戦姫絶唱シンフォギアBLACK   作:土紋

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第十二話 私の娘はかわいいのだよ

 

 

 

 

 

自然に囲まれた中に豪邸が一件そこにあった。豪邸の敷地内にはちょっとした湖があり、そこに2人の女性がいた。1人は銀髪の少女、もう1人は金髪の女性であった。

 

銀髪の少女は金髪の女性に何か言っている。銀髪の少女は手に持っていた杖のようなモノを金髪の女性に投げ渡し、その場を去っていった。

 

その様子を見ていたビルゲニアは金髪の女性に歩み寄った。

 

「随分なじゃじゃ馬なようだが、いいのか?」

 

「必要なモノはほぼ手に入っているわ。あの子も必要なことはしてくれたし、そろそろ潮時ね」

 

「怖い女だな。お前は」

 

「年季が違うのよ」

 

軽い口調で2人は言葉を交わす。まるで、付き合いの長い友人のように。

 

「デュランダルが覚醒したことで、計画は一気に進められるわ。予備プランとして考えていたキングストーンを利用する必要はなくなったわね」

 

「だが奴は、貴様の悲願成就の障害になるぞ」

 

「その為の貴方じゃない。私はてっきり仕留めた思ったんだけど?」

 

「すまんな。デュランダルの覚醒は、あのタイミングでは幸であり不幸であった」

 

「?・・・。貴方、その腕・・・」

 

女はビルゲニアの右腕を見る。ビルゲニアの右腕は肘から先の部分がなくなっていた。

 

「ままならないものだな。せっかく肉体を得たというのに限界を超えれば崩れてしまうとは。私もまだまだということだ」

 

「ハァ・・・、さっさと“ポッド”に入りなさい。調整するわよ」

 

「おや? 小言の1つでもあると思ったのだがな」

 

「聞きたいのかしら?」

 

「いや、結構」

 

「仮面ライダーの存在は私にとっては不確定要素だ。その対抗策として用意できた駒が貴方なのよ。ここで朽ち果ててもらっては困るわ」

 

「ああ、わかっている。私としても未練を残したまま死ぬつもりはない」

 

「なら、さっさといくわよ」

 

女はそう会話を切り上げると豪邸の方へ足を進めた。ビルゲニアもその後を付いていく。その光景はさながら令嬢に付き従う従者のようにも見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くぁ~~~。・・・いい天気だなぁ~」

 

ある日の昼下がり。二課の医療施設の屋上のベンチで黒山陽介は空を眺めていた。

 

デュランダルの移送は中止になり、再び二課本部の地下に格納されることになった。それに合わせて二課本部の防衛システムの強化などが行われることになり、二課の作業スタッフ達はその作業に追われている。

 

ビルゲニアとの戦いで見た光の柱はデュランダルの輝きだった。それを覚醒させた響に驚くも、彼女があの剣を振るわなければ自分はビルゲニアにやられていたかもしれなかった。

 

彼女には助けられたお礼を言ったが、当の本人はデュランダルの強大な力を迷いなく振るってしまったことに何か負い目を感じている様子だった。

 

自分の右足を見る。膝辺りまで巻かれた包帯が目に写る。ビルゲニアに斬られた箇所だ。傷そのものはもう塞がっているが、二課司令、風鳴弦十郎に安静にしていろと、命令が下っているのでおとなしくしていることにした。また、強制睡眠(司令の拳)はごめんである。

 

とはいえ、やることがないもの問題だった。喫茶店ストーンに行けば、「怪我人は休んでいなさい」と、笑顔の店長に追い返されしまい、鍛練をすることも禁じられてしまった。ロードセクターの整備も終わってしまったのでいよいよやることがなくなっていた。

 

だが、緒川慎次から連絡がきた。「お暇でしたら翼さんのお見舞いにいかれてはどうですか?」その提案に乗り翼のお見舞いに来たのだが、

 

