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ユートが拠点に戻ってみると涙目で睨んでくる八重樫 雫。
「どうかしたか?」
見ればまるでレ○プ犯を睨むみたいな……まるで私は穢されましたという様な感じの目だったし、自身を抱き締めるみたいな格好でペタンと女の子座りで座り込んでいた。
まぁ、ショーツ無しだから短いスカートで丸見えとかは勘弁なのだろう。
「スカートよりズボンの方が良かったか?」
「有るんならそっちを出しなさいよ!」
「何を怒ってるんだ?」
ズボンを投げ渡しながら疑問を呟く。
「……私の裸を! 緒方君が見たんでしょうが! 未婚の! 乙女の! 柔肌を! しかもファーストキスまで奪ってくれて!」
「見たは見たけど、身体中あちこちがボロボロだったんだぞ。特殊な性癖でも無い限りそんなもん見たって興奮はしないな。ファーストキスだと言われても、救急措置をカウントしていたら一般的な救命なんて出来んだろう」
「そ、そういう問題じゃあ無いわよっ! くっ、乙女の唇を何だと思ってるの!」
「じゃあ、あれか? 魔物に喰われていた方が良かったのか?」
「そ、そんな訳!」
「間違えるな。八重樫は勝手に結界の外に出て、勝手にやられて死に掛けたんだ。自業自得で重傷を負ったのを、此方は善意で貴重な回復アイテムを使って治してやった。マッパにしたのは治療行為だったんだが、何か文句でもあるのかな?」
「うぐっ! そ、それは……」
勝手に出て行き勝手に死に掛けたのは間違え様の無い事実だし、八重樫 雫は確かに文句を言える様な立場では無かった。
「しかも案の定、蹴り兎の一匹すら相手に出来なかったよな? あの程度の動きに翻弄されたし、一撃を貰っただけであの体たらく」
「ぐっ!」
悔しそうに表情が歪む。
「え、雫ちゃんが兎さんにやられたの?」
「香織、アレは兎
異常に発達した脚故にユートもアレを蹴り兎だと称したのだ。
「ですが、剣の扱いを心得ている八重樫さんが成す術も無く斃される程ですか、本当にそれは強い魔物なんですね……」
愛子も雫の実家についてくらいは知っている。
八重樫流剣道場。
とはいえ雫が持っているアーティファクトが刀ではなく、極めて形が似ているシャムシールっぽい剣では実力が十全ではないのも仕方がない。
「取り敢えず、刀だろうが何だろうがそもそもの話で八重樫の能力が足りてない。それで蹴り兎には勝てる訳が無いんだよ」
「……それでも一番弱い、そうなのね?」
「強いにしても所詮は兎。熊に敵う道理も無いだろうな。だけど単純な実力は二尾狼の方が低いみたいなんだよな」
実はそんなに弱くない蹴り兎はやり様によっては複数の二尾狼をも斃せる。
「だけど私がこんなザマだとすると香織と先生は余計に……」
「言っただろう? 君らは足手纏い、だから僕は一人で行くんだ」
「私達はどうすれば良いのよ?」
「この拠点で黙って待っていれば良い」
「待つって、それはいつまで?」
「知らん。百階層だからな、少なくとも一〇日は見ないといけないかもね」
「と、一〇日も!?」
そしてまた一〇日掛けて最深部までと。
つまりは一ヶ月間。
「あの、緒方君。それなら八重樫さんと力を合わせて戦った方が良くないですか?」
「八重樫は足手纏いだと言ったろ、居たとしても寧ろ邪魔になるだけさ」
「緒方君はそんなに強いの? 私を邪魔者扱いする程に?」
「ああ、あのベヒモスだって僕が一人だけならば簡単に斃せた。だけど、僕が無双しても意味が無いからな。そうしたら莫迦共が莫迦をやらかすしやれやれだぜとか、香ばしいポーズを執りながら言いたくなるくらいだよ」
ユートにとって勇者(笑)も誰も足手纏いでしかないが故に、ベヒモス戦にしても連中に経験を積ませる為だけの戦いだった。
「まぁ、僕の力を見せれば納得はするか……ああ、やっぱ無理かな?」
「何でよ?」
「勇者(笑)の幼馴染みだ、変な御都合解釈とかされても厄介だからな」
「しないわよ! 光輝じゃないんだから!」
「し、雫ちゃん……」
存外と良い性格をしている八重樫 雫。
「それで、力って?」
「僕の天職は知ってるか」
「錬成師でしょ? 何だか蒼いゴーレムみたいなのを造っていたわよね」
「うん、それな。けど前にも言ったろ?」
「……へ?」
ユートは自分の闇色をしたステータスプレートを三人に見せてやる。
「これは?」
八重樫 雫が首を傾げてしまう。
