PS2は当然ながらキタローしか居なかったから今回はハム子。
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ドガァァンッ! という爆発音と共に雫が立つ近場が激しく揺れている。
「キャァァッ!? な、何よ今の!」
突然の事と先の戦闘で負った脚への負担によるダメージが相俟って、地揺れに対しての応対が叶わず尻餅を突いてしまった雫は愚痴を零した。
「大迷宮は何処も可成り頑丈で、数千年が経っても平然と仕掛けが動く程度にはなっているのに、これだけ局所的に揺れるって事は相当な事だわ」
そして雫にはその相当な事をやれる人間に付いてよく知っている。
「この先に優斗が居るのね!」
痛む脚を引き摺りながら向かう先に、目ではとてもでは無いが追えない超々高速でぶつかり合う白と赤、雫の知識ではユートの神器である『白龍皇の光翼』と『赤龍帝の籠手』の禁手に当たるであろう『白龍皇の鎧』と『赤龍帝の鎧』。
それが激しくぶつかり合って当たりに地揺れを引き起こす原因となっていた。
「片方は優斗、多分だけど白龍皇。だとすれば、もう片方の赤龍帝は優斗の虚像かしら?』
だけど先程までの自分を鑑みれば果たしてアレが正解なのか、雫にはちょっと判断が出来なくて今は視ている事しか叶わない。
氷雪洞窟に挑む前、ユート自身が言っていた筈の言葉――『取り込まれるのは論外として、決して拒絶をするな』というのは何だったのか? と思えるくらいに闘っている。
「思いっ切り拒絶してないかしら?」
思わずジト目になるのは仕方が無いにしても、ユートは転生者な義弟君とは違ってジト目が好物では無いし、今の雫の視線にユートが悦びを感じたりする事は無いであろう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
一方の白龍皇ユートと赤龍帝の優雅はぶつかり合いながら会話を始めていた。
『気付いているか? 優斗』
「まぁね、雫が入って来た様だ」
『だとしたら折角の機会だったがそろそろ潮時って事かも知れないな』
「そうなるね、中々に愉しい一時ではあったんだが仕方無いか」
二人の闘いは飽く迄も遊びの範疇でしかなく、潮時だと感じればすぐにでも終われる程度だ。
白と赤は再び大地に降りる。
「優斗!」
近付く雫。
「こっちが優斗……よね」
白龍皇の方を見て言う雫。
「よく判ったな」
『フッ、流石は優斗の【閃姫】ってか』
二人が禁手化を解除すると同じ顔をした二人が姿を露わとし、流石に其処まで似た顔立ちであればこんがらがって混乱こそしたけど、それでも雫はどちらがユートかはっきりと理解していた。
「優斗の虚像……とも違う?」
『違わないさ。然しながら俺は優斗の中の優斗、緒方優雅の魂が人格を持った存在だ。言ってみれば我は汝、汝は我……我は汝の心の海より出でし存在ってやつだな』
「ペルソナ!?」
『そうだな、ペルソナ召喚で顕れる事もあるからペルソナと呼ばれてもおかしくは無い』
事実として産まれる前に母親である緒方蓉子の胎内で死んだ優雅は、その魂が生きていたユートの中に吸収され融合を果たして一体化をした。
そんな中でも人格を形成した優雅とは正しく、ユートの中の『もう一人の僕』的な存在。
その気になればそれこそ、『もう一人の僕』と心の中で会話をする事だって可能である。
ユートは雫が試練に関して拒絶をしたのか訊いてきたので答えた。
「つまり、滅多に無い機会だから試練に
「そういう事だよ」
「まったく、脅かさないでよね」
