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「ヘルシャー帝国の皇帝に我らが主たるエヒト様の御言葉を伝えます」
「なっ!? どういう事だ!」
彼女は確かヘルシャー帝国の聖教教会支部にて働く修道女だった筈、見目は美しいが冷たいとも云う鋭利な眼差しが気に入らなかった記憶があるのだが、性欲を余らせた男としてはこの眼差しを快楽に酔わせたいとも思っていたものである。
「私の名はドライツェーン。エヒト様により生み出された使徒」
ヘルシャー帝国内に何体か存在するノイントと同じエヒトの使徒、即ち『真なる神の使徒』だと称するべき者達の一体であったと云う。
「ヘルシャー帝国に命じます、貴方達の全力を以てイレギュラーに当たりなさい」
それは神代魔法の魂魄魔法たる『神言』程では無いにせよ、矢張り魂魄魔法の『魅了』を込めた言葉だった故にか……
「エヒト様の御命令の侭に」
幹部達が虚ろな瞳で応えていた。
「エヒト様万歳」
「我らが忠義はエヒト様と共に!」
まるで万歳三唱でエヒトを讃え始めた。
生憎と精神力の強かったガハルド皇帝には効きが悪かったが、この場で効いていないのを下手にアピールしたらヤバいと感じて従うフリをする。
(チィッ、何がどうなってやがる!)
それは或いはヘルシャー帝国崩壊の序曲だったのかも知れない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翼を持つ長い銀髪の女が現れた。
「ノイントのお仲間が漸く出て来たか」
これは予測がされていた事、はっきりと云えばユートは悪目立ちが過ぎたのである。
盤上の駒として召喚をした筈なのに好き勝手にゴンゴンと動き、更には不完全体な半端モノとはいえエヒトの使徒を斃してしまい、遂に完全なるエヒトの使徒たるノイントさえ斃すに至った。
エヒトからしたら駒の分際で……としか思えなかったのだろう。
それでも一年近くを放置したのは面白く掻き乱してくれるなら有りだと考えたからに他ならず、余りにも目に余るならこうして使徒を動かしてやりブチっと潰してやれば良いのだから……と。
全ては盤上の出来事に過ぎなかった。
だけど流石に神山やハイリヒ王国の事に関してはやり過ぎ、最早エヒトも堪忍袋の緒がブチリと良い具合にキレてしまったのであろう。
何しろ自分の意を人間に伝えるべき聖域だった場所が崩されたのだから。
とはいえ……それでも尚、エヒトには余裕が有るのか使徒たるワルキューレを送り込む。
「最前線に居るのは感情が面に出ているみたいだから、リューンみたいなナンバーズじゃない謂わば失敗作って奴らか」
性能は完品の約半分程度、感情が強く出ていてとてもでは無いが使えない……と判断された為、リューン達は失敗作として廃棄されていた。
「数値的には?」
「そうだな、この世界のステイタス値にしてだいたい五〇〇〇~七〇〇〇か」
「私の数値は残念ながら計れませんが、貴方から視て私はどの程度でしょう? ユートさん」
「流石に判らんよ。
スールード――鈴鳴モードでこの場に居るのは王都冒険者ギルドの受付嬢をしているのが退屈だったからだろうか?