「能力値も小さいし技能も派生技能が山ほど有るけど錬成と言語理解だけ……」
白崎香織は意味が解らないという風情。
「これが何なんですか?」
愛子先生は腕組みをしながらよく判らないらしくやはり首を傾げている。
「この世界のステータスを表示するプレートだ、見ての通りだが実際には小悪党四人組を容易く斃した事から有り得ないのは、前の模擬戦の時にも話した筈だよな?」
「確かに言われたけど……そんなに隔絶しているって事なの?」
「そうだ。あの時はボソッと言っただけだったけどな、実際の僕のステータスは概算で60000くらいの筋力だと思われる」
「ろっ!?」
余りに桁違いが過ぎて吹かしだと思ったのか、首を横に振る八重樫 雫。
「いやいや、流石に有り得ないでしょ?」
「ま、地球での能力が出力されていないからな。実際の数値までは判らないんだが……」
「レベルが全員1だったから確かに緒方君の言う事にも説得力があるわ。だけど緒方君が其処までの強さなのが納得いかないのよ!」
確かに八重樫 雫の言い分は一理があったから、ユートは真実を話す決意をした。
「僕はとある場所で王をやっている」
「王?」
「天魔真王……天魔がどっから来たのかは知らんが真王は地球で僕が名乗っていた王号だ」
「はぁ?」
またもや意味が解らない話に八重樫 雫は間抜けた声を上げる。
「正確には平行異世界での地球、もっと正確に云うと古代ベルカと呼ばれていた時代に群雄割拠してた無数の王の一人だ」
「古代ベルカって何よ?」
「そういう世界が有ったんだと思えば良い。覇王だとか聖王だとか雷帝だとか、他にも冥王や竜王なんかが居た中、真王として起ったのが僕だよ」
天魔真王というのは、ジクウドライバーが変化したテンマシンオウドライバーによって変身をした姿がそれだったというのは理解していた。
狼摩白夜からの情報から【仮面ライダージオウ】、この作品の謂わば主人公の常盤ソウゴが、最終回にてゲイツとツクヨミが殺られた後にオーマジオウドライバーを顕現、仮面ライダーオーマジオウに変身をしたと云う事らしい。
そんな機能は付けていないが、何故か似た現象が起きてテンマシンオウドライバーに変化したのである。
その姿は仮面ライダーシンオウがジオウの色違いだからか、やはり同じくオーマジオウの色違いであったと云う。
しかも仮面ライダーオーマジオウと同様の能力を有しており、軽くチートだからちょっとばかり引いてしまったユート。
「ま、そんな訳で錬成師とはいっても僕はパッと見ただけじゃ計れないんだよ」
「「「……」」」
「取り敢えず目に見える形で見せようか」
ユートの腰にはマゼンタカラーのバックルを持ったベルトが顕れた。
「な、何?」
「行き成り出てきた?」
「ベルトさん?」
香織が言うそれはドライブである。
「ネオディケイドライバーという」
「ネオって?」
「本来のディケイドライバーはバックルの色が白で此処に描かれる紋章だって九つの筈だ。だけどこれはバックルはマゼンタだし、紋章もディケイドとジオウを除く一八個もあるだろう?」
「う~ん確かにそうね。つまりその分はパワーアップをしてるからネオ?」
「それで正解だ、八重樫」
通常のディケイドライバーだと他の仮面ライダーのカードを直に扱ったりは出来ない筈なのに、このネオディケイドライバーは何故なのかそれを可能としていた。
事実として実際、ユートは仮面ライダーカブトへと変身せず、アタックライドのクロックアップを使用しているのだ。
「それでどうすると?」
「勿論、こうする」
行き成りBGMが大音量で響く。
それは門矢 士が、仮面ライダーディケイドへと変身する際の音楽である。
ライドブッカーから引き出すディケイドが描かれたカード、マゼンタカラーのバックルが九〇度回転してバックルが開かれた。
ディケイドのカメンライドカードを裏返して、ライダークレストが描かれた方を前面に。
「変身!」
《KAMEN RIDE……》
スリットからカードを装填し両手でバックルを勢い良く閉めた。
《DECADE!》
黒のアンダースーツにマゼンタ主体のアーマーに緑の複眼、バーコード顔な仮面ライダーディケイドの姿へと変わる。
「なっ! 本当に変身したっていうの?」
「う、嘘……」
「はわわ!?」
八重樫 雫は驚愕して、白崎香織はハジメが特撮に興味を持つが故に知識としてはあるが、やはり驚きに両手を口元に添えながらも目を見開く。
愛子先生ははわわ軍師みたいだ。
「CSMやDXな玩具じゃないんだ。変身が出来るのは当たり前だね」
