ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 ギリギリ書けました。





第10話:封印されている女の子?

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 八重樫 雫は八重樫流の道場を運営する一族の娘、だけど若し彼女の才能というのがせめて普通ならば、今現在の八重樫 雫は無かったに違いない。

 

 だけど彼女の才能は半端なモノではなかった。

 

 結果として八重樫流道場で剣の道を突き進む。

 

 仮令、八重樫 雫本人は可愛い物が大好きな実に、実に女の子らしい趣味を持っていたとしても。

 

 部屋が実に今時の女の子を体現していても……だ。

 

 そして後輩は疎か同級生からも『御姉様』呼ばわりされ、ソウルシスターズなんていう頭のおかしな集団が居てもである。

 

 心の中では女の子の夢とまで云うか、お姫様願望を持っていて『護られたい』と思っている。

 

 だけど実際はどうか?

 

 莫迦な幼馴染みの尻拭いでオカン体質が身に染み、剣道が強くて美少女なだけにアホな後輩や同輩や先輩が湧いていて、護られる処か真逆の立ち位置に居た。

 

 まぁ、幼馴染みに救われてはいたのかもだが……

 

 子供の頃に『あんた、女だったの?』なんて言われた事もあり、美少女なりに色々とあったのである。

 

 とはいえ、ある意味では護られたいという望みは、叶ったと云えるだろう。

 

「あああっ!?」

 

「し、雫ちゃん!」

 

「八重樫さん?」

 

 突然叫んだ八重樫 雫、白崎香織も愛子先生も心配そうに見ると……

 

「嘘!」

 

「や、八重樫さんが!?」

 

 石化していた。

 

 ビキビキと乙女の柔肌が硬い灰色に変わっていき、痛みを感じているのか悲痛な叫びを上げている。

 

「其処か!」

 

 グサッ! 短剣が蜥蜴みたいな魔物の頭を貫いた。

 

 ビクビクと痙攣しながら命の灯火を消される。

 

「ったく、早速の足手纏いって訳かよ!」

 

 ユートは金色の針を取り出すと、石化していた腕に躊躇い無く突き刺す。

 

「あっ!」

 

 痛みは無い筈だが針を刺された感覚はあったのか、八重樫 雫は思わず声を上げてしまう。

 

「石化が解けた?」

 

 驚く白崎香織。

 

「【金の針】という対石化アイテムだ」

 

 使い捨てだが大して高額という訳でもない。

 

「兎に角、落ち着ける場所でヤりたいから移動してるんだが、足手纏いにはならないでくれよ」

 

「そう言われても……」

 

 正直、三人は別にヤりたくは無い訳で。

 

 だけど戦闘に秀でている剣士の天職持ちで、しかも実家の道場で基礎からやっている八重樫 雫があんなボロボロに、それも雑魚も同然で完膚無きまでに斃される様な場所に置いていかれてしまっては、仮令それが半月程度でも気が狂いそうになる。

 

 況してや、ユートが迎えに来なかったら餓死してもおかしくないから、付いて行くしか手は無かった。

 

 その代償が肢体で支払えというのは、やはり女の子としては初めては好きな男を相手に……とか夢見たくはなるもの。

 

 果たして命の代価として安いのか高いのか、三人にはその判断は付かない。

 

 だけど、少なくとも白崎香織には好きな相手が居るから、それを鑑みればどうしても理不尽に感じた。

 

「怪我は無いか?」

 

「な、無いわ」

 

「そうか」

 

 ドキリと胸が高鳴る。

 

 可愛い物が好きで護るより護られたい、お姫様気質な八重樫 雫にとって先程のやり取りは理想的だ。

 

 ソウルシスターズが蔓延る八重樫 雫の周囲的に、どうあってもお姉様という護る者となりがちであり、現勇者(笑)の暴走に頭を痛めるオカン体質も、やはり自らを追い込んでいた。

 

「然し、デバフ系が来たとなると厄介だな」

 

「デバフ系って、さっきの石化みたいなのよね?」

 

「ああ、その通りだ」

 

 ユートは頷く。

 

「さっきのは蜥蜴っぽかったからバジリスクモドキ、という程には強くないか」

 

 本当にバジリスクなら、それなりに強いとユートは考えるし、そもそもにしてこの世界の魔物なのだからバジリスクそのものな筈もないだろう。

 

「そういうアイテムって、何処から持ってきたの?」

 

「別世界に行った時に買った物を、僕が再現したりしているんだよ」

 

「別世界?」

 

