戦姫絶唱シンフォギアBLACK   作:土紋

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第十一話 剣聖

 

 

 

 

完全聖遺物デュランダル

 

かつてEU連合の経済破綻に伴い、不良債権の一部肩代わりを条件に日本政府にもたらされた経緯があり、 現在は私立リディアン音楽院の遥か地下1800mの最下層“アビス”にて厳重に保管されている。

 

二課が保有しているこの完全聖遺物を護送することになった。

 

場所は永田町最深部の特別電算室“記憶の遺跡”。

 

「不朽不滅の聖剣ねぇ」

 

西洋に伝わる伝説の剣が国家郡の為に売られるとはなんとも複雑な感じだと黒山陽介は思った。

 

先程、デュランダルの移送計画の緊急ブリーフィングが終わり、移送開始まで待機することになった。

 

ネフシュタンの鎧の少女。或いはデュランダルを狙う別の勢力に対抗できる戦力は限られている。

 

人間が相手なら二課のエージェント達で対応できるが、ノイズが襲撃してくるなら相手をできるのは仮面ライダーとシンフォギア、黒山陽介と立花響だけなのだ。

 

二課全体に緊張が走る中、黒山陽介はある疑念があった。

 

デュランダルの移送の段取りが良すぎる。

 

まるで、こうなることが最初から決まっていたかのようだ。

 

事の発端は了子さん。櫻井了子が政府のお偉いさんに二課の活動報告をしにいったところから始まる。

 

二課が活動しやすいよう、影ながら支援してくれていた防衛大臣がいたのだか、その防衛大臣が殺害された。複数の革命グループからの犯行声明が出ているため犯人はわからない。

 

防衛大臣に報告しに行った櫻井了子の安否も不明だったが、当の本人は何食わぬ顔で二課に帰還、無事であった。

 

了子の無事に喜ぶ一同だが、黒山陽介はある違和感を感じた。

 

了子と連絡がつかなかったのは彼女の通信機が壊れていたからだった。

 

シンフォギアを開発するほどの才女が通信機の故障に気づかないのか? これに関しては本人が忘れていた可能性があるのであまり気にしない。

 

問題は次だ。

 

黒山陽介は改造人間として強化された五感、嗅覚で感じ取ってしまった。

 

櫻井了子から血の匂いがしたこと。

 

正確には、彼女が防衛大臣から受理したというアタッシュケースからわずかに血の匂いがした。

 

もちろん、その血が誰の血か迄は判別出来るほどの嗅覚はない。だが、確かに匂ったのだ。

 

だが、その事を聞く時間はなかった。

 

了子の無事で安堵していたあの空気を壊すのは何だか気が引けてしまったからだ。

 

櫻井了子は二課の中心人物のであり高い能力を持った技術者である。彼女の開発したシンフォギアシステムによって多くの命が救われたのだ。

 

そんな人を疑いたくはないと黒山陽介は思った。

 

ふぅ、と息を吐き、気持ちを切り替える。

 

移送開始まであと数時間。今はデュランダルのことに集中しよう。そう思っていた時だった。

 

「おや~? そこにいるのは黒山さんじゃあないですか?」

 

「・・・何だ、蛇川か」

 

どうにも胡散臭い笑みを浮かべながら二課のエージェント、蛇川悟が現れた。

 

「何だ? とはひどいですね~」

 

「あんた、仕事はどうした?」

 

「休憩ですよ休憩。調査部も楽ではないですからね~」

 

「ふ~ん・・・」

 

蛇川は廊下に設置されている自販機に移動。自販機から天然水を買い、それを飲みはじめた。

 

「いや~最近はいろいろと忙しくなってきて大変ですね~」

 

「そうだな」

 

月日が経つのは早い。響がガングニールの装者として覚醒してからは毎日が忙しくなったと思う。

 

ノイズの発生頻度の増加、失われたと思われたネフシュタンの鎧を纏った謎の少女の出現、その少女がノイズを召喚する術を持っていること、ゴルゴムの残党と思しき怪人の出現。

 

改めていろいろな出来事が起きたと思う。

 

「やれやれ、休む暇もないですよ~」

 

「今休んでんじゃん」

 

「5分10分の休憩では休みになりませんよ~。・・・まぁ、黒山さん的には忙しい方がいいかもしれませんが」

 

「・・・どういう意味だよ」

 

「いえね、あなた・・・退屈してたんじゃありません? 平和に」

 

「・・・なんだと」

 

