ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 やっと書けましたが今回は書くに当たって混乱しきりだったりします。





第109話:ありふれた囁き声

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「優斗が光輝の話を信じたのは意外だとは思ったけど、どういう事? 今の声は明らかに光輝の声だったんだけど……」

 

「俺の……声……?」

 

 雫の科白に天之河光輝が首を傾げる。

 

「どういう意味だ雫? 今の緒方の声が俺の声って……絶対に違うだろう」

 

「違わないわよ、今のは間違い無く光輝の声だったじゃない」

 

「そんな筈は無い! あれは絶対に俺の声じゃ無かった!」

 

 いまいち解らない天之河光輝が堪らず皆に対して叫ぶが……

 

《そんな筈は無い! あれは絶対に俺の声じゃ無かった!》

 

「……え?」

 

 此処で響いたのは、天之河光輝が先程にも聴いたユートの真似たものと違わぬ声。

 

「遂先程、録音をしたお前の声だ。幾ら御都合解釈大好きなお前であってもこれを事前に用意していたと主張する事は出来まい?」

 

「うっ!?」

 

「そしてその声は紛れもない僕が声真似をした時の声だったな? 時間だって押してはいなくても無限じゃないんだ、いちいち余計な手間を掛けさせて足を引っ張ってくれるなよ?」

 

「ぐぐっ!」

 

 口惜しそうな唸り声を響かせるが、ユートからしたらどうでも良い話でしかない。

 

「それにしてもだけど、録音なんてどうやってしたのよ優斗?」

 

「サーチャーから」

 

「ああ、【リリカルなのは】系の技術」

 

「この【ありふれた職業で世界最強】の世界に来る前は【魔法少女リリカルなのは】主体世界に住んでいたからな、地球では時空管理局とか異世界人がサーチャーをバラ撒く行為を禁じていたが、僕がやる分には全く禁止してはいない訳だから」

 

「それはまた……」

 

「だってそうだろ? メタ的には単純に回想的な意味合いで上映されたなのはの過去だったけど、まだなのはが魔法と出会う前の映像が普通に有ったんだぞ?」

 

「? そんなシーン有ったかしら?」

 

「『少し頭、冷やそうか』事件の後でシャーリーがフォワードの面々に観せたろ」

 

「ああ!」

 

 思い至った雫はポンと手を打つ。

 

 メタで云うなら単にシーンの流用なだけの話でしか無いが、現実となるとその意味は少し違ってきてちょっと怖い。

 

 管理外世界でありながら魔法を未だ知らない筈の少女、それの私生活がバッチリと撮影をされている様子は成程恐怖しかあるまいに。

 

 因みにだが、本来の世界線――【魔法少女リリカルなのはα世界線】で起きたあの事件だけど、ユートが混入された【魔法少女リリカルなのはβ世界線】では起きていないのである。

 

 というより、高町なのはが抑々にして時空管理局に入局していないのだから起きる筈も無い。

 

 なのはだけではなく、フェイト・テスタロッサ――プレシアが生存+改心コンボでハラオウン家に養子として入ってない――と八神はやても同じく管理局への入局をしなかった。

 

 フェイトが入局しないからアルフも使い魔として登録してないし、はやてが入局しなかったから守護騎士達が入局する事も当然ながら無い。

 

 彼女達は普通に地球で過ごしている。

 

 魔法を使うのが愉しいなのはだったからこそ、α世界線では地球を離れてミッドチルダへ移住をしつつ管理局に入局、そして例の撃墜事件を経てはいても役一〇年間を時空管理局員の武装隊として活躍をしていた訳だけど、魔法なら地球でも使えるβ世界線ではミッドチルダに行く理由自体が見付からず、聖域の地球連邦日本支部『正史編纂委員会リリカル版』に所属をした。

 

 尚、本部はギリシアのアテネ郊外にユートが造った聖域を充てている。

 

 ユートの再誕世界のギリシアと同じ座標に在る土地であり、この世界に聖闘士など存在しないから単なる広大な空き地でしかなかった場所を買い取って、ギリシア人の住まうロドリゴ村を設置した上で結界を張って創造をしたのだ。

 

 どうでも良いが、一般兵士には量産化をしている茶々丸と田中さんというガイノイドとアンドロイドを採用しており、特に田中さんは脱げビームで大活躍をしていたりする。

 

