戦姫絶唱シンフォギアBLACK   作:土紋

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第二十一話 VSビルゲニア

 

「1つ、聞かせてちょうだい」

 

「······何だ?」

 

金髪の女が人の形をした異形に話しかけていた。異形、怪人は緑色の液体で満たされたカプセルのような入れ物に入れされている。人1人は余裕で入れる大きさのこのカプセルはポッドと呼ばれている。奇妙な絵面だ。だが今この場にいるのはこの2人だけ、何も気にする必要はなかった。

 

「あなた、何故私に従うの?」

 

「ほう······」

 

「······私は、あなた達怪人を自分の戦力にするためにあなた達を再生、いや複製した。採取した怪人達の細胞を培養したけど、ほぼ完全に複製できたのはクモ怪人だけだったわ。他の怪人の大多数は培養中に細胞が死滅して思うような戦力を整えられなかった」

 

金髪の女、フィーネは続けて言う。

 

「クモ怪人にしても、外にだした途端に私に歯向かってきたわ。まぁ、駒がちゃんと動いてくれなきゃ困るから複製怪人には脳にコントロール装置を埋め込んでいるけど」

 

「ならあやつはどうだ。コウモリ怪人の」

 

「あれはまた別口よ。人間に怪人の細胞を注入したらどうなるか実験したのよ。()()()()と面倒のない人間を集めた結果、唯一成功した実験体があれだっただけよ。まぁ、あれも適合した途端暴れまわったけどね」

 

なるほどな、とビルゲニアは思う。

あのコウモリ怪人を見た時にビルゲニアは違和感を感じていた。人のようで人でない、しかし怪人のようで怪人でもない。半端に混じって安定していないそんな印象だった。

 

「それよりもあなたよ」

 

キッ、とフィーネはポッドの中のビルゲニアを睨み付ける。

 

「どの怪人も反抗的でコントロール装置で操るしかなかった。だけどあなたは違ったわ。不完全な複製とはいえ、あなたは目覚めた時から私に従順だった。コントロール装置は使ってないのに。······何故なの?」

 

フィーネにとっては当然の疑問だった。今までの傾向から怪人達を従わせるには脳に仕込んだコントロール装置を使うしかなかった。このビルゲニアも例外ではない。なのにこの怪人は、ある日突然目覚めた。また暴れるのかと思えば主君に使える騎士のようにおとなしかった。それが逆に不気味だった。何か裏があるのではないかと今まで泳がせておいたがそんな様子は見受けられなかった。

 

「フッ、そうたいした理由はない」

 

ポッドの中でビルゲニアが鼻を鳴らす。

 

「恩だ。私が貴様に従うのは単純に恩返しだよ」

 

本当か? 疑念が深まる。しかし、ポッドの中の怪人はそれが当たり前かのように答える。

 

フィーネが調べたところ、このビルゲニアという怪人はかなりの野心家だと思っている。暗黒結社ゴルゴムがまだ健在だった頃、仮面ライダーBLACKと幾度となく激闘を繰り広げる一方、“三神官”と呼ばれる幹部の作戦を妨害していたとも調べている。

 

己の地位を確立しつつ、いずれは創世王になろうとした怪人、それがフィーネが調べあげたビルゲニアという怪人だ。

 

「ふむ、まぁ信用されんのも仕方ないだろう」

 

「ええそうね。あなた達怪人達に“恩返し”なんて概念があるなんて驚きだわ。······で、何が狙いなのかしら?」

 

「そう睨むな。このポッドに入ってなければこの身体は一週間ともたない。貴様の存在そのものが私にとっての生命線だ。折角機会を得たというのに下手に反抗して操られては望みも果たせんからな」

 

「あら、そんなに仮面ライダーにご執心なのかしら」

 