「ゴルゴムから世界を救った仮面ライダー。だけど今はそのあり余る力を小さな人助けの為だけに使うだけ。いや~実につまらない。もっと派手にその力を使いたいんじゃあないですか?」

 

「何バカなこと言ってんだよ。平和が退屈? いいじゃないか平和で」

 

「えぇ~本当ですか~? ・・・あ! そうでしたそうでした」

 

「なんだよ」

 

クックックッと薄気味悪く笑う蛇川に不信感が募る。この男は何が言いたいんだ。

 

「私としたことが忘れていました。黒山さんはもう失くしているのでしたね、一番守りたかったものが」

 

「・・・お前」

 

「お~とコワイコワイ。そんなに怒らないでくださいよ。まぁ? だから平和がいいんでしょ? 戦いにならなければ何も失うことがないんですから。でも、いざというときにあなたは何かを守れるんですかね~?」

 

確かに蛇川の言う通りだった。黒山陽介は救いたかった者を救えず、守りたかった者を守れなかった。だが、

 

「守るさ」

 

「ほぉ?」

 

「守れなかったからこそ今の俺がある。どんな状況だろうと今度こそ全力で守りきるさ。必ずな」

 

黒山陽介は迷いなく宣言する。もう二度と大切なものを失うことがないようにこれからを全力で生きぬく。その決意に揺らぎはなかった。

 

「・・・まぁいいでしょ。その意思を貫けるよう頑張ってください。・・・それでは私はこの辺で」

 

手をひらひらと振り、蛇川はその場を離れていった。

 

「・・・なんだったんだ?あいつ?」

 

結局のところ蛇川が何がしたかったのか陽介にはわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フ~ム、掴みかかってくるかとおもえば意外とあっさり返されましたね」

 

二課の通路を1人、蛇川悟は歩く。

 

「まぁ、楽しみが増えたとプラスに考えておきますか。・・・フフフ、絶刀は今は眠っていますが新たな撃槍は目覚めている。魔弓は蛇の鱗を纏い、そして黒い太陽もまた燃えはじめた。・・・クフフ」

 

笑う。誰もいない通路で薄気味悪く笑う。

 

「さてさて今後も楽しませてもらいますか」

 

そのおぞましく歪む表情を見る者は誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早朝。山の向こうから太陽が顔を覗かせる。私立リディアン音楽院の玄関前にはデュランダル移送のメンバーが集合していた。

 

「防衛大臣殺害犯を検挙する名目で検問を配備、記憶の遺跡まで一気に駆け抜ける!」

 

「名付けてぇ! “天下の往来独り占め作戦”! よ!」

 

風鳴弦十郎の号令によって作戦は開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永田町へ向かう橋の上をピンクの車を中心に4台の黒塗りの車が護衛のため囲みながら走行する。その50メートル後方には1台のオンロードバイクが追従していた。

 

ピンクの車には櫻井了子と立花響が乗車しており移送対象のデュランダルも積み込まれている。黒塗りの車には二課のエージェント達が乗り込む。いずれも精鋭揃いだ。そして、追従する1台のオンロード型バイク、ロードセクターには黒山陽介がいた。

 

前方で走る車の集団を見ながら陽介は視線を空へ向ける。空には二課が所有しているヘリコプターが一機飛んでいる。そこからはドアを開け体半分を機体からのり出して作戦地域全体を見渡している風鳴弦十郎が見えた。

 

作戦の通り今は一般車が走ってないためスムーズに走行している。だが、油断は禁物。何時襲撃があるかわからない状況で緊張感が増す。

 

彼らの走行している橋の一部が崩れた。

 

驚いてる暇はない。すぐさま進路をずらし、崩れた部分から遠ざかる。しかし、1台の黒塗りの車は間に合わず崩れ穴ができた部分に落下、爆発した。

 

橋を抜け町へ入る。

 

『敵襲だ! まだ目視で確認できてないがノイズだろう!』

 

『この展開! 想定していたより早いかも!』

 

通信機から弦十郎と了子の声が聞こえたと瞬間。護衛車が1台突如上空へ吹き飛ばされた。

 

「うおッ!?」

 

目の前に迫る水の柱を慌てて避ける。水の柱の出所は、

 

『下水道だ! ノイズは下水道から襲撃してきている!』

 

また1台、護衛車が吹き飛ばされた。

 

『弦十郎君、ちょっとヤバイんじゃない!? この先の薬品工場で爆発でも起きたらデュランダルは・・・』

 

