ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 色々と足したり変えたりはしましたが、っぽい噺からの流用が多かったり。





第15話:解放者であり反逆者と破壊者

.

 安全な領域を作っては、えちぃをユエ、香織、雫、愛子と代わる代わるしながらも先へと進む。

 

 どれくらいの時間が経ったのか最早、よく判らなくなるくらいオルクス大迷宮を彷徨っている気がした。

 

 偶には香織と雫で3P、或いはユエと愛子で3Pをしてみたり、四人を同時に5Pで決めてみたりする。

 

 もうすっかり慣れたか、好きな男が明確に居た香織もユートの分身を口にするくらいしており、もう何度絶頂に至ったか数えるのも億劫となった程だ。

 

 ユエは【閃姫】となり、正式な彼女扱いである訳だから、ユートの性的な望みは全て叶える義務がある。

 

 だから尻パイルすら受け止めるし、百合が見たいと言われたら同じく【閃姫】となった雫と性に耽った。

 

 【閃姫】となる前から、雫のステータスは爆上がりしていたが、なってからは更なる向上が見られた。

 

 ユートの潜在能力の覚醒という、抱いた相手の潜在的な能力を引き出す力。

 

 【閃姫】になれば更なる潜在能力の覚醒が可能で、今の八重樫 雫のステータスはちょっと勇者(笑)にも勝るだろう。

 

 

八重樫 雫

17歳 女

レベル:70

天職:剣士

筋力:1000

体力:850

耐性:770

敏捷:2000

魔力:700

魔耐:720

技能:剣術[+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇][+無拍子] 縮地[+爆縮地][+重縮地][+震脚][+無拍子][虚空縮地] 先読[+投影] 気配感知 隠業[+幻撃] 制限解放 闘氣 咸卦法 言語理解

 

 

 勇者(笑)より迅い。

 

 更に数日後……

 

「ふむ、遂に百階層目か」

 

 恐らくは真のオルクス大迷宮の最終階層に着く。

 

 その進んだ先は、無数の強大な柱に支えられた広大な空間で、柱の一本一本が直径にして五m程度の太さがあって、螺旋の模様と木の蔓が巻き付いている様な彫刻が彫られている。

 

 柱の並びは規則正しく、一定間隔で並んでいた。

 

 天井までは約三〇mだといった処か、地面も荒れてなどいない平ら慣らされた綺麗なもので、何だか荘厳な雰囲気を感じさせる空間であったと云う。

 

 ユートがユエ達を待機させて、辺りを警戒しながらも歩を進めると全ての柱が淡く輝き始めた。

 

「チッ、何だ?」

 

 柱はユートの立つ場所を起点とし、奥の方へと順繰りに輝いきを放つ。

 

 警戒をしていたものの、特に何も起こらない。

 

 更に警戒しつつ先に進むユートは、自身の持っているスキルを以て感覚を研ぎ澄ませていった。

 

 どれだけ進んだろうか、前の方に行き止まり。

 

 正確には行き止まりではなくて巨大な扉、全長にして約一〇mはあろうかという両開きの扉だった。

 

 美しいものだと素直に言えそうな彫刻が彫られて、七角形の頂点に描かれた何らかの文様が目に留まる。

 

「扉……か。若しやこれは反逆者とやらの住処か?」

 

「……かも知れない」

 

「ユエ、待っていろって言っただろうに。雫達もだ」

 

「……少なくともユートが進んだ場所は安全」

 

「私だって戦うわよ」

 

「こういう場所だ。きっとラスボスとか出てくるぞ」

 

「……望む処」

 

「そういう事ね」

 

 脅かした心算であるが、逆にユエも雫もニヤリと口角を吊り上げ、不敵な表情となって見上げてきた。

 

 こんな如何にもラスボスの部屋な感じ、ユートには情報を総合的に無意識領域で統合計算する未来予測があるが、正しく本能レベルで警鐘を鳴らしている。

 

「フッ、上等だよ」

 

「……んっ!」

 

 ユートもユエも扉を睨み付けると、二人は足並みを揃えて扉の前まで行こうと柱の間を越えたる。

 

「なにぃ!?」

 

 扉までは三〇m程か? ユート達と扉までの空間に巨大な、見覚えが全く無い赤黒い魔法陣が顕れた。

 

