ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 ペルソナとかなのはとか、後はユートの方での原典の書き直しとかやってなら一ヶ月を越えた。

 本当はせめて一日に上げる予定が……





第111話:ありふれた仮面

.

 雫は何とか勝てた、ダメージははっきり云って自傷に近いモノしか無かったけど、それは飽く迄もユートの刀舞術の模倣が上手くハマったからに過ぎなかったし、下手に黒歴史を暴かれていたら闘い処では無くなっていただろう。

 

「っ! 颯眞刀のダメージがまた……矢っ張り、ちょっとキツかったかぁ」

 

 余り気持ちが良いモノでもない自らの写し見にも近い生首を見遣りつつも呟く。

 

『試練の突破、おめでとう』

 

「有り難うと言っとくわ」

 

 先程までの厭らしい笑みでは無くて微笑みを浮かべる白雫、其処にあるのは嫌味でも何でも無い明らかな祝福に他なら無い。

 

『それにしても、即興で彼の技を使うとか随分と入れ込んでるわね?』

 

「わ、悪いかしら?」

 

『いいえ、良い事だと思うわ。(貴女)の写し見たる私としては羨ましいくらいよ』

 

 その笑みは確かに悪意は無さそうなのだけど、矢っ張り首だけというのは不気味である。

 

『そうね、(貴女)は頑張ったし……御褒美を上げても良いかしら』

 

「御褒美?」

 

『ええ。私がこうして(貴女)の記憶を基に顕在化しているのは魔力によるものよ』

 

「そうでしょうね」

 

『つまり、私を吸収したなら力を獲られるわ……多分だけどね』

 

「多分って……」

 

 恐らくは白雫も確証が無いか、下手をしたなら単なる罠という事も有り得る話だった。

 

『心配しなくても今更、試練をクリアしている(貴女)に罠なんて仕掛けたりしないわよ』

 

「……そう」

 

 確かに白雫の態度は最早、雫に対して全く悪意が無いのは理解もしているから信じられそうであったし、この大迷宮を造った人物が余程の腐れた性根でもない限りは大丈夫だろう。

 

 例えば某・ライセン大迷宮みたいな。

 

 因みにだけど、どうやらこの氷雪洞窟に於けるもう一人の自分の人格は意地悪な部分があって、模した人間のあれやこれやがプラスされて暴走をする場合もある様だ。

 

 故に、原典で天之河光輝の2Pカラーはあんなにド派手な暴発をしてくれた。

 

「本当に力を?」

 

『魔力を吸収するのだもの、間違い無くとまでは言い切れないけどイケるとは思うわ。とは言え、吸収されたら私の魔力は無味無臭みたいな感じになるし、獲るべき力を確りイメージしておかないと無駄に魔力が増えるだけになりかねないわね』

 

「どうすれば吸収出来るの?」

 

『私の首を身体に置いて、私の手を身体の上へと添えなさい。そうすれば後は此方でやるから』

 

 雫は言われた通りに白雫の生首を身体の上へと置きその右手を添える。

 

「何だかDBでピッコロがネイルと同化するみたいなポーズだわ」

 

『似た様なものよ』

 

 白雫が光を放って確かに雫へと魔力が流れつつあるのが見えた。

 

『イメージしなさい、(貴女)が欲しい力を!』

 

「イメージ……とは言われても」

 

 ギュンッ! という音を大きな響かせながら、白雫が雫の体内へと入り込む。

 

「んっ!?」

 

 それは一種の性的な興奮を以て行われたからだろうか、ふと雫の脳裏にフラッシュバックをした記憶の欠片……断片が過っていた。

 

「ああ、そういう事になる訳ね」

 

『我は汝、汝は我。我は汝の心の海より出でし者――トリトンの娘にしてアテナのもう一つの名、そしてアテナ御姉様に刃向かいし女神パラス也』

 

