ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

110 / 133
 アニメ第三期……来ないかな~?





第106話:ありふれたシュネー雪原

.

 オプティマスプライムに転移で戻ったユートと『界穿』にてやって来た、シモン・L・G・リベラールとシビル・L・G・リベラールという祖父と孫娘の関係性の二人。

 

 信じ難い話を聴かされたこの二人は真実を確かめるべく付いて来た訳だが、ユートが元ハイリヒ王国の王女たるリリアーナの御印を持っていたのが一応の信用を勝ち得た理由。

 

 約一〇年前のランデル元王子が誕生する前後、未だ四歳に過ぎなかったリリアーナの話し相手をしていた事もあるシモン、御印と共に持たされた手紙も相俟って信じるより他無かったのだ。

 

 因みに、その一〇年前にシモンは砂漠へ左遷をされてしまったのだけれど、理由が亜人族を擁護する発言を見咎められてしまった為である。

 

 その所為で王女の話し相手としてシモンは不適格とされたらしい。

 

 今はもう王女では無いと聞いては居たのだが、それならそれで今一度会っておきたかった。

 

「おお、姫様!」

 

「シモン様、私はもうハイリヒ王国の姫ではありませんわ。ですから唯のリリアーナとして接して下さいませ」

 

「む、然しですな」

 

「ハイリヒ王国は滅亡しましたわ。愚弟と莫迦な貴族がユートさんに刃向かったが故に」

 

「ユート殿……ですか……」

 

 今は先祖の姉とやらを連れに行ったユートの事を思うシモン、そして大変な部位を視られてしまって『お嫁に行けない』と古めかしい事を考えているシビルも、矢張り違う意味合いではあるけどユートの事を思っていた。

 

 聞いた話ではこの空飛ぶ船オプティマスプライムには、ユートが見出した【閃姫】と呼ばれている謂わば恋人とか嫁さんとか称される存在が沢山居るらしく、しかもどうやらリリアーナ姫さえもそんな中の一人であるらしい。

 

 とはいえ、ユートが言った通りならその身分は真皇という皇帝とか国王と同義なれば、側室とかが両手両足の指では足りないくらいに居たとして何もおかしくはなかった。

 

 事実として、ハイリヒ王国のエリヒド元国王は隣にルルアリア王妃のみを立たせてはいたけど、ヘルシャー帝国のガハルド元皇帝はそれこそ数多くの側室や妾を侍らせていたとか。

 

 王侯貴族なら常にそれは存在するし、ユートも皇族ならばこれも普通なのであろうとシモンは考えるしかない――爆ぜろとは思うけどな!

 

(爆ぜろリア充、弾けろ下半身!)

 

 などと不穏な事を考えている辺り、シモン老は未だに下半身が現役なのかも知れない。

 

 まぁ、少なくとも()()()()にシビルの親を創ったのは間違いあるまいが……

 

 ユートがスーシャを正装に近い服を着せてやってから連れて来る。

 

「おお、貴女が?」

 

「スーシャ・リブ・ドゥミバル。貴方達の先祖になる筈のユンファ・リブ・ドゥミバルの姉に当たります」

 

「儂はシモン・リブ・グリューエン・リベラールと申す者」

 

「私はシビル・リブ・グリューエン・リベラールになります」

 

「リブ……グリューエン……ナイズ様とユンファの子孫……ウウッ!」

 

 感極まってか、スーシャは二人の名乗りを聞いて泣いてしまったのは無理もあるまい。

 

 その名乗りは頭文字ではなく普通に。

 

「やれやれ、既に対価は支払って貰っていたからちゃんと残ってくれていて良かったよ」

 

「ちょっ、この時代に子孫が居ない可能性があったっていうのに対価を先払いさせたの!?」

 

「居ない可能性に関しては予め伝えてあったよ。とはいえ彼女の望みの一つの為にも対価っていうか抱くのは必要だった」

 

「何でよ?」

 

「スーシャの望みは強くなる事。即物的に強くなるならライダーシステムを渡すのが手っ取り早いけど、知っての通り僕は通常だと身内以外にアレらを渡したりしない」

 