 こいつは勇者(笑)達を、窮地に追い込んだ魔法陣であり、直径が一〇m程度だったのに対し目の前の魔法陣は三倍にも亘る大きさ、構築された術式もより複雑で精密なものである。

 

「ラスボス……か」

 

「……大丈夫、私達は……絶対に負けないから」

 

「ええ!」

 

「そうだな、その通りだ」

 

 ユエの宣言に雫が同意、今度はユートの方がニヤリと口角を吊り上げて笑う。

 

 魔法陣は更に輝きを強めると、弾ける様に赤黒い光を放った。

 

 目を腕で遮りながら先を見据え、光が収まった時に魔法陣が有った場所に顕れた存在とは……

 

『『『『『『グギャァァァアアアッ!』』』』』』

 

 体長約三〇mで六つもの赤青黄白黒緑とカラフルな頭に長い首、赤黒い眼をして鋭い牙を持つ正に怪獣と呼べる存在。

 

「多頭を持つ大蛇となると神話のヒュドラ、擬きか」

 

 常人では耐えられそうにもない殺気を放ちながら、ヒュドラの六対一二の眼がユートとユエと雫を睨み付けてきていた。

 

 ネオディケイドライバーが装着され、ライドブッカーが左腰に佩かれる。

 

 ユートはライドブッカーを開き、ディケイドの絵柄が描かれたカードを出す。

 

「変身っ!」

 

《KAMEN RIDE》

 

 バックルにカードを装填してやり、開いたドライバーを閉じた。

 

《DECADE!》

 

 幾多のディケイドの幻影が顕れ、ユートへと収束が成されていく。

 

 黒いインナーにマゼンタ主体のアーマー、緑の複眼を持つ仮面ライダーディケイドに変身をした。

 

「……おいで、サガーク」

 

 現れた白い蛇型の人工モンスター、サガークがユエの腰にベルトとして装着。

 

「……変身っ!」

 

 ジャコーダーをサガークベルトの右横部、スロットに一時差し込んで再び抜き放つと、中央部が回転しながらサガークが喋る。

 

《HENSHIN》

 

 【運命の鎧】と称される仮面ライダーサガ、劇中ではファンガイア一族を統べる新キング、登 太牙が使っていた鎧であった。

 

「……ヴァンパイア一族の女王ユエ! 仮面ライダーサガ、征く」

 

 白と銀を基調としている仮面ライダーサガ、ユエがヒュドラへ向かっていく。

 

「来なさい、サソードゼクター!」

 

《STAND BY》

 

 サソードヤイバーからの電子音声に反応したのか、サソードゼクターが地中から現れて雫の手の中へと納まる。

 

「変身!」

 

 サソードヤイバーの鍔となる部位にセット。

 

《HENSHIN!》

 

 雫はサソードヤイバーを持つ手から姿が徐々に変わっていき、仮面ライダーサソードのマスクドフォームへと変身した。

 

「まずは一発だ!」

 

「ゆ、優斗……言い方!」

 

 何故か雫の頬が朱に染まるが、幸いな事にサソードの仮面で判らない。

 

《ATTACK RIDE BLAST!》

 

 ユートがカードを装填し引き金を引いてやり……

 

 BANG! BANG! BANG! BANG! BANG! BANG! BANG! BANG! BANG! BANG! BANG! BANG!

 

 一発処か分身した銃身、その銃口からは一二発もの弾丸を撃ち放つ。

 

 だが、黄色い頭が狙われた赤い頭を護る様に前へと進み出て、その身を以て庇ってしまう。

 

「地属性の盾役ってか? どうやら、頭の色で役割が分担されているみたいだ」

 

「……ん、そうみたい」

 

 頭は六本もあり、黄色が盾という防御役なのは此方でも理解をした。

 

「つまり、色的に赤が火、青が氷、緑が風、黄が地、白が光、黒が闇……かな」

 

「黒はどんな能力を?」

 

「闇で攻撃なら既にしてきてもおかしくないからな、デバフ系の可能性もある。闇なら恐慌辺りかもな? どちらにせよ、仮面ライダーには効かないから心配は要らないよ」

 

「本当に便利よね」

 