 雫の背後にまるで守護霊であるかの如く顕現化したのは、見た目には決して白雫には見えなかったけど間違い無く白雫としての意識を持つ存在として凛々しく浮かんでいる。

 

「確かに相応しいわ、もう一人の私。だけどね、パラスなのは良いのよ? 何だか【ペルソナ3】のアイギスが使う初期ペルソナのパラディオンっぽい名前なのも呑み込むわ。だけど金髪緋色の瞳に褐色の肌って、諸に【聖闘士星矢Ω】のパラスよね……それは!?」

 

 白雫の姿から少女姿の女神パラスに成っていた白雫、即ち八重樫 雫のペルソナとして顕現化をしたのが彼女だった訳だ。

 

『貴女、彼が聖闘士星矢を好きな事を知ったから香織には内緒で【聖闘士星矢Ω】を視聴していたからね。何と無くパラスを思い浮かべてしまったんじゃないのかしら?』

 

「って、普通に喋れるの!?」

 

『ペルソナは貴女が持つ別の一面が仮面となって顕れた存在、だからか多少の会話くらいなら出来るみたいなのよね。実際、ペルソナでは作品内の主人公達が使う初期ペルソナや後期ペルソナは喋っているじゃない』

 

 やっていた事は単なる自己紹介に過ぎないが、事実としてピアスの少年の青面金剛やタッちゃんのヴォルカヌスやマーヤのマイアやキタローのオルフェウスや番長のイザナギやジョーカーのアルセーヌなどが普通に自己紹介程度はしていたし、何なら【ペルソナ5】でのペルソナ達なら普通に自己紹介で喋ってきたくらいである。

 

「確かにそうだけど……ね」

 

『あ、今回は初回召喚サービスで召喚が出来たけど次回からは何らかの召喚器が必要よ』

 

「そうなの?」

 

 【ペルソナ3】ではキタローやハム子を始めとして、基本的にはストレイガを除く誰も召喚器を用いてのペルソナ召喚をしていた。

 

『必須では無いのは【女神異聞録ペルソナ】とか【ペルソナ2】からも判る通りなんだけれどね。単純にゲームでの設定が変わっただけってメタは要らないわよ?』

 

「判っているわよ……」

 

 それに雫はユートがペルソナ召喚をしたのを見た際のポーズ、右手を謂わば無敵ジャンケン的な形にした親指と人差し指を伸ばして、残り三本は握り状態にした指鉄砲な形にして頭の側面へ突き付けたアレは、間違い無く【ペルソナ3】に於ける召喚器をモチーフとしていたのは明らか。

 

 ユートが前々世で死んだのが西暦二〇一三年かそこらで、ならば【ペルソナ3】をプレイしていたのは恐らく間違い無いだろう。

 

 顔立ちが同じだった筈の白雫は金髪緋目で褐色の肌となり、唯一と云える未だ雫と似ているのが顔を構成する線とパーツというペルソナ版となったパラス。

 

『あ、そう言えばだけど』

 

「何よ?」

 

『何故かは判らないけどね、【契約】よって叫びたかった気がするわ』

 

「は? 何で?」

 

『だから判らないんだってば』

 

 何故か? それはパラス=白雫にも判らなかったりするのだが、名乗りの際には特殊BGM付きで『契約』をしたかったと思っていた。

 

「何だかそれって、頭が滅茶苦茶痛くなって顔から血が噴き出すんじゃないかしら?」

 

 脳裏に浮かぶのは苦しみながら頭を抱えながら絶叫し、貼り付いた仮面を無理矢理に引っ剥がして顔が血塗れとなる姿である。

 

 ユートに言えばきっと納得するだろう、何故ならばそれをする連中と関わって来たのだから。

 

 巨大なる心の歪みが城――パレスとなって悪意を育む悪党共、そんな連中の改心をさせる為に『オタカラ』を頂戴してきた少年少女やオッサンやAI達の闘いに干渉をしてきたのだから。

 

『ま、良いか』

 

 消えるパラス=白雫。

 

