ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 明けましておめでとう御座います。

 間違って昨日に投稿してしまった……





第97話:ありふれた暗殺種族

 

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 ユートはその名前を呟く。

 

「ガハルド皇帝か」

 

 銀髪で正に野心家といったギラギラとした瞳を向けて来る初老の男、既に五〇歳を数えられる筈の彼はその実年齢に反して若々しく三〇代にも見える程であったという。

 

「若しやすると見覚えの無い女共はお前さんによる差し金かよ?」

 

「正解だ。一応は礼儀として紹介しておこうか。金髪の娘がリアナ、橙髪の娘がティアリス、亜麻色の娘がクリス、紫髪の娘がマリアンデールで、黒髪がフロレンティアだ。僕の隣に居るのがルクレチア、序でにリリィの隣に居るのがツバメだ。他は神の使徒として以前にも紹介はされているから構わないな」

 

「お、応……」

 

 一種の賑やかし的な意味で会場入りさせたのが【ラングリッサー】ヒロインズ、【ラングリッサー リーンカーネーションー転生ー】組から来たのがフロレンティアだったのはアレスのヒロインとなっていたのが幼馴染みの少女エルマ・ミンスターであり、流石に彼女を此方に引っ張っては来れなかったから。

 

 序でに云えば『フローレ様』が傍に居るともなればツバメのヤル気が上がる。

 

「羨ましいか?」

 

「ああ、羨ましいな。皇帝の俺でさえ中々お目に掛かれん程の美女美少女達だからな」

 

「やらんけどね」

 

「んだよ、そんなに居るんだったら俺にも一人くらい寄越せよな」

 

「はっ、冗談は顔だけにしとけ」

 

「お、俺の顔が冗談……だ……と?」

 

 地味にショックを受けるガハルド皇帝だけど、ユートがそれに関わる気など無かった。

 

 イチャイチャとしている様にしか見えない為、周りからの……特に男共からの視線が痛いけれど知った事では無い。

 

「そういや、皇帝が連れているのは?」

 

「今更かよ? おい、自己紹介をしろ」

 

「はい、判りましたわ御父様。初めてお目に掛かります神の使徒様。私はヘルシャー帝国第一皇女トレイシー・D・ヘルシャーと申しますわ」

 

 ニコリと微笑みながら自己紹介をしてきたのはこの国のお姫様らしい、確かに上流階級の御嬢様然とした美しい顔立ちに跪かれるのが当たり前の様な佇まいはそれっぽく、然しながらそのクルタ族の【緋の眼】も斯くやな宝石の如く綺麗な瞳からはギラギラとした獲物を狙う狩人の様なモノを感じてしまう。

 

 これが自分の御相手として王子なんかを狙った貴族令嬢の瞳なら判らなくもないけど、彼女の――トレイシー・D・ヘルシャーのそれは獲物は獲物でも男漁りなモノでは無く明らかに戦闘狂(バトルマニア)とか戦闘中毒者(バトルジャンキー)と呼ばれる存在の瞳。

 

 ぶっちゃけ、ヒソカ・モロウがゴン・フリークスやクロロ・ルシルフル……憚りながら自分自身たるユートを視てズキューンッ! と股間をおっ勃たせている時の瞳なのである。

 

 まぁ、ヒソカが相手なら正直キモイとしか云えないのだけど今回の相手は可成り美女なお姫様、だからこそユートもあんな目で視られていて我慢をする事が出来ていた。

 

 隣に侍るルクレチアはそんなトレイシー・D・ヘルシャーを面白そうに視ている。

 

「緒方優斗。一応だけど勇者(笑)と共に召喚された一人で天職は錬成師。それからアシュリアーナ真皇国の真皇だ」

 

「は? しんおう……ですか?」

 

「気にしなくて良いさ」

 

「は、はぁ……」

 

「どうせもう手遅れだからな」

 

 ニヤリと口角を吊り上げてボソリと呟いたのは余りにも不穏な科白。

 

 そう、手遅れである。

 

 何故なら既にアシュリアーナ真皇国は動き出してしまい、このトータスという世界に辿り着いているのだから。

 