心底安堵した表情で座り込む。
「うん? 脚が可成り疲労していないか? 何をやらかした」
「あ、これは……」
スルリと靴を脱がされ、靴下を脱がされてしまった雫の生足が晒されてしまう。
紅くなる雫の脚を持ち上げて診る。
「これ、初期の……まさか! 見様見真似で使ったな? 【緒方逸真流】の技を!」
「っ!」
ビクリと雫の肩が震えたのを見てユートはその説に確信を持った。
「何て莫迦な真似を! あの技は初代の妻であった『白』が伝えた鍛練術を以て鍛えた緒方の舞士だからこそ出来るもんだ。それを何ら鍛えていない者が見た目だけ真似たら脚が砕けるぞ?」
「そ、そんなに言う程!?」
「言う程に……だ!」
ユートの説明――それは特殊という程には無いにせよ、雫が幼い頃からやってきた八重樫流に於ける稽古が遊びに思える程度には凄まじい。
聖闘士でも量産しているのか? とでも言いたくなるくらいであったと云う。
その上で短時間に高強度の負荷を掛けて鍛える速筋繊維、逆に低強度の負荷を長時間掛けて鍛えられる遅筋繊維のどちらの特性をも持ち合わせた筋肉へと作り替えてきた。
この筋肉が在ったればこそ、緒方家の人間達は初代を始めとして今現在に至るまで生き残りを図れたのだと云える。
この筋肉を色で表せば速筋は白筋で遅筋が赤筋となり、二つの特性を併せ持つのは白と赤が混じり合ったピンク筋というやつだ。
ユートの細身ながら触れれば間違い無く筋肉は確り付いている、これを現実化しているピンク筋を限界点まで鍛え上げる事が【緒方逸真流】。
後はどれだけ鍛えるか、限界点は何処までなのかで強さに幅が出てくる訳だけど、転生を二度も経験した上に擬似転生を幾度と無く繰り返してきたユートは限界点の幅が大きい。
ユートも普段は常人と超人の狭間で揺れ動くといった程度、魔力量や魔力強度も可成り抑えている上に肉体的にも重力制御で負荷を掛けており、ぱっと見では普通の人間と何ら変わらないというのに、限界点を越えた超越者にさえも名を連ねる事が出来る為に最早、嘗ての実家にて云われていた括りは余り意味を成さなかった。
魔力容量と魔力強度の解放という封印解除での手始め、『マスターテリオンモード』と称しているそれだけで超越者級の能力に跳ね上がる。
元よりマスターテリオンは超越者。
ならば力だけは超越者と呼ばれるに相応しいと云われる程度には成りたかった。
それは兎も角、一応だけど雫に与えた魔導具の効果で脚の治療も徐々にだけど行われている。
「ヒーリングが効いているから暫く置けば治るだろうが……ベホマ」
「あ、温かい」
ユートの回復呪文はパーティメンバーであると認知されていれば十全に機能する為、物凄い回復速度で雫のズタズタな脚の組織やその他の肉体が回復されていった。
それはぬるま湯に浸かったみたいな温かさを感じる優しい光、ゲーム内での回復呪文は一定量のHPを回復させる効果となっているのだけれど、実際には一定の時間を一定の速度で回復させる。
呪文の名称で消費MPが変わり、それによって回復速度が変化、MPの量分の時間経過で停止をするという流れとなっていた。
無論、これは通り一遍に習った事をやるだけならば……という但し書きが付く。
極端な例を挙げれば大魔王バーンであろうか、彼ならば普通にベホマを使えば一瞬で致命的だろうダメージを癒やす、それはバーンにとってみれば守護鳥とも云えるフェニックスの如く。
「よし、治ったな」
「助かったわ、香織が居れば回復もして貰えたんでしょうけど」
「余り無茶をするな。どうしてこんな事になったかは想像も出来るけど……な」
