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ユートは吹雪で地面が見えないので軽く積もった雪を炙って溶かし、そこら辺に転がっている石を左手で取ると右人差し指に魔力を篭めて何やらスラスラと動かし始める。
全員が頭から『?』を出す勢いで見つめていると完成したのか、その石ころをその全員に見せ付ける様に左手を前に出す。
勿論、それは先程拾った石ころに過ぎなかったのだが……[保温]と書かれていた。
「ゆ、ゆう君? これは何かな?」
汗を流しながら苦笑いを浮かべる香織が絞り出す様に訊ねて来る。
「香織からの注文で造った天之河専用『保温』の魔導具だが?」
つまりホッカイロよりずっとマシな温度を保つ魔導具、確かにこんな吹雪く様な場所であるならば必須とも云えるであろう。
「保温と書かれてるけど、これが錬成師のアーティファクトの造り方?」
「え? 通常の錬成師はアーティファクトなんて造れないぞ雫」
「そうなんだ……」
「錬成師に出来るのは鉱物の扱いや金属の変形といった事、魔導具やらアーティファクトを製作する為に必要なスキルは無い」
だからこそ軽んじられた。
それなりに存在しながらもやれてる事は精々が部品の製作と組み立て、アーティファクトにしてもメンテナンスが出来れば出世する程度。
成程、『ありふれた職業』でしかないだけあるというしかないであろう。
「だからこそ錬成師とはフルバックですらない、その役割は詰まる話がバックヤードスタッフだというのに、それで前線に出そうとする勇者(笑)やハイリヒ王国の貴族や王族の無能さよ」
その勇者(笑)本人と腰巾着な坂上龍太郎は居た堪れない気分だった。
寧ろ錬成師を無能と断じただけに、これで尚もイキるのは流石に出来ない。
「因みに、僕は勿論だがハジメも魔導具の製作は可能だから通常のありふれた錬成師では無いな。とは言ってもそれを申告した処で無能な勇者(笑)は『闘うべきだろう』と前線に出しただろうし、無能な貴族や神官も変わらずだったろうがな」
トータス側は居るなら居るだけ前線送りという駒扱いなだけだったのだろうが……
「兎に角、これがお望みの魔導具だ。五万円という格安で売ってやる」
「なっ! 仲間から金を取る気か!?」
「はぁ? 仲間って誰が? まさか今までに散々っぱら邪魔をしまくって攻撃をしてきた天之河、お前が……とは言わないよな? 若しもそうだとしたらとんだ恥知らず、厚顔無恥にも程がある」
「っ!?」
ユートの本来のステイタスにパーティというのが在るけど、それは幾つかグループ分けを可能としていてユートを含む六人パーティ制、最大限では一二グループによる第一パーティ以外は五人制の六一人レイドして機能する。
【閃姫】達は所謂、クランに所属する形に成っているからあぶれたりはしない。
そしてパーティメンバーにのみユートが施せる魔法なども存在しており、天之河光輝はパーティメンバーとして第一パーティ~第一二パーティのどれにも登録をされていないのだ。
因みに
ユートはハイパーゼクターを取り出すとこれに虚無魔法の
全員の脳裏に浮かぶのはハイパーゼクターを使う仮面ライダーコーカサスに成る天之河光輝が、逆玉手箱の力で前々世の状態に弱体化させられているユートに刃を揮う姿。
「これは物に宿る記憶を喚起して見せる魔法だ、それで? これが仲間のする所業か?」
「うぐっ!」
どれだけ御都合解釈しようが証拠映像の閲覧が出来ては否定も叶わない。
「今の、再生魔法?」
「否、今のは虚無魔法の一つの
「何で優斗が虚無魔法を? 実は虚無の担い手だったってオチ?」
「まさか。トリステインの虚無の担い手は唯一、ルイズだけだったよ。どっかに御落胤辺りが予備として存在したかも知れないが、少なくとも僕の知る範囲には居なかったし、僕自身が予備なんて話も勿論だけど無い。仮に予備だったとしても、ルイズが居る限り予備は予備に過ぎないしな」
