戦姫絶唱シンフォギアBLACK   作:土紋

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第二十八話 決着、そして

 

 

「おのれ、おのれえええええッ!」

 

恨み節を吐きながら、自身の下半身を輪切りにしているフィーネの様子を雪音クリスは空から眺めていた。

 

どういうわけかフィーネの手からデュランダルが離れ、それが仮面ライダーBLACKの手に渡り、彼がデュランダルを振り回し、地下へ雪崩れ込もうとしたクモ怪人達と巨大な竜へと変貌したフィーネを斬り払った。

 

クモ怪人達は残らず消滅。フィーネも斬られた部分から身体の消滅が始まっており、それを阻止しようと自身の下半身をネフシュタンの鞭で斬り捨てているが、斬っても斬っても身体の消滅が止まることはなかった。

 

「クリスちゃん・・・」

 

「・・・ったく。アイツめ、せっかくあたし様がこれから大活躍するって時に、全部1人でやっちまいやがって、もて余すじゃねぇか」

 

ガングニールの装者、立花響が少し心配した様子で声をかけてくるが、おどけて聞き流し、件の人物に目をやる。

 

当の本人はデュランダルを掴んだまま大の字で地面に倒れていた。どうにか無事な様子に自然と頬が弛む。

 

「・・・嬉しそうだな、雪音」

 

「あん? 何がだよ?」

 

「いや、お前がそんな風に笑うとはなと、思ってな」

 

「・・・気のせいだろ」

 

ぷいっと思わず顔を反らす。にやけ顔をこれ見せたくなかった。

 

「んで、どうするよこっから」

 

「・・・了子さんは」

 

「あの状態ではおそらく長くはもたないだろう」

 

3人は眼下で消滅に抗うフィーネを見つめる。デュランダルを奪い、完全聖遺物同士の対消滅を狙ったとはいえ、3人それぞれ彼女に思うところはあった。

 

困惑、疑惑、怒り、憎しみ、そして・・・、いずれにせよこれが別れになることを3人は理解した。

 

そんな想いに耽っていると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴッ!

 

 

 

「何の、音?」

 

かすかにだが、何かが崩れれるような音を3人は耳にした。同時に自分達は影に覆われた。だがそれはあり得ないことだった。

 

自分達は今、空に浮いている。そんな自分達に影を落とすなんて自分達より高い所に何かあるか、影を落とせるほどの高い建物ぐらいだろう。

 

「おい、ちょっと待て」

 

だがここには存在する。

 

「・・・まさか」

 

1人の女の野望の結晶。月を破壊する為に造られた塔にも見える巨大な荷電粒子砲。

 

「「「カ・ディンギルが、倒れてるッ!?」」」

 

圧巻する光景、一瞬だがその事実に身体が硬直した。

 

「うええええッ!? 何でッ!?」

 

「・・・まさか」

 

「おい、何かわかったのかよ」

 

「・・・デュランダルだ、デュランダルが斬り裂いてしまったんだ・・・」

 

「マジかよ・・・」

 

翼の言うとおりだった。仮面ライダーBLACKがデュランダルを振るう前、デュランダルにキングストーンエネルギーを掛け合わせ、雲を突き抜けるほどの巨大な光の剣を精製した。

 

埒外なエネルギーをもった完全聖遺物の前には、防御など無意味で、横凪に振るわれたデュランダルの光の軌跡にいたモノは例外なく斬り捨てられた。

 

例外はない。

 

BLACKはただ護る為に全力を尽くしただけだったのだ。だがそれは、思わぬ展開を招いてしまった。

 

「クソ、とりあえずあの人達回収して、とっととずらかるぞ!」

 

クリスは倒れてるBLACK達を連れてこの場から離れようとする。

 

しかし、カ・ディンギルが倒れることが何を意味するのか、そのことを一瞬速く判断できた響はカ・ディンギルに突撃した。

 

「立花!?」

 

「おいバカ! なにしてんだ!?」

 

「カ・ディンギルを戻すんです!」

 

「はぁ? 何でそんなこと?」

 

「倒れたら地下にいるみんなが!」

 

「「ッ!?」」

 

カ・ディンギルほどの巨大な建造物が倒れれば被害は大きなものとなる。リディアン学院校内の地盤の強度がどれほど脆くなっているかもわからない。

 

もし、このまま倒れば、地下に避難した人々にも影響が出るかも知れない。それこそ最悪の結末を予想してしまうほどに。

 

クリスも翼もカ・ディンギルに向かう。破壊するという選択肢もあるが、この場で破壊してカ・ディンギルの破片による二次災害もあり得る。

 

不幸中の幸いと言うべきか、まだ、カ・ディンギルは倒れかけの状態だ。3人のエクスドライブの出力なら元の状態に押し戻すことができるだろう。

 