「……ん、下手したら怖い幻を見せられてた」

 

 ならば、それならそれでやり様はあるもの。

 

「ユエ、雫、同時に狙う! 僕は赤を狙うから!」

 

「……ん、判った。それなら私は青を!」

 

「なら私は黄色に牽制!」

 

 防御役も同時に狙えば、防御は手薄になる筈。

 

《FINAL ATTACK RIDE DE DE DE DECADE!》

 

《WAKE UP》

 

 ユートはファイナルアタックのカードを装填して、ユエはサガークにウェイクアップフェッスルを吹かせてやり、雫もサソードヤイバーに装着されたサソードゼクターの尻尾を一旦持ち上げると、再び押し込んでサソードゼクターの尻尾の針部分でスイッチを押す。

 

「はぁぁぁっ!」

 

「……やぁぁぁぁっ!」

 

「ライダースラッシュ!」

 

《RIDER SLASH!》

 

 顕れた数枚のエナジーフィールド、ディケイドのライダーズクレストが描かれたそれを、潜り抜けながら蹴りを放つディメンションキックと、ヒュドラに対しジャコーダーを伸ばして貫くユエ、雫は黒い液体を垂れ流すサソードヤイバーで黄色の頭を斬り裂く。

 

 宣言した通り赤と青と黄の頭へと同時に、必殺技をぶつけに往った。

 

 思った通りに黄色の頭が防御しようとしてくるが、雫の攻撃の所為で護れずに赤と青の頭は普通に必殺技を喰らって砕ける。

 

 そして、ライダースラッシュにより一番防御が高い筈の黄色い頭も砕けた。

 

「む?」

 

「……白いの!」

 

 白の頭が光りを放ったかと思うと、砕けた筈の黄色と青色の頭が復元した。

 

「チッ、やっぱり光属性って処か? そりゃ有るよ、回復系っての。バランスの良い奴だマジに!」

 

 白は修復だか回復だかを担当する頭なのだろう。

 

「ユエ、雫、こうなったら一気に殺るぞ!」

 

「……一気に?」

 

「殺る?」

 

「こういうのは回復役を残すのは面倒だ。ダメージを入れても逐一回復をされるからな! 僕が回復役も盾役も含めて全ての頭を吹っ飛ばす、雫はクロックアップして全体に攻撃をして、ユエは頭が吹っ飛んだなら胴体にトドメを!」

 

「判った、優斗!」

 

「……ん、了解した」

 

 ユートはライドブッカーを開き中から新たなカードを取り出す。

 

 カードの絵は何処と無く機械っぽい外見、眼の色が黄色な仮面ライダー。

 

 名前の欄は【FAIZ】と書かれてあった。

 

《KAMEN RIDE FAIZ!》

 

 ライダーカードを装填、ディケイドファイズの姿へと再変身したユート。

 

《FORM RIDE FAIZ……ACCEL!》

 

 更にフォームライドを使って強化形態、ファイズ・アクセルフォームに成る。

 

「殺るぞ……ユエ、雫!」

 

「……ん、殺る!」

 

「了解!」

 

 ヒュドラからの炎や氷や風という攻撃を躱しつつ、お互いに頷き合い物騒な事を言い放つ。

 

 左手首に装着されているファイズアクセル、それのボタンを押してやる。

 

《START UP》

 

 これにより一〇秒間というカウントが始まった。

 

「はっ!」

 

 ユート……ファイズの姿は掻き消え、目にも留まらぬ疾さで駆け抜けヒュドラに攻撃を繰り返す。

 

「クロックアップ!」

 

《CLOCK UP!》

 

 雫もクロックアップ。

 

 カブト系仮面ライダーなら全員が持つ、超高速移動をする為の手段だ。

 

 ヒュドラの認識圏外からサソードヤイバーにより、斬撃を幾度となく繰り出してダメージを与える。

 

 そしてそれを見たユートが更にカードを装填。

 

《FINAL ATTACK RIDE FA FA FA FAIZ!》

 

 赤い円錐形のポインターが六つ、ヒュドラの頭全てに狙いを付けて並ぶ。

 

「はぁぁぁぁぁああっ! アクセル・クリムゾンスマァァァァッシュッ!」

 