 召喚が解除されて白雫改めパラスが消えると、雫は溜息を一つ吐いて出口らしきを目指して歩み始めるのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 同じ頃、自らが見定めた地へと降り立った鈴は現れた2Pカラーな自分と向き合う。

 

「うわ~、鈴にそっくり」

 

『そりゃ、鈴は貴女()だからね』

 

 本物な姿とは打って変わって妖艶な表情となりクスクスと嗤う様は、割と直情径行な鈴からしたらムカッとなるくらいの悪女っ振り。

 

 雫の2Pカラーが白雫なら、此方は正に黒鈴と揶揄しても良い程にブラックな態度である。

 

 しかも見た目の幼さは鈴と全く同じなだけに、表情の妖艶さとの二律背反が目を惹いた。

 

『フフ、自分を見る目では無いわねぇ』

 

 それは甘ったるくて男を籠絡する事しか考えていないあーぱー娘な貴族子女を思わせるからか、同性の鈴からしたらその声音は苛つくばかりであったし、それが鈴ちゃんフェイスから発せられているという事実に頭を抱えたくなる。

 

「な、何なんだよ~」

 

 気持ちが悪いとかの話ではない。

 

 それは最早、生理的に受け付けないのだと声高に叫びたくなるくらいに気色が悪かったから。

 

「ほ、本当に鈴の虚像なのかな?」

 

『あら、疑われるなんて心外ぃぃですよ? 鈴はどっからどうみても貴女()だよね? 我は汝、汝は我……我は汝の心の海より出でしモノってね』

 

「何処のペルソナだよ!?」

 

『寧ろ……我は影……真なる我かしら?』

 

「ペルソナってかシャドウだった件!」

 

 ニヤリと嗤う黒鈴は本物とは口調が異なっていて淫猥に聞こえたし、紅でも引いたかの如く唇が何処か卑猥な感じに見えるのが鈴っぽくない。

 

『ねぇ、()

 

「な、何?」

 

貴女()はどうして彼に大切なモノを捧げてまで、こうして旅に付いて来てしまったの?』

 

「そ、それは……」

 

 大切なモノ(処女)と言われて顔を赤らめる鈴だけど、既に試練が始まっている自覚はあった。

 

『ずっと気になっていた』

 

「ひあっ!?」

 

『嫌われ者な南雲君を明らかに庇っている姿勢を魅せる彼が、それでいて南雲君を虐める連中に対して何ら躊躇いも遠慮もしない彼が』

 

「うう……」

 

 何故か学校で南雲ハジメは嫌われ者だったが、その理由の一つは香織の彼への気安さ。

 

 香織は顔立ちが綺麗寄りながら可愛らしさが溢れており、更にこのトータスでもリアル治癒師になったけど彼方側でも精神的な癒し系な為か、学校でも『二大女神』の一人として本人の気性は兎も角として君臨をしている。

 

 そんな女神の気遣いを受け、微笑みを向けられていて剰え、遂には昼食に呼ばれて手作り料理を振る舞われそうになったのだ。

 

 まぁ、昼食は未遂に終わったが……

 

 元より、男は疎か女子からも絶大な人気を誇る――本人は気にもしてないけど――香織なだけにハジメの態度は許し難いといった感じらしい。

 

 というより、香織の事より以前からハジメは余り快く思われてはいなかった。

 

 その際たる要因がオタクな事。

 

 最近ではオタクも増えてきたからか市民権を獲るに至る場合もあるが、ハジメの通う学校に於いてはオタクが市民権を獲る事は無かったのだ。

 

 同じオタクの清水幸利も自らがオタクである事をひた隠しにする程に、というより二〇一四年の今現在はオタクの文化が其処まで市民権を獲てはいなかった土地も在ったのであろう。

 

 糅てて加えて、居眠りなどをしていて授業中の態度が宜しくなく謂わば不真面目にしか見えなかったのもある。

 