「CSM? DX?」
「バ○ダイから発売されている玩具だよ。ハジメなんて毎年、仮面ライダー全部のアイテムを買っているからな」
「南雲君が!?」
反応したのは白崎香織で、やはりというべきか目をキラキラとさせている様である。
「ああ。現在、放映中……帰ったら新しい仮面ライダーをやってるんだろうが、仮面ライダー鎧武にしてもDX戦極ドライバーとか、DXゲネシスドライバーは言うに及ばず、武器類とかロックシードも無駄に全部を集めているな」
とはいえ、子供用の玩具だからサイズは小さいし安全に考慮された丸みを帯びた造りだが……
「勿論、仮面ライダーディケイドのDXディケイドライバーも持っていた」
あの黒歴史でしかないDXディエンドライバーも当然の如く。
「判らないのは玩具が発売されてるって事はよ、つまりそれは特撮のキャラクターって事よね? 何でそれで本当に変身しちゃってるのよ!?」
「僕の中には、クトゥルフ神話にも出てくる神の一柱たる這い寄る混沌ナイアルラトホテップの力が在った」
「クトゥルフ神話って……そんな小説の創作神話じゃないの!」
「それを言ったら宗教に於ける神話はその全て、人間が考えた創作でしかないだろうが」
「そりゃ、まぁね……」
中々に宗教家を敵に回す科白であった。
「だいたい、それじゃ何で緒方の中にそんな力がって話にもならない?」
後ろの二人がうんうんと首肯している。
「先ず、僕は転生者というカテゴリーに入る」
「転生者って、神様から力を貰って好き放題に暴れる人の事だよね? 確か女の子を洗脳したり、戦争を起こして大量虐殺をしたりする」
「か、香織……」
余りにも的確? な説明対して八重樫 雫が冷や汗を流す。
「まぁ、間違っているとは言わないが……な。実際にそんな奴らにも会うからさ。それにそういった能力なら持っているし」
「マジ?」
「神様から貰った訳じゃなくて、自分で動いていたら手に入れていただけだよ。僕は天然で這い寄る混沌だったらしくてね、下手に力を覚醒させたら人格までも呑まれる。だから別の神、イチ様とナツ様の二柱から力を喚起して貰ったんだ。人格を呑まれない様にさ。その結果がこのネオディケイドライバーという訳だよ」
「……え、緒方君ってそれじゃあ神様?」
「その欠片の一つ……だ。這い寄る混沌は【無貌の神】とか【千の貌を持つ者】とか云われていて、貌を持たないが故に逆説的に千の貌を持ってる神だからな。老若男女の様々な姿を持っているし、一つ所に二柱の這い寄る混沌が居たとしてもおかしくない」
「性別も無い?」
「ああ、僕自身が這い寄る混沌と闘う身でもある訳だし僕の敵は女性体だからな」
そう言って写真を八重樫 雫に投げ渡す。
「長い銀髪に碧眼、アホ毛が伸びた美少女ね」
その名をニャル子。
最初に転生をして以来もう随分と殺り合っている不倶戴天の敵である。
「何で僕の力がディケイドだったのか判らんが、だけど他の仮面ライダーへと変身をするとかなら這い寄る混沌みたいに貌を変える性質だったよ。それに仮面ライダーならよく識っているから僕的には使い易かったしね」
しかも当時は得ていた能力を喪っていた為に、何らかの力がないと闘えない事情があった。
それは無理矢理に【黒の王】と【白の王】が使った【真シャイニング・トラペゾヘドロン】を使った影響だった訳で、鬼神楽事件を終えた際にはイチ様の神氣を丸ごと――性交にて暫く存在するだけの神氣以外は全部を流し込んだ――与えて貰って復活をしたが……
因みに、ネオディケイドライバーだけではなくマシンディケイダーも在る。
「そういう訳で僕は普通に変身が出来るんだよ」
ディケイドの変身を解除しながら言う。
「仮面ライダーは低スペックでもパンチ力が1tくらいはあるし、僕自身の力も加えれば11tだからな」
「仮面ライダーが1tで、何で緒方君が10tなのよ?」
「鍛えてますから」
シュッと響く鬼流な敬礼に近いポーズを取りながらユートは答えた。
尚、仮面ライダーで最低スペックの1tというのは仮面ライダーG3である。
「鍛えて10t? 確か、重量級プロボクサーだって1tを出すのも苦労するって聞くけど……」
「ふむ」
ガンッ! と迷宮の壁を殴り付けると、壁が普通に砕け散ってしまう。
「「「……え?」」」
そういえば二日くらい前にも模擬戦後に地面を殴ってクレーターを作ったし、空手か何かで氷を蹴って割るみたいなのも確かにあるだろう。
