信機からアラームがなった。
緊急用のアラームだ。
『はい』
『お仕事の時間ですよ~』
『ノイズだな?』
『いや~そうなんですけど、もう少し世間話でも』
『場所は?』
『せっかちですね~。今送りますよ~』
通信機の画面に表示される場所を確認し、すぐさまバイクを走らせた。
☆
通信機に表示された場所、商店街に到着するもその光景に思わず眉を潜める。日が沈みかけた道には人の気配がまるでなく変わりに幾つもの黒い砂、炭素の塊が点々としていた。その中蠢いている集団が見える。灰色の人の形をしたナニか。あるいは人並みの大きさのナニか。
認定特異災害ノイズ。有史以来から確認される人にとって天敵とも言える存在である。
陽介は周囲を見渡す。炭素の塊、ノイズの犠牲にあってしまった人達の成れの果て。その近くには買い物袋やぬいぐるみなどが散乱していた。
心に火が灯る。
体の丸めるようにし全身に力を込める。骨が、筋肉が軋む。
「変・・・身!」
腕の大きく振るうと腰部に埋め込まれた王の石、キングストーンを中心に細胞が閃光しベルトの形を創る。ベルトから全身に強大なエネルギーが流れ身体が変わっていく。彼の姿がバッタのような姿に変わるがそれだけではない。その姿を覆い包むように鎧のような新たな外骨格状皮膚を形成する。全身は黒くなり、真っ赤な目が光輝く。肘や膝の装甲いや皮膚の隙間から余剰エネルギーが蒸気として噴出されると、彼の身体は完全に変わった。
「仮面ライダー・・・ブラックッ!!」
名乗りを挙げる。その声に反応しノイズ達がギュピギュピと気の抜けそうになる音をたてながら近づいてくる。
「往くぞ! トォア!」
色がついたノイズ達を迎撃する。
暗黒結社ゴルゴムの壊滅から2年。仮面ライダーBLACK、黒山陽介の戦いはまだ終わったはいなかった。