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「う、此処は?」
「御約束な科白は良いから服を着ろ。メイル・メルジーネやリューティリス・ハルツィナであれば見ていて目の保養に成るけど、男の裸体やJr.何てのは見ていたくは無いからな」
ポッドから出された黒髪の青年――但し嘗ての【解放者】として動いていたより若々しい――が眩しそうに右手を額に添え、よく有りがちな科白を宣ってくれたけど裸体である。
他にも矢張り若く設定されたヴァンドゥル・シュネーやナイズ・グリューエン、メイル・メルジーネやリューティリス・ハルツィナ、そして何よりも【解放者】の神代魔法の使い手の中で最後に合流したラウス・バーン、彼は一番歳を喰っていたし妻帯者でそれなりの年齢の子供だって居た。
そんな彼も二十歳の半ばくらいにまで若返っており、剃っていた髪の毛も確りと……決して後退をする事も無いレベルで生え揃っている。
ラウス・バーンの頭の毛は、禿げていた訳では決して無くて剃っていたのだ!
オスカー・オルクスも一六歳くらいに若返っていて、それが故にJr.が寝起きの充血によりピンッと勃ち上がっていた。
それはナイズ・グリューエンやヴァンドゥル・シュネーやラウス・バーンも同じく。
また、メイル・メルジーネとリューティリス・ハルツィナの裸体は、そんな男共の勃起したJr.を視てしまったお口直し的に目の保養となってはいるが、ナイズ・グリューエンの妻であったユンファ・
服はミレディの記憶から調べて各々がその昔に着ていたのを、今現在の背丈に合わせてユートが【創成】を使い即興で創った物だ。
流石にオスカー・オルクス謹製アーティファクトまでは創れなかったが、これもきちんと内容を理解して記憶さえすれば再現が可能と成る。
未だよく回らない頭で取り敢えず裸で居るのはアレだったから、全員が昔に着ていて勝手知ったるとばかりにもぞもぞと下着を穿いて服を着た。
「改めて、随分久し振りだな【解放者】の者達。声で或いは察したかも知れないが嘗てオスカー・オルクス、ナイズ・グリューエン、メイル・メルジーネ、ミレディ・ライセンの四人だけだった頃に不可思議な出逢いをした、僕がゼロワンだ」
「そうか、あの時は全身を鎧と兜と仮面で顔なんか判らなかったけど……君がゼロワンか」
未だにボーッとした頭を無理矢理にでも叩き起こそうと頭を叩き、ジッとユートの顔を見遣りながら笑顔を浮かべるオスカー・オルクス。
「とはいえ、ゼロワンというのはあの仮面の姿。仮面ライダーゼロワンってだけでね、当然ながら本来の姿の名前では無い。本当の名前はユート、緒方優斗・スプリングフィールド・ル・ビジュー・アシュリアーナという」
「な、長い名前だね? ひょっとしなくても君は貴族か何か……かい?」
「アシュリアーナ真皇国の現真皇だから貴族の上の皇族というべきだろうね。まぁ、オスカーが気にする必要は無い」
緒方優斗と日本人の名前、スプリングフィールドという英国人にして魔法世界人としての姓に、婚姻関係を結んだ元アシュリアーナ公国の公女たるリルベルト・ル・ビジューの名前と、真皇と成った時点で真皇国の名前を姓に追加した結果だ。
「そうなんだね。それとあっちで此方を視ているのはミレディ……なのかな?」
「ああ、恥ずかしがってるんだろ。久し振りに会う仲間に……さ」
何しろ、一万年と二千年前……では無いけど、少なく見積もっても数千年前に大迷宮へと篭もる為に離別の挨拶を交わし、二度とは会えないものだと思ったら実はアーティファクトで魂を封印して永らえ、こうして肉体を持って復活されたのだから嬉しさの反面で恥ずかしい。
笑顔で来い来いと右手を振るオスカー・オルクスに対して、ミレディは怖ず怖ずとしながらではあるが近くまで寄ってくる。
「ミレディ、久し振りだね」
「う、うん。久し振りオー
「そうだね、僕は……オーちゃんだ」