 量産型茶々丸は茶々号と呼ばれ、パーツ交換というか篠之乃 束がIS技術で量子化したパーツの換装により、それこそ近距離・中距離・遠距離を自由自在に熟してくれるし、陸海空宙とスパロボみたいな活躍すらしてくれていた。

 

 浪漫武装のドリルにより地中すら。

 

 【超技術(チャオ・テクノス)】が由来なだけに魔力や霊子などにも干渉する事が普通に出来る為、単なる軍事目的ではなく超常への対抗策だとアピールもしている。

 

 

 

 閑話休題

 

 

 

「そういえばさ……」

 

 ふと気付いた様に雫が訊いてきた。

 

「どうした?」

 

「さっきのケルベロモンX抗体ってDーアークでの進化じゃないのよね?」

 

「また唐突に」

 

「気になっていたから序でによ。もう少ししたら私達も囁きが聞こえるんでしょう?」

 

「そうだな」

 

 その通りだったから否定しない。

 

「で、どうした?」

 

「優斗って若しかしてデジヴァイスを全種類持っていたりするのかしら?」

 

「まさか。Dーアークで代用が出来てしまうから、初代デジヴァイスやちょっと拡張機能を得ただけのDー3は持ってない。僕が持っているのは最初に行った【デジモンテイマーズ】世界のDーアークと【デジモンフロンティア】に於けるDースキャナと【デジモンセイバーズ】のデジヴァイスバーストと【デジモンクロスウォーズ】のクロスローダーの四種類だけだよ」

 

 勿論だけどアプモン関連も持ってはいないし、何ならアプモンなどは知識すら無かった。

 

 そして【デジモンアドベンチャー:】に出てきたデジヴァイス:も持っていないし、【デジモンゴーストゲーム】のデジヴァイスーVーも当然ながら持ってはいない。

 

「主に使うのはDーアークだが、クロスローダーは空き領域がデカくて究極体をニ〇体以上も入れておけるし、謂わば小さなデジタルワールドみたいにもしているからな。ジョグレス進化や突風進化(ブラストエボリューション)はデジクロスでやれるしね」

 

 ロイヤルナイツのオメガモンはウォーグレイモンとメタルガルルモンの合体、即ちデジクロスによる合体と実は変わらないと考えて試してみたら普通に可能だったという話。

 

(まぁ、僕のクロスローダーは僕自身で造った訳だから特製ではあるんだよな)

 

 領域が広いのも自身でやったから、アニメ情報と実際に買った玩具のクロスローダーの情報のみでだったが、Dーアークその物や人類製のデジヴァイスバーストは既に持っていたから参考になったのは間違い無かった。

 

「Dーアークさえ有れば基本的に通常進化だけではなくて、アーマー進化やジョグレス進化なんかも普通にやれてしまう。実はデジソウルチャージもデジヴァイスバーストを使わんでもDーアークだけ有れば可能なんだが、【デジモンセイバーズ】の世界でDーアークを壊してね。代わりのデジヴァイスとして爺さんからデジヴァイスicを貰ってからはアヌビモンへの進化をデジヴァイスバースト、プルートモンへの進化にはDーアークを使うのが多くなったのは間違い無いね」

 

 爺さんというのはカメモンをパートナーとし、大門 大にデジヴァイスicを渡した人物で彼の名前は湯島 浩、見た目には普通の釣り好きな爺さんだけど実はDATSの所長である。

 

 因みにデジヴァイスicを開発したのは大門 大の父親たる大門 英だったり。

 

「まぁ、アヌビモンへの進化はDーアークで可能なんだけどプルートモンへの進化はデジヴァイスバーストで出来ないんだよな……」

 

 Dーアークにデジソウルを篭めれば進化の光を放ってガジモンをXー進化させてくれるのだけれど、デジヴァイスバーストではその機能が完全に想定外だったから融合進化が出来ないのだ。

 

 何しろDーアークはデジタルワールド謹製だったからか、デジソウルチャージをしたら勝手に機能を拡張してデジヴァイスバーストの存在意義自体を揺るがしてしまったくらい。

 

 デジヴァイスバーストに意志が在ったら間違い無く泣いたであろう。

 

「さて、さっきも言ったけど時間は押している訳じゃないにしろ無限でも無い。そろそろ動いた方が良いだろうな」

 

