ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 仮に天之河光輝がユートとデザイアグランプリに出たら……無意味にユートを攻撃した挙げ句の果てに『仮面ライダー失格です』とツムリからの退場宣言を受けて、納得が出来ないと叫びながら日常に消えてしまった後にジャマトに襲われての死亡というコンボを受けると妄想した。

 尚、天之河光輝は仮面ライダーダパーン。




第110話:ありふれた雫の試練

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 ユートは口笛を吹きながら道を行く。

 

 内容は『One Vision』――【デジモンテイマーズ】に於ける究極進化用の挿入歌。

 

 天之河光輝がユートからの手助けを受ける事で漸くフロストゴーレムを斃し、開いたゲートを抜けたらたった独りきりといった状況。

 

 とはいえ、予想はしていたから怖れる必要性も無ければ焦る理由すら無い。

 

 この七つの大迷宮にはそれぞれにコンセプトが存在しており、試練はそのコンセプトに従って造られているというのをミレディから聞いた。

 

 この氷雪洞窟のコンセプトは恐らく自身の闇に打ち克つ事、本格的に闇と相対するなら余人など邪魔なだけでしかあるまい。

 

 因みに、原典では香織の試練に余人が思い切り干渉した結果として、ズタボロになった闇香織に香織が『えい!』とばかりにトドメを刺した。

 

「そろそろ出て来ないか? 優雅兄」

 

『何だよ、気付いていたのか』

 

「ゲートを抜ける際に優雅兄を中に感じなくなっていたからね」

 

 其処に居たのは白髪白目とユートの対極的な姿をした闇ユート、そしてその中身はユートの産まれて来なかった兄である緒方優雅。

 

『さて、何の為にかは解るよな?』

 

「勿論、エンドレスエイトの如く似たり寄ったりな事を囁かれたからね」

 

『あの糞アニメと一緒にされてもなぁ』

 

 【涼宮ハルヒの憂鬱】のアニメ第二期で試みられた回、ループモノというのは理解するのだけど八回も似た噺を延々と繰り返し観させられた視聴者は堪ったものではない。

 

『では答え合わせだ』

 

「そうだね」

 

『本当は怖かった……そうだろう?』

 

「ああ、だから香織や雫達にも早期に僕の素性やこの世界に対する僕の認識――つまり漫画や小説やアニメに描かれた世界だと伝えたんだ」

 

『フッ、だろうなぁ』

 

 それは一種のトラウマに近い。

 

「まったく、ジュリオには感謝するべきかどうかは微妙だよね」

 

『くっくっ、確かに』

 

 ジュリオ・チェザーレ――ユートが介入をしたβ世界線のハルケギニアにて、本来は教皇だったヴィットーリオ枢機卿の使い魔となった少年。

 

 ハルケギニア大陸に始祖ブリミルが降臨してから六〇〇〇年、始祖の御技を受け継ぐのはその血を伝える三王家と弟子筋が興した――トリステイン王国、アルビオン王国、ガリア王国、ロマリア皇国の中から四名。

 

 ジュリオ・チェザーレはそんなロマリアの神官であり、ヴィットーリオ枢機卿に召喚されて仕える使い魔でもあった訳だが、這い寄る混沌からの介入を受けていていざという時にユートの正体を明かす心算だったらしい。

 

 然しながら遅きに過ぎた。

 

 ユートという転生者が介入をするデメリット、それをメリットが越えてしまっていたから。

 

 少なくともあの場――ジュリオ・チェザーレによる糾弾の場となった其処に居合わせていた人間にとって、ユートは早急に排除せねばならない敵では無くなっていたのである。

 

 況してや、ルイズみたいなユートを義兄としてのみならず男としても愛していたのでは、当然の事ながら転生者だか何だかなんて関係無い。

 

 寧ろジュリオ・チェザーレみたいな新参者などに愛しい義兄を否定されたく無かった程。

 

 尚、ルイズは老衰で死ぬ直前にユートへの愛をはっきりと告白している。

 

 とはいえ、巧いタイミングでやられたら拙かったのも確かだったからこそ冷や汗を流したもの、故にユートにとってはジュリオ・チェザーレの行ったアレは間違い無くトラウマだった。