「じゃ、どうして?」
雫の疑問は尤もなもの。
「ハルケギニア大陸に仕込まれたシステム上に於ける担い手、そういう意味ではトリステイン王国にルイズ、アルビオン王国にテファ、ガリア王国にジョゼフ一世、ロマリア連合皇国にヴィットーリオ枢機卿の四人だった。同じ系統魔法に分類はされても小さな粒――原子を操る四系統魔法と、粒子を操る虚無魔法では謂わばOSが全く異なったコンピューター。だから虚無の担い手は四系統魔法を扱えない。だけどエミュレータでOSを再現してやれたらどうだ? 僕は四系統魔法を扱うから虚無魔法は扱えないが、OSをエミュレートしてやれば扱えてもおかしくは無かろう?」
「? よく判らないわ」
「僕は転生する際の特典の一つに『魔法に対する親和性』というのを貰った。実はこれが可成りのファジーでね、正確には『神秘に対する親和性』とも呼べる能力だったのさ」
「神秘に対する親和性……?」
「魔力」
右人差し指の指先に魔力を宿す。
「霊力」
次は中指の先に霊力を灯した。
「念力」
薬指に念力を発する。
「氣力」
小指に氣力を放つ。
「合成すれば小宇宙となる」
四つの力を拳に握り締めるとそれは一つに集約されて小宇宙に変換された。
「突き詰め昇華すれば神氣となる」
小宇宙の輝きが神氣の煌めきに昇華を成され、雫達には小宇宙の段階から最早感じる事すら不可能なエネルギー、突き詰めて昇華をするというのは即ち究極の小宇宙たるセブンセンシズに至り、極限の小宇宙のエイトセンシズにまで高めて更に第九感覚ナインセンシズに至る事。
其処まで至れば弱い神が扱う程度の神氣くらいには成るだろう。
そして大神クラスなら当たり前の神氣ともいえる第十感覚――テンセンシズ。
「本当にそれでも刹那の刻しか使えないんだから嫌になるな」
輝きも煌めきも宿さない無色透明な力が刹那、ユートから溢れながら直ぐにも弾けて消えた。
ナインセンシズなら数秒間は保つが、テンセンシズともなると正しく一秒と保たない刹那の刻。
とは言っても、神々と呼ばれる存在でさえ実は神氣とは扱えない者も割と居るから使えているだけマシとも云える。
神氣を使えない神って何ぞ? とも思えるが、神氣を扱える事が神の証明という訳では無いからそういう事も侭有った。
単純に【聖闘士星矢】の神々が神氣を充分に扱えているだけであり、例えば【ドラゴンボール】に於ける『地球の神』は普通に闘氣までしか扱えないし、界王神ですらまともに神氣を使えていないのは作中の表現から判る。
これが破壊神レベルになると神氣も扱える為、悟空達も氣を感じられていなかった。
例えばユートが使う光鷹翼も神氣と同質の力、故に本来的に光鷹翼の力を持つ津名魅達『三命の頂神』も名前の通り神である。
光鷹翼は一枚一枚に高密度のエネルギーが封入されており、楯に使うも良し、攻撃に使うも良しで使い易い上に武具と一体化させたり物質化させたりしてパワーアップも可能。
柾木天地も物質化で闘衣と盾を創り出したし、天地剣を光鷹真剣に変換させていた。
尚、ユートもデジモンの進化に光鷹翼を使っていたりするし、聖衣を神聖衣化させるのにも使っているから正当な使い方だ。
「こんな具合に神秘に類する力を扱い易くしてくれる特典でね、お陰で僕はもう一つの特典が進化した『叡智の瞳』を通して視た神秘を真似るのも割と容易いし、通常なら扱えない筈の力を扱えたりもするんだよ。とはいえ、虚無魔法に関しては『虚無の担い手以外は使えない』って思い込みから使えなかったんだ」
「ああ、そういう……」
思いの力は強いとよく云われている事だけど、思い込みも強いと制限になってしまうもの。
「それを取っ払う出来事があったか虚無魔法をも扱える様になった」
「取っ払う出来事って?」
