死の王と蠅の王   作:マイクロブタ

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どうしても遅筆です。申し訳ありません。評価を頂いた方、ありがとうございます。


8話 そうだ、帝都へ行こう

 彼女は持ち前の用心深い周到さと意志の強さと行動力で生き抜いてきた。いつの間にか高級娼婦上がりが『八本指』の大幹部……麻薬部門の長になっていた……なんて思うわけがなく、そうなる為に多くの者を利用し、潰し、必要とあらば殺し、捨てた。つまり無数の敗者の屍を踏み付け、その膨大な怨念を背負って、今を生きているのだ。

 今の地位には立つべくして立っている。

 だから正確に理解していた。情報を取り扱う能力と圧倒的資金力が自身と自身の率いる麻薬部門の強みであり、固有の武力は扱う資金量に対しては極めて脆弱である、と。

 そして彼女は情報以上に自身の直感を信じていた。だからこそ王都の拠点である館に留まっていた。どうにも今回の緊急幹部会は胡散臭いのだ。

 実質的に壊滅した奴隷売買部門のコッコドール……しれっと表社会に舞い戻っているが実質的に死に体だろう。

 想定外の離反者を生み、奴隷売買部門を壊滅させた張本人である警備部門の首魁ゼロ……麻薬部門と正反対で資金力は低いが極めて高い武力を誇っていたのが売りだった……が、こちらも虎の子である『六腕』から離反者を生んだのがいただけない。信用失墜などというレベルの失態ではないのだ。当然、他部門の幹部達から管理者としてのゼロの資質が疑われる……交代論が出てもおかしくない状況に追い込まれているだろう。

 事実上、ほぼ失脚した2人が連名で開く緊急幹部会……理由は離反者にして叛逆者『幻魔』サキュロントの公開処刑と、サキュロントの叛逆に加担した汚職官吏スタッファン・へーウィッシュに対する報復、及び警備部門から奴隷売買部門へ支払うべき賠償金額の決議……とある。

 一見、筋は通っている。確かに『八本指』内部の疑心暗鬼状態を緩和させるには必要な内容だが……直感が「なんとも怪しい」と囁き続けるのだ。

 既に遅れる旨は伝えてある。あくまで「緊急の」幹部会なので、欠席でなく正当な理由がある遅刻であればそれほど疑念は生じないだろう。相互に監視し合う組織とはとにかく面倒臭いものなのだ。

 

 窓の外を眺める……異様に明るい月明かりが忌々しい。

 

 情報を集めるように指示してから既に6時間……つまり幹部会の開催を知った直後からだが……経過していた。部下の誰一人として情報を持ち帰った者がいない。否、誰一人として帰還した者がいなかった。だから彼女の疑念は一層深まり、館から一歩として動けなくなってもいた。最低限信頼出来る手勢に館の警備は任せているものの、保有する武力の脆弱さを改めて思い知らされてもいた。やはりもう少し人員を増やす必要がある。無用に情報を与えないで済むような戦闘専門要員などという都合の良い存在がいるのならば、だが。

 

「……ヒルマ・シュグネウスさん?」

「ヒッ!」

 

 慌ててヒルマは振り返り、寝室の中を見回す……誰もいない。見慣れたドアに鏡台にクローゼットのドアに至るまで、どこからどう見てもいつも通り、異常など欠片も無い。

 

 まさか……実態の無いアンデッド?

 

 恐ろしいレイスの類を想像して、ヒルマは天井から壁へと視線を走らせる。さらに目を細めて空中を凝視した。しかし何も無い……ホッと息を吐く。

 

 このところ栽培拠点の襲撃が続き、サキュロントの叛逆にコッコドールの拘束と続いたから、疲れているのかねぇ……

 

 疲れからくる幻聴……そう自己診断して、無理矢理心を静めた。普段の彼女からは考えられない行動だが、焦りと緊迫感と疲労が彼女を追い込んでいた。直感に従う事を信条としているのに、脳内の警告を無理な理屈付けで無視したのだ。

 腰掛けていたキングサイズのベッドから立ち上がろとした瞬間……

 

「遅刻ですよ」

「なっ!」

 

 慌てて向き直るとベッドと窓の間に男が立っていた。金髪碧眼の異様に整った容姿の黒いコート姿。凄まじく整った容姿なのに印象が薄く、やたらに高価そうなコートだけが印象に残る。そんな目立つコート姿がヒルマの視界を迂回して、絶対に回り込めるはずがない位置に立っていた……もはやヒルマの理解を超えた存在だった。

 

 魔法詠唱者……? 

 

 ヒルマには判断出来なかった。たとえ断定出来たとしても対処法は全く捻り出せないだろう。こう言った輩の対処は最高幹部である自分の領分ではない。そもそも近付かせないように護衛を雇っているのだ。

 

 状況の報告も無く、不審者まで素通し……あれら何をやっているのか!