「あ、待ってゆう君……勿論だけど踊らなくっても良いからね?」

 

「判ってるよ、で?」

 

「光輝君の言葉をあっさり信じたから何か有ったのかなって」

 

 明らかに天之河光輝に隔意を持つユートが信じるに足るだろう理由、それがあったのではないのかと香織は考えたのである。

 

「ああ、それは簡単だ。天之河が騒ぎ始めてすぐ僕も囁きが聞こえてきたからな」

 

『『『『『っ!』』』』』

 

 天之河光輝も含めて驚愕した。

 

「そして僕はある事情から自分の声を俯瞰して聴く機会が多くてね、だからすぐに自分の声だってのが判ったんだよ。天之河の聴いた囁きが本人のものだと判った理由でもあるな」

 

 何せユートが分身すれば普通に聴ける声だし、何より優雅の声は基本的にユートと変わらない。

 

「それで主殿よ、その声の内容とは如何なるものであったかのう?」

 

「『本当は怖かったんだろう?』だ」

 

「それは……主殿に怖いものなど在るものか? 正直に言って妾には思い付かぬが」

 

 ティオから見たユートは完全無欠なのだろう、然しながら矢張り不完全な人間に違いないのだ。

 

「当然ながら在るさ。今回のコレだって間違い無く僕が怖いモノだからね」

 

「ふぅむ、それで? 妾達も受けるとなるならば試練よな? 対処方法などをミレディから聞いては……おらぬのだろうが、自分で考えてはおるのであろう?」

 

「そりゃな。内容が判った時点で攻略法は考え付いたよ」

 

『『『『早っ』』』』

 

 全員で驚く。

 

「造ったヴァンドゥルって人、涙目ね」

 

 雫が呆れながら言った。

 

「で、で? 攻略法って?」

 

 鈴が身を乗り出す。

 

「声の内容を受け容れろ、決して拒絶はするな。だけど取り込まれるのは悪手以前に論外だ」

 

 余りに漠然とした助言ではあるが……

 

「受け容れても取り込まれるな? 受け容れるのは構わないって事かしら? 拒絶したら駄目ってのも判らないわね」

 

「そうだな、似た様な事例があったんだよな~。隠している本心、自分でも自覚が無かった嗜好、それらを目の当たりにさせられた上に仲間にまで見られ、彼ら彼女らは一様に言うんだ――『お前(アンタ)なんか()じゃ無い!』ってな」

 

「? 何か識ってる気がするわ」

 

「あ、雫ちゃんも?」

 

 何となくだろうが、二人は今の科白に聞き覚えが有ったらしくちょっと唸り始める。

 

「『我は影、真なる我』って言葉と共に襲い掛かって来るな」

 

「「【ペルソナ4】だ!」」

 

 ペルソナとは仮面の事、自身の中の神の如くや悪魔の如く人格が存在しており、文字通りなそれを召喚させるのがペルソナだった。

 

 【女神異聞録ペルソナ】から始まり【ペルソナ2・罪】と【ペルソナ2・罰】を経て、色々と変わった【ペルソナ3】と【ペルソナ4】に至り、現状のナンバリングは【ペルソナ5】まで。

 

 【真・女神転生】の謂わば外伝。

 

「あ、て事はゆう君もペルソナを?」

 

「使えるけど……ペルソナ世界で必要なら兎も角として、そうでない世界で使う心算は無いから」

 

「えーっ! 何で~?」

 

 お気楽極楽に訊いてくる鈴。

 

「僕は悠達と同じくアルカナは【愚者(ワイルド)】だったから複数のペルソナを扱えるが、付け替えが自由な訳じゃ無くてガチャ式なんだよ」

 

「ガチャ式って……」

 

 ガチャガチャと呼ばれる玩具販売機が可成りの昔から存在するが、五〇円や一〇〇円のコインを入れてガチャガチャと回せばカプセルが出てくる仕組みであり、カプセルを開ければ中身の玩具が取り出せるという訳だ。

 

 天之河ガチャとユートが呼ぶのは天之河光輝と闘う事をコイン投入に見立て、天之河光輝が手に入れたアイテムなどが斃せば手に入る事からで、実際に闘ってみるまで何が出るか判らないというのもガチャ要素だったから。

 

 ソーシャルゲームは正しくガチャ要素が重要な部分があり、当たり外れというのが大きく出てくる要素でもあった。

 