「そうね……」

 

 坂上龍太郎みたいな例外はあるにしても基本的には身内――男なら親友クラス、女なら【閃姫】か【準閃姫】クラスには成って貰いたい処だ。

 

 ハジメと浩介は親友クラスの仲だったからこそライダーの力――仮面ライダーアギトと仮面ライダーシノビの力を渡したのである。

 

 尚、【準閃姫】とは以前まで【半閃姫】と呼んでいたり【仮閃姫】と呼んでいた者を纏めた感じになっていて、ユートも半分だとか仮称というのもどうかと考えこの呼称に変えていた。

 

「身内にする為?」

 

「否、違う。雫達も知っての通りで僕に抱かれると処女・非処女に拘わらず身体能力が上がる……勿論だけど僕がそうしたいと望めばの話だがね」

 

「私達みたいに?」

 

「そうだよ」

 

 少なくとも【閃姫】契約をしているメンバーは身体能力の強化が成されている、とはいうものの強化率は【閃姫】契約をする前段階のそれであると実際に大した事は無かったりするけど。

 

「抑々の話が僕の抱いた相手が強化されるというのは副産物なんだよ」

 

「副産物?」

 

 鈴が小首を傾げる。

 

「僕はハルケギニアで使い魔召喚して覇王将軍だったシェーラを喚び出し、契約をした時点で寿命による死は無いと言っても過言じゃないんだよ。得られたルーンは『共生』、シェーラが精神生命体だった関係からルーンは僕の魂に刻まれてる。つまり転生しようがどうしようが僕は殺されない限りは死なない不老長寿、だけど抱いた相手には同じ時を生きて欲しいと願う。例令、それが僕の我侭に過ぎなくても……な」

 

「それで強くなるというのは?」

 

 鈴と同じく首を傾げるシア。

 

「寿命は延ばせるが、問題は単に延ばしてみても女の子達の肉体には限界が出る。それに延ばされた寿命に精神が保たなくなるだろう」

 

「……精神が?」

 

「ユエの場合は初めから精神と肉体が合致していたから問題無いし、元々が長寿のティオみたいな場合も問題が無いだろうが、本来の寿命を超過するというのは精神にクるんだ。恒常性――所謂、ホメオスタシスってやつだな」

 

「ホメオスタシス……ですぅ?」

 

「恒常性では解り難いか、謂わば変化しない事を意味している。転じて常態を保つ事だ。生命体で云えば『生体恒常性』、体外での変化に拘わらず血糖や体温や免疫などを一定へと保つ機能だね。その恒常性は生物が最大限の寿命を越えて生きる事を許さないのさ」

 

「成程、だから精神から強化しないといけないって話に繋がる訳ね」

 

 雫が理解を示す。

 

「僕が知る中でも延命調整をしたのは良いけど、一五〇歳を越える前に死にたいと夫に申し出たってのがある。肉体的には若くても精神的には老成してしまい耐えられなかったんだ」

 

「そういう事例もあるのね」

 

 尚、これはユートの来世での祖父たる遙照の事で相手は彼の母親たる船穂の妹の娘、遙照からしたら血縁上では従妹に当たるかすみの話だ。

 

 かすみの死後、寂寥感を感じていた遙照は久しく連絡をしていなかったアカデミーに居るであろう親友に連絡をしてみたら、何故かアイリ・マグマが居た上に自分を『お父様』と呼ぶ美少女までが居て色々と頭を抱える羽目に。

 

 その美少女こそアイリ・マグマが産んだ娘で、その名を『柾木水穂』であったと云う。

 

 それは兎も角……

 

「つまる話が延命調整をする為に肉体的や精神的に『調律』をするんだよ」

 

「それがユートに抱かれ、ユートが望んだ相手に与えられる強化の正体って訳かぁ」

 

 どうやら雫はこの話に納得したらしいし、他の【閃姫】達も『成程』と頷いているのだが……

 

「香織は納得してないの?」

 

「雫ちゃん……納得はしたんだけど、ゆう君に訊きたい事が出来たかな」

 

 と言いつつ香織がユートを見遣る。

 