 

 場違いな怒りが湧き上がったが、それに身を委ねるほど愚かではない。きっちりと頭の片隅に追いやり、目の前の現実を直視した。

 正体不明の男……理解を超えた存在であり、おそらく魔法詠唱者。対処法を考えようにも、男の要求すら不明だった。戦闘能力では敵うはずもない。唯一の活路は男がオトコと言うことだ。しかしそれは最後の手段……切り札中の切り札『毒蛇の刺青』が必中の状況を作らねばならない。それ以前に金銭で打開可能ならば、その方が安全で確実だ。まずは男の目的を知らねば……

 

「……誰だい?」

「あー、俺はゼブルと言います」

 

 ゼブルと名乗った男の声音は酷く場違いに暢気だった。

 ヒルマは一言一言が命懸け。一方ゼブルは気楽なパーティーで初対面の誰かに名乗るような雰囲気だ。自分からは最も縁遠い「不平等」という言葉が無性に頭に浮かんでしまう。もっと、こう……切迫して欲しい……頭の中で連呼される「ヤバい」というフレーズを押し退けて、奇妙な怒りが明滅していた。

 

「お兄さんはゼブルさんって言うんだ……目的は……何だい?」

「目的……ですか? うーん……ザックリ一言で簡単に言えば『八本指』の乗っ取り……なのかなぁ? あっ、ここに来たのは貴女の主人になる為です」

「……主人?」

 

 狂人なのか……それとも脅しているつもりなのか? 

 

 ヒルマは反応に迷った。

 

「あっ、支配者って意味ですよ」

「……何をバ……いや、何でそんなことを考えるんだい?」

「そりゃ、貴女が用心深くて、情報の重要性を知っているからですよ……ゼロさんやコッコドールさんはシンプルで扱い易いけど……俺の代役を任せるにはちょっとだけ自分の力を過信し過ぎなところがあるんで……まあ、全体の統括を任せるには厳しいかなぁ、と」

 

 コイツは何を言っているのか……難解な回答だった。

 

「……これでも優しく接しているつもりなんです。ゼロさんやコッコドールさんからの情報通りならば、貴女は非常に役立つと思うんですよ」

「……でも支配するんだろう?」

「まあ、もちろん」

「私が警備を呼ぶって言ったら……?」

 

 ほんの少しだけ……と言っても糸の上の綱渡りみたいなものだが、ヒルマは自分を必要とするゼブルにブラフを提示した。殺されはしない……少なくとも即座に殺す気は無いらしい……ならば交渉の余地と言うか、ゼブルにとってのヒルマの価値が知りたかったのだ。

 

「呼んでみれば……己の立場が理解出来るのなら、呼べばいい」

 

 一転、突き放すようなゼブルの口振りにヒルマは心臓を掴まれたような気持ちに支配された。そしてそれは徐々に這い上がり、背骨を伝って、首から頭部へと至った。

 

「……ん…んっ!」

 

 喋れなかった。助けを呼ぶどころの話ではなく、完全に言葉を封じられていた。叫ぶことも出来ない。パニックになりかけたが、それすら潮が引くように頭が冴えていった。

 身体のコントロールを奪われる……単純にそう思った。

 反撃しなければ……殺される。それは確信だった。

 頼みの綱である『毒蛇の刺青』……マジックアイテムを起動させた。

 両腕の蛇の刺青が立体化した瞬間、ゼブルは右腕を突き出した。まるでわざと噛ませるかのように……いや起動させたことすらゼブルのコントロールなのかも……

 毒蛇の牙は黒いコートの袖を貫けなかった。牙が刺さり、もがく蛇の頭をゼブルは左手で掴み……そのまま潰した。

 ヒルマは全ての終わりを悟った……いや悟らされたのか?

 絶望を見せつけても、極めて細緻だが有名人形作家の失敗作の様な顔は僅かに崩れることすら無かった。

 

「……んっ! んんっ!」

 

 直前までの暢気さは消え失せ、冷えた碧眼がヒルマを見据える。

 

「ヒルマさんは優秀らしいけど、空いた口が塞がらないレベルの低レベルだから、いちおう気を遣っていたんだけどねぇ……やはり壊れても構わないレベルで支配するしかないか……まあ、優秀なゴミ屑と言っても所詮ゴミ屑だ……たとえ死んでも誰も困らない」

 

 頭の中の「ヤバい」というアラートが限界に達するレベルで明滅していた。直感に従おうにも動けない。どんなにピンチと理解出来ても行動そのものが完全に封じられていた。涙が溢れて止まらない。化粧はボロボロになっているだろう。それを直すことも拭うことも出来ない。

