ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

123 / 133
 元々、最初に想定していただけあって筆のノリが良いみたいです。




第119話:ありふれた融合化

.

「こぉぉぉきぃぃぃぃぃっっ!」

 

 ユートの左胸を刺した犯人――天之河光輝へと怒鳴り散らすのはそれを(つぶさ)に視ていた雫。

 

「安心しなよ雫、緒方さえ居なくなってしまえばお前への……雫や香織や龍太郎や鈴、それだけじゃ無くユエやシアやティオだって洗脳から解放されるに違いないからさ」

 

 何処から見付けて来たのか御立派そうな剣は、先程までの折れた鉄剣とは全くの別物だ。

 

「アンタは! まだそんな戯れ言を!」

 

「我の懸念するイレギュラーさえ居なくなれば! これで全てが上手くいくであろう」

 

「は? 光輝……?」

 

「何を言ってるのかな、光輝君?」

 

「何だかエヒトルジュエみたいな……」

 

 口調が行き成り変わってニヤリと口角を吊り上げた天之河光輝、一人称も安定しないしユートをイレギュラー呼ばわりする辺りがエヒトルジュエっぽくて気色悪い。

 

「くふっ、クフフ……死ぬが良い緒方ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああっっ!」

 

 グリグリと刃を更に食い込ませてくる。

 

「ふふっ、笑いたいのは寧ろ此方だ……エヒトルジュエ」

 

 全員がハッとなって天之河光輝を見遣るとニタァッと嗤っていた。

 

「気付いたか、イレギュラー」

 

「気付かいでか、お前が勇者召喚なんてやらかしたのには二重の意味があった。一つはイシュタルの狒々爺がくっちゃべっていたモノだ。魔人族が神代魔法に手を届かせて天秤が傾いたのを正すのが目的の戦力増加の為」

 

「その通りだ」

 

「そして今一つ、それは器の予備の確保」

 

 ピクリと頬を引き攣らせた。

 

「お前が本来の肉体を喪失してからどれだけ世紀を跨いだ? 百世紀でも足りないくらいの時間が経っているのは間違い無いだろうな」

 

 一世紀は一〇〇年、百世紀は一〇〇〇〇年で、下手をしたら千世紀は跨いだのかも知れないのがエヒトルジュエ、それだけの刻を待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って……待ち続けて、漸く器に足る存在が誕生したのが三〇〇年前。

 

 吸血種族のアヴァタール王国に誕生した未だに赤ん坊の砌りにでも尚、可愛らしく将来的には国を傾けるレベルに美しく育つだろうと産声を上げたその子に与えられた名はアレーティア。

 

 アレーティア・ガルディエ・ウェスペリティリオ・アヴァタールであったと云う。

 

 エヒトルジュエが恥も外聞もかなぐり捨ててまで歓喜したであろう事は想像に難くなく、それが故に器たるアレーティアをディンリードが隠してしまった事に憤怒を以て亡ぼした。

 

 そんな日から約三〇〇年が過ぎて、神代魔法を魔人族の英雄と成ったフリード・バクアーが手にして、数の人間族と質の魔人族だった戦争の天秤に魔人族に魔物のテイムや強化による数が揃った事で傾いてしまう。

 

 一方的な蹂躙も愉しいとは思う反面、それでは面白味に欠けるという思いから異世界召喚という珍事を行う事に決めた。

 

 この世界の人間族を単に強化しても愉しい事には成らない、ならば折角だから異世界人をトータスへ召喚して力を与えてみようと考える。

 

 召喚の魔法陣にはトータス人に素で与えているステイタスを、当人の資質に併せた天職へと紐付けられた能力値とスキルを書き込んだ。

 

 上位世界の人間だから強い――これならトータスの原始人や異世界人も納得し易かろうと。

 

 そして召喚候補となるであろうは勇者と呼ばれる天職、嘗ては【解放者】の側に付いていた勇者ではあったものの、あの時は初代勇者がエヒトルジュエ側に存在していた事もあって混沌とした。

 

 そして気付いたのだが、どうやら勇者なる者は自分の器にある程度は成れるかも知れない。

 

 だからこそ勇者足り得る天之河光輝を中心として魔法陣は作用したのである。

 

 エヒトルジュエの考えた通り、勇者の天職を持った人間にはその証明とも云える技能が生える、即ち魂魄魔法の奥義――限界突破。

 