『わかっている! さっきから護衛車を的確に狙い撃ちしてくるのは、ノイズがデュランダルを損壊させないよう制御されているとみえる。ならば、狙いがデュランダルの確保ならあえて危険な地域に滑り込み攻めて封じるって算段だ!』

 

『勝算は?』

 

『思いつきを数字で語れるかよッ!』

 

弦十郎の指示通り薬品工場へ向かう。薬品工場へ到着する目前、突風がロードセクターを襲った。

 

「おわっ!?」

 

車体の真横からの衝撃に体制が崩れる。そのままロードセクターは横転。陽介も道路へその身を投げ出された。何とか受け身をとりすぐさま立ち上がる。

 

「今の風はいったい? ・・・───ッ!?」

 

足音が近付いてくる。覚えのある気配が近付いてくる。気配の方向へ視線を向ける。

 

全身を魚類の鱗を思わせる甲冑で身を包み、マントをたなびかせている。左手に、赤い宝石を飲み込もうとしている蛇が描かれた身を縮めれば上半身をすっぽり覆える程の大きさの盾を持ち、右手には両刃剣を持つ顔面が文字通り真っ白な人物が近付いて来た。

 

黒山陽介はこの者を知っている。

 

かつて、自身の前に立ちはだかり自身に埋め込まれたキングストーンを巡って何度も戦った強敵。

 

その名は・・・、

 

「剣聖、ビルゲニア・・・」

 

「フフフ・・・、久しいなブラックサン。いや、仮面ライダーBLACK」

 

剣を陽介の方へ突き立てビルゲニアには怪しく微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヨウさん!?」

 

自分達の後方にいたロードセクターが横転したのが見えた響は動揺の声をあげる。

 

「響ちゃん! 今、彼に気をとられている場合じゃないわよ!」

 

「でも!」

 

「彼なら大丈夫よ! 信じなさい! あなたは自分のすべきことに集中しなさい!」

 

「ッ! はいッ!」

 

了子の言葉に響は気を引き締める。

 

「(そうだ、ヨウさんならきっと大丈夫。私は、私にできることをやるんだ!)」

 

そう決意した響の眼前、車のフロントガラスにノイズがへばりついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生きていたのか、ビルゲニア」

 

「フフフ。いや、死んでいたさ。奴に、シャドームーンに斬られ私は死んだ」

 

「地獄から甦ったとでもいうのか」

 

「フフフ、さてな。私が甦った方法などさほど重要なことではあるまい」

 

「今さら復活して何をするつもりだ! ゴルゴムを復活でもさせるつもりか!」

 

「ゴルゴムの復活だと? 今さらゴルゴムも新たな創世王にも興味はない」

 

「なら、何の用だ!」

 

「そんなもの決まっていよう。・・・貴様との決着をつける為だ」

 

「なんだと・・・? 」

 

「あの時はいろいろと邪魔が入ったからな。・・・だが! 今はもうその邪魔者達はいない! シャドームーンを倒し、創世王を倒し、ゴルゴムを滅ぼしたキサマはこの私が倒すのに十分な実力者だ。そのキサマを、仮面ライダーBLACKを倒すことが私の目的なのだよ。・・・さぁ! 変身しろ黒山陽介! そして、私と戦え!」

 

ちらりと自身の背後、薬品工場の方へ目を向ける。響や了子の身を心配するが、薬品工場の方から歌が聞こえてきた。

 

この歌は響のものだ。あの子も戦っているのだ。この短期間でめきめきと成長していく彼女には驚きを隠せない。

 

視線をビルゲニアに戻す。闘士や殺気が漲ってるように見える。

 

信じよう。デュランダルの方は響に任せ、自分は目の前の敵に集中するのだ。

 

「ビルゲニア! 望み通り戦ってやる! 今度こそ完全に倒す! ・・・変・・・身ッ!!」

 

黒山陽介の体が変わる。

 

「仮面ライダー・・・ブラックッ!!」

 

「おぉ・・・懐かしき我が宿敵の姿」

 

「いくぞ! ビルゲニア! トゥア!」

 

BLACKはビルゲニアに飛びかかる。拳を握り、殴る。ビルゲニアの盾、ビルテクターがそれを防ぐ。

 

「まだまだ!」

 

拳の乱打がビルテクターに叩き込まれた。

 

「ぐっ!?」

 

BLACKは攻撃を止めビルゲニアから距離をとる。両手が痺れる。

 

固い。固い盾であった。

 

「次はこちらからゆくぞ!」

 

ビルゲニアがその手に持つ剣、ビルセイバーを掲げる。ギラリと刃が光る。

 

「ハァッ!」

 