 本当ならギリギリでラストダンジョンとなるであろう氷結洞窟を制覇して、彼方側へと還る為の概念魔法を得て大手を振って戻る予定だったが、天之河光輝が事ある毎に邪魔をしてくれていたから遅れに遅れてしまったのが実状。

 

 御陰様――皮肉――でユートの愛する【閃姫】達が痺れを切らしてしまい、あの衛星規模艦たる【衛星型超弩級万能戦闘母艦ダイコンボイ】にてやって来てしまったのである。

 

 トランスフォームすると名前の通りにでっかいコンボイに成り、内部空間は空間拡張を行っていて普通に居住可能惑星が数個も浮かんでいるくいにバカ広いから、それこそダイコンボイだけでも生活が成り立ってしまうくらいであり、云ってみれば無補給で数百億人の胃袋を満たしてやれるだけの食糧や水が有った。

 

 それだけに干上がらせるなんて戦法は無意味、寧ろ干上がるのはトータスの側となるだろうからユートを相手に焦土作戦とは、単に自分の素っ首を絞め付けるだけの自傷行為に他なら無い。

 

 尚、焦土作戦とは敵国に奪われるであろう自国の領土に利便性を残さない為に焼き尽くしてしまう作戦であり、仮に取り戻しても自分達まで使えなくなるデメリットが大きいものだ。

 

 しかもダイコンボイは自らが闘える上に内部にも戦力を持ち合わせる、少なくとも文明レベルが低いトータスでは全戦力を以て挑んでも勝ち筋が全く見えてこないくらいの歴然な差があった。

 

 というか、衛星軌道上に存在するダイコンボイに攻撃など出来る筈も無い。

 

 勝ちたいなら魎呼と魎皇鬼でも連れて来いとしか云えないだろう。

 

 流石にチョビ丸程に容易くは無いが……

 

「貴方は中々にお強いのだと御父様から聞いておりますわ。宜しければ一手の指南を御願いしたいと思っておりますの」

 

 取り敢えず気にしない事にしたらしい。

 

「指南? ガハルド皇帝?」

 

「ああ、アレだ。トレイシーは所謂、戦闘狂ってやつでな……」

 

「また厄介な人間を連れてきたな」

 

 大概の戦闘狂は他人の迷惑を省みず強い人間と闘いたがる為、余りにも面倒臭い相手だと認識をしているから肩を竦めてしまう。

 

(まぁ、どうせトレイシー皇女とは闘う事になるんだろうけどな)

 

 もうすぐカム――シアの父親と連絡が取れている頃だから、確かにもう少し経てば闘いが始まる事になるのでトレイシー皇女の願いは叶う筈だ。

 

 原典とは異なりハウリア一族が族長たるカム・ハウリアはヘルシャー帝国に捕らえられて無く、帝国の状況などを知る為に仲間達と共に帝都へと潜り込みスパイ活動をしている。

 

 その事はラナ達から聞いていたのでスマホを使って連絡を取っていた。

 

 ユートのスマホは違う世界の最高神の世界神から改造を受けた神器と化しており、その世界では最高峰な技術者が量産化して連絡を取れる便利なアイテムとして配ってある。

 

 その流れは原典と同じだけど、異なる点が有るとしたら原典の主人公は嫁さん九人を娶りこそしたもののそれ以外に所謂、愛人枠となる者を作る事は決してしなかったのに対してユートは好きに愛人枠を広げていた。

 

 勿論、世界最高峰の技術者が五千年の眠りから覚めた後は本人の奨めもあって愛人にしてるし、彼女が造った人造人間達も纏めて愛人にした。

 

 他にも狐っ娘や元掏摸の少女など愛人に出来るなら全員を娶ったし、何なら本来の主人公が普通に主人公をしている世界線から軸移動をしてきた本来の主人公の娘達まで年頃になれば『戴きます』をしている。

 

 彼女らを産んだ訳では無い母親と一緒に擬似的な母娘丼を戴いたものだった。

 

 それは兎も角、彼女が造ったスマホは今でも造られていてユートのストレージ内に幾らでも入っている為、その一つをカム・ハウリアにも渡しているからいずれは連絡が来る筈だ。