 何処ぞの『ハンニャ』や『モロキン』みたいな教員が相手であればある意味で英雄なのだろう、然しながら社会科になれば相手は愛子先生が担当の先生であり、ハジメはそんな彼女が授業の最中でも居眠りをかましていた。

 

 当たり前だが反感を買う。

 

 更にはハジメのクラスメイトとして天之河光輝が居たのも向かい風、彼は遅刻や居眠りの常習犯たるハジメを注意――という名の香織が構う事へのやっかみ――を繰り返しており、それでも一向に態度を改めないハジメにクラスメイトは何様の心算かと怒り心頭となる。

 

 結果として、ハジメに対するクラスメイト共の反応は清水幸利みたいなどうでも良い派は少数でしかなく、女子は天之河光輝に反発する野郎として目の敵にしてくるし、男連中は香織のハジメへの優しい対応に嫉妬をして目の敵にしてきた。

 

 味方寄りだったのは雫くらい、ある意味に於いては敵ながら精神的な味方だったのが香織を邪魔に感じる中村恵里――今は完全な味方である処か初めてを捧げられた――であり、本当の意味での味方は唯一と言えるユートだけだったと云う。

 

 だから気になったのだ。

 

 谷口 鈴の幼少期は表情に乏しい、世間を冷めた目で視る余りに可愛げの無い少女であった。

 

 理由は家庭環境、そう考えればトータスに来たクラスメイト連中で問題行動をした者は基本的に家庭環境が良くない。

 

 清水幸利は自業自得な面はあれど、兄弟間に於ける溝は確かな問題点だった訳だし。

 

 そういう意味では家庭環境の被害者と云えるのが天之河光輝、両親に愛されていなかった訳では無く単純にお祖父ちゃんっ子だった彼は、弁護士たる天之河完治の事を『正義を守る弁護士』として尊敬していた様だ。

 

 天之河完治も孫と話すのが愉しいと思ったのか様々な弁護の話をしてやるも、まだ早いと考えて『闇』に関しては全く話していなかった。

 

 いつか成長して天之河光輝が清濁併せ呑むだけの心の成長が成されたら……そう考えていたけど残念な事に急死してしまった為に、本来なら話さなければならない話が出来ず中途半端な正義マンが単純してしまう。

 

 鈴の場合は両親が仕事人間で、授業参観などの保護者が参加をする行事には欠席が多い正しく、朝から晩まで仕事仕事仕事といった鈴に弟か妹を作る時間さえ無いタイプ。

 

「変身っ!」

 

『変身』

 

 鈴が与えられたのは【仮面ライダー龍騎】から仮面ライダータイガのカードデッキ、本来ならば『竜虎相討つ』の言葉があるみたいな主人公たる龍騎のライバルになってもおかしくない仮面ライダーだったけど、結局は英雄に憧れる青年が最期の時に仮面ライダーとは無関係な形で『英雄』と呼ばれた噺。

 

 ゴツく蒼い縁取りで白いアーマーな仮面ライダータイガ、戦斧型のカードリーダーなデストバイザーを手に白虎型のミラーモンスターたるデストワイルダーと契約をしている。

 

 対する黒鈴は白いアンダースーツに蒼い縁取りは同じながら黒いアーマー、見た目は全く同じな仮面ライダータイガだけど色違いの2Pカラー。

 

 ホワイトタイガーに対してブラックタイガー、正に対極と云えるカラーリングだった。

 

 そしてデストバイザーとは別に鉄扇が装備されているが、これは生身でも鈴が使うユート謹製の武具で氷雪洞窟に入る前に渡された物。

 

 ユートの女――【閃姫】という証明の一つとなるのが武具と指輪乃至は首輪である。

 

 仮面ライダーの力は飽く迄も即興で使える力という位置付け、何よりも普通に男が相手であってもハジメや浩介や坂上龍太郎の例を挙げられる様に渡していた。

 

 武具も渡すと言えば渡すのだけど、基本的には指輪乃至は首輪とセットで今現在のユートは自身の【閃姫】に与えている。

 

