戦姫絶唱シンフォギアBLACK   作:土紋

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第二十七話 不朽不滅

 

 

なんだこの光景は、と偶々、戦場の後方にいたクモ怪人の1体は思う。

 

自分達は怪人だ。人間を超越した身体能力をもった特別な存在だ。例え仮面ライダーが相手でも100という数の差で押し潰せる、そのはずだった。

 

「ダァッ!」

 

「オラァッ!」

 

だが、この現状はなんだ?

 

たった2人の敵に同胞が次々と薙ぎ倒されていた。

 

仮面ライダーはまだわかる。奴も此方と同じ改造人間、その強さは本物だ。

 

だが、その仮面ライダーと背中合わせで戦っているあの人間はなんだ? シンフォギアのような特殊な力を持つわけでもなく、仮面ライダーのように改造された人間でもない只の人間がどうして怪人を殴り飛ばせる? どうして恐怖しない? いったい何なんだあの人間は!?

 

怪人としての自負が崩れていくその1匹のクモ怪人は自分が理解したくない感情に呑まれその場で棒立ちになっていた。

 

「オオオラァアアアッ!」

 

処理しきれない感情で立ち尽くしていた1匹のクモ怪人は殴り飛ばされてきた同胞に押し潰されるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

状況は劣勢と言わざる負えないと、緒川慎次は心のなかで愚痴る。

 

3対100。たった3人でこれだけの怪人を相手取ることは普通に考えれば英雄の所業だろう。

 

しかし、仮面ライダーBLACKと二課司令、風鳴弦十郎。この2人の戦闘能力がいかに高くても自分も含め万全な状態ではない。自分はフィーネとの遭遇戦でのダメージは抜けておらず、司令にいたっては腹部に穴があいている。BLACKの彼も動きに精細が欠いている。

 

それでも、押し込まれないのは意地の強さと言うべきか。

 

「お二人共、一旦下がって!」

 

緒川の言葉に反応し仮面ライダーBLACKと弦十郎はその場飛び退く。

 

2人を取り囲もうとしたクモ怪人達の中心に手榴弾が投げ込まれ爆発。撃破にはいたらないがダメージは与えたはず。

 

「どのくらいヤった?」

 

「10までは数えてましたけど、そっから数えてないですね」

 

「大技は放てんか?」

 

「あと1、2発撃てるかどうかってとこですね」

 

「むぅ、やはりこのままでは」

 

ジリ貧、その言葉が脳裏をよぎる。

 

「だけど、こいつらちょっと変なんですよ」

 

「変、とは?」

 

「なんつーか、今まで戦ってきた怪人達より、“脆い”んですよ。1体1体が今の俺でも割りと簡単に倒せるくらい」

 

「ふむ・・・」

 

「ですが、脆いといっても相手は怪人。そして、この数を捌くのは・・・」

 

多少減ったとはいえまだまだクモ怪人の数は多い。1対1の状況なら今のBLACKと弦十郎でも敗北はないだろう。だが、それを百回近く続けるとなると2人の体力がもたないのだ。

 

とはいえ、愚痴ってる余裕はない。怪人達は待ってはくれない。何か状況を好転させる手はないものか・・・。

 

「あ、弦さん、緒川さん、ちょっといいっすか?」

 

ピィン、とBLACKは一手思い付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、やってみるか」

 

「現状はそれしか手はなさそうですね」

 

「なら、ちゃっちゃっとやりますか!」

 

BLACKの提案に若干戸惑いつつもそれしか手はないとおもい準備に取りかかる。やらないという選択肢はない。やらなければ此方がやられるのは時間の問題だからだ。

 

「先ずは俺からだ。───爆震ッ!

 

前に出た弦十郎は今出せる全力の震脚を放った。腹に穴が空いているのに彼の震脚は地面を抉り、真っ直ぐに掘り進んだ。それに巻き込まれるクモ怪人もいるが大多数は地面の揺れによって身動きが止まっていた。

 

「次は俺だ。───キングストーンフラッシュッ!

 

「ッ!? ギャアアアアアアアアアアッ!?」

 

揺れが収まる間もなくBLACKのベルトから強烈な閃光が放たれた。

 

広範囲に広がる閃光は全てのクモ怪人の視力を一時的だが奪う。だが、BLACKに近い位置にいたクモ怪人は強烈な閃光によってその身を焼かれていた。

 

「よし、いくぞ陽介! ずぅおおおりゃああああッ!!」

 

足場を奪い、視力を奪い、BLACK達は最後の一手を放つ。

 

比較的BLACK達から離れた位置にいたクモ怪人の1匹は比較的早く他のクモ怪人よりも視力が回復する。

 

何をしてくるのかと回復した視力で見たものは宙に浮く巨大な瓦礫だった。10メートル以上ありそうな瓦礫はリディアン校舎の一部だ。それを弦十郎は投げた。

 