 

 それまではこのパーティーでも愉しめば良い、帝国の権威を示す為のパーティーなだけに美味い飯が出されているし、トレイシー・D・ヘルシャーを始めとしてそれなりに綺麗処が揃っている。

 

 まぁ、ユートが揃えた娘らには及ばんが……

 

 ツバメやルクレチアだけ視てもそうであるし、雫や香織やユエやシアやティオ達もそうだ。

 

 事実として多少のメイクアップくらいはしているにせよ、背丈や御胸がミニマムなルクレチアやユエやミレディや更には鈴でさえ帝国貴族の男共は見惚れてしまっていたし、女性陣もその美麗な顔立ちや肌の綺麗さに羨望を覚えていた程。

 

 御胸の残念さは扠置いて。

 

 ユートが賑やかしにパーティーへと連れてきたラングリッサー勢は言わずもがなであり、リアナはラングリッサーの巫女として村娘でしかなかった頃から美しさと気品が備わっていたし、侯爵家に生まれたティアリスは当時が一二歳で落ち着きが無かったから解り難いが、教養も確りしていて本来の世界線ではエルスリード王国の王妃だったのも納得が出来る。

 

 クリスは光の神に仕えてる巫女としての充分な教養はあったし、本来の世界線では闘いへと赴くレディンに付いていくだけの芯の強さも有った。

 

 レイチェルは我侭というか甘えん坊な部分も有ったが、時を経て落ち着きを持てる様になってからは理知的で美少女な雰囲気が出ている。

 

 そしてこのラムダに至ってはラムダモードでのクールビューティーさ、マリアンデールモードでの快活さ女性らしいたおやかさに加えて穏やかな笑みを浮かべる処にギャップがあって良かった。

 

 現在はマリアンデールとして微笑んでいるが、生理年齢的に近い――彼女の実年齢は数百歳を越えているがユートの【閃姫】である為に見た目が出逢った頃と変わらない――貴族の男共が紅くなっている。

 

 今現在の【ラングリッサー】系列の【閃姫】は惑星エルサリア――イェレス大陸出身も同じく――に住んで、アシュリアーナ真皇国エルサリア領国のお姫様的な立場だ。

 

 故に貴族らしい、お姫様らしい所作も教え込まれている。

 

 ユート個人は気にしないけど、こういう場所でパーティーをする事を考えると矢張り必須だし、王族出身のお姫様が居るんだから教えて貰えば良いだろうとも考えて、何人かがそれに立候補をしてくれたので頼む事にした。

 

 特にユーキが曰わく【イセスマ】の世界で得た【閃姫】達の中には生粋のお姫様も居たからか、優雅な王族パーティーにもそれなりに慣れていた事もあってよく教えてくれていたものである。

 

 ユートは割とよくある事態だったがこの世界の原典を識らなかった。

 

 結果、一番始めにやらかしたのが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事。

 

 その後に神界に連れて来られて世界神に礼を言われたのだが、ユーキからの連絡にてユートが助けた少年こそがその世界に於ける主人公であり、彼が主人公として舞台に上がるには先の神雷で死ななければならなかったとか。

 

 その結果として大半のヒロインとなる筈だった美少女達が不幸に見舞われるのだと云う。

 

 まさか助けた少年に『矢っ張り死んでくれ』とは言えないし、それで原典の通りに世界神が彼に特典をくれるのを期待も出来ないであろう。

 

 然しながら世界神はユートに御礼をしてくれるとの事、神殺しではあるが邪悪では無い性質故に誠には誠で返したいと言ってきた。

 

 ユーキと相談した上で主人公が行く予定だった世界に移動させて貰い、ユートが地球で買っていたスマホを主人公の物と同じ神器化して貰う。

 

 その後は本来の主人公が辿る筈だった道筋を進む事を余儀無くされたが、確かに美少女と呼ぶだけの娘らとの出逢いに恵まれていた。

 

 とはいえ、昔に自分の意志でやった事をまさか又候やらかす羽目になるとは実に業が深い。

 

 というのも、嘗てハルケギニア時代の放浪期に【BASTARD!! -暗黒の破壊神-】の世界に行った際に非常に非情で非常識な実験を行ったのだ。

 

 第一巻の最初の噺でルーシェ・レンレンに掛けられた封印が、処女のキスにより開封されなかったらどうなっていたのか?