 天之河ガチャも当たり外れが有るし。

 

 中身がろくでもない物は当然として、既に持っている重複物もガチャとしては外れとなる。

 

 ユートの場合は特にそんな事も起きなかったのだが、十連ガチャという一度で一〇回分を回して一一個の内容を獲られるのを更に一〇回を回すという百連で所謂、ピックアップが出ないといった大外れだって存在しているのだ。

 

 ユートのペルソナ召喚はそんなガチャ要素を持つ厄介極まりないモノ。

 

「僕の場合は喚び出した際に何が召喚されるのかがガチャ要素でね、自由には召喚が出来ない上に外れ確率が結構デカくて……しかも召喚されるのは『我は汝、汝は我』なだけにナイアルラトホテップだからな」

 

「ナイアルラトホテップ? クトゥルー神話に出てくる邪神の?」

 

「そうだ」

 

 正確にはペルソナだから『ニャルラトホテプ』と表記されるのだが、当たりだと門矢 士バージョンな仮面ライダーディケイドが召喚されるけど、外れだった場合に召喚されるのはニャルラトホテプ星人のニャル子さんだったりする。

 

 実力は充分過ぎるくらい有るのだが、ユートに纏わりつくだけで闘ってくれないペルソナなんて役には立たない。

 

 因みにディケイドの場合は変身後の姿で顕れ、『だいたい判った』と言いながらカメンライドをするなり何なり、普通に戦闘に加わってくれるからとても役に立っていた。

 

 大当たりは瑠韻、中当たりで優雅、小当たりが仮面ライダーディケイドと成っている。

 

 更にニャル子さんという外れペルソナ以外にも幾つか有るのだけど、強いのに使えない上に出目が大きくて割と出てくる。

 

 更に云えば天之河光輝は間違い無くアイテムをニャル子さんから獲ており、召喚なんてしようものなら騒ぎ立てるのは火を見るより明らか。

 

 だから『ペルソナの世界』云々以前に召喚する訳にはいかなかった。

 

「まぁ、ペルソナは置いとくとしてだ……君らも精神をガリガリ削られかねないから気を付けるに越した事は無い」

 

「そうね、気を付けるわ」

 

 それから暫く歩くと本格的な干渉が始まったらしくて囁き声が雫、香織、鈴、ユエ、シア、ティオ、坂上龍太郎にも聞こえ出す。

 

「『本当は期待していたのよね』……か」

 

「私は……『まだ求めてる癖に』だよ」

 

「鈴は『羨ましかったんだよね』だった」

 

「……『また繰り返すだけ』」

 

「『自分さえ居なければ』ですぅ」

 

「妾は『誰も受け容れない』であるのぅ」

 

「俺は……『もう止めたいよな』か」

 

 それが囁き声。

 

 それに付随する囁きも次から次へと響いてくるからか、少しずつではあるのだけど歩みが遅くなっている気がした。

 

(地球組の場合だと天之河以外は原典と異なっているみたいだが、ユエ達の闇は矢っ張り僕との触れ合いで薄まる程度では無かったみたいだな)

 

 一応、ユーキ経由で白夜からの原典情報として皆の心に在った闇は聞いている。

 

 多少の差違はこの際だから気にしないとして、当然ながらハジメの囁き声がユートに聞こえる筈も無かったし、恐らくは天之河光輝以外が普通にクリアする事は可能かも知れない。

 

 とはいえ、そうなると気にしないと思ってみても地球組の囁き声が違ったのは、矢張りちょっと気になってしまうけど。

 

「けど、私達は立ち止まれない」

 

 雫は決意の表情。

 

「そうだね、私達……三四人で帰る事はもう出来ないけど」

 

 香織もその表情は固い。

 

 三四人はエヒトルジュエに召喚されたユートを含むクラスメイトと畑山愛子、本来なら三三人の筈だったけどユートが含まれて一人増えた。

 

 畑山愛子――作農師。

 

 緒方優斗――錬成師。

 

 南雲ハジメ――錬成師。

 

 白崎香織――治癒師。

 

 八重樫 雫――剣士。

 

 谷口 鈴――結界師。

 

 園部優花――投術師。

 

 宮崎奈々――氷術師。

 

 菅原妙子――操鞭師。

 

 玉井淳史――曲刀師。

 

 坂上龍太郎――拳士。

 

