神を見たければ青天にキスをしろ~クソゲープレイヤー、神に挑まんとす~ 作:雨 唐衣
轟音が轟く。
瓦礫が砕け、壁が壊れて、放物線を描いて人が飛ぶ。
何も出来なかった。
何も出来ずに爆弾魔は視界の端から端へと至るぐらいに吹き飛ばされて、めりこんでいた。
「あはははは、うん、これ無理だね!」
侮っていたつもりはなかった。
油断していたつもりはなく。
正面から堂々と不意打ちをするつもりで、幾重にも爆弾を仕掛けて、躍り出たつもりだった。
わりかし完璧なつもりの布陣だった。
だがそれら全てが起爆するよりも早く、
「ちょっとーこんな強いの見たことないんですけど」
粉塵の先に見上げる銀色の輝きを見る。
降り注ぐ雨の下。
魔王のように。
声一つなくポケットに手を突っ込んだジャンパーのヒーロー。
「
シルバージャンパーがそこにいた。
無傷で。
勝ち目がない。
具体的にはヴィランのゲージが残り一割、ヒーローのゲージが十割。
逆の数字ならヒーローが逆転するかもしれないが、現実とヴィランだと逆転はない。
悪党が追い詰められればそのまま死ぬのだ。
無慈悲なり。
ああどうして世界は外道に厳しいのか、不公平じゃないだろうか。
だから。
「一つ話があるんだ」
瞬きをして点火。
ヒーローは爆炎に呑み込まれて。
そして、爆弾魔は爆発四散した。
「
「そうだ、多分だけどなぁー」
「うん、多分だけどな」
「多分ってなんだよ、ちゃんと検証したの?」
「しました、ありがとうカッツォクラウンさん」
「殺すぞ、リカースティールさん」
そこには胸倉を掴み合って友情を確認する微笑ましい光景が!
「はいはい、つまり<空ビヨンド>探しもせずにゲームやり込んでたアホ二人がいたと。で、発生条件って?」
「そうだな、まず青天のことを整理しよう」
先ほどペンシルゴンが置いたファイルを横にずらし、オイカッツォが持ち込んだノートパソコンを置く。
「青天と呼ばれているギミックには二つ特徴な点がある。一つ、一発でゲージ十割を削り切る無限コンボ」
「はい、壁バスケバスケ。クソゲー確定だね」
「そこらへんの攻防も極めると奥深くてなぁ楽しいんだぞ?」
「スルメみたいに噛み締めないと分かり合えない領域は一般には理解されないから、で、二つ目は?」
「空まで運ばれるコンボだ」
ノートパソコンの動画には、シルヴィアが操るミーティアスがお空への旅へと
計測にして1分35秒、ダメージエフェクトが連打している限りゲージがゼロになってもゲームセットにされない仕様だが。
そこにあったのはビルよりも高く、螺旋を描く青空の威容があった。
「――この光景から、この
「どう考えてもJustice Versusの
「お前が二千万再生超過したせいだぞ」
「全ては
「政治家かてめえ!」
HAHAHA。
ちょっと前に
「で?」
「ア、ハイ。この二つが青天のキモだと思う所存でありまして」
「とりあえず十割削りコンボとあの空へと飛ばすコンボなんだが、どちらも無理だった」
「あの
「完全再現は無理だったんだよ」
ミーティアスの完全上位互換であるプリズンブレイカーの機動力。
それでですら、ビルの壁面を使い、落下しながらの
そして削れるのが確定で決めても1・2割、最後のフィニッシュをいれてようやく有効打だ
開幕十割なんてどうやっても出来なかった。不可能だと悟った。
だがそれが現実に破られている。
「だが、プリズンブレイカーですら出来なかったこれを機動力の低いランゾウでやった。そこにギミックの種があると思った」
「シャンフロエンジンの物理エンジンならまだ俺たちでもわかってないギミックがあるかもしれないからな」
見栄えのいい感じに飛んだり跳ねたり、ぽーんって漫画みたいに吹き飛ぶからな。