 「助けて!」と叫びたいのに叫べない。

 出来るのは目の前のゼブルに哀願の視線を向けるだけ……ひたすら伝わるように祈りつつ、心の底から念じる……神様、助けて下さい、と。奇妙なまでに冷静な心の一部が「バカバカしい」と吐き捨てながらも、どうしてもやめられなかった。

 

「大丈夫ですよ……これまで試した酷い低レベルでも、コッコドールさんの命だけは助かってます」

 

 何の保障にもならない虚な言葉に、ヒルマは太腿を伝う熱い液体が止まらないのを自覚していた。臭う。そしてみっともない。でも、ひょっとしたら……ゼブルが嗜虐的な変態性癖の持ち主であれば……

 一縷の望みはあっさりと砕かれた。

 ゼブルはただヒルマを見据え続けていた。熟練の屠殺人はこんな顔で家畜の命を断つのではないか……そんな感想が頭から離れない。

 

「あー、ちなみに神に助けを求めても無駄です。だって……」

 

 それは唐突に現れた……漆黒の肌に赤い眼に黄金の瞳と髪と6枚の翼……蠢く二匹の蛇……理解を超越した異形……そしてゼブルと同じ口調と声音。

 

「……自分に祈った方が良いんじゃないですか? 俺は神とは正反対の存在ですから……」

 

 失神してしまえばどれほど楽なのだろう……ヒルマは「後悔」という言葉を生まれて初めて真の意味で噛み締めていた……が、それも一瞬、強烈に具体性と感触を伴う死の映像が、頭の全てを占領した。

 

 滂沱の涙……失禁し、脱糞し、嘔吐し……体中から全てが噴き出すような感覚……でも叫べもしなければ、姿勢も崩せない。それどころ視線も眼前の具現化した「魔」から動かせない。漆黒の闇の中で永遠の闘争を繰り返す二匹の蛇の姿……紅の蛇が緑の蛇を喰らい、緑の蛇は紅の蛇の腹を食い破っているのが見えた。

 

 永遠の20秒……ヒルマには時間の感覚が薄れる程の長時間に感じた。

 

 解放された時、そのまま自分の吐瀉物と排泄物の上に蹲み込んでしまった。頭の中で何かが蠢いているような気がして……どんなに掻き毟っても二度と自分の脳が元に戻らない……そう実感させられるだけだった。

 叫んだ。

 救い……救いが欲しくて欲しくてたまらない。

 蝕まれた自分を救ってくれる存在。

 

 とても男性のモノとは思えない美しい手が差し伸べられた。

 

 ああ……この手を掴めば……

 

 汚物に塗れた手で握り返す。

 

 見上げれば慈悲に溢れる微笑みがあった……邪悪と理解しているソレに微笑み返し、救いを求めた。

 

 自分と自分の持つ全てを捧げよう……もう、二度とこんなものは味わいたくない……頭の中を蛆虫に喰われる感覚も激痛も……徐々に死に続ける感覚も、望んでも延々と死ねない感覚も……自分という存在が奪われ、喪失していく感覚……魂の奥底を侵食され、もう二度と元には戻らない。死を迎えるだけでもありがたい。あっさりと死を迎えられるのは最上の慈悲だ。それだけでもありがたいのに……自分の全てを捧げるだけで苦痛無く生かしてもらえるのだ。

 

「……受け入れて下さい……さあ、お前の主人は誰だ?」

 

 

 

 

 

**************************

 

 

 

 

 

「アングラウス……やはりブレイン・アングラウスか?」

 

 宿屋の所在地としては辺鄙といってもいいような街外れの安宿の厩の前でひたすら剣を振る男の姿……青い髪に無精髭……忘れるはずもない好敵手……間違いなくブレイン・アングラウスの姿だった。

 

「……強いな……凄まじい成長だ」

 

 王国戦士長ガゼフ・ストロノーフは好敵手の自分を上回りかねない成長に思わず破顔していた。

 

 一昨晩、自宅を訪ねて来た客の名を年老いた召使いから聞いた時、久々に踊った胸の内を思い返す。自分よりも遥か高みに在る強者……ゴウン殿とは知り合ったが、残念ながら彼は魔法詠唱者だった。友邦としては非常に心強い存在だが、剣の腕を試すような相手ではない。戦士団の部下も目を掛けているクライムも剣の好敵手とは言えない。冒険者の中の強者ルイセンベルグやガガーランは忙しい上に高額な費用が必要であり、剣の鍛錬だけの為に気楽に呼べるような存在ではない……ブレイン・アングラウスが気楽に対戦に応じるとも思えないが、わざわざ自分を訪ねて来た以上、一度ぐらいは手合せしたいものだ、と思ってしまう。

 

 下馬し、愛馬を部下に預け、ガゼフはブレインの逗留する安宿へと足を向けた。

 