 武具は攻撃用だけでなく守りの為、指輪は勿論ながら【閃姫】というか花嫁的な意味合いから、指輪か首輪を選ばせるけど首輪はユートのモノである事の象徴みたいな形。

 

 まぁ、首輪は契約という意味でも使っているし【閃姫】だけでなく萌衣奴(メイド)にも与えている。

 

 首輪は契約の証であり、広義ではペットに着ける自分のモノだと示す為のアイテム足り得る物、つまりそれを望んだ時点で鈴はユートのペットに成りたいと言ったも同然。

 

「征くよ!」

 

『こっちもね!』

 

 白虎と黒虎が同時に動く。

 

「はぁぁっ!」

 

『せやぁぁぁぁぁっ!』

 

 ガコンッ! と鈍くも軽快な金属同士がぶつかり合った音が鳴り響いた。

 

 白いデストバイザーと黒いデストバイザーによるぶつかり合い、ゴツいながら何故か身長は大して変わらないのは愛子先生と同様でコミカルでありながら、『戦わなければ生き残れない』みたいな雰囲気は変わらなかったからか? 何処となく二人は剣呑である。

 

《STRIKE VENT!》

 

《STRIKE VENT!》

 

 互いにVバックルからアドベントカードを抜き放って、デストバイザーへとベントするとデストワイルダーの両手の爪と同じ形状のデストクローが装着された。

 

『どうして彼に付いて往ったの?』

 

「っ!?」

 

 それは正に核心とも云う話題。

 

「……」

 

『口を噤めば良いと思ってる?』

 

 ガインッ! 急速にスピードアップされてしまいデストクローに引っ掻かれる。

 

(成程、拒絶すれば虚像がパワーアップをしてしまうんだね)

 

 取り込まれるのは論外ながら、決して拒絶をせずに受け止めろと言われた意味が知れた。

 

 ダメージに呻きながらも思考し、治癒師では無くとも治癒系は使えるから魔法で回復しながらも充分な距離を取る。

 

(カオリンみたいな回復量じゃないけど!)

 

 だけどそれは黒鈴も同じ事が出来るという事に他ならず、ならば斃す心算で挑む以上は必要不可欠なのが必殺技であろう。

 

 問題は同時に撃ち合った場合。

 

 本来なら有り得ない、デストワイルダー同士のぶつかり合いとなっての空撃ち。

 

 だけど不利なのは鈴。

 

(どうする? 『フリーズベント』のカードなら発動を停められるけど……)

 

 それは矢張り黒鈴も同様。

 

 同キャラ対戦は同じだけの習熟度なら互角になるから、後は運良く此方が優勢になれば勝てなくは無いかも知れないのだが、彼方は自らの強化が出来るらしいから既に互角では無い。

 

 何故なら既に彼女の問いに答え損ねて少しだけパワーアップをさせている。

 

貴女()が彼に付いて行きたがった理由、それは主に三つあるわね』

 

「っ!」

 

 仮面で判らないけど目を見開いた。

 

『一つは光輝君に嫌気が差していたいたからと、普段からの貴女()では考えられない思考ね』

 

 事なかれ主義に近い鈴は、他者とのいざこざにならない立ち位置で出しゃばりをしない。

 

 ちょっと離れた位置からニコニコしていると、それが故に天之河光輝の傍に居ても女子連中から罵倒をされないし、実はそれを利用して恵里"にせよこの世界の中村恵里は天之河光輝の傍という、美味しいポジションをゲットしていたのは鈴自身が恵里"から聞いていた。

 

 そんな事なかれな鈴をしても、今現在の天之河光輝は視ていて不安に駆られる上に不快。

 

 現状では天之河光輝も一緒ではあるのだけど、ユートの女――【閃姫】という立場だったから既に天之河光輝とは無関係、というより天之河光輝自身が元の天之河グループからハブられている。

 

