戦姫絶唱シンフォギアBLACK   作:土紋

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第四話 あなたはあなた

 

 

 

 

「それでは~。先日のメディカルチェックの結果発表~」

 

 

翌日。響に事情を説明する為に陽介達は再び集まった。

 

先ず、響に行ったメディカルチェックは彼女の身体に異常はほぼないと発表された。

 

次に、響が疑問に思った自身に発現した力について。

 

聖遺物、シンフォギア、適合者。と様々な専用用語を用いて響に説明されるが

 

「全然分かりません」

 

「だろうね」

 

無理もない。

 

「でも、私はその聖遺物? というものを持ってません。それなのに何故?」

 

響の疑問にモニターに一枚のレントゲン写真が写し出された。

 

「ゲンさん、これは?」

 

「響くんの心臓だ」

 

「・・・何か、心臓の周りに破片みたいのがありますけど」

 

「これ、2年前の怪我です。ツヴァイウイングのライヴの時の」

 

「2年前か・・・」

 

「心臓付近に複雑に食い込んでいる為、手術でも摘出不可能な無数の破片。・・・調査の結果、この影はかつて奏ちゃんが身に纏っていた第3号聖遺物ガングニールの砕けた破片であることが判明しました」

 

「っ!?」

 

「翼ちゃん!?」

 

「だい、じょうぶです」

 

「いや、しかし」

 

「少し、外に出ています」

 

ふらついた翼を慌てて支えるが、翼は陽介を無理矢理振りほどき部屋から出ていった。

 

天羽奏。かつてのガングニールの適合者。陽介にとってはノイズとの戦闘で時折共闘したぐらいの認識だが、翼にとってはとても大切な相棒であった。

 

共に歩み、そして失った大切な人が持っていた聖遺物。それを見ず知らずの人間が持っているのだ。彼女の心中はきっと穏やかではないだろう。

 

「あの、質問何ですが」

 

「ん? 何かな?」

 

「ヨウさん。仮面ライダーも適合者何ですか?」

 

「ん~。それについては何と言ったらいいのかしら。似た部分は有るけど、私の桜井理論とは全然違うし」

 

「それについては俺が直接話すよ」

 

「・・・いいのか?」

 

「遅かれ早かれってやつですよ。・・・さて、響ちゃん。君は仮面ライダーについてどれくらい知ってる?」

 

「えっと、3年くらい前から現れた謎の人物で、ゴルゴムから人々を守ってくれたヒーローってことぐらいしか・・・」

 

「まぁ、世間に公表されている情報はそんなもんだよな。・・・えっとね、まず俺は改造人間なんだ」

 

「改造? 義手とか何ですか?」

 

「そのままの意味だよ。見た目は人間だけど中身は人間じゃないんだ」

 

「・・・え?」

 

突然のカミングアウトに響は混乱している様子だが話を続ける。

 

 

「19歳の誕生日に俺た・・・俺はゴルゴムに拉致された。奴等のある目的の為に俺は改造人間に、いや、怪人にされるところだった」

 

「・・・」

 

「まぁ、いろいろあってゴルゴムから逃げ出して、奴等と戦ってどうにか壊滅させたってかんじかな?」

 

「展開はや!? いろいろ気になるんですけど!?」

 

「もう終わったことだしな。長々と語ることじゃないよ」

 

「えぇ~」

 

一瞬、重苦しい空気になったのを感じ話題を打ち切る。今はそこまで語るべきではないと思った。

 

 

「んで。結論から言うと俺は適合者じゃない。仮面ライダーでもノイズには対抗できない」

 

「え? でも、昨日おっきいノイズをズガーン! ってやっつけたじゃないですか!?」

 

「詳しいことは俺も解らんが、どうやらキングストーンのお陰らしい」

 

「キングストーン?」

 

「ゴルゴムが俺の体に埋め込んだ特別な石さ。この石の光を浴びせるとどういうわけか1分くらいノイズに触れるようになるらしい」

 

「それだけじゃないわよ。装者の歌を増幅させるスピーカー的な役割もしてるみたいなのよ」

 

待ってましたと言わんばかりに桜井了子が口を開いた。

 

「えっと、つまり?」

 