 永山重吾――重格闘家。

 

 野村健太郎――土術師。

 

 遠藤浩介――暗殺者。

 

 辻 綾子――治癒師。

 

 吉野真央――付与術師。

 

 清水幸利――闇術師。

 

 中村恵里――降霊術師。

 

 天之河光輝――勇者(笑)。

 

 檜山大介――軽戦士。

 

 そして……

 

 相川 昇――戦斧師――故人。

 

 仁村明人――幻術師――故人。

 

 中野信治――炎術師――故人。

 

 斎藤良樹――風術師――故人。

 

 近藤礼一――槍術師――故人。

 

 鈴木優也――狙撃手――故人。

 

 荒川 直――盾術師――故人。

 

 森 翔太――発破師――故人。

 

 藤本萌依――魔法剣士――故人。

 

 相沢さくら――封縛師――故人。

 

 三浦利香――戦棍師――故人。

 

 横山加奈――拳士――故人。

 

 水島 栞――水術師――故人。

 

 星野琴音――雷術師――故人。

 

 これだけのクラスメイトが死んだ。

 

 生き残り二〇人に対して死者数は一四人とは、これを生き残りが多いと感じるか或いは死者数が多いと感じるか? いずれにしても彼ら彼女らの親にユートは死亡を告げている。

 

 きっと荒れただろう、ユートがユーキの肉体で仮面ライダーWと成って其処に居たから涙ながらに喰って掛かった親も実は居た。

 

 まぁ、檜山大介の親には自業自得のレッテルを貼った上で生贄の羊(スケープゴート)に成って貰ったが……

 

 檜山家の親のみならず、檜山大介とは仲の良かった三人の家族――中野家と近藤家と斎藤家も突き上げを喰らったのは言うまでもなく。

 

 特に相沢さくらの親はちょっとした会社の謂わば社長であり、彼女は社長令嬢だっただけに苛烈に四家を叩いたのだと後にユーキから聞いた。

 

「確かに……召喚された半数近くが逝ったから、とはいえ戦争に参戦すると決めたからには殺す事も殺される事も織り込み済みの筈だ」

 

「お、緒方! お前……」

 

「何だ? いの一番に参戦を表明した上に『守って見せる』なんて嘯きながら、半数近くを見殺しにして無様に生き延びた勇者(笑)様?」

 

「ぐっ!」

 

 流石にぐうの音しか出ない。

 

 此処で『そんな事実は無い』だとか言えば更に口撃を喰らうだけと理解はしていたから。

 

「休憩は終わりだ……行くぞ」

 

 立ち上がる【閃姫】達、正直に言うと天之河光輝はまだ疲労感が残っていたけど、言ったとしても置いてきぼりは確実だと鞭打つしかない。

 

 抑々にして香織達には甘いジュースを出しておきながら、自分には全く何も出そうとしないのだからムカつくのだ。

 

 自分は勇者で特別なのだから!

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 散発的に襲い来るフロストオーガやトラップはどうしても集中力を削ぐ、先程の休憩でリフレッシュをしていたから未だしもマシな精神的状況ではあるが、それでも天之河光輝からしたら堪える道のりとなっているのは間違い無い。

 

 折れた鉄剣とはいっても一応、ハイリヒ王国の錬成師のトップに天翔閃の魔法陣を刻んで貰い、何とか天翔閃を放つ事で闘ってこそいる天之河光輝だったけど、元々の威力が聖剣や宝剣の類いより劣るものだったというのに、折れてしまったからか更に威力が落ちているのだから苛立つ。

 

 囁き声がエコーするかの如く響いた。

 

「おい、光輝! 少し落ち着け!」

 

「俺は焦ってなんか無い!」

 

 落ち着けと言われての応えからして焦りが滲み出ているのに気付かない。

 

「っ!? うわぁぁっ!」

 

「光輝、どうした?」

 

「て、敵だ!」

 

 行き成り絶叫を上げた天之河光輝に坂上龍太郎が呼び掛けると、氷壁から飛び退いた途端に臨戦態勢を取るので流石に先行くユートも振り向く。

 

 臨戦態勢で折れた鉄剣を構える天之河光輝に、氷壁へと映る鏡影も左右逆の構えを取っていた。

 

「どうしたよ? 鏡影が嗤いでもしたか? ありがち過ぎるトラップにいちいち反応をしていたらヴァンドゥル・シュネーがしてやったりと、それこそ嗤い飛ばして来るぞ」

 