苦笑いをするオスカー・オルクス、自分が甦るより前にゴーレムの駆体から生身の肉体に復帰をしたミレディ、彼女がどの様に生きたのかユートとどんな関係を結んだのか理解していたから。
「久し振りねミレディちゃん」
「本当に久し振りだ、ミレディ」
生前では長い付き合いなメイル・メルジーネ、そしてナイズ・グリューエンが共に話し掛けて来る……けど、ナイズ・グリューエンの腕を組んでユンファが一緒に居た。
ユンファはナイズの妻だった訳だから構わない光景の筈だが、彼女も若返っているから傍目に視ると確実にアウトなモノに映る。
「メル姉にナっちゃんにユンちゃん、本当に久し振りだね。ラーちゃんは禿げが治って何よりだしヴァンちゃんは変わらずマフラーなんだ」
「私は禿げていた訳では無い!」
「俺のマフラーは何処ぞの鬼畜眼鏡とは全く違って芸術性を秘めているからな」
ラウス・バーンとヴァンドゥル・シュネーも、久し振りな【解放者】の首領にして仲間でもあるミレディと、懐かしさとウザさを綯い交ぜにした挨拶を交わして来た。
「君がオスカーの言っていたゼロワン、ユートとか云ったか? 私の魂魄魔法をどうやら受け継いでくれたらしいな」
「それを言うなら俺の変成魔法もだ」
「それ処か私の再生魔法、ナイズ君の空間魔法、オスカー君の生成魔法、リューティリスちゃんの昇華魔法、ミレディちゃんの重力魔法の全てを得ているわよね? そして神髄に至り概念魔法すら扱える筈だわ」
ディーネと共にやって来たメイル・メルジーネも驚愕しながら言う。
「つまり僕達の目論見通りだ」
オスカー・オルクスはクイッと眼鏡を押し上げながら話に加わって来た。
「君達、神代魔法の使い手は初めから神代魔法の一つを扱える。だけどそれだけに、君達は各々の神代魔法に特化されてしまっている為に、魔法陣を用いて他の神代魔法を覚えるという事が出来なかったんだろう?」
「その通りさ。概念魔法を発動するのなら一人に神代魔法を集中しないと難しい。だけど僕達では仲間の神代魔法を覚えられなかった」
究極の……否、正しく極限の想いを篭めなければ概念魔法は発動しない、それだけに一人が集中するのと七人の雑音付きとでは成功率が段違い。
「僕も神代魔法云々以前から概念の付与は出来ていたんだ。神代魔法と概念魔法は今までの能力を上向かせるには充分な力足り得る」
「前から似た事が出来ていたのか!」
「まぁね、オスカーは知っているだろう? 僕が君以上に錬成に長けていたのを」
「あ、ああ」
「僕の力は【創成】、謂わば全ての神代魔法を併せた様な能力なんだよ」
「なっ!?」
ユートの【創成】は元々がハルケギニア魔法の一つ“錬金”であり、それが“錬成”という魔法へと進化をしていたモノではあるが、更にメティスの神氣を取り込んでカンピオーネの権能として進化したモノだ。
つまり純粋な意味では土系統魔法に過ぎなかったから無機物への干渉をする魔法だったのだが、これが“錬成”に進化した際に実は有機物にも干渉をする事が可能となっていた。
これに関しては時空間放浪期に疑似転生をした世界で出逢った転生者、元男ながら胸が無駄に大きい少女としてTS転生をしたレンの魔法を視ていて気が付いたのである。
この時点で無機物と有機物という全ての物質への干渉が出来る魔法だった訳だけど、メティスから神氣を得た際に虚無魔法の力をも取り込んでいた【創成】は、あの魔法が出来る根源的な部分を確りと受け継いでいた。
元々、ハルケギニアの虚無魔法は時空間にすらアクセスを可能としており、記憶を司る脳にまで力を及ぼし、原子よりも更に極小なる粒子にまでも干渉が可能なモノである。
その力を十全に受け継いだ【創成】は文字通りトータスの七大神代魔法、これらの能力の殆んどを持っていたと云っても過言ではない。
無いのは重力魔法――星のエネルギーに干渉をする魔法くらいか。
だけどトータスに来て重力魔法を【創成】へと組み込めた為、今やそれすらも持ち合わせる力へと変貌を遂げてしまっている。