だが、それを許さぬ者がいた。

 

爆発。カ・ディンギルの根元で爆発が起きた。

 

「ぐっ、ううううううううううッ!?」

 

「爆発ッ!? 何でッ!?」

 

「しまった、これではカ・ディンギルがッ!?」

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」

 

緊迫した状況が悪化した。下手人が自ら高らかに笑う。

 

「実に、実に業腹だが、認めてやろう。“今回は”譲ってやる。だが、後の憂いは今ここで押し潰してくれようッ!」

 

カ・ディンギルの倒壊を決定付けたのはフィーネだった。彼女はネフシュタンのパワーを解放し、球状のエネルギー体を精製、それをカ・ディンギルにぶつけたのだ。

 

「あんにゃろぉッ!」

 

「構うな、雪音ッ!」

 

クリスはフィーネに銃口を向けるが翼の静止の声に堪える。フィーネに構っている暇などなく、今はカ・ディンギルをどうにかするのが最優先だった。

 

3人の装者はカ・ディンギルを支えようとする。しかし、その見た目どおりの巨大な質量は容赦なく3人を押し潰そうとしている。

 

「こうなったら・・・」

 

3人は視線を交わした。それだけで、何をしようとしたかわかった。

 

絶唱。

 

エクスドライブモードの今の状態に絶唱の力を加える。それしかないと、3人は覚悟を決める。

 

「───Gatrandis──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「3人共、そのままだッ!!」

 

「ッ!?」

 

今まさに絶唱を唱えようしたその時、彼女達を静止する声が響いた。

 

声のする方に視線を向ければ、立ち上がった仮面ライダーBLACKの姿が見えた。

 

「ヨウさんッ!」

 

「そのままって、この状態も長くは持たねぇぞ」

 

「まかせろ」

 

BLACKは手にしたデュランダルをベルトにかざす。

 

「頼む、もう少しだけ力を貸してくれ」

 

キングストーンの光をデュランダルに浴びせる。光を受けたデュランダルは再び輝きだした。

 

「何をする気か知らんが、させると思うかッ!」

 

フィーネも黙ってその様子を見ていない。ネフシュタンの鞭を振るいBLACKに攻撃を仕掛ける。

 

「何ぃッ!?」

 

だが、振るわれたネフシュタンの鞭はBLACKに届かなかった。光を放つデュランダルの前にBLACKに触れることなく弾かれたのだ。

 

デュランダルとネフシュタン、この2つの完全聖遺物のパワーバランスは完全に崩れた。拮抗していた筈の2つの完全聖遺物だが、キングストーンの加護を得たデュランダルは完全にネフシュタンを上回ってしまった。

 

そして、デュランダルはその形を変えていく。刃は短くなり、持ち手、柄が長くなる。その形はまるで、

 

「槍・・・だとッ!?」

 

デュランダルは剣から槍へとその姿を変貌させた。しかし、その輝きは衰えることはなく、むしろ、より輝きを強くしていった。

 

BLACKは槍投げをするような構えをとる。

 

「ッ!? ・・・・・・ハ、ハハハッ! そうか、デュランダルをぶつけ、カ・ディンギルを消滅させるつもりか。だが! そんな爆弾染みたエネルギーを纏ったデュランダルをぶつければ、近くにいるあの小娘共もまとめて消滅するぞッ!! アハハハハッ!地下の凡愚共を護る為に切り捨てるかッ! 確かに、大数を救うために少数を切り捨てるのは───」

 

「黙ってな」

 

「な・・・」

 

「切り捨てる? バカいうなよ、どっちも護るに決まってんだろ。タイミングがずれるからあの娘達には抑えてもらってるんだ」

 

「だがッ! そのデュランダルは謂わば破裂寸前の風船。デュランダルに、キングストーンのエネルギーまで掛け合わせたそんなものをぶつければその瞬間に消滅が始まるぞッ!」

 

「なら、ここでない場所で消滅させればいい。誰もいない場所で」

 

「そんな場所───」

 

フィーネはそこでBLACKの意図に気づく。BLACKの視線はカ・ディンギルに向いてるがカ・ディンギルを見てはいない。視線はカ・ディンギルのその先、

 

「空・・・・・・いや、宇宙かッ!?」

 

「そういうこった」

 

いかん、とフィーネは焦る。可能か不可能かの話ではもうない。

 

この男はやる。確実にやると確信した。

 

鞭を放つ。それが無駄な抵抗だとわかっても。

 

「やらせん、やらせはせんぞ! 今さらキサマなんぞに、キサマなんぞにいいいいいッ!」

 

乱雑に、がむしゃらに鞭を振るがその全てが届かない。デュランダルが放つ輝きがネフシュタンを完全に弾いていた。

 

「悪いな、了子さん。─────往け、デュランダルッ!!