「うっ!?」

 

 実はその通りだったから絶句する。

 

「精神的にクるから見間違えたか、或いは精神的に揺さぶる為にも実際に嗤ったかは判らないが、取り敢えず注意だけはしておくか」

 

 そして再び歩き出す。

 

 その後は特に鏡面に映った自分達が異なる行動を取る事は無く、ユート達はようやっとと言うべきか通路の先に巨大な空間を見つけ出す。

 

「ふむ、羅針盤を見る限り迷路の終着点に間違いは無さそうだな。円上の空間の奥に荘厳なる扉というのが如何にもソレっぽい」

 

 何段にも重なる階層、上には煌めく太陽、下には煮え滾る池、その狭間となる階層毎に喜怒哀楽を象徴する人や動物や自然が彫り込まれていた。

 

「華美ではないけどこれもまた素晴らしい芸術の作品、大きさから扉というよりは大門と呼べるのかも知れないな。彼は天職が芸術家だったんだから芸術作品が在ってもおかしくは無いんだけど、芸術家は作品に大抵は意味を持たせるもんだな。となると、この彫刻はこの先の試練を暗示しているのかもな」

 

「……だけど只で門を通れる筈は無い」

 

「ですねぇ、絶対に厭らしいトラップとか設置されてるんですよ」

 

「であるな」

 

 ユエもシアもティオも疑う余地しか無いのだと断言をしている。

 

「いずれにしても留まる理由は無いな」

 

 大きめな機器に白い龍が描かれたAのカードを装填し腰に据えると、赤色でカード型をしている帯――シャッフルラップが伸びてきて腰へと装着されると、ユートがターンアップハンドルと呼ばれる部位を叫びながら引く。

 

「変身!」

 

《TURN UP!》

 

 オリハルコンエレメントと呼ばれる光のゲートが回転しながら顕れ、ユートがそれを潜り抜けるとその姿が変わっていた。

 

《Vanishing Dragon Blance Breaker!!!》

 

 その声はバックルから出た電子音声と異なり、電子音声っぽくはあっても生声に近い。

 

「仮面ライダーブレイドじゃなく白龍皇の鎧? 何で他とは違ってこれは神器な訳?」

 

 雫が呆れる。

 

「ちょっとあってね」

 

 『白龍皇の鎧』の姿のユートは仮面ライダーアルビオンと名乗っていた。

 

「全員、臨戦態勢で向かうぞ」

 

 ユートの言葉に頷くと、変身が出来ない天之河光輝を除き全員が変身する。

 

 部屋の中央にまで歩を進めると天井からまるで太陽と見紛う輝きが照らしてきた。

 

「これは……太陽っぽい光に、ダイヤモンドダストってか?」

 

「ユートさん! 危ないですぅ!」

 

「予知か!」

 

 シアの天啓から攻撃を予見したユートは即座に全員をシールドで覆う。

 

 それは純白の光線だった。

 

「レーザー兵器? 数千年以上前の人間にしては随分と洒落ているな」

 

 ヴァンドゥル・シュネーは芸術家ではあるが、科学者でも錬金術師でも無い筈だ。

 

「オスカー・オルクス作かね? 大迷宮にそれぞれの特色を出しているとはいえ、矢っ張り都合し合ってたんだろうな。ミレディの大迷宮なんかはそれが顕著だったしね」

 

 凄まじい閃光がダイヤモンドダストの氷片や、周囲の氷壁にて乱反射されて降り注ぐ。

 

「『光と闇の舞』かよ?」

 

 しかも時間制限付きらしく、上空の雪煙が徐々に高度を下げてきて下手したら僅かな時間で視界が閉ざされる羽目に陥る。

 

「急ぐぞ! 視界が封じられるのは避けたいし、僕の次元断絶結界もいつまで続けられるか判らないからな」

 

「次元断絶?」

 

「やっている事が事なだけに精神力の消耗も激しいんだ。それに純粋な仮面ライダーとは違って、仮面ライダーアルビオンは体力と精神力を徐々にだが削るからな!」

 

 何とか残り百mくらいまでの距離に来たと思えば車くらいの氷塊が落ちてきた。

 

「チィッ!」

 