 使えば三倍の能力値向上が見込めるが、時間的な制限が掛かる程に肉体を酷使する魂魄魔法の使い手にして、エヒトルジュエを裏切った【解放者】ラウス・バーンが行使していた奥義であり、更に五倍の能力値に向上させる限界突破・覇潰をもいずれは扱える肉体。

 

 所詮は予備に過ぎないが無聊を慰める一助には成り得るやも知れぬ……と、愉悦の表情を浮かべながら召喚をした。

 

 其処にまさか、真の神を殺せる存在が……正しく逸脱者(イレギュラー)たる存在が居るなど思いも寄らず。

 

 緒方優斗は本来ならこの世界に存在しない筈の人間? だったが、異なる世界の異なる理を以て動く邪神の悪戯で顕れた。

 

 冥界の王ハーデスを原典に於いて真に討ったのは戦女神アテナ、然しながらペガサスの神聖闘士に進化をした星矢がアテナ――城戸沙織を護って心臓に冥王の剣を突き立てられ、紫龍と氷河と瞬と一輝までもが沙織を護るべく動いたその瞬間、ユートも守りの玉から出て星矢の心臓に突き立てられていた剣を抜いて、ハーデス自身を一刀両断の真っ二つにして殺したのである。

 

 噴き出すハーデスの神血(イーコール)に濡れ、その漂っている神氣を吸収したユートは後に神殺しのペガサスとか呼ばれる星矢より、真に神を殺した存在として或る意味に於いて悪名が高まっていった。

 

 更に【ハイスクールD×D】世界で消滅し掛けた際に、真の上司に【カンピオーネ!】世界へと連れて行かれて本当の意味で“神殺しの魔王”へと進化をしてしまう。

 

 ユートがハーデス・セカンド染みているのは、ハーデスの剣を手にしてその力を確実に模倣可能と成り、ハーデスの神血をふんだんに浴びたのと神氣を存分に吸収したのと、更に過去へと跳んで【聖闘士星矢LC】と【聖闘士星矢ND】の世界でハーデスの神氣を喰らった事で、他の神々に比べても冥王ハーデスの割合が大きいから。

 

 冥界の創造に冥衣の自由創造、ハーデスの冥衣を創り、更に神衣にまで進化させる程、一二時間の死者甦生などオマケにも等しい。

 

 まぁ、黄金聖衣を基にした冥衣の創造くらいはハーデス本人もやっているが……

 

 昔に比べれば阿呆みたいに強く成ったユートを召喚した事は、本来なら単なる弱卒に過ぎなかった南雲ハジメ以上のイレギュラー足り得た。

 

「さて、そろそろ説明は終わりだ」

 

 パキンと剣が砕け散る。

 

「なっ!?」

 

「何を驚く? アザンチウム製みたいだったが、所詮は僕から視たら素材だけは良いナマクラに過ぎないし、原子という根源を破壊するなんて僕からしたら初歩の初歩だ」

 

 アザンチウムはトータスで最も硬い金属だからハジメもGー3Xのボディに使っているくらいで、よもやそんな金属を軽く撫でるだけで破壊するとは思わなかったのであろう。

 

「剣もそうだが緒方、どうしていつまで経っても死なない? 心臓を刺されているのに!」

 

「そんな程度の疑問か」

 

「そんな程度……だと!?」

 

「人間ってのは心臓を刺されたからと即死する訳じゃない。勿論、ショック死すればその限りじゃ無いだろうがな。確かに僕の心臓は刺された事で今は停止状態にあるけどな、ならば心臓の代わりを魔力でバイパスを繋ぎ、脈動させれば良いだけの話だ。その間に心臓を修復すれは済む。まさか天之河、それにエヒトルジュエ……心臓を潰した程度で僕が死ぬとでも思ったか?」

 

 思っていたから驚愕している訳だ。

 

 そして自分の状態も正しく把握をされている事に対しても驚愕を禁じ得ない。

 

「その表情、まさか気付かれないとでも思っていたのか? 一人称が我で僕をイレギュラー呼ばわりしながら天之河の性格も残っている。天之河がエヒトルジュエを受け容れて……魂が半融合状態に在るのが今のお前だ!」

 

「チッ!」

 

 盛大に舌打ちする天之河光輝=エヒトルジュエへとユートは告げる。

 

「大方、天之河に甘言でも囁いたんだろうな? 『力が欲しいか』……とかね」

 