 

 その結果を視た後で時間を巻き戻してしまって本来の干渉に切り換えた。

 

 だけどその過程でティア・ノート・ヨーコを攫ったのだが、返してはいなかったからユートにより攫われたヨーコと過去に巻き戻って攫われる前の平行存在なヨーコが同時に居る形になる。

 

 だから攫った方のヨーコは返せず仕舞い。

 

 このヨーコはルーシェにはお姉さん気取りで、ダークシュナイダーは出逢ってすらいなかったのもあるが、今はユートに情も湧いたのか【閃姫】の一人に名を連ねていた。

 

 そしてこの世界――主人公を神雷から救ったらどうなっていたのか? を知らない内にやらかしてしまい、ユートとしてはどんな宿業かと頭を抱えてしまったのは間違い無い。

 

 あの時はしれっとダークシュナイダー側に居たのだけど、ユート的にはどんな面下げて味方ですって傍に居るのかと苦笑いをしたものだが……

 

 【イセスマ】の世界は一名を除いて軽度重度の違いは在れど、全員が基本的にピンチの連続だった為に超人が欲しいと嘆きたくなる事態。

 

 だからユートが助けるしかなかった。

 

 そんな訳で彼女らはブリュンヒルド領国に住んでいる矢張りお姫様待遇、因みに領国名の由来は本来の世界線やユートがそちらから名前を引っ張ってきた『ブリュンヒルド公国』から。

 

 とはいえど、【ありふれた職業で世界最強】の世界と直に関るのが【魔法少女リリカルなのは】の世界から判るが、【イセスマ】の世界はそれより前に関わった世界なだけに彼女らはユートの創った冥界のエリシオンに住んでいたのを、ユートがアシュリアーナ真皇国の建国をした後に彼女ら【閃姫】を喚んで開拓して領国扱いの元無人世界へ移住をさせたのだ。

 

 エリシオンは元々の冥王ハーデスのエリシオンをモデルに創造したから所謂、極楽浄土で常春な大地として存在しているからか住み易いものの、刺激の少ない世界だから退屈と感じてしまう部分も確かにあった。

 

 要は新たな刺激を求めて生きた世界へ……と、ちょっとしたバカンスみたいなもの。

 

 【閃姫】の義務はユートからの招喚には必ず応える事とセ○クスに必ず応える事の二点のみで、後は当たり前だけどユートが幾らでも【閃姫】を増やすのに対して、彼女らに浮気は許されないとか理不尽極まりない制約が有るくらい。

 

 とはいっても浮気した処でえちぃ行為に及べば相手の棒と玉々が砕け散るだけだが……

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「チッ、そっちのそれなりに背が高い女も駄目なのかよ?」

 

「雫? 駄目に決まっている。誰のモノだと思っているんだよ!」

 

「テメェの女ばかりか!? いったいどんだけ囲ってやがるんだ!」

 

「そっちの二人以外は全員だ」

 

 指差した方には辻 綾子と吉野真央。

 

「「ちょっ!」」

 

 二人が叫ぶが吉野真央は兎も角として、辻 綾子には気になる相手が居たから余計に慌てていた。

 

「うん? ()()……だと?」

 

 その科白に違和感を覚えたガハルド皇帝がふとリリィを見遣る。

 

「リリアーナ姫やその侍女を含めてか?」

 

 ツバメでは無くヘリーナとニアの事だ。

 

「そう、全員だよ」

 

「マジかよ? リリアーナ姫はウチのバイアスの婚約者だぞ?」

 

「飽く迄もそういう話が有るって程度だろ」

 

「それでも王族同士の話、実現の可能性の方が高い事だぜ」

 

 それは不測の事態で破棄される〇では無い可能性というやつでしかなく、寧ろ殆んど決まっていたも同然というのが常識の範疇となる。

 