「ハルケギニア時代での時空間放浪時期に訪れたファンタジー的な世界の一つに転生者が居てね、その転生者が使う魔法は僕が使うのに近い魔法ながら有機物すら使えていた。僕の当時に使っていた【錬成】はハルケギニアの【錬金】が進化した魔法で、無機物にしか使えないと思い込んでいたんだけどな。事実として無機物にしか使えてなかったのに、意識改革してからは普通に有機物も出せたり出来る様になった。例えると無機物な塩は出せても有機物な砂糖は出せなかったのが出せる様になったんだよな」
海水や岩塩から採れる塩は無機物で、砂糖黍や甜菜から採れる砂糖は有機物。
当時、塩で困る事は無かったのだけど砂糖の様な甘味に困っていたのは言うまでも無い。
単純に出せないという意味でだが……
「んで? 天之河はコレを買うのか?」
「そ、それは……っ!」
天之河光輝としては買いたくないのだろうが、一人の人間としてはこの莫迦みたいな寒さに耐えられない為、已むを得なしに買うしか無いというのが正直な話であった。
今も長話の最中にブルブルと震えていたのは寒気に晒されているが故で、この侭では寒さから風邪を引く処か凍死をしてしまいかねない。
一応は長袖長ズボンであるものの、金属製の鎧は寒さを防ぐ防寒具になる訳では無いというか、寧ろ冷えてしまって凍死へのカウントダウンを早めてくれそうだ。
「クソッ、仕方がない!」
この世界では使えない万札を五枚も出して口惜しげに渡してくる。
「まさか未だに地球の金を財布に入れていたとは思わなかったな」
地球に戻り次第返す借金的な意味合いだったのにまさかの即金、香織や雫や優花らの財布の中身は既にトータスのお金だけだというのに。
「こんな石ころが五万円……」
取り敢えず納得はしていないらしい。
確かに素材は石ころ、二束三文の足しにする処か無価値な代物であるのだろうが、其処に付加価値が付いたからには間違い無く五万の価値を見出せる筈だ。
例えば効果、例えば人件費、そして魔導具とは基本的に高価な物であるのだから……というより石ころが素材だから五万円で渡したのである。
漸く全員の防寒が出来たので氷雪洞窟に向けて早速ながら出発した。
仮面ライダーセイバーとしては完全な初期フォームとはいえ、ユートならワンダーライドブックは一冊差しで充分だからか火炎剣烈火を引き抜いた状態で無造作に歩く。
『氷雪の峡谷』を進むと大迷宮の入口が存在するであろうと思われる方角に、三つに枝分かれをした巨大なる氷のトンネルが続いており、ユートが持つ『導越の羅針盤』は右側を指していた。
周りの氷壁と峡谷の上の積雪にて作られたトンネルは風の回廊の如く、奥からは業務用冷凍庫も斯くやな身を突き刺す様な極寒の風が吹き付ける。
基本的に冷気は暖気と反対に下へ降りるから、地表に比べるとその気温は可成り低かった。
それこそ唯々、凍らせておく事を目的としている食品会社の工場内に設置された冷凍室の中みたいに、-五〇℃とか生身で居たら凍ってもおかしくない大気は厚着すら無意味と体温を奪われて、情け容赦無く体力も削り取られていた筈だ。
ユート謹製の仮面ライダーに変身していたからそれを防げているだけである。
このトンネルの内部は整備などされていない、正しく天然の要害と化していて氷塊に氷柱で埋め尽くされていたり、道がまるで大蛇の躰の如くうねっていたり登らされたり降ろされたり。
「うん? 何か居ますよ」
それに気付いたのは音に敏感なウサミミを持つシアで、そこそこに広い通路の右側に在る氷柱の隙間にどうやら某かが居るらしい。
「きゅうん」
「やぁん、可愛い!」
隙間から姿を覗かせたのは仔兎、それを見て思わず頬を朱に染めて歓声を上げた雫……だけど、何しろ今は仮面ライダーサソードな姿だから可成りシュール。
考えてみるが良い。
蠍を模した紫色の怪人が如き姿をした存在が、可愛らしい声で『やぁん』とか少し乙女チックなリアクションをしながら叫ぶ、本来の中の人たる神代 剣を考えるとある意味では不気味だ。
中身が雫だからこそギリギリ赦せる範囲内という事になるだろうか?