 一応、親友枠な坂上龍太郎が未だ寄り添ってこそいるものの、中村恵里はハジメの彼女と成ってしまい、雫と香織と鈴はユートの【閃姫】に成っているから同性愛者でもなければ今の状況は決して愉しいものではあるまい。

 

『二つ目の理由……それは実際に言っていた通りヒーローの姿に成れて、力も強くなるというのに惹かれたから』

 

「そうだね」

 

 ちょっと男装をすればすわ少年か? とか間違われそうな体型ながら、仮にも女の子なのだからプリキュア辺りに興味を持てば良いのだろうが、本人曰わく『心の中に小さなオッサンを飼っている』らしいからか? ヒーローに成りたがった。

 

 その思いの通りに今は仮面ライダータイガの姿に成れているし、原典のタイガに出来る事ならば今の鈴=たる仮面ライダータイガにも可能。

 

『三つ目……これが大きいわよね? ()がこんな感じに出て来てるもの』

 

 黒鈴は仮面ライダータイガの姿でありながら、何処かしら艶やかなポーズを取り始めるのを視ていると、身体の線は女性っぽいから微妙に様になっていたのが鈴には口惜しい。

 

「言わなくても理解しているよ」

 

『! へぇ?』

 

「鈴が! お子ちゃま体型にも拘わらず! エロいから! だよね? 解ってるよ!』

 

 自棄糞気味に一語一語を区切って叫ぶ。

 

 鈴は御世辞にも女性らしい肢体だとは云えない体型であり、彼女の身長はクラスメイトの中でもワースト1を争う低さだったし、胸は絶壁とまではいかないまでもペッタンコ、腰の括れは寸胴鍋を思わせるレベルで、お尻もそれに沿った程度のモノでしかないのである。

 

 まぁ、それでも単純な胸のサイズはユエの絶壁に比べればマシなレベルで脹らみを持つのだが、然しながら流石は三百年モノの吸血姫とでも云うべきか、ユートをしてあの子供としか思えない筈の彼女のエロティカルにJr.が臍まで反り返るし、一度でもユエが本気でくればそれこそ穴という穴を以てユートを悦ばせていた。

 

 それでも最終的に固有魔法の『再生』ですらも上回るユートの責めに、ユエはノックダウンをさせられて気絶による眠りに就くのだが……

 

 鈴よりもお子ちゃまボディなユエのエロさには脱帽しかないであろう。

 

 それは兎も角、『心に小さなオッサンを飼う』鈴とはいっても女の子だから、男の子との恋愛に夢を視ない程に男性思考では無い。

 

 所謂、性同一性障害(Trance Gender)では無いからだ。

 

 鈴のそれは飽く迄も女の子同士に赦されただけの御触りを悪戯レベルで行う――やり過ぎれば当然ながら拳骨モノ――程度、決して本気で同性たる女の子に欲情を懐いている訳では無かった。

 

 尚、現在は障害というのは外されて性別違和――Gender Dysphoriaと改められている。

 

 前々からユートに興味を持っていたからというのが理由にせよ、欲したヒーローの力に光輝からの離脱が一度に可能なあの時こそが分岐点。

 

 無論、初めてを捧げるとなると矢張り怖いとは思ってしまったけど、何処かワクワクしていた上にドキドキと胸が高鳴ってもいた。

 

 初夜とも云うべきあの晩、流石はエロティカルとしてはNo.1とも云えるとはいえ見た目は鈴より幼いユエを抱くだけあり、あれよあれよと云う間に鈴は処女を貫かれ痛みに喘いでいたと思えば、いつの間にか絶頂にまで導かれてあっさり気絶をさせられてしまっている。

 

 一部始終を視ていた香織が曰わく、中々にスゴい光景だった上に終わった時の鈴はビクンビクンと肢体を痙攣させ、イヤらしい液体がイヤらしい部分から垂れ流されていたとか。

 