「アングラウス!」

 

 白刃が空中でピタリと停止した。ブレインの所作も素晴らしいが、それは思わず目を奪われるような刀身だった。陽光の中でも反射でなく刀そのものの精緻な輝きが失われていない……銘を『斬魂刀』と言う。ただ敵の斬るだけで無く、僅かな接触でも敵の精神力と魔力を奪い、自身のものへと転換する……別名『魔法詠唱者殺し』の神器級だ。

 

「……久しぶりだな、ストロノーフ」

 

 装飾過剰とも思える鞘に刀身を収めながら、ブレイン・アングラウスはニヤリと笑った。そのまま歩を進め、宿屋の入口前でガゼフに拳を突き出す。

 対するガゼフ・ストロノーフの不敵な笑顔を浮かべた。そしてブレインよりも遥かに分厚い拳で突き合わせた。

 

「どうだ……やるか?」

 

 ブレインが誘うのは酒でなく、もちろん剣だ。

 

「腕を上げたな、アングラウス。残念だが……まだ仕事の最中だ」

「そうか……宮仕えも大変だな。俺はいつでもいいぞ。だが俺より先に俺と同宿の連中と絡むなよ……お前に自信を失くされても面白くない」

「……どういう意味だ?」

「過去の俺はストロノーフ……お前に勝つ為に鍛錬を重ねてきた。現在の俺は同宿の連中……ティーヌを凌ぎ、ゼブルに追い付く為に日々鍛錬している」

「強いのか?」

「ゼブルは強いなんてもんじゃない。口じゃ表現出来ない高みに在る。ティーヌは俺よりも若いが、ストロノーフが一歩先だとすれば、常に二歩先にいる感じだな」

 

 自他共に認める自身と同格のブレイン・アングラウスが遥か高みに在る目標と定める強者と、ガゼフよりも強いと認める強者の存在を聞き及び、ガゼフの目が輝く。剣の腕が知りたいというよりも戦士の血が騒ぐのだ。

 

「世の中、上には上がいる、か……」

「上と言うか……下と言うか」

「なんだ、それは?」

「強さと品性は別……そう言うことだ。絶対に剣を交える価値はあるが、ストロノーフの期待通りではない……そう思ってくれ」

「……微妙な言い回しだな」

「風来坊の俺から見ても立派に王国戦士長を務めているストロノーフに、あまり期待させても悪いからな……予防線ってヤツだ」

「余計に気になるが……」

「……ゼブルはどうか知らんが、ティーヌと言う女戦士はお前が手合せを申し込めば必ず受ける……『青薔薇』のガガーラン相手では物足りなかったらしいしな。実際、木製戦鎚と木の枝の手合せだったが、一方的過ぎて模擬戦と呼べるような代物じゃなかったのは間違いのない事実だ」

「ガガーラン……あのガガーランが?」

 

 ブレインの首肯にガゼフの笑顔は微妙に色合いを変えた。

 

「だからこそだ……今、ストロノーフは血が騒いでいるだろう? その期待を俺は理解できるが、同時に手合せした後のティーヌの態度も予測できる。あの女に戦士としての力量以上のものを求めるのは間違いなんだ……ただ、あの剣力は確実に抜けている。俺の知る限り純粋な戦士としては最強だ……ゼブルの奴は魔法やら色々と使うからな」

 

 ガゼフ・ストロノーフは想像以上に飢えている自分に気付いた。

 敵……対戦相手と言った方が正しいか?

 いや、正確には自分を高める為の相手だ。

 

 背後から部下の呼ぶ声がする……どうやらこれ以上時間を潰しては今日の予定を消化できなくなるようだ。

 

「今日は会えて楽しかった、アングラウス……王都にはまだ滞在するのか? 是非、出立する前に一度でいいから手合せ願いたい……その前に積もる話も聞きたいところだな……今度は我が家で飲み明かそうじゃないか。王都で手に入る一番良い酒を用意させておこう」

「……俺の方はいつでもいいぞ。酒でも剣でも……まあ、忙しいのはストロノーフ、お前だ。時間ができたら使いを寄越してくれ」

 

 おう、と答えながらガゼフ・ストロノーフは分厚い背を見せた。

 詮索するようなガゼフの部下の視線を無視して、ブレイン・アングラウスはボソリと呟いた。

 

「……けじめはつけるが、もはや俺の敵じゃないな。王国の五宝物でも装備してもらわないと相手にならん」

 

 柄頭をいじるブレインはガゼフの背を眺めながら、寂しそうに笑い、再び刀を振る為に厩の前に戻った。

 

 

 

 

 