「中々にシュールな光景だよね、シズシズだって知らないと思わず身構えちゃうよ」
苦笑いをするのは仮面ライダータイガに変身をした鈴だが、こんな可愛らしいトークをタイガがやっているのもシュールである。
まぁ、ユートからしたら何度も見た光景だったから慣れてしまったが……
「そうだな」
グチャッ!
『『『『『へ?』』』』』
仮面ライダーセイバーの足が兎を踏み潰した様にしか見えない光景、これには余りにも余り過ぎるシュール処の話ではない。
「ギャァァッ! ゆう君がががががっ!?」
鈴が頭を抱えて絶叫した。
見た目には普通に可愛い兎さんを踏み潰したら端からは単なる外道、とはいえユートがそんな事を無意味にするとは天之河光輝を除いて誰も思っていないから、某か意味があるのは理解をしているのか『ギャーギャー』と喚く天之河光輝以外は余り責めては来ない。
白銀の毛並みを持つ白銀の瞳の仔兎、その体毛から氷雪と同化して見失いそうになってしまう。
「そいつらは魔物だ。魔物の共通項な赤黒い瞳じゃないが、熱を奪う固有魔法を有しているぞ?」
『『『『『なっ!?』』』』』
「僕謹製の仮面ライダーに変身をしている者達は問題無いが、[保温]で周辺温度を保っているだけの天之河は普通に死ねるけど……良いのか?」
聞いた途端にグチグチと愚痴っていた天之河光輝が絶叫を上げながら鉄の剣を振り回す。
正に狂乱の天之河光輝。
最終的に銀色兎を多く狩ったのは天之河光輝、矢張り死ぬのは相当に嫌だったらしい。
これが本来の世界線ならば其処まで切羽詰まってはいなかったろうが、ユートを相手にしていたのと魔王なハジメを相手にしていたのでストレスの度合いが違ったのだろう。
魔王なハジメは基本的に暴力による理不尽さで悉くを慣らしていったが、ユートの場合は精神的にも追い詰めたからストレスがより高まった。
「さて、銀色兎の毛皮や魔石は集めたからさっさと攻略に戻るぞ」
大量に在った銀色兎の死骸から必要性の高そうな毛皮、そして魔物ならば体内に持つ魔石を解体して手に入れたユートのパーティ。
一応、天之河光輝が一番斃したから多く配分をされるのだろうけど、抑々にして彼には錬成師の知り合いなんて居ないから使い様も無い。
ユートやハジメに頼める訳も無く、ハイリヒ王国は解体されてユートの支配下だから錬金術師達にも頼めず、結局はルタを支払って貰っての買い取りという形になっていた。
まさか、
そう、天之河光輝も心の中ではユートとハジメを『使えない天職』だとして口角を吊り上げていた一人。
だからこそ原典では
ユートもそれを聞かされていたからこそ余計にだろう、天之河光輝に対するATフィールドを張ってしまっていたのだから。
天之河光輝は見ていた。
「これで完成っと」
拍手と共にユートが毛皮を鞣し革にしてしまった手際を、そしてそれを白銀兎のコートへと変化させる錬成師としての能力を。
否、錬成師としてなら有り得ない。
生成魔法では毛皮みたいな有機物を操れない、それが可能なのは今から取りに行く変成魔法の方だったから。
錬成師の魔法たる錬成も生成魔法の下位互換、つまりは毛皮を変化など出来たりしない。
「緒方……お前……いったい……」
嘗て、稀代の錬成師オスカー・オルクスは自身を指してこう言った――『異常』だと。
天之河光輝は本当に今更、ユートの力の異常性に気が付いて……心の奥底の無意識下で嫉妬を感じているのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
解体の際に判った事だったけど、あの銀色兎は顔がグバッと開いて何かを咀嚼する肉食兎だったらしく、ユートを除いた全員がコズミックホラー張りの恐怖心を味わっていたりする。
その後も魔物としてビックフット擬きが現れたりしたが、特に問題も無く斃していたし仮面ライダーセイバーの試運転にも丁度良かった。