 

 潜在的な恐怖を感じたからこそ、ユートはある程度まで仲をふかめるかどうにかしたら転生者である事を話すし、場合によってはだが世界の深奥たる秘事すら話している。

 

 例えば、なのは達に【魔法少女リリカルなのは】に関する事を話した様に、或いは香織や雫達に【ありふれた職業で世界最強】に関する事を話した様に……だ。

 

『ふぅ、優斗があっさりと認めるから仕事が殆んど無かったな』

 

「最早、試練の内容は理解してる。僕も伊達や酔狂でン千年と生きてはいないさ」

 

『フッ、そりゃそうだ』

 

 老成をしている訳では無いが、こういう事態は何度も何度も何度も何度もしつこいくらい、諄いくらいに繰り返し遭ってきたのだ。

 

 文字通り経験値が高い。

 

『そうなると矢張り闘るしかないか』

 

 その手には赤い機器が握られており、もう片方の手に赤い龍が描かれたトランプに近いカード、スートは無しでカテゴリーはAの『CHANGE』と掛かれたプライムベスタ――スートが無いから寧ろワイルドベスタかも知れない。

 

『さぁ、あの時以来だが……』

 

 カテゴリーAを装填する優雅。

 

「そうだね、なら闘ろうか」

 

 ユートもアルビオンバックルを手に、スペードスートのカテゴリーAを装填。

 

「『変身っっ!」』

 

《Turn UP!》

 

《Open UP!》

 

 ユートがターンアップハンドルを引くとバックルがひっくり返り、ブレイドと同じ金色のエースの紋様が輝きオリハルコンエレメントを顕現し、それを潜り抜けると白い龍が人型となったアーマーに身を包んだ白龍皇の鎧姿に。

 

《Vanishing Dragon Balance Breaker!!!》

 

 そして優雅がミスリルゲートを開くとスピリチュアルエレメントが顕現し、それを潜り抜けると似てはいるが異なる赤い龍が人型となったアーマーを着込む赤龍帝の姿へと変わる。

 

《Welsh Dragon Balance Breaker!!!》

 

 ユートは嘗ての闘いにて昔の親戚筋――分家に当たる家の長男の転生者を討ち、その男が得ていた転生特典の一人たる『赤龍帝の籠手』を手に入れていた。

 

 ユートは主に『白龍皇の光翼』を使っていて、『赤龍帝の籠手』は主に優雅が使っている。

 

 使い方は見ての通りユートがブレイバックルを基に造ったアルビオンバックル、優雅がレンゲルバックルを基に造ったドライグバックルで変身をする事で姿を禁手化させたモノへ変えていた。

 

 元々、ユートのはブレイバックルその物だったのを現在はアルビオンバックルとして殆んど専用化させているが、【闘神都市】世界で造った際は【デート・ア・ライブ】世界の精霊達の力を扱える様にと構築をしていた物。

 

 その世界で出逢った弁財天のサラスワティから力を借りて『CHANGE』のカードを造り出して、フュージョンのカードに精霊の夜刀神十香、更に予定上のフュージョンだったのは五河琴里の力、そしてエボリューションにはアルビオンの力を当てていた。

 

 因みにだが、五河琴里の力に関しては夜刀神十香のと違って何の調整も施していなかった為に、琴里の精霊化した姿――『神威霊装・五番(エロヒム・ギボール)』の侭で変身をしてしまって、女装という視るからに変態チックな姿で猛大人と戦闘をする羽目に。

 

 まぁ、五河琴里でググればきっと意味も理解は出来るであろう。

 

 現在は基本形態が禁手化の姿、フュージョンの姿が覇龍、そしてエボリューションが……

 

 ユートと優雅が更にカードを左手首に装着された『ラウズアブゾーバー』へ装填。

 

《ABSORB QUEEN!》

 

《ABSORB QUEEN!》

 

 新たなカードをスラッシュ。

 

《EVLUTION KING!》

 

《EVLUTION KING!》

 

 ラウズアブゾーバーは仮面ライダーレンゲルが持たない装備だが、同じシステムとはいってみても此方は普通に左手首へと装備をしている。

 