ユートの【創成】は文字通り創り成す力として完成に近付いていた。
「オスカーの生成魔法、メイル・メルジーネの再生魔法、ミレディの重力魔法、ヴァンドゥル・シュネーの変成魔法、ラウス・バーンの魂魄魔法、ナイズ・グリューエンの空間魔法、リューティリス・ハルツィナの昇華魔法。この七つを以て概念魔法は間違い無く僕の【創成】に組み込まれた」
元は単なる土系統魔法の“錬金”が進化をして、更に女神の神氣をも取り込んで飛躍的な進化を促され、こうして魔法の能力を新たに組み込む事で更なる超越化が成されていく。
「死者すら甦生する訳だよ」
肩を竦めるオスカー。
「あ、ユンファ」
「はい?」
「君はスーシャ・リブ・ドゥミバルを知ってるよな? 君の姉な訳だし」
「え、はい……」
表情が暗いのはクレパスに落ち逝く姉の姿を思い出したからかも知れない。
「生きてるぞ」
「……は?」
「実はクレパスに落ちた後、エヒトルジュエとは異なる邪神によってこの時代に送られていてね。何でアイツがスーシャを送り込んだのかと思ったんだが、どうやらユンファがこの時代に甦生するのが判っていたかららしいな。這い寄る混沌らしい厭らしさだよ全く」
「え……ス、スー姉が?」
あの決定的な日、ユンファの目の前で『……あの人を、頼むわね』と言いながら手を放して消えた姉のスーシャ、彼女が生きてこの時代に居ると聞いて涙を浮かべるユンファ。
全てを無くした。
全てを亡くした。
あの敗けるだけの一大決戦、エヒトルジュエの真名すら識る事が出来なかった敗北者達……それこそがミレディ・ライセン率いる【解放者】。
ミレディが自らの魂をゴーレムに移してまでも在り続け、孤独にライセン大迷宮にて過ごす事を余儀無くされても未来に繋ぐ。
だからユンファは決めた。
スーシャの代わりは出来なくてもナイズとの間に子を成し、その子を未来へと繋ぐのだと一つの教えを【解放者】の力を借りて伝えていく。
そしてナイズ達と共に魂の眠りを。
それこそスーシャの代わりに見る為に、平和となった世界をこの目でナイズと共に見る為に魂を六つに分割されようと、我が子を孫を曾孫を玄孫を未来に繋げて死出の旅路に就いたのだ。
「ユンファ……ナイズ様……」
スーシャはオプティマスプライムに乗っていたのだから当然、この地にも来ていて二人の復活も行われる事を聞かされていた。
ユンファの甦生もナイズの復活も嬉しくはあるのだが、矢張り自分の決めた事だとは云ってみても寂しいという思いは有る。
愛する……
まるで裏切るにも等しい、【解放者】のリーダーたるミレディによるエヒトルジュエとの取引――七大迷宮創造計画、その中でミレディを除いた六人は別の計画を立てていた。
プロジェクト・ゼロワン。
嘗て、未だ【解放者】のメンバーが四人だけだった頃に起きた不可思議な邂逅、ゼロワンと名乗る仮面に全身をタイツと鎧に身を包んだ男、更に姿を変えて闘う幼女にしてゼロワンの養女でもあるミュウ、他にも赤や青や緑の全身鎧を纏って闘う戦士達とのあの出逢い。
あの時にゼロワンがオスカーの服のポケットに忍ばせたアーティファクトと手紙、視るからによく解らないカセット状のアーティファクトではあったもの、ミレディと離れてから時間もそれなりに有ったからオスカーは手紙に書かれた説明書を読みながら解析をした。
アーティファクトの名は“プログライズキー”とされており、本来の扱い方はゼロワンと同じ様に鎧を纏って戦士と成るという物。
事実として、仮面ライダーゼロワンもそうしてプログライズキーを用いた変身をしていた。
然しながらユートがオスカーに対して贈っていたプログライズキーはブランク、しかも本来のとは仕様そのものが異なる代物らしい。
『やぁ、オスカー・オルクス。僕はゼロワンだ。先ずは何を書くべきか迷ったけど取り敢えずは、ミレディは僕が美味しく戴いた……と告げよう』