「あ、え!? 黒山さん!? すすすみません! 5分、いや30分、時間を下さい!」

 

と、翼の病室からなにやら騒がしい音が聞こえてきたが、彼女の言うとおり待つことにした。

 

そして現在に至る。そろそろ30分経つ。

 

「行くか」

 

ベンチから立ち上がると携帯に着信がきた。相手は翼だった。

 

「翼ちゃん? どうしたの?」

 

『あ、く、黒山さん。た、助けて下さい!』

 

「ッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういう状況?」

 

陽介は翼の病室に飛び込んだ。衣類などが散乱し部屋は荒れている。そこでは立花響と翼の父、風鳴八紘がいい笑顔で握手をしており、翼は両手で顔を覆ってプルプル震えていた。

 

「立花響君と言ったか? なかなかわかっているじゃないか」

 

「いえ、そちらこそ。流石は翼さんのお父さんですね!」

 

「2人とも、もうやめてぇ」

 

「・・・どういう状況?」

 

陽介は混乱した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、君とも久しいな陽介君」

 

「ええ、お久しぶりです。八紘さん。しかし、さっきのは?」

 

「なに、同好の士という奴だ。彼女も翼のファンであると言うからね。少しばかり語り合っただけだ」

 

「な、なるほど」

 

翼の助けを呼ぶ声に焦ったが、真実は響と八絋による翼への誉め殺しであった。歌手、風鳴翼がいかに素晴らしいか、翼のあの曲のこの詞がいいとか、などなど、本人を前に2人は大いに盛り上がったという。

 

恥ずかしさから思わず助けを呼び、陽介が来室した一瞬で翼は響の首根っこを掴み病室から立ち去った。陽介達も病室から移動し今は待合室にいた。

 

「ここ最近は、広木防衛大臣の件もあり何かと忙しくてな。ようやく、時間がとれたので翼の見舞いに来たのだ」

 

「そうなんですね。・・・すみません八絋さん」

 

「何だね急に? 先に言っておくが、翼が重症を負った責任は自分にもあるとかはなしで頼むよ」

 

「え?」

 

「翼の負傷は翼自身の行いが招いたものだ。あの子も覚悟の上で絶唱とやらを歌ったのだろう。もちろん、そのことについて軽く説教でもしてやろうかと思ったが・・・。先ほど、立花君と楽しそうに話しているのを見てね。久方ぶりにあの子が素の表情でいるのが見れたよ」

 

陽介が翼の病室から離れてすぐに響が来室。本人は入るかどうか迷っていたが、病室から聞こえてくる騒音に思わず入室してしまった。

 

部屋の惨状を目の当たりにした響は、片付けの手伝い(ほぼ9割、響が片付けた)をしていた最中に八絋が来室。

 

初対面の2人だったが、何故かすぐに意気投合。翼誉め愛合戦が勃発した。

 

「立花響君か、良い子だなあの子は。翼には良い後輩とファンがいることを知れたのは良かったよ」

 

「ええ。響ちゃんの明るさにはこっちも元気をもらえますからね」

 

「君にも感謝しているぞ、陽介君」

 

「え? 俺ですか?」

 

「いつぞやの、私の不手際で、翼に下衆の魔の手が迫った時があっただろう?」

 

「ああ、あの時の」

 

「天羽奏君が亡くなって、翼から笑顔が消えてしまい、仕舞いには私の件で翼には余計な心労をかけてしまった。私自身も翼との関係は良くなかったし、接し方も正しくはなかったのだろう。だが、あの時の君の言葉に私は衝撃を受けたよ」

 

「俺、そんな大層なこと言ってましたっけ?」

 

「なに、私にとっては充分意味はあったさ。『家族の繋がりは血だけじゃない! 過ごした時間と想う心があれば絆はできるんだ!』 その言葉にハッ! としたよ。例え血は繋がってなくても、私は翼の父親なのだと。娘として想う気持ちに偽りなどないと」