 王城まで続く目抜き通り。

 先導するのは王国戦士団……その先頭には周辺国最強の戦士であるガゼフ・ストロノーフの姿があった。

 勇ましい戦士団の姿が通り過ぎた後、その異様な光景が現れる。

 荷車に高い台を設えた上に6つの生首が載っていた。おどろおどろしい光景だが、自分の実績を誇示する為に手柄を立て続ける巡回使スタッファン・へーウィッシュが必死に考えた方法だった。豚のような彼の横には誠実さが表情からも伝わる小柄なミスリル鎧姿が目に入る。

 台の上にあるのは最前列の『八本指』の議長をはじめ、暗殺部門と窃盗部門と賭博部門の長の首が続く。その後列に密輸部門と金融部門の縦に割られた首が、見守る群衆に悲惨な現場の想像をかき立てさせていた。

 荷車と最後衛の衛兵団の間で、その巨悪の首領達の首を刎ねた「王国の正義を一身に背負った英雄」が群衆に手を振って応えている。彼の名はサキュロント……『幻魔』改め『英雄』サキュロントだ。

 痩身の傷面だが馬子にも衣装……金色に輝く鎖着と真紅のマントがゴロツキの男を大英雄へと見違えさせている。腰の細身の剣の柄頭には大粒の紅玉が輝いていた。過剰な演出もここまでくると生来のガラの悪さが歴戦の証に見えるから不思議なものだ。

 

「茶番……いや、芸人も真っ青の喜劇だな」

 

 一行を見物する群衆を睥睨しつつ、目抜き通り沿いの建物の屋根の上でイビルアイは呟いた。

 通りを挟んで向かいの建物の屋根の上には、この悲惨かつ珍妙な行列の演出家であるゼブルの姿があった。

 ゼブルを囲むようにティアとティナも監視の網を掛けている。むしろわざと目立つように立つイビルアイは揺動で本命はティアとティナだ。

 ゼブルの傍に立つ紫のドレス姿の年増女……ヒルマ・シュグネウスと言うらしいが、この女が事実上旧『八本指』を掌握したらしい、と盛んに噂されていた。組織名は定かでないが仮に新『八本指』とするならばその金融部門を統括していると言う。発足した翌日から地方貴族を中心に大量の資金を貸し込んでいるらしい。一夜にして王都の一等地に出来上がった店舗には商人を中心とする民衆が長蛇の列を作っているようだ……年利15%という比較的良心的な基本金利を設定しており、事業計画書を提出し、審査をパスすると特別な優遇金利でも融資を受けられるという……噂だ。同業組合の無尽講などと違い、妙な組織内の力関係も顔の広さも順番待ちなどということもない。

 ただし回収は『闘鬼』ゼロを首魁とする警備部門が担当することから「ヌルい」と言う言葉からは程遠いものになることは予測できた。旧暗殺部門と旧窃盗部門の大半の構成員もこの新警備部門に転属している。そして金融部門長ヒルマを警護するのは『千殺』と『空間斬』と『踊る三日月刀』の3名という気合の入れ方から、ヒルマが実質的な首領と考えられているのだ。

 仮称新『八本指』の議長はザックと言う名の赤鼻の小男だった。唐突に現れた正体不明の男で経歴も一切不明……その主席補佐官としてコッコドールが名を連ねている。こちらも実質的にコッコドールが取り仕切っているのはないかと噂されている。

 全く新たな存在として商業部門があった。まだ何をやるのかも誰が統括しているのかも不明であるが、旧麻薬部門と旧密輸部門の構成員のほとんどが集められていた。ゼブルの言葉通りであれば大規模かつ正規の輸出入ということになるが、はたして……

 

「暗殺を捨て、窃盗を捨て、密輸を捨て、奴隷も捨て、賭博も半ば切り捨て、表面上は麻薬も捨てた……アイツの言葉通り、表の『八本指』じゃねえか?」

 

 イビルアイに続き、やはりゼブルに監視の目をこれ見よがしに姿を見せ付ける為にわざわざ巨体のガガーランまで屋根の上に上がってきた。彼女は身軽なわけでもなく、『飛行』の魔法も使えないので、梯子を掛けて上がってきたのである。

 

「……中身は前と一緒だ。早速、貴族達を取り込み始めたのもきな臭いが……貴族でない奴らが堂々と私兵を集めているのがな……しかもその深刻な事実に気付いていながら、指摘する貴族は皆無だ。元々浸透されているとはいえ、あまりに情けない現状じゃあないか……これではラキュースのアインドラ家のような良心的貴族がいかに抵抗しても、王国の末路は決まったようなものだ」

「確かにな……私兵に関して言えば、以前は裏社会の存在だからこそ許すもクソもなかったわけだ。今度は堂々と表に出て納税もする代わりに、貴族達の弱味と醜聞に加えて財布事情を握りにきたわけだ。俺達は勝手に兵を持つが、異論はゆるさねえ、ってな」

 