「本体じゃないんだろうし、力は大した事も無いみたいに言うけど……明らかに彼奴等よりかは強いだろうさ」
「とはいえ態々、エヒトルジュエが出してきたのですから強化された個体も居る筈でしょう」
「ああ。ウルトラマンとか見せてしまったから、それなりに危機感は持っているだろうしな」
ウルトラマンの能力や巨体を見て尚も木偶共を強化しないならば、エヒトルジュエとはどれだけ危機感の皆無な盆暗かという話しであった。
「とはいっても、僕にせよ優雅兄にせよリクにせよ変身はフルパフォーマンスじゃなかったけど」
巨体といってみても実際にはフルスペックに当たる五〇m前後という程では無く、ウルトラマン・ザ・ネクストの最初のアンファンスくらい――約一〇m程度だ。
当然ながら五分の一程度の大きさだったのだから身体能力や保有エネルギー量、そして一度に扱えるエネルギー値もそれ相応に小さくなる。
例えばウルトラマンティガのフルスペックにてエネルギー量が一〇〇、一度に扱えるエネルギー値が最大で二〇だったとした場合は概算でしかないのだけど、あの時で云えばエネルギー量が二〇でエネルギー値は四でしか無かった。
正しく五分の一でしかないのだ。
尚、必殺技はエネルギー値の数倍になるのだろうからフルスペックの通常エネルギー値と変わらない程度の威力で、どうやってもあの大きさではフルスペックのウルトラマンに敵わないだろう。
エヒトルジュエはそんな五分の一スペックを基に算出して強化したろうから、その気になったらフルスペックの変身で一蹴が可能だと思われる。
まぁ、肉体的な数値にも依るだろうが……
少なくともデジモン達は単純な身体の大きさだけでは勝負が決まらないのは、完全体のメガログラウモンと究極体のベルゼブモンの戦闘を見れば判る話しなので余り心配はしていない。
「鈴鳴はどうする?」
「あの程度の相手に出る程ではありませんから、そうですね……今の内に少し可愛がって頂きましょうか。折角、再会しましたのに忙しく動かれていて私はちょっと欲求不満ですよ?」
普通に敵とでもヤるだけに鈴鳴――スールードとも『煌玉の世界』で抱いていたし、何なら違う世界でも出会ったら乳繰り合っていたので彼女も期待していたのに、ユートが忙しなく動いていたから結局は抱かれる事も無かったのが不満なのだと紅い頬で淫靡に笑いながら囁いてきた。
こう見えて千年を越える年月を在り続けたのだとリーオライナが言っていたし、見た目は小柄な少女にしか思えない姿ながらその微笑みは熟練の娼婦も斯くや。
分体とは謂わば【NARUTO】の影分身の超が付く程の上位互換、影分身が出来る事は全てが可能な上で耐久力は本体から分けられただけ有るし、記憶も戻らずともある程度ならば本体と共有化をされており、滅びても本体が新たに完全な同一の個体を創り出せるのだそうな。
ユートの傍に居るのは初期の【煌玉の世界】で出逢った鈴鳴本人の意識体で、肉体的に視てみればあの世界で最低限でも一度は斃されているし、何度か出逢ってえちぃ事をするのもあったにせよ矢張り闘って滅ぼしている筈が、それでも鈴鳴は鈴鳴であるのだと笑みを浮かべている。
肉体は滅びているからその度に新調していて、だから出逢う度に肉体的には初めての引っ掛かりが愉しめる訳で、忙殺されてさえいなかったなら新しい肉体の初めてを『戴きます』するのも彼女と会った際の楽しみの一つ。
「ま、圧縮時空間でなら数分間でも充分過ぎるくらいにヤれるからな」
要するに簡易空間に『精神と時の部屋』みたいな時間を得られる機能を付加するだけだ。
ユートもこれはハルケギニア時代の放浪期から出来ており、例えばマルローネの時代に錬金依頼を受ける際にはこの時空間を利用していた。
それから約数分後には見る限りユートに変化など無いし、鈴鳴も衣服に乱れは無い様に見えているけど頬を上気させ息も少し荒くて、ホカホカと
身体から湯気が上がっている。
ヤり終えたばかりでシャワーだけは浴びたという感じで、内部空間――ユートの持ってる念空間の一つ――に設置されたキングサイズのベッドの白いシーツには真新しい鮮血の跡、そして更にはアンモニア臭がする液体が染み込んでいる跡などが生々しく残されていた。
因みにシーツは破棄して新しいのを【創成】で創り出し交換をしている。
「さて、余り変わりない戦況ですが……フフフ、【空隙】のスールード……参ります!」
態々、第三位以上が名乗る様に自らの名を高らかに叫ぶと空へと舞った鈴鳴――スールード。
リューンと同程度な使徒の失敗作では第四位の永遠神剣持ちに敵う筈も無く、名乗りすらしていない無名の失敗作使徒は敢えなく撃破された。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