 一度に六つの頭が砕け散るヒュドラ。

 

 尚、通常でのファイズは技名を叫ばない……というか平成仮面ライダーでは、必殺技の名前を叫ぶ方が珍しいだろう。

 

 モモタロスの『俺の必殺技パート○』とか……

 

「……征く!」

 

 ユエは再びサガークに、ウェイクアップフェッスルを吹かせる。

 

《WAKE UP!》

 

 ジャコーダーをサガークの右側のスロットへ差し、ベルトのバックル中央部が回転、ジャコーダービュートをヒュドラへと伸ばして身体を拘束。

 

「……女王の判決を言い渡す……死だ!」

 

 必殺仕事人の要領でユエ……仮面ライダーサガが、ヒュドラへジャコーダービュートを刺し、赤い皇帝の紋章を通しギリギリと持ち上げ、増幅された魔皇力を過剰なまでに注ぎ込む。

 

『クルァァァァン!』

 

 けたたましい轟音を響かせながら、スネーキングデスブレイクをかました。

 

 その破壊力は凄まじく、ヒュドラの肉体を消し飛ばす程に大きな爆発を起こしたと云う。

 

《3、2、1……TIME OUT》

 

 アクセルタイムが終了、ファイズからディケイドに戻るユート。

 

 反対側にはユエと雫――仮面ライダーサガと仮面ライダーサソードが立つ。

 

「ふむ、やっぱりだった」

 

「……どういう事?」

 

 変身解除してトタトタと走り寄り、呟いたユートに訊ねてくるユエ。

 

「あの状態でも即死してはいなかった。イタチの最後っ屁か下手したら第二形態に移行していたな」

 

「……しぶとい?」

 

「蛇……僕が行った世界の一つで竜蛇は女神であり、再生の象徴でもあったよ」

 

「……再生の象徴、だから起き上がると?」

 

「可能性の一つとしてね。それで不意を突かれてしまってダメージを受けるとか無いからな」

 

 だからこそ、最後の〆としてユエにトドメを刺させたという訳だ。

 

「さぁ、蛇は出たんだし? 今度は鬼でも出るか?」

 

 重々しく扉を開いたその先は……

 

「館……だと?」

 

 大迷宮の奈落より更なる底の地獄の奥、ジュデッカでも在るのかと思ったが、其処に存在していたのは寧ろエリュシオンの如く。

 

 一瞬、地上かと錯覚する様な景色であったと云う。

 

「へぇ、悪くない環境だ。反逆者の住処とか云うからどんなオドロオドロしそうな場所かと思ったが、随分と良い暮らしじゃないのかこれは?」

 

「……でも、私が封印されていた場所の管理者」

 

「まぁね」

 

 まるで太陽が照っているみたいな環境で、円錐状の物体が天井高く浮いてて、底面に煌々と輝く球体が浮いていた。

 

 緑に溢れて小川が流れ、せせらぎが耳に心地良い。

 

 というか、この何処かしら野球場くらいの広さを持つ空間の奥、その壁からは何故か滝が流れている。

 

 しかも魚が生息している辺り、あの滝は何処かに繋がっているのだろうか?

 

 端の辺りにはどういう訳かベッドルームが、御丁寧な事にそこそこの大きさがあるから、五人で使うにも便利は良さそうだった。

 

 何も植えられてないし、何も飼われていないとはいっても、畑や家畜小屋なども完備されている。

 

 確かに此処で生活をするのは可能そうだ。

 

 まぁ、迷宮の最奥というのは間違い無さそうだし、ユートは取り敢えずこの場の探索を考える。

 

「雫、白崎、愛子先生……君ら三人は此処で待機でもしてれば良い」

 

「緒方君は?」

 

「ユエと館を探索するさ。館にまでトラップは無いと思うけど、万が一に侵入者絶対殺すトラップとか有ったら、先生達は生き残れないかも知れないしね」

 

「再生力の高いユエさんは兎も角、緒方君は大丈夫なんですか?」

 

「問題無いよ」

 

 ユートは少しだけだが、スカウト……斥候系の技能も持ち合わせているから、その気になればトラップを捜して解除も、別に出来ないという事もない。

 

 まぁ、本職の盗賊には負けるのだろうけど。

 