特にGH:Cは原作世界観のイメージ再現優先で、ド派手に吹っ飛んだり、車とかオブジェクトの壊れ方が漫画チックに優先されている。
文字通り原作世界観の中で大暴れって奴だ。
「だけど、それは出来なかったと」
「ああ。シルヴィアにも頼んで、ミーティアスのあの時の動きを再現してもらって同じようにランゾウでやってみたりもしたんだがな」
ちなみに途中でキレて、殴り返されて逆にオイカッツォの使うランゾウが〆られたらしい。
うん、シルヴィアとか検証勢じゃないもんな絶対。
「シルヴィアも協力してるんだ」
「ああ、リベンジする気満々だからな」
「うーん、激強メンタル」
だろうな。
ちなみにこの集会にいないのは仕事が忙しいからしい。
休暇中の全米一位とはいえ入ってる大会もあるし、<空ビヨンド>での敗北でごたごたしてる。まあ不正行為で負けただけだから同情的な目が多いらしいが。
「むしろ見つけても混ぜなかったら殺すってマジ顔でいわれました、はい」
「おら、ワクワクしてんぞとか言ってなかった?」
「戦闘種族みたいな顔してたよ……」
瀕死から蘇る度に強くなる類だな、絶対地球人じゃないだろ。
「で、しょうがないから色んなキャラ使ってな。似たようなエフェクトまでもちこめねえかってぶっ続けでやってまして」
「閃け! 戦士の魂よ! とかいいながら、こいつがライオットブラッドをミックス・アクセルで決めまして」
「我、天啓に開眼せり!!」
くわっ!
「完全に行き詰った奴がドラッグに手を出した流れだよ、で?」
スルーされた。
「なんか妖精神拳で出来た」
「は???」
「なんかやりやがった」
「は???」
「結論から言おう。十割削りと空まで運び込まれるエフェクトは複合必殺技だ」
「
「日本語でおk」
「GH:Cに限らず、対戦ゲームには幾つかハメ防止がある。バウンドしての床ダメージの無効化とか、明らかに連射された数より低くなる被弾数とか、スタン時間の制限とかな」
「まあね」
「で、一番特徴的なのが無敵状態だ。一方的な展開を防ぐために喰らい過ぎるとノーダメになる、じゃないと合法パウダー喰らったら殴りハメられるからな」
「妖精の粉は不思議な粉、何故か少し浮かびやすくなるから壁に追い詰めないとふっとぶんだよなぁ」
パッと見だと違いが判らんが、「ティンクルパウダー☆」でスタンさせると、ノースタン状態で殴るよりもノックバックの発生と距離が増幅される。
前後不覚で足元がお留守になるという設定のせいかもしれないがおかげで下から突き上げるように殴ると、ノックバックで死んでる射程距離がより悪化してしまい、コンボを繋げなくなる。
なので連綿と受け継がれた妖精神拳使いの
邪妖精神拳はあえて逆を行き、それで建物から叩き落としたり、空中に浮かせた状態から絡みつくように関節技や、ティンクル☆ワンドを打撃ではなく拘束具に挟み込んで、一方的な
王道の打撃妖精神拳か、邪道の関節妖精神拳か、未だに
全てはTQCの導きのままに……
「頭と一緒にお空に逝くのかぁ」
「君たちはピーターパンぐらい知らないのかい?」
知ってる知ってる。気に入った子供が成長する前に殺すんだろ?
「うーん原典版しか知らない奴」
「そんでパウダー決めながら、ひたすらカッツォを突き上げたんだが」
「掘ったと」
「やめてくれない?」
「俺のドリルは天を貫くドリルだ!」
「合体しねえよ!!」
「なんかその拍子に、繋がらないはずのダメージが二回ほど通った」
「は?」
無制限のコンボ練習用の練習モードでの対戦で、青天の高度検証にオイカッツォの使うミーティアスを殴り上げてた時である。
統天完全再現してやんよぉおお!!