「出来るんだ」
これでも実際に何千年と生きてきて、基本的な武術は【緒方逸真流】だったから最早染み付いてしまった技術、雫のダメージを診ればどんな事をしたかくらい想像が出来るのだ。
「それより、雫」
「ん? 何?」
「いつの間にか【
「ホントに解るのね」
ユートと【閃姫】契約をした者の何割かが修得をする……は語弊があるけど兎も角、身に付ける力が【
この能力は【閃姫】のみに発現、そして繋がりからユートはそれが発現すればどんな能力かは解らないが、発現をしたかどうかの有無くらいだけならば解ってしまう。
「名前は優斗が付けるのよね?」
「ん? まぁね。中二病驀らな名前になるとは思うけど悪く思うなよ」
「中二病……御願いするわ」
苦笑いな雫は能力を話す。
「私が獲たのは多分だけど視た技術の修得力って感じかしら? 実際に視た技術に限って私に覚える素養が有れば修得が出来るわ。私が優斗の使う【刀舞術】を曲がりなりにも使えた理由よ」
「成程……僕の魔眼たる【
元々、ユートは転生特典として日乃森なのはから『魔法に対する親和性』と『流れを視る目』を与えられていたが、ハルケギニア時代に早くにも修得した『
ユートはこれを、【
この魔眼の特性の一つに、『視たものを剣術だとか魔法だとか芸術だとかに拘わらず脳内保存して修得が可能』というのが有り、それを鑑みれば確かに雫の【輝威】はユートの魔眼の劣化版。
尚、ユートの魔眼は【カンピオーネ!】世界で知恵の女神メティスを殺し、その権能を宿した際に進化を果たしており【
ユートは少し考えると……
「『鏡面修験』って処かな?」
中二病な名称を宣った。
「えっと、それにルビを振ると?」
「『
「何処の遊戯王よ!?」
何処かで既に付けた気もする名前だったけど、まるで鏡面の如く映る姿を模倣した上で修練をして修得する、それは日本古来より山岳信仰に於ける山篭もりで悟りを拓く修験者の如く修業をして他者の動きを覚え込ませる。
それが故の名前。
中二病っ振りが凄まじ過ぎて雫が思わず頭を抱えてしまった。
「僕に名付けのセンスを期待するな。少なくとも他の【輝威】発現者も似たり寄ったりな名前だ」
「そうなんだ……って、そういえば他の発現者ってどんな人達なのよ?」
「最初に発現者を見たのはハルケギニア時代で、ティファニアに使い魔召喚された綾瀬夕映だな。能力はテイルズ系の魔術や晶術と呼ばれる術を使える、名前は『
「まんまじゃない!?」
「寧ろ頭の悪い族的な感じに」
ユートが面白がっているのを見て雫は溜息を吐くしか無かったと云う。
「ま、基本的には漢字で四文字をフォーマットにしているんだよ。ルビを振るだけで可成り痛々しい事に成っているけど」
「……そうみたいね」
「因みに最初に見たのは夕映だったんだけどな、本当の意味で最初に発現をさせたのはソフィー・ノイエンミュラーだ」
「ソフィー・ノイエンミュラーっていったら……【ソフィーのアトリエー不思議の本の錬金術士】の主人公よね」
「その通り」
アトリエシリーズとされるガストが製作している錬金術士を主人公とするゲーム、そんな中でも【不思議】シリーズ三部作――ユートは関わってこそいるけど識らないが後に新しく四作目が出ている――の最初の噺の主人公がソフィー・ノイエンミュラーである。
奇しくもこの地こそはユートが錬金術を覚えた世界であり、ソフィー・ノイエンミュラーの師匠に当たるプラフタがユートにとっても錬金術士としての師匠となった。
尚、【不思議】シリーズは全作品を識らないから可成り博打要素が強かった感がある。