「退屈なら三人でレズってても構わないよ」

 

「「「ヤりません!」」」

 

「さよけ」

 

 百合百合に興味無いのか一斉に突っ込まれた。

 

 早速、館に向かったなら内部には容易く入れたし、入口にトラップも無い。

 

「まぁ、此処で反逆者とやらが暮らしていたんなら、入口にトラップを仕掛けて自分が入れない、何て莫迦な話にしかならないか」

 

 とはいえ、魔力波形なんかでマスターは入れるとか仕掛けなら、問題無く入口にトラップを作れるが……

 

「殆んどの部屋にプロテクトが掛かっているのか? キーになる何かを見付けない限り、入れない様になっているんだろうか」

 

 工房らしき部屋も封印がなされていた。

 

 無理矢理に破壊をする事も不可能ではないのだが、若し変な仕掛けがしてあって館全体が崩れたら? と思うとやるのは頂けない。

 

「まぁ、広いとはいっても所詮は限定空間なんだし、いずれはキーも見付かるとは思うけど……な」

 

「……残りは三階」

 

 ユエが呟く。

 

「二階は現状でどうにもならないし、こりゃあ三階に期待するしかないか」

 

 二階から上がる階段を見付けたし早速、ユエと共に三階へと上っていく。

 

「三階はこの大部屋だけみたいだな……」

 

 一階にはでかい風呂が有ったし、魔力を注げば普通にライオンの口から湯が溢れ出た。

 

 封印もそうなのだけど、施設自体は生きている。

 

 故に扉は普通に開いた。

 

「魔法陣……か。しかも、今まで見たより精緻なものだな。より大容量な情報を扱っているのか?」

 

「……骨」

 

「誰の骸かは知らないが、服飾は随分と立派だ」

 

 黒地に金の刺繍がされた綺麗なローブを身に纏い、豪奢な椅子に座っている様はあの状態で亡くなったのが判る。

 

 視るからに見苦しかったりしない辺り、恐らく死期を覚ってこの人物は静かに眠ったのだろう。

 

「部屋にはいっても起動しない辺り、踏まないといけないみたいだね」

 

「……大丈夫?」

 

「罠って線は低いだろう。はっきり言って此処は別荘と聞かされても違和感とかないし、この骸が反逆者とやらなら某か伝えたい遺言でもあるんじゃないか?」

 

 少なくとも、外で顕れたヒュドラみたいな話にはならないだろうと考えた。

 

 部屋としてはそれなりの広さだが、戦闘をやらかすには流石に狭過ぎる。

 

「まぁ、何かあったら頼むぞユエ」

 

「……ん、任せて」

 

 二人は唇を重ね合わせ、暫く堪能してからユートは魔法陣へ一歩を踏み出す。

 

 魔法陣の中央まで来ると純白の光が爆ぜ、某か入り込む様な感覚に襲われる。

 

(勘としては受け容れるべきと云う事か)

 

 感覚的にそう感じ取り、それを自ら取り込んだ。

 

 光が収まったのを期に、ユートが目を開くと其処には黒髪、そして骸が纏った黒衣の青年が立っている。

 

『試練を乗り越えよく辿り着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えば判るかな?』

 

「オスカー・オルクス……成程、オルクス大迷宮ってのは本人の姓から取った名だった訳か」

 

 名前の由来を知らなかったから納得したユート。

 

『ああ、悪いのだが質問は許して欲しい。これは只の記録映像の様なものでね、生憎と君の質問には答えられない。だが、この場所に辿り着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何の為に戦ったのかと……メッセージを残したくてね。この様な形を取らせて貰った。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者では無い……という事をね』

 

「反逆者であって反逆者では無い? リドルって訳じゃ無さそうだけど……」

 

 其処から先は正に真実、この世界に起きている愚かな戦いの歴史。

 

 ユエから聞いていた話、聖教教会から聞いた歴史。

 

 オスカー・オルクスの語る歴史が真実であるなら、その全てが全く覆ってしまう事になる。

 

「狂った神々とその子孫、地上で起きた人間に魔人に亜人の戦争とそれを裏から操る神。だけどその戦争は基本的に神託によるもの。神代から続く神々の子孫が七人の先祖返りを中心に、“解放者”となって争いに終止符を……か。だけど、洗脳により解放者の計画は破綻した。最後に残ったのが大迷宮の創造主の解放者であり、神の遊戯盤を破壊しようとした反逆者か」