「そう、ゲームとか漫画……“みたいな”世界が有ってね。此処もそんな世界の一つだろうに」

 

「まぁ、ファンタジー世界とは云えるかな?」

 

「八重樫に使った【金の針】もそんな一つ、石化解除専用のアイテムだよ」

 

「限定的なのね」

 

「使い捨てで高価な物でもないからな」

 

 ファイナルファンタジーと呼ばれる世界観が有り、カオスや皇帝や暗闇の雲やゼロムスやネオエクスデスやケフカやセフィロスなどといった存在と戦った。

 

 そんな世界で、だいたい使われている石化解除するアイテム、【金の針】を手に入れたら複製をしない筈もないだろう。

 

 世の中には様々なデバフがあり、石化は普通の世で受ける事など無い。

 

 某石化世界とかならまだしも、メドゥーサが現存するとかでなければ。

 

 だけどユートの居る地球では有り得る話、なら必要なアイテムであろう。

 

 八重樫 雫は四歳の頃、剣才を発揮してしまってから始まった日々、フリフリな服を着たいとかキラキラなアクセサリーが欲しい、そんな女の子としての欲を抑えるという。

 

 天之河光輝も見た目に反して王子様足り得ない中、漸く逢えたのが肢体だけを要求する人物とか、八重樫 雫は泣いても良い。

 

 どんどん下に降りていく中で、ユートは確実に魔物を屠っていく。

 

 散弾銃の如く羽を飛ばしてくる梟モドキ、これに関しては普通に流星拳で対処をしていた。

 

 小宇宙は異世界であるが故に使えないが、単に音速の拳ならば身体能力だけでも放てるからだ。

 

 極限までに鍛え上げて、更にはカンピオーネとなったが故の強化、出来ない方が寧ろおかしいレベル。

 

 勿論、バジリスクっぽいのと含めて食肉として美味しく戴きました。

 

 タウル鉱石やフラム鉱石など、興味深い鉱石類などの採取も忘れない。

 

 ユートはこれでも工房を持つ錬金術士である。

 

 素材の採取はアトリエ系錬金術士の基礎だった。

 

「【フラム鉱石】……艶のある黒い鉱石で熱を加えると融解しタール状になる。融解温度は摂氏五〇度程であり、タール状の時に摂氏一〇〇度で発火する。その際の熱は摂氏三〇〇〇度に達する。燃焼時間はタール量による……か」

 

 上手くやれば火薬の代わりにはなりそうだ。

 

「うん? 魔物か!」

 

 気配察知系のスキルなら反応しないスキルを持っていそうだが、ユートがやっていたのは【円】である。

 

 身体を覆うオーラを拡げる事で、それに触れた存在を感知する事が可能。

 

「はっ!」

 

 襲って来たのは鮫モドキな魔物、タールの中を泳いできたらしい。

 

 首を斬って殺した。

 

 鮫モドキの表皮は斬った感触から、物理的な衝撃を緩和する特性を持っていたみたいだが、そんなの全く以て関係は無い。

 

 薄く鋭く唯斬るのみ。

 

 とはいえ、どの魔物にも云える事が有るとすれば、八重樫 雫では一〇〇%勝てないという事。

 

 一応、アーティファクトのシャムシールっぽい剣を抜いているが、そもそもにして反応すら出来てない。

 

 休憩中、愛子先生からのお話がしょっちゅうある。

 

 勿論、愛の囁きだとか甘いお話ではなくOHANASHIの類いだ。

 

「聞いてるんですか!?」

 

「聞いてる聞いてる」

 

 けんもほろろなユートにバンバンと地面を叩き……

 

「痛いですぅ!」

 

 泣き言を叫んでいた。

 

「その、年頃だからそういう行為をしたいというのは解りますが!」

 

「先生も?」

 

「違います! ですから、白崎さんも八重樫さんも、将来的な事があります! ですから対価とか言わないでもう少し……」

 

 どうも一応は対価を支払うしかないと考えたけど、やはり完全に納得はしてないみたいで、こうして休む際にガーガーと怒濤の文句だった。

 

「ある魔女は言いました。与えられたモノには須く、それに見合うだけの代償、対価が必要。与え過ぎてもいけない、奪い過ぎてもいけない。過不足なく対等に均等に……でないとキズが付く。現世の軀に、星世の運に、天世の魂に……と」

 

「それは?」

 

「果たして先生や白崎達の命と貞操、比べて重いのはどちらなのかな?」

 

「うっ!」

 