 透明度の高い氷塊内に赤黒い結晶が見えているから、あれが魔物の類いだというのは理解が出来るから舌打ちもしたくなる。

 

 トランスフォームというには違う感じだったのだけど、ビキビキと割れる様な音を鳴らしながら氷塊が形を変えるとそれは五mくらいのずんぐりとした巨体――フロストゴーレムだった。

 

「ハルバードにタワーシールドね。数は此方に合わせていると考えられるから、恐らくはグリューエン大火山と同じく個人で一体を撃破しろって話なんだろうな」

 

 まぁ、此方は仮面ライダー軍団だから基本的に大した労力も要らない……勇者(笑)を除く。

 

「とっとと撃破するぞ!」

 

『『『『了解!』』』』

 

 天之河光輝を除く全員が頷いた。

 

《KICK!》

 

《FIRE!》

 

《BURNING SMASH!》

 

 氷のゴーレムが相手とあってユートが使ったのはスペードスートのカテゴリー5の『キックローカス』と、ダイヤスートのカテゴリー6『ファイアフライ』の異色なコンボ。

 

 一応だけど劇中で使われた以外のコンボも出来る様に造られている。

 

「ウェェェェイッ!」

 

 そして敢えてブレイドみたいな掛け声を上げてフロストゴーレムを粉砕した。

 

 見遣れば他の面々も仮面ライダーの必殺技にて粉砕、それが出来ていないのは矢張り天之河光輝だけであったという。

 

「っ! アルビオン」

 

《了解だ》

 

《Reflect!》

 

 その刹那、謎の光による攻撃が天之河光輝を目掛けて飛んで行った。

 

「ぐわっ!?」

 

 吹き飛ぶ天之河光輝はすぐに起き上がったかと思えばユートに抗議。

 

「な、何をするんだ!」

 

「それは此方の科白だ。今のは反射能力を使ったに過ぎない、反射した先こそ今の光の出所な訳なんだがな? 今のは天翔閃だった筈だ」

 

「うっ!」

 

「良かったな? 弱体化した天翔閃で。フルパフォーマンスの天翔閃なら今の防具じゃ死んでいたかも知れん」

 

 その科白に青褪める天之河光輝。

 

 天翔閃も剣技なんかでは無く魔法に過ぎない、聖剣ウーア・アルトには普通に天翔閃や神威といった魔法陣が刻まれており、詠唱と共に魔力を流す事によって発動をしていた。

 

 まぁ、実際に数千年~一万年前のミレディ達の時代には聖光教会の連中が、天翔閃を使いまくっていたのだから間違い無い事実。

 

 とはいえ、この世界の人間は魔力操作が出来ないのが当たり前とされており、出来て当たり前なユートからしたら可成り歪にしか見えない。

 

 天翔閃や神威もユートなら無詠唱で幾らでも放てるだろうから。

 

「しっかし、弱体化云々以前に役立たずだよな。常に役に立っていない処か害悪でしかない足手纏いにも程がある」

 

「そ、そんなこたねーだろ」

 

「雑魚を相手に無双しても意味が無いんだしさ、それに判断力が低いのは判る筈だろう?」

 

「判断力が低い?」

 

 坂上龍太郎は首を傾げた。

 

「狭いダンジョンで天翔閃を使ってメルド・ロギンスから拳骨を喰らったな?」

 

「うっ!」

 

「勝てもしない小ボスのベヒモスに突っ掛かった……のは坂上も同じくだけどな」

 

「うぐっ!?」

 

 はっきり云えばあれは天翔閃なんて大技を使う程の強敵では無く、広さが充分なら未だしも狭苦しいダンジョンで使うべきでは当然ながら無い。

 

 ベヒモスの時も早々に天之河光輝達が撤退をしていれば、メルド・ロギンス達の騎士団も早期に撤退という選択が取れていた。

 

 判断力が低いと詰られても当然だ。

 

「然るに、今度は敵性体である魔人族を相手にして莫迦みたいに剣を振り回して仲間を危機に晒した挙げ句の果てに、最大最後の好機を前にして剣を止めるなど言語道断の論外だ!」

 

「いや、けど勇者だからこそ!」

 

「蛮勇と勇気は別物だ、寧ろ勇者ならば無理をせず撤退してこその勇気!」

 

「うっ、それに相手は女だったしよ」

 

「はぁ? 女だから何だ?」

 

「……え?」

 