原典を識らず、この世界や【イセスマ】世界みたいに原典情報も獲られないのは痛い。
「それより、ちょっと見ない間に魔力が増えたみたいだが? しかも倍くらい」
「よく判ったわね」
「忘れてるかも知れんが、僕の目は一応だけれど神様仕立ての代物で『魔力などの流れを視る目』ってやつだぞ? 魔力の増加はすぐに判る」
「ああ、それはそうよね」
ハルケギニアのコモン・マジックの『探知』を目を閉じている時以外は使い続けた結果が魔眼化を促し、叡智の女神メティスの権能で更に進化を促されてはいても大元が大元だ。
「で、何があった?」
雫は取り敢えず白雫を取り込んで一種の同化を果たした事を説明した。
「成程、雫が一人分増えたみたいなものだろう。とは言ってもそれだけか?」
「……我は汝、汝は我的な?」
「虚像はシャドウに近いからか。シャドウとは即ちペルソナと表裏一体だからな……って言っても此処はペルソナ世界じゃないのに?」
此処が嘗ての【真・女神転生】世界がシフトをした【ペルソナ】の世界なら、確かにシャドウを降してペルソナに変換も有り得るだろう。
然し此処は【ありふれた職業で世界最強】という世界、一応だけど別の世界観も幾つか取り込んだ軽い混淆世界ではあるらしいものの、ペルソナやメガテンとは関わりが無かったのは確認済み。
「だとしたら、
ユートは正解を導き出した。
「それで、方式は? 一九九六年や一九九九年の【女神異聞録ペルソナ】や【ペルソナ2[罪]】や【ペルソナ2[罰]】という方式では無いと思うから……【ペルソナ3】と【ペルソナ4】と恐らくは【ペルソナ5】と思しき、そのどれにしても方式が異なるからね」
「召喚器を求められたから多分だけど三作目ね。形としてはシャドウを認める【ペルソナ4】だったんだけど」
因みに、西暦二〇一六年の九月に発売されてる【ペルソナ5】はこの世界では未だ開発中。
「ま、良いさ」
ユートは徐ろに柏手を打つとエネルギーの循環をカドケウスの螺旋で増幅、ウロボロスの円環にて無限に高めて【創成】の術式を発動させる。
そして顕れるのは見た目が拳銃、放たれるのは常に空砲でしかないから殺傷力は無いに等しい、然れども嘗ての世界ではそれを額に押し当てて撃つ行為すら侭ならなかった者も居た。
空砲でも放たれるのは、何も出ないのでは緊張感が足りないという配慮からだろう。
抑々のコンセプトは擬似的な死を体験する事による緊張感、それによってペルソナの召喚を行うという事に在るのだから。
「相変わらず意味不明よね……それ。【鋼の錬金術師】でもやってはいるけどさ」
「あっちは柏手を打つ
ユートは召喚器を渡しながら言う。
エネルギーを円環させるのが彼らの錬金術に於ける真髄だが、ユートの場合は螺旋を構築する事で使えるエネルギー総量を増やしていた。
勿論、総量が増えるなら消費MPが増えたのと同じだから消耗も大きくなってしまうだろうが、ユートのエネルギー総量は始めから高かった上にカンピオーネと成って数百倍にも増えている。
飽く迄も喩え話だが、一般的な然れども優秀な魔術師のMPが一〇〇だとしたらユートの場合はその数倍――仮に五〇〇くらい、カンピオーネに成ってこれが更に数百倍にまで増えているから、その値を五百倍としたらだいたい二五〇〇〇〇程になっている事だろう。
本当にこの数値では無いというか実際に測れればもっと上かもな話で、可成りざっくりとした喩えに過ぎない訳だが……
だからこんな事をしても全く無理も無く術式を行使する事が出来ていた。
「ま、良いわ。来て、ペルソナ!」
BANG!