然しながら割と頑丈だろう迷宮の壁を砕くというのは、それもまた違う話だと思う三人は目を見開いて驚くしかない。
「理解はしたかな?」
「え、ええ」
脳筋な坂上龍太郎とてこんな馬鹿げた力は持っていないのに、明らかに筋肉も背丈も下回りそうな筈のユートは容易くやってのけた。
「こんな事って……」
文字通り桁違いな能力は普通に強い。
「仮面ライダーも多分だけどこのくらいは普通に出来そうだよな」
流石にG3はそんなにも強くないし、通常フォームもそこまで大袈裟な能力は無いだろうけど、少なくとも仮面ライダーエボルブラックホールフォームが完全なる本気を出せば、そこら辺の大陸くらいならドパン出来る筈。
というかブラックホールを創れば惑星ごととか……そもそも星狩り族だし。
元スペックが低いクウガとてアルティメット化すれば充分に強い。
そしてユートの場合は素のスペックに+αして仮面ライダーだから普通に強かった。
「解ったろ? 君らは足手纏いにしかならないんだ。君らと足並み揃えていたら一〇日がそれこそ一ヶ月になりかねないぞ」
「うぐっ!」
「まぁ、せめてどれか一つでも1000に届いているなら連れて行っても構わないけどな」
「む、無茶よ。光輝だって全能力が650になったばかりなのに……」
全体的にはハイスペックな勇者(笑)君達とて、どうやら普通に廃スペックなユートには遠く及ばないらしい。
「……一人じゃ蹴り兎にも瞬殺されそうだな」
勿論、複数パーティのレイドで闘ったのならば勝てる可能性もある。
だけど蹴り兎を一匹相手にそんな体たらくであれば、もっと下の層にまで降りたら間違いなく死ぬだろう。
そんな話の最中にク〜ッと何だか可愛らしい音が愛子先生のお腹から響く。
「は、はう……」
「確かに腹が減ったな」
取り出すのは蹴り兎。
「それ、どうすんのよ」
「食うに決まってる」
ジリジリと肉が焼かれる蹴り兎、毛皮を剥いで内臓を抜いて殆んど素焼き。
「そういえば私達のご飯はどうしたら……」
というより八重樫 雫の目はユートの焼いている蹴り兎に注がれており、それに伴って白崎香織と愛子先生も視線をそちらへと移す。
「食いたいなら別に構わないが、この世界の魔物って普通の人間が食ったら身体が砕けて死ぬぞ」
「って、それじゃあ緒方君は何で食べようとしているのよ!」
「そもそも僕は普通じゃないから、何かイケる気がする!」
「はぁ?」
「僕が転生者だと言っただろう? 世界を渡り歩ける僕は嘗て別の世界の地球で神殺しの魔王カンピオーネになった。根本的には人間だとしても、肉体は随分と変質を遂げているんだよ」
「そ、そう」
「だから僕は食べても死なない。だけど君らが食べたらまず死ぬけどな」
しかもただ死ぬよりも生き地獄を一瞬だけとはいえ受けるのが目に見えている。
「だとしたら、私達は餓えとも戦わないといけないっての? 約一ヶ月間も?」
渇きは近場に川が有るから問題も無いだろう、だけど一ヶ月も餓えとの戦いは厳しい。
「ふむ、優花くらいに親しければ最低限の食くらいは保証もするんけどな」
「優花って……そういえば緒方君は可成り親しくしていたんだっけ」
「【ウィステリア】の常連だし、中間や期末考査の時には勉強も教えてるから。僕は作れるけど作らない、だから朝昼は適当なもので我慢して、夜に【ウィステリア】という訳だ」
「確かに、緒方君の昼間は南雲君張りな栄養ゼリーばかりだったわよね」
八重樫 雫はユートの昼に於ける食生活を思い出したらしく苦々しい表情となってしまった。
「ま、良いか。僕のいつもの昼食用栄養ゼリーだけで良ければ渡しとく」
ドサドサと栄養ゼリーが何処からともなく落ちてくる、その数は三百個で一人頭が百個ずつという事らしい。
「さ、三食が栄養ゼリーを一個だけ……」
「嫌なら食べなくても構わないさ」
「うう、贅沢は言えないわね」
栄養ゼリーが一食一個とはいえ餓えは解消されるか? 一〇日で三〇個が消費されれば三〇日で九〇個だ。
残り一〇個は日程がズレた場合の保険、三日間くらいしか保たないけど。
「あの~緒方君、やっぱり私達も連れて行って貰えませんか?」
「だから愛子先生、邪魔にしかならないんだよ。はっきりと足手纏いだから!」
愛子先生の嘆願をバッサリ切って捨てる。
「それとも、ダンジョンで魔物に喰われて死にたいという遠回しな自殺志願?」
「ち、違いますよ! だけど女の子が三人だけでこんな場所に残されるのは……」
「随分とまた、先生はアレだよね」
「? 何ですか?」