手紙の出だしにオスカーは手紙を握り潰した挙げ句、ゲシゲシと踏みにじってオルクス研究所としていた室内で怪獣の如く叫んでいた。
ミレディ並にウザいから。
然し手紙は殆んどダメージなど無かったかの如く皺すら付かぬ有り様、間違い無く再生魔法を掛けられてダメージを無かった事にしている。
無駄に高性能な手紙だったと云う。
『まぁ、事実は事実として煽りは冗談の類いだ。僕は君や【解放者】と争う心算は無いというよりは仲良くしたい』
つまり、美味しく戴いたのは確かだけど決してオスカー達と争いたい訳では無いのだとか。
『本来は君らの記憶は曖昧化されてしまっているだろうが、ある時を境に今回の邂逅を思い出す様に細工をさせて貰っていた。今、この手紙を読んでいるなら全てが終わってしまった後だろうな。だけどだからこその提案も出来るというものだ、取引の性質からミレディはどうにも出来ないにしても、君らの死後にまでエヒトも干渉はしてこないだろう。故に提案だ、このプログライズキーには魂を蒐集して安定化を成す仕掛けがしてある。つまりこのプログライズキーに君らが死んだ後に魂を蒐集させる事で、仮に一万年が過ぎ去ろうとも保存をする事が可能という事だ。既に此方側ではナイズ・グリューエンとメイル・メルジーネの大迷宮でそれに連なる物も手に入れていたから、それは言ってみれば渡さないとならなかった物って事になる。既に完成品を見ているからには君が成功させるのは間違い無い、だけど決して油断なんてしないで欲しい。完成しなかった場合は僕と会った世界と繋がらない世界線と成り得るから。とはいえ、造るか否かは自分達で決めるべきだ。自由なる意思の下に……ね。その時代での稀代の錬成師オスカー・オルクス殿へ、我が時代に於ける究極の錬成師にして至高の創成師ユートより』
『うぜえ!』と、本当に火へ焼べてやったけど燃える事など全く無かった手紙。
究極だの至高だのは冗談でも何でも無い単なる事実として綴ったらしい。
こうして発足したプロジェクト・ゼロワンに、オスカーを含む六人の【解放者】だけでは無くてメイル・メルジーネの妹のディーネ、ナイズ・グリューエンの妻であるユンファが名乗りを挙げ、この八人の魂を分割して蒐集させる機能を付けてやり、オスカーは緑の坑道を改造した迷宮の更なる下方、奈落すら大迷宮として整備をして合計で二百階層にも及ぶダンジョンと成った後の世に於いて“オルクス大迷宮”と名を残す大迷宮の奥底、その一室で最期の時を悟り椅子の上に座して静かに息を引き取った。
享年はオスカー本人も数えていなかったから、もう既に思い出す事すらも出来なくなっている。
百歳まで生きたのか、或いは七十代くらいまでしか生きられなかったのか? そのいずれにしても今やオスカーには関係の無い話であろう。
「ユートと云ったか」
長いマフラー男――ヴァンドゥル・シュネーが話し掛けて来た。
「ヴァンドゥル・シュネーか」
「今は魔人族との戦争中だと云うが、それはどうなっているのかを訊きたい」
それは切実な表情。
「ああ、確かヴァンドゥル・シュネーは魔人族と氷竜人のハーフで当時の魔王の弟だったよな」
「そうだが……当時のか……」
意味を覚ったのだろう、ヴァンドゥル・シュネーは更に表情を固くする。
「全員を呼ぶと良い。いちいち一人一人に現代の嘗てを語るのは面倒だからね」
「判った」
ガヤガヤとやって来たのは甦生された者達ばかりでは無く、戦闘も終わった事で暇そうな連中までが一緒になって付いて来ていた。
「さて、ヴァンドゥル・シュネーからの求めにより一万年は昔の頃と現代での差違などを説明しておこうと思う。先ずは言い出しっぺなヴァンドゥル・シュネーが気になる魔人族についてだけど、遂先頃に殆どの魔人族が死に絶えた」
「……ハ?」
意味が解らない……というかだ、百歩譲をって滅亡したのならば未だ理解も出来ていたのだが、今何と言った? 遂先頃? 甦生されるほんの少し前に亡ぼした……と?