「でぇえええりゃああああッ!!」

 

さらにそれをBLACKはサッカーボールのように蹴り飛ばした。密集したクモ怪人達に向かって瓦礫が落ちる。巨大な質量による圧殺、必殺技を撃つ余力がない彼らに残された最後の手段だ。

 

潰される。そう悟ったクモ怪人達は我先にと落下点から逃れようとする。しかし、密集してしまった怪人達は思うように動けず、互いに行動の邪魔をしてしまっていた。

 

だが、それでも生き残ろうと必死な者達もいる。邪魔な同胞を押し退ける者、糸を離れた場所に吐き、戻す反動を利用して離脱する者。安全圏に逃れたと判断した一部のクモ怪人達は落ちてくる瓦礫に眼をやった。

 

「爆ッ!」

 

落ちる瓦礫が爆散した。巨大な1つの塊がバラバラに砕け散る。

 

緒川の言葉で瓦礫が爆散したのは、予め瓦礫に緒川特性の爆薬を仕込んでいたからである。

 

弦十郎の投擲にBLACKの蹴りを加え、瓦礫は爆撃機から放たれる爆弾のようなものになっていた。しかしそれが爆散したことで瓦礫の散弾が出来上がった。

 

巨大な1つの弾丸は無数の弾丸へ。瓦礫は戦場に降り注いだ。

 

「ギャアアアアアアアッ!?」

 

その結果がどうなったかはクモ怪人達はその身をもって知ることとなる。質量による圧死はなくなった。だが、ある者は顔を、ある者は腹を、腕、足、無数の瓦礫の弾丸によって身体の一部を失い、または全身を撃ち抜かれた。

 

いずれにせよ、数多のクモ怪人は地に沈むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土煙が舞う。BLACK達3人は肩で息をしながら戦場を見つめる。確かな手応え。土煙で視界は悪いが敵の気配は感じなくなっていた。

 

「ぐっ!?」

 

「司令!?」

 

緊張がゆるんだのか弦十郎は腹を抑え膝をつく。腹に巻いている包帯からは血が滲む。痛み止めの効果も切れたのだろう。そんな弦十郎に駆け寄る2人。

 

「弦さ───」

 

「まだだ!」

 

怒声をあげる弦十郎だったが少し遅かった。土煙の向こうから白い何か伸びてくる。それらはBLACKの身体に巻きついた。

 

「黒山さん!」

 

「クソ、しまった」

 

BLACKに巻きついたのは糸、それも1本や2本ではない。無数の糸がBLACKを雁字搦めにした。

 

土煙が晴れると糸を出した者達、クモ怪人達が一斉に糸を吐き出していた。

 

どのクモ怪人も満身創痍、片腕がなかったり、片足がなかったりしたが怪しく光る赤い目からは殺意を漲らせていた。

 

100匹ほどいたクモ怪人だが、今はもう20匹ほどしか残っていない。だが限界が近いBLACK達を仕留めるには充分な数だった。

 

「キングストーンフラッシュッ!! パワーストライプスッ!」

 

糸がどんどんBLACKを縛りあげようとするなかその拘束を解こうとBLACKはもがく。しかし、いくら叫ぼうがベルトから放たれるはずの閃光も、身体に巡らされているラインから発せられるエネルギーも出なかった。

 

自分はまだ仮面ライダーBLACKのままだ。変身は解けてはいない。だが変身を維持するので精一杯でそれ以上のパワーが発揮できなかった。

 

「う、うおおおおおおおおおおッ!」

 

足掻く。視界を塞がれ、喉を絞められ、身体が縛られようとも必死に足掻く。だが、糸をほどけない。

 

生き残ったクモ怪人達も必死だ、全員が仮面ライダーBLACKに向かって糸を吐き出した。1番の危険性は仮面ライダーだ。そのことが本能に刻まれていた彼らの行動は決死だ。

 

吐き出された糸は幾重にも重なり仮面ライダーBLACKを完全に拘束する。繭と言う名の監獄だ。外の景色が見えず、白一色しか見えないBLACKにとっては周りがどうなっているか把握できない。

 

好機。そう判断したクモ怪人達は一斉に飛びかかった。

 

(まだだ! まだ終わってたまるか。約束したんだ、こんなところで終わってたまるかッ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ?」

 

フィーネは違和感を感じていた。

 

今、自分は“ネフシュタンの鎧”と“ソロモンの杖”、そしてノイズと完全融合し黙示録に登場する赤き竜がごとき姿になり、さらにには完全聖遺物である“デュランダル”をその手にしている。

 

3つの完全聖遺物を手中に納めているフィーネにとって自分の目の前で息巻く小娘達など物の数ではなかった。

 

いかに自身が生み出した玩具を奇跡の領域にもっていこうと、たかが10数年しか生きていない小娘共に、積もりに積もった自分の想いが負けることなどあるはずがなかった。

 