「図々しい」
「はうっ!?」
何だか罵倒されて哀し気な表情となる。
「女の子って、二五歳である先生が? 図々しいにも程があると思うんだが? アレかな? 見た目がちみっこい中学生だから女の子にカテゴリーしちゃったとか?」
「グフゥッ!」
今度は別の意味で胸が痛くなったらしい。
年増でちみっこの正しくWパンチ、畑山愛子のHPは最早0寸前である。
「お、緒方君が護るくらいは出来ないかしら? ほら、男の甲斐性って云うじゃない!」
「自分の女ならそうする。然るに君らはそうじゃないから護る気は無いな」
「む! それは……」
「誰かを護りながら戦う、それがどれだけ大変か知らないのか? どうして僕がそんな面倒を負わなければならない。それでもと言うならせめて僕のモノになってから言うんだね」
「そ、それは……」
「況してや、『始まりの四人』が護れとかどの口が言う」
「ぐっ!」
戦争に賛成した四人。
勿論、積極的に賛成をした訳では決してなくて幼馴染みの決断に追従した形だ。
それでも戦争の流れにしたのは間違いない。
「あの時、せめてすぐ賛成しないで交渉を持ち掛けるなりが出来た。にも拘らず真っ先に勇者(笑)が賛成、男共に人気な君らも消極的賛成ときては、反対も出来ないんだからな」
「それはさっきも聞いた」
苦い表情となる。
「でも、香織には好きな人が居るのよ……」
「ちょ、雫ちゃん!?」
行き成りの暴露に真っ赤となり慌てる。
「知った事じゃないだろ。男と命を天秤に掛けてどちらが大切かってな?」
貞操を守って死ぬのか、或いは生きる為に身を捧げるのか? それは好きにすれば良いというのがユートの談だった。
「此所で過ごすという選択だってある。少なくとも僕が護るのは身内だけだ」
暗い顔になる白崎香織、八重樫 雫は睨みたくなるのを抑えていた。
「僕はこれから試しに造るものがある。だから、完成するまでに決めろ。残るか、身内になって来るか寄生して運を天に任せるかを……だ」
大きな釜を準備しながら説明を行う。
中にはキラキラした水状の何かで火を点けて、中身をグツグツと炊き始めた。
「な、何をしてるのよ?」
「錬金術」
「はぁ?」
ユートは八重樫 雫からの質問に答え、必要な素材を釜へと放り込んでいく。
魔物の肉。
万能中和剤。
神水。
魔物の血液。
魔石。
素材を理解し分解して、成分の抽出、新たなる物へと再構築をする。
アトリエ系錬金術士による錬金術の基礎にして奥義であり、ユートがソフィーと共にプラフタから学んで修得した技術だった。
ぐーるぐーると釜の中を掻き混ぜる、ぐーるぐーるぐーるぐーる……と。
程無く完成したのは白い丸薬、ユートは成し遂げたと満足そうに頷いている。
「さて、決めたのか?」
チラッと見遣ると肩を震わせる白崎香織、困った顔になる八重樫 雫、頭が湯立っている畑山愛子先生。
愛子先生の場合は教師と私人の狭間でグラグラしており、白崎香織はやはりハジメの事が気に掛かるのだろう。
八重樫 雫はどうしたらと考えたみたいだったのだが、下手な考えは休むにも似てやはり何も思い付かない侭で時間切れとなる。
ユートとしてはどれを選ぼうと全て自己責任の範疇であるし、どちらでも好きにすれば良いといったスタンスであった。
だから……
「……御願い……します」
八重樫 雫は三人を代表してそして唇を押さえながら、ユートへとそれを苦々しそうに告げてくるのを溜息も無くジッと見つめているのだった。
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明日に新しいのを書けなければ、連続投稿は終了という事になります。
勇者(笑)な天之河の最後について
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原作通り全てが終わって覚醒
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ラストバトル前に覚醒
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いっそ死亡する
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取って付けた適当なヒロインと結ばれる
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性犯罪者となる