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ハウリア一族による襲撃にてパーティー会場の阿鼻叫喚は続いている。
「くっ、狼狽えるな! 今から魔法で光をつくって……ごばぁぁぁっ!?」
「何だ? どうしたっぐきゃっ!?」
「あぎっ!?」
誰もが焦燥感に駆られる中でも多少なり冷静だった誰かが、周りに対して指示を出しながら魔法で光球を生み出し灯りを確保しようとするけど、そのすぐ後には悲鳴と共に倒れ込む音が響いたのと同時に、混乱をする貴族連中が次々と悲鳴を上げては斃れ逝った。
そんな余りにも異常が過ぎる光景にパーティー会場は再び混乱に陥り、特に貴族令嬢達は完全にパニックッてしまい無闇矢鱈と走り出してしまっては転倒する音や衝突の音が聞こえる。
「ええい、狼狽えるな! テメェらはそれでも栄えある帝国貴族かぁぁぁっ!?」
暗き大いなる闇の中に在ってガハルド皇帝による覇気に満ちた声が響き渡った。
それは闇夜を暁天に染めんとするくらいの喝であり、暗き闇と怒号や悲鳴で恐慌に陥りかけていた帝国貴族達の精神を立て直させる事に成功。
其処へ弓箭による攻撃が闇より来たる。
「チィッ! 暗闇から鬱陶しいわっ!」
ガハルド皇帝へと向けて無数の箭が飛んでくるのだから面倒極まりない、しかも普通ではとても考え難い程短いのに凄まじいばかりの速度と威力を秘めた箭が四方八方から襲ってきた。
その箭はとても絶妙なまでにタイミングをずらしてきて、それはそれは実に嫌らしい位置を狙って正しく正確無比に一切の間断も無く撃ち込まれくるので、戦に慣れているガハルド皇帝といえど防戦一方に追い込まれてしまい、貴族達が態勢を立て直す為の指示を出す余裕は何処にも無い。
とはいえ、真っ暗闇の直中で僅かに聞こえてくる風切り音だけで箭の位置を掴み、決して戦闘用では無い儀礼剣だけでこれを捌いているのだから其処は流石というべきなのだろう。
「コンチクショーがぁぁぁっ!」
ある意味で間違ってはいない怒声を上げているガハルド皇帝を中心とし、とっても甲高くて重々しい金属同士の衝突する音が鳴り響いていた。
間断無く上がっている悲鳴と人が倒れる音が響く中で、ガハルドが喝を入れながらも襲撃を受けている事から幾分か冷静さを取り戻した者達が、火球の魔法によって会場内へと灯りを作り出す事に成功をしている。
「くそ、いったい何なんだ!」
一切合切の事情を聞かされてない天之河光輝、それが故に聖剣ではない単なる鉄剣を揮いながら自分の身を守っていた。
とはいってもみてもカム・ハウリアからしたら敵は基本的にガハルド皇帝と帝国貴族達であり、エヒトの勇者(笑)とかいう天之河光輝なんて愚図には何ら興味も用事も無い。
なので流れ弾みたいなクナイらしき刃が飛んでくる程度でしかなく、狙っていた訳でも無いから特に直撃する物は一つも無かったけど流石に暗闇の中で刃が飛んでくるのはストレスだった様だ。
ブンブンと当て所なく剣を振り回していて危ない事この上ない、近場に居た坂上龍太郎と貴族らしき男が嫌な表情でソッと離れていった。
事情を全て知っているリアナ達や雫達、更にはリリィも特に慌てる事は無くて趨勢を見守る。
「あの坊やも大変そうね」
「クリスさん、そんな言い方だとオバサン臭いと思いますよ?」
「ガーンッ!」
何ならクリスとリアナがそんな話をしていられるくらいには余裕だ。
だけどガハルド皇帝や帝国貴族達はそれ処ではなくて、ふと気付けば視界の端に何やら黒い影の様な物が風切り音と共にな横切ってくる。
「くっ、何者だ……げびゅっ!?」
横切る影に向かい咄嗟の判断で火球を放とうとした帝国貴族の男、だが然しその直後に背後から飛び出したのはガチガチな鎧姿で暗闇と変わらぬ色が保護色となっており、手にした黒塗りで目立たない小太刀を一閃するとスパンと一瞬にして首を刈り取っていた。
首が飛んでドシャッと生々しい音と共に地面に落ち、それはゴロゴロと慣性の法則の侭に転がっていきやがて止まる。
帝国貴族の男Aはマヌケな表情を晒しており、まさか自分の首が落ちているなど思いもしない。