「どういう事だ?」
「先ず、魔人族の国である魔国ガーランドと人間族の国々は戦争中だった。エヒトによる操作での事なのは【解放者】になら言うまでも無いな?」
全員が固唾を呑みながら頷く。
何しろ、大迷宮内の試練は正しくエヒトからの操作を受け付けない様にと遺したのだから。
「神山に存在した聖教教会本山。それは嘗ての時にラウス・バーンが所属していて、バーン大迷宮の置かれた場所――聖光教会の在った場所だが、エヒトにより僕らは勇者と共に召喚されたんだ。そして古国たるハイリヒ王国に預けられた」
「ハイリヒ王国?」
「その源流はオスカー・オルクスの妹分を妻にしたラウス・バーンの三男が興した王国だ。シャルム・バーンとコリンの……ね。だから勇者の為の聖剣が死蔵されていた」
「っ!?」
勇者として旅に出てコリンが付いて行く形だったし、いずれはそうなるのだろうと考えてはいたけれど確かな歴史らしい。
「ま、王太子に成る予定だった糞餓鬼は今や館に蟄居させられていて、子も成せない肉体で女に変わって兵士の慰み者に成ってるんだけどな」
あんぐりと口を開けるオスカー・オルクスと、矢張り開いた口が塞がらないラウス・バーン。
不能の短剣で不能にされた上で女体化させられているから妊娠はしない、故に何十人の男共から代わる代わる犯されてもハイリヒ王国の胤は残されたりしない。
まぁ、今は畑だけどな!
今はもう頭も気が触れたらしくて快感に酔い痴れているのだとか。
一応、女性体だと快感は有るから。
(報告だと最早、自分から尻を振って快感を求めるヤリ○ンと化しているらしいからなぁ)
ガバガバでも無償でヤれるから館の警備員とは可成り人気な職場らしいのだ。
「一応、元王女は居るけど子を成す意志も無いから血は絶えるな」
リリィはユートとの逢瀬は重ねても子を成す気は更々無かった。
王族の子供、ハイリヒ王国の血族を残してはならないと王女であるが故に理解をしているから。
「現在のハイリヒ王国は既に瓦解しているんだ。まぁ、一応はリリィ……リリアーナ・B・C・ハイリヒは血族なのかね? つーても、一万年は開いているから血筋がどうのは今更か?」
「そうだな……」
ラウス・バーンとしても我が子の子孫か否かに拘りは無いらしい。
血筋と言えばユートが思い出したかの様に見遣るのは、リブ・グリューエンのミドルネームを持った爺様と少女の二人。
「ナイズ」
「どうした?」
「彼処に居る二人なんだが」
「ふむ?」
「名前は爺様がシモン・L・G・リベラールで、少女の方がシビル・L・G・リベラールという。そしてミドルネームのL・Gはリブ・グリューエンって意味だ」
「っ!?」
ナイズ・グリューエンは、バッバッとユートを見て二人の方を見遣ると驚愕に満ちた顔になる。
「あ、あの二人が自分とユンファの子孫だと云うのか!?」
「ああ。恐らくは魂魄魔法の応用なんだろうが、一度でも聴けばスッと頭に入ってきて二度と忘れない口伝と、そしてL・Gというミドルネームが君との関わりを裏付けている」
「確かにラウスの魂魄魔法を借りて自分の子供達に口伝を遺したが、そうか……何千年と辿る事も出来ない程に時間が過ぎて尚も残っていたか」
年齢が一〇歳以上離れた幼妻だったユンファ、それは日本の今で言う肉食系女子宛らのギラギラした瞳で狙って来て、その成長が著しい肢体にてナイズを誘惑して美味しく『戴きます』をしてしまい、その後も尻に敷いてまるでスーシャが取り憑いたかの如くだったらしい。
運命の刻、ユンファのお腹にはナイズとの間にデキた子供が宿っていた。
今現在のユンファは今のスーシャと変わらない姿をしているが、それでも魂に刻まれた情報からクラスメイトの男子が視たら、思わず前屈みになりそうな美貌と妖艶さを身に付けている。