 イビルアイは考え込んだ……新『八本指』とは厄介過ぎる存在だった。王国内の単一勢力としては資金力も武力も政治力も突き抜けている。

 資金力に加えて人員も旧『八本指』の全てを奪った。

 武力は旧『八本指』の戦力を引き継ぎ、その背後にはゼブル達がいる。『六腕』を軽く一蹴してみせた戦力だ。一軍と戦っても対等……いや、最悪の想定では王国内の全正規軍と全諸侯の私兵を凌ぐ可能性すら捨てられない。

 政治力については持てる資金力を金融に集中投入し、一層高まったと言えるだろう。イビルアイの視点からすれば積極的に貴族階級に浸透工作を行っているようにしか見えないが、その実、真っ当な若手の商工業者を育てようともしている感じもする。

 そして過去はともかく現在では現行法に違反するような後ろ暗い事業は捨ててしまった。過去の悪行の精算として6つの首を王国に差し出したのだ。許しがたい事実として、現在の世間の認識ではヒルマ・シュグネウス、ゼロ、コッコドールの生き残った首魁3名は正義の人扱いなのである。

 存在も情報も隠さない。むしろ積極的に広報している……その極みとも言える茶番が目の前のパレードだった。

 『八本指』は生まれ変わった。

 正義の英雄を擁している。

 戦士団の存在は王家との繋がりを示している。

 有力貴族とも強く結びついている。

 その耳障りの良い、危険な事実を明確に誇示しているのだ。

 

 たった1日……『青の薔薇』がヴァンパイア騒動に振り回された、僅か1日の隙がこのような異常事態を成立させたのだ。他の冒険者ではゼブル達に辿り着けない……アレらが暗躍していることを知りながら、こうまで簡単に出し抜かれてしまったのだ……口惜しい。

 もはや全貌が把握できない……どんなカラクリが隠されているのか?

 ゼブル達が背後にいるのだけは確実だが、この事態の仕込みがいつから始まって、いつ終わったのか……巨大犯罪結社が一夜にして真っ当な貸金業者に早変わり……あまりに手際が良過ぎる。客まで用意したのかように集まっているのだ。しかもスジ悪の客でなく、真っ当な事業者が多いと聞く。

 要所を制圧し、排除すべきは排除する。言葉にすれば簡単だが、部外者が無法者集団を完全に従わせるだけでも至難の業なのは想像に難くない。

 

 黒コートの演出家はニコニコと笑いながら、イビルアイとガガーランに手を振っていた。

 

「なあ、イビルアイよぉ……これで良かったのか?」

「……分からん。でも、だからこそ腹が立つんだ……ここまでコケにされて、ニコニコと笑っていられるものか!」

 

 怒りを殺し過ぎたイビルアイが屋根を踏み抜きかねない勢いで踏みしめた。

 

「でもよぉ……こうなっちまったら手が出せねえだろ? 王直属の戦士団やら姫様直属のクライムやら衛兵団やらと連んで、裏じゃ……いや正々堂々と貴族共の財布まで掴みにいってやがるし、仲間の首を切ってまで正義の英雄を仕立て上げられちまったらよぉ……ここまで状況を作られた上で手を出したら、完全に俺らが悪役になっちまうぜ」

「くっ……脳筋にしては解っているじゃあないか……だからこそ性に合わんが相手の失策待ちなんだ。こうやって監視しているぞ、とプレッシャーを掛けるしか手がない……」

「アイツらがプレッシャー感じるタマか?」

 

 俯いていたイビルアイの仮面が僅かに上を向く。

 内心どう思っているかはともかく、ガガーランはゼブルに手を振り返した。あまりにアクションが大きかった為か、ゼブルの隣のヒルマ・シュグネウスまでが会釈を返した。

 ヒルマの腰を抱きながら、ゼブルはヒラヒラと手を振り、その場から一緒に消えた。おそらく転移の魔法だろう。

 

「……なんかよぉ、イビルアイの言う『コケにされて』ってえのが凄え身に染みたんだけどよお!」

「そうか……意見が合ったな……私も……もし今も動いていたら、臓腑がひっくり返るところだ!」

 

 ガガーランの握り締めた右拳は真っ白くなっていた。

 イビルアイの仮面の奥からはギリギリと歯噛みの音がする。

 

 気付けば眼下のパレードは遥かに彼方に通り過ぎ、いつの間にか沿道の群衆も離散していた。

 

「せめてラキュースがしっかりしていてくれればなぁ……」

 

 ガガーランが呟いた。

 

「……彼奴に何があった?」

「……普段は変わらないんだ。ただゼブル絡みはダメだ……何も決められなくなっちまってる」

「なんだと!」

「ツアレ……ツアレニーニャ・ベイロン絡みで何回か単独でヤツと会ってる。それからだ……ラキュースがゼブル絡みに限って、妙に優柔不断になっちまった。それに様子もかなりおかしい……ラキュース1人の時、何回か、力を解放させる、みたいな事を口走っているのを聞いたぜ……魔剣キリネイラム関連だとは思うが、方針が決められなくなったのはゼブル絡みに限るってわけだ」

