神を見たければ青天にキスをしろ~クソゲープレイヤー、神に挑まんとす~   作:雨 唐衣

11 / 13
サンラクは激怒した。
必ずやかの邪智暴虐で悪逆無道且つ人倫に悖る騎士王を殺さねばと激怒した。
サンラクに女心はわからぬ。だがクソゲーには人一倍敏感であった。


【これからもっと熱くなる】

 

 

 

 

 

 背筋が震えるほどの静寂が満ちた。

 空ビヨンドでよろしく。

 名前隠し《ノーネーム》がいった言葉は会場全員の人間に沈黙、いや、困惑していた。

 

「え、マジで?」 「冗談?」 「いやこの流れで冗談はないだろ」 「え、でもあれ女じゃあ」 「いやまて判断には早い落ち着け」

 

 困惑がさざ波のように広がって、会場の誰もが顔を合わせてる。

 そして、空ビヨンドと呼ばれた学生服で少女は薄い伊達眼鏡とマフラーで顔を隠している。

 

「……えーと」

 

 どやっとした顔を浮かべる外道と、大体似たような体格の空ビヨンド(仮)を見比べて。

 

「空ビヨンド?」

 

「そうだよ、かっこかりかっことじで」

 

「お前には聞いてないんだけど」

 

 ドヤる外道、沈黙する謎マフラー少女。

 どういう組み合わせ?

 

「えっと……ゆあねーむそらびよんど?? おぅけーい?」

 

「うわ、なにその片言英語っぽいの」

 

「うるせえ!」

 

「まいねーむいずそらびよんど」

 

「返ってきた!?」

 

 いやでもマジか。マジで? 空ビヨンド?!

 

(同い年っていうか学生にしか見えねえぞ、いや恰好だけではなく)

 

 コクンと頷いて返してくる空ビヨンド(確定)。

 

「どこから拾ってきたんだ、ノーネーム。まさか道端に落ちてたわけじゃないよな??」

 

「いや、関係者用入り口から拾ってきた」

 

「ホワイ?」

 

「だってねえ。なーんか遅いなって思って、様子見に行ったらコンビニ店員の服着てた関係者が捕まってたんだもん」

 

「は???」

 

「……バイトで忙しかった、抜け出るのもギリギリ。忙しい」

 

 モゴモゴとマフラー顔隠しさんがおっしゃっていらっしゃる。

 

「ゲームだけして生きていけるわけじゃないからね、しょうがないね。働かないと」

 

「おい、プロゲーマー三人見て言うのやめてくれないか?」

 

「そうです、これは立派な仕事です」

 

「はぁー、本当に空ビヨンドなんだぁー、うわぁーすごいわ」

 

 

 

「えー! 皆様たい・へん・おまたせしました!」

 

 

 俺たちの、いや、会場全員の注目を集めるようにエイト嬢が声を張り上げる。

 

「選ばれし五人のプレイヤー! そして、六番目! 知られざるシックスマン!」

 

 女だぞ。

 

「彼女こそが最後のサプライズゲスト! ゲストネームは「空ビヨンド」! 謎に包まれたゲストは一体どのよ――!? ちょ、ちょっとなんですかこのコメント!? スゴイ数なんですけど!? ストップストップ!」

 

 視界全てを埋め尽くさんばかりの長文コメントから単語コメントまでARビジョンで周りを埋め尽くすのに対して、バタバタと煙を払うように手を振るエイト嬢。

 

「それでは! ルールの説明をさせていただきます! ちゃんと聞かないとメーですからね! ビジョンオープン!」

 

 バッと大仰に手を振った途端、背後に浮かび上がる大型モニタ。

 それぞれの名前の横に、二人ずつキャラクターの名前と姿が映っている。

 事前に選出した持ちキャラだ。

 

「今回初出の新ゲームルール! 「ロシアン・ツヴァイ」! これはGH:C初の全六人による多人数バトルロイヤルモードです! 各々のプレイヤーはキャラを二体選んで、最後まで生き残ったプレイヤーが勝利です!」

 

「対戦ゲームだったGHシリーズですが、初めての専用ゲームモードによる多人数型バトルロイヤルですね。今まではNPCエネミーなどによる疑似的なバトルロイヤルを行っていましたが、GH:CになってNPCによる潜伏作戦の振り、ヒロイック・ヴィランゲージなどの稼ぎ方などもあって積極的な戦法が王道だとされている今の風潮にあった面白い試みだと思います」

 

「ふふふ、さらにもう一つ実はスゴイギミックがあるんですね」

 

「へえ、それはどんなんだい?」

 

「対戦進んだらが始まったら分かると思います!」

 

「つまり待ってろってことだな、楽しみだぜぇ!」

 

 ここまでは既に俺たちも聞かされている。

 問題は――

 

「それでは各々の選んだキャラクターを紹介させていただきます!

 シルヴィア・ゴールドバーグ! 使用キャラクター「ミーティアス」・「ダスト」!

 アメリア・サリヴァン! 使用キャラクター「カースドプリズン」・「ゼノセルグス 」!

 魚臣 慧! 使用キャラクター「シルバージャンパー」・「ダスト」!

 顔隠し《ノーフェイス》! 「ティンクルピクシー」・「カースドプリズン」!