「魔人族が女子供老人だからと手を抜いてくれるとでも思ってるのか? 寧ろ餓鬼でしかなかったり戦闘力が皆無な女性に平然と攻撃するんだぞ。それとも魔人族には成人男性の軍人しか居ないとでも思っていたのか?」

 

 事実としてウルの町に於ける先頭後、名前も知らない魔人族は愛子先生を狙っていたのである。

 

 まぁ、序でにユートも狙ったのが運の尽きというやつで反射して殺してやった。

 

「相手が女だろうが子供だろうが殺すのが戦争、お前らはいったい何の為に召喚されて何をするのを自ら頷いたのかを忘れたのか?」

 

「そ、それは……」

 

 闘う覚悟など無い侭に、教皇から聞かされていた情報を鵜呑みに魔人族と相対して無様を晒す、ユートからしたら勇気(笑)共の愚かさ此処に極まれりといった話でしかない。

 

「お、緒方なら女子供や老人を平然とした顔をして殺れるのかよ?」

 

「何を当たり前な事を」

 

「なっ!?」

 

「敵対者と確定したら、一秒前に談笑していたであろう者でも笑顔で首を刎てやるさ」

 

 信じらんないといった表情となる坂上龍太郎だったが、然もありなんとばかりにユエ達は普通に頷いている辺りが理解をしていた。

 

「実際、フリートホーフはユートさんが相手にした連中は全滅しましたし、ミュウちゃんを商品扱いした貴族や商人は誰であれ皆殺しましたもん」

 

 シアがうんうんと頷く。

 

「フ、フリートホーフ?」

 

「フューレン三大犯罪組織の一つですよ」

 

「っ!?」

 

 驚愕に目を見開いてしまうのも仕方が無い事なのだろう、現代日本でそんな事をすれば893が相手だろうがマフィア相手だろうが犯罪は犯罪。

 

「言っておくが政府公認で非合法暗殺組織なんてのが日本に在るからな?」

 

「ハ? 緒方流ジョークか?」

 

「んな訳が無い。ま、本来は言っちゃ駄目なんだけど……消されたくなかったら吹聴するなよ」

 

 ガクブルと頷くのは余りの凄みに坂上龍太郎が怖れ戦いたから、実は笑みとは仲良くする証だとは限らないのであった。

 

 まぁ、本来の【ありふれた職業で世界最強】の世界には無い組織ではあるが、実は似た組織であれば存在しているのでは? と睨んでいる。

 

 事実としてユートが調べた限りこの世界に於ける地球にも神秘は存在していたから。

 

 神秘が存在するなら再誕世界の関西呪術協会みたいな組織、【カンピオーネ!】世界の正史編纂委員会みたいな組織も存在する筈。

 

 ならば元から政府公認非合法暗殺組織みたいなモノも在ったかも知れず、今の美晴が所属している組織と競合か敵対している可能性もある。

 

「まだ斃せないか」

 

 真面目に頑張ってはいるのだろう、然し本来なら虎の子な天翔閃は威力が半減以下な上に使ったらユートに攻撃、跳ね返されて無意味なダメージを負うから近接戦闘しか出来ないのに刃が半ばから折れてリーチが更に短い。

 

「置いて行きたいが……全員がクリアしないと、恐らくは扉が開かないんだろうな」

 

 或いは天之河光輝が死ねば開く可能性も有るには有るが、流石にそんな面倒なギャンブルに出ようとは思っていないユートは縮地で動く。

 

「う? 何だ、緒方! 今忙しい!」

 

「良いから貸せ!」

 

 折れた鉄剣を取り上げると刃に沿って掌を翳し上に上げていった。

 

「なっ!?」

 

 それはユートの魔力光たる闇色のエネルギー刃であり、感知力が特段高い訳でもない天之河光輝をして凄まじい威力を感じる。

 

「良いか? コイツを維持する魔力は一分だけ、お前では一秒も維持が出来ん。一分以内にアレを破壊しなかった場合はお前を殺す」

 

「っ!」

 

「死にたくなければ全力を尽くせ」

 

 天之河光輝は頷くと唯一の正解、赤黒い結晶への一突きにてフロストゴーレムを砕くのだった。

 

 

.




 ありふれ第三期の発表と第13巻の発売、名前が出なかったクラスメイトも無事に発表されたので死亡者の名前も挙げてみました。


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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