「その通りだ! 我と勇者は一つと成ったのだ。雫、香織、鈴、それにユエもシアもティオも皆、我が幸福に導いてやれる!」

 

 それを聴いて一様に思ったのは……

 

『気持ち悪い』

 

 の一言であったと云う。

 

「ふん、どうせ天之河は戻れん。天之河光輝という個人にも……そして元の世界にもな」

 

 ユートがパチンッと――某・召喚師が曰わく出来る男はスマートに事を進める――指を弾いたら空間モニターが顕れて、その向こう側には家族会の者達が一堂に会しているのが見えた。

 

「父さん、母さん、美月?」

 

 天之河光輝=エヒトルジュエが目を見開いているのは、取り分けてモニターの直ぐ傍に居たのが天之河聖治と天之河美耶と天之河美月……間違い無く天之河光輝の家族だったからである。

 

『光輝、アンタ……』

 

 天之河美耶はまるで信じられない某かを視たと言わんばかり、そのタレ目っぽい目元には息子を見る目ではとても無い程に戦意に溢れていた。

 

『お兄ちゃん』

 

 黒髪を雫みたいにポニーテールに結わい付けた美少女――天之河美月は怯えた目で兄を見る。

 

『光輝……』

 

 精悍な顔付きの父親も我が子を信じたくないと頭を振って二度見してきた。

 

 様子から全てを観ていたのが判る、最初の方から天之河光輝がユートを刺すまでの全部を。

 

「誤魔化しも忖度も無い、言ってみれば現行犯みたいなもんだからな。お前が幾ら違うだの誰某の所為だの言い訳をしても全てが無意味だろうさ」

 

「あ、嗚呼……」

 

 天之河光輝の部分の思考が暴走する。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!」

 

 堪らず駆け出して戦場からの撤退をしてしまった事により、取り敢えずこの場での戦闘は終了したと考えても良かろう。

 

 モニターをふと見遣れば、我が子……或いは兄の愚行を見せ付けられた三人が絶望の表情となって茫然自失、後から『こうだった』と聴かされたくらいなら叱るなり何なりで済ませられたのやも知れないが、現行犯で視てしまったらこうなってしまっても無理は無い。

 

 ユートは最早、天之河光輝に一切合切の赦しも与えてやる心算など有りはしないから、肉体的にも精神的にも追い詰めて人生を終わらせる気だ。

 

「さてと、こういった仕儀と相成ってしまった訳だが……これはどうしたものだろうな?」

 

 どうするもこうするも無い、これはあからさまな人類に対する叛逆行為に他なら無いのだから、高校生だの責任能力の欠如だの未成年だの裁判では弁護士がよく回る舌で言い訳を繰り出すけど、どうにもならないというのが家族会に於ける反応の悪さが物語る。

 

 敏腕弁護士の天之河完治でさえ果たしてどれだけ減刑を勝ち取れるか? 何しろ現行犯で殺人未遂をやらかしたからには、単なる容疑者なんかより遥かに真っ黒なホシとなるだろう。

 

 求刑が罷り通っても仕方が無い。

 

 当然ながらユートはこうなる事を意図的に引き出すべく態々、今回の出来事を家族会へとリアルタイムで観せていたのだ。

 

 意気消沈する天之河家の面々。

 

「既に全ての神代魔法は入手する事に成功した、後はトータスの狂った神であるエヒトルジュエを討伐し、本来の女神ウーア・アルトへと戻す事を考えているんだが……エヒトルジュエを受け容れてしまった天之河光輝は半ば魂が融合している。従って仮に積尸気冥界波でどちらかの魂に干渉をして抜き出しても、どちら共が抜き出されてしまう結果になるだけだろう。これは魂魄魔法という神代魔法を用いても変わらない。オレンジジュースとアップルジュース、混ぜてミックスジュースにするのは容易いけど元のジュースには戻すに難いのと同じだね」

 

「それって詰まり?」

 

「エヒトルジュエの死は=天之河光輝の死だな。そして死ねば強引に地球人の天之河光輝と別世界の人間たるエヒトルジュエ、この二つが引き裂かれて天之河光輝は冥界へ逝く事になるだろうし、エヒトルジュエは魂が消滅してしまうだろうな」

 

 強い魂ならば転生の目も有るかも知れないが、基本的に転生したら記憶は無くなるのだからそれは最早単なる別人でしか無かった。

 

 記憶在っての自己同一性である。

 