空砲だから痛いとは感じないけど放たれたモノが在るから、雫の頭に軽い衝撃がぶつかってきてそれが仮の死を体現する。
『我は汝、汝は我……我は汝の心の海より出でし存在』
褐色の肌に血の如く緋い瞳を持つ金髪の少女、即ち白雫が変化した存在であるペルソナ。
「パラス? ペルソナなのに聖闘士星矢なのか。然し……顔の作り自体は雫なんだから寧ろパラスのコスプレをした雫?」
「ぐぅっ!」
ユートの何気ないコスプレ発言に対して雫は激しく衝撃を受けた。
『初めましてね』
「そうだな」
雫本人は知っている訳だしパラスとも既知ではあるものの、目の前のペルソナなパラスは飽く迄も雫の虚像――謂わば世界が異なるから本当は違っても本質的にはシャドウが姿を変えたモノ。
だからこそ初めましてだ。
『正直、雫が羨ましかったから彼女の力に成るのに託けて一体化したんだけど、まさかペルソナとして独自の人格を持つとは思わなかったわ』
「嬉しそうだな」
『ええ、貴方に接触が出来るもの』
ペルソナは霊的な存在ではあるが物理的に触れたりも当然ながら可能、そうでなければ闘いの中で直接的な攻撃も叶わないだろうし、シャドウも人間に触れられるのだからおかしくは無い。
パラスな格好の雫――そう云える姿の一二歳くらいの少女が、緋色の瞳に性欲を滾らせながらも異性たるユートの頬へと触れてきた。
そして徐ろに唇をユートの唇に重ねる。
『残念だけどエッチな事をする時間は無いから、取り敢えずはこれだけで我慢するわね』
雫の虚像として、然しながら本来の仕様を間違い無く逸脱してしまった心を持つ白雫、ペルソナと成ったのは偶然ではあるものの悦びに満ち溢れてキスをしていた。
「成程、我は汝で汝は我か」
辱めを受けたかの如く雫は真っ赤になってしまうが、パラスな白雫は満足感に充たされながらも再び唇を重ねて舌を絡ませる。
クチュリクチュリと水音を響かせながら二人のキスは数十秒を経過、唇が離れると淫靡な唾液の橋がユートと白雫の間に架かっていた。
『またね?』
ヤりたい事を取り敢えずヤれたからかにこやかにペルソナ召喚時間を超過し消える。
『まるで嵐だったが、取り敢えずヤりたいなら俺はもう消えるぜ』
「ああ、優雅兄もご苦労さん」
『まったくだぜ』
優雅も試練は終わっていたから役目も終了と謂わんばかりに消えた。
「これで試練は終わり。それじゃ、雫」
「な、何?」
パラスな格好とはいえ、自分と同じ顔をした者がユートとキスをしていたのを目の当たりにし、雫は先の試練でもエロティカルな妄想により発情していた事もあり、ペタリと女の子座りとなってへたり込んでユートを上目遣いに潤んだ瞳で見つめる形になっているのに気付いていない。
今の雫は正しく男を誘う牝という様相な上に、発情によるフェロモンも漂わせていてユートでなく別の――坂上龍太郎でも天之河光輝でも、何ならイシュタル・ランゴバルトという老害でも構わないが、きっと雫へとレ○プに走ってしまうであろうエロエロな状態である。
しかもユートはポニーテールが好きなだけに、今の雫を抱かないという選択肢は選べない。
何処ぞのテロリストから『アースガルズと闘ってみないか』と訊かれ、首を横に振る選択肢を選べなかった本来の白龍皇みたいに。
況してや、現在のユートはパラスなコスプレをした白雫とのキスで盛り上がっている。
気分も下半身のJr.も……だ。
「展開」
瞬時に世界が切り替わった。
「え、何?」
「『メメントス』と呼ばれる大衆無意識が生み出した『大衆のパレス』に近い。『メメントス』はパソコンで云えばネットワークに繋がった状態、そして此処はスタンドアロンで僕個人の無意識下に置かれた『パレス』みたいなモノだ」
