神を見たければ青天にキスをしろ~クソゲープレイヤー、神に挑まんとす~   作:雨 唐衣

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 光を
 与えられた自分の醜い色を知る
 どうしたって求めていた色は混ざり合い消えていく
 それでも足は止められない
 それでも求めあうことはやめられない
 いつか見た私だけの光を目指して


【混色】

 

 

 目を開く。

 一秒もかけずに周囲の状況を目視、上下左右を確認し、見えるビルの位置から自分の位置を割り出す。

 

「悪くないね」

 

 思考を言葉に出して、思考を整理しながら踏み出す。

 予定通りに動ける。

 作戦開始まであと何秒? そうだね。

 

「197秒もあれば辿り着ける」

 

 グラグラと揺れる首の上の飾り物(ディスプレイ)を揺らしながら、^q^と笑った。

 

 

 

 

 ――思ったんですが。

 ――なんだい?

 ――今回はバトルロイヤルですね。

 ――ああ、誰も味方はいない。

 ――企業に所属していない顔隠し(ノーフェイス)名前隠し(ノーネーム)、そして<空ビヨンド>以外は全員違う企業だ。

 ――じゃあ、それじゃあ。

 

 

 

 目を開く。

 感じるものはなく、周囲を見る。

 溜息。

 思うがままに歩き出す。

 誰を倒せばいいなんて考えない。

 指示してくれる人もいない。

 だから。

 歩いて、前を見上げた。

 

 

 

 

 ――<空ビヨンド>がまず狙われるんじゃないでしょうか?

 ――ふむ?

 ――私は詳しく知りませんが、大会を荒らして、シルヴィアさんとアメリアさんを倒したんですよね。それじゃあまずはあいつを倒してから、みたいに五人がかりで襲い掛かるなんてなるんじゃあ。

 ――ああ、それは大丈夫。

 ――絢斗さん?

 

 

 

 目を開く。

 即座に伏せながら周囲を確認し、素早く物陰に隠れる。

 今回のモードはいつにない多数バトルロワイヤル。

 一定距離ごとに離れた出現位置は保証されているが、出てくる場所はビルの上でも路地裏でも決まっていない。

 ビルの上にいて、その視線上に自分が映っている。あるいはその逆もありえる。

 乱数の神様はたまにそういうことやる。

 そんなことを考えながら飛び上がる。

 どういうチャートで倒していくか、ある程度考えてはいるが、基本は当たってから選ぶ。

 優先事項はペンシルゴン>シルヴィア>空ビヨンド、後はノリ。

 ビル影から飛び出した。

 

 

 

 

 ――ベーブ・ルースに出会った少年は何をすると思う?

 ――?

 ――サインをねだるか、握手を求めるか、ツーショット写真を撮るか、それは人それぞれだろう。

 ――無視するのも、夢だと思うのも、飛び上がって喜ぶのも自由だ。

 ――だけど。

 

 

 

 NPCモブたちがこちらを見ていた。

 すぐさまに上を見上げた。

 俺の上を見た。

 迷わずにジャンプを駆使して跳び退る。

 轟音。

 激しい粉塵を巻き上げながら、片手、片足を地面に突き刺した……おいおい。

 

「そのポーズはヒーローにしか許されないぜ」

 

「だったら華麗に取ってみな、ヒーロー」

 

「生憎今は通りすがりのプリティな妖精(ティンキー)ちゃんだぜ、正義の心にでも目覚めたかよ宇宙ゴリラ(ゼルセルグス)

 

 いきなりの宇宙ゴリラ。

 だがお互いにゲージは溜まっていない。妖精神拳の餌食にしてくれるわ!!

 

 

 

 ――だけど、彼らは、俺たちは。

 

 

 

 銃声が響いた。

 

「「!?」」

 

 高々と狼煙のように上がった銃声の先を見る。

 見上げた先に白と黒の人影があった。

 白い覆面に白いコートを羽織った人影。

 黒い覆面に黒いコートを羽織った人影。

 それは共に同じ背丈をしていて。

 それは共に同じポーズをしていて。

 それは共に二丁の拳銃を――黒――白――を構えていた。

 鏡映しのようにこちらを見つめ返して。

 共に同じく銃を携えていた。

 ただ違うのは白一色か、黒一色か。

 

「《《ダークヒーロー・ダスト」》 しかも」

 

色違いの指定エディットか(ホワイト&ブラック)!」

 

 このバトルロイヤルでダストを選択してるのはたった二人!

 だがそのお互いの手に握られているのは。

 

善なる(ジャスティス)!?」

 

悪なる(ギルティ)?!」

 

 

 

 ――誰よりも一目散に、こう叫ぶでしょう。

 

 

 二人のダストが、両手に善と善の、悪と悪の銃を身に着けていた。

 

 

 

 ――「俺と勝負しろ! ってね」

 

 

 

「神様に挑むのは俺だけでいい」

 

「ケーキは独り占め」

 

「「今日の私たちはどっちつかず(モノトーン)」」

 

 掟破りのダブルダストが参戦する。

 一人のヒーローと、一人のヴィランと、二人のどっちつかずの乱戦が始まった。

 

 

 

――神様が目の前にいたら挑まずにいられない、それが最高を目指す人のサガなのさ

 

 

 

 

 

 

 

 




「まずは()()()()!」


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