「そうだとも。それが私に残された最後の願いだ。だから感謝しているのだ。貴様が駒としてこの身体を用意しただけだとしても、今、私はこうしてここにいる。故に、だ。存分に利用するがいい。貴様の邪魔をする者がいるなら全て斬り捨てよう。そのうえで私は、私の願いを果たしてみせよう!」

 

ほんの少し気圧された。この怪人には意地がある。なんとしても己の願いを叶えようとする意地が、·········自分にも叶えたい望みがある。何度も死に、何度も甦り、時間をかけて準備を進めてきた。この怪人にもあるのだ。叶えたい願い、目的が。

 

「フフッ、フハハハハッ! いいわ。ならばやってみせなさい。仮面ライダーを倒してみせなさい!」

 

「ああ、もちろんだ」

 

(倒す。倒してみせる。そして、私は······)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クリス、先に行ってくれ」

 

「はぁ!? 何言ってんだよ!?」

 

クリスの反論を耳にしつつも陽介は今の状況を整理する。

 

スカイタワーは目前だという所でビルゲニアが道を塞ぐ様に現れた。スカイタワー上空にいる大型のノイズは空から落ちた黄色い閃光と地上から空へ走った青い閃光でその数を4体から2体に減らしていた。

 

───響ちゃんと翼ちゃんだ。

 

2人が戦っているのを確信する。しかし、残った大型のノイズはその身体から通常固体のノイズを次々と投下していた。まるで空中母艦か要塞だ。凄まじい数のノイズが投下されていた。

 

「···頼むクリス。俺の仲間を助けてほしい」

 

「あいつは、どうすんだよ」

 

「奴の相手は俺がする。ここで2人共足止めを食らうわけにはいかない」

 

「あたし達2人であいつを倒すのはどうなんだよ?」

 

「それもいいけど、わざわざ待ち伏せていたんだスカイタワーに何かあるんだきっと、だから頼むよ」

 

「······ちぇ、しゃあねぇな。······気ぃつけろよ?」

 

「ああ、クリスもね」

 

「おう。───Killiter Ichaival tron···」

 

若干渋った様子だがイチイバルを纏いクリスは跳ぶ。ビルゲニアの頭上を軽々と飛び越えてスカイタワーに向かっていった。

 

「茶番は終わったようだな」

 

「こっちの動きを待ってくれるなんてな。どういうつもりだよ」

 

「あの小娘が行ったところで結果変わらんだけだ」

 

「どうかな。今のクリスならきっと響ちゃん達と手を取り合える」

 

「ほう···、随分と信頼しているではないか」

 

「当たり前だ。もう仲間なんだからな」

 

「ふん、馴れ合いの間違いだろ。そんな様で俺に勝てるとでも? “あの頃”の貴様はもっとギラついて闘争心に満ち溢れていたというのに」

 

「勝つさ」

 

「······」

 

「お前がどんな理由で立ち塞がろうと、俺のやることに変わりはない。“自由と平和”を守る為にお前を倒す! 」

 

ロードセクターから降り、陽介は構える。

 

「変······身ッ!」

 

変わる。人の身体から闘う為の姿へと変わっていく。

 

「仮面ライダー······BLACKッ!!」

 

黒い装甲が身を包み隙間から余剰エネルギーが蒸気として噴き出す。変わった。そのことが確認でき、ビルゲニアは自分の口角が上がっていることに気が付かなかった。

 

BLACKは拳を握り、ビルゲニアは剣と盾を構えた。一瞬、音が消える。そして、次の瞬間には地面が爆ぜた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拳が唸る。盾が響く。剣が振るわれ、手刀で反らす。互いに退かず、近距離での攻防は一進一退を極めた。

 

BLACKが殴り掛かれば、ビルゲニアはそれを防ぐ。反撃の剣をビルゲニアが振るえば、BLACKはそれを時にスウェーして避け、時には手刀にキングストーンエネルギーを込めそれを受け流した。

 

「ダァ!」

 

「セイッ!」

 