と ビル壁に沿うように殴り上げてて、一回うっかり無敵時間を忘れて弱パンチを連続でぶち込んだのだが。
「ノックバックもしないはずの一撃で、上に上がったんだわ」
「無敵時間がキレてたんじゃなくて?」
「いや、それはない。俺もミーティアスでどう飛ぶか確認してて、その瞬間だけガチで衝撃入ってびっくりしたからな」
で、そこから運ぶのが当然失敗したんだが。
打合せして同じ動きをして、同じコンボをキメてみて。
「徹夜でかなぁ、多分100? いや200ぐらい? やってみて」
「1回だけ通ったのが7回、2回通ったのが3回、3発通ったのが一回だけだ」
「3発って連続で通った回数? バグってこと」
「ああ。で、それから一応録画してた奴で解析したんだが」
オイカッツォがノートパソコンを操作して、再現が上手くいった動画を見せる。
動画ツールの機能で時間を表示出来る。
そこには俺とオイカッツォの二体がひたすら同じ動きをして、空へと運ぶのがあったんだが。
「――ここだ、ここだけ
「コンボの始動と一緒に、たまたま拍子があったんだと思ったんだけどな。一発目と二発目が、まったく同じ
ペンシルゴンが無言で画面を見ている。
その右上に数字。
「間隔は? 一秒じゃないね、
「推測だがおそらく0.001秒ぐらいか」
「あるいはもっとシビアかもしれん、気が遠くなるぐらい短い時間だけどよ」
息を飲み、言う。
「GH:Cにはそれが出来る隙があった」
「それが出来ればあとは簡単だ。物理エンジンで相手への追撃が可能なアクションを織り交ぜる、空中で行う二段蹴り、何故か滞空する昇竜拳、ダメージ判定さえ入れば追撃出来るのがコンボゲーの常識だ、だから」
「だから――」
『チートです』
『空ビヨンドと名乗るプレイヤーは、違法手段を用いていました』
『使用していたヒーローランゾウのパワーや動ける速度こそ弄られていませんでしたが、動きは機械そのもの』
『人間にプレイ出来る反射速度ではありません』
『なによりも、今や<青天>と呼ばれている
『<青天>はシステム上不可能ではありません』
『ですが、製作陣営としては実現可能なコンボとしては一切想定していませんし、期待したこともありません』
『過去現在一度として』
『青天はあり得ない技なのです』
「
だから運営はシステム上不可能ではないが、ありえない技と言ったのだ。
間違いなく人間が出来る技じゃない。
あの
イヤ無理だろう、Justice Versusの全機能をフルに使ってあの
誰にも出来ない技ではあるが、それと空ビヨンドは別物だ。
だが何故だろうか。
検証すればするほど、何故か……
「本当に統天みたいだな、こいつ」
「都市伝説再びって? まったく世界は広いね」
何故か印象がダブる。
違うゲームで、違うものなのに、何故かそれを知っているものだと似た感覚を覚えるのだ。
青天と呼ばれたのもそのせいかもしれない。
だからだろうか。
「ん?」
ペンシルゴンとオイカッツォが食っちゃべりながら、どの技で繋げてるのか議論している中、携帯端末を見た。
メッセージ――登録している動画のマイリストに新着。
「は?」
「どうしたサンラク」
「新作だ」
「なんの?」
「
「「はぁあ!!?」」
二人が、いや、俺も含めてノートパソコンに手を付ける。
「おい慌てんな俺の!」「君のものは」「俺のもの!」「ジャイアニズム!?」「いいからけちけちすんなよ、社会人」「お前もだろ!」「俺は学生だから甘えます!」「てめえらぁあ!!」
奪い合うように、だが最後にはオイカッツォに蹴散らされて、俺の携帯端末から見たURLをタイピングする。
そして現れた動画は――
「………………」
「………………」
「………………は?」
ステージ、空中浮遊都市群。
そして、そこに描かれていたトリックムービーは。
「
十割を削るものではなく、ただの魅せるだけのトリックだったが、それは確かに青天だった。
そして投稿者のコメントには。
「ゲームしようぜ」
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