戦姫絶唱シンフォギアBLACK   作:土紋

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後日談的なやつです。とはいえ、短いうえにそんなたいした内容でもないですが・・・、それでもよかったらどうぞ。


番外1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ~~~、良く寝た~~~」

 

「寝すぎだこのヤローッ!」

 

「あいだぁッ!?」

 

櫻井了子こと、フィーネによる争乱からおよそ10日が経過し、呑気に目を覚ました陽介の頭をクリスが叩いたなどの1幕があったりしてさらに数日がたった。

 

皆の心配をよそに、当の黒山陽介本人は元気だと言い張る。二課のスタッフが精密検査をした結果、あれだけの出血や怪我、内臓などのダメージが回復していた。これも。彼の中にあるキングストーンの影響だろう。

 

今回の事件での被害にあった町の復興作業でも手伝うかと動きだそうとする陽介だったが、弦十郎に自覚なき症状がでるかもしれんから、折角の機会だから大事をとってもう少し休めと言われてしまった。

 

陽介自身は大丈夫だと言うが、回りの視線が「いいから休め」と無言の圧力をかけ、渋々了承することにした。

 

結果。

 

「あ゛ぁ゛~~~~~~。・・・・・・・・・暇・・・。」

 

完全に暇をもて余していた。

 

備え付けられたベットの上で三点倒立しながら陽介は唸っていた。

 

あまりにも暇なので軽めに筋トレでもするかと試みれば、安静にしてろと弦十郎からお叱り(げんこつ)を受け、二課オペレーターの友里あおいや、藤尭朔也からの好意で暇潰し用の小説や携帯ゲームなどを借りるが、それでも溢れるバイタリティーが止められなかった。

 

「みんなも、少し心配しすぎだとおもうんだけどなぁ」

 

呑気なことを呟いていると、部屋の自動ドアが開いた。来訪者だ。

 

「おーす。大人しくしてるか~・・・って」

 

「やぁ、クリス」

 

「大人しく寝てられねぇのかアンタは!」

 

「おぅ!?」

 

やって来た雪音クリスは、思わず持ち込んだ缶ジュースを陽介の腹に投げ込んだ。

 

無理もない。安静にしている筈の者がベットの上で三点倒立しながら出迎えるのだ。頭が痛くなる光景だ。

 

 

(ったく、こっちの気も知らないで・・・)

 

腹に受けた缶ジュースを確認し、何事もなかったように振る舞う青年にクリスは呆れ半分、安心半分の気持ちだった。

 

本人は何ともないと言っているが、彼が倒れて意識を取り戻すまでは此方は気が気じゃなかった。

 

常人ならとっくに死亡してもおかしくない出血量に肉体的なダメージの大きさ、彼が倒れた時クリスは失った両親と彼の姿が被ってしまった。

 

また失くしてしまうのかと、やっと帰ってこれた居場所が失くなってしまうのかと心中穏やかではなかった。

 

が、件の彼は熟睡して目覚めた様な反応で起きた。心配は杞憂に終わったが、此方の心労も労ってほしいものだと内心愚痴る。だが、無事であることには本当に安心した。

 

それはそれとして、

 

ヅカヅカと歩き、ベットの左側に移動しそこにある椅子に腰かける。

 

「ん」

 

ぼんぼん、とベットを叩く。

 

「えっと」

 

「ん!」

 

更に強くぼんぼんとベットを叩いた。横になれと暗に伝える。陽介も渋々といった様子でベットに戻った。

 

「よいしょ」

 

「えっと、クリス?」

 

「いいからそのまま」

 

「あ、はい」

 

ベットに戻った陽介は上半身は起こした状態だ。足は伸ばして投げ出している。その陽介の太ももにクリスはコテンと頭を乗せた。

 

これが、ここ最近のクリスの日課だ。

 

陽介が目覚めてからは誰もいない時はこうして甘えるのだ。まるで気難しい猫のように体を刷り寄せる。

 

陽介も心配かけちゃったからなぁ、とクリスの行動を特に咎めはしない。陽介にとっては歳の離れた妹が甘えてくるような感覚だった。

 

眼前のクリスを見るが、彼女は顔を陽介とは合わせずにいるためどんな顔をしているのから分からない。

 

(・・・ふへへ)

 

その本人はだらしなく顔を緩ませていた。

 

もうこれ以上ないほどに蕩けた顔。クリスにとって誰にも邪魔されず大切な家族のような者と共に過ごすこの時間は何よりも心が休まる瞬間だった。

 