幾度かの攻防の末、先に仕掛けたのはBLACKだった。ライダーチョップ。右手を手刀の形にし、キングストーンエネルギーで強化。その威力は直径10センチメートルの鋼鉄を切り裂くほどである。

 

ビルゲニアは慌てずこれを迎撃。タイミング的に盾が間に合わないので剣で迎え撃つ。手刀と剣の鍔迫り合いだ。

 

互いに力を込め押し合う。押せば押し返され、押されれば押し返す。ここでBLACKは空いた左手でビルゲニアの右手首、剣を持っている手首を掴む。右手を持ち上げ体を潜り込ませ足を払う。

 

「ダァアリャッ!」

 

背負い投げ。力の限り放り投げた。

 

しかしビルゲニア投げられるも、空中で体を捻り鮮やかに着地。お互いの距離が開くだけ

 

「キングストーンフラッシュッ!」

 

閃光。同時に光が押し潰してくるような衝撃が盾を構えたビルゲニアに襲いかかった。

 

「ぬぅ、用途を変えてきたか」

 

自分が知ってるキングストーンフラッシュは目眩ましか、相手の術を破る光だ。しかし、聞いた話では一度死んで、甦った後の仮面ライダーBLACKのこの技は破壊光線にもなるモノだと聞いている。

 

「だが、この程度!」

 

閃光を振り払うように盾を振り回す。光と衝撃がかき消され、

 

「ライダーキックッ!」

 

必殺の蹴りを放つBLACKの姿が見えた。

 

「ッ! チィッ!」

 

盾を構える。稲妻のごとき一撃がビルゲニアの盾に突き刺さる。僅かな均衡の後、勝ったのはBLACK。盾ごとビルゲニアを蹴り飛ばした。

 

BLACKは着地、ビルゲニアは地面を転がる。追撃の一撃を放つ為にバイタルチャージ、地面を転がっていたビルゲニアは突然地面から跳ねる。空中で身体を回転させながら剣にエネルギーを込めた。 速かったのはビルゲニアだ。

 

「ビルセイバーダークストームッ!」

 

着地と同時に剣に込められたエネルギーを放つ。秒速200メートルの旋風がBLACKに迫る。直撃。チャージ中で無防備なBLACKは旋風に呑まれた。だが、

 

「うおおおおッ!」

 

風に身を任せ、BLACKの身体が高速回転する。そのまま回転しながら空へ昇る。

 

「なんだとッ!?」

 

「もらうぜ! この風を!」

 

赤熱化した右足を伸ばしドリルのように回転しながら落下する。

 

「大旋風ライダーキックッ!!」

 

激突。咄嗟に構えた盾で受け止めるもガガガッ! と掘り進むような掘削音が響きわたる。

 

「ぬぅうううううッ!!」

 

「オオオラァアアアアアッ!!」

 

弾け跳ぶ。ぶつかり合った蹴りと盾はその中心で爆発が起きたような衝撃を生み出し、BLACKとビルゲニアを吹き飛ばした。

 

BLACKは上手く着地できず地面を転がり、ビルゲニアは無人の車に激突。その衝撃をもってか車は爆発、炎上しビルゲニアは炎に包まれた。

 

呼吸を整えながら炎上している車を睨み付ける。先ほどの一撃は虚をついたつもりだったが、しっかり盾で受け止められてしまった。吹き飛び、炎に包まれたビルゲニアだが、あれで倒せたとは微塵も思わなかった。

 

炎上する車を注意深く観察していると、不意に地面が揺れた。足がぐらつくほどの大きな震動。地震かと思ったがその答えはすぐにわかることになった。

 

「何だ···あれは···?」

 

塔。そう見える巨大な建造物が地面の下から生えるように出現した。かなり離れた場所だが塔らしきものが不気味な雰囲気を放っているようにも感じた。

 

(あれが、カ・ディンギル? 何で地面から? ······いやまて、あの方角は、あれは()()()()現れた!?)