その首無しな身体の傍らには鎧武者とでも呼べる存在が居たけど、次の瞬間にはゴツい体躯を翻して闇の中に紛れて消えていた。
「よ、鎧の化け物だぁぁぁっ!」
「死にたくな~い、死にたくな~い!」
「だ、誰か助けて!」
荒事には向かない貴族令嬢や文官達だったが、何と御令嬢は元より男である文官までが表立って言えない粗相をする者も居り、俄かに会場の床が濡れていたし少しアンモニア臭が漂う。
仮面ライダー黒影トルーパーとなってたカムはウサミミで聴力は良いが、犬人族や狼人族みたいな鼻を持つ訳では無いのに臭いで仮面の向こう側の素顔を歪めた。
原典ではウサミミから兎人族だと判っていたからか未だしもマシだったのか、軍人将校を生業とする貴族は闇を睨み挑む姿勢も崩さないにせよ、御令嬢は腰を抜かして派手な粗相をしてしまった者が多く、下半身の機能を喪ったランデル元王子と歳の変わらないアリエル皇女も矢っ張り粗相をしならがら、涙と鼻水でとてもではないが他人には見せられない顔で座り込んでいる。
最早、モザイクにするか『見せられないよ』と看板でも立てるかしないといけない。
「仕方がないな……」
暗闇でも闇目が利くユートにはバッチリと視えてしまっており、腰を抜かしてて後ろ手を付いた状態で純白のドレスのスカートが開いてしまい、ドロワーズが丸見えな形だから股間の湿り具合いや床の水溜まりも確りと視える。
「ほら」
「ふぇ!?」
ユートは彼女を立たせるとゴシゴシと湯で濡らしたタオルで顔を拭いてやり……
「キャッ!?」
ドロワーズをスルリと脱がして、もう一枚の濡れたタオルで股間を丁寧に拭いてやった。
「ん、や……」
口を手で押さえながら声を殺しているのだが、拭かれて感じる部位に擦れるらしく涙目で嬌声を漏らす一〇歳児、この年齢であるからにはきっとこれが初めての快感であろう。
綺麗になったのを確認するのにアリエル皇女の股間を一擦りする。
「ひあっ!?」
乾いた様だから彼女のサイズに合うショーツをストレージから出して穿かせてやった。
尚、何で一〇歳児が穿けそうなショーツを持っているのかと問われれば、ユートの創業した会社――財団法人【OGATA】とは謂わば赤ん坊の産着から死者の棺桶まで様々に手掛ける総合企業という面が在って、当然ながら下着から避妊具やショーツといった女の子に必須な商品も取り揃えているのと、ファンタジーな世界だとその手の物が手に入らない事も屡々あるからこうして自分のストレージにある程度の商品を仕舞い、必要に応じてこうして出しては与えているのである。
ユートも抑々にして不妊症ではないけど妊娠させ難い為、基本的には妊娠を避ける為の避妊具など必要とはしていないけど、矢っ張り必要としている人間も一定数は居るから売る事もあった。
特に娼館の娼婦みたいな男と寝るのが仕事だから下手に妊娠は出来ない為、ユートから避妊具を買い付けるケースがそれなりにある。
ハルケギニア時代には必要悪的にユートが自ら建設した娼館が各国――トリステイン王国、アルビオン王国、ガリア王国、帝政ゲルマニア――に存在していたし、諜報機関としての側面も持たせていたから娼婦用にゴムやピルなどを与えた。
似た様な意味合いの娼館が【イセスマ】の世界の裏世界にも存在していたし、其処の主に纏めて下着類や避妊具を渡していたりもする。
後は某ロリ化した博士が造った興奮剤や精力剤とか媚薬の類い、割と素敵デザインな下着などが娼館では売れ筋として捌けていた。
そんな訳で需要を満たすから女性用の下着類もサイズ別に各種を取り揃えているのだ。
恥ずかしい処を見せた上にフォローまでされたからか、アリエル皇女は頬を真っ赤に染めながらユートの服の裾を掴んで放さない。
ユートも帝国の人間とはいえ小さな少女だから流石に殺したり、トラウマを植え付けたりなんて真似をするのは躊躇われて何も言わないでいた。
蹂躙は今尚も続いていて、パーティー会場には少なからず軍の将校もいるみたいだったけれど、前線から退いて贅沢の極みを尽くしてきた連中には量産型とはいえ、仮面ライダー黒影トルーパーと成ったハウリア一族は死神に等しいのか暗闇と彼らの存在に精神が耐えられず倒れていく