戦闘はヘルシャー帝国との戦争から神の木偶――使徒との闘いにシフトしつつある。
ヘルシャー帝国の騎士も雑兵も最早、闘える者は殆んどが居なくなっていたから。
「なのに頑張るおっさんだな? 確か五〇歳だか其処らだって聞いたんだけど……」
狂った様に剣を振り回すガハルド皇帝。
「オラァァッ!」
傭兵帝国の皇帝らしい強さを見せ付けるけど、矢張り量産型なライオトルーパー達ですらまともに斃せていない。
「経験に裏打ちされた実力、ステイタス値が高いだけの勇者(笑)じゃ敵わんだろう強さだね」
年齢からステイタス値は落ちそうなものだが、それでも天之河光輝は勝てないであろう。
元ハイリヒ王国の元斯近騎士メルド・ロギンス――最強の騎士を以てしても敵うまい男、それこそがガハルド・D・ヘルシャーなのだが……
「何だか必死過ぎて怖いな」
何故か必死な様子が離れていても見て取れるのがちょっとおかしい。
「居やがったかぁぁぁっ!」
「お?」
良い歳したおっさんが涙目で迫ってくる辺り、余り嬉しくない事態で引いてしまう。
「緒方ゆぅぅぅぅとぉぉぉぉぉぉおおっ!」
涙目というか寧ろガチに泣いていた。
「いやいや、ドン引きなんだけど……」
闘いすら放棄をして駆け寄るガハルド皇帝は、正直に云ってしまうと怖いというより不気味にしか見えない。
「コンチクショウが! もっと判り易い場所に居やがれよな!」
「知らんがな。で、捜していたみたいだけど闘う心算なら一応は相手をしてやるぞ? とはいえ、こっちも忙しいからちゃっちゃと終わらせて貰うけどな。具体的にはスパッと首を刎ねて」
「コエーよ! 違う、闘いに来たんじゃねー! ヘルシャー帝国が修道女に乗っ取られちまって、どうにもならねーからお前を捜してたんだ!」
「修道女? そうか、エヒトの使徒がやらかしてくれたみたいだな」
「エヒト……様の使徒だぁ?」
「お前らが崇めるトータスの神エヒト、動けない自分の代わりを務めさせる為の戦闘用生き人形。今出てるのは失敗作な連中だが、完成品も矢っ張り来ているみたいだな」
「どういうこった?」
意味が判らないガハルド皇帝。
「名前は? 名乗っていたか?」
「ドライツェーンとか言っていたが……」
「ふむ、一三番目か。それなりに若い数字を出して来たんだな。それとも偶々、ヘルシャー帝国に居たのがドライツェーンだったのかね?」
とはいっても、此方も戦力をそれなりに出しているから名乗るのも難儀しそうな下の番号も恐らくは出してくる筈。
何しろ量産型な連中は万単位で存在する。
因みに八三番目ならドライウントアハツィヒという名前になりそうだが、これで十万飛んで二四とかになったら何と名乗るのだろうか?
「戦闘用とか言ったな?」
「ああ、奴らは地球で云う北欧の大神オーディンに遣える戦乙女ワルキューレを模した姿だしな。判で捺した様な同じ顔に同じ体躯に同じ能力値、だけど人間では勇者(笑)が限界突破・覇潰を使っても届かないくらいの能力だ。それが少なくとも千は下回らない、軽く万単位だろうね」
「そんなのが万単位かよ……」
流石にガハルド皇帝も青褪める。
「一万二千」
「何だよ、その数字は?」
「奴らのステイタス値、全てが一万二千らしい。能力的には完全体のデジモンと同じくらいか」
成熟期では話にもならないだろうと予測が出来るから、ユートは少なくともドーベルモンで出す意味を見出せない。
ケルベロモン・ジンロウモードなら互角に闘えるだろうが、互角で相手が万単位では早々に力尽きてしまうのが目に見えている。
仮に究極体でも【デジモンセイバーズ】に於ける例を見れば判る通り、幾百もの完全体デジモンたるナイトモンを相手にロゼモンとレイヴモンは殺られこそしなかったにせよ、疲労困憊で愚痴るしか無かったのだから矢張り数は力だ。
そして失敗作で約半分程度の能力値しかない、そんなリューンの同類達も数百は居た。
「まさか、あんなに失敗作を創っていたとはね。エヒトルジュエは莫迦じゃなかろうか?」
「どうすんだよ!?」
「落ち着けよ、皇帝が狼狽えるなや」
「けどな……」
ガハルド皇帝は勇者(笑)が仮にフルスペックでも勝てるだろうが、流石に失敗作ですら二〇倍を越えるであろう連中には一体ですら勝てない。
「何の為にデジモンを、ロイヤルナイツを喚んだと思っている。ロイヤルナイツは半数以上が飛べるから連中の相手もやり易い。飛べないのも居るけど半数以上が飛べれば充分だからな」
能力値としては完全体の下位程度でしかないであろう神の木偶、恐らくはユーキから話に聞いていた強化体も出てきそうだが果たして究極体には何処まで迫れるのか?