 

 ……怪しい……

 

 筋肉の塊と仮面の視線が複雑に絡み合った。

 

 

 

 

 

**************************

 

 

 

 

 

 やはり絶対君主はここに在るべきだ。

 

 玉座に腰掛ける超越者……アインズ・ウール・ゴウンの麗しき姿を見つめ、アルベドの腰の羽は落ち着かなく動いている。

 シャルティアは平伏し、謝罪の言葉を述べ、罰を求めていた。

 セバスの進言によるシャルティアの作戦行動中止と完全撤退……確かに主人の意を考え抜いた末のセバスの進言であり、シャルティアを納得させただけの説得力はあった。状況を聞いた限りでは作戦は破綻はせずともシャルティアが失策を犯す可能性は少なからず在ったと思う……アルベドもアインズ様の真意を考慮した場合、撤退は妥当だろうと同意した。だからシャルティアと共に作戦中止を進言し、アインズ様に謝罪したのである。

 

「……シャルティア、お前の全てを許そう……セバスの報告書に少し気になることがある。二人共下がれ」

 

 罰を求めて食い下がるシャルティアを玉座の間から下がらせ、アルベドはアインズ様が気にならないような立ち位置に退いた。

 再び玉座に腰掛けた後、アインズ様はセバスの報告書を熱心に読み込み続けていた。時折、考え込みながら、何やら呟きを漏らすこと数度……

 

「……アルベドよ、話がある……」

 

 常になく重々しい……否、アインズ様は常に重厚なのだが、普段のアインズ様を遥かに超越した重々しい口調だった。魔王……神……そんな軽々しい輩とは桁外れの、全てを圧し潰すオーラが玉座から感じられた。

 アルベドは天にも昇る気持ちで玉座の前に跪いた。

 

 いよいよ……遂に……

 

「……セバスの報告にあるゼブルという冒険者をナザリックに招きたい。決して敵対することなく、最高の礼節を持って、招待しろ……この命は全ては優先する……良いな!」

 

 有無を言わせない……一切の質問も許さない……生易しいレベルでない……これまでの慈悲深いアインズ様からは想像出来ないレベルの厳命だった。アルベドの期待は見事に裏切られたが、至高の御方の意思を実現する為に存在する守護者統括としてのスイッチには確実に火が着いた。

 

「御身の命ずるままに……その者を歓迎するということであればソリュシャンに加え、プレアデスのユリとエントマをセバスの下に送ってもよろしいでしょうか?」

「任せる……しかし失敗は許さぬ。絶対に俺の前に連れて来い……良いな!」

 

 アルベドは平伏した。アインズ様かっけー、と感動に震えながら……

 アインズ様は鷹揚に頷いたが、途端にアルベドに興味を失ったのか……それほどまでに心を鷲掴みにされたのか、セバスの報告書に再び視線を落とした。

 

「……もしかしたら……本当に……『ばある・ぜぶる』さん……」

 

 まるでアルベドの存在など忘れたかのような素のアインズ様の呟きに、激しい嫉妬を覚えながらもアルベドの頭脳は高速回転を始めていた。

 

 

 

 

 

「嫌な予感がします」

 

 とヒルマが言った。

 

「そりゃ、そうでしょう」

 

 と俺は返した。予感とか言っている時点でマジじゃないし……

 

「……ナメてんのか、おばさん?」

 

 相当にガラの悪い感じだが、口よりも先に刺していないだけにこっちもマジじゃない。場末の不良丸出しで脅しに掛かるティーヌだが、ぶっ飛んでいる時のヤバい感じも亀裂のような笑みもない……ヒルマが弱過ぎなだけかも知れないが……まあ、単純に気に入らないだけだろう。

 

「……嫌な予感って、この戯れている小娘じゃありませんよ」

 

 ヒルマの言葉にティーヌが飛び掛からんばかりに身を沈めたが、ヒルマは眉一つ動かさない。

 

「殺ちゃおっかなー、このババア」

「フフッ……あら、怖いわ」

 

 ヒルマは俺の背に隠れるように立ち回る。

 ティーヌの視線が険しくなった。

 このままやりたいようにやらせると収拾が付かなくなる。

 

「……悪いけど、俺は出掛けたいんですよ……少しは仲良くしください。ブレインとジットさんが警護の3人と『英雄』とゼロさんを鍛えに連れて行きましたから、俺を除くとティーヌさんが適任なんです……最低限、無駄な揉め事は起こさないこと……いいですね!」

 