所詮は傭兵国家といえどもぬるま湯に浸かった連中など、贅肉の付いた豚と変わらないという事なのか一人の例外も無く何も出来ない侭で最早、闘うでも逃げるですらも無く黒影トルーパーから手足の腱を切られてしまい、痛みにのた打ち回りながら倒れ伏す事となっていた。
勿論、そんな情けない者達ばかりではないから軍事国家の矜持に懸けて抗う者もそれなりに居たのだが、ガハルドの儀礼剣みたいなのは持っていないにせよ持ち込んだ護身用の懐剣を手にして、ハウリア一族の襲撃を凌いだ貴族も居るので仲間の気配を頼りに集まり陣形を組む。
それは見事な連携だったが、抗う者達には情け容赦無く死神の鎌が降り懸かり首を飛ばしていた。
ガハルド皇帝の比較的近くにいた軍人将校達も直ぐに陣形を組んで彼の背後を守りる様になり、要注意範囲が一気に狭まったからもう射撃攻撃は効かないであろう。
それによって迎撃に当面の余裕が出来たらしいガハルド皇帝は、放たれた幾十幾百もの数の箭を呪文詠唱の片手間に叩き落とす。
物理ファイターかと思っていたが、無詠唱こそ出来ないものの凄まじい速度で詠唱され瞬く間に作り出された幾多もの火球、一瞬で会場に広がりプリミティブな煌きが闇を払い始めた。
きっとガハルド皇帝達は反撃の狼煙として考えていたのだろうが、それは余りにも早計だったのだと直ぐに思い知らされる。
全身鎧を纏う騎士みたいな姿をしたハウリア、その存在感は暗闇では特性を以て隠れていたのが明かりの下では、その鎧甲の姿はガハルド皇帝や将校達を驚愕の色で染め上げていった。
「な、何だ、此奴らは!?」
驚愕をした侭に正体を確かめようと接近をしてきたガハルド皇帝の側近、彼だけではなく離れた位置にて灯りを確保している連中も同様。
然しすぐに直感したガハルド皇帝が叫ぶ。
「そいつらに近付くんじゃねーっ!」
「「「っ!?」」」
反射的に退こうとした側近達ではあったけど、カムが変身した黒影トルーパーはサブウェポンとしている短めの二振りの剣、双剣と呼ばれている両手で扱う武器を左右から振り抜いて攻撃。
「「「あじゃぱぁぁぁぁっ!!?」」」
首が落ちて側近達は悲鳴を上げた。
「ありゃ確かテメェのカメンライダーとやらに似ているがよ、いったいどういう関係なのかを是非とも御聴かせ願いたいな」
似ているとはいっても仮面ライダーWと仮面ライダー黒影トルーパー、変身ツールたるベルトの形状からして全くの別物ではあるが意匠は確かに似通ってはいるだろう。
ハウリアの長たるカムには仮面ライダーのみならず、特殊な魔導具というかアーティファクトであるアクセサリーを渡してあるから仮に変身が出来なくても強化されて闘えた。
機能はオリジナルには少し及ばないのだけど、『超強化付与』『魔族看破』『悪意看破』『苦痛耐性付与』『強者看破』というのが付与されている上に、『聖なる守り』『防汚』『破壊不可』『二重の護り』が付与をされていて、ある意味で云えばオリジナルを越えている。
因みに『聖なる守り』は状態異常耐性の事で、『二重の護り』とは魔法と物理に対する防御力の向上を意味しており、『魔族看破』はあの世界で魔族と呼ばれる種族が何らかの憑依行為をしていたり変態しているのを看破する機能。
とはいってもあの世界以外では魔族といえば【スレイヤーズ】世界くらいしか意味は無くて、だからこの機能は名前こそ【魔族看破】と称しているが実態は【正体看破】とも云うべきであり、何らかの存在が誰かに或いは何かに憑依をしているか、若しくは変態なり変身をしている誰かさんに関しての看破となる。
【
「関係ね、強いて言うなら義父と義息子の関係。彼の娘とは閨で格闘をする深い関係だからな」
そう言った瞬間に真っ赤な顔になった
「まさか、兎人族なのか!?」
ガハルド皇帝からすれば――否、ヘルシャー帝国の大概の国民からすれば兎人族など愛玩動物よりは上等な性奴隷に過ぎない。
まぁ、ハウリアの民族性か兎人族全体の民族性かは判らないのだけど、女性の肌の露出度が高い上に殆んどが巨乳で腰の括れやお尻の張りなどが素晴らしいが故に、性的な対象として兎人族女性程に見易い存在もそうは居ないから無理は無いのかも知れなかったが……