(ウルトラマンの力を視ている筈だからひょっとしたら究極体クラスも居るかもな)
原典ではハジメの力を凌駕させた個体は居たらしく、それはハジメ謹製のアイテムで超絶強化をされたシアが相手をしたのだと聞く。
その能力値は実に数倍。
とはいえ、その強化には確かユエの魔力が使われていたらしいから或いは強化体も居ないか?
(楽観視は良くないな。最悪を想定しておくのは闘いの基本だ)
大樹の女神ウーア・アルトとの激戦から数えて数万年、エヒトルジュエもその間に魔力くらいは溜めていただろう。
単純に強化したのがユエの身体を奪った後だから使われただけの可能性も捨て切れないのだし、これで『有り得ない』と考えるのは思考停止でしかない愚行だと思い直す。
ユートの心配を余所にロイヤルナイツが失敗作を相手に無双をしていた。
「ドラゴンズ・ロア!」
「スパイラルマスカレード!」
「ビフロスト!」
「ファイナルエリシオン!」
「グレイソード! ガルルキャノン!」
「デジタライズ・オブ・ソウル!」
「シャイニングゴールドソーラーストーム!」
「エルンストウェル!」
「鉄拳制裁!」
「エンド・ワルツ!」
「轍剣成敗!」
「アヴァロンズゲート!」
「シャイニングVフォース!」
神の木偶にすら成れなかった失敗作などちょっと必殺技を放てば消滅していく。
そして通常の木偶は完全体デジモンの下位級でしかない為に矢張り相手にならない、原典で強化された強化体なエーアストも精々が完全体上位が良い処だと考えていた。
Dーアークに浮かび上がるのは立体的に映し出されたホログラフに近く、ユートはそれを視ながら適宜判断を下していく形を取っている。
(矢っ張り問題はウルトラマンのデータをベースに強化した木偶だろうな)
其処まで強化されたら流石に究極体クラスには成っているだろうから。
(それにエヒトルジュエも単なる超越種の亡霊とはいえ愚かであれ阿呆では無い。恐らくは今回のヘルシャー帝国への合力は此方のデータを取るのが目的だろうな)
その考えは決して間違いではないとすぐに判断が出来る変化……
『オオオオオッ!』
光に包まれた神の木偶の一体、ユートには判らないけどそれはドライツェーンという一三を意味する名を持つエヒトルジュエの使徒、肉体的には光を帯びて全身が白銀の如く輝きを放っていて、少なくともオメガモンと同程度の巨大化をしている辺りウルトラマンを彷彿とさせた。
これもユートが識らない事だが、その見た目は【DARKNESS HEELS ーLiliー】のリリ・アーカイヴが巨大化した姿に近い。
「んだよ、ありゃ!?」
「漸く出てきたな」
叫ぶガハルド皇帝に呟くユート。
「アルフォースブイドラモン」
〔ハッ! 我が主!〕
何気に通信機能も実装し多機能なDーアークに話し掛けると、呼ばれたアルフォースブイドラモンがその言葉に応えて来た。
「巨大木偶の坊の奴から少し体液を採取して持って来てくれないかな?」
〔了解しました〕
特に疑問を差し挟む事無く頷く。
強化体が数体と銀巨人のドライツェーンとの闘いが始まって直ぐ、アルフォースブイドラモンは言われた通りに素速さを利用してVブレスレットから、アルフォースセイバーを出現させると神の木偶ドライツェーンに傷を付けてやった。
人形とはいえ一応のカテゴリーは生物だからか普通に体液を採取が叶い、アルフォースブイドラモンはそれをユートに届けるべく飛翔をする。
「暫し頼むぞ」
「任せよ、アルフォースブイドラモン!」
代表したのはアルファモン。
そしてあっという間にアルフォースブイドラモンはユートの下へと現れた、元よりアルファモンみたいな
「我が主よ、これに」
アルフォースセイバーに付着したドライツェーンの体液を捧げる。
「んなもん、どうするんだよ?」
「体液には木偶の細胞が在るからな。それを基に奴を此方で創れる様になる」
「ハァッ!?」
意味が理解出来ないガハルド皇帝。
「それは余禄だがな。本命はコレだ」
「そいつぁ、ステイタスプレートか!?」
「その通りだ」
魔法陣に付着される体液、銀色の魔力光を放ちながらプレートに文字が浮かび上がる。
ドライツェーン
レベル:???