必殺技すら要らない程度なのは判り切っていたから、ユートも安心して火炎剣烈火をブン回して魔物を斬り斃していたのだ。
「ミラーハウスみたいな場所だな」
氷雪洞窟内に侵入して最初の一言。
吹き荒ぶ冷たい風に乗って雪の結晶らしき物が同時に吹き付けてきた。
「下手に生身で彷徨いたら凍傷待った無しだな、ドライアイスでも飛ばしてんのかと思った」
仮面ライダーセイバーだから全身が炎の塊みたいなモノ、幾らドライアイス級の雪結晶が吹き付けてもその都度に溶かす。
「外気に触れたら水なんて瞬く間に凍ってしまいそうよね」
「そうだね雫ちゃん」
雫は仮面ライダーサソード、香織は仮面ライダーリューンとして護られていたから無事なだけ、それは他の【閃姫】達や坂上龍太郎も同様。
そして保温されていたから天之河光輝も無事、意固地になっていたら直ぐにも勇者(笑)の氷像と化していたのであろう。
まぁ、再生魔法と魂魄魔法で復活はしたかも知れないけど……
「問題は彼方此方にある氷壁内の魔人族と思しき死体……か」
行き成り氷壁を破って襲い掛かって来る可能性が無いでもなかったし、未だに試練の間という訳では無いのがまた余りにもアレ過ぎた。
「ゴクゴク」
普通は仮面ライダーな状態で飲食とか無理なのだけど、赤龍帝の鎧や白龍皇の鎧みたいにフェイスオープンが可能になっているから、こうやって水も飲みたい時に好きに飲める。
とはいえ、この氷雪洞窟内では水など直ぐにも凍ってしまうから通常は飲めない。
ユートの……というか【閃姫】達もだが周囲に結界が張られているから、水すら即凍る巫山戯た氷雪洞窟内でも水を飲めるのだ。
取り敢えず氷壁内の魔人族らしき遺体がウザったい以外、特に問題らしい問題も起きない侭での道程が続くのだが導越の羅針盤が指しているからには道に間違いは無い筈。
ユートは警戒をしつつも和気藹々とした会話を【閃姫】達と始めていた。
「ソードブレイカー? って、あれを優斗は持ってるの? 外観だけがソードブレイカーじゃなくヴォルフィードって意味で!」
「ああ。可成り昔に……【魔法少女リリカルなのは】でいう空白期の頃に古代遺失物の一種として発見されてね。【ロストユニバース】の原典設定の通り、ヴォルフィードと闇の遺失宇宙船である六隻の合計で七隻。とはいえ、時空管理局の高官が莫迦をやらかして闇の遺失宇宙船が先に甦ってしまったけどな」
「闇のって、デュグラディグドゥとかよねぇ? 確か生体殲滅艦……」
「まぁね、だから可成り管理世界の人間がシステム・ダークスターで殺されたよ。僕にはどうでも良いけどな」
闇の遺失宇宙船は負の感情――主に『恐怖』や『憎悪』や『絶望』をエネルギー源としており、戦場だけでなく様々な場所で生命が亡びない限りは潤沢に獲られるから質が悪い。
「僕としてはヴォルフィードを獲られた訳だから収支的には悪くなかった。現在はソードブレイカーの艤装を施して立派にトラブルコントラクターが可能な艦船と成っているよ」
現在のヴォルフィードはソードブレイカーという艦名にて、自由自在に動ける肉体を獲得しているキャナル・ヴォルフィードが運用している。
初期原典風味では無くて、アニメ版に於いての服装や髪型で艦長たるユートが不在時での裁量権を与えられ、文字通りトラブルコントラクターを仕事にして自身の艤装用資金を稼いでいた。
ユートが乗らないと基本的にサイ・システムは使用が不可能な為、通常兵装で闘うのが当然の流れとなる訳だけどサイ・ブラスターなら必要無い弾丸の補充にはそれなりの資金が必要。
況してや、キャナルは何故か普段は余り使わない様な兵装を買っては喜んでいる。
資金繰りは嘸や大変であろう。
一応、仮マスターとして時間の都合が付いたら一緒に動く者が居るから精神力が全く得られない訳でも無い。