しかも肉体が新生しているという事は、これで新品な処女であるというのだから堪らなかった。
スーシャの時間感覚からしたら一年も経っていないのに、妹のユンファが凄まじく大人になっていて驚くしかあるまい。
ナイズ・グリューエン、ユンファ、スーシャ、そしてナイズとユンファの子孫であるシモン翁とシビル嬢、この五人は仲良く家族の会話を愉しもうと集まってにこやかな雰囲気となる。
取り敢えず家族といえば一万年と二千年前から別れてる種違いの姉妹、メイルとディーネの二人も折角の再会だからと会話をしていた。
家族が既に亡くなったヴァンドゥル・シュネーとラウス・バーン、ぼっちなリューティリス・ハルツィナはオスカー・オルクスと共にミレディの所で話をしている。
ユートは【解放者】達の会話に特には加わらず逃亡したエヒトルジュエ、そして勇者(笑)の次の動きに付いての話を仲間や家族会としていた。
「次が最終決戦にするのは変わらない。先に言った通り天之河はエヒトルジュエと魂が融合しているからには殺処分するしか無いな」
「そうなりますか……」
最早、意気消沈という感じになる天之河聖治はやるせない気持ちで一杯なのだろう。
息子の殺処分、謂わば死刑判決を受けた様なものだったから気分は犯罪者の身内。
父親としての内心ではユートを人殺しと罵倒をしたいかもだが、天之河光輝は余りにもやらかしが過ぎているのを彼も理解していた。
何なら天之河光輝こそが大罪人。
少なくとも異世界トータスでは勇者として喚ばれながら、既に大陸でも類を見ない程の俗悪なる超大罪人としての指名手配が成されている。
また、原典ではヒトの心の安らぎという名目でエヒトルジュエとは真の神とは別の邪神として、神としてのエヒト――エヒクリベレイは象徴として残していたらしいけど、この世界の女神ウーア・アルトが復活をするのならば偽神如きは名前すらも不要。
全てが終わったならシモン翁を教皇に据えて、大樹の女神ウーア・アルトを信仰する宗教として聖教教会の再構成をする予定、大樹教会(予定)というのが仮の名前として付けてある。
シビル嬢は祖父を冷遇した聖教教会に矢張りというべきか、思う処があったらしくて神官としての制服は着ていても苦々しくエヒトに批判的だった事もあり、そんな予定を聴かされてちょっと喜んでいたから受け容れた様だ。
天之河美月は既に切り換えているのだろうか、特に悲壮感を漂わせるでも無く雫を視ている。
義妹の一人なだけに実兄より『御姉様』である雫が優先、雫が兄と結婚をすれば誰より先んじて本当の義妹に成れるから推奨はしていたけれど、大罪人と成った天之河光輝には最早何ら期待などしておらず、寧ろユーキから聴かされていた計画に頬を赤らめて夜な夜な御股を濡らしていた。
雫と同じ【閃姫】に成ればユートの閨へと呼ばれた際、雫と身体を重ねる機会を与えられるのだと云うそれは、天之河光輝が雫と結婚しても決して与えられない至福の刻を得られるのだから。
南雲 愁と南雲 霞は息子が未だに合流していないのを心配していたが、ハジメは自身の力で大迷宮をクリアする為に恋人と共に動いている。
恋人の恵里も天之河光輝と違って自分を確りと見てくれるハジメへと傾倒しており、ともすればヤンデレ化してもおかしくないレベルでべったりとしているのは、今や大嫌いな母親と変わらないのだと気付いてしまっていた。
まさか、この年齢になって母親を理解してしまうなんて……と自嘲したらしい。
ユートはα世界線に極めて近しい世界線から来た恵里"を抱いているから、肉体的には全く同じな此方側の彼女の感度が良さそうな場所――性感帯も理解をしている為、ハジメにはこっそりとその箇所を伝えておいたから余計に拘泥している。
