戦姫絶唱シンフォギアBLACK   作:土紋

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ゼロワンのシャイニングホッパーの活躍に期待している私です。

それはそうと、第十話です。


第十話 いつか私も輝ける太陽に

 

 

 

 

「はぁ、はぁ」

 

みなさん、おはようございます。立花響です。

 

私は今、朝のロードワーク中です。

 

強くなるためにヨウさんに頼み込んで、風鳴司令こと師匠に弟子入りして一週間が経ちました。

 

最初はいきなりアクション映画の鑑賞が始まった時はどうなることかと思いました。

 

男の鍛練は飯食って、映画を観て、寝ることだッ!

 

私、女ですよ!?

 

豪語する師匠に反論した私は悪くないと思う。うん。

 

とはいえ、アクション映画はバカに出来ないと実感したのも事実です。動きを観て、技を盗む。型を身に付かせる為の反復。基礎体力を向上させる為の厳しい特訓。

 

 

 

 

 

 

あああ

 

 

 

 

 

 

強くなるのは凄く大変だ。でも、へいきへっちゃら。

 

 

 

 

 

 

あああああ!

 

 

 

 

 

 

 

私は、私のまま強くなりたい。その意思は変わらないから。

 

 

 

 

 

 

 

あああああ!!

 

 

 

 

 

 

 

・・・って、この声は!?

 

後ろを振り返れば人影が見えた。凄いスピードで走ってくるあの人は、

 

「うおおおお!? ゲンさん!? これ、効果あるのぉ!?」

 

「スピードを落とすな! お前の場合は普通の鍛練では意味がないからな!」

 

「ぬおあああ!?」

 

嵐のように私を追い抜いていき3周目に突入するヨウさん。

 

ヨウさんは四肢に10kgの重りを付けられ更に、タイヤを3つを引きその上に竹刀を持った師匠を乗せて走っていた。

 

ヨウさんの叫び声が遠退いていくの聞きながら私も走り出す。まだまだ追い付けない背中だけど、いつか、きっと、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、立花響がヨウさんと出会ったのは2年前のことだ。

 

ツヴァイウイングのライブの惨劇で生き残ってしまった私は、病院で辛いリハビリも頑張って退院すればいつもの日常に戻れると思っていた。

 

だけど、待っていたのはどうしようもない悪意だった。

 

学校に行けば周りの人達が、昨日まで友達だった人が急に離れていった。“人殺し”、“卑怯者”、謂れのない噂が広まり陰湿ないじめもあった。

 

辛い毎日だった。それでも、待ってくれている家族といつも一緒にいてくれる未来だけが心の支えだった。

 

だけどある日、お父さんが帰って来なくなった。

 

連絡もつかずお母さんの元気がどんどんなくなっていった。

 

辛い。毎日が苦しい。

 

そんな日々が積み重なったある日、私と未来は公園で大人数に囲まれた。

 

同級生の子達と私達よりも年上で体が大きい男の人達。手には金属バットや鉄パイプなどを持っていて、それらをこれから何に使うかなんて想像もしたくなかった。ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべる人達。携帯やカメラを構える同級生。

 

あぁ、何でこんなことになってるんだろう。

 

生きているのがそんなにおかしいのか?

 

私が何をしたんだ? ただ、生き残ってしまっただけなのに。

 

いや! 近づかないで! 未来だけでも逃がさないと!

 

ああ、でも、どうすれば・・・

 

誰か・・・

 

助けて・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な~にしてんの?」

 

その人は突然現れた。

 

覇気のない声の主は衣服がボロボロで浮浪者や不審者かと思った。

 

周りの人達がまた何か言っている。

 

その言葉を聞き私達を見るボロボロの人。

 

服もボロボロだけど、顔、というか立ち姿全体に生気を感じられなかった。

 

まるで、生きる希望を失ってしまったかのような。

 

日本人だと思われる容姿だけど、宝石のような紅い目をした男の人は私と未来を見たあと周りの人達に言った。

 

「君達恥ずかしくないのか? そんな大勢で女の子2人を囲んで何をしようってんだ?」

 

「あ゛あ゛ん!? テメェこそなんだよ! 正義の味方のつもりか!」

 