 

塔の出現に驚くが、それよりも塔がどこから出現したのか気になった。あの塔が出現した方角にはリディアン音楽院と二課本部のある方角だ。嫌な予感がした。直ぐに向かおうとしたが、突然凄まじい熱風に襲われそれは叶わなかった。

 

「ぐぅ!?」

 

全身を焼かれながら地面を転がる。熱風が襲ってきた方角を見る。炎上していた車からは火がなくなっていた。雨が降ったわけでもないのに何故火が消えた? それはビルゲニアが自分の技(ビルセイバーダークストーム)で炎を巻き込んだからだ。現に剣を突きだしながら焼け焦げた車から出てくるビルゲニアの姿が見えた。

 

「どうやら準備は整ったようだ」

 

「ってことは、あれが、カ・ディンギルかよ。あんな塔を建ててどうする気だ」

 

「あれは塔ではない。砲身だ」

 

「砲身? あれが砲身だとして、あんなバカでっかい大砲で何を射つんだよ」

 

「月だ」

 

「·········は?」

 

「今宵、月は穿たれ、新たな支配者が君臨する。あれはその為のモノだ」

 

「月を、だと? 何でそんなことを!?」

 

「それがフィーネの願いを叶える為に必要なことだからだ。()()からの解放やら、破壊した月の破片による地上への被害など、まぁいろいろあるが、あやつの本懐にとっては些細なことだ」

 

理解が追い付かなかった。現れた塔はカ・ディンギルだった。しかし、あれは塔ではなく砲身だと言う。しかも月を破壊するというのだ。

 

普通ならばそんな突拍子のないことは不可能だと思うだろう。だが、眼前の怪人は自信満々だ。ハッタリ、ではないのだろう。本気だ。本気で月を破壊する気なのだ。

 

だが、まだわからないことが多い。あのカ・ディンギルが月を破壊するというにも、放つ弾や稼働するのに必要なエネルギーはどうしてるのか。電気とかでいけるのか? いやしかし、あんな巨大な砲台を動かすのに電気で足りるのか? そんなもの超常的なものでもなければ───

 

「ッ! まさかッ!?」

 

思考していて気付いてしまう。カ・ディンギルが現れた場所、そこは何処だ? そしてそこには何がある?

 

「ハァッ!」

 

思考を遮るようにビルゲニアが襲いかかる。

 

「ふん、流石に勘づくか」

 

「使う気か、聖遺物、デュランダルを!」

 

「そうだ。あの不朽不滅の輝きは無限のエネルギーに等しい。そのエネルギーを利用した荷電粒子砲で月を破壊するのだ! そして、そんなことが出来そうな技術者に心当たりがあるだろう?」

 

「·········了子さんかよ······」

 

「ハハハハハッ! その、通りよぉ!」

 

「だとしても、何か理由がある筈だ。了子さんがそんな」

 

「甘い奴よ貴様は、あの女は貴様が思っている以上に数奇な運命を歩んできたのだ。貴様の言葉で止まるものか! もう誰も、あの女を止めることはできぬのだ!!」

 

「ぐぅあッ!?」

 

ビルゲニアの猛襲がBLACKを捉える。次々と振るわれる斬撃を何とか紙一重で避けていたが、遂に逃れられなくなった。逆袈裟斬り、左脇腹から右肩にかけて線が走り火花が散る。吹き飛び、地面を転がった。

 

───早く、カ・ディンギルへ向かわなければ。それに確かめなきゃ、真相を了子さんに。

 

思考が乱れる。集中が途切れる。BLACK自身は気付いていないが、明らかに動揺してしまっていた。突然のことで戸惑ってしまったのだろう。

 

「がっ」

 

だが、タイミングが悪い。その動揺を、その隙を見逃すビルゲニアではなかった。

 