「どうせバイアス君がリリィを抱くのは不可能になったんだ。婚約なんぞ解消で構わんだろ」

 

「抱くのは不可能? そりゃ、いったいどういうこったよ?」

 

 ガハルド皇帝が当然の疑問を持ったらしくて、可愛らしさの欠片も無い首を傾げてきた。

 

「僕の女は僕を受け容れた時点で、他の男からの一切の干渉を受けなくなる。それの意味は無理にでもヤろうとした場合は、そいつの男の象徴が『弾けろブリタニア!』な感じになる」

 

「……マジにかよ?」

 

「勿論」

 

 物騒な話であるが、背後では天之河光輝が顔を青褪めさせながら思わず既に弾けた股間をギュッと守る様に隠していた。

 

 傷自体はもう塞がって座り小便は可能になってはいるけど、性的な行為は生涯望めなくなってしまったのは矢張り堪えたらしい。

 

「因みに、リリィも僕以外とヤろうとしたら股間のイチモツが弾ける」

 

「既にヤってやがんのか」

 

「それと着替えの部屋でリリィをバイアス君が襲ったから、護衛に付けていたツバメが男の象徴を切り落としたのは言っておく」

 

「ウチの皇太子に何をしてくれてんだ!」

 

 バイアス皇太子に世継ぎは未だ無く、股間に付いているJr.を喪ったら最早世継ぎは望めない。

 

「結婚処か婚約話もあやふやなのに自分のモノだと断じての強姦未遂、護衛たるツバメが護る為に動いてもおかしくはないだろうに」

 

「そうかも知れんが……」

 

 ツバメは任務に忠実だっただけで、寧ろ相手が皇太子だからと躊躇う方が任務放棄に当たる為、ユートはツバメを褒めたい気分だった。

 

 勿論だけど普通なら国際問題待った無し案件でしかない、ユートのアシュリアーナ真皇国ならば踏み潰せるからこその暴挙であろう。

 

 ヘルシャー帝国はユートに舐めた態度を取った事に未だ気付いていないが、既に滅亡とまではいかないにせよ大打撃を受けるのは確定事項だ。

 

 戦闘狂とはいっても美しいと形容が出来るだけのトレイシーをねじ伏せ、どちらが格上なのかを格付けして蹂躙するのも悪くない。

 

 敵対者には容赦が無いから。

 

 勿論ながら無意味な敵対関係はNGだろうが、今回のヘルシャー帝国に対しては()()()だ。

 

 ユートはこれでも一国の皇、そんな存在を謂わば拉致した挙げ句の果てに前線送りになどしている訳で、確実に戦争案件としか云えないくらいに愚かな真似をしたのがトータスの人間族。

 

 知らなかったではとても済まされないこの失態は挽回などは不可能な事で許されたりもしない、少なくともユートの事を待つ【閃姫】達が許さないのは確定した現実であったと云う。

 

 【閃姫】達はユートと生命を共有している。

 

 主であるユートが存在する限りは【閃姫】達も消滅する事は無い、但し従である【閃姫】が死んでもユートがどうこうなったりはしない。

 

 それはハルケギニア時代に覇王将軍シェーラと使い魔契約をした時に『共生のルーン』が刻まれたのと酷似しており、アレも主となるユートが従であるシェーラの生命が『共生』されたがユートの滅びがシェーラの滅び、然しながらシェーラの滅びがユートの滅びに繋がらなかった。

 

 尚、この『共生のルーン』は従来のルーンとは異なりユートの魂に刻まれており、故に転生をした今でも変わらず二人を結び付け縛っている。

 

 これは従側の使い魔たるシェーラが精神生命体の魔族だったのが原因で、シェーラと同じ部位たる精神の奥深くなユートの魂へ作用したらしい。

 

 【スレイヤーズ】の世界の魔族とは精神生命体の類いで、通常の武器では傷一つ付けられないとされているのだから。

 

「それにバイアス皇太子が子を成せなくなったんなら、廃太子にして他の奴を新たに立太子させれば良いだけだろう?」

 

「そうだけどよ……」

 