「そうなった後に甦生するとかは?」

 

「雫、それは何の為に……だ?」

 

「う……」

 

「僕の能力は僕が僕の為に使う、誰かの満足感を満たす為には決して使わん。天之河光輝を甦らせたとして、奴が僕のいったい何に寄与をしてくれるんだ? 何も無い処か寧ろこれからも僕の邪魔する事しかしないだろうしね」

 

「そうよね」

 

 雫にもそれは判る。

 

「それに引き裂かれるって事は可成り欠けが出るって事、そうなると魂を修復しないと転生だって侭ならないから奴が転生するのも千年規模で先の話になるだろうな」

 

「ゆう君にとって光輝君は癌でしかないんだね、取り除く事しか考えていないみたいだよ」

 

 香織からすれば幼馴染みで友人……だったが、レ○プをされ掛かってもう友人とは呼べないのかも知れないけど、それでも中身は優しい白崎香織に間違い無くて天之河光輝の心配はしていた。

 

「次が最終決戦になるだろうな。人間族や亜人族や竜人族には、エヒトルジュエの正体を徹底して暴いて信仰心を削り取る」

 

「信仰心を……とな?」

 

「ティオ、奴が到達者でしかないのに神を名乗るだけの力を有しているのは、地上の信仰心を力に換える秘儀が存在しているからだ」

 

「何と!?」

 

「逆に言えば信仰心が無ければ力に換えるも何も無い、術式を捜して破壊しても構わないと言えば構わないんだけど、壊すよりはウーア・アルトが

再利用をしたら良いからな」

 

「捜せるのかのう?」

 

「“導越の羅針盤”で容易く見付ける事が出来る。とはいっても今はやらないけどな」

 

 確かに【解放者】が錬成士オスカー・オルクスの作品、如何なるモノをも捜し出す概念の付与をした彼のアーティファクトならば可能であろう。

 

「処でウーア・アルト……さん? 様? 余り喋ったりしないし動くのも余りしませんよね?」

 

 シアの疑問は御尤も。

 

「聖剣に自らを封じていた後遺症ってやつだね、何しろ自律機能は疎か喋る機能すら無い物質へと魂を括っていたんだ。使わない機能は退化してしまうのが常だからな、エヒトルジュエに敗れてしまって何とか命を繋ぐ唯一の手段が聖剣への封印だったんだろう。喋る剣も自律行動する剣も僕は識っているけど、ウーア・アルトもそんなモノを創っている余裕は無かったんだな」

 

 人間だって何ヶ月も眠り続けていたら筋肉が衰える、光無き地下の水を泳ぐ魚の目は退化してしまって見えなくなっているものだ。

 

 況してや数万年とか聖剣の内部で基本的に眠り続けていたウーア・アルト、一応は肉体を創って魂を定着化してやったけどまともになるには長い時間が掛かってしまうのも仕方が無い。

 

 その為の超越存在や超越者達でもある。

 

 ウーア・アルトの精神を調律するには人間ではどうにも出来ない、であるならば神や神に準じるだけの存在に任せてしまうべきだった。

 

「この侭、此方側の方針を話したい処だけど先ずは……仮面ライダーヘラクス、カトレアの恋人でミハイルとか言ったな? いい加減で変身を解除しろ、しないなら戦闘継続って事で問答無用に殺してやるが?」

 

 仮面ライダークローズチャージとの戦闘も流石に続けておらず、フリード・バグアーという上司も魔人族の同朋も故郷も何もかもを喪ってしまったミハイルは、ユートに言われてカブティックゼクターをライダーブレスから外す。

 

 変身が解除され生身に戻ったミハイル。

 

「ゼクターとブレスを此方に渡せ。まさかとは思うが、上司が死んで魔王が死んで魔人族が滅亡のレベルで消えて、未だに勝てる気で居る訳じゃあ無いよな?」

 

 ミハイルは言われた通りに渡す。

 

「私をどうする心算だ?」

 

「最初に言ったろ? 地獄でカトレアが待っているから疾く逝かせてやると」

 

「ならばさっさと殺すが良い」

 

「そうだな。取り敢えず言っておく、地獄というのは死後の世界で生前に犯した罪の分を苦しめる為の場所だが、カトレアには罪過を課してはいなくて一軒家を地獄の隅っこに与えてある」

 

「っ!? どういう事だ?」

 

 意味が判らないというミハイル。

 

