戦姫絶唱シンフォギアBLACK   作:土紋

7 / 30
第七話 夜に舞う

 

 

 

 

 

『弦さん。今、俺がいる○○エリアに変わった反応ってあります?』

 

『何? どうした? 何があった?』

 

『怪人がいます』

 

『怪人・・・だとッ!?』

 

二課に連絡をとり、二課の方でも状況を確認してもらう。

 

『むぅ、こちらも確認した。しかし何故そこに?』

 

『たぶん、狙いは』

 

「ケケケケケッ!」

 

奇声をあげたクモ怪人は建物の屋根へ跳躍し、そのまま姿を隠した。

 

「待て!」

 

『おい!陽介!』

 

『弦さん! ノイズの方は響ちゃん達に任せます! 俺は奴を追います!』

 

『だから待て! あからさますぎる! 罠の可能性が高い!』

 

『だとしても! このまま奴が何もしない保証もないですよ!』

 

通信を切りクモ怪人が姿を隠した方へバイクを走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか・・・」

 

クモ怪人を追い、たどり着いたのは町外れの廃工場だった。

 

付かず離れず適度な距離を保たれ、クモ怪人を見失うことはなかった。弦十郎の言うとおり罠の可能性が高い。

 

「それにしても廃工場か・・・」

 

廃工場には嫌な思い出がある。ここではない違う廃工場で、真実を話してくれた父はクモ怪人の手によって殺された。だが今は感傷に浸っている暇はない。廃工場へ足を進めた。

 

扉には鍵がかかっていなく簡単に入ることができた。慎重に中に入る。人の気配はなかった。当たり前だが電灯はつかない。窓から差し込む月の光が廊下を照らしてくれた。

 

埃が舞う廊下を進んでいく。静かだ。だが、気配は感じる。ここはもう敵地なのだ。警戒を強め進んで行く。

 

しばらく進むと少し広い部屋にでた。何かの生産ラインなのか、大きなベルトコンベアや何だかよくわからないマシンがあった。更に歩を進める。

 

左足に何かが巻き付いた。

 

「うおッ!?」

 

巻き付いたモノは糸だった。強烈な力で左足を引っ張られ体を引きずられる。糸の先を見るが、先は真っ暗で何も見えない。

 

「なめるなッ!」

 

引きずるというなら好都合。その引っ張る力を利用し、暗闇の中に飛び込む。そこで蠢く影に拳を振るう。

 

「グガァ!?」

 

影、クモ怪人は予想外だったのか、叫び声をあげ壁に打ち付けられた。足に巻き付いた糸を引きちぎる。

 

「クモ怪人! お前の目的は何だ? 答えろ!」

 

「グゲゲッ!」

 

こちらの問答に答えずクモ怪人は飛びかかってきた。その場を飛び退き、クモ怪人との距離を空ける。

 

「答える気はないか。・・・変・・・身!」

 

暗闇の中で黒山陽介の体が変化する。

 

「仮面ライダー・・・ブラックッ!!」

 

廃工場を舞台に2つの影がぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立花響は今の状況を把握するのに精一杯だった。

 

発生したノイズは全滅させることができたが、そこからだった。白、あるいは白銀の鎧を全身に纏った人物が現れた。

 

風鳴翼の発言でその鎧、ネフシュタンの鎧という完全聖遺物を纏った人物、背は小さいが声や胸部の膨らみがその人物を女性だということを知らしめた。

 

ネフシュタンの鎧は響にとっても、翼にとっても因縁のある完全聖遺物だ。少女と風鳴翼が戦闘を行おうとし、響は慌てて止めようとしたができず、翼と少女の戦いが始まってしまった。

 

翼は斬擊を放つ。少女は結晶のような鞭でそれを凪ぎ払う。翼は次々と剣を振るうが少女はその攻撃を難なく回避する。鞭で剣を受け止め、翼の動きを一瞬止めさせ蹴り飛ばした。

 

(これが完全聖遺物のポテンシャル!?)

 

「ネフシュタンの力だなんて思わないでくれよな~。あたし天辺はまだまだこんなもんじゃね~ぞッ!」

 

鞭を振るい攻勢にでる少女。伸縮自在に変化するその鞭を翼は回避する。木をへし折り、地面を陥没させるその威力に当たってやるわけにはいかない。

 

「翼さん!?」

 

「お呼びではないんだよ。こいつらの相手でもしてな」

 

少女は杖をようなものを手にすると何かを発射した。着弾した地点から何かが現れる。それはノイズだった。

 

「ノイズが操られてる!?」

 

初めて目にするタイプのノイズ、頭身が高いダチョウのようなノイズに思わず響は背を向けてしまった。

 

「まだまだ、特別ゲストも追加だ!」

 