一瞬の踏み込みで間合いが縮まる。振り下ろし、突き、凪ぎ払い。怒濤の剣さばきがBLACKを襲う。BLACKはビルゲニアの攻勢をひたすらに避ける。避けて避けて時には手刀にキングストーンエネルギーを集中させ刃を弾く。

 

(まだだ・・・焦るな)

 

「そらそらそらッ!」

 

ビルゲニアの猛攻は続く。BLACKは刃の直撃だけは避け防御に徹した。必ず来る反撃のチャンスを掴むため。

 

「スゥ───ハアッ!」

 

「───ここだッ!」

 

ビルゲニアの一瞬の一呼吸の間に間合いを積める。ビルゲニアの突きに対して刃の横を滑るように回転して避ける。

 

ガッ!と剣を突き出したビルゲニアの手を掴み、剣を封じる。そして、ビルゲニアに背中からのし掛かるように動きながら右肘をビルゲニアの後頭部に叩き込む。

 

「ガッ!?」

 

命中。苦悶の声が聞こえた。

 

「なんのぉ!」

 

「ぐあっ!?」

 

僅かにふらついたビルゲニアだが、踏みとどまりビルテクターでBLACKを殴り飛ばす。両者の距離が再び離れた。

 

互いの距離を保ちつつ相手の様子を見る。

 

「ビルセイバー───」

 

先に動いたのはビルゲニアだった。

 

「───デモントリックッ!!」

 

ビルゲニアの姿が歪む。歪み、ブレ、ビルゲニアは3人に増えた。

 

「ッ!? これは!?」

 

かつての戦いで観たビルゲニアの技。自身の分身を作り立て続けに攻撃するものだったはずだ。3人のビルゲニアはBLACKを取り囲み斬りかかった。

 

3方向から振るわれる刃から逃れるためその場から大きく跳躍する。刃ば空振り6つの瞳がBLACKを捉える。

 

「マルチアイ!」

 

BLACKは自身の目の機能をフルに使いビルゲニア達を見た。

 

(やはり本体の区別がつかない。ならこれは分身しているのではない?)

 

以前、この技を受けた時も本体を見破れなかったことを思い出す。分身している訳ではないとしたら3人に見えてるこの現状はどう説明すればいいのかわからなかった。

 

対抗策を考えなければ切り刻まれてしまう。地上にいるビルゲニア達は剣を構え迎撃の態勢だ。

 

どうする? 3人纏めて攻撃するか? だが、自分には範囲攻撃できる技などキングストーンフラッシュしかなかい。しかも、相手はビルゲニアだ。よくて目眩まし程度にしかならないだろう。

 

(いやまて、目眩まし?・・・・・・まさか)

 

1つの考えがBLACKに浮かんだ。

 

「空中に逃げたところで結果は同じよ! さぁ!我が剣を受けよ!」

 

「やるしかねぇ! ・・・───キングストーンフラッシュッ!!」

 

「ッ!?」

 

閃光がビルゲニア達を包む。急な光にビルゲニア達は思わず目を盾で覆う。すると、どうだろう。ビルゲニア達の姿が歪むとビルゲニアは1人に戻っていた。

 

「ビンゴォ!」

 

ビルゲニアは分身していたのではない。ビルゲニアが分身しているように錯覚させていたのではないかとBLACKは考えた。

 

幻術の類いを見せられていると分かれば、それを打ち破る手段は既に持っていたのだ。予感は的中。ビルゲニアの技を破ることができた。

 

そして、ビルゲニアは今、自身の盾で視界を塞いでしまっている。

 

チャンスだ。

 

落ちる速度を加速させ空中で一回転する。狙うは盾が覆ってない右肩。

 

「オラッ!」

 

「グオッ!?」

 

隕石が如く落下しビルゲニアの右肩を蹴る。ビルゲニアは地面を転がる。すかさず、バイタルチャージを発動。右拳を握りしめる。

 

「ライダーパンチッ!!」

 

寸でのところで立ち上がり盾を構えるビルゲニア。その盾ごと砕く勢いでBLACKの拳が盾に突き刺さる。

 

ドゴォ!! という音が盾から響き、ビルゲニアは自身の足でコンクリートの地面を抉りながら後退する。

 

「ライダーキックッ!!」

 

必殺の蹴りがビルゲニアに炸裂する。

 

「───ビルセイバー」

 

かに思えた。

 

「ネオ」

 

ビルゲニアは刃にエネルギーを集める。それだけではなく手のひらの上で剣を高速で回転させていた。

 