「ふむ? この際だから答えるぞ」

 

「じゃあ……その強化っていうか『調律』っていうのは素材やエネルギー無しに出来るのかな?」

 

「ほう、中々に鋭い質問だ」

 

 ユートは感心しながら口を開いた。

 

「多分、香織には何となく答えは判っているんじゃないかな? 答えは君らの子宮に吐き出された僕の精液や精子だよ」

 

「矢っ張りか~っ!」

 

 触媒みたいなものだが……

 

 勿論だが【閃姫】契約に関してもユートが吐き出した精液や精子を触媒に『調律』をしており、

内部に含まれた膨大なるエネルギーを使っているのは間違い無い。

 

 何しろ溢れ出るくらい大量に相手の胎内に納まっているのだし、これを利用しない手は無いのだと謂わないばかりであったのだと云う。

 

「で、スーシャさんとはもうシたのよね」

 

「元々が好きな男が居たんだから気が変わったら

アレだしな」

 

 それ故にスーシャは自己嫌悪と快楽の板挟みとなっており、それに加えて僅か数発とはいえ性の営みによる疲労もあって眠っていた。

 

 初めての胎内への受け容れと初めての痛みと初めての絶頂、唇同士のキスすら初めてであったから殆んどの初めてをユートが奪った形となる。

 

 数千年だか一万年だかはカウントをしないとしても、約三年間に亘るスーシャのナイズに対する初恋は確かな終焉を迎えるのだった。

 

 とはいっても新しい恋に生きようと思える程にナイズへの想いは弱くなくて、だからこそ強引なユートを受け容れる事であの熱く燃える様な切なく甘酸っぱい初恋を終わらせたのである。

 

 勿論だけど葛藤は有ったのだ。

 

 ユートは数千年~一万年は経過している可能性が高いと言うけど、スーシャからしたらこれは僅か数日前の話だったのだから。

 

 そんな状態で他の男に股を開き咥え込むなど、まともな思考なら出来る事では無かった。

 

 ビッチな淫乱女であるならまだしも、スーシャはナイズ限定であれば幾らでも淫乱になれるであろうが、普通に見た目相応の性的倫理観――但しユンファとならナイズを分け分け出来たけど――を持ち合わせているのである。

 

 スーシャはユートが好きな訳では決して無く、当然だが愛情なんて全く以て感じてはいない。

 

 ヤっている時なんて目を閉じてナイズの顔だけを網膜に映し、心の中で『ナイズ様ナイズ様』とナイズに抱かれている妄想で乗り切っていた。

 

 とはいえ嫌ってもいなかったりする。

 

 可成り気を遣って貰っていたのは理解するし、最終的に破るまで止めるか否かを選択させようとしてくれて、アソコまでギンギンにしていたなら相当に辛くて早く挿入して欲望の侭にヤりたい筈なのに、飽く迄もスーシャの『自由な意思』というものを尊重しようとしてくれた。

 

 それとヤっている真っ最中、殆んど痛みを感じずに快感だけがスーシャの全身を駆け巡ったし、最初の一発目から絶頂で頭が真っ白になってしまって『ナイズ様』の事が掻き消えてしまう程。

 

 最終的にはまな板の上の魚の如く致されるだけ致され、ユートが五発を射精するまでにスーシャの絶頂回数は七回とユートより多かった。

 

 確かに多くの彼女を持つ事を聞いてはいたが、それが必ずしも性行為の巧みさに繋がる訳ではないからには、どれだけヤってきたのかちょっとだけ聞きたい様な聞きたくない様な複雑な気分。

 

 決定的だったのは最後に見た最中のユートの顔に心臓を高鳴らせてしまった事。

 

 本来、ある一定の愛情を持たないと【閃姫】契約は不可能だから、ユートはスーシャとの契約へと漕ぎ着けるのは矢張り無理と判断していたが、この一瞬の出来事にその一定値を振り切った為に【閃姫】契約が可能となっていた。

 

 ユートもまさか出来るとは思わなかったけど、可能ならやっておくべきだろうと契約する。

 

「パワーアップはしたのよね?」

 