??歳 女
天職:使徒
筋力:240000
体力:240000
耐性:240000
敏捷:240000
魔力:240000
魔耐:240000
技能:分解 疑似限界突破 双大剣術 銀翼 銀羽 魔力操作[+武装化] 飛翔 魅了 魔法適性 巨神兵
「おお、ドライツェーンってのは確か皇帝とかを魅了しようとした……」
「げっ、彼奴かよ! って、何だこの巫山戯過ぎる数値はよぉ!?」
先ずを以て桁違いに過ぎた。
「こりゃ、普通に究極体クラスだな」
それも、ロイヤルナイツと充分過ぎるくらいのタメを張れる程度には強力な能力値だろう。
「この巨神兵がウルトラマンの能力の模倣って処かな? 魔力操作は魔物に出来て奴らに出来ない筈も無いし、武装化はセイバーがやってた魔力で装備品を纏う技能か」
第四次聖杯戦争や第五次聖杯戦争にて召喚されたアルトリア・ペンドラゴン、クラスは剣の騎士である『セイバー』で魔力により鎧を纏った。
「分解は木偶共の固有魔法だろうな」
リューンやノイントも使ってきた力なだけに、『真の神の使徒』が共通して持つ魔法。
「それと疑似限界突破? まぁ、限界突破と似て非なる技能だろうが……技能としての性能が同じなら更に三倍にもパワーアップが出来るのか?」
ステイタス値からして既に究極体クラスなだけに三倍されたら流石に手に負えなくなるだろう、
ユートが常に余裕を持っているのはそんな力が有るからである。
勿論、封印しているからには簡単に解ける様にはしていないけど、自らの仕掛けた封印なだけに極論すれば解こうと思えば解けてしまえた。
ユートはドライツェーンの能力を確認してからすぐにアルフォースブイドラモンへ指示を出す。
「エヒトルジュエの使徒たるドライツェーンは特殊個体と認定する。アルフォースブイドラモンは今からロイヤルナイツに伝言を伝えてくれ」
「了解!」
「ロイヤルナイツはドライツェーン以外の強化個体を殲滅に向かえ……だ」
「ハッ!」
指示を聞いたアルフォースブイドラモンは翼をはためかせ蒼空を舞った。
「只でさえ万単位の木偶共が来ているんだから、特殊な一体だけに
ユートは自らが動くべく準備をする。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
一方、その頃……
「見付けたぞ光輝!」
「龍太郎! 丁度良かった、緒方が……」
「こんの、バッキャローがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!」
バキィィッ!
「らすぷーちん!?」
話している真っ最中に頬をグーでぶん殴られた天之河光輝が上空へ吹き飛び……
ドシャァァッ!