「・・・そんなんじゃねぇよ。 ・・・まぁ、元気が有り余ってるならスポーツでもしたら? その手に持ってるモノはそのためだろ?」

 

「・・・ああそうだよ。・・・今からするんだよ! お前も混ぜてやるよ!」

 

男の人がバットを振り上げる。危ない! と、声をあげることもできない。私は未来を抱き締めてただ震えていることしかできなかった。

 

ゴッ! と、嫌な音が響く。男の人が号令をあげ周りの人達も紅い目の人に群がる。

 

殴打音が更に鳴る。私は恐くて目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どのくらいの時間がたったのだろう。とても長い時間が流れた気がする。いつの間にか辺りが静かになった。

 

「な、なんなんだこいつ!?」

 

「・・・え?」

 

ゆっくりと目をあける。大勢の人達が紅い目の人を囲んでいる。それぞれが手に持ってる凶器には赤い液体がついていた。

 

だけど、

 

「こいつおかしいよ!?」

 

「何で倒れねぇ!?」

 

「何か気持ち悪ぃ!?」

 

紅い目の人はただ立っていた。

 

「・・・はぁ。痛いなぁもう」

 

「こ、このヤロォ!」

 

男の人がまた金属バットを振る。紅い目の人が金属バットを掴んだ。片手で、

 

「なっ!? 離しやがれ!」

 

「危ないだろ。よっと」

 

「うわわわわ!?」

 

紅い目の人がバットを掴んだと思ったらそのまま男の人を持ち上げてしまった。バットを掴んだままジタバタしていた男の人はバットから手を離して地面に落ちた。

 

そして、紅い目の人は金属バットを持つと、それを捻子切った。

 

耳障りな金属音が辺りに響くがそれよりも衝撃的な光景にびっくりする。

 

え? 金属バットが捻子切れた?

 

「は?」

 

「え? 何? マジック?」

 

「こいつ、なにしやがった!?」

 

別の人が鉄パイプで殴りかかる。紅い目の人は難なくそれを奪い取ると、今度は鉄パイプを折り曲げて丸めてしまった。まるで、飴細工のように、

 

「さて、・・・まだやるかい?」

 

「ひぃ!?」

 

人が離れていく。あんなに大勢いたのに蜘蛛の子を散らすようにいなくなっていった。やがて、公園には私と未来と紅い目の人だけが残った。

 

しばしの静寂。

 

紅い目の人はゆっくりとこちらに振り向いた。

 

頭から血を流しながら何故か微笑む彼。

 

そして、彼は仰向けに倒れた。

 

「・・・え?」

 

動かない。ピクリとも動かなくなった。

 

「・・・あわわ!? だ、大丈夫ですか!? ど、どどどどうしよう未来!?」

 

「お、落ち着いて響! えっと、えっと救急車を呼んだ方がいいよね!?」

 

未来と一緒にわたわたしてると、ぐぅ~と、音がなった。

 

「・・・響?」

 

「いいい!? 違うよぉ! 今のは私じゃないよぉ!」

 

未来がじと~とこっちを見る。確かに! 私は人よりちょっとだけ多く食べるかも知れないけど! 今のは私のお腹の音じゃないよ!

 

じゃあ今のは? その疑問はすぐ解決した。

 

また、ぐぅ~と音がなる。未来と2人で音の発信源に目を向ける。

 

「・・・腹が、へったな・・・」

 

私達を助けてくれた人のお腹の音だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガツガツガツ! ゴクッ・・・。あ~ごちそうさまでした! すまないね、ごちそうになって。しばらく何も食べてなかったから」

 

「ああ、いえ、只のコンビニ弁当ですから」

 

「というか、さっきの血は? 何でそんなに元気なんですか?」

 

「あ~・・・俺は人より怪我の治りが早いんだ」

 

「え~?」

 

「それより! 君達の方は怪我はないかい?」

 

「え、あ・・・」

 

「響・・・」

 

それは、こっちのセリフだと思う。この人の方がボロボロだった。直接その光景を見てないが、この人は金属バットや鉄パイプで殴られた筈なのに、なんで、こっちの心配をするのだろう。

 

それに、なにより、

 

「なんで、助けてくれたんですか?」

 

「何でって? あの状況なら普通助けるでしょ?」

 

「わ、私達、初対面ですよね?」

 