 まるで悪びれてないユートに苦虫でも噛み潰した表情となるものの、正式な婚約すら成されていないリリィに襲い掛かったバイアス皇太子が悪いと言われれば間違い無く、文句を付ける筋合いが無いのも理解するが故に押し黙る。

 

 それは兎も角として【閃姫】には充分な時間がある事になるけど、その反面で新たなる女を作るから相対的には構って貰う時間は減る。

 

 仲間が増えるのを今更ながら嫌だとは言わないにしても、それはそれとしてその原因に対しては厳しい目で視ざるを得まい。

 

 実際ユートは【ありふれた職業で世界最強】の世界にて、何人もの女性と【閃姫】契約を交わしているので『そんな事は無い』と言えなかった。

 

 それにもう少し増えそうだ。

 

 何しろ【解放者】にはミレディ・ライセン以外にも、メイル・メルジーネとリューティリス・ハルツィナの二人が居る。

 

 ミレディから話を聞いて興味津々だった様で、生き返ったら好意を持たれてもおかしくない。

 

 事実、ハルツィナ樹海の大迷宮の奥深くで会ったリューティリス・ハルツィナの人格コピーは、間違い無くユートに対しての強い興味と好意を示していたのだ。

 

 人格コピーであるからには生きてリューティリス・ハルツィナが会話をした場合は『こうだったろう』と、謂わばシミュレートをしたにも等しい事だから本物も同じ反応をするはずだから。

 

(折角だからユミナやルー達も連れて来てやれば良かったか? まぁ、すぐに阿鼻叫喚な地獄絵図になるんだから寧ろ可哀相かも知れんな)

 

 実に王族率が高いあの世界の【閃姫】達なだけにパーティー慣れをしているし、庶民の出である【閃姫】達も結局はユートが一国の主に成ったから習う羽目になり、全員が普通にパーティードレスを着てダンスに興じる事も可能だった。

 

 そういった例は幾らでもある。

 

 普通なら無いだろうけどユートは幸い? にも永い寿命と若さが有る為、そして時空の壁を突破して次元の海を渡れるから出逢いがごまんと在るのが強味と云えた。

 

 例えばユートが割と珍しく? 男と愉しい時間――当たり前だが性的な意味では決して無い――を過ごした世界、ゲーム製作の下請け会社へ勤める彼に合わせて同じく仕事をアルバイトという形でやっていたが、そんな彼が異世界へと召喚されてしまったと認識をした途端にユートも召喚されてしまい、然しながら召喚された時間軸がはなれていたらしくて後から召喚された筈のユートの方が先に召喚先に来ていたとかハプニング付き。

 

 あの世界で【閃姫】契約を交わしている中にも庶民は居たが、お姫様や元貴族ながら神託の巫女と呼ばれている神職者なんかも居た。

 

 伯爵家だったり侯爵家の出だったからパーティーダンスも充分に熟せたものである。

 

(さて、それは兎も角……そろそろ連絡が着ても良い頃なんだが? カムはどうしてるのかね)

 

 ユートは【閃姫】達の事ばかりを考えている訳では勿論無くて、今回起きる……というか起こす『ハウリアの変』の代わりとなる事件も充分に考えていた。

 

 本来の世界線ではカム・ハウリアを中心とし、ハウリアのハウリアによるハウリアの為の闘いが引き起こされ、『ハウリアの変』と呼ぶのに相応しい帝国にとっての大厄災となる。

 

 この世界線ではユートが獣人や妖精種族による亜人族を率いて、更には連れて来た【閃姫】達も含めて帝国との戦争を行う手筈だ。

 

 これはフェアベルゲンが正式にアシュリアーナ真皇国のフェアベルゲン領国となる為の儀式で、血を流すのは長年に亘って亜人族を苦しめてきたヘルシャー帝国という訳だった。

 

 (そも)、ヘルシャー帝国は貴族平民に拘わらず彼ら亜人族を奴隷化してきた歴史がある。

 

 一応はハイリヒ王国ではそんなのを禁止していたものの、別に亜人族を差別していないという訳では決してなかった。

 

 第一にミュウの例を視れば判るが、その裏では普通に奴隷を扱っているのだから闇は深い。

 

(総領!)