響の正面の地面が不自然に盛り上り、地面から何かが飛び出してくる。飛び出してきたのは2つの影。

 

「 な、何!? ガッ!?」

 

突然現れた影に驚いた瞬間その影に突き飛ばされる。倒れた響に向かってノイズと影は糸のようなモノを吐き響を拘束した。

 

「なんなの!? こいつら!?」

 

響は視認したその影に恐怖した。人ではない何か、まるで蜘蛛が人間になったような異形が2体いた。

 

「その子に掛けて私を忘れたかッ!」

 

「慌てんなよッ! お前にも用意してるぜッ!」

 

上段から振り下ろした一撃を鞭で受け止められ、両腕に白い糸が絡み付く。それぞれ別方向から2体のクモ怪人が糸を吐き出していた。

 

「何!? 」

 

「オラッ!」

 

「くあっ!?」

 

動きが止まった瞬間にクモ怪人達が糸を引く。腕を上に上げられ、がら空きになった腹部に大振りで振るわれた鞭が直撃した。腕を糸で拘束されながら地面に叩きつられる。

 

「のぼせ上がるな人気者! 誰も彼もが構ってくれるなどと思ってんじゃねぇッ!」

 

倒れた翼の顔面を踏みつけながら少女はさらに言葉を続ける。

 

「この場の主役と勘違いしてんなら教えてやる。狙いははなっからこいつをかっ拐うことだッ!」

 

「ッ!?」

 

「鎧も仲間も、あんたにや過ぎてんじゃないのか?」

 

「・・・繰り返すものかと、私は誓ったッ!」

 

顔を踏みつけられ、腕を糸で拘束されながらも剣を空に掲げる。空から無数の剣が降り注ぐ。少女はその場から離れ剣の雨から逃れた。自分諸ともに巻き込むことで翼は己を拘束していた糸を断つ。再び、翼と少女が肉薄する。

 

「そうだ! アームドギア!」

 

アームドギア。それはシンフォギアの主武装。響はそれを発現させようともがいた。

 

「奏さんの代わりになるには私にもアームドギアが必要なんだ! それさえ有れば! 」

 

もがき、念じる。天羽奏が扱っていた槍状のアームドギアを思い描き、それを発現させようする。

 

「出ろッ! 出てこいッ! アームドギアッ!!」

 

だが、幾らもがいても響の手にアームドギアが現れることはなかった。

 

「なんでだよ・・・どうすればいいかわかんないよ・・・」

 

「ケケッ」

 

そんな響の様子をクモ怪人は愉快そうに笑った。獲物が巣にかかり、必死に逃れようとしている。無駄なのになぁ。そう思わせるような歪んだ笑みを浮かべて響の回りを徘徊していた。

 

「助けて、ヨウさん・・・」

 

一方、翼と少女の戦闘はさらに激しさを増していた。

 

「鎧に振り回されているわけではない? この強さは本物!?」

 

「ここでふんわり考え事とは度し難てぇッ!」

 

剣を払われ顔面に蹴りが迫る。顔を反らし、続けて連続でバク転し間合いをとる。少女が再び杖を構え光弾を発射。ノイズの集団が召喚され、翼に襲いかかる。小規模とはいえ召喚されたノイズを瞬く間に殲滅する。

 

「ガァァァァッ!」

 

クモ怪人が雄叫び上げながら翼に飛び掛かる。先端が鋭い棘のような爪を振るう。6本ある腕を次々と突きだす。身を捻り回避。逆袈裟斬りでクモ怪人の腰から左肩に線が走る。

 

「ギャ!? グガァ!」

 

一瞬怯むが、すぐに反撃の爪を振るう。跳躍して回避。斬擊を飛ばす。クモ怪人は本能的危機感でそれを回避。飛んだ斬擊の勢いは衰えず、少女に向かって一直線に飛んだ。

 

爆発。しかし、爆炎から出てきた少女は無傷で不適な笑みを浮かべる。翼が少女に突貫する。その間に立ち塞がるようにクモ怪人が立つ。爪を振るうクモ怪人の股を滑り込んで潜り抜け少女に剣を振るう。剣と鞭がぶつかり合う。

 

翼が小刀状のアームドギアを取り出しそれを投擲。数は3つ。

 

「ちょせい!」

 

少女はそれを虫を払うかのように纏めて凪ぎ払う。そして、少女は勢いをつけ跳躍。鞭の先端にエネルギーを集中させた。

 

エネルギーは球体の形を作り、それを勢いよく投げつけるように鞭を振るった。そのエネルギーの強さに翼は剣を盾の用に構えようとするが

 

「ッ!? しま」

 

両腕を糸に絡まれ、大の字を体現するかの用に両腕を引っ張られる。糸の先にいるクモ怪人達の卑しい笑みが見えた。無防備となった自分に放たれたエネルギー弾が迫る。

 