「グヘッ!」
そして真っ逆様になりド
「これ以上は面倒を掛けないでくれよ!」
若しこの時の坂上龍太郎をクラスメイトが視ていたら、半ば泣きながら叫んでいるのが印象的だったかも知れない。
坂上龍太郎は気絶した天之河光輝の首根っこを掴まえて歩き出す、こうしてユートと接敵する前に勇者(笑)の捕獲は成功するのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ラングリッサー組は新たにクラレットとルナとナームとシェリー、カルザス四天王――ルナは本来だとカルザスじゃないけど――が投入をされていて全員が飛兵だから神の木偶を相手に無双中。
ルナとシェリーとクラレットは兎も角として、ナームはランス・カルザスと結ばれカルザス王国を建国しているが、人類と魔族とクリムゾニアが入り交じった最終戦争から一五〇年後に再び起きた闘いにて、時空の歪みを応用して英霊の召喚をする事で喚び出したナームを固着して【閃姫】としている。
元々、ユートはこの時代に召喚されていたから光輝の末裔にしてラングリッサーの破片を内包していたアメルダが、聖剣ラングリッサーの記憶から喚起された英霊召喚を可能としていたのも一応だがジェシカから聞かされ知っていた為、ナームを召喚する事も不可能では無いと考えていた。
知識としてランス・カルザスと結ばれたというのは識っていた召喚英霊のナームではあったが、記憶としてはカルザス王国建国の為の無体な頼みの代価に一夜を供にした翌朝まで、しかも肉体的には完全な
シェリー曰わく『飛兵カルテット』を投入したのは、当然ながら神の木偶を相手にするのならば飛べた方が便利だったからだ。
また、カルザス王家は『始原の光輝』から端を発する『光輝の末裔』の一族だから聖剣ラングリッサーを扱える。
「おりゃぁぁっ! 勇者シェリー参上!」
ジークハルト王の宿った聖剣ラングリッサーは青き星ペイリアでの闘いにて砕け散ってしまったのだが、その破片の一部を回収して核とする事によりラングリッサー・レプリカを構築した。
レプリカであるが故にオリジナル程では無い、然しながら『始原の光輝』か『光輝の末裔』にしか扱えず、他の武器よりは遥かに強く魔を滅する効果が高い武器として活用をされている。
尚、『始原の光輝』というのははユートを含むディハルト、ティアリス、ルナ、ジェシカ、ルイン、ソフィアという聖剣ラングリッサー誕生の瞬間に居合わせた者達の事を指した『光輝の末裔』に合わせてユートが言っている名称。
本来の世界にこの名称は存在しない。
「シェリー、突出し過ぎですよ!」
暴走気味なシェリーをルナが諫める。
「まだまだぁぁっ! 久し振りに大暴れ出来るんだからぁぁぁぁぁぁぁあああっ!」
だけどコマンドが〔ガンガンいこうぜ〕に成っているシェリーは指示を聞かなかった。
「そうですか、聞きませんか……軍師であり且つ先祖でもある私の指示を?」
ピクピクと額に青筋を浮かべながら笑顔で言い放つルナは切札を切る。
「では、ユートに叱って貰いましょう」
するとシェリーは疎かナームとクラレットまでがビクッと肩を震わせた。
カルザス王家の娘達――ナームも含む――は、何故かユートへの好感度がMAXとなっているが故にか、嫌われるのを極度に怖れるというおかしな癖が存在している。
理由はよく判らない。
話を聞いたユーキはルナには何らかの因子が有って、それがユートの某かと結び付いてそれにより好感度が上がっているのでは? と言う。
『いや、因子って何だよ?』
『知るもんか』
随分と投げ遣りだった。
まぁ、とある世界でエロゲプレイヤー主人公に聞いた話では『エロゲ主人公は理不尽なレベルで超展開が続く』とか。
『誰がエロゲ主人公やねん!』
などとツッコミたいが、ヤっている事は明らかにエロゲ主人公だったからツッコめない。
エロゲは好きじゃ無いのだが……
ともあれ、バルディア王国時代でもナームは疎かその母親や祖母や曾祖母や高祖母など遡ったら普通に好かれたし、ルナから下り娘、孫、曾孫、玄孫など長じれば普通に懐かれた。
子孫の中には最終的には兎も角、初めてを捧げた者もそれなりには居るのだから驚きだろう。
そしてナームもそんな一人、ランスと結ばれる前の火遊び的に抱かれたのである。
勿論シェリーやクラレットはランスの子孫であるし、ルナより以降に何度かユートの血は混じっているから一応はユートの子孫でもあるが普通にカルザスの血族だ。
一巡目の彼の世界は基本的に原典と変わらない道筋だったのはジェシカから聞いており、ユートはゲームでプレイをしたルートを敢えて外れたりもして所謂『Astray』――正道を踏み外すという意味の英語――文字通りユートはラングリッサーの原典という名の正道を踏み外している。
それがヒロイン略奪……の心算は無かったのだけど、結果的には【ラングリッサーⅢ】に於ける選択制のヒロイン処か【ラングリッサー】からはクリス、【ラングリッサーⅡ】からはリアナだけでは無くラーナやシェリーやシャロンやラミィなどにまでやらかしていた。
尚、シャロンとラミィは小説版に登場している一種のオリキャラみたいな存在。
【ラングリッサーⅣ】や【ラングリッサーⅤ】に関しても同じく。
【ラングリッサーミレニアム】? それはいったい何でしょうか?