「ダークストームッ!!」

 

回転し、エネルギーを纏った剣が突き出される。

 

BLACKの蹴りと、ビルゲニアの突きが激突する。ガガガガガッ!! と切削音に似た音を出しながら2人の力がぶつかり合う。

 

「ハァアアアアッ!!」

 

「おおおおおぉ!!」

 

「───クラッシュッ!!」

 

ぶつかり合う力の拮抗を破ったのはビルゲニアだった。

 

剣を突き出す時、ビルゲニアは剣を持っていなかった。剣を手に持たず、剣の根本を掌底による衝撃で突き出した。

 

力が拮抗したその瞬間、ビルゲニアは腕を引き今度は剣の根本を殴りつけた。

 

剣を釘に例えるならビルゲニアの拳はハンマーだ。釘は打つと食い込む。ビルゲニアは行ったのは正にそれだ。

 

結果。

 

「な!?」

 

高速回転するビルセイバーはBLACKの足を抉り裂きながら空へ飛翔した。

 

だが、それだけではない。高速回転により産み出された暴風はBLACKを巻き込み、大きく吹き飛ばした。

 

自身が何かに叩きつけられる衝撃を感じた後、地面に落ちる。

 

「ぐ・・・がはっ・・・」

 

自分は今どうなった? 急いで状況を確認する。まずは自分の状態だ。ライダーキックが破られた。全身に痛みが走る。右足を見る。

 

右足のくるぶしから膝の辺りが裂けている。血が溢れてる。その光景を認識した瞬間、激痛が全身を駆け巡る。痛みに声を上げそうになるが、ぐっと歯を食い縛り痛みに耐える。取り敢えず、傷口を手で無理矢理押さえつけこれ以上の出血を抑える。

 

次に自分の位置だ。どうやら薬品工場の方まで吹き飛ばされたらしい。自分の後ろにある塔のような建物に人形の凹みが確認できた。

 

「そこにいたか」

 

「くっ・・・」

 

ビルゲニアが堂々した足取りで近付いてくる。ビルゲニアが右手を広げれば、飛翔していったビルセイバーが吸い寄せられるように戻ってくる。

 

立ち上がろうとするが上手く立てない。そうこうしている間にビルゲニアはもう目の前まで来ていた。

 

「如何かな? 我が新技の威力は?」

 

不適な笑みを浮かべビルゲニアはBLACKを見下げる。

 

(これはちょっとまずいな・・・)

 

必殺技が破られ、足が動かない。ピンチである。

 

その時だ。

 

遠方から光の柱が伸びた。

 

「む!?」

 

「これは!?」

 

「この巨大なエネルギー・・・。ふん、どうやら覚醒したようだな」

 

「何だと!? まさか、デュランダルか?」

 

「そのようだが、今の貴様に他のことを気にしている余裕はあるのか?」

 

刃が突き立てられる。

 

「シャドームーンや創世王を倒したいうのにこの体たらく。がっかりだよ仮面ライダーBLACK。・・・・・・では、さらばだ!」

 

ビルゲニアが剣を振り上げた時、遠方の光の柱の耀きが増した。

 

「何!?」

 

「なんだ!?」

 

光の柱がこちらに倒れこんでくる。直後、薬品工場全体を大爆発が包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ・・・」

 

自分の上に覆い被さっている何か振り払い黒山陽介は周囲の状況を確認する。変身は解けてしまっていた。

 

自分が振り払ったのは建物の残骸。周囲の光景も薬品工場の施設の残骸が散乱していた。

 

「何が起きたんだ?」

 

「ほぅ? 生きていたか?」

 

声がした方角を見る。そこには、ビルゲニアが瓦礫の山の上に立っていた。

 

「ビルゲニア・・・!」

 

「相変わらず悪運は強いらしいな。・・・今日のところは退こう。こちらの用事は済んだのでな」

 

「何? 俺を倒すことが目的じゃなかったのか?」

 

「ああ、確かに“私の”目的はそうだが、こちらにも事情があるのでな。その命、しばし預けてやろう。次に会うときが貴様の最期だ、仮面ライダーBLACK。フハハハハ!」

 

ビルゲニアはビルテクターで自身の体を覆うと、謎のエネルギーがビルゲニアを包む。橙色の光球となると何処かへ飛んでいった。

 

手を握りしめる。力の限り、目一杯。

 

見逃された。自分は負けたのだ。

 

「くそぉぉぉ・・・」

 

久方ぶりに感じる不愉快な感覚に陽介は只体の震えさせることしかできなかった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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