《The Over Tker God Dragon! Exceed×Extreme! True!!!》

 

《The Over Tker God Dragon! Exceed×Extreme! True!!!》

 

 それは本来の神器の持ち主たるヴァーリ・ルシファーが目指した極致の一つの形で、超越者として神なる龍を顕現、極度に限界を越えた存在――白龍神皇と赤龍真帝の姿であったという。

 

「さぁ、始めようか優雅兄」

 

『嘗ての闘いの再現を……な!』

 

 既に顔まで鎧のパーツに身を包み表情はお互いに見えていないが、どちらも凶悪な笑みを浮かべているのは理解をしている。

 

 そして『ありふれた職業で世界最強』な異世界で白と赤の二色がぶつかり合った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 雫は取り敢えず歩いている。

 

「いつの間にやら独りきりだし、ゲートを通った瞬間に転移させられたみたいね」

 

 溜息を吐きたくなったが今は歩くしかないと、我が身を叱咤激励しつつ歩いていた。

 

「ま、いずれ試練に突き当たるでしょ」

 

 お気楽極楽という訳では無いが、深刻になったからといって今の状況が改善をするものでも無かったし、雫も中々にユートの思想に染まってきたのかも知れない。

 

 ある程度を進むと漸く気配が現れた。

 

 その腰にサソードヤイバーを佩いた白髪をポニーテールに結わい付ける美少女然とした彼女――正しく2Pカラーな八重樫 雫である。

 

「うわ、何て美少女!?」

 

『随分とまた図々しいというか、或いは不貞不貞しいわね? 正直、吃驚するんだけど?』

 

 確かに美少女は間違い無く、白髪ポニーテールに白磁の肌を持つ純白の服装は雫の物と形その物は変わらず、瞳はまるで魔物の魔石の如く赤黒く鈍い輝きを持っていた。

 

 そして彼女が佩いているサソードヤイバーも真っ白だ。

 

 互いにサソードヤイバーを抜刀して構えると、どちらとも無く無拍子で縮地を行う。

 

「聞いてはいたけど、矢っ張り貴女が私の試練。つまりら貴女を叩き伏せないと駄目な訳ね」

 

『そういう事よ!』

 

 けたたましい金属音を鳴り響かせながら互いに下がり、また再び縮地による速攻を行って手にしたサソードヤイバーで鍔迫り合った。

 

 変身の意味は無い。

 

 元々、仮面ライダーへの変身は人間の身に合わぬ怪物を相手にする為のものであり、相手は強いかも知れないが結局は雫本人と変わらない能力でしかなく、つまりは御互いに変身をしたとしても同じ仮面ライダーサソードなら何も変わらない。

 

 同じ身体能力に同じ装備品、使う技さえ同じとあらば勝敗を分けるのは違う部分――精神的な揺らぎとなろう。

 

『ふふ、どうやら愛しい人からの忠告は活きているみたいね?』

 

「それはどうも……」

 

『ならば、その研ぎ澄ませた刃にて貴女()を斬り裂いて見せなさいな! それが出来なければ貴女はこな夢に溺れて二度と愛しい彼に抱かれる事など無いと知りなさい!』

 

 予備動作の無い無拍子とまるで地を縮めたかの如く速度、しかもステイタスによる素速さの値も本来の勇者(笑)すら越える為、普通の人間の目には留める事すら難しい超越した戦闘速度の実現を容易く行っていた。

 

(縮地に縮地を重ねる重縮地も有るんだけれど、それは向こうも変わらない筈よね……)

 

 縮地は発動してから真っ直ぐ進む為の移動技、其処に更に縮地を重ねて超越速度を維持した状態での方向転換、更なる加速化をも現実のものとするのが重縮地である。

 

(やってみる……か)

 

 一瞬の瞑目……

 

『なっ!?』

 

 揺らぎと共に雫の姿が消えた。

 

『がっ!』

 

 それでも攻撃の刹那には速度が落ちてしまったからか、それを気取られてしまったらしく白雫は雫の攻撃を腕に掠らせる程度で躱す。

 

 雫は軽く舌打ちした。

 

「上手くいかなかったか」

 

 残念そうな表情を浮かべる辺り狙ってやったのは間違い無い。

 