 

地面が陥没するほど踏み込みBLACKはデュランダルを投擲した。

 

一条の光が昇る。

 

デュランダルがカ・ディンギルに触れると猛烈な勢いで上昇した。

 

デュランダルの光がカ・ディンギル全体を包み込みながら上昇する。

 

雲を越え、どんどん、どんどん上昇する。

 

やがて、地球の重力を振り切り、虚空へと飛び立つ。それでも、止まらない。まだ、進んでいく。

 

BLACKは地上から小さくなっていく輝きを見つめた。

 

(すまねぇ、デュランダル。こんな使い捨てるような使い方しちまって・・・)

 

(気にするな、王よ)

 

せっかく力を貸してくれた聖剣に不甲斐ない想いを寄せていると、その聖剣から問題ないと返答が返ってきた。

 

(我が身はヒトの営みを護るためのモノ。最期にそれを護れるならば後悔はない)

 

(・・・ありがとう)

 

BLACKは最後にお礼を伝える。返答はなかった。だけど、一際大きく輝く星が見えた。

 

デュランダルは突き進んだ。カ・ディンギルを連れて、そしてそのまま欠けた月の破片に衝突し、臨海に達していたエネルギーが爆発した。

 

デュランダル、カ・ディンギルそして、欠けた月は跡形もなく消滅したのだった。

 

そして、仮面ライダーBLACKは意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん・・・」

 

暖かい感触に気がつき、手放した意識が戻ってくる。自分が今、目を瞑っていることがわかり、ゆっくりと目を開ける。

 

「あ」

 

「未来ちゃん・・・?」

 

「き、気がついたんですね。よかった~」

 

黒山陽介が目を開けるとそこには小日向未来がいた。彼女はこちらが目を開けたことに安堵している様子だった。

 

「む、ぐ」

 

「あ、ダメです、動いちゃ」

 

自分が横になっていることに気がつき、体を起こそうとするがピクリとも動かない。意識ははっきりしだすが体が動かず視線だけが彷徨う。

 

視界に入る空は夕暮れ、カ・ディンギルの姿はもうない。月も欠けてはいるがそこにある。自分の体は包帯が巻かれ手当をされた形跡があった。そして・・・、

 

「・・・重くない?」

 

「いいから大人しくしていて下さい」

 

小日向未来に膝枕をされていた。

 

「いや、しかし」

 

「しかしもかかしもありません。私、見てたんですからね。あんなボロボロになるまで戦って、終わったら倒れちゃうんですもん。今は安静にしていて下さい」

 

体が動かせないこの状況では大人しく未来の言うことをきいておくしかない。そして、未来の言葉で“終わった”と聞き、自分も緊張の糸が緩んでいった。

 

しかし、頭上の未来はこちらをじっと見ていた。そして、その表情は少し暗く、沈んでいる。

 

「・・・どうしたの、未来ちゃん?」

 

「・・・え~と、ほら、何かありませんか? 言わなきゃいけないことありませんか?」

 

「あ~・・・」

 

思えば、未来と会うのはクリスを追いかけて以来だ。きっと心配させてしまったのだろう。

 

だから、言わなければならない。“待ってる”と言ってくれたこの少女のために、

 

「ただいま」

 

「はい、おかえりなさい」

 

そう言って、未来ははにかんだ。

 

先ほどまでの沈んだ表情から一転して、太陽の光を浴びて元気になった花のようにさわやかに笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他のみんなは?

 

陽介の疑問に答えるべく未来は陽介の体を優しく起こす。ほうっておけば無理矢理自分で動こうとするからだ。もっとも、今の陽介は、指の1本たりとも動かせない状態だが、

 

リディアン学院の敷地内は瓦礫で散乱している。

 

何とか周囲を見渡せば見知った人達がいた。風鳴弦十郎を始めとした二課の面々、クリスに翼、シンフォギア装者達もどうやら無事のようだ。

 

そして、響とフィーネ。その2人が向かい合っているのが見えた。

 

反射的に体が動きそうとなるが、その必要はなかった。周囲の空気、何より向かい合う2人はの間には険呑な空気は流れていなかった。

 

何を話しているかは聞こえないが、穏やかな空気が伝わってくる。

 

あぁ、終わったんだ。

 

改めて安堵する。その証拠に響がフィーネに向かって手を伸ばしていた。

 

握手だ。フィーネも少し戸惑った様子だが、その手を取ろうと手を出した。

 

その瞬間だった。

 

「え?」

 

誰かの口からそんな呆けた声が漏れた。

 

「いやいや、お疲れ様ですみなさん。お陰で、此方の用事も簡単に済ますことができそうです」

 

この場にそぐわない緊張感のない声。人とは思えない邪悪な笑みを浮かべながらその人物、蛇川悟はフィーネの胸を貫いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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