しかも二人はユートが造った魔物肉製な食品を食べていた為、肉体の魔改造がちょっとずつ進んでいたのに全く気付かない侭で、いつの間にやら貧弱なオタクボディが細マッチョと化してたり、貧乳寸胴だったのが巨乳まではいかなくても盛り上がりを魅せ、更に腰回りも引き締まって括れを確りと自覚が出来て美乳でナイスバディ化。
序でに実は僅かながら双方共に美形化しているからか、偶に帰って来ると元ハイリヒ王国の騎士は恵里へ思わず吸い寄せられ、同じくメイド達はハジメへと吸い寄せられていた。
ユートが連れて来た連中は勿論ながらそういう事も無かったが……
更に粗とはいかないが、それでも平均より下回っていた
そんなハジメ&恵里のコンビは空間魔法を手に入れた為、それにより開かれる再生魔法への道を知らされていたからエリセンへと向かっていた。
速度的に最終決戦には間に合わないだろうし、途中でも強制的な帰還をさせる予定である。
嫌なら嫌で構わないが、最終決戦はエヒトルジュエ次第になるから少なくとも一ヶ月くらい猶予が有るにせよ、本来の主人公無しで闘いをするという事に成るであろう。
「あ、ユートさん」
「アインハルトか、どうした?」
「ランデル元王子ですが」
「ふむ?」
「完全に壊れました」
「そうか……意外と保ったな」
最早、ランデル・B・C・ハイリヒ元王子には生きているだけの……心臓が動いているだけでしかない生き人形状態だとか。
食事も流動食を流し込んで食わせる事も難しくなり、今はミッドチルダで使われている医療道具を用いての点滴で生かしているらしい。
「トドメを刺しますか?」
「……」
一見、冷酷なアインハルトの科白でもトドメが温情である事もあり、戦場に生きてきた先祖であるクラウスの記憶を持っていた身からすれば温情を掛けたといった処だし、アインハルトが現在のシュトウラ覇王国の覇王であるからには元王太子であるランデルの首級を直に取る、これは一種の政権交代に於ける儀式にも近い事だった。
勿論、殺りたい訳では無い。
「それをするならトゥスクル白皇国の白皇であるクオンにもさせないと……だからな」
元ヘルシャー帝国も、今やクオンが治めているトゥスクル白皇国と国号が変遷しているのだし、シュトウラ覇王国で元王太子を殺るのだとすれば同じくトゥスクル白皇国も、ヘルシャー帝国に於ける元皇帝――皇太子以下継承権を持った皇子は軒並み全滅した――ガハルドを殺らないと体裁を保てないのだ。
尚、二人の皇女は女性であるのと皇位継承権を放棄しているので問題は特に無かった。
「全てが終わったらランデルは死亡したものとして処置をする。身柄は一般人として記憶も何もかもを嘘で塗り固めた状態で生かすさ」
「判りました」
アインハルトはちょっとだけ胸を撫で下ろしながら頷く。
「ユート」
「今度はリュールか」
「? 何です?」
「いや、用事は?」
「はい、逃げたエヒトルジュエの次の動きに付いてとか色々と話し合いたいとシズク達が」
「判った、アインハルトも」
「はい」
闘いは正に終盤であったと云う。
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長らく放ってたからゴチャゴチャ感が半端ない噺になってしまった。
勇者(笑)な天之河の最後について
-
原作通り全てが終わって覚醒
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ラストバトル前に覚醒
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いっそ死亡する
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取って付けた適当なヒロインと結ばれる
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性犯罪者となる