『今のは……いったい……八重樫の技にあんなのは存在していない筈……』

 

「さて、何かしらね?」

 

 瞬間的に思考する。

 

(矢っ張りこの2Pカラーの私はゲートを抜けた際の情報を基にして造られてるのね。つまり今の私の技はコイツに解らない……何故なら元々の私が使う技じゃないから)

 

 今の技は一応だけど雫も基礎理論? みたいなのはユートから教わっていたもの。

 

 【緒方逸真流宗家刀舞術奥義――颯眞刀】という技で、基本的には緒方宗家の者で『印可』を得た人間でないと教えては貰えない。

 

 前々世でもユートは印可を得られなかった為、この技を教えて貰えなかったけど前世で召喚された白亜が、基本となる技術やら何やらを教えてくれたので完全なものとして修得をしていた。

 

 ユートは請われて雫に概要と修得に必須な事を教えていたが、不完全とはいえまさか使えたとは思いも寄らないであろう。

 

(使えて良かった……けど、脚のダメージが可成り酷いわね。矢っ張り不完全だったのは未だ上手く発動が出来ないからかしら?)

 

 またミスをすれば闘いが不可能になって敗北をするのは必至、今度こそ斃さないと動けなくなってしまうのは痛い。

 

(抑々、使う為の方法=走馬灯を視るって意味が判んないわよ!)

 

 【緒方逸真流宗家刀舞術奥義――颯眞刀】とは思考の超加速化、そしてその思考に併せた身体能力の引き上げによる超高速移動の奥義。

 

 その修得には思考加速化を行う土台作りとして走馬灯を視るというのがあり、あれは死に際して己れの過去を高速で想起するという思考加速化の土台としては最適と……初代にこれを教えた人物が曰っていたのである。

 

 まぁ、事実として【颯眞刀】は確かに修得が叶ったので初代もこれを正式に後世へと伝えた。

 

 尚、緒方家が全体的に行う筋力トレーニングも初代に【颯眞刀】の訓練法を伝えた人間が教えたもので所謂、ピンク筋の概念を数百年以上は前の戦国時代で普通に持っていたのである。

 

 名前は白とされているが、実は本当はもっと長い名前で呼び難いからシンプルに『白』となり、初代以降の宗家にせよ分家にせよ『白』の名前を入れるのが慣習となっていった。

 

 その理由は女の子に限って基本的には『白』の遺伝子がモロに出て、凄まじいまでの美少女として世に産まれてくるからだ。

 

 その所為というかお陰でというか、時の支配者から求められる事も多かった為に権力自体は持たなかったが、それでも様々な優遇措置を受ける事が出来ていたのである。

 

 奥義の名前が【颯眞刀】なのは走馬灯を視る事が訓練となっているからで、雫も実はその訓練法として走馬灯を視ていたから土台は出来ていた。

 

 とはいってもそれ以上の修業をしていた訳では無かったから、未だ未修得で今回も取り敢えずは発動しました……という感じか。

 

 使えるだけの筋力も足りてなかったから極度の疲労と筋断裂――筋肉痛が起きてしまった。

 

(八重樫流は確実に駄目でしょうね)

 

 少なくとも、既に修めている八重樫流は相手にとっては既知の技でしかあるまい。

 

『フッ、頑張るわね? 矢張り好きな男の興味を射止めたいからかしら?』

 

「何の話よ?」

 

(貴女)は前から……というか『緒方君』と呼んでいた頃からね、彼に好意を持っていたじゃない』

 

「なっ!?」

 

 ビクッと肩を震わせた雫の顔が紅い。

 

『香織の突撃もあって南雲君は周りから痛い目で睨まれていたにも拘わらず、彼はそんな南雲君に対して優しかったし檜山達から庇ってもいたわ。そんな彼に(貴女)は興味を抱いていたもの』

 

「くっ!」

 

 嘘では無いというのが見て取れる態度だけど、そんな態度を取らずともバレバレである。

 

『光輝は素敵な王子様には成ってくれなかった、だけど南雲君をああやって庇えている彼ならば或いは? と思ったのも確かよね』

 