 惹かれてはいたけど其処までの想いでも無かった筈の鈴は、だけど初夜を越えてからユート無しには居られないくらいに惚れ込んでいた。

 

 一発ヤったくらいでチョロいと思うかもだが、精神的には一線を越えなかっただけで半ば好きになり掛けていたのだろう、肉体的な一線を越えたら精神的な一線もあっさり踏み越えていたのだ。

 

 しかもユートは『心の中に飼う小さなオッサン』を認めてくれるし、それならばと百合な行為も積極的にヤらせてくれるから余計好きになる。

 

 しかも今までは胸を揉んだら拳骨を貰っていたのに、『シズシズ』や『カオリン』がエロエロな事をしても寧ろ積極的になる辺り困惑すらした。

 

 ベッドの中だけでだが……

 

 これはユートに調教された結果、女の子同士でのエロエロ行為的なハードルが下がったからで、ある意味に於いて鈴にはまるで天国みたいな環境となっている。

 

「元から鈴はゆう君に興味はあったし惹かれてたんだ! そんで以て、ゆう君に抱かれて大好きになった! 悪い?」

 

『くっく、強化する処か強化が解除されていく。つまりは()の本心って訳だね』

 

 おかしそうに笑う黒鈴がカードをVバックルから引き抜き、まるでそれを見せびらかすかの如く表面を鈴の方へ向けてヒラヒラさせる。

 

「っ!?」

 

 直ぐ様、鈴もVバックルからアドベントカードを引き抜いた。

 

 互いにデストバイザーへとベントイン。

 

《FINAL VENT!》

 

《FINAL VENT!》

 

 同じ電子音声が鳴り響く。

 

 それはどの【龍騎系】ライダーにも共通項となる必殺技用のカードだ。

 

 白と黒のデストワイルダーがにょきっと顕れたかと思うと、同時に爪――デストクローを振り回しながらぶつかり合う。

 

 それは正しく野生の虎同士が自らの領域を懸けて争うが如く、爪がボディを切り付ける度に爆音を響かせて煙が上がった。

 

 それを脇目に鈴のタイガも闘う。

 

『ホントに吹っ切れている……』

 

「そりゃあ……ねっ!」

 

 黒鈴を吹き飛ばす鈴、デストワイルダーも黒いデストワイルダーをぶっ飛ばして黒鈴へ向かって再び駆け出した。

 

 ガンッ! ズザザザザッ! 爪を突き立てると仮面ライダータイガである鈴へ向け黒鈴の背中を地面に擦らせながらダッシュ。

 

 鈴は黒鈴をデストクローで貫き通した挙げ句、天高く腕を掲げて爪を更にめり込ませる。

 

 これこそが仮面ライダータイガの必殺技である『クリスタルブレイク』だ!

 

 尚、打ち倒して地面に擦れば仰向け俯せは問わない必殺技である。

 

『ガハッ!』

 

 力が獲られなくなった時点で最早、黒鈴に勝ちの目は無くなっていたのを他なら無い本人が一番よく理解をしていた。

 

 仰向けに倒れた仮面ライダーブラックタイガ、そのアーマーやアンダーが鏡の如く割れる。

 

『闘い方、知っていた……とはいえ……やるね。試練は合格……だよ……』

 

「そっか……」

 

『まさか……ね、()にこんな……本来なら記憶は知識としてのみ……の筈、なのに今は……異常に……彼に……会いたい……』

 

「彼……って、ゆう君?」

 

 鈴からの問い掛けに頷く黒鈴。

 

『この……ダンジョンの試練……は、虚像による……問い掛けに……答える事……偽れば偽る程に虚像は強くなる……』

 

「そう聞いてるよ」

 

『この場所に来た……時点での……試練受験者……記憶……を元に……魔力で構成された……虚像が産まれる……記憶は単なる知識、感情なんて本来は無い。有る様に見えるのは……そう演じているだけ……の筈だったのに……ね』

 