 

「あの時は、あの政治家の言動に腹がたって思わず」

 

「それを迷いなく言えることが素晴らしいと私は思うのだよ。あの一件以来、翼と家族してふれ合える機会が増えたのだ。だから、君にも感謝しているよ。ありがとう」

 

「うわぁ!? 頭を上げて下さいよ!? 俺なんかにそんな畏まらなくても!」

 

「1人の父親として礼を尽くしただけだよ」

 

「いや、でも」

 

「ふむ、君はもう少し相手の好意を素直に受け取ってもいいと思うが、まぁ、いいだろう」

 

感謝を述べ、頭を下げる八絋に陽介は慌てた。彼は日本の安全保障を影から支える内閣情報官。つまりはかなりのお偉いさんである。そんな人物に頭を下げられるのは内心ヒヤヒヤである。

 

弦十郎も地位的にはかなり高いのだが、本人がフレンドリー的であり、付き合いも長い為そんなに気にならないのだか、八絋の真面目な性格は“政府の高官”という雰囲気が出ているのでこちらも緊張してしまうのであった。

 

「・・・さて、私はそろそろ戻るとするよ」

 

「あ、お疲れ様です」

 

「うむ。君も気をつけたまえよ。いろいろとな」

 

「? はぁ?」

 

何やら意味深な笑みを浮かべ八絋は立ち去っていった。

 

さて、自分はこれからどうするか。陽介は考えた。とはいえ、やることがないので帰るかなと思い待合室を出る。

 

しばらく歩いていると、先の通路から見知った人物、風鳴翼が歩いているのが見えた。

 

「あれ? 翼ちゃん。どうしたの1人で」

 

「あ、黒山さん。立花がお好み焼きを買いに行くと、飛び出したので入口で待とうかと思いまして」

 

「お好み焼き? 何でまた」

 

「まぁ・・・、お腹が空いていては良い考えが浮かばないと言って」

 

「ハハッ、響ちゃんらしいな」

 

「ええ、明るい子ですね。フフッ」

 

「お?」

 

「? なにか?」

 

「いや、久しぶりに翼が笑ってるとこを見たからね。うんうん、やっぱり翼ちゃんは笑ってる方が可愛いね」

 

「かわッ!? な、何を言いますか! この身は防人としてあるもの、歌女として着飾ることはあれど私が、か、可愛いなどど!」

 

「可愛いよ。翼ちゃんは可愛い」

 

「~~~ッ! あなたは、もう!」

 

「ん~? そんなにおかしなこと言っているかなぁ。なんなら他の人にも聞いてみる? 翼ちゃんは可愛いって」

 

「やめてくださいッ! いいですからッ! ほんとッ!」

 

翼の笑顔を見て、正直な感想を述べる陽介。可愛いと言われ、顔を赤くしそれを否定しようする翼だったが、更なる追撃で顔の赤みが増してしまうのだった。

 

「ん?」

 

自分の通信機から着信音が鳴る。通信機を取り出す。

 

『はい。こちら陽介ですが』

 

『お、繋がりましたか』

 

『その声、蛇川か。何かあったのか?』

 

『ええ、ネフシュタンの鎧の少女が現れたんですよ~』

 

『何ッ!?』

 

『今、響さんと戦闘中みたいなんで、援護に向かえますか~? 場所は△○方面ですね~』

 

『わかった。すぐ向かう』

 

「黒山さん、何が?」

 

「ネフシュタンの鎧の少女が現れたそうだ。今、響ちゃんが戦ってるらしい。・・・行ってくるよ」

 

「待って下さい! ・・・私も連れてってもらえませんか?」

 

「・・・翼ちゃん。だけど、君はまだ」

 

「ええ、私はまだ万全ではありません。ですけど、立花と黒山さん、2人の援護くらいならできます。お願いです。連れてって下さい!」

 