兎にも角にも彼女達はユートに嫌われてしまうのを極端に恐れており、こうしてユートの名前を出して諫めると流石に〔ガンガンいこうぜ〕から〔命令させろ〕にコマンドが変更される。
「わ、判りました……ルナ様に遵います」
可成り自由人なシェリーもユートの名前を出されると弱いので肩を落としていた。
「では……ナーム、シェリー、クラレット」
「「「ハイ!」」」
「クアッドアタックでエヒトルジュエの使徒を討ちますよ!」
「「「了解!」」」
要はジェットストリームアタックやトライアングルアタックを四人掛かりでやる連携技。
四人は手にしたラングリッサー・レプリカを槍へと変化させる。
ユートが造ったラングリッサー・レプリカは、剣士や騎士などの剣を扱える者でないと使い熟せないオリジナルのラングリッサーとは異なって、使い手が誰でも最大限の力を発揮が叶う様に使う者が願う形に変化をする武器。
その気になれば片手剣から弓や槍や槌、何なら武器としての手甲にすら変形をするであろう。
そんな武器が造れるのか? ハルケギニア時代からユートは魔導具製作は特技だった事もあり、リリカルなデバイスを参考にして構築をした。
通常の使徒にペガサスが飛翔、四人が続け様に槍化させたラングリッサー・レプリカで攻撃を喰らわせてやり、トドメとばかりにルナが使徒の核を貫くとグッタリと四肢を垂れ下げ果てる。
「レプリカとはいえラングリッサーの名を冠するだけあり、ユートが造った事も踏まえてその威力は矢張り流石ですね」
ルナはラングリッサー・レプリカの力に満足気に頷くと、次の標的たる木偶共を見定めてナーム達と共に向かって行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「おい、緒方優斗!」
「何だ?」
「奴を……ドライツェーンってのを斃せる算段は本当に付いているのかよ?」
「当たり前だろう」
「なら良いけどな……」
ユートはその手に漆黒をベースとした大剣を顕して構える。
「何だ? どっから出てきたんだ? ってーか、随分と物騒な見た目だな!」
「奴は神の木偶。故にエヒトルジュエは奴らに対して光の属性を帯びさせている」
「光の属性だと?」
「神が遣わす天よりの使者、オタク界隈でなくとも闇より光だろうからな」
「それで?」
「この剣の銘は『魔剣アルハザード』といって、嘗て闇の皇子ボーゼルが揮った暗黒の剣だ」
「つまり、闇の属性って事か?」
「そう、光に属するからには奴らに対し特効が付くから普通よりダメージが入る」
【ファイアーエムブレム】を想像すれば解り易いかもだが、特効武器を持って攻撃すれば攻撃力が上昇するのである。
これにより、神剣ファルシオンはメディウスに大ダメージを約束してくれた。
このアルハザードは【ラングリッサーⅤ】から視て約一五〇年後、何故かラングリッサーと同じ場所へと捨て置かれていた物。
ユートはこの二振りを拾っていた訳だが、一度は過去へと遡行して再び同じ時間軸の別世界線と成った時代に戻り理解する。
あれはユリアが聖剣ラングリッサー、ゼルダが魔剣アルハザードと成ったのだ……と。
一巡目では世界が滅びて聖剣も魔剣も使い手が居なくなったらしく、今や聖剣の魂ユリアと魔剣の魂ゼルダに邂逅した結果としてユートが真なる使い手となっている。
どうやってかは……まぁ、いつもの手練手管を用いての事だと述べておこう。
「神の木偶、貴様らが【解放者】と闘った時代には無かった暗黒の魔剣アルハザードの味をたっぷりと味わえ!」
ユートはドライツェーンを視ながら不敵に笑みを浮かべるのであった。
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ランモバやっているからリアルに情報が入ってくるけど、永遠神剣とかは情報が忘却しつつある記憶から殆んど引っ張ってきてます。
聖なるかなはやろうと思えば出来ますが……
勇者(笑)な天之河の最後について
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原作通り全てが終わって覚醒
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ラストバトル前に覚醒
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いっそ死亡する
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取って付けた適当なヒロインと結ばれる
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性犯罪者となる