戦姫絶唱シンフォギアBLACK   作:土紋

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第六話 怪人

 

 

 

 

 

 

自分が倒れた後、すぐ現場に二課指令、風鳴弦十郎が到着し二課の医療施設に搬送された。医療スタッフが直ぐに処置を施そうしたそうだか、既に傷は塞がっていたそうだ。

 

まぁ、俺、改造人間だし。と、陽介は思う。

 

この体は大抵の怪我や傷を一週間ほどで完治する。だからこそ、ゴルゴムとの戦いを乗り切れたのだ。

 

目が覚めたのは1日たった後だった。そして、その日の夕方に風鳴弦十郎と立花響がやってきた。

 

「ヨウさんッ!」

 

「やぁ」

 

「だ、大丈夫何ですか!?」

 

「ああ、この通り」

 

勢いよく病室にのりこんできた彼女に腕をぐるぐる回し、元気な姿を見せる。

 

「ほんとですか? あんなに血が出てたのに・・・」

 

「大丈夫だよ、あれくらい。・・・それより響ちゃんは? 怪我とかはしてない?」

 

「わ、私は大丈夫です。全然。私より自分のことを心配してくださいよ~。ヨウさんが倒れて、血が止まらなくて、わたし、わたし」

 

「あぁ、ごめん! 心配かけたね! 泣かないで!」

 

へなへなとその場に座り込み、涙ぐんでしまった響を慌てて慰める。

 

「ふむ。存外元気そうだな」

 

「あ、ゲンさん。どもども」

 

「それで、さっそく何だか、昨夜のことで話があるんだが」

 

「俺もですよ。・・・翼ちゃんは?」

 

「怪我はない。他の異常もな」

 

弦十郎の話では、あの後、翼にメディカルチェックと事情聴取をしたそうだが、翼当人はあの時のことをほとんど覚えていないそうだ。

 

「・・・じゃあ、あのもやみたいなものはいったい・・・?」

 

「靄?」

 

「あの時、翼ちゃんに黒いもやみたいなものがまとわりついてたんですけど・・・」

 

「ふむ・・・、こちらが見ていた映像にはそんなものは映っていなかったが・・・」

 

「・・・響ちゃんは? 」

 

「いえ。私も、そのもやみたいなものは見えなかったんですけど・・・」

 

じゃあ、あれは何だ?。と、陽介は思う。あの状態の翼はまるで機械のような無機質な感じだったが、同時に悪意も感じた。だがそれは、翼本人ではなく、別の意思のように感じた。

 

「それにしても、もう少し上手くやれなかったのか? 」

 

何を、と聞かれれば、あの時の翼に対する対応だろう。確かに、もう少し上手くやれたのかもしれない。

 

だか、あの時、戦友を宿敵に強引に支配下におかれた時のことを思い出した。

 

「・・・翼ちゃんに怪我させたくなかったんで」

 

「・・・それでお前が負傷したら意味ないだろ」

 

「あはは・・・」

 

やれやれと弦十郎にため息を吐かれ愛想笑い。響も複雑な表情をしていた。

 

「前から聞こうと思ってたんですけど・・・」

 

「ん?」

 

「ヨウさん、翼さんとどういう関係何ですか?」

 

なにやら頬を少し膨らませながら響が陽介に詰め寄る。

 

「どういうもなにも、仲間だよ」

 

「・・・・・・」

 

黙りこみながらもなにか納得のいかない表情の響。言った通りの意味なんだがなぁ。と、陽介は思う。

 

ノイズ警報が鳴った。

 

「ッ! ノイズ!」

 

「待て!」

 

病室より飛び出そうしたところを弦十郎に止められる。

 

「ちょ!? ゲンさん!? 何を!?」

 

「何を、はこちらのセリフだ。病み上がりでいきなり無茶をするな」

 

「いや、俺は大丈夫なんで」

 

「指令として、出撃は許可できん!」

 

「だから、大丈夫ですって!」

 

「いいから! 怪我人はしばらく寝ていろぉ!!」

 

「ゴフッ!?」

 

「ヨウさーーーん!!?」

 

弦十郎の拳が陽介の腹部を直撃。病室の中を舞いベットに吸い込まれるように陽介は倒れ、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・ハッ!?」