「ああ、彼女はこの世界の人間だから月奈達みたいにステータスプレートがerrorにならなかったから見てみたが、レベルは10以下でステータス値も軒並み20以下で天職も無しだったんだけど、ステータス値は一気に勇者(笑)の本来のマックスより高くなったな」

 

「光輝のステータス値の本来のマックスって確か1500だったかしら」

 

「ああ。レベルが100になったからこれ以上は上がらんと思ったけどな、【閃姫】契約をしたらレベルが『?』で数値が数倍になった」

 

「それってもう仮面ライダーくらい強くなっていない?」

 

「どうも自覚が無いみたいだけど、雫や香織達だって【閃姫】契約をした時点でスーシャよりも強くなっているからな?」

 

 ハッとなるのは雫だけではなく香織や鈴も同じくガバッとと顔を上げ、無くさない様に仕舞っていたステータスプレートを見てみる。

 

「うわっ、ホントだよ」

 

 鈴のレベルは矢張り『?』と化してしまっていたし、ステータス値にしても軒並み10000を越えているのが判った。

 

「まぁ、兎人族の私ですら元々の数値を凌駕しちゃってましたからね」

 

 シアは魔力を中心に筋力なども大きく上がっていた為、実は生身でも相当な強さをえているけど仮面ライダーに成る事で更なるパワーを。

 

「……ん、元の数値が高い分は上がり幅が小さいけど、低い数値は目に見えて上がっていたから私も吃驚した」

 

 ユエも魔力を中心に上がるが、筋力などはシアとは違って其処までは上がっていないにしても、メルド・ロギンスよりは高まっていて闘えば普通に勝ててしまう。

 

「妾もじゃな。竜化せんでも竜化した時より高い数値じゃったわ」

 

 ティオは全体的にこれまでの竜化時点より強くなっており、当然ながら竜化したらそれを遥かに越えてパワーアップする。

 

「あ、三人はもう知っているのね」

 

 ミレディを除くトータス組のユエ、シア、ティオの三人は自分を把握をしていたらしいのだが、雫達はある一定以上になるとステータスプレートを見ていなかった様だ。

 

 尚、雫は速さを中心に、香織はユエやシアみたいに魔力を中心に、鈴は物理的や魔力的な耐久を中心に引き上げられている。

 

「それで、【閃姫】契約をしたんなら身内の扱いなのよね? 即戦力ともなる何を彼女に渡したのかしら?」

 

 バッと一斉にユートに顔を向けてくる辺りこれには全員が気になるらしい。

 

「グランヴェール」

 

「……はい?」

 

「だから、グランヴェール」

 

「四千年で悠久で黄河な?」

 

「ちょっと違う」

 

「違う?」

 

「ア・ゼルス版のグランヴェール、つまりそれは【真・魔装機神】の方だからね」

 

「成程……というより何でロボ?」

 

 てっきり仮面ライダーかと思ったら魔装機神という所謂、ロボットを全くの素人というより機械をまるで知らないファンタジー世界な人間に与えてどうするのか? という疑問。

 

 事実、ユエもシアもティオもミレディも首を傾げるしか無かったという。

 

「あ、何か勘違いしているな」

 

「勘違い?」

 

「言っとくが君らに渡したライダーシステムみたいなもんだからな?」

 

「へ?」

 

「流石にスーパーファミコンとなると判らんかも知れないけど、『ヒーロー戦記~プロジェクトオリュンポス~』ってゲームが在る。これに出てくるラスボスのアポロンが記憶喪失でギリアム・イェーガーが使うゲシュペンスト、これはスパロボの様なロボットじゃなくパワードスーツで着込むタイプだった。これと同じくな着込むゴーレムを前世のハルケギニアでも造ったけど、スーシャへと渡したのは魔装機神系のパワードスーツみたいなモノだな。砂漠出身だからか火属性に相性が良かったからグランヴェールだった訳だ」

 

「ああ、そういう……」

 

 ユートもよく『コール、サイッバッスッタァァァァァァーッッ!』とかギリアムみたいに喚んで装着している。

 