だが、それでも違和感は消えなかった。むしろ大きくなっている。

 

デュランダル。この完全聖遺物の様子がおかしいのだ。熱い、熱いのだ。この剣が放つ無限の輝きから得られるエネルギーがどんどん大きくなっている。それこそ現在進行形で、

 

「ええい、どうしたとゆうのだデュランダル!」

 

抑えきれない。暴れ馬のようにフィーネの手の中で輝くデュランダルはその熱量でフィーネの手を焼き斬った。

 

「ぐああッ!? なんだとッ!?」

 

フィーネの手から離れたデュランダルはまるで意思を持つかのように独りでに浮遊する。そして、掴もうとするフィーネを振り切り、ある場所へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が走った。

 

身動きがとれなくなった仮面ライダーBLACKと、そのBLACKにトドメを刺そうとしたクモ怪人達の間にソレは舞い降りた。

 

完全聖遺物デュランダル。デュランダル自体が放つ光がクモ怪人達を吹き飛ばし、BLACKを拘束していた糸を焼き払った。

 

眩すぎる光は見る者の視界を焼き尽くす。至近距離にいるBLACKにもその影響がでるかと思われたが、

 

「あったけえ。これは?」

 

BLACKに向けられた光は違った。光を浴びたBLACKは不思議な感覚に包まれた。途轍もなく大きなモノに抱き締められるような包容感、しかし苦しくはない。温かい光がBLACKを癒していく。

 

『不屈なる者よ』

 

声がした。頭のなかに直接響く声。だけど声色が安定しない、男の声なのだろうが、子供のように甲高い声とも聞こえるし、重く響く老年の男ようにも聞こえる。

 

「デュランダルが、喋った?」

 

『王の資格を持つ者よ、汝、力を欲するか』

 

此方の思考などお構い無しにデュランダル? が頭の中に問いかけてくる。

 

「力、か・・・。あぁ、お前の力を貸してほしいデュランダル!」

 

『汝、我が力で数多の敵を討ち滅ぼす者か?』

 

「違う。護るためだ。俺はみんなを護りたい。その為にも力を貸してくれデュランダルッ!」

 

『d'accord』

 

短い問答。デュランダルの質問の意図はわからなかったが、最後の返事はどこか嬉しそうな声色のような気がした。

 

BLACKの手に吸い込まれるようにデュランダルが収まる。掴んだ瞬間、全身に力が漲った。

 

デュランダルの輝きの影響か、キングストーンも強烈に輝く。あれ程ボロボロだった身体が羽のように軽い。

 

「うおおおおおおおおおおッ!!」

 

咆哮と共にデュランダルを掲げる。刀身はさらに輝き光の刃が形成され雲を突き抜けるほどの高さに達した。

 

黄金に輝くデュランダルの危険性を感じ取ったのか、クモ怪人達は形振り構わずBLACKに攻撃する。糸を吐いて動きを止めようとするもの、爪で直接攻撃しようとするもの。

 

あれは駄目だ。振るわせてはいけない。そう本能が警告するが、既に遅かった。

 

「うおおおおりゃあああああああッ!!」

 

一閃。

 

その場で一回転するようにデュランダルを振り回す。正しいフォームでもなんでもない無我夢中で力任せに振り抜いた動きだ。

 

だが、その光の軌跡に入ったモノは全て両断された。

 

輝く刀身が消える。残っていた全てのクモ怪人は断末魔をあげる間もなく斬られ、切り口から一瞬で燃え上がり消滅していった。

 

「バ、バカな」

 

デュランダルの刃は全てを斬り裂いた。その光の軌跡にいた瓦礫も怪人も紙切れのように易々と斬って捨てた。

 

「あり得ん、こんなことが!?」

 

しかし、エクスドライブに至り、空を飛んでいたシンフォギア装者達、危機を感知し咄嗟にその場に伏せた風鳴弦十郎と緒川慎次には被害はなかった。

 

「あぁあああぁぁぁああああああッ!?」

 

だが、光の軌跡に入っていたモノの末路は変わらない。2つの完全聖遺物とノイズと融合し、巨大な竜のような姿になったフィーネも同じ末路を辿ることになる。

 

例外はない。本来なら、デュランダルとネフシュタンの2つの完全聖遺物による対消滅が起こる筈だったが、デュランダルにはキングストーンのパワーを上乗せされたことにより、デュランダルには規格外の力が集まり対消滅はおこらなかった。

 

「クソ、クソッ! どうしたネフシュタン!? 何故再生しないッ!?」

 

再生はしている。だがそれ以上の速さで焼き尽くされている、再生が追い付かないのだ。

 

巨大な竜はその根元が完全に両断され倒れていく。その光景はさながら大木が斬り倒されるようなものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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