 間違いではない、疎まれているハジメを周りから疎まれるのを怖れずに庇うユートは、雫にとってみれば光輝よりも王子様らしいと考えなかった訳では無かったから。

 

 単純な顔の作りは光輝程のイケメンでは無い、然しながら普通に整っているから寧ろユートの方が好ましいし、鍛え方も見れば細身ながら筋肉が凝縮されたみたいな……坂上龍太郎とは違う方向性でのしなやかな筋肉だった。

 

 後から聞いた話、ピンク筋という坂上龍太郎みたいな赤筋主体や天之河光輝みたいな白筋主体の中間みたいな筋肉を鍛え、見た目には確かに細くても実際には絞り込んだ筋肉の塊なのだとか。

 

『実際、奈落の底で彼に肢体を求められた時だって怒りながらもドキドキしていたわね』

 

「ち、違っ!」

 

『どちらかと言えば怒ったのは香織も対象だったから嫉妬よね? 香織は女の子として(貴女)から見ても素敵だもの、それで彼が香織を抱いたりしたら興味の大半が香織に行きかねないしね?』

 

「っ!」

 

『まぁ、悪いけどスタイル的にも愛ちゃん先生は相手にならないと思っていたわね』

 

「うっ!」

 

『でも、積極的にユエさんを抱く彼を見ていたらそれも揺るいだけど……』

 

 余りにも的確過ぎて耳を塞ぐ、ユートがマジなロリコンでは無いのは雫や香織やシアやティオを確りと抱いているから疑念は持っていないけど、それでもユエや愛子先生みたいなスタイルであっても勃つのだから……とはいってもユエくらいの美少女なら仕方無いというのもある。

 

 だけど闘う為のアイテムとはいえ、ユエにだけ贈り物をしたのも嫉妬心に駆られたものだ。

 

 形としては飽く迄も愛子先生と香織と雫というのは要救助者扱い、しかも足手纏いだから結界の中で待つ様に言われてそれでも付いて来た感じ、ユエの場合は助けたのは確かだったけど王国は既に滅亡してしまい、抑々にして叔父に裏切られる形で封印されていた為に頼れるのはユートだけ、だから全身全霊を以てユートの女に成る事を了承した上で抱かれたのだから立場からして違う。

 

 それは間違い無く恋人――愛人? セフレ? どんな立場であれ想い想われる関係としてユートがユエを抱いていた為、肢体の凹凸とかは余り気にしないのかも知れないと衝撃を受けた。

 

 『始まりの四人』なんて言われ、天之河光輝や坂上龍太郎と一緒くたにされていた雫とは違い、愛子先生は寧ろ戦争参加を止めたがっていた立場だし、よく考えれば愛子先生だけは自分や香織と異なる立ち位置だと気付いてしまう。

 

 焦りも有ったからだろう、当時は未だ自分の気持ちには気付いて無かったから『チョロイン化』したのだと思い込んだが、今ならば雫もはっきりと理解をしていた。

 

『特別な好意を持つ相手が居なかったから肢体を差し出した? 嘘ばっかり、(貴女)は優斗に興味津々で南雲君が虐められて彼が助ける度に話し掛けていたじゃない。積極的に会話がしたかったから』

 

「……それは」

 

 あの頃の雫は自分の気持ちには気付いていなかったし、肢体を求められては素直に喜べなかった理由の一つは香織と愛子先生も……だったから、つまり自分以外にも抱きたいなんて言われたから矢張り嫉妬心がバリバリだったのである。

 

 本当に気付いて無かっただけで。

 

 とはいっても、ユートは別世界で様々な美女や美少女を抱いていた筈で、雫の嫉妬心なんて単なる理不尽でしかないのも理解をしていた。

 

(ペルソナの世界にも行った事があるみたいだったし、矢っ張りペルソナ世界の女の子とも仲好くなって……)

 

 当然ながら仲好くなった最終形態は文字通りでのジョイント――ユートの凸ジョイントと相手の凹ジョイントの合体! である。

 

 紅くなる雫を視た白雫はジト目となって呆れた口調で呟く。

 

『まさか(貴女)、今……エッチぃ妄想をしたわよね? 大胆不敵というか何というか……』

 

 雫が妄想したのはキタローでは無くハム子(汐見琴音)の方の【ペルソナ3】の主人公と、岳羽ゆかりと桐条美鶴と山岸風花とオマケでアイギスが御乱交をしている場面であったと云う。

 

 セクサドールじゃあるまいし、アイギスがとかいうのは行き過ぎる妄想だと思うが……

 

 抑々にしてその為の器官が無い。

 

(そういえば、ベルベットルームにも美女とかが常駐していたわよね? 【ペルソナ3】でいうならば確か……エリザベスだったかしら?)