 

(カムか、待ち詫びたぞ)

 

(申し訳ありません、城内の亜人奴隷はそれなりに居ましてな)

 

(チッ、矢っ張りかよ)

 

(総領から預かった魔導具のお陰で全員を帝都から離せました)

 

(なら、予定通りに)

 

(ハッ!)

 

 ユートが渡した特殊な通信装置により念話を送ってきたカム、基本的に亜人族には魔力は無いけど氣は生命力が由来となるから生けとし生ける者の全てに存在するし、何なら自然界にも普通に在るから利用をするのは比較的に簡単、カムに渡した通信装置はつまり氣を扱う代物だった。

 

 そして亜人奴隷を助けるのに使った魔導具は、名前の通り魔力を必要としているが魔石を謂わばエネルギー源としており、魔力が無いとされてる亜人族でも扱う事が可能な汎用魔導具である。

 

 カムに渡した魔導具とは『何処でもミラー』という、ドラえもんで云う処の『どこでもドア』みたいなアイテムだ。

 

 別に形はドア型でも何でも構わなかったけど、ユーキが曰わく【イセスマ】世界由来のゲートの魔法を篭めるなら、矢っ張り鏡型の方が良いとか主張されたから言われた通りに造った。

 

 後から本人というか主人公が主人公をしている世界線から、誤って来てしまった娘達を迎えに来た際に彼から聞いたら確かにミスミド獣王国に行く際にそういう鏡をエンチャントしたらしい。

 

 ユーキからの情報であるが故に信用も信頼もしているし、それに対して疑問なんて差し挟む余地など全く無いとすら考えているからだ。

 

 カムはそんなミラーを使って閉じ込められていた奴隷を牢屋から出してやり、ミラーの接続先たるフェアベルゲン領国の存在するハルツィナ樹海へと送っていった。

 

 解放にはちょっと時間を掛けたらしいのだが、全員を無事にハルツィナ樹海に送ったみたいだ。

 

 カムとの通話中にどうやら話は可成り進んだ様でいつの間にか、ガハルド皇帝がトレイシー皇女と壇上へ上がって演説を始めている。

 

 話が途切れたから必要な仕事を始めたといった処だろうけど、ユートからしたらこれはチャンスと呼ぶ以外に無いと云えた。

 

(カム)

 

(はい、総領)

 

(ガハルド皇帝が演説を始めた。演説の終わりが一番に盛り上がる瞬間になるだろう)

 

(成程……では、その時に事を起こします)

 

(そうしてくれ)

 

 ユートは暗い笑みを浮かべ通話を切る。

 

 既にユートの中ではだいたいの構想は出来上がっている為、取り敢えずこの場で亜人族との差を確りと把握させてやる心算だ。

 

 それから数分後にはガハルド皇帝の演説も漸くといった感じに終わりを迎えていた。

 

「パーティーはまだまだ始まったばかり! 今宵は皆が皆、大いに食べて大いに飲み大いに踊って心ゆくまで楽しんでくれ! さぁ、手にした杯を皆で掲げろ!」

 

 全員が杯をその手にした掲げるのを確認をするガハルド皇帝は、自身もワインが限界まで注がれた杯を掲げて一度口を閉ざす

 

 更に息を吸うと威厳と覇気に満ち満ちた声にて乾杯の音頭を取った。

 

 だがこの会場でユートとその【閃姫】達以外は知らない、この今にも溢れ出しそうな高揚感が高まりに高まった瞬間を狙う暗殺者が居る事実を。

 

「この宴によって我ら人間族の結束はより強固となった! 最早恐れるものなど何も無いのだ! 我々人間族に永劫なる繁栄よ在れっ!」

 

『『『『『『繁栄よ在れっ!』』』』』』

 

 バイアス皇太子のJr.が切り落とされた事実を知るが故にか、実は原典と乾杯の音頭の内容が若干ながら異なるものの会場は最高潮に達していた。

 