 砂漠なら地属性では? と考える場合もあるかも知れないが、寧ろ砂漠は地属性が火や風に比べると弱いというのは精霊学的な話。

 

「ユートは『ヒーロー戦記』ってプレイした事があるの?」

 

 スーパーファミコンであるのならどう考えても二〇年以上は前のゲームだった。

 

「リアルタイムには無理だよ。二〇一四年に僕は二五歳だったんだぞ? 発売されたのは僕が生まれた数年後、諸々の理由から一応は土地邸持ちな金持ちではあったけど、五歳にもならない子供にコンピューターゲームとか買い与える程に非常識な親では無かったからね」

 

「そりゃ、そうよね」

 

 まぁ、母親の緒方蓉子は双子の片割れを死産している関係からかベタ可愛がりしていて、強請れば息子可愛さに買ってくれたかも知れないが……

 

 因みに当時のユートのお金は親から小遣いを貰う以外だと、祖父の仕事を手伝う事でアルバイトみたいな感じに仕事料を貰っていた。

 

 小遣いが月に二千円、バイト料が一万円だから合計で月に一万二千円だったので買おうと思えば買えたが、当時のユートは身体を動かす方が好きでゲームはしていなかったから買っていない。

 

 とはいえ、だからこそ中学生になるまでに可成りの貯金額でそれなりのサブカルチャーを買えた訳であり、今現在のユートの原典知識に於ける礎となってもいる。

 

 余り持ってはいないエロゲーの知識は悪友から無理矢理に貸し出されたモノを、已むを得ないとプレイした結果として手に入れたものだ。

 

 無理矢理だが【とらいあんぐるハート】を貸し出されてプレイしたからこそ、ユートは後に放映された【魔法少女リリカルなのは】に興味を持って鑑賞したのだから無駄では無かったろう。

 

 そのプレイでアリサ・ローウェル強姦殺人事件を視て『騙された』と憤慨をしたものだったが、その手のシーンは他のナンバリングでも在ったのに行き成り【とらいあんぐるハート3】からプレイしたのが悪い。

 

 因みにだが、このアリサ・ローウェルは別世界から這い寄る混沌の仕業でガリア王国に転生し、実はジョゼットだったユーキと同じ場所に暮らしていた為、蛇遣座の白銀聖衣を与えられて聖騎士の一人として活動をし、原典では鶏の骨呼ばわりされていた教皇の護衛を任されていた。

 

 【魔法少女リリカルなのは】主体世界に於いて平行世界の自分――アリサ・バニングスと挨拶をしてアリサとすずかに驚かれてもいる。

 

「さてと、スーシャはまだ寝ているみたいだからミレディに頼むとしようか」

 

「まっかせて♪」

 

 横チェキしてウインクしながら頷くミレディ、ユートはそんな彼女に頷き返す。

 

「坂上、天之河を連れて来い。愚図るなら置いていくだけだ」

 

「わ、判った」

 

 本音を云えば連れて行きたく無かったのだが、置いていくと煩いだけだから仕方がない。

 

 それに……『探索の中で死ねば良い』のだと、()()()()()()()()()()()()黒い思考が有った。

 

 勿論、直に言ったりしないけど。

 

 数分後には坂上龍太郎が天之河光輝を連れて戻って来た為、ユートは扉というかハッチを再び開いて吹雪く外へと繋げる。

 

「これからシュネー雪原に降りる」

 

「ま、待て! それは飛び降りるって話なのか? だとしたらさっきと同じじゃないか!」

 

「行きたくないなら留守番でもしているんだね、僕は別に強制なんかする気は無いから。寧ろ来るなと言われない事に感謝して欲しいくらいだ」

 

「くっ!」

 

 それはまるで蟲でも視る目。

 

「心配しなくても今回は五〇〇m、さっきからしたら僅か半分の距離に過ぎん。何も成層圏からの飛び降りをしろと言っている訳じゃ無いんだぞ」

 

「五〇〇だと!?」

 

 確かに雪布団がクッションにはなるかも知れないが、五〇〇mという距離に目眩すら感じてしまう天之河光輝を無視してユートが腰にドライバーを巻き付ける。

 