「寧ろ、貞操で済ませているのを有り難がれ……とまでは言わないが、決めたなら文句を言うのは大人としてどうかと思うがね」

 

「うぐぅ……」

 

 ぐぅの音しか出ない。

 

 確かに命有っての物種、それは確かであるから。

 

 処女を守って死ぬというのも手だが、助かりたいと願うならどちらも守りたいが通じる訳が無い。

 

 最低限、ユートを相手にそれは甘い考えだろう。

 

「もう、面倒だからさっさと喰ってしまおうかな?」

 

「……え゛?」

 

「いつまでも処女だから、文句を言えるんだからな。さっさと処女を散らしたら文句なぞ言い様も無いし」

 

「あわわ!?」

 

 まるで、あわわ軍師みたいに腰が引けていた。

 

「もうちょい良さげな場所に出て、確りとした拠点を作った上で汗だくは嫌だと思ったから、シャワーくらいは浴びさせてやろうかと気遣った心算だったけど、こうも喧しいんなら気遣う必要も無いだろうしな」

 

 などと脅してやったら、白崎香織も八重樫 雫も首を思い切り横に振る。

 

「或いはアブノーマルに、行き成り『尻パイル』的な感じに、僕の最大限に勃起したモノを先生らの菊門からブスリ! と」

 

「お願いだから普通に……普通にシて! もう流れが止められないなら、せめて良い想い出に!」

 

 尻パイルは嫌だったのか八重樫 雫、涙目になりながら切に! 切に訴えた。

 

 白崎香織も覚悟自体は決めている。

 

 ユートの言う『始まりの四人』というキツい言葉、それはクラスメイトや先生を戦争に駆り立てた自分を含む勇者パーティの事。

 

 あの不良に絡まれていたお婆さんと子供、二人の為に土下座を繰り返した優しい『南雲君』を痛ましい争いの渦中に放り投げ最早、白崎香織がハジメに好意を向ける資格が無いと考え、ハジメに上げられないなら処女なんて、有っても虚しいだけでしかない。

 

 だから喪失して肉体的にも精神的にも、痛い思いをして謝りたかった。

 

 白崎香織は天然だから、何処かズレているらしい。

 

 そんな事で謝罪にも贖罪にもなりはしないのだというのに、単に罰を欲しているに過ぎないのであろう。

 

「さて、行くぞ」

 

「待って!」

 

「何だ?」

 

「やっぱり栄養ゼリーだけだとちょっと……」

 

 お腹に溜まらないというのは理解している。

 

 何故ならユートの学校での昼食は、優花が弁当を持って来てくれなかったなら普通に栄養ゼリーだから。

 

「あのね、私はご飯を作れるから対価! 食材を提供してくれたら私が美味しいご飯を作ります!」

 

 流石に耐えかねたのか、白崎香織も必死だった。

 

「ま、良いけどな。抱く時にガリガリなのもアレだ。僕は特殊な性癖なんか無いからね」

 

 合法ロリは好きだが……

 

 取り敢えず普通の釜や、鍋や包丁やまな板といったキッチン用具、そして普通の動物の肉に野菜に白米、味噌や醤油やマヨネーズといった必須食材などを提供してやる。

 

 結果として全員が懐かしいとも云える、日本食というものを心行くまで食する事が出来るのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「拙いな」

 

「え、何が?」

 

「この先のフロアは毒で満たされている」

 

「毒ぅ!?」

 

「ああ、薄い毒霧で覆われているから君らが入れば、命は無くなるな」

 

「そんな……」

 

 八重樫 雫は鬱ぎ込む。

 

 この先に行けなければ、帰れないという事。

 

 当然ながら、白崎香織も愛子先生も青褪めていた。

 

「仕方がないか」

 

 ユートは翠色の鉱石を、アイテム・ストレージから取り出した。

 

「グランツ鉱石じゃない、どうして緒方が?」

 

「あのクズがトラップに掛かった際、序でに引き寄せてアイテム・ストレージに入れておいたんだよ」

 

 ユートの権能にスサノオから簒奪した【我が右手が掠め盗る(トリック・オア・トリート)】が有る。

 

 この権能なら視認したり何らかの認識さえしたら、自らの右手の中に掠め盗る事が可能だった。

 

「それをどうするのよ?」

 

「君らに首輪を着ける」

 

「「「は?」」」

 

 行き成り意味不明な事を言われて、どう返事をしたら良いのか迷う。

 

「正確には僕が創る首輪に対デバフを付与する」

 

「……それが、首輪である理由は?」

 

「性奴隷っぽくて興奮する……からかな?」

 