 性格には感情は再現されているが、それも単なる喜怒哀楽に関してのみで例えば鈴のユートへの想い、虚像である黒鈴も持ち合わせてはいるけど知識――他人の日記を読んでいる程度のものでしか無い為、黒鈴自身はユートに対しての好意なんて持っている訳では無い。

 

 どんな想いを持ち、これまでナニをしてきたかは理解もしているけどそれだけ。

 

 小さな見た目に幼いとさえ云える――失礼ながら畑山愛子先生と大して変わらない肢体な鈴が、それでも一生懸命に奉仕をしてユートが悦んだら嬉しかったとか、そういった気持ちも黒鈴は知識として識ってはいるのだが、だからといって黒鈴がユートにそうしたいと思う訳では無かった。

 

 本来ならば。

 

 原典で香織と黒香織が闘った際、ユエとシアに乱入された挙げ句の果てにズタボロにされてしまった訳だが、試練に不合格は困るからと香織は自らの手でトドメを刺した。

 

 だけど怒りを覚える訳では無く、香織の感情を再現した穏やかな表情で褒め称えただけ。

 

 人間なら怒りを悲しみを覚えるだろう。

 

「ゆう君に会いたい?」

 

『会って()がしてきた事をしたい。本来はこんな事を考えたりしないんだけどね』

 

 所詮は試練の為に急造された魔力疑似生命体に過ぎず、試練が終われば魔力供給を断たれて消え去るが定めの存在に過ぎない。

 

 当たり前だけどそんな直ぐに消えると判っている存在に感情を付与するなど、そんな莫迦な真似を【解放者】たるヴァンドゥル・シュネーがする筈も無かった。

 

 だけど有り得ない事が起きている。

 

『若しか……したら、試練の何かが……壊れたのかも知れない……』

 

「壊れた……破壊? 破壊者……世界の破壊者……己れディケイド? って、ゆう君!?」

 

 破壊者となれば本物では無いけど邪神の力を解り易い形に換えたディケイドの力を持つユート、つまりユートが何らかのアクションを起こしたのが切っ掛けで壊れた可能性がある?

 

 何と無くそう結論付けていた。

 

 そして実は間違っていない事を雫と合流していたユートは結論付けている。

 

「だとしたらゆう君の所為かぁ……」

 

 一応は【閃姫】なだけに責任を感じたらしく、どうしたものかと思案をする鈴。

 

「例えばさ、鈴に憑依したら一緒に来れたりしないかな?」

 

『……乗っ取るとか、思わないの?』

 

「そんな事したらゆう君に消されるよ?」

 

『かもしれないわね』

 

 黒鈴が手を伸ばす。

 

「うん?」

 

『本気でこんな魔力で創られた疑似生命体を引き取るんなら、この大迷宮のシステムから切り離さないと駄目なの……だから……【契約】……』

 

「わ、判った……契約するよ」

 

 恐る恐ると手を取った。

 

『我は汝、汝は我……』

 

 仮面ライダータイガのソリッドフェイスシールドみたいな仮面が鈴の顔に填まる。

 

「うう……あああああっ!」

 

 バリッと仮面を外すと……

 

『我は汝の心の海より出でし存在』

 

 その姿が大きく変わる、金髪に瑠璃色の瞳を持って白の裏打ちされた赤いフードを被っており、金色の林檎を詰めたバスケットを左腕に提げている白と赤で北欧の民族衣装風な服装、フードには赤くて大きめなリボンが着けられている。

 

「うん、鈴は君で君は鈴だ……イズン」

 

 此処に契約は完了せり、谷口 鈴はペルソナたる女神イズンを降魔させるのであった。

 

 

.




 本来、鈴は普通に試練クリアの筈が一ヶ月の間にペルソナ5や真・女神転生5を見ていたら思わずやってしまった……

 仮面をバリッからのイズンはその影響。

 尚、最初は体型的にデメテルを考えたんだけど豊穣の女神だから愛子先生かな? とか思ったのでイズンに変更。

勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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