 

 オスカー・オルクスは、最後に到達者へ言葉を(はなむけ)として贈ってきた。

 

『君のこれからが、自由な意志の下にあらん事を』

 

 そうして消えるオスカー・オルクスの映像。

 

 同時にユートの中に入り込むのは、オスカー・オルクスが使った神代魔法。

 

「【生成魔法】か……僕と相性の良い魔法だ。上手く使えば個人スキル【創成】のパワーアップになるな」

 

 それに今一つ。

 

「……ユート、大丈夫?」

 

「問題無いよ。面白い歴史の裏を聞いたってだけだ」

 

「……ん、こんなの私も知らなかった」

 

「オルクス大迷宮はユエの時代、三百年前には有ったんだから普通にそれよりも前の時代、下手したらそれこそ千年は前かもだから。ユエが知らないのは無理も無いだろうね」

 

「……ユートはどうする? この話を聞いて」

 

 それはユエの行動の指針にもなるのだ。

 

 依存と云われても仕方がないが、だけど今のユエは浦島太郎みたいなもので、三百年が経っていると自覚して若さを保っていても、外に知り合いなんて一人も居ないのだ。

 

 吸血鬼の王国も既に存在しないし、縦しんば存続していても自分を騙して封印した連中でしかない。

 

 行き場が無い。

 

 生き場が無い。

 

 ユートに捨てられたら、ユエには縋るべき縁が全く無かった。

 

 元より原典でも同じ事、その対象がハジメかユートかの差違があるだけ。

 

「ふむ。どっち道、神を名乗るエヒトは殺す必要が出てきたかもね」

 

「……どういう事?」

 

「僕らを召喚したのが奴、エヒトだというなら還った処で再び召喚される。僕らじゃなくても別の地球人が召喚されかねない。何より奴は地球の存在を知った。下手したら地球でトータスと同じ事をやらかす」

 

「……確かに」

 

「フッ、僕は門矢 士じゃないけどディケイドの力を持った世界の破壊者だし、奴の秩序(せかい)を破壊してやるまでだ。自らが招いたのが世界の猛毒(プロヴィデンス・ブレイカー)だとは、全くツイていないな偽神エヒト。クックック」

 

 この物語(せかい)を破壊する……門矢 士風に言えばそういう事だった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「ち、違うの!」

 

「遂ね、ホントに魔が差したと言うかね!」

 

「そんな心算じゃなかったんです! し、信じて下さい緒方く〜ん!」

 

 館の二階、書斎や工房でオスカー・オルクスの遺産として、めぼしい物を頂戴してからベッドルームまで戻って来たら、本当にレズっていた三人がイチャイチャと慰め合っていたり。

 

「まぁ、何だ。取り敢えずは混ぜて貰おうか。ユエもお出で」

 

「……ん」

 

「ちょっ!」

 

 脱ぎ始めたユートとユエに驚く雫。

 

「前にも5Pはヤったろ」

 

「ヒッ!」

 

「あわわっ!」

 

 既にカチンコチンな分身を視て、香織も愛子も今更ながら恐怖に戦慄する。

 

 もう何度も受け容れているモノとはいえ、やっぱりまだまだ慣れてはいない。

 

「戴きます」

 

「……戴かれます」

 

 こうして三人はユートとユエに、美味しく性的に戴かれてしまうのだった。

 

 その際の寝物語に召喚をされた真実を聞かされて、喘ぎながら天之河光輝が犯した短慮に乗った自分達を情けなく思うのは『始まりの四人』の内二人。

 

 愛子も或いは引っ張叩いても止めるべきだったと、生徒達を戦場へ向かわせる事になったのを悔いた。

 

 とはいえ、すぐに頭の中が真っ白になったけど。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 数時間後……

 

 折角のでかい風呂だし、気絶している三人はベッドに放っておき、ユエと共に入浴を愉しんでいる。

 

「……ユートはエヒトと戦うと言った」

 

「ああ、世界を救う為なんかじゃないけどな」

 

「……世界を破壊する?」

 