「仮面ライダーと装者が組めばノイズ対してかなりのアドバンテージをとれるという訳だ」

 

「おぉ~!」

 

キングストーンから放たれる光を浴びたノイズには干渉でき、さらに近くに装者がいればその歌を増幅し広範囲のノイズの位相差障壁を無効化できるというのだ。

 

 

「と言っても、彼の持つキングストーンができるのはノイズの位相差障壁を一時的に無効化するだけでノイズの他の特性はそのまま。シンフォギアのようにノイズの炭化変換攻撃に対してのバリア機能はないのよね。」

 

「まぁ、やられるまえにやれば問題ないので」

 

「・・・研究者としてはいろいろ納得できないんだけどね~。光に含まれる成分とか振幅の波動は特にないのに、光を浴びせるだけでノイズの位相差障壁を一時的に無効化って、過程をすっ飛ばして結果だけが残るのよ!? エネルギー総量は完全聖遺物に匹敵いやもしくはそれ以上? 人類の伝承にないだけでゴルゴムが秘匿していた異端技術の結晶であることは間違いない・・・やっぱり一度解剖して詳しく調べてみましょう! そうしましょう!」

 

「落ち着いて下さいよ了子さん!? キングストーン取り出したら俺死んじゃいますから!」

 

メガネを怪しく光らせとんでもないことを言い出す研究者を落ち着かせる。

 

「で、今は二課に所属しているという訳だ」

 

「そう、なんですか」

 

大体の説明が終わり一息つくが、響は俯く。微かに震えているように見えた。

なるべく明るく説明してみたが、結局のところ自分は既に人間では失くなっている。その事実は変わらない。今まで彼女とは仲良くさせてもらっていたが、彼女自身はどう思っているだろうか?

 

親しくなっていった友人が人でないなら人はどうするのだろうか?

 

排他か、共存か。

 

ほとんどは前者だろう。身近に自身で対応できない未知のナニかがあれば大多数の人間はソレに対して逃げるか、排除しようとするだろう。

 

「すごいです」

 

「え?」

 

だが、立花響はそうはしなかった。

 

「ヨウさんはすごいです。大変な目にあったのに戦ってくれて、いろんな人達を助けて、すごく頑張ってくれたんですね」

 

「俺が怖くないのかい?」

 

「何言ってるんですか! 私、知ってます! 初めて合ったあの日からヨウさんがいろんな人達を助けてきたこと! 車に轢かれそうになった子供を助けたり、道端で倒れていたおじいさんを助けたり、昨日だって私とあの子を助けてくれたじゃないですか!!」

 

彼女は誇らしげに言う。まるで自分のことのように。

 

「ヨウさんはヨウさんです! だから、ありがとうございます!!」

 

輝く笑顔に胸が暖かくなった気がした。

 

肩に手を置かれる。力強い手だ。

 

「今さらそんなことを気にしてたのか?」

 

「ゲンさん・・・」

 

「お前はお前だろ?」

 

そうだ。答えは最初から出ている。

 

黒山陽介は改造人間である。

 

黒山陽介は仮面ライダーBLACKである。

 

だか、黒山陽介は黒山陽介である。

 

その身が人でないとしても彼は己の意思で進んできた。それでいいのだと安堵した。

 

「さて、立花響くん」

 

「はい?」

 

「いろいろ説明したがまだ困惑する部分はあるだろう。その上で、1つ約束してほしいことがある」

 

「約束ですか?」

 

「ああ。君に発現した力のことは他言無用でお願いしたい」

 

現在、ノイズに唯一対抗できるのはシンフォギアだけでありその力を狙う輩は数多くいる。響に宿った力を狙い彼女の周囲の人間に危害が及ぶ可能性があることを弦十郎は説明する。

響も納得しきれない様子だか、力の秘匿を約束した。

 

そして、彼女は決心したように言い出した。

 

「あの・・・私のこの力で皆さんのお手伝いができませんか?」

 

「・・・何?」

 

「奏さんが遺してくれたこの力でノイズに対抗できるなら、私もみんな為にこの力を役立てたいです!」

 

ソファから立ち上がり力強く言う響。だか、

 

「本気かい?」

 

