神を見たければ青天にキスをしろ~クソゲープレイヤー、神に挑まんとす~ 作:雨 唐衣
ミーティアスが舞う。
空を舞う。
何段も、何段も、重力を置き去りにして、舞い上がる。
止まらない。
無限に続く空へと衝撃が舞い上げていく。
ランゾウの手足が、刃が、打ち込まれ続けて終わらない。
言葉が出ない。
間断のない音が続いて。
誰かがジュースを落とした音が響いて。
息が出来なかった。
『ありえない』
解説者の声が、断末魔のように掠れて響いた。
『ありえない』
悲鳴だった。
『何だあのコンボは……』
音が続く、空へ。
『……なんで……途切れない……なんで!?』
顔を覆う、仕事も投げ捨ててマイクを放り捨てて、見ていた彼は叫んだ。
『なんだあの
――GAME BRAKE――
人々は後に、
シルヴィア・ゴールドバーグが敗北した。
世界最強のプロゲーマーが負けた。
しかもゼロダメージで完封負けだった。
これを聞いた時、俺はこう返した。
「嘘乙」
鉛筆騎士王:嘘じゃないんだよなぁ、これが
サンラク:いやいやいやいやありえないだろ。なに? 初白星で集中切れちゃった総受けなの?
鉛筆騎士王:間抜けな奴でしたね。でもガチだよ、三日前のアメリカフレンドカップ知ってるかい?
サンラク:
鉛筆騎士王:そう、GCCほどじゃないがアメリカ最大級のゲーマーの祭典さ。
鉛筆騎士王:実質世界最強を決める大会だよ
鉛筆騎士王:どっかの「
サンラク:黒星叩きつけた日本人プロゲーマーは?
鉛筆騎士王:敗率100%
サンラク:昔は六割だったし(震え)
鉛筆騎士王:そろそろ五割切るかもね
鉛筆騎士王:で、そこで事件、いや事故があったわけさ。テレビ見てない?
サンラク:すまない、ちょっとライオットブラッドの毒抜きに大型ムツゴロウさんしてたから
鉛筆騎士王:アイドルかー
サンラク:どこから始める?
鉛筆騎士王:テラフォーミングからかな
鉛筆騎士王:ま、見てないのは分かった。でね
鉛筆騎士王:
サンラク:マ?
鉛筆騎士王:シルヴィア・ゴールドバーグとアメリア・サリヴァンの対決中に。あ、準決勝でね
サンラク:
鉛筆騎士王:で、アメリア君が瞬殺された
サンラク:アメリアダイーン!
鉛筆騎士王:不法侵入してきたランゾウにボコされたのさ。笑えるぐらいにね
サンラク:ランゾウって、確かサムライだっけ
サンラク:二刀流、瞬間移動と飛びあがり超必の地味な奴
サンラク:ミーティア最強からランゾウがトップ入りか
サンラク:いやねーわ
鉛筆騎士王:解説乙 まあ本当にないね、アメリア君瞬殺して、シルヴィア君が特に気にせず挑みかかったわけだけど
鉛筆騎士王:それでハメ殺されたのさ
サンラク:ハメ?
鉛筆騎士王:ああ
鉛筆騎士王:チートさ
『チートです』
公式会見のニュースで、ギャラクシアレーベルの代表者とGH:Cの製作プロデューサーが並んで断言した。
『空ビヨンドと名乗るプレイヤーは、違法手段を用いていました』
『使用していたヒーローランゲツのパワーや動ける速度こそ弄られていませんでしたが、動きは機械そのもの』
『人間にプレイ出来る反射速度ではありません』
『なによりも、今や<
『<青天>はシステム上不可能ではありません』
『ですが、製作陣営としては実現可能なコンボとしては一切想定していませんし、期待したこともありません』
『過去現在一度として』
『青天はあり得ない技なのです』
『憧れるものではありません、卑劣な手段によって生み出された夢幻』
『今後未来に至っても決して夢見ることはないでしょう』
『どうやってセキュリティをかいくぐったのか依然調査中ですが、これはいたずら。恥ずべきことです』
『空ビヨンドは』
『CPUです』
――全米最強を決める大会で行われた悪質なハッカー事件。
ニュースやネットではそう囁かれた。
サンラク:チートでCPUか
鉛筆騎士王:だよ
鉛筆騎士王:私も見たけどさ、機械過ぎて露骨なぐらいだったよ
鉛筆騎士王:人間じゃない、逆に珍しいぐらい露骨な愉快犯さ
サンラク:いや
鉛筆騎士王:なに?
サンラク:これ
サンラク:人間じゃね?
鉛筆騎士王:は
鉛筆騎士王:なんで?
サンラク:なんとなく
サンラク:人間な気がするんだよな いや人間だったらリアルウェザエモンだけど
鉛筆騎士王:ん、んーサンラク君だからねぇ
サンラク:なんで?
鉛筆騎士王:同類のカンだろ?
サンラク:げせない
鉛筆騎士王:げせろ
サンラク:ところでさ
鉛筆騎士王:うん
サンラク:こなくね?
鉛筆騎士王:うん?
サンラク:カッツォ遅くねえか?
その日、オイカッツォから連絡はなかった。
そして、それからもなかった。
あいつからの連絡が絶えた。
シルヴィアさん、アンジェリカされちゃった…