 

 何と、先程の妄想にエリザベス迄もが加わって更にエロティカルが加速した。

 

 因みにだが【ペルソナ4】ではマーガレットとマリー、【ペルソナ5】ではカロリーヌとジュスティーヌ――ジョグレス進化でラヴェンツァ化、【ペルソナ3P】のテオドアを含めてベルベットルームの住人であり、マリーを除くと造魔という種で姉妹弟といった関係にある。

 

『ちょっ、(貴女)ってば一応は戦闘中に何を濡らしてるのよ?』

 

 人数が人数だから交わるのがユートのみならず桐条美鶴×岳羽ゆかりに、アイギス×エリザベスを視ながら山岸風花を弄りつつハム子に挿入しているとか、いつも()()()()()()()()()()()妄想に加えたからか思わずショーツが湿っていた。

 

 尚、『虚ろの森のツンデレ詩人』は番長に首ったけだったのでユートとは大した繋がりも無い。

 

 そろそろだろうか? 雫は不自然にはならない程度に足でコンコンと地面を叩く。

 

(良し、痛みは無いわね)

 

 態々、恥ずかしい思いをしてまで白雫の科白を聴いていたのはダメージが大きい脚の痛みを和らげる為であり、その目論見は見事に当たっていたからニヤリと口角を吊り上げそうになった。

 

 雫が持つ魔導具には各種バフが掛かり、各種のデバフを防ぎ、HPとMPを少しずつとはいえども回復させる機能を盛り込み、ユートとの間では特に必要性も無いけど『異物排除』の機能が付けられている為、ウィルスは元より()()()()に至るまで排除してしまえる。

 

 前までは首輪という形で、しかもユートが魔力を励起させれば青爪邪核呪詛(アキューズド)の効果を持つ針が首を貫き通し、その対象の肉体を破壊されてしまい醜いヒキガエルへと再構成されてしまう。

 

 一瞬で手足の爪が真紅に染まって凄まじい痛みを与えながら死なせず、記憶や知性を保持した侭に一切の力を持たないヒキガエル化させられるのだから堪らない。

 

 今は首輪を外され指輪を貰っていて勿論だが、青爪邪核呪詛(アキューズド)なんて物騒な魔法も付いていなかった。

 

 指輪の徐々にHP回復効果――リジェネーションの力で、雫は肉体的に疲労したり傷付いたりしても時間を掛ければ治る。

 

 因みに、実際の使い所はユートとセ○クスする時の疲労の回復に努める時だったり、余り無いが万が一備えで避妊の効果も見込めるのが大きい。

 

 問題は果たして出来るのか?

 

(見取り稽古……今の今までの私が全く使った事が無い技を使う。見ていただけの技……優斗の使う剣技――否、刀舞術の【緒方逸真流】を!)

 

 雫は武道家である。

 

 武の道を歩む者であり、武術家――武を糧の術とする者では決して無いけど八重樫流の武道は元より八重樫流の武術を武道として和らげた技で、その根幹には武術の部位が端々に見え隠れした。

 

 彼女からすれば視るという行為で技術の模倣も可能、簡単では勿論無いけど今この時にやれなくて何の剣士か!?