 名前隠し《ノーネーム》! 使用キャラクター「クロックファイア」・「Ms.プレイ・ディスプレイ」!

 そして空ビヨンド! 使用キャラクターは「シルバージャンパー」・「ランゾウ」です!!」

 

 シルヴィアのダストは意外だった。

 正直ミーティアス専門のイメージが強過ぎて他のキャラでの動きはまあクッソ強いんだろうな以外は思いつかない。

 アメリア、空ビヨンドはまあいい。大体わかってた。

 カッツォのアムドラヴァではなくダスト、そんでシルバージャンパーというのはわりと予想外だった。

 シルヴィアと被ったのはまあそういうこともあるだろう、多分。

 だがしかし。

 だがしかしだ。

 

「あーうん」

 

 選出キャラを見た瞬間、外道(ペンシルゴン)を見たのは俺だけではなかった。

 

「殺さないと」

 

「おいおい殺すわ」

 

「貴方の生存続行はお勧めできません」

 

 カッツォとアメリアも真顔で見ていた。

 ベストマッチなクロックファイアだけではなく、害悪過ぎるMs.プレイ・ディスプレイとか……

 一秒でも早く殺さないと俺は決意した。

 

「やだなぁ、なんでそんな怖い目で見てるの君たち~」

 

 片足上げて、両手をビーカプースタイルに構える、きゃる~んみたいなポーズ取る外道(ノーネーム)

 その態度に騙されるのは天音 永遠のファンだけだぞ。

 間違いなくやべえことを企んでいる、間違いない。

 そもなんで二体もキャラ使えるようにしやがった。情報戦と爆弾魔の組み合わせはテロリストにはベストマッチ過ぎるだろ。

 

「制限時間は通常通り三十分、1ラウンドでの一本勝負となっています。それから」

 

 エイト嬢が開始前の解説をしているのを見ながら、

 腰に備え付けたライオッドブラッドリボルブランタンを取り出す。

 ミックス・アクセル・ジョイントには一定の波がある。

 記憶も朧だったが、さっきまでと比べて今はいい波が来ている。

 もう少しで成功する乱数テーブルに着席出来る。

 

「ねぇ」

 

「うん?」

 

 その時だった。

 マフラーで顔を隠していた空ビヨンドが近づいていた。

 

「一番強いのはどっち?」

 

「あ?」

 

「ミーティアスを倒した奴がいるって聞いてきた。殺気に覚えがないから顔を知らない」

 

 なんか新人類みたいなことを言われた。

 ん、いやさっき同じようなことを言われたような……

 

「ケイよ」

 

「貴女は?」

 

「貴女に負けたミーティアス。シルヴィア・ゴールドバーク、よろしく」

 

「アメリア・サリヴァン。ついでに貴女にコテンパンに倒されたカースドプリズンです、よろしくお願いします」

 

 首をかしげつつ、左右の両手を掴まれて握手されている。

 背丈が高いのと元気がいいので左右に揺れている。

 

「今度は勝つわ」

 

「覚悟してやがってください」

 

「……ぁあ」

 

 揺れながら何か頷いている空ビヨンド。

 

「あと私に勝ったのはこっち、ケイよ」

 

「ケイ?」

 

「魚臣 慧だ」

 

「…………」

 

「えっと」

 

「…………」

 

「空ビヨンドで、いいんだよ、な……?」

 

 眼鏡とマフラー越しの沈黙。でもなんか凝視されてんなあ。

 カッツォの奴緊張してる、はじめてみたわ。

 やめろ外道、後ろで動画撮影するのは。あとでデータ送ってもらうか。

 

「………………ねぇ」

 

 空ビヨンドがマフラーと眼鏡を外す。

 

「――」

 

 会場がざわめいた。

 その隠していた顔の下にあったのは。

 

 

 

「今、どこにいるの?」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「?」

 

「……」

 

「幕張会場なんだけど」

 

 カッツォがそういって。

 空ビヨンドは何故か溜息をはいた。

 

「えっと、なにか俺しちゃった?」

 

「単純過ぎる。0点」

 

「ボケがなかった。失格」

 

「貴方には渋さが足りないと私は思います」

 

「ケイのそういうところがダメなんじゃないかなって私思うわ」

 

「なんで全方位フルボッコなんだよ!?」

 

 それは君がカッツォだからだよ。

 

 

 

「それでは皆様、各々のシステムにスタンバイをお願いします!」

 

 

 

 と、呼ばれた。

 空ビヨンドはさっさと顔を背けて、システムへと向かっていく。

 カッツォはなんか複雑そうな顔をして、気を取り直していくようだった。

 

「何が悪かったんだろう?」

 

「知らん」

 

「受け」

 

「なんでや」

 

「ユニークが自発出来ないこと?」

 

「畜生!!」

 

 などと捨て台詞を吐くカッツォ。あの調子ならまあ大丈夫だろう。

 それぞれ割り振られたVRシステムに行く前に、俺も一度深呼吸して、ライオットブラッドを取り出す。

 

「いくぞ」

 

 カフェインと共に在らんことを。

 カシャコン、カシャコン……ヴォン。

 

 

 さあゲームをやろうか。

 

 

 




「ヘイ、Sili! 今どこにいるの?」

今の社会では個人情報で登録されている。
赤の他人の呼びかけには端末は応えない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。