 

「キャ!?」

 

意識が覚醒し飛び起きる。どのくらい気を失っていたのだろう。病室は薄暗く、カーテンの隙間から見える外は暗くなっていてた。腹に感じる鈍痛に眉を潜める。改造人間である自分を一撃で気絶させる風鳴弦十郎に驚嘆すべきか畏怖すべきか、そんなことを考えつつ先ほど聞こえた声の方向を見る。

 

蒼い髪の少女、風鳴翼がそこにいた。

 

安堵した表情を浮かべるが次の瞬間には悲しそうな顔になり陽介に背を向けそのまま病室を立ち去ろうとする。

 

「待った!」

 

「は、離してください!」

 

そんな彼女の手を掴む。言葉では拒絶しているが陽介の手を無理矢理振りほどこうとはしなかった。

 

「そんな逃げなくても・・・」

 

「・・・会わせる顔がありません」

 

「何で?」

 

「・・・防人として力なき人々を守る為の剣が、志を同じくする戦友を、・・・傷つけました」

 

「俺は気にしてないよ」

 

「 私は! 己の不甲斐なさに腹がたって仕方がないのです! 一度ならず二度も貴方を・・・」

 

「あの時は、状況が状況だったし」

 

「それでもです! ・・・この度はまことに申し訳ありませんでした!! 失礼します!」

 

「あ、ちょ」

 

彼女はそれだけ言うと逃げるように病室から退室していった。

 

誰もいなくなった病室で深くため息を吐く。今回の風鳴翼の暴走は何か作為的なものを感じた。彼女自身に問題があったとは思わない。むしろ、被害者ではないかと考える。

 

「(だか、・・・しかし・・・)」

 

彼女から感じた悪意はいったい何だったのだろうか? 今の彼女からは悪意は感じられなかった。あの時はまるで、別の誰かの悪意を植え付けられたようなものだった。しかし、これ以上考えても答えはでなかった。

 

それから、程なくして陽介は退院。いつもの日常に戻りつつ、立花響を加えたシンフォギア奏者2名と仮面ライダーBLACKは三人一組のチームとして対ノイズ戦に繰り出すことになった。

 

しかし、まともな連携をとれず行き当たりばったりでノイズを駆逐していく日々が1ヶ月を越えようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

喫茶店ストーン。小ぢんまりした何処にでもある普通の喫茶店。そこに、労働に勤しむ黒山陽介と、学院の課題のレポートに悪戦苦闘している立花響、その立花響を様子を眺めながらミルクココアを飲んでいる少女。立花響の親友である小日向未来がいた。

 

小日向未来は店内を見渡す。机を隔て目の前にいる親友は、あーうー、と唸りながらレポートと格闘中。視線を後ろに向ければ、この喫茶店の店長である菩薩のような優しい顔をした老人、石田さんがカウンター席の向こうの椅子に座り新聞を読んでいる。更に視線をずらせば床を清掃している黒山陽介。

 

店内にいる3人は響の唸り声をBGMにし夕方の穏やかな時間を過ごしていた。

 

「陽介さ~ん、すみませ~ん」

 

ぷはぁ、と軽く息をはき未来は陽介を呼ぶ。追加注文かな?と陽介は未来の元へ行く。

 

「は~い。おかわりかい?」

 

「えっとですね・・・・・・陽介さん、何か隠し事してます?」

 

陽介はその場で固まり、響は飲みかけた自分のミルクココアでむせた。

 

「・・・どうしたんだい急に?」

 

「いえ、別に」

 

空のマグカップの縁をなぞっている未来から視線を外し響をちらりと見る。首を高速で横に振る響。

 

シンフォギア関連のことを口外しないことを約束している彼女だが、元々隠し事等が上手くできる性格ではない。うっかり口を滑らせてしまったかと思うが、響の様子を見るにそうではないらしい。そう思う自分も冷や汗が止まらなかった。

 

「なんか最近、陽介さんがストーンにいないことが多いなぁって思ったので」

 

「そうかい? 偶々じゃない?」

 