しかし、そんな時間も何時までも続かない。

 

「失礼します」

 

凛とした声で入室してきたのは風鳴翼だった。

 

「いらっしゃい、翼ちゃん」

 

「はい、・・・やはり雪音が一番乗りか

 

「ん?」

 

「いえ、何でもありません」

 

そう言って翼は、ベットの右側に移動しそこにある椅子に座る。

 

因みにクリスは、翼が入室する直前に身を翻し椅子の上で体育座りをし何事もなかったように興味無さげな顔でいた。

 

翼はガサゴソと持ち込んだビニール袋からリンゴを1つ取り出し果物ナイフを手にする。

 

陽介とクリスの視線が翼に集中し、場の空気が引き締まる。

 

「すぅ──────、ハァッ!」

 

ズババッ!

 

「・・・よし」

 

「よし、じゃねぇよ!」

 

「む、どうした雪音」

 

「どうしたでもねぇよ! 何でリンゴ捌くのに毎回そんな大掛かりなんだよ!」

 

「だが、この方が確実だぞ? ちまちま剥くより斬った方が私には性に合っているしな」

 

翼の行動に思わずクリスはツッコミを入れる。

 

翼は手に持ったリンゴを空中へ投げ出し、気合一閃、果物ナイフを振るう。リンゴはその形を保ったままいつの間にか取り出した小皿の上にキャッチさせると、パカッと綺麗に六等分に分けられた。

 

翼はその出来映えに満足気だが、曲芸みたいな行動をとる姿はクリスにとっては心臓に悪かった。

 

とはいえ、翼がこんな派手にリンゴを切り分けるようになったには理由がある。

 

もちろん最初は普通にリンゴを剥こうとした。しかし、いざトライしてみれば、出来上がったのは身が剥ききった芯しか残ってないリンゴが出来上がった。

 

勿論、翼は大真面目にリンゴを剥いていた。危なっかしい手つきだったが“剥く”作業は出来ていた。

 

だが、何度やっても出来上がるのは芯しか残らないリンゴだった。落ち込む翼にクリスが一言。

 

「アンタなら斬った方が早いんじゃねぇか?」

 

冗談混じりの言葉だったが、翼には全身に電流が走るほどの天啓だった。

 

剥いて形を作るのではなく斬って形を作る。目指す結果が同じなら過程は問題ではなかった。

 

そこからの翼の行動は早かった。水を得た魚のようにリンゴを手当たり次第に斬り分けた。年相応にはしゃぐ翼の姿に陽介はしばらくリンゴだけで腹がいっぱいになったのだった。クリスはその様子に呆れた。

 

「ヨウさ~ん、こんにちは~・・・って、もうみんないる!?」

 

元気な声と共にやって来たのは響だった。

 

「ちぇ~、また私が最後かぁ~」

 

そう愚痴りながらも響は自分の定位置、陽介から見て正面の位置に移動する。陽介を取り囲むように響、翼、クリスが椅子に座った。

 

「ヨウさん、体調はどうですか?」

 

「もうすっかり大丈夫だよ。むしろ良すぎて暇なんだよね」

 

「コイツ、ベットの上で三点倒立してやがったんだぜ」

 

「ふぅ~ん」

 

「・・・何だよ、そのニヤケ面は」

 

「それを知ってるってことは~、クリスちゃんまた一番に来たんだね~」

 

「・・・それが何だよ」

 

「いや~、クリスちゃん。ヨウさんのことそんなに」

 

「うおわあああああッ!?」

 

「げぼぉッ!?」

 

「ははは、2人はすっかり仲良しだな」

 

「そうですね」

 

響が何か言おうとした瞬間、クリスは椅子から飛んで響を押し倒した。

 

女の子らしからぬ悲鳴をあげてしまうが、弾丸のようにクリスが飛び込んだのでしょうがない。もたれこむ2人の姿に、犬と猫がじゃれあってる姿を幻視しながらそう思う。

 

互いに事情があり、敵対していた彼女達だが、今はこうして気を許しあっている。

 

クリスは否定するだろうが照れ隠しなのであまり気にするものではない。なんだかんだ言いつつも近しい年齢の子と話せること自体は嬉しいはずだから。

 

「余計なこと言うのはこの口かこらー!」

 

「ひっはらないへ~」

 

「黒山さん、リンゴのおかわりはどうですか?」

 

「ああ、うん、じゃあ、もらおかな」

 

今はただ、この平和な時間を黒山陽介は噛みしめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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