「パレス? メメントス?」
「『メメントス』はゲーム風に云うとローグダンジョン、【ペルソナ3】の影時間に顕れる巨塔たる『タルタロス』みたいに内部構造に変動が起きるダンジョンだね」
他にも色々と有るが、取り敢えずはこのくらいの説明でだいたい解るであろう。
「そうだな……固有結界みたいなもんと言ったなら理解も出来るか?」
「は? 固有結界って型月の魔術師的に奥義みたいなアレ? 『
「その通り。しかもこの空間には僕が【創成】で創った物が宝物庫のスペースに仕舞ってある」
「マジモノな無限の剣製じゃないの!」
これのお陰でユートは一度でも創った物ならば簡単にコピペしてしまえた。
「さて、雫。もう一度ペルソナを召喚してくれないか?」
「え? 構わないけど」
先程、ユートから受け取った召喚器を顳顬へと宛てがって引き金を引く。
BANG! それにより再び顕れる褐色肌に金髪と緋色の瞳な美少女――パラス。
『あれ? 何でまた喚ばれたの?』
しかも独立して動けていた。
「この僕の
『あ、ホントだ』
通常、【ペルソナ】世界の彼らのペルソナだと癖の強い姿だったから欲情など懐かないのだが、『愚者』の主人公達のペルソナはチェンジにより『メガテン』の悪魔と変わらない姿、つまり普通にペルソナが美女美少女な姿で召喚されている。
序盤でもアルプやリリムやピクシーなどが正に盛り沢山、それに比べて主人公を含むパーティの初期ペルソナはと云えば……
「これで何の問題も無いな」
にこりと笑みを浮かべるユートに雫もパラスも少し引き攣ってしまったと云う。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
同じ頃の白崎香織は……
「此処は?」
何処とも知れぬ空間に出ていた。
「貴女が試練を与える
『そうだよ、
目の前に居たそれはブラックな香織。
黒香織が胸を強調するかの如く腕組みの仕方をして立ち塞がっている。
『好きな男が居ながら他の男に股を開いた淫乱な
「だ、誰が淫乱かな!?」
果てしない風聞被害に叫ぶ香織。
『だったら
揶揄う様な口調。
「そ、それは……」
そんな筈は無い。
出逢いは一方的でしかなく、抑々にして相手たるハジメは存在を認識すらしていなかった訳で、何なら高校生に成ってからの余計な干渉に対して『異世界にでも召喚されないかな?』と、今現在の状況を鑑みれば不謹慎極まりない事を考えていたくらいに想いは伝わってなかった。
暴力での解決なら天之河光輝や坂上龍太郎でも容易く出来る、だけどハジメはお婆さんとその孫に絡んでいた不良を相手に全力全開手加減無しでDOGEZAをしたのである。
不良はドン引きしていたのだが、それを見ていた香織は自分自身が動けなかった事もあってか、ある意味で勇気のある行動に感動をしてハジメという存在を胸に刻んだ。
この頃は未だに懐いた想いに気付いていなかったくらいに自身への鈍感さはあるものの、それは南雲ハジメという少年に対して人生で初めて灯された恋心という名の燠火であったと云う。
それが愛情という烈火へ変わる前に檜山大輔によるあんな事が起きてしまい、文字通り肉体へと楔を打ち込まれ貫かれてしまったのを切っ掛けにとはいえ、燠火はユートに対する想いへと飛び火をしてしまったのだ。
そしてユート側の燠火は事ある毎にユートとの肌の重ね合いで燃え広がり、然しながらハジメに点いた燠火も未だに燻り消えてはいない。
レ○プされたならいざ知らず、一応は生命の危機を救われた上での合意の元に抱かれていた為、今は肌を重ねるのに嫌悪感は疎か否やとする事も無いし、穴という穴を貫かれた今では抵抗感すら無くなってユートの精を胚へ受け容れるのも良しとしているくらいには好意を持っている。