「大抵はここか、街の何処かで人助けしている場面に遭遇しますけど、最近は姿を見ないことが多いんですよね~ ・・・」

 

小日向未来は薄々感づいているのだろう。何を隠しているかはわからないが、何かを隠していることはわかっているのだ。

 

沈黙が店内を包む。その静寂を破るようにキュルルル~と、立花響のお腹が鳴った。

 

「あはは。あ! ヨウさん! おにぎりお願いします! 大で!」

 

「も~響。これから晩ご飯何だよ?」

 

「へいきへいき! おにぎりは別腹だから!」

 

「普通はデザートに使う言葉でしょ、もぅ」

 

「うぇへへ~」

 

「はぁ・・・じゃあ陽介さん、私もおにぎり、小で」

 

「あ~はい。承りました」

 

注文を受け席から離れる。今回は響のお腹のおかげでなんとかうやむやにできたが、そう何度も上手くはいかないだろう。

 

未来を危険に巻き込むわけにはいかない。彼女は響にとってとても大切な親友であり、自分の友人だ。彼女達のやり取りは掛け替えのない大切な日常であるからだ。楽しそうに談笑している二人を見ながら陽介はこの平和を守っていきたいと、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明くる日の夕方、バイトも終わり、とある場所に向けてバイクを走らせる。歩道を見れば帰宅途中の学生や親子などが見える。おそらく自分と同じ場所に向かっているのだろう。

 

今晩は流星群が見れるらしく、喫茶店に来た客は待ち合わせに利用したりしていた。響や未来もこの日を楽しみにしていた。響も課題がギリギリ間に合うと言っていたので、今頃は流星群が見える場所に移動しているだろう。

 

自分も二人に一緒に見ようと誘われたので有りがたく付き添うことにした。このイベントが良い思い出になれば良いなと思う。

 

ズボンのポケットに入れている通信機が震えた。バイクを停車させ通信機を取り出す。

 

『はい』

 

『俺だ。・・・ノイズが出現した』

 

『・・・わかりました。場所は?』

 

『○×エリアだ。行けるか?』

 

『ええ。直ぐに向かいます』

 

弦十郎からの通信を切る。なんというタイミングだろう。だが、愚痴をこぼす暇はない。被害が出る前に向かわなければ。そう思ったところで今度はプライベート用の携帯に着信がきた。

 

相手は小日向未来だった。

 

『もしもし』

 

『あ、・・・陽介さん? えっと・・・今日の流星群何ですけど・・・響が、これなくなっちゃって・・・』

 

『・・・そっか。・・・・・・ごめん未来ちゃん。実は俺も急用が入っちゃってね。今日の流星群一緒にみれないんだ』

 

『ッ・・・そう、ですか・・・。また、人助けですか?』

 

『まぁ、そんなところ』

 

『まったく、しょうがないですね』

 

『・・・本当にごめん』

 

『謝らないで下さいよ。人助けなら仕方ないんですから』

 

『この埋め合わせは必ずするよ』

 

『いいですよ、そんな気にしなくて。・・・それじゃあ、失礼しますね』

 

『あぁ、うん。またね』

 

『はい』

 

本当に、なんというタイミングだろう。

電話ごしでも伝わってきた彼女の悲しい気持ちが。おそらく、今現場に向かっている響も同じような気持ちだろう。

 

なればこそ、急いでノイズを殲滅すればまだ流星群に間に合うなもしれない。そうと決まれば、善は急げ。直ぐに現場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は厄日なのだろうかと黒山陽介は思った。

もうすぐノイズが発生した現場に到着するというところで道を塞がれた。

 

信じがたい光景で思わず幻覚かと疑ったがそうではないらしい。前方約50メートルほどの距離に立っている1つの人影。いや、人ではない。

 

二本足で立っているが姿勢は前傾、腕が6本あり、腰の辺りから大きな突起物が生えていた。上半身は女性的なフォルムをしているが、その顔は人と判断するにはあまりにもおぞましい顔だった。血走った目。耳まで開く口は嫌悪感や恐怖感を煽るのに十分だった。

 

黒山陽介はこの人ならざるものを知っている。

 

「クモ怪人」

 

かつて、自身が壊滅させた暗黒結社の怪人がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

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