尤も、苗字は兎も角として名前がこの世界での彼女と被るのは如何なものか……
ユートはクスリと微笑を浮かべてその人物を見遣りつつ歩む。
(そういえば、あの時にテンマシンオウドライバーを使ったな……今回もアレを使う必要があるのかも知れない)
オーマジオウドライバーの色違いとも云えるだろうテンマシンオウドライバー、即ちそれは彼の仮面ライダーオーマジオウとは正しく色違いである仮面ライダーテンマシンオウに成るツール。
それはユートの異世界同位体が至る天魔真王へと至った事を意味していた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「魔人族ばっかりだね」
「恐らく国を挙げて攻略をしたんだろうけどな、そりゃ結構な人数が犠牲になるだろう」
和気藹々とした会話も途切れて再び氷壁の方に目を遣る機会が増えた為、改めて氷壁に埋まった死体らしきを視てみれば殆んどが魔人族。
稀に違う種が混じる程度だ。
「これだけ挑んで尚、フリード・バカーとやらしか攻略は叶わなかったか? それとも他に居るのかも判らんが……」
フリード・バグアーである。
「まぁ、それでもそれなりに魔人族は居るんだろうけどな」
ユートに魔人族を滅ぼす理由は無いのだけど、逆説的に滅ぼさない理由も特に無かった。
魔人族がどう出るかで滅ぼすか残すのか決めるというある意味で傲慢な考え方をしているけど、それはつまりフリード・バグアーの態度次第では一つの種族を消し去るという事。
「来た!」
「え?」
「警戒しろ! 何らかの敵だ!」
火炎剣烈火を構えながら叫ぶ。
「確かに……全ての方向からです!」
「後ろからも!?」
ライダーシステムで強化されたウサミミによりシアが叫び、その敵らしきが背後からも来ていると聞いて鈴が戦慄を覚えた。
「……後ろに魔物が今更居る筈が無いって事は、さっきから見えていた氷壁内の死体が動き出したのかもな?」
「ゾ、ゾンビ!?」
香織がビクビクしている。
「大半が魔人族、少数の人間族と亜人族……か。恐らく人間族の場合は何十、何百年も前の冒険者だろうけどな。そういった連中を再利用する為の仕掛けが在るのか」
「ゆう君は冷静だね」
「ドラクエ系の世界では腐った死体なら幾らでも視てきたからな」
「そ、そうなんだ……」
「所詮は数だけで意志も持たない死体がちょろちょろとしているだけだ。一気に片付けてさっさと攻略して行くぞ!」
『『『『『了解!』』』』』
自身を除く全員が肯定の意を示して声を合わせる中に在り、ユートのリーダーシップに憮然とした表情で鉄剣の抜剣をする天之河光輝。
心の中では荒みながらも『本来は勇者たる俺の役割なのに!』と叫ぶ。
ユートが言う通り数だけは多い動く死体だったけど、仮面ライダーのスペックはパワーアップをした形態でなくとも単純な数値だけならエヒトルジュエの木偶人形な使徒とも充分に闘える為に、苦戦らしい苦戦はしない。
唯一、鉄の鎧に鉄剣というさもしい装備品しか持たない天之河光輝は苦戦していたが……
特に本来は動かす仕掛けが別に存在しており、斃しても再生怪人の如く起き上がっていたのだがユートは火炎剣烈火で焼き尽くすから、再生怪人としては使えず消し炭が残るのみである。
それでも完全に斃す術が無い【閃姫】達や坂上龍太郎が斃したのは起き上がるし、ユートとしては死体を動かしている仕掛けを捜すしかない。
「見付けた」
とはいえど、魔力を出しているからにはユートの『
フロストゾンビだけでなく天井からは鷲にも似たフロストイーグルが大量に顕れ、赤黒く鈍い輝きを放つ魔石が在る氷壁を守ろうとしていた。
「チィッ、香織!」
「な、何かな?」
「木偶モードで奴らを分解しろ!」
「う、うん……木偶モードは可愛くないけど仕方がないよね。モードチェンジ!」
《CHANGE!》