「ああ。言ったろ? 僕が使う仮面ライダーの力ってのは、とどのつまり特撮の【仮面ライダー】シリーズから来ている……と」

 

「……ん、特撮が何なのかは解らないけど。要するに舞台劇みたいなもの?」

 

「まぁ、そうだね。そして仮面ライダーディケイドの原典の主人公、門矢 士は記憶を喪い力を持たない侭で光写真館に住んでいた。仮面ライダーキバである、紅 渡に導かれ九つの世界を巡る旅に出た。最終的に『仮面ライダーを斃さないといけないのに仲間にしてしまった』と非難をされた挙げ句の果てに、九人もの仮面ライダーに襲われて戦う羽目になった。そんな噺だったんだが、最後は旅を続ける選択に落ち着いたんだろう、僕の知り合いにはその果てを観た娘が居て、平成仮面ライダーと呼ばれる世界を巡ったらしくて、僕が使うネオディケイドライバーは、謂わばその証。実際にライダーズクレストも本来は、ディケイドを除く九個だったのが、ジオウとディケイドを除く一八個に増えていたからね」

 

「……それがユートの力、仮面ライダーディケイド」

 

 ユートも這い寄る混沌の力を喚起して、仮面ライダーディケイドのネオディケイドライバーに変わった、その理由はよく解らないというのが正しい。

 

 だけど相性はバッチリ、何故なら【仮面ライダー】は仮面ライダーフォーゼまでなら視ていたし、ユートは自身を【模倣者(イミテイター)】と呼んで憚らない程であり、仮面ライダーディケイドとは成程確かに他の仮面ライダーの姿と力を模倣する存在だからだ。

 

「ユエはどうしたい?」

 

「……私には帰る場所も、待っている人も居ない……だからユートに付いてく。私をユートの“旅”に連れて行ってくれる?」

 

「他の【閃姫】と扱い的には変わらんぞ?」

 

「……ん、構わない。欲しいんならいつでも良いし、招喚もしてくれて構わないから。他の【閃姫】とだって仲好くしてみせる」

 

「良い子だ。ならこの世界からユエを攫ってやるさ」

 

「……ん、ありがとう」

 

 その後はユエが血を吸ったり精を吸ったり、風呂でイチャイチャを繰り返す。

 

 ユートはオスカー・オルクスの館から、ほぼ全ての遺産を受け継い(ぬすん)だ形になるが、折角だからと骨休めも含んでオルクス大迷宮に留まる事にする。

 

 理由の一つはそもそもが天之河光輝達と『勇者ごっこ』に興じる気は無くて、他の大迷宮を巡って全ての神代魔法を得る下拵えという意味で、連れ歩く事になる香織と雫と愛子を鍛えるのが目的だった。

 

 ライドプレイヤーに変身すれば、香織と愛子も確かにオルクス大迷宮の深層でも戦える程度に強化はされるが、魔人族との戦いは疎か場合によれば人間とも戦う事になり、いちいち三人が止まっていては話にならないから。

 

 相手の命を奪う意味を、逆に命を奪われる覚悟を促さねばなるまい。

 

 それに能力値だけ上がっても、使い熟せないのでは却って害悪になる。

 

 これは必要な措置だ。

 

 尚、ユート以外はオスカーの【生成魔法】との相性が良くなかったらしくて、全員が覚えはしたが使い物にはならないらしい。

 

「約束を守っていたから、【生成魔法】はハジメにやるかな」

 

 ダンジョンアタックの前にした約束、ハジメは確かにG3システムを完成させており、彼の錬成魔法を遥かに強化してくれるであろう【生成魔法】を与えるのも良いであろう。

 

「っと、その前に僕は先生と香織を連れて一回は王都に戻らないとな」

 

 一応、話は通しておかないといけないし、リリアーナとヘリーナを味わうのも久し振りにヤっておきたかったのと、ハジメに魔法を渡す為でもあったから。

 

 それに愛子先生は連れ回すより、クラスメイト達の方を見ていて欲しい。

 

 ユートは暫く味わえないからと、愛子先生の肌の柔らかさと温もりをタップリと堪能しておくのだった。

 

 

.

 




 雫のステータスにはまだ伸び代があります。


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる

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