ハジメへの初恋という燠火が消えていないだけであり、元より気付いていなかった想いだったからこそ根強く残っていた。
そう……肢体はユートの味を覚え、ハジメはと云えば既に恋人を得ている中で最早何を況んや、諦める以前の問題だというのは香織自身が理解をしている事なのだから。
「今更……だよ……」
『ふぅん?』
「今更、蒸し返して欲しくは無いかな!」
香織の腰にハートを模したバックルが付いているベルトが顕れ、彼女の右手には女性の絵柄が描かれたハートスートのカテゴリーAのカード。
同じく黒香織の腰に香織とは色違いのバックルのベルト、そして矢張り女性の絵柄が描かれているハートスートのカテゴリーA。
「変身!」
『変身!』
《CHANGE!》
《CHANGE!》
ユートが造ったカリスバックルのレプリカ品、カリスラウザーが装着されたベルトで、バックルはカリスアローに装着してブレイドのブレイラウザーなどと同じ機能を持たせられる。
正確にはカリスでは無いからカリスバックルでは無く、エヒトルジュエが造り出した神の使徒の謂わば失敗作――リューンの名前からリューンバックルとでも云うべきかも知れないが、これにはジョーカードライバーの名前が在った。
実際カリスバックルとは本来がジョーカーラウザーであり、その名前はハートスートのカテゴリーAたるマンティスアンデッドのものだ。
このドライバーには二つの姿を選ぶ機能が付いており、勿論ながら本来のカリスバックルには存在していない機能である。
一つは仮面ライダーカリスの色違い、並べれば贋者か或いは2Pカラーとして映るであろう。
もう一つの姿が神の使徒の失敗作リューンの姿と成ったモノ、但し今の香織の姿は鎧の色が白では無くて漆黒――闇の色をしていた。
その真逆に黒香織は白銀に煌めいている本来の神の使徒の鎧、顔立ちが香織だとはいえ鎧の色が色なだけにヘルシャー帝国に現れた連中を思い出してしまう。
互いに扱うのはアローでは無く二振りの大剣、それは戦乙女にも似た神の使徒の姿故に二人は空を舞いながら大剣をぶつけ合う。
甲高い金属同士のぶつかり合う剣戟音と擦れ合う鍔迫り合いの音が眩しい、戦闘レベルも経験値も変わらない同キャラ対戦であるからには他の某が要素が加わって初めて決着となる。
それは戦運。
それこそ闘いの勝敗の天秤がどちらに傾いて、勝利の女神の口付けと敗北の死神の首狩り鎌を獲るのか変わり、僅かな天秤の差を何処に見出すのかによりそれは逐一変化していく。
「ハッ!」
『甘いわね!』
どちらかと云えば軽量級の雰囲気があるというのが仮面ライダーカリス、使う属性が風だったからそんなイメージなのかも知れないのだけれど、実際にワイルドフォームも重量級とは呼べない様なタイプの戦闘方法。
そしてリューンというか、エヒトルジュエが擁する使徒も攻撃力こそ莫迦みたいに高いものの、矢張り軽量級の所謂一つのドレスアーマーだったから相性は良い。
まぁ、それだけに本体の耐久性が一二〇〇〇と阿呆みたいに硬いエヒトルジュエの使徒であるのなら兎も角、ベースが人間に過ぎない香織とそのコピー体な黒香織が下手にダメージを喰らうのは推奨されてはいなかった。
勿論ながら仮面ライダーリューンには違いないので、ちょっとやそっとの攻撃に晒されたからといって死にはしないのだろうが、それでも攻撃は受けない方向性で闘うスタイルで往く。
大剣で受けるか躱すかの二者択一が基本戦術となり、ダメージを受けながら敵に攻撃を加えていくタンクな闘い方には向いていない。
(おかしい……少しだけ、ホントに少しだけなんだけど私の方が劣っている?)