「何でやねん!」

 

 最早、ツッコミ処しかない科白であったと云う。

 

 いずれにせよ対毒装備も無しには進めない訳だし、已むを得ずグランツ鉱石製の首輪を受け容れた。

 

 折角のグランツ鉱石が、性奴隷用の【隸属の首輪】に化けるとか、二〇階層でこれを見た時には思いもよらない結末だろう。

 

「因みに、グランツ鉱石じゃないんだけど、身体能力アップに各属性魔法軽減にデバフ無効化の複合効果付きアクセサリーを、大迷宮に入る前に優花パーティへとプレゼントしている」

 

「この扱いの差よ」

 

 八重樫 雫は嘆きたくなるのを必死に押さえた。

 

 取り敢えず、毒のフロアに足を踏み入れる事が可能となった為、早速フロアへ入ってみる四人。

 

「うわ、現れたわね」

 

 虹色の蛙。

 

「死んどけ」

 

 ドパン! ユートが電撃を帯びた状態で指先にて、コインを弾き飛ばした途端に虹色蛙は頭が吹き飛ぶ。

 

 とある電撃姫が得意としているレールガン。

 

「本当に色んな技があるって訳ね……」

 

 呆れる他に無い。

 

 今度は飛んでる昆虫……でっかい蛾である。

 

「モスラ?」

 

「わぁ、歌いたくなるね」

 

「呑気ね、香織は」

 

 モスラっぽい蛾の魔物が鱗粉をバラ撒いてくる。

 

「効果は麻痺か。僕に効く筈も無いけどな!」

 

 再びドパン!

 

 超電磁加速砲が再び火を噴いた形で、モスラ擬きがバラバラに吹っ飛んだ。

 

「直接は食いたくないな」

 

 誰だって蛾なんか口に入れたくは無かろう。

 

「ま、錬金術で丸薬にするから問題も無いな」

 

 それに食べるのはユートという訳ではない。

 

 更に降りたら密林。

 

「此処は迷宮の筈なのに、何で密林が有るのやら」

 

 巨大な百足が樹の上から降ってきた。

 

「きしょいわ!」

 

 ドパン! してみたが、節から別々に分かたれての攻撃行動。

 

「ちぃ、面倒な!」

 

 分裂百足が分かれた侭、ユートだけでなく後ろに控える三人にも、普通に攻撃を仕掛けてくる。

 

「やらせるか!」

 

《KAMEN RIDE DECADE!》

 

 仮面ライダーディケイドへと変身すると……

 

《ATTACK RIDE CLOCK UP》

 

 仮面ライダーカブトなどに変身せず、ディケイドの侭でクロックアップ。

 

「おりゃぁぁぁぁっ!」

 

 目にも留まらぬ迅さでの加速をし、ユートは手にしたライドブッカー剣モードで次から次へと斬り裂き、一気呵成に分裂百足を追い詰めて殺してやる。

 

 歩を進めると次に出たのが樹の魔物、トレント擬きという訳であった。

 

「これは、蔓か!」

 

 まるで鞭を揮われている気分となる。

 

「死ねや!」

 

 ドパン! と、電磁加速砲が火を噴いた。

 

「うん? 真っ赤な実?」

 

 危機に陥った生存本能故にか、真っ赤に染まった実を落としてきた。

 

「食えるかな、食えるかな……ゲット」

 

 早速、実にかぶり付く。

 

 瑞々しく美味しい甘味が口の中に広がった。

 

「美味いし毒も無いな」

 

 西瓜みたいな味の果実、お土産としてアイテム・ストレージに仕舞い、残りは留守番待機中の三人に食わせる事にした。

 

 折角だからトレント擬きが全滅するまで狩尽くす。

 

 そしてハーフポイント、即ち真なるオルクス大迷宮の五〇階層であった。

 

 やはりいつもとは違い、脇道の突き当りにある空けた場所に、高さ三mの装飾をされた荘厳なる両開きの扉が有り、その扉の脇には二対な一つ目巨人の彫刻が壁に埋め込まれるかの如く鎮座している。

 

「まぁ、動くんだろうな」

 

「動くわよね」

 

「うん、動くよね」

 

「動きますね」

 

 ユートへと追従をするかの様に、八重樫 雫と白崎香織と愛子先生が口々に。

 

 扉の前まで行かないと、どうやら動かないらしい。

 

《ZERO ONE DRIVER!》

 

「ネオディケイドライバーじゃない?」

 

「自己主張が激しいね」

 