個性として色々と小さな兎人族、或いはネア・ハウリアみたいなまだ小さな子供ならそれからは外れている。
とはいえ、総じて顔が美しいのが兎人族なだけに小さくても構わない連中は山程に居た。
事実として子供なネア・ハウリアも将来有望な容姿だし、シアは云うに及ばずミナやラナにしても死んだクラスメイトの女子相手ならは数段以上も優っていると云わざるを得まい。
地球ではクラスメイトの女子は優花くらいにしか食指も動かなかったが、一応は雫や香織も普通を越えた美少女だと認識をしていたユートからして死んだ連中には見るべき部分は無かった。
今なら鈴や恵里'であれば食指も動くし、何なら優花の親友達だったらそういう対象にも見れる。
ヤるヤらないは別にして。
「つまりはテメェの差し金かよ!」
ガハルド皇帝の叫びに反応して帝国の貴族共や軍人連中がユートを睨む。
「何を言い出すかと思えば埒も無い、まさかとは思うがお前らは兎人族……というか亜人族から襲われる謂われは無いとか思ってんのか?」
「ぬぅ!?」
「以前から亜人族を捕まえては性奴隷や労働奴隷にしておいて、遂には樹海に火まで着けて火災の隙に幾人もの兎人族を含む亜人族を捕らえておきながら、復讐されないなんて欠片にも思わなかったという訳だ?」
「チィッ!」
「それともアレか? ヘルシャー帝国では帝都に火を掛けて国民を攫って奴隷に落としても『構わない』と笑えるものなのか?」
ガハルド皇帝は苦々しい表情となるが貴族らしきオッサンが叫んだ。
「巫山戯るな! 亜人族如きと我ら人間族を同列に語るなど……ぷぎゃら!?」
だけどモブ貴族のオッサンが最後まで言い切るよりも前に、仮面ライダー黒影トルーパーであるカム・ハウリアが首を斬り落とした。
「巫山戯ているのは貴様らだ。抑々にして貴様らに我らが蹂躙される謂われこそ無い!」
「神に見放された種族が何を言うか!」
成程、神の恩恵だとされる魔力を持たず魔法を扱えない亜人族だからこそ、『神に見放された』と世間から見做されているのは確かだろう。
「この世界には元より人間族しか居なかった」
「あ?」
「では亜人族や魔人族、果ては亡びたとされている吸血鬼族や竜人族は何処から来たんだろうな」
「他の大陸じゃねーのかよ?」
「違うな、間違っているぞガハルド皇帝」
「な、何だと?」
思い切りダメ出しを喰らってしまう。
「僕はこう言った。『
「この世界には……だと?」
「他の大陸にも人間族しか存在しなかったろう、尤も今はそんな人間族すら居なかったがな」
「ハァ!?」
「調べたのさ。少なくとも南の大陸には魔獣や獣は存在していたけど、亜人族や魔人族は疎か人間族すら居なかったってね」
ガハルド皇帝は目を見開いて驚愕を露わとし、貴族達も『莫迦な』と口々に呟いていた。
「他の大陸を調べただと? んな事がテメェに出来るってのかよ!?」
「出来るさ。地球では他の大陸に行くくらいなら家族旅行気分でやっているぞ?」
「んだとっっ!?」
ユートは海外旅行なんて転生前に行った事は無かったけど、それはお金の問題では無くて単純に家族がそれなりに忙しかったからに過ぎない。
海外旅行が割と普通なのは本当だ。
「確かにお前ら低文明な人間では他の大陸に渡るのは命懸けだろうが、僕ら高度な文明を持っている人間からすれば如何にも容易い」
まるで煽るかの様な物言いと嘲笑う表情をしており、それはガハルド皇帝以下の貴族連中をして莫迦にされたと理解していた。
「貴様ぁぁぁっ!」
首を落とされた貴族に代わるモブ貴族Bとでも云える小太りなオッサンが激昂するが、弱肉強食を標榜している割には随分と闘い難そうな体付きをしている。
「誰かを虚仮にするのは当たり前にやる癖して、自分がやられたら激昂をするとか本当にテンプレな貴族って感じだよな。お前らが碌に他の大陸に渡航する技術さえ持たない程度の文明なのは違いないだろうに」
船足が遅い、食糧や水を保たせられない、それに壊血病という恐怖が在るだろう。
現代では壊血病も克服している地球人ではあるのだが、当然ながら昔はそれが起こる原理を識らないが故に恐怖に怯えたものだった。