 ちょっと前に「鍛錬に行く」と言うブレインとジットと旧『六腕』の生き残り5人をトブの大森林の奥に『転移門』で送り出していた。旧『八本指』の拠点が使い放題なのがありがたい。念の為に旧『八本指』の首領達6人から生まれた第二世代6匹の内、5匹を警護に付けている。残り1匹はヒルマのいるこの建物の監視に残してある。ジットに各種ポーションも山程持たせている。あくまでパワーレベリング実験のついでだが、眷属が成長するのかも確認したいところだ。もしパワーレベリングが可能ならば、いずれヒルマ自身も強化する予定だった。

 要するに先程からティーヌは拗ねているのだ……ワイワイと楽しそうなレベリングチームから自分だけ外されたのが気に入らないのだろう。

 

「りょーかーい!」

 

 ティーヌはジャンプし、執務室の応接セットのソファの上で横臥した。

 

「ゼブルさんのご命令は守りますよー、だから、おばさん、ヨロシク……許可無く入ったヤツ、全部殺せばいいのかなー?」

「いちおう眷属にも監視させてるんだけど……まあ、取次無しの奴は殺しても問題無し、かな」

「んじゃ、そーゆーことで……死体の始末は後でジッちゃんに任せるから」

 

 ティーヌはフテ寝を決め込んだのか、そのまま目を閉じた。

 それを確認して、ヒルマを見るとクスクスと笑っていた。

 

「……確認しますけど、嫌な予感って?」

 

 ヒルマは首を振った。

 

「……嫌な予感はします。でも何かはわかりません。私の予感……直感は何よりも信頼できます。そういう技でもなければ単なる娼婦が『八本指』の最高幹部に成り上がれません」

 

 そうですか……なんという嫌な言い方……信頼と実績の「嫌な予感」ですか……

 

 この後セバスさんと落ち合って、ラキュースさんのところにツアレの回収に向かう予定だった。対外的な嫌な事態にはセバスさんと一緒であればほぼ問題無く対処できると思うが、嫌な事態の原因がセバスさんの場合には、彼の力量が推し量れないだけに不安が残る。何があっても都市内でまともに戦闘するつもりはないので『人化』解除した程度で逃げ切れるのかが問題だった……眷属の飛行速度をあっさり振り切る老執事のスピード能力は脅威そのものだ。

 で、あるとすればツアレの引き渡しはラキュースさんに全部任せた方が無難だ、との結論に即行き着いた。

 

 ヒルマの肉腫に今後の指示を送り、ティーヌにヒルマの警護を中断して、ラキュースさんにツアレの移送してほしい旨の言伝を頼んだ。

 ヒルマは考え込み、外に出られるのが嬉しいのか、ティーヌはあっという間に出て行ってしまった。

 

 ……まあ、かなり大袈裟なことにはなってしまったが、少なくとも俺が信頼出来る送金システムは作り上げられたと思う。エ・ランテルで苦労しているジットの部下達に定期的にそれなりの金額は送れるだろう。エ・ランテルの城壁内のどこかに『転移門』を使うのは、多数のシャドウ・デーモンを使役する正体不明の高レベルに感知されるリスクが高い以上、正規の送金網の確保が急務だったのだ。そこに渡りに船的存在だったのが『八本指』の金融部門だ。俺が乗っ取っても誰も困らない。表の存在にしてしまえば簡単には潰せない。『八本指』は王国内で必要なコネを最初から持ち合わせてもいた。その上、莫大な資金も手に入る。

 つまり『八本指』を裏から動かせる立場を手に入れた以上、王都リ・エスティーゼに無理に留まる理由も無くなったに等しい。

 

「……帝国に行こうかな……」

 

 冒険者としては特に稼げてもいないが、とりあえず資金的な余裕は以前の食うや食わずの極貧状態とは桁違いだった。むしろ銅級のままのほうが闘技場で稼げるような気がする。突っ込める莫大な資金も確保した。

 

 王国内でやり残したこと……ツアレの身柄引き渡しを済ませば、うちのぶっ壊れメンバーに大人気のガゼフ・ストロノーフと、美女のラキュースさんが美しさを絶賛する『黄金』ってふたつ名のラナー姫に一度会ってみたかったぐらいしか残っていない。ガゼフ・ストロノーフについてはほとんどアポが取れたに等しい状態だったが……

 『八本指』の拠点が使い放題な以上、王都へはいつでも『転移門』で帰還可能だ。で、あるとすれば別に今じゃなくてもいい。ならば冒険者として無名である間に帝都アーウィンタールへ向かうべきだ。

 

 請け負った仕事の完了……ツアレの引き渡しの確認を済ませたら、帝都に移動を開始する……そう決心して、現在では王都内に無数に存在する肉腫で支配された配下に意思を伝えた。

 




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