《SEIKEN SWORDRIVER!》

 

 それは横並びに上から差し込む形のスロットが存在するバックル部、そしてまるでバックルこそが剣の鞘だとでも謂わんばかりに右側から赤い鍔の剣が差し込まれていた。

 

 更にユートは右手に見た目は赤いカセットみたいな某かを手にする

 

《BRAVE DRAGON!》

 

 そして開いた。

 

《KATSUTE SUBETE WO HOROBOSU HODO NO IDAI NA CHIKARA WO TENISHITA SHINJUU GA ITA!》

 

 まるで物語る本みたいなそれを閉じてベルトのバックル部、最右端のスロットへとカセット――ワンダーライドブックを装填。

 

「ハッ!」

 

 そして勢い良く剣を抜く。

 

《REKKA BATTOU!》

 

 電子音声が鳴り響きながらワンダーライドブックが開かれた。

 

「変身っ!」

 

 剣身が炎に包まれた剣を斜め十字に振りながら叫んだユート……

 

 《BRAVE DRAGON♪》

 

 詠う様に音声が鳴り響く。

 

《REKKA ISSATSU!》

 

 下半身が白く上半身が黒に赤い縁取りなアンダースーツに、右側にのみに赤い竜の頭を思わせるアーマーを装着した火炎を思わせる黄色い複眼を持った仮面の騎士が此処に爆誕した。

 

《YUUKI NO RYUU TO KAENKEN REKKA GA MAJIWARU TOKI SHINKU NO KEN GA AKU WO TSURANUKU!》

 

 剣舞を思わせる動き。

 

《KAENKEN REKKA!》

 

「仮面ライダーセイバー! ()()の結末は僕が決める!」

 

 そしてズバッと決まるポーズ。

 

「何だかその科白だけ聞いたら転生者っぽくなるわよね……」

 

「つーても、これが仮面ライダーセイバーの実際の決め科白らしいから仕方がないさね」

 

 雫の指摘に苦笑いするしかないユートはこれを造るに当たり、令和も生きた狼摩白夜から聞いた仮面ライダーセイバーの情報の中に決め科白に関するモノもあった。

 

「長い変身シークェンスだね」

 

「音声も長かった」

 

 香織と鈴も感想を口にする。

 

「それじゃ、僕は行くから。坂上、天之河がどうしても愚図るならぶん殴って気絶させておけ」

 

「わーったよ」

 

「りゅ、龍太郎!?」

 

 ユートの言葉にあっさり頷いた坂上龍太郎に対して裏切りを感じたらしい。

 

 全く以て自業自得である。

 

「はっ!」

 

 そして矢張りまるで躊躇いも見せずに出入口から飛び降りるユート、それを見た雫達も仮面ライダーに変身をして飛び降りた。

 

「何で躊躇いもしないんだ?」

 

「緒方が出来ると言った。そして皆が緒方を信じたってだけだろ」

 

「どうして……」

 

「どうしても何も、それだけ信用と信頼を築き上げて来たって事だろうぜ」

 

 口にこそしなかったが、『向こうでお前が得ていたもんだろう』と哀し気に思ったと云う。

 

 ユートが言っていた――『天之河はトータスに来るべきでは無かったな』……と。

 

 現状を視て坂上龍太郎はよく理解した。

 

「ほれ、行くぞ光輝」

 

「ぐっ、だが……」

 

「雫も香織も、それ処か鈴まで飛び降りたんだ。俺らが行けねーなんてどうよ?」

 

「わ、判った」

 

 それでも見捨てられない、坂上龍太郎にとって天之河光輝はユートにとってのハジメや浩介で、即ち親友という間柄なのだから。

 

 逡巡する天之河光輝は曲がり形にも勇者だとは思えない勇気の無さだった。

 

 何とか飛び降りた天之河光輝はズボッとギャグの如く自分の姿を跡に残して雪に埋まる。

 

「さむぅぅぅぅっ!?」

 

 普段着の侭だったから天之河光輝が寒さに震えながら叫んだ。

 

「おわぁぁぁああああっ!」

 