「僕も人間なんでね、感傷の一つや二つくらいは有るもんなのさ」

 

「まさか、カトレアに惚れたとでも?」

 

「うん? まぁ、美女だとは思うけど別にそんな感情は抱いていないよ。彼女の死に際での潔さは見事だった、本当なら成る可く綺麗な殺し方をして恋人に返してやる心算だったんだが、勇者(笑)が横槍を入れてグチャグチャな肉片にしてくれたからな」

 

「勇者……エヒト様と一体化した彼奴が」

 

 魔王アルヴがエヒトルジュエの眷属神アルヴヘイトだというのは、フリード・バグアーだけでは無くミハイルにも知らされていたらしい。

 

「それと、僕は幾度も人生を繰り返して来たけど最初に結婚した妻の名前がカトレアだったんだ。だからこれは……本当にたんなる感傷なのさ」

 

「そうか……」

 

「あっちで好きなだけ暮らしたら転生すると良いだろう。次の人生でもカトレアと恋人に成れる縁くらいは繋いでやるから……さ」

 

 記憶を喪い姿も変わるだろう、ひょっとしたら男女が入れ替わる可能性すらあるのだろうけど、それでもカトレアとミハイルは直ぐ近くに生まれ直し、そして再びの人生を恋人として赤い糸にでも導かれるのだろう。

 

「フッ、人間に感謝する事になるとはな」

 

「地獄に於いてカトレアとの幸せな生活を……汝の魂に幸いあれ! 積尸気冥界波っ!」

 

 言葉の通りミハイルには痛みも何も無い死を与えてやる、積尸気冥界波による魂魄の剥離と冥界への謂わば魂葬である。

 

 魂を喪ったミハイルの肉体はグラリとその場へと倒れ伏してしまった。

 

 この直ぐ後、積尸気冥界波で黄泉比良坂に送られたミハイルの魂は死界の穴へと墜ちて地獄門を抜けるとアケローン川を渡り、第一獄の裁きの館へと辿り着き、天英星バルロンのカレンが気を利かせてカトレアを迎えに寄越していて割かし早々に再会する事が出来たのだと云う。

 

「これで魔人族は絶滅したか?」

 

《絶滅タイムだ!》

 

「二世は黙れ」

 

 ユエが一時的にエヒトルジュエに乗っ取られたから、キバットバット二世も離れてしまっていたのが戻って来た様だ。

 

『兄貴』

 

「ユーキか、久し振りだな」

 

『そだねぇ。取り敢えず神域に魔人族が居ると思うんだけど……どうする?』

 

「そうなのか?」

 

『うん、リルに確認を取ったら?」

 

「後で確認しよう」

 

 青い髪の毛をポニーテールにした美少女であるユーキ、その肉体はハルケギニアの大貴族であるオルレアン大公夫妻の双子の妹ジョゼットだ。

 

 それ故に見た目はシャルロット・エレーヌ・オルレアン――タバサと瓜二つである。

 

 基本的にユーキはユートの義妹として動くが、【準閃姫】でもあるから夜の性活もしていた。

 

「さてと、天之河光輝は殺処分確定として……他に何か訊きたい事は?」

 

『殺処分……』

 

『確定……』

 

 両親は矢張り不服らしい。

 

『ユエという人の肉体を作り直したという事は、ひょっとしたら君は死者の甦生が?』

 

 震えながら言うのは立派な服を来たナイスミドルなオッサン、ユートも一応ではあるけど見覚えのある人物だった。

 

「確か相沢の親父さんだったか?」

 

『う、うむ』

 

 相沢さくらというα世界線ではモブでしかない少女で、β世界線でも檜山大介の愚行でベヒモスの特攻を受け雑に轢死させられた上、遺体も放った侭で腐り果てたか迷宮に吸収されたかは定かでは無いが、詰まりは何も遺さずに死んでしまったそれなりに美少女な社長令嬢。

 

 彼はそんな相沢さくらの父親である。

 

 尚、どうでも良いけどα世界線でもβ世界線でも地球に居た頃はハジメを良く思わない一人だったけれど、α世界線では全てが終わってから魔王化したハジメに惹かれてハジメの両親を家の力により支援し、外堀を埋められないかとか考えているらしいのだが、それはそれとして何故か優花に対して心から尊敬の眼差しを向けていた。

 

 まぁ、α世界線では魔王化したハジメを以前とは違う目で見る者がモブの中に増えているから、相沢さくらもそんな中の一人という事でしかないのであろう。

 