BLACKは感じる。腹部に違和感を。自身の腹にビルゲニアの剣が深く突き刺さっていた。立ち上がったその瞬間に刺されたのだ。反射に近い反応で剣を引き抜こうとするがもう遅い。

 

「ビルセイバー───」

 

剣が回る。ビルゲニアは己が引き出せる力を愛剣に注ぎ込む。

 

「───ネオダークストーム───」

 

回転速度が上がる。回転するビルセイバーは凄まじい風を起こし極小の台風が生まれる。身体の内側を剣先がかき乱す。とてつもない激痛がBLACKの脳髄を駆け巡った。

 

「クラッシュッ!!」

 

「─────ッ!!?」

 

そしてビルセイバーの柄をビルゲニアは殴る。おもいっきり、渾身の力を込めて、その衝撃をもってビルセイバーはBLACKごと吹き飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァッ······ハァッ······」

 

渾身の技を放ち終え、拳を突き出したままビルゲニアは荒くなった呼吸を整えていた。右腕が痺れる。やはりこの技はこの肉体には掛かる負荷が大きすぎるようだ。以前、使用した際は反動で右腕が崩れたが、今は“まだ”大丈夫なようだ。

 

ビルセイバーネオダークストームクラッシュ。そう名付けたこの技は、ビルセイバーに自身の魔力など込められるエネルギーを込め、それを弾丸のように相手に撃ち込む技だ。とにかくエネルギーを込めるのでその過程でビルセイバーは何故か高速回転する。それは意図したことではないが、結果的に極小の台風となったビルセイバーを殴り飛ばすことで想定よりも高い破壊力を生み出すことができた。

 

現に自分の目の前には文字通り台風が通り過ぎたような惨状になっている。コンクリートを抉り、木々を薙ぎ倒し、車が横転していた。

 

さて、どこまで吹き飛んだのやら。

 

見える範囲には仮面ライダーBLACKの姿は確認できない。だが、手応えはあった。確実に直撃した。吹き飛んでいくその様をこの目で見ていた。

 

右手を開き念じる。戻れ、と

 

何かが空で煌めき、ビルゲニアの元へ向かってきた。それを手にする。ビルセイバーが戻ってきた。

 

「······フフフ」

 

笑みが零れた。だって仕方がないないだろう。今この手にあるビルセイバーを見れば笑みが零れるのも仕方がないのだ。

 

刀身が赤黒く染まっている。まるでそう塗装されたかのように赤黒く染まっているのだ。それは血。誰の? もちろん仮面ライダーBLACKのだ。確信だった。

 

「フハハハハハハハハハッ! やったッ! やったぞ! オレは遂に“勝利”したのだッ! ハハハハハハハハハハッ!!」

 

高らかに笑いあげる。ビルゲニアの勝利の雄叫びが辺りに響くのだった··········。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

···。

 

·······。

 

·········ああ、まずったな、ちくしょうが···。

 

く、そ、腹に、あな、あいて···。

 

カ・ディン、とめ、ねぇ、と······。

 

···ま、ずい、···い·······しき···が··············。

 

···光が、のび、て·······。

 

······ウ、タ···? ···············。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビルゲニアの技によって仮面ライダーBLACKは倒れた。

 

力なく地面に仰向けで大の字で倒れている。その腹部には拳2つ分の穴がポッカリ空いていた。そこにある筈の内臓器官はなく止めどなく血が溢れ、血の池が出来上がっている。大きな赤い瞳も徐々にその光が失われていった。

 

消えゆく意識のなかで、巨大な光の柱が天に昇っていくのが見えた。

 

そして、ウタが最後に聴こえた。

 

それは、とある少女がウタった最後のウタ。命を懸けた世界に響く叫び。微かにだが、それはBLACKの耳に届いた。

 

しかしそれだけだ。既に彼に意識はなく、命の輝きは失われてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、彼の腰部にある王の石は静かに輝きだした···。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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