僅かに鎧や身体に掠る剣戟、それは香織のみならず黒香織も受けてはいるものの何故だか判らないが、その頻度やダメージの規模が本当に僅かながら香織の方が大きい気がした。
今は僅かな差だとしてもいずれそれが致命的な差に成りかねない、戦闘で完全な互角という事はその僅かな差こそが宜しくないからだ。
現に今でも差が広がりつつある。
香織は流れる様な自然体で腰のカードホルダからカードを抜き取り……
《CHOP!》
《TORNADO!》
カードをラウザーにリードした。
《SPINING WAVE!》
カテゴリー3の素手系とカテゴリー6の属性を組み合わせたコンボ、仮面ライダーカリスも普通に使っていたモノではあるけど、香織の使い方は素手で打つというものでは決して無い。
『くっ!?』
スピニング・ウェイブによる剣閃の加速により、黒香織は胸部装甲でダメージこそ小さいにしても痛手を受ける。
それは今までに試した事さえ無い使い方だったからか、黒香織はその突如として行われた行為に驚愕を禁じ得なかった。
「矢っ張りね」
『何が矢っ張りなのかしら?』
「貴女は確かに私の虚像だけど、飽く迄も此処に来るまでの私を写したモノでしかないんだね」
『へぇ?』
何処か感心する響き。
「つまり、私自身がこの場で成長するなり何なりすれば貴女も対応が難しくなるんだよ」
間違っていない。
この氷雪洞窟で最大の試練は自らの虚像により目の当たりにする自分の負の感情を見つめ直し、それを乗り越えていくのが謂わば真骨頂とも云えるクリア方法であり、この試練の場に転移をさせる際に神代魔法を授ける魔法陣に在る機能の一つ――試練を正しく乗り越えたかを精査するアレの応用でコピーした虚像を生み出す。
虚像が生まれてからはリンクしていないから、後は虚像が相手に語り掛けて自分を否定させる事により強化を図る、試練を受ける者が乗り越えたら寧ろ弱体化するシステムだった。
『成程、強化がされなくなったからどうしたのかと思ったら……いつの間にか気にしなくなっていたのね』
「貴女の指摘は正しい。私は今でも南雲君への想いを捨て切れて無いから。ゆう君に抱かれながら南雲君だったらって思う事が決して無かった訳じゃないし、それでいながらゆう君に貫かれる度に気持ち良くなって乱れてる自覚もあるから」
とはいえ、それは人間――生命体に付随している機能だから仕方が無いだろう。
性行為で気持ち良くなるのは云ってみれば即ち子孫を残す為に、生命体に性交をしたいと思わせる為の機能的なものなのだから。
まぁ、それが人間社会では犯罪となる行為にも繋がるのはどうしようもない。
好意が有るか無いかで快感を感じるか否かを選べる筈も無いのである。
『……これ以上の強化は望めない処か寧ろ弱体化しそうだし、試練は合かっ!?』
溜息を吐きながら虚像な黒香織が変身を解除しようと話し掛けると……
「っしゃ、うらぁぁぁっ! ですぅ!」
青み掛かった白髪にウサミミを揺らす美少女なシア・ハウリアと、ミニマムながら色気が溢れる見た目は子供で年齢は婆様な吸血姫ユエが争いながら辺りを破壊しつつ入ってきて、その近場に居た黒香織は会話中に巻き込まれると吹き飛ばされてしまうのであった。
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ちょっとタイトルに偽りが有るか……実際には三分の一程度しか香織の試練は無かったし。
ペルソナ好きが高じて地球組の【閃姫】に与えてみたけど香織は何が好いものか?
尚、ペルソナの知識が無い上に実は試練が原作と変わらないトータス組はペルソナ無しですし、ユエに惚れる切っ掛けが無かったから試練こそ違った感じだけど、坂上龍太郎は原作と変わらないやり口でクリアするから無しです。
勇者(笑)な天之河の最後について
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原作通り全てが終わって覚醒
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ラストバトル前に覚醒
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いっそ死亡する
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取って付けた適当なヒロインと結ばれる
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性犯罪者となる