「・・・なら約束がしてくれ、絶対に無理しない?」

 

「はい。今また無理をすればまた病室に逆戻りですからね。無理はしません、約束です。」

 

「・・・わかった。行こう!」

 

「はいッ!」

 

ネフシュタンの少女の襲撃。その報を聞き陽介は現場に向かおうとした。翼が同行を求め、それをやめさせようとしたが、翼の意思は固かった。

 

その瞳に宿る輝きは今までの彼女とは違う決意のようなものを感じた。無理はしないという約束を交わし、2人は響の元へ急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

林が多い茂る中で2人の少女は激しく激突していた。1人は撃槍を纏い、1人は白き蛇の鱗を纏っていた。

 

撃槍を纏う少女、立花響は言う。

 

言葉が通じるなら、話し合えるなら解り合えると、

 

鎧の少女は反論する。

 

解り合える訳がないと、人間がそんなふうにはできてはいないと、

 

互いの主張は交わらず、鎧の少女の激情が燃え上がる。

 

「気に入らねぇ、気に入らねぇ、気に入らねぇ! 気に入らねぇッ!! わかっちゃいねぇことをぺらぺらと知った風に口にするお前がぁ!! ・・・お前を引きずってこいと言われてたがもうそんなことはどうでもいい。お前をこの手で叩き潰す! 今度こそ、お前の全てを踏みにじってやるッ!!」

 

「私だってやられるわけには」

 

「うおおおお! ぶっとべぇ!」

 

鎧の少女は飛び上がり鞭の先端にエネルギーを集束させる。かつて、翼に放った光球を響に打ち出した。響はそれを真正面から受け止める。

 

「もってけ! ダブルだぁッ!!」

 

だが、鎧の少女の攻撃はこれで終わりではない。響が光球を受け止めている間にもう1つ光球を作成、それを響に叩きつけた。

 

2つの光球がぶつかり爆発した。

 

「お前なんかがいるから、わたしはまた・・・・・・ッ!?」

 

「はぁああああ! ───ぅあ!?」

 

「この短期間でアームドギアまで手にしようってのか!?」

 

鎧の少女は驚愕した。自身の技を受け無事でいることにも驚いたが、爆煙の中で巨大なエネルギーを形にしようとする響の成長性にも息を飲まずにいられなかった。

 

「させるかよ!」

 

これ以上は不味い。鎧の少女は焦る。このままでは目の前のコイツが止まらなくなる。自身の手に余ってしまう。そうなったら、

 

あたしはまた、ひとりぼっちになってしまう。

 

鞭を振るい響の行動を阻害しようとするが、鞭は難なく掴まれてしまった。

 

(これじゃあダメだ。翼さんのようにエネルギーを固定できない)

 

なら、どうする?

 

(エネルギーはあるんだアームドギアに形成されないのなら、その分のエネルギーをぶつければいいだけ!)

 

どうやってぶつける?

 

(あの時のヨウさんみたいに!)

 

脳内に深夜の公園で見た仮面ライダーBLACKの動きが再生される。今、響の脳内では急速に仮面ライダーの技の動きをトレースしていた。

 

(雷を、握りつぶすように! そして!)

 

掴んでいた鞭を力の限り引っ張る。鎧の少女が引き寄せられる。

 

エネルギーを右拳に集中、勢いをつけ飛ぶ。空中で屈伸を加え、拳を突き出す。

 

(私自身が稲妻のようにッ!!)

 

響の意思に呼応するように腰部にあるブースターが点火。響は更に加速する。

 

(最速で、最短で、真っ直ぐに、一直線に! 胸の響きを、この想いを伝えるために!)

 

「うおおおおッ!!」

 

撃槍、稲妻の如く。

 

そう、形容しうる状態になった響の拳が鎧の少女に突き刺さった。

 

圧倒的な破壊力を内包したその拳はネフシュタンの鎧に罅を入れ、鎧の少女を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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