 そしてその盛り上がりの瞬間に狙い澄ましたかの如く全ての光が消え失せ、帝城内のパーティー会場は瞬く間に闇へと呑み込まれてしまう。

 

「な、何だこりゃぁぁっ!?」

 

「イヤァァァァッ! な、何も見えない!」

 

「どうなってんだどうなってんだどうなってんだどうなってんだ!?」

 

「だ、だ、誰か灯りを!」

 

「暗い暗い暗いぃぃぃぃぃっ!」

 

 帝国貴族の面々が大慌てで無様に叫んでいて、それには老若男女の別などまるで無かった。

 

「嫌ぁ、何でこんな……」

 

 中には幼い少女の声も響く。

 

 そういえばランデル元王子――現兵士の肉人形(おひめさま)と同い年くらいの皇女も居た気がするが、此方はトレイシー皇女と違って特に紹介された訳でも無かったから意識の外だった。

 

(もう何も恐くない……はド頭を喪うフラグってやつだよガハルド皇帝さん)

 

 【魔法少女リリカルなのは】が主体世界にて、ユートの【閃姫】となった一人のイエローチックな少女――巴 マミ、彼女は本来の世界線の中でもある意味で最後の世界線で『お菓子の魔女』により頭を喰われて死亡した。

 

 ネット界隈では『マミる』なんて言葉が作られるくらい衝撃的な場面、その前に巴 マミは後輩の友人という存在に浮かれて『もう何も恐くない』と心の中で叫んでいたが、これがフラグとなったのかは兎も角としてそれから僅かな時間でマミられたのは間違い無い。

 

 ユートの関わったあの世界は過去にも関わりを持ち、【魔法少女リリカルなのは】をベースに他の世界も本当に色々と混ざった混淆世界であり、確認が取れただけで【神楽シリーズ】とされているエロゲな世界観、【AYAKASHI】、【メイプルカラーズ】シリーズ、【とらいあんぐるハート】シリーズ、【Septem Carm まじかるカナン】、【ロスト・ユニバース】などが挙がる。

 

 高校生だったけどアイドルとして瀬川おんぷの護衛をした事もあり、仲間に四人+αの存在を匂わせていたから【おジャ魔女どれみ】シリーズも混じっているらしい。

 

 何故か一部を除いてエロゲばかりだったけど、【魔法少女リリカルなのは】の世界自体が抑々にして、【とらいあんぐるハート】を下敷きにした世界観なのだからおかしくも無いのか? などと少し達観した感想を懐いたものだった。

 

 尚、殆んどがユートの【閃姫】化していたりするけど流石にさやかだけは彼氏持ちである上に、さやかへの援護射撃として恋敵になる筈の緑っ娘を本人合意の許で喰ってやったりも。

 

 暗いパーティー会場が阿鼻叫喚の場として混沌としていても、ユートの目には普通に視えているから慌てる皇族や貴族共を口角を吊り上げながら面白おかしく見据えていた。

 

 そして現れるはカム・ハウリア率いるハウリアの軍勢、ハウリア一族はオルクス大迷宮の最奥部に設置した魔法球を使っての苦しい修業をして、ユートもミナからそれなりに戦闘力を増しているとは聞いている。

 

「ブギャッ!?」

 

 貴族男の首が宙を舞った。

 

 とはいえ兎人族には変わりないから筋力アップも限界は有るし、カムも見た目は可成り筋肉質になっていても恐らく坂上龍太郎程ではない。

 

 正直、魔力を扱えるシアは元よりオーラを扱える様になったミナ、ラナ、ネアの三人の方が余程強いといえるだろう。

 

 カムは氣力も魔力も念力も霊力も使えていない身としては最大限まで鍛えており、普通の戦闘でならばこの帝国の兵士を相手に数人ならば苦戦はしても斃せると思われる。

 

 ()()()()()の暗闇での暗殺。

 

 仮面ライダー黒影トルーパーに変身をしないのならば、気配遮断が得意な兎人族には最適解となる職業は何処ぞの『深淵卿』も斯くやな暗殺者であったと云う。

 

.




 グダった噺に……

 今年も宜しく御願いします。

勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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