 鉄砲玉とかメイドとかペットに成りたい何てのよりは幾分かマシである。

 

「……確かに死んだ人間の魂さえ確保が叶えば、肉体を創って魂を再定着化させて生き返す事自体は可能だが、僕は『甦生まっすぃーん』に成る気は更々無いんでね。対象が僕にとって有益か否かによって決めているんだ」

 

『有益か否か……』

 

 相沢さくらの父親は檜山大介の父親に対して、苛烈な私刑を行った一人でもあった。

 

「本人がとても有能で僕の為に能力を使う覚悟が有るとか、若しくはその生き返らせたい人間の為に一〇億円を支払うとかだろうね」

 

『そんな大金を容易く動かすのは……』

 

 会社の社長とはいえ自由自在にお金を動かせるという訳では無いのだから、況してやそれが自分の為に会社のお金を使い込むなど有り得ない。

 

 確かに彼は金持ちかも知れないが、それは至極単純に自由に使えるお金を貯め込んでいたに過ぎないし、そのお金も別に小遣いにして使っている訳では決して無い。

 

 相沢さくらの高校での学費や将来的に見るなら大学の学費、家のローンや食費や光熱費や様々に消費されていくのがお金なのだから。

 

『むぅ……緒方優斗君、貴方に取りさくらは可愛いと思いませんか?』

 

「は? まぁ、それなりには美少女だと思っちゃいるけど? 飛び抜けて美少女なユエや学校内で“二大女神”とか呼ばれている香織や雫、シアやティオやミレディみたいなのに比べなければな」

 

『おうっふ!』

 

 美少女と呼べるだけの容姿、だけど今現在に居る【閃姫】とは比べるべくも無かったと云う。

 

『ゴホン、ウチのさくらを貴方の……何と云いましたか? せんきというのに出来ませんか?』

 

「成程、お金は難しいし相沢の能力が有益かと云われればこれも難しい。ならば相沢の“女”という部分を強調したいって訳か」

 

『相沢家としても緒方家と縁を結べるのは嬉しいというのは有りますが、それより何より可愛い娘が生き返るなら……』

 

 その顔は正に娘を愛する父の顔、白崎智一みたいな親バカもまた父親なのだろうが……

 

「然し問題が有る」

 

『も、問題とは!?』

 

「僕は相沢に余り好かれていない」

 

『なっ!?』

 

 これは意外や意外な話。

 

「相沢はハジメに対して余り良くない感情を持っていてね、だけど僕はハジメとは友人だから勘ってやつなのか? どうにも避けられていた」

 

『ハジメとは確か南雲氏の?』

 

 相沢氏が南雲 愁と南雲 菫を見遣ると、矢張りというべきか狼狽えている。

 

『ハ、ハジメは虐めにでも遭ってるのか?』

 

「その通りだよ、愁さん」

 

『っ! ハジメからは何も聞いてない』

 

 言う筈も無い。

 

「親に心配をさせたくないから、家では精一杯に元気で居ただけだよ。僕としてはどうにかしたかったけど他ならない、ハジメ本人が学校での関わりを避けていたからね」

 

『ど、どうして!?』

 

「僕まで標的になるから。寧ろ標的になって僕が連中を打ちのめすのを避けたかったんだろうね。休みの日には普通に遊んでるんだから問題なんて無いのに……な」

 

『くっ、ハジメらしいというか』

 

『そうね、アナタ』

 

 南雲 愁の言葉に同意する南雲 菫。

 

「そういう訳だから、相沢が僕の女に成るってのは本人の意志を無視しないと無理じゃない?」

 

『くっ、何たる事か』

 

 ガックリと膝を付く。

 

 ユートは序でだと云わんばかりに他の娘持ちな親へと向けて口を開いた。

 

「因みに、僕は今生きている娘ら以外から相沢と似た感情を持たれている。これは男子連中も実は変わらないと思って欲しい」

 

 死亡したクラスメイトの親達は愕然。

 

「尚、理由は相沢と変わらん」

 

『『『『『何故だぁぁっ!』』』』』

 

 それだけハジメがクラスの中でも浮いていたという話だし、その原因は香織と小悪党一号を始めとする小悪党四人衆と天之河光輝に有ると言っても過言ではあるまい。

 