科学的根拠を得られない彼らトータスの人間では決して克服は出来ないし、将来的には壊血病を克服を出来たとしてもユートの連れた軍勢には全く敵わないのだろうけど。
それにしても亜人族が神に見放された種族として見下し奴隷化を平然として、住む場所に火を掛けるなど外道の極みをやらかしながら自分達がいざやられたらこの有り様には嗤える。
造船技術が拙いのもあったけど、ミレディが曰わく『解放者』が暴れていた頃に比べても技術が退化しているらしい。
恐らくはエヒトの仕業。
獣人族が亜人族と名を変えたり、魔力持ちを殺すなんて意味不明な掟を制定したりといったのはエヒトルジュエ――延いてはその下僕のノイント達が干渉した結果だと思われる点が幾つか見受けられるが、造船技術が数千年規模で『解放者』の時代から時間が経っているにも拘わらず全く進歩していない理由もエヒトが干渉した結果であるとユートは見ていた。
地球では日の本の国が鎖国をして僅か数百年で黒船来航なんて時代が訪れたのに、数千年が過ぎた処か下手したら一万年が過ぎたかも知れないであろう『解放者』の時代から現代で、造船技術は明らかに進歩が全く以て成されていないのだからおかしな話ではある。
それが人間族の九割が信仰をするエヒトからの命令を、聖光教会改め聖教教会の指導に基づいて行ったのならば納得も出来た。
エヒトを信仰しない亜人族でさえいつの間にか違和感無くおかしな掟で縛られていたのだから、エヒトが大好きな人間族なら然もありなんと頷くしか無かったと云う。
(神の木偶は
メルジーネ海底遺跡で観た映像では人間族の王が銀髪の女を連れていたが、それは明らかに神の木偶――ノイントやエーアストなどの誰かだ。
基本的に同一規格、判を捺した様に身長体重やスリーサイズ処か顔まで同じな神の木偶共だっただけに、あの映像に映っていたのがノイントなのかエーアストなのか他の誰かなのか判らない。
「さて、話の続きだが……調べてみたが少なくとも南の大陸には人間族なんて居なかった。というより知的生命体そのものが存在していなかった」
「どういう事だ?」
「僕の予想では南だけじゃない、この大樹が在る大陸を仮に中央大陸とした場合で東西南北全ての大陸に魔物や鳥や獣以外は存在しないんだろう」
「ハァ?」
危機的な状況ながらユートの科白は嘘か真かは判らないまでも、貴族共にはインパクトのある話だったらしくザワザワとし始める。
「恐らく数万年に亘り無人大陸だった筈だ」
「数万年だと!?」
この世界の人間は基本的に日本で云う戦国時代くらいの文明しか無く、当然ながら外洋を往く事は先述した通り技術的にも神の木偶からの干渉的にも不可能だった。
よって、この大陸の人間はこの大陸の中で全て完結をしているから、余所の大陸の事なぞ識らないし寧ろ識る必要性すらも無い。
ミレディによると選択肢に他大陸へ命懸けで渡るというのも在ったらしいが……
「つまり、其処は……」
「正しく無限のフロンティア」
誰かがゴクリと固唾を呑んだ。
「お前は其処を独り占めにしようってのか?」
『『『『『っ!?』』』』』
ガハルド皇帝の恨みがましい言葉に貴族共が目を見開いてユートを睨む。
「独り占めになるのは確かだが結果論だろうに。お前らは大陸間移動が出来ないんだからな」
「くっ!」
謂わば巨大な焼き立てのパイがドンとテーブルに載せられているのを知りながら、自分達は一切の御相伴に与れずユートが旨々と平らげるのだと判っていても手出しが全く出来ない状況。
「当然、僕がお前らを連れて行っやるなんて事は有り得ない。態々、パイを分けてやる意味なんて無いんだからな」
「チィッ! 緒方優斗、テメェは俺らに喧嘩でも売る心算かよ?」
「フッ、何を言い出すかと思ったら益体の無い事を……喧嘩? 吹っ掛けて来たのは寧ろお前ら、トータスの人間だろうに」
「な、なにぃ!?」
驚愕するしかないガハルド皇帝。
「身勝手に召喚し、戦争に巻き込み、最前線送りにする為の訓練を無理矢理……ああ、『始まりの四人』が戦争参加を表明してからはノリノリだったから無理矢理は違うか」
グサッ! 雫と香織のハートに鋭い箭か何かが突き刺さったらしく、二人はそれなりに豊かな胸を押さえながら蹲ってしまう。