「別に知り合いじゃなきゃいけない訳じゃないでしょ?」

 

「あの人達が言ってたことが本当だったら?」

 

「その時はその時だけど、俺には君が人殺しするような子に見えないよ」

 

「で、でも」

 

「あ~も! まどろっこしい! いいかい、俺は、女の子2人を大勢で囲んでるあの状況が見過ごせなかっただけ! 俺が助けたいから勝手にやっただけ、それで君達が無事ならそれでいいじゃないか」

 

「・・・それで、ボコボコにやられたと思ったらお腹が空いて倒れたんですか」

 

「・・・君、中々厳しいこと言うね」

 

「小日向未来です」

 

「ん?」

 

「フフッ。名前ですよ。私達まだお互いの名前も知らないじゃないですか」

 

「そうだね、俺は黒山陽介。・・・只の通りすがりさ」

 

黒山陽介。それが、この人の名前。

 

「あの、私は、立花響です」

 

「小日向ちゃんに立花ちゃんね。よろしく」

 

そう言って手を差し伸べてくれる黒山さん。・・・でも、その手をとっていいかわからなかった。だって、

 

「どうしたの?」

 

「・・・あの、今日みたいなことがあったら、また、助けてくれますか?」

 

聞いた。聞いてしまった。今日会ったばかりの人に何を聞いているのか私は。

 

この人は通りすがりだと言っていたのに、今日はたまたまだったのだ。

 

この先なんて・・・

 

「もちろん」

 

「え・・・」

 

「こうして知り合ったのも何かの縁だし、ご飯の恩もできた。また、なんて言わずいつでも言ってくれ。何度だって必ず助けるよ。・・・・・・今度こそ

 

「あ・・・う・・・」

 

「ん?」

 

迷いなく言いきる黒山さん。その表情は真剣だった。

 

そこで限界だった。

 

「うわああああん! あああああん!」

 

「おう!? 立花ちゃん!?」

 

「あああああん! ひびきぃぃぃ!」

 

「あれ!? 小日向ちゃんも!?」

 

私は泣いた。未来と抱き合って泣いた。

 

たぶん、今まで生きてきた中で一番泣いたんじゃないかってくらい泣いた。大声で、ありったけで、私の中でくすぶっていた何もかもを吐き出すように。

 

この日、私はヒーローに出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」

 

「よぉし! 10分休憩だ!」

 

私とヨウさんは一緒に倒れる。地面が冷たい。

 

「ヨウさん、大丈夫ですか?」

 

「な、なんとか・・・」

 

「すみません、特訓に付き合ってもらって」

 

「な~に、俺も勘が鈍っていたところだし、ちょうどいいよ」

 

とは言っても、ヨウさんの訓練メニューだけ明らかにおかしい。常人がこなせるような訓練ではない。とはいえ、それぐらいキツイ訓練でないと意味がないらしい。

 

俺、改造人間なんだ。

 

ヨウさんが改造人間。ううん、仮面ライダーだと知った時はすごく驚いた。

 

初めて会ったあの日から、ヨウさんと未来と三人で一緒にいることが多くなった。

 

私に対するいじめとかはなくなった訳ではないけど、そんなものは時間が経つにつれて気にならなくなったし、いつの間にかいじめそのものがなくなっていた。

 

ヨウさんが喫茶店ストーンに勤めるようになってからはそこの常連になっていた。

 

マスターの石田さんが淹れてくれるお茶とヨウさんが握ってくれるおにぎりがとてもおいしいんだよな~。

 

時折、店にいないことがあったけどそれは、ノイズが現れてノイズから人々を守るために戦ってくれていたんだ。

 

ヨウさん。ヨウさん。ヨウさん。

 

ヨウさんと一緒にいると胸の奥が温かくなるのはなぜだろう?

 

ヨウさんの笑顔を見るとドキドキするのはなぜだろう?

 

未来といるときとはまたちょっと違うこの感じ。イヤじゃない。むしろ、心地いいこの感じは?

 

考えてもよくわからないや。

 

「ヨウさん」

 

「ん?」

 

でも、

 

「私、がんばりますね!」

 

この人ともっと一緒にいたい。

 

ヨウさんは私のヒーローだから。

 

私も誰かを助けられるようになりたいから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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