 南雲 愁と南雲 菫も叫びたい衝動に駆られてしまうが無理も無い、我が子が自分達の知らない間に学校で虐めを受けていたのだから。

 

 休みの日、ユートと遊ぶそんな日だけは安らぎを感じられるというのがハジメの談。

 

 彼女でも作れば? とも言ってみたのだけど、今の高校に通う前の中学生時代からハジメは余り積極的では無く、『趣味の合間に人生を』なんて何処ぞの自衛官が言っていた事を言い放つ始末。

 

 実際、アニメに漫画にラノベにゲームに特撮にと趣味へと全振りしているのも事実。

 

 高校に入ってから突撃傾向にあった香織に対しては辟易としていて、正くらいユートとの休みの一日こそがハジメの楽しみだと言われてしまう。

 

 趣味が同じだからだろう。

 

 いずれにしても、ユートもハジメは同じ趣味を互いに満喫する事が出来る友人――同士。

 

 気安い間柄なのも当然だった。

 

「取り敢えず僕が名前呼びしないって意味を考えれば良い、然して親しくも無い人間を名前で呼ぶ程に僕も気安い心算は無い」

 

 飽く迄も地球の現代日本である事を前提にしてという限定条件は付く、何故ならばトータスみたいなファンタジー世界だと抑々にして姓を持たない人間が普通に居る。

 

 設定上、姓が判らない人間だって居るのだから呼び様が無いとかの事情も出るだろう。

 

 だからそこら辺はファジーだ。

 

「それで、生き返る云々以外では?」

 

『最終決戦はいつになるのかい?』

 

「愁さん、良い質問だけど天之河エヒトが何処に行ったか次第だから判らない。近日中なのは間違い無いと思うけどね」

 

 南雲 愁の質問は核心を突く。

 

「恐らくだけどね、エヒトルジュエの意識的には使徒の増産と強化に時間を割くと思う」

 

『使徒とはあの同じ顔をした?』

 

「そう。数はアレで補っているから減った分というのは全体の雀の涙だろうが、それでも数千体が溶けたんだから増産はしたいだろう。それに既存の使徒では勝てないから強化を必至だろうね」

 

 しつこい様だがエヒトルジュエの使徒は数値的に見て、全能力値が一二〇〇〇というトータスの全体でも可成り大きなモノ。

 

 本来の天之河光輝が最高レベルへと到達しても全能力値が一五〇〇と、三倍な限界突破や五倍な限界突破・覇潰ですら追い付かない。

 

 それがワラワラとまるで一体を見たら三〇体と云わんばかり。

 

 実際に【解放者】達がエヒトルジュエの使徒をどう視ていたか、ハルツィナ樹海で使徒に見立てていた大量のGを見れば解る通りだろう。

 

『何十万と出て来たら?』

 

「此方側もまだまだ戦力増加の当ては有るから、それに例えば淑乃のロゼモンは究極体から更なるパワーアップのバーストモードが在る。つまりは戦力は今現在見せているモノだけじゃ無いのさ」

 

 ジオウ系の能力としては仮面ライダーの召喚、更に余り使用しない紋章変遷(クレスト・チェンジ)も存在する。

 

 ライダーズクレストを使っての召喚だったが、仮面ライダーとはまた違う紋章を使って別の存在の召喚、それによる人数の増加は出来る上に割と仮面ライダー級に強い。

 

『それとこれは別に答えなくても構わないけど、優斗君は心臓を潰されても死なないと豪語していたよね? 例えば首を刎ねられた場合は?』

 

「それに関しては紋章士ルキナに話して貰うのが良いかもね」

 

『うっ!』

 

 聖王女の指輪から顕現化していたルキナに話を振ると、言葉に詰まった挙げ句の果てに顔を真っ赤に紅潮させながら両手で顔を覆い(うずくま)る。

 

 あれは正しくルキナにとっては黒歴史でしかなかったし、そんな彼女の記憶を持った紋章士であるからにはこうなってしまうのも無理は無い。

 

『嘗ての私は御父様を殺害した裏切者を捜す事に躍起に成っていました』

 

 ぽつぽつと語られるユートが干渉をした世界線の【ファイアーエムブレム 覚醒】での出来事、父親であるクロム、叔母であるリズ、忠臣であるフレデリク、クロム本人は元より叔母や忠臣は違うだろうと判断をしていた。

 

 他にもセレナの母親のティアモ、クロムの妻=自分の母親たるスミアも違う、そんな風に一人一人を精査して行き着いたのが軍師の存在。

 