「は、はい!」

 

立ち上がった彼女の肩を掴み瞳を見つめる。

 

「今までやってきた人助けとは違うんだよ?」

 

「わかってます」

 

「戦いってのは命懸けだ。傷つけたくないものを傷つけてしまったり、守りたかったものを守れないかもしれない。辛くて痛くて苦しいものだ。君はそれでも戦うのか?」

 

「それでもです! 何かできるかもしれないのに見て見ぬふりなんて私にはできません。だから、私にできることを全力でやらせてください!」

 

力が目覚めただけで戦い方など知らない彼女だか、その芯に揺るぎはなかった。だか、戦士として覚悟ではない。困っている人に手を差しのべることができる彼女の優しさは美点だ。そんな彼女を戦場に出したくはない。

 

「やれやれ」

 

弦十郎がやや呆れた様子で声をあげた。

 

「お前の懸念も最もだ。翼の様に幼少のころから訓練していた訳でもなく、お前の様に積み重ねた経験がある訳でもない子供を戦場に出す訳にはいかない」

 

「なら」

 

「ノイズと戦えるのはシンフォギアと仮面ライダーだけだが、何もお前達だけで戦っているわけじゃないだろ? 俺達、二課もいる。 1人出来ることなどたかが知れてる。だから、協力してノイズに立ち向かっていけるんだ」

 

「そうですね。・・・うん、そうでした」

 

「それに、いざとなったらお前が守ってやれ」

 

「はい! ・・・よし! 響ちゃん!」

 

「ひゃい!?」

 

「何かあれば俺が、俺達が君を守るよ! だから改めて、君にお願いする。俺達に協力してほしい!」

 

「も、もちろんです! そ、そうと決まれば私、翼さんにも伝えてきます!」

 

響はそそくさと逃げ出すように部屋から出ていった。少し顔が赤かったような気がしたが大丈夫だろうか? 何故か部屋に残った面々からはため息をつかれた。

 

そして、ノイズ警報が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロードセクターを駆けノイズが発生した地点へ向かう。翼は既に先行しており、それを追いかける形で走る。陽介は仮面ライダーに変身しており、響もシンフォギアを纏いBLACKとなった陽介の後ろに乗り込んでいた。

 

「そういや響ちゃん。翼ちゃんとは話せたのかい?」

 

「あ~それが~その~」

 

ばつの悪い返事に結果の予想がつく。翼の方の心の整理がついていないのだろう。彼女は真面目なのであまり深く考えすぎなければいいが・・・。

 

「む・・・、見えたぞ」

 

前方に見えるはノイズの集団。

 

「突っ込むぞ! しっかり掴まって!」

 

「は、はい!」

 

ロードセクターを加速。規定の速度に到達。

 

「アタックシールド!」

 

ロードセクターが高速衝突形態に変形する。響はその変形機構に感嘆の声をあげているが、それに反応している場合ではない。

 

ノイズ共には既に色がついている。

 

遠くから聞こえる翼の歌にキングストーンが共鳴し、増幅したのだ。ノイズ共を薙ぎ倒す。ノイズ共の壁を抜け停車し降りる。

 

「よし、響ちゃんはここで待機ね」

 

「え!? でも!?」

 

「慌てない。まずは俺・・・というより向こうで戦っている翼ちゃんの戦いを見て勉強するんだ。無理はダメだよ」

 

返事を待たずに向かってくるノイズに突撃する。

 

響を中心に片側を自分が、もう片側で翼が戦闘している。残っているノイズを駆逐していく。殴り、蹴る度にぶにょっと妙な柔らかい感触が一瞬するが気にせずノイズを屠る。

 

時間にして1分も経たず自身の周囲に炭の塊が散らばった。

 

響達の方を見ればあちらも片付いたようで響が翼に語りかけているのが見えた。彼女達に近付こうと歩を進めた時。

 

翼が響を蹴り飛ばした。

 

こちらに飛ばされてくる響を受け止める。

 

「響ちゃん!?」

 

「ゲホッ!ゲホッ!」

 

「翼ちゃん!? 何を!? ―――ッ!?」

 

地上には誰もいない。空から大剣が堕ちてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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