ハートスートのカテゴリーAは二枚が存在しており、一枚は仮面ライダーリューンに変身をする為のラウズカードで、もう一枚はエヒトルジュエの出来損ないな使徒たるリューンの姿に成る為のカードだ。
どちらも[CHANGE]のカードではあるけど、描かれた絵柄は色違いの白いカリスの姿に変身するマンティスと、白銀のヴァルキリーにも似ている鎧姿のリューンで別々。
因みに[EVOLUTION]のカードは原典でやっていた漆黒のヴァルキリー姿、本来は同じ姿で見た目が変わらないけど此方はノイントを封じ込めているカードだったりする。
キングでの変身はワイルドカリスの方では無く一律でノイントの姿だ。
リューンモードに成った香織はフロストゾンビを相手に分解を放つが、赤黒い何かが集まったかと思ったら元のフロストゾンビに戻っていた。
「な、何で!? ゆう君は斃したのに!」
「ああ、そういう事か」
「どういう事かな?」
「僕はどの仮面ライダーに成ろうとも本質的には仮面ライダーディケイド、世界の破壊者としてのルールブレイカーで焼き尽くせたんだろうさ」
「成程……」
原典の門矢 士の仮面ライダーディケイドが普通にアンデッドや魔化魍をルール無用で滅ぼせたのと同じ様に、ユートもある程度はルールを無視して斃せない敵を斃せてしまう。
フロストゾンビやフロストイーグルは次から次へと矢継ぎ早に顕れては襲い来て、更に魔石が埋まっていた氷壁まで変化を始めて巨亀に成った。
「フロストタートルって処か? 魔石を破壊するのが面倒臭くなったな」
原典ではハジメは天之河光輝を中心にして雫、坂上龍太郎、鈴の四人にフロストタートル退治を任せていたけど、この世界線では雫と鈴がユートの【閃姫】で坂上龍太郎も仮面ライダークローズチャージとして立っており、一応は坂上龍太郎が手伝うかも知れないが天之河光輝はそうなったら単なる賑やかしにしかなるまい。
なので、ユートが普通に相手をする。
「フロストイーグルやフロストゾンビは雫達に任せる! 僕はフロストタートルを討つ!」
『『『『『了解!』』』』』
「ブンカイ!」
「ライダースラッシュ!」
《RIDER SLASH!》
《FINAL VENT!》
《FINAL VENT!》
「……王の判決を言い渡す、死刑!」
《ウェイクアップⅡだ!》
「ライダースティングですぅ!」
《RIDER STING!》
【閃姫】達が必殺技でフロストな魔物共を叩き潰していく。
「ウオオオオオッ! 今の俺は負ける気がしねぇぇぇぇぇぇっ!」
《SCRAP BREAK!》
坂上龍太郎も仮面ライダークローズチャージとして必殺技を放つ。
「さて、なら此方も仮面ライダーセイバーとして必殺技を放つとするかね」
火炎剣烈火をソードライバーへと納刀をして、トリガー二回押しというアクションを行った。
《HISSATSU DOKUHA!》
そして抜刀。
《REKKA BATTOU!》
振り回しながらフロストタートルへ突っ込んで行く仮面ライダーセイバー。
《DRAGON! ISSATSU GIRI……FIRE!》
「火炎十字斬っっ!」
斬り刻む斬り刻む斬り刻む!
何がどう十字斬なのかよく判らないくらいには斬り刻んで、フロストタートルは徐々に削り燃やされて往くと……
「終わりだ!」
遂には魔石すら破壊されるのだった。
.
取り敢えずちょっと持ち直したかも?
勇者(笑)な天之河の最後について
-
原作通り全てが終わって覚醒
-
ラストバトル前に覚醒
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いっそ死亡する
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取って付けた適当なヒロインと結ばれる
-
性犯罪者となる