 実は軍師に関しては姿は疎か名前も性別てすら不明、だけど明らかにユートが父親の軍師として動いていた事もあってクロムを殺した容疑者へと決め付けてしまう。

 

 二人切りに成るシチュエーションがあった為、ユートにその話をしてユートこそがファウダーを討った後、未来でクロムを殺害した犯人であるとまるで『じっちゃんの名に懸けて』とか言い出しそうに指差して来た。

 

『そう思うなら斬れば良い』

 

 そんな風に言われて頭に血が上ったルキナは、手にしたファルシオンで首を刎ねたのである。

 

 沢山の女性と浮き世を流すのを視ながら好意を懐いていたルキナは、刎ねた生首を拾い上げると慟哭というレベルで泣きながら抱き締めた。

 

『ちっぱいでもそれなりには気持ちが良いけど、身体が無いからちょっと不便だよな』

 

『キャァァァッ! 生首が喋ったぁぁぁっ!? お化けぇぇぇぇぇぇぇぇっ!』

 

 普通に頭しか存在しない筈のユートが喋り始めて吃驚仰天したのは当然だろう。

 

『誰がお化けか! この僕がちょっと首を刎ねたくらいで死ぬものかよ』

 

 当たり前だけど、『そんな莫迦な』とルキナは

茫然自失となってしまったのだと云う。

 

 その後、首を倒れた身体の元の位置に持って行くと普通に繋げて見せられた。

 

 その後に押し倒されたルキナは抵抗らしい抵抗もせずにその夜はユートと合体してしまい、更にピロートークでユート下手人説が有り得ない事を説明されて黒歴史認定となる。

 

 先ずを以てルキナ達の“絶望の未来”にユートは一切の干渉をしておらず、ユートの位置に居たのは性別こそ判らないけどルフレという存在だと。

 

 そしてこの世界線ではルフレの位置にユートが居て、肝心要のルフレ本人は未だに出逢ってすらいなかったのだ。

 

『まぁ、あれだよ。若しも僕がルフレみたいなら僕の中にギムレーが存在する事になるんだけど、無理だろうな色々と……優雅兄に瑠韻、ドライグにアルビオンと居る中に勝手に入り込んだりしたらフルボッコ確定だしね』

 

 だけどその呟きは聞こえて無かった。

 

 世界線が違うという意味、そして父親が判らないとはいえ母娘丼を平らげるユート、そして自分も姉妹丼をされてしまった事への羞恥心。

 

 ヒーロー大好きな妹のシンシアも自分より早くにそうなっており、果たして彼が裏切者だったとしたらシンシアは立ち直れるか? といった懸念もあったけど、そんな心配は無くなって安堵をした訳で……それより何より自分が彼への攻撃行動に出たという報復みたいなものだったし、ルキナ自身からしても謝罪の意味もあって受け容れた。

 

 尚、クロムとスミアはユートの干渉した世界線でも普通に結ばれた為に、ルキナとシンシアという姉妹だけは確実に“絶望の未来”に向かう世界線と両親が変わらないものとなる。

 

 余りにも恥ずかしい黒歴史を伝えたルキナは、指輪の中に引っ込んでしまい暫くは引き篭もりそうな雰囲気、南雲 愁も訊いたのは矢張りアレだったかと思ったらしくてそっぽを向く。

 

 そして居た堪れない雰囲気の侭に、緊急開催された家族会は終了をしたのだった。

 

 

.




 ありふれを改めて読んで幾つか同じ言葉が有ったりします、例えば――到達者。これは意味合いが当然ながら違ってきますけど、だからと言ってかけ離れてもいないんですよね。

 神代魔法の神髄を個人で扱える者がありふれでの意味、人としての限界点に到達をした者というまんまの意味が此方です。

 それは兎も角、ありふれた職業で世界最強での天之河光輝の末路は幾つか候補がありましたが、アンケートにて決定したのが香織をレ○プ未遂とエヒトルジュエとの融合化です。

 問題が一つ、天之河光輝のエヒトルジュエとの融合化は勇者が実はユエの予備的存在……という独自設定によるものでしたが、何故か読んだ人は皆が公式設定みたいに言っています。

 読み直してもそんな記述が見つからず、正直に言うと首を傾げてしまう事態だったんですよね、前々からの……

 読み飛ばしてしまったか忘れたかのか?


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。