尚、勇者(笑)は何がおかしいのか理解もしていなかったけど口を坂上龍太郎に押さえられていては何も言えず、坂上龍太郎自身もクラスメイトが十数人という正に半数が死亡した事で今更ながら理解をしていた様だ。
その後もカトレアなる魔人族に殺され掛かってしまったし、後から聞いた話によれば愛ちゃんも六万もの魔物を嗾けられてしまい護衛に付いて行ったクラスメイト共々に死ぬ処だった……と。
日本の常識なんて通じない、生命の価値が驚く程に軽く、勇者(笑)――天之河光輝の『俺が皆を守ってみせる!』なんて科白に実行力が伴わないのだという事を初めて知った。
脳筋だからと考える事を放棄していた甘えを今は後悔もしている。
だからこそ、これ以上の犠牲は要らないのだとユートからの指令たる『天之河を抑えておけ』、これを間違い無く実行するのだけはやらなければならないと考えていた。
『始まりの四人』は半数を越えて反省しているらしく、全く反省していないのは――寧ろ自分が悪いとさえ思っていないのは天之河光輝が唯一人のみとなっている。
「兎に角、此方は放り出されたら摘むっていうのを利用して好き放題してくれたんだ。喧嘩を売られているとしか思えんがね?」
「それをやったのは教会が主導だし、基本的にはハイリヒ王国がやってきた事じゃねーか」
「莫迦めが!」
「なっ!?」
「宗教が力を持つ以上は宗教がやらかした事ってのは、お前ら国を預かる連中も共謀をしたと見做されて当然だろうが! 何よりお前らがハイリヒ王国に訪れた時に協力を約束したよなぁ?」
「そ、それはそうだがよ……」
ユートがハウリアらしき仮面ライダーを手札としているからか、流石に莫迦な貴族共とは違って行き成り激昂したりはしない分別はあったらしいガハルド皇帝。
それにユートも仮面ライダーに成れるのを知っているからには、無意味に敵対心を煽る真似など一国の皇帝としては出来ない。
兵数を頼めば抑えるのは可能と考えているが、その兵数がこの場に居ないからこそだろう。
その認識も甘いのだが……
「それに何よりも、僕は元より亜人と呼ばれている存在に対して相手が排他的では無い限りだが、大凡悪意というものを持ってはいないんだよな。寧ろ相手次第だが好感すら懐いているくらいだ」
「な、んだと!?」
「森人族――エルフ、土人族――ドワーフ、翼人族――フェザリアン、そして多種多様な獣の特徴を持った獣人族。僕は他の世界でそういった種族と交友関係を深めているのさ。だからお前達とは異なる視線で亜人族を視ていたし、フェアベルゲンとも絆を深める事が出来た」
「き、絆だと!?」
「フェアベルゲンは長老衆による合議制を執っているが、現在は形だけだがその上に王――森人族の長老たるアルフレリック・ハイピトスの孫娘のアルテナ・ハイピトスを女王とし、僕の婚約者としているからな。実質的にフェアベルゲンというのはアシュリアーナ真皇国の領国となっている」
「アシュリアーナ真皇国!?」
時々、ガハルド皇帝も聞く名前。
「判るか? お前達はアシュリアーナ真皇国・フェアベルゲン領国へと戦争を仕掛けた、つまりはとっくの昔に僕らアシュリアーナ真皇国はお前達ヘルシャー帝国を敵対するべき国家だと見做しているんだよ!」
闘氣と共に放たれたのは明らかな敵意であり、流石は傭兵国の皇帝ガハルド・D・ヘルシャーとトレイシー・D・ヘルシャーなだけに、敵意へと敏感に反応し佩いていた武器を手に構えを執る。
其処へ折り良くというか、ヘルシャー帝国の兵がパーティー会場に駆け込んで来た。
「た、大変です!」
「何事だ!?」
「帝都の周辺を亜人共が取り囲んでおります!」
「なっ!?」
その報告にユートへと向き直ると、不敵な笑みを浮かべていてこれがユートの指示だと知った。
「アシュリアーナ真皇国はハルツィナ樹海に対する放火及び誘拐を、ヘルシャー帝国からの宣戦布告と判断して戦争を開始する!」
「莫迦なっ! テメェが此処を敵地のド真ん中と知った上で戦争だと!?」
「逆だ」
「逆?」
「此処に僕が居る、それは勝利の法則が決まった瞬間なんだよ!」
ユートは全体的に銀色で、中央には小さな四角いモニターとそれを囲む黒い円形の縁取りを持った機器を手にして前方へと掲げた。