爆発。収束された球状のエネルギーが炸裂した。

 

「翼さん!!?」

 

爆煙から放り出される翼はそのまま地面を数度跳ね動かなくなった。

 

「ハッ。まるで出来損ない」

 

「そんな・・・そんな・・・」

 

「助けを待っても無駄だぜ。お仲間の化物は、今頃は化物同士で仲良くしてるだろうからよぉ」

 

「化物って・・・、まさか、ヨ、仮面ライダーのこと?」

 

「それ以外に何があるって言うんだ?」

 

「仮面ライダーは、化物何かじゃない!」

 

「化物だよ! 世間様がヒーロー扱いしてるようだが、仮面ライダーも、こいつらと同じ化物なんだよ!」

 

「ちがう・・・。絶対にちがうッ!」

 

少女の言葉の響は真っ向から否定する。仮面ライダーBLACKはヒーローだ。そして、それに変身する黒山陽介もヒーローだ。少なくとも響にとってはそれが揺るぎない真実だ。

 

彼の体は、人ではなくなってしまったが、その心は紛れもなく人であると響は信じている。

 

「あぁそうだ。よく言った立花」

 

「翼さん!」

 

「なんだ。まだやれんのか?」

 

「未だこの身は出来損ないの剣。だか、奪われたネフシュタンを取り戻すことで、この身の汚名を灌がせて貰う!」

 

剣を杖変りにしながらフラフラと立ち上がる。既に体はボロボロ。身に纏うギアもいくつか損傷が見える。

たが、その瞳はまだで闘志で燃えていた。

 

「そうかい。脱がせるものなら脱がして―――何!?」

 

体が動かない。その場から身動きがとれないことに少女は気づいた。何とか身を捩ると自分の影に小刀が突き刺さっていた。自分が凪ぎ払った小刀だった。

 

影縫い。そう呼ばれるこの技は、対象の影を武器で突き刺すことで、対象の身動きを封じるというものである。

 

「チッ、こんなもんであたしの動きを、・・・まさか、お前」

 

「月が覗いている内に決着をつけましょう」

 

「歌うのか、絶唱を」

 

少女が翼の顔を見る。覚悟を決めた人がそこにいた。

 

翼が夜空の月を見て思う。

 

(そういえば、黒山さんと初めて顔を会わせた日もこんな月が出ていたな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、風鳴翼が仮面ライダーBLACKと初めて遭遇したのは戦場だった。

 

まだ、両翼で羽ばたいてた頃、ある日、市街地でノイズと戦闘していた際、シンフォギア以外でノイズと戦闘している謎の反応があった。現場に到着すれば、黒い人の様な何かがノイズを打ち倒していた。

 

ベルトの様な部分にある赤い宝石を光らせ、その光をノイズに浴びせ、徒手空拳で炭に還していた。その身1つでノイズに立ち向かう姿は、異様で恐ろしく思えた。

 

何故か、目をキラキラさせていた奏は、謎の存在、怪人と呼ぶべき者に接触しようとしていたが司令がそれを堅く禁じてきた。

 

あとから聞いた話では、当事はゴルゴムからの圧力で仮面ライダーは“いないもの”として警察などの国家機関からは無視されていたそうだ。

 

しかし、世間の目はしっかりと彼を見ていた。最初は都市伝説などの噂レベルの情報で、新種のノイズか? 現代に復活した妖怪か? 等、よくわからない情報が世間で流れていた。しかし、そういった噂は時が経つにつれて、人を助ける黒い怪人。化物を倒す黒い怪人。等といった噂に変わっていった。

 

私も、何度か戦場でノイズを倒す怪人。人命救助を行う怪人を見てきた。だが、その虫人間のごとき風貌は助けた人に怯えられたり、時には石を投げられたり、化物と非難されたりした。

 

それでも、怪人は命を見捨てることはしなかった。自分がどれだけ傷ついても、人を、命を救う為に全力を尽くしている。戦場ですれ違うだけでまともに会話する機会はなかったが、その姿だけは、目に焼き付いた。

 

そうした行動を続けていたお陰か、怪人はいつしか人々から“仮面ライダー”と呼ばれるようになった。

 

多くの人の目に触れる訳ではなかったが、仮面ライダーの活躍は確かに世の中に伝わった。少しずつ少しずつ築き上げた仮面ライダーの活躍は、世界の闇に潜んでいた“暗黒結社ゴルゴム”の存在を明るみにさせた。

 

人々の希望、ヒーローと呼ばれるようになっていった仮面ライダーはまるで防人のようだと思った。

 

だが、希望とは失くしてしまって、絶望の重さが増すものだとこの時の私は知るよしもなかった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。