 

「そろそろ再開しましょうか」

 

『あら、私との話が恥ずかしくて動きたくなったのかしら? なら付き合って上げるわよ』

 

 雫と白雫が互いに色の異なるサソードヤイバーを手にして構えを取る。

 

 そして縮地により駆けると鍔迫り合いに持ち込んで来る白雫、雫もそれへと応じる様に白雫が持つサソードヤイバーに刃を合わせた。

 

 顔がキスくらい出来そうな程に近付くと成程、白い髪の毛に白色人種も斯くやな肌は兎も角としても、顔形はまるっきり双子の如くまんまで鏡でも見ている気分となるくらい。

 

 吐く息が白いのも人間を思わせるだろうけど、これは大迷宮に魔力により編まれた人造の知性体――否、そう見えるだけの謂わばドールに過ぎないのであろう。

 

 云ってみればスパロボに登場するシャドウミラーの量産型Wよりマシな存在、自意識だって在る様で無いと云っても過言では無かった。

 

『どういう事?』

 

「何がかしら?」

 

『先程からふらふらと、八重樫流の動きを忘れたのかしら?』

 

「どうでしょう……ねっ!」

 

 ふらふらと……とはユートの刀舞術を模倣しているが故、正確にはふらふらしているのでは決して無く力を篭める場面と抜く場面を取捨選択し、適切に攻撃と回避を繰り出していくのが本来的な【緒方逸真流宗家刀舞術】の真髄。

 

 雫の場合は抑々にして今初めて使った刀舞術に自らが翻弄されてしまい、まともに斬り合う事が却って困難となっているのだ。

 

(くっ、舞いながら剣を揮うって意外と難しいんだけど? 優斗はよくあんな風に振れるわね)

 

 【緒方逸真流】を使う舞士は初めからこの動きが出来る様に肉体を作るし、幼い頃から基本的に舞術を行って来たのだから当然ではある。

 

 初代の妻たる『白』が伝えた肉体の鍛錬術により作られるピンク筋、その瞬発力と持続性を併せ持つ筋肉を元にして通常なら有り得ない運動量の舞いを踊りつつ、敵へと斬り付けていくその様は正しく舞術と呼ばれるだけの美麗さが有った。

 

 戦国時代の戦場(いくさば)にて文字通り『蝶の様に舞い、蜂の様に刺す』を地で往き、何処ぞのゲームが如く戦国無双をして勝利を導いてきたのだ。

 

 ユートも戦闘型では無いとはいえ幼い時分からやってきたからには、当然ながら今のテッテッポリでも踊るかの如く雫より遥か彼方マシである。

 

 緒方家は武家であった初代と謎の少女『白』の間に産まれた子供達により運営されているけど、初代の刀士の力と『白』の芸師の力が遺伝をして顕れる訳だが、大概は極端な出方はしないにしても戦闘型と技芸型に分かれていた。

 

 戦闘型は文字通りに戦闘へと特化していて強さも可成りのものとなり、技芸型は戦闘力はそこそこのレベルで芸術方面に才能を持つ。

 

 ナメック人に於ける『戦闘型』と『龍族』みたいなもので、ユートの前々世の妹の緒方白亜は謂わばバリバリの戦闘型であったが故に、その才能でユートを遥かに越えていたから道場主延いては宗主として祖父に指名された。

 

 祖父も戦闘型だったから解ってしまったのだ、ユートでは決して白亜には勝てない……と。

 

 何故ならユートは父親と同じく技芸型、つまり()()()()に才能を伸ばすべきだったからである。

 

 事実としてユートは前々世の時から『創る』や『造る』という方向に長けており、刀鍛冶師から教えを受ければ初っ端からそれなりの刀を鍛てていたし、絵を描かせれば矢張り初っ端からそれなりの物を描いていた。

 

 聖域での黄金一二宮の闘いの最中に聖衣修復に興味を懐いたのも、ユートの中には在るのであろう某かが琴線に触れたからであろう。

 

 唯一の欠点としてユートは嘗ての父親とは違い『独創性』に欠けていた事、皆無では無かったがそれでも評価を受ける程かと敢えて訊かれたならば首を傾げるしかない。

 

 故にユートの芸術は基本的に模倣、贋作なんてやらないしそんな事する必要性も無かったけど、若しやらかしていたらどんな腕の立つ鑑定士でも全く見分けが付かない贋作を造り上げた筈だ。

 

 得意なのは創作では無く既に形を持った何かを造る事、例えばガンプラを買って作品として出せば大抵は某かの賞を得ていた。

 