 やはりズレた感想を持った白崎香織。

 

「プログライズキー」

 

 先ずはプログライズキーをバックルへ近付ける。

 

《AUTHORIZE》

 

 黄色いプログライズキーが認証された。

 

 トランスロックシリンダーのロックが解除されて、ライジングホッパープログライズキーの展開をして、キーモードとなったそれを手にした侭ポーズを取る。

 

「変身っ!」

 

 ライズスロットへ装填。

 

《PROGRIZE!》

 

 左側のライズリベレーターが展開され、プログライズリアクタが解放された。

 

《TOBIAGARIZE RISING HOPPER!》

 

 黄色い飛蝗型ライダモデル顕れると、ユートに合着するかの様に飛び上がる。

 

《A JUMP TO THE SKY TURNS TO A RIDER KICK!》

 

 黒いアンダースーツに、黄色のアーマーで仮面すらも黄色の赤い複眼、飛蝗をモチーフとした仮面ライダーゼロワン・ライジングホッパーと成った。

 

 戦闘準備は完了した為、扉へと近付いてみる。

 

「窪み……何かを入れるみたいだな」

 

 中央には二つの窪みがある魔法陣、両開きの豪奢な扉を開くのに必要みたいではあるが、流石に手掛かりが少な過ぎた。

 

「よくは判らんが力尽くでやってみるか?」

 

 取り敢えず思い切り力を籠めて押してみる。

 

『オォォオオオオオオ!』

 

 突然の雄叫びと共に扉の両横の彫刻が動き出す。

 

「わぁお、御約束だな」

 

 一つ目巨人、サイクロプスというやつであろう。

 

《Attache case opens to release the sharpest of blade》

 

「アタッシュケース?」

 

 八重樫 雫が首を傾げるけど、ユート――仮面ライダーゼロワンは構わないで展開する。

 

《BLADE RIZE》

 

 アタッシュカリバーブレードモード、再びアタッシュモードへと変形。

 

《CHARGE RIZE》

 

 また展開。

 

《FULL CHARGE!》

 

 この一連の行動により、アタッシュカリバーに攻撃エネルギーが収束。

 

「喰らえ!」

 

 仮面ライダーゼロワンが振り被り、一気にアタッシュカリバーを振り下ろす。

 

《KABAN STLASSH!》

 

「おりゃぁぁぁっ!」

 

 黄色の斬撃が動き出してすぐのサイクロプス〈右〉を襲い、真っ二つに斬ってしまった。

 

「悪いが動き出すのを待つ心算も無くてな」

 

 アタッシュカリバーを手放し、今度はゼロワンドライバーのライズスロットに刺さるプログライズキーを押してやる。

 

《RISING IMPACT!》

 

 ベルトから鳴り響く電子音声と共に、今度は右脚にエネルギーが収束された。

 

「お前を止められるのは、唯一人……僕だ!」

 

 ジャンプして蹴りの体勢に入り、仮面ライダーゼロワンはサイクロプスを殺すべく襲撃する。

 

「てりゃぁぁぁぁあっ!」

 

 仮面ライダーゼロワン・ライジングホッパーによる必殺技、ライジングインパクトがサイクロプス〈左〉の目玉を貫いた。

 

『グギャァァアアアッ!』

 

 結局、サイクロプス共は何もさせて貰えない侭に、仮面ライダーゼロワンによって殺された。

 

「この魔石は……自身こそが鍵だったって訳かよ」

 

 形からして扉の窪みへと入るみたいだ。

 

 鍵の作用か、両開きの扉が重苦しい音と共に開く。

 

 開かれた扉の奥は光一つ無くな真っ暗闇が拡がり、内部はどうやら大きな空間になっているらしい。

 

 夜目は利くからだいたいの事は見えて判る。

 

 中は聖教教会の大神殿で見た大理石の様な艶やかでツルツルな石造りであり、太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。

 

 部屋の中央付近には巨大な立方体が置かれており、光沢を放っているそれにはナニかが生えている。

 

「何なんだろうな」

 

 一応、危なかったら困るので三人は置いてきた。

 

 生えているそれは人型、長い髪の毛を持った小さな人型が、立方体に下半身と両腕を埋め込まれている。

 

「女の子……だよな?」

 

 身体の線や胸元が僅かに脹らみを見せているから、男という可能性は限り無く低い……筈だ。

 

「……だ、れ?」

 

 その人型はやはり女の子らしく、可愛らしい声で訊ねて来るのだった。

 

 

 

.




 予定より早くゼロワンを出してみた。


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる

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