「ガジモン!」
《REARIZE!》
「応!」
モニターから顕れたのはガジモンという成長期に位置するデジモン。
【デジモンテイマーズ】の世界にて、アリス・マッコイが連れて来ていた成熟期デジモンであるドーベルモン、四聖獣たるスーツェーモン達からの指令で松田啓人らが究極進化に必要な力を与えるデジタル・グライドを伝えた後に分解されたのをサルベージ、とはいえ躰を構成するべき情報が足りなかったから成長期のデジモンのガジモンに退化したのだけど、取り敢えずは命だけは助けられた感じだ。
そんなガジモンをパートナーデジモンにしていたのもあり、【魔獣創造】の禁手【聖魔獣創造】で創ったロイヤルナイツと含めてデジモンを使った用兵も構築をしている。
因みにだが、【デジモンフロンティア】に於ける『十闘士』の『スピリッツ』も創造していて使う事もあった。
《MATRIX EVOLUTION!》
電子音声と共にモニターへ表示される。
「マトリックスエボリーション!」
デジタル・グライドの力で謂わばデジタライズされたユートが、パートナーのガジモンと融合化を果たす形で一つに成り究極へと至る道へ。
「ガジモン究極進化ぁぁぁっ!」
ユートの意向から、テイマーズ系デジモンながら完全体は『超進化』、究極体は『究極進化』と口にするガジモン。
成長期の姿から腕が、脚が、躰が分解されていき新たなる姿へと再構築をする。
顔がガジモン→ドーベルモン→ケルベロモン・ジンロウモードと変化して……
「プルートモン!」
漆黒の鎧に身を包む究極体の神人型デジモン――プルートモンに進化をしていた。
ローマ神話体系の冥府神プルート、ギリシア神話体系では冥王ハーデスを指す神のデータにより構築されたデジモン故にか、冥王の力を持っているユートとは相性が余りにも良過ぎるデジモン。
尚、『デジヴァイスバースト』を使う事によってガジモン→ドーベルモンX抗体→ケルベロモンX抗体→アヌビモンの進化ルートも持ち、融合進化ではない通常の進化による究極体にも成れた。
ガジモン自身もガジモンX抗体に『Xー進化』が可能だったりする。
『冥界の裁きを今此処に!』
彼らにとっては寝耳に水な不幸な事となるが、プルートモンの究極進化と同時にマグナモンを除くロイヤルナイツが帝都の周辺を囲む様に顕れ、まるでヘルシャー帝国を威嚇するかの如く睨んでいるのをガハルド皇帝は報せを受ける羽目になるのであった。
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判ると思いますが大樹が存在する大陸以外には人間が居ないのは独自設定です。
プルートモンに関しては別の作品の何処かでは出そうとしましたが、デジモン主体の噺では無かったから中々に機会が有りませんでした。
一応、【魔を滅する転生電】の一環で少し書いてもみたのですが、アリス・マッコイの扱いをどうするべきか決まらず流れたりしましたし。
調べてみたら何故か死者扱いをされてるのと、ロブ・マッコイの持つ写真に写るアリスと実際にドーベルモンと現れたアリスの表情、その差違とかで物議を醸し出したらしいので……
設定は小説内で書いた通りで、ドーベルモンをサルベージしてガジモンに退化したのを究極進化させたのがプルートモンです。
勇者(笑)な天之河の最後について
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原作通り全てが終わって覚醒
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ラストバトル前に覚醒
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いっそ死亡する
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取って付けた適当なヒロインと結ばれる
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性犯罪者となる