 本気で絵画を描けばそれこそ数千万を出してでも欲しがる好事家は幾らでも湧いてきていたし、ユートが鍛えた刀も二十歳になった頃にはそこら辺の本職を軽く飛び越えていて、矢張り好事家なら数千万は軽く出して手に入れている。

 

 だけど父親には敵わなかった、理由は独創性の足りなさによるものだとはっきりしていたから、それを補えないか試行錯誤をしていたなら或いはイケたかも知れないが、生憎とユートは刀舞術を――適性の無かった方を選んでしまった。

 

 この話を寝物語に、抱かれた後のピロートークで話された時には『何の冗談』かと思ったけど、顔が真剣そのもので決して茶化したりは出来ずに聴き入るしか出来なかったのである。

 

 ユートが曰わく、その戦闘力の高さは二度にも亘る記憶保持転生と幾百幾千回もの疑似転生で、魂の格が大幅に肥大化しているが故のある意味で転生の副産物であったという。

 

 その上で今生の転生先が彼のナギ・スプリングフィールドとアリカ・アナルキア・エンテオフュシアであり、この二人の遺伝子を完全に取り込んでいるから戦闘センスや魔力の大きさや特殊性が普通に出ていて、魂の格と相俟って戦闘能力を遥かに向上させるに至っていた。

 

 故にこその力だとはいえ、雫は『だからどうした!』と叫びたい。

 

(足りないモノを補ってきたのは優斗も同じよ、なら私に出来ないなんて絶対に言わない!)

 

 八重樫流の癖が足を引っ張る。

 

(【緒方逸真流】のみの動きでは今の私にとって八重樫流の動きが邪魔で阻害される。それならば其処を逆手に取るまでよ!)

 

『動きが変わった!?』

 

 雫がやったのは八重樫流の動きに【緒方逸真流】を混ぜるという事、先程までは純粋に【緒方逸真流】を使おうとして八重樫流に足を引っ張られていたが、逆転の発想で八重樫流で動きながら【緒方逸真流】を交え始めたのだ。

 

『くっ!』

 

 よく識る筈の動きに識らぬ行動が混じるだけ、それだけなのに白雫は全く付いていけない。

 

 それでいて白雫の動きは雫のよく識る八重樫流であり、つまりは動きが至極読み易いというメタを充分に張れる状況であった。

 

『まさか!? 有り得ない!』

 

 カッカと焦る白雫に反比例するかの様に雫の頭は冷え切り静かなもの、そして何故か思考加速をされている訳でも無いのに動きが緩慢に見える。

 

『えっ!?』

 

 次の瞬間には白雫のサソードヤイバーを持っていた手首と頭が落ちていた。

 

「【緒方逸真流刀舞術】――弐真刀」

 

 まるで現実味が無い表情で今までの余裕がかなぐり消えた白雫、人間では無いからか或いは切れ味が良くて未だに死んだと肉体が認識していないからか、今も彼女は頭だけで生きている。

 

(多分、これが【閃姫】契約をする時に言っていた特典の一つ……輝威(トゥインクル)ね)

 

 それは極稀に【閃姫】へと顕れる特殊能力の類いらしく、発現したという例は本当に稀であった為に保持者は余り居ないのだとか。

 

 名前は中二病臭いけどユートが決めているとも聞いたし、其処は別に拘りも無かったから雫としては問題無く決めて貰う心算だ。

 

 輝威を獲たらユートにも判るそうだから雫の勘違いかも知れないという懸念自体、ユートに自身を見せて鑑定をして貰えば済む話である。

 

『強いわね……(貴女)

 

 ちょっと不気味だけど白雫が諦念の表情を浮かべながら話し掛けて来た。

 

 

.




 ペルソナは3を起点に話していましたが、実際には書いた通り普通に【女神異聞録ペルソナ】や【ペルソナ2】を通った上で【ペルソナ3】や【ペルソナ4】や【ペルソナ5】と進みます。

 そして【ペルソナ3】はスパロボOGと同じく、版権版で男女の選択が有った場合は双子で登場みたいな理論で、舞台版での名前で汐見兄妹として存在しています。

 まぁ、兄妹にするからには有里 湊や結城 理にすると妹の名前が出て来ないし……






勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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