 序でに坂上龍太郎も。

 

「いやいや、坂上はクローズチャージに変身しろよな? 何で生身の侭で飛び降りたし。僕の造った物は基本的に耐熱性耐寒性なんかに優れているから寒さを抑えられる」

 

「そそそ、そうなのか? 変身!」

 

 すぐに仮面ライダークローズチャージへ変身をした坂上龍太郎は……

 

「お、マジで寒くねー!」

 

 感動をしていた。

 

「お、俺はどうすれば……」

 

「というか、シュネー()()()()()()に行く事は伝えていた筈だろう? 何で防寒具も準備しないで付いて来ているんだよ」

 

 名前からしてどう考えても刺す程の寒さなのは判りそうなもの、防寒具としてコートの一つも着てくるのが普通なのに普段着である。

 

 仮面ライダーセイバーなユートは寒さの対策がバッチリだし、他の【閃姫】達や坂上龍太郎だってユート謹製の仮面ライダーに変身が出来るから問題も無かったが、天之河光輝はそんな便利な物は持っていないのだからコートの一つくらい持参して然るべきであろう。

 

「お、緒方が用意をしたんじゃ……」

 

「何で僕がお前の為に何かするんだよ? 自分が無理矢理に付いて来ている自覚も無いのか」

 

「ぐっ!」

 

「兎に角、さっさと行くぞ。もう時間を気にする意味も無くなったが、とは言っても帰るのを早める為には早くクリアした方が良いからな」

 

 天之河光輝が寒がろうとユートには無関係でしかないから、道を見失いがちな吹雪の中に在って『導越の羅針盤』が指し示してる氷雪洞窟の方向を人差し指で差しながら言う。

 

「ま、待ってくれ!」

 

「はっ、ほっ!」

 

「違う! 舞ってくれじゃない! って言うか、いい加減そのネタはヤメロ!」

 

 ユートが剣舞を舞うと天之河光輝が青褪めた顔で怒鳴ってきた。

 

「俺は凍え死ぬ寸前なんだが、どうしろって云うんだって話なんだよ!」

 

「んなもん、防寒具も自前で用意しなかったのが悪いんだろうに。さっきも言ったけど雪原に来るのは通達していたってのに、何だって普段着だけで来てるんだよ天之河は」

 

「だ、誰もそんな準備をしていなかったじゃないか! だから俺も……」

 

「【閃姫】達は普通に仮面ライダーに変身すれば寒さを凌げるのを知っていたし、坂上は基本的に脳筋だから特に何も考えていなかっただけだ」

 

「うっ!」

 

「そういう意味では坂上もラッキーだったよな、お前の暴発を防ぐ名目でクローズチャージを得られたんだからな」

 

「ぐぐっ!」

 

 最早、ぐぅの音くらいしか出ない。

 

「ねぇ、ゆう君。光輝君に寒さを凌げるアイテムを渡せないかな?」

 

「香織……」

 

 砂漠でオアシスを見付けたみたいな顔で救われた気分になる天之河光輝。

 

「天之河、いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うぞ。香織だってお前に構ってばかりはいられないんだからな」

 

「っ!? な、何を!」

 

 行き成りユートから言われて吃る。

 

「それとも香織」

 

「何かな?」

 

「それとも単に香織自身が天之河に優しくしたいだけなのか? それなら香織の自由意思だから僕も敢えて止めたりはしないけど」

 

「え、そんなんじゃないよ。でも一応は光輝君も幼馴染みだから、流石に目の前で凍え死なれるのもちょっと……ね」

 

 余りにも余りな香織の言い分にあんぐりと口を開けて茫然自失で絶句した。

 

 この遣り取りは原典でハジメと天之河光輝の間で交わされた会話、そして香織は『私が南雲君と話したいから話してるだけだよ』と言っており、先程の天之河光輝に対する態度とは全く違う。

 

 まぁ、幼馴染みとは言っても強姦未遂犯でもある天之河光輝を許した訳ではない、飽く迄も幼馴染みとしての温情に過ぎないのだった。

 

 